説明

樹脂製容器

【課題】容器の上方又は下方から加えられる衝撃や荷重に対して座屈などの変形が生じ難く、尚且つ軽量化が図れる樹脂製容器を提供すること。
【解決手段】キャップが着脱自在な口部2と、口部2に連設される肩部3と、肩部3に連設される胴部4と、胴部4に連設して最下部に位置する底部5とを備える樹脂製容器において、胴部4の下端部分に、上下方向に弾性変形可能な蛇腹状のクッション部10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップが着脱自在な口部と、口部に連設される肩部と、肩部に連設される胴部と、胴部に連設して最下部に位置する底部とを備える樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルに代表される樹脂製容器は、成形が容易で大量生産に適している。また、ある程度の機械的強度があり、且つ軽量であるといった優れた特性を有していることから、各種の液体等を充填する容器として広い分野で用いられている。特に近年では、お茶やミネラルウォータ等の飲料用容器として大量に使用されており、店頭における販売だけでなく自動販売機用としても使用されている。
【0003】
近年、環境問題の意識が高まり、樹脂製容器の軽量化が積極的に進められている。しかし、軽量化により容器の肉厚が薄くなると、強度が全体的に低下するため、流通時に加えられる衝撃や荷重に耐えられなくなり、さらに消費者が飲用時に持ち難くなるという問題が生じている。
【0004】
このような問題を解決するために発明された従来の樹脂製容器として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。ここでは、胴部の全周にわたる溝を、胴部の上下方向の複数箇所に設けて樹脂製容器の強度を確保しようとしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−154959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の樹脂製容器では、上下方向から加えられる衝撃や荷重に対して必ずしも十分な強度を確保できるものではなかった。例えば、従来の樹脂製容器に飲料等を充填した商品を、縦にした状態で積み上げていくと、積み上げられた商品の荷重によって、下方の商品が座屈することがあった。
従って本発明の目的は、容器の上方又は下方から加えられる衝撃や荷重に対して座屈し難く、尚且つ軽量化が図れる樹脂製容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂製容器の第1特徴構成は、キャップが着脱自在な口部と、口部に連設される肩部と、肩部に連設される胴部と、胴部に連設して最下部に位置する底部とを備える樹脂製容器において、前記胴部の上下方向の中心よりも下側に、径方向外側ほど幅広となる溝を全周にわたって有する上下方向に弾性変形可能なクッション部を備える点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
本構成のごとく、胴部の下端部分に、上下方向に弾性変形可能なクッション部を備えるものであれば、容器に対して上下方向から衝撃や荷重が加えられても、クッション部がその径方向外側ほど幅広となる溝を中心として弾性変形してその荷重を吸収するため、容器の座屈を防止することができる。また、クッション部が、胴部の上下方向の中心よりも下側に位置するため、飲料等を本樹脂製容器に充填した場合、その重心付近か又は重心よりも低い位置で弾性変形するようになり、より安定して衝撃又は荷重を吸収することができる。
【0009】
第2特徴構成は、前記クッション部が、前記胴部の下端部分に位置する点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、クッション部が胴部の下端部分に位置するため、さらにより安定して衝撃又は荷重を吸収することができると共に、上方に設けられる場合ほど目立たなくなるため樹脂製容器の意匠性に与える影響も少ない。
【0011】
第3特徴構成は、前記クッション部が、前記径方向外側ほど幅広となる溝の上下のそれぞれに、全周にわたる別の溝を1以上備える点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、クッション部が三段以上のバネ構造を備えることになるため、より確実に荷重を吸収することができる。
【0013】
第4特徴構成は、前記径方向外側ほど幅広となる溝の深さが、前記別の溝の深さよりも深く構成される点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、正面視におけるクッション部の形状が、径方向外側ほど幅広となる溝の付近が最も縮径したくびれ形状となる。これにより、上下方向から荷重等が加えられた場合に径方向外側ほど幅広となる溝に対して応力が集中し易くなるため、よりスムーズに弾性変形し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の樹脂製容器の正面図である。
【図2】本発明の樹脂製容器における直胴部の斜視図である。
【図3】図1中の矢視線III−IIIの横断面図である。
【図4】図1中の矢視線IV−IVの横断面図である。
【図5】図1中の矢視線V−Vの横断面図である。
【図6】本発明の樹脂製容器の底部の底面図である。
【図7】直胴部の別実施形態を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の樹脂製容器に係る好適な実施の形態として、飲料用のプラスチックボトルを図面に基づいて説明する。
〔実施形態〕
まず、本明細書で用いる各種の用語について以下のとおり定義する。
本明細書中において上下方向とは、図1のプラスチックボトル1(以下、ボトル1と略称する)の中心軸X−Xの方向を意味し、紙面の奥側が「上」、手前側が「下」となる。横方向又は水平方向とは、中心軸X−X方向に直交する方向を意味する。周方向とは、横断面形状の輪郭に沿う方向を意味する。径方向とは、中心軸X−X上の任意の一点を円の中心として考えた場合におけるその円の半径方向を意味する。高さ又は幅とは、中心軸X−X方向に沿う長さを意味する。深さとは、径方向に沿う長さを意味する。横断面形状とは、中心軸X−Xに直交する平面(横断面)におけるボトル1の断面形状を意味する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るボトル1は、上方から順に、キャップが着脱自在な口部2と、口部2に連設される肩部3と、肩部3に連設される胴部4と、胴部4に連設され最下部に位置する底部5とを備えて構成されており、これらの部分によって飲料を貯留する空間が内側に形成される。
【0018】
ボトル1の口部2、肩部3、胴部4、及び底部5は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を主材料として、二軸延伸ブロー成形などの延伸成形法によって一体的に成形される。
【0019】
ボトル1は、成形後に洗浄・殺菌処理されてから飲料が充填される。充填される飲料としては、例えばミネラルウォータ、緑茶、ウーロン茶又は果汁等の非炭酸飲料を挙げることができるが、この他にも、例えば、炭酸飲料やソース等の食品を充填しても良い。
【0020】
(口部)
口部2は、上端が開口しており、飲料の注ぎ口として機能する。口部2の開口は、図示省略した着脱自在なキャップにより開閉される。
【0021】
(肩部)
肩部3は、横断面形状が略円形の多面体部が、下方にかけて徐々に拡径してなり、下端が胴部4の第1凹部6に連続している。
【0022】
(胴部)
胴部4は、上方から順に、第1凹部6と、第1凹部6に連設される直胴部7と、直胴部7に連設される第2凹部8と、第2凹部8に連設されるくびれ部9と、くびれ部9に連設されるクッション部10とを備えて構成される。
【0023】
〔第1及び第2凹部〕
第1及び第2凹部6,8は、胴部4の全周にわたって設けられている溝であり、ボトル1の側面に対して加えられる衝撃や荷重に対する強度(以下、側面強度と略称する)を補強する補強リブとして機能する。尚、第1及び第2凹部6,8のそれぞれの溝の幅と溝の深さは胴部4の全周にわたって一定であり、また第1凹部6の溝の幅及び溝の深さのそれぞれは、第2凹部8の溝の幅及び溝の深さと同一である。
【0024】
〔直胴部〕
直胴部7は、横断面形状が正円の円形で構成された円筒状の部分であり、ボトル1の最大外径を有している。また、直胴部7の外周面には飲料の銘柄等を表示するラベルを設けることができる。直胴部7には、第1〜第3波状凹部11,12,13が上下方向に等間隔で設けられている。これらの第1〜第3波状凹部11,12,13は、直胴部7の全周にわたって設けられる溝であり、上記第1及び第2凹部6,8と同じく、ボトル1の側面強度を補強する補強リブとしての機能を有する。
【0025】
〔第1〜第3波状凹部〕
以下、第1〜第3波状凹部11,12,13について説明するが、これらはいずれも同じ構成を有するため、その構造については第1波状凹部11についてのみ説明し、第2及び第3波状凹部12,13の構造についての説明は省略する。
【0026】
図2に示すように、第1波状凹部11は、径方向の内側に突出する第1突出領域14と、この第1突出領域14よりもさらに径方向の内側に山状に突出する第2突出領域15とを備える。
【0027】
第1突出領域14及び第2突出領域15は、周方向に交互に配置されている。本実施形態では、第1突出領域14及び第2突出領域15のそれぞれが、周方向に約51度の間隔で7か所ずつ設けられている。
【0028】
図3に示すように、第2突出領域15の溝の横断面形状は、第1突出領域14の位置よりも径方向の内側に山状に突出する形状を有するため、第1波状凹部11全体の横断面形状は、起伏のある波状の円周形状となる。
【0029】
図1及び図2に示すように、第2突出領域15における溝は、上下方向に2つの山状の傾斜面16を備えることによって、径方向の外側に向かうほど溝の幅が広くなるように構成されている。また、第1突出領域14を構成する溝17の幅は、第2突出領域15を構成する溝18の幅よりも狭いため、図1に示すように、幅の狭い溝17と、幅の広い溝18とが上下に波状の曲線を形成しながら周方向に交互に配置されることとなる。
【0030】
図2に示すように、第1〜第3波状凹部11,12,13は、周方向に互いに位相をずらして配置される。例えば、第1波状凹部11の第1突出領域14が配置される位置において、下方の第2波状凹部12では第2突出領域15が配置され、さらに下方の第3波状凹部13では第1突出領域14が配置される。また図1及び図2に示すように、第1波状凹部11の幅の狭い溝17が配置される位置において、下方の第2波状凹部12では幅の広い溝18が配置され、さらに下方の第3波状凹部13では幅の狭い溝17が配置される。
【0031】
〔くびれ部〕
図1に示すように、くびれ部9は、消費者がボトル1を把持し易いように構成された部分である。くびれ部9は、正面視において、丸みを帯びたひし形及び瓢箪のような形をしたパネルを交互に組み合わせた形状を備えており、くびれ部9における上下方向の中央位置19に向かって徐々に縮径している。
【0032】
図示しないが、くびれ部9の横断面形状は多角形状を有する。くびれ部9の中央位置19付近の横断面形状は全体的に丸みを帯びた略8角形であり、中央位置19から上下方向に遠ざかるほど円形に近づき、上下の両端部分では全体的に丸みを帯びた16角形となる。
【0033】
〔クッション部〕
図1に示すように、クッション部10は、その全周にわたる3つの溝として、径方向外側ほど幅広となりV字状の縦断面形状を有する溝のV字凹部20と、V字凹部20の上下に設けられる2つの小凹部21,21とを備える蛇腹状の部分であって、V字凹部20を対称軸として線対称な構成を有する。図4に示すように小凹部21の横断面形状は起伏のある波状の円周形状を有する。また、図5に示すようにV字凹部20の横断面形状もまた起伏のある波状の円周形状を有する。
【0034】
V字凹部20の最深部の内径の大きさは、くびれ部9における上下方向の中央位置における内径の大きさと略同じである。小凹部21の溝の幅は、上記第1及び第2凹部6,8、第1〜第3波状凹部11,12,13、及びV字凹部20のいずれの溝の幅よりも小さい。また小凹部21の溝の深さは、上記第1及び第2凹部8、第1〜第3波状凹部11,12,13、及びV字凹部20のいずれの溝の深さよりも浅い。
【0035】
クッション部10は、V字凹部20及び2つの小凹部21,21という3つの溝を有することで3段バネ構造となっており、これにより上下方向に弾性変形することができる。そのため、ボトル1に対して上下方向から荷重が加えられても、クッション部10が弾性変形してその荷重を吸収することができ、ボトル1の座屈を防止することができる。
【0036】
尚、本実施形態におけるクッション部10は、その全周にわたる溝として、V字凹部20及び2つの小凹部21,21という3つの溝を備えるが、この構成に限定されるものではなく、他にも例えば、V字凹部20のみを1つ又は複数備える構成、V字凹部20の上下のそれぞれに小凹部21を1以上設ける構成、あるいは、複数のV字凹部20と1つ又は複数の小凹部21とを備える構成などとしても良い。また、本実施形態では、クッション部10を胴部4の下端部分に設けてあるが、この構成に限定されるものではなく、クッション部10を胴部4の上下方向の中心よりも下側に設ける構成であれば良い。
【0037】
(底部)
図1に示すように、底部5は、周壁22と底壁23とを備えて構成されている。周壁22は、底壁23の周縁から上方に拡開するように立ち上がる円筒状の部分である。底壁23は正円の円形形状を有し、その外周縁に配置される輪状の接触部24と、接触部24の内縁から底壁23の円の中心に向かってなだらかに円錐状に盛りあがる円錐部25と、円錐部25の円の中心部に形成される上方に突出する円形の窪み26とを備えて構成されている。尚、ボトル1を平らな机等の上に立てて置く場合、接触部24が机等と接する。
【0038】
図6に示すように、底壁23の窪み26から周壁22にわたる溝である縦凹部27が、底壁23の窪み26から放射状に周方向に等間隔で8箇所に設けられている。さらに、円錐部25の外縁から周壁22にわたる溝である小縦凹部28が、隣り合う縦凹部27の間に位置するように周方向に等間隔で8箇所に設けられている。
【0039】
縦凹部27及び小縦凹部28は、底部5の強度を補強する補強リブとして機能する。またこれらの縦凹部27及び小縦凹部28は、ボトル1の成形後にその内側を洗浄する際、洗浄液が縦凹部27及び小縦凹部28を伝って底部5の全体に満遍なくいきわたるように洗浄液を誘導する機能を有しており、底部5の洗浄性能を向上させるものである。
【0040】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態のボトル1における各構成部分の形状等については、上述の実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて任意に変更して良い。
(2)上述の実施形態においては、ボトル1の正面視において第1〜第3波状凹部11,12,13が水平に設けられているが、この構成に限定されるものではなく、他にも例えば、図7に示すように、ボトル1の正面視において第1〜第3波状凹部11,12,13を傾斜させた状態で設けるように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の樹脂製容器は、水、緑茶、ウーロン茶、果汁等の非炭酸飲料に限らず、炭酸飲料やソース等の食品を充填する容器としても用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ボトル
2 口部
3 肩部
4 胴部
5 底部
10 クッション部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップが着脱自在な口部と、口部に連設される肩部と、肩部に連設される胴部と、胴部に連設して最下部に位置する底部とを備える樹脂製容器において、
前記胴部の上下方向の中心よりも下側に、径方向外側ほど幅広となる溝を全周にわたって有する上下方向に弾性変形可能なクッション部を備える樹脂製容器。
【請求項2】
前記クッション部が、前記胴部の下端部分に位置する請求項1に記載の樹脂製容器。
【請求項3】
前記クッション部が、前記径方向外側ほど幅広となる溝の上下のそれぞれに、全周にわたる別の溝を1以上備える請求項1又は2に記載の樹脂製容器。
【請求項4】
前記径方向外側ほど幅広となる溝の深さが、前記別の溝の深さよりも深く構成される請求項3に記載の樹脂製容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−126449(P2012−126449A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282306(P2010−282306)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】