説明

樹脂製U字溝

【課題】水密性を確保しつつ、湧水処理が可能で、また、施工も容易な樹脂製U字溝を提供する。
【解決手段】断面U字状をなす内側壁体12と、内側壁体12の外壁面に沿って設けられ、内側壁体12の長手方向に連続して波打つ波状をなし、波の谷部14a内壁が内側壁体12の外壁と一体に溶着した外側壁体14とからなり、U字溝の底部の一部位における外側壁体14の谷部14a内壁が内側壁体12の外壁と溶着しておらず、もって、内側壁体12の外壁面と外側壁体14の内壁面との間に、U字溝の長手方向に連通して延びると共に、外側壁体14の山部14b空間内に連通するドレン通路16が形成され、外側壁体14の山部14bに通水孔18が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製U字溝に関する。
【背景技術】
【0002】
U字溝の底板や側壁に貫通孔を設けて、U字溝内に集水した水を貫通孔を通じて積極的に土中に浸透させる透水性U字溝が知られている(特開平7−252869号)。
また樹脂製U字溝も知られている。この樹脂製U字溝の場合には、コンクリート製U字溝と比べて軽量であることから、土圧や浮力により浮き上がりやすいという問題点がある。このため、U字溝の周囲の水(湧水や、地盤表面より浸透した水)を別途排水するため、U字溝の周りに孔あきパイプを敷設したりすることが一般的に行われている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−252869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、U字溝の周囲に孔あきパイプ等を配設することは、それだけ工数が増し、厄介で、またコスト高となる課題がある。また、樹脂製のU字溝の側壁に貫通孔を設けて、U字溝の周囲の水をU字溝内に導入することで、ある程度の水の排水も可能となるが、逆に、水密性が損なわれるという課題がある。
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、U字溝内側の水密性を確保しつつ、湧水処理が可能で、また、施工も容易な樹脂製U字溝を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る樹脂製U字溝は、2重壁構造の樹脂製U字溝であって、断面U字状をなす内側壁体と、該内側壁体の外壁面に沿って設けられ、内側壁体の長手方向に連続して波打つ波状をなし、波の谷部内壁が内側壁体の外壁と一体に溶着した外側壁体とからなる樹脂製U字溝において、該U字溝の底部の一部位における前記外側壁体の谷部内壁が内側壁体の外壁と溶着しておらず、もって、前記内側壁体の外壁面と外側壁体の内壁面との間に、U字溝の長手方向に連通して延びると共に、前記外側壁体の山部空間内に連通するドレン通路が形成され、前記外側壁体の山部に通水孔が形成されていることを特徴とする。
また、前記外側壁体の山部と谷部の断面形状が台形状をなすことを特徴とする。
前記通水孔を、U字溝の両側壁の山部の上部と下部に開口すると好適である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外側壁体の山部に、山部空間内に連通する通水孔を設けたことによって、U字溝を敷設した際、湧水や地盤表面からU字溝の側部に回り込んだ水を底部にあるドレン通路に導き、排水することが可能となる。ドレン通路は、U字溝の底部内に一体的に設けられていることから、複数のU字溝を接続しながら敷設することにより、同時に、長いドレン通路を形成でき、従来のように別途孔あきパイプを敷設する必要がないので、工数を低減でき、コストの削減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は樹脂製U字溝10の斜視説明図である。
U字溝10は、ポリエチレン樹脂を押し出し成形することによって形成される。製造方法については後記する。
【0008】
U字溝10は、2重壁構造の樹脂製U字溝であって、断面U字状をなす内側壁体12と、内側壁体12の外壁面に沿って設けられ、内側壁体12の長手方向に連続して波打つ波状をなし、波の谷部14a内壁が内側壁体12の外壁と溶着した外側壁体14とからなる。
【0009】
外側壁体14の波の形状は、図示の例ではサインカーブ状の連続した波であるが、これに限定されるものではなく、断面台形状の連続した波形状のものであってもよい。
内側壁体12は、平板状の壁板により断面U字状に形成され、これ自体では強度がないが、波状をなす外側壁体14の谷部14aが内側壁体12に一体に溶着していることにより、U字溝10全体の必要な強度が得られている。
【0010】
そして、U字溝10は、U字溝10の底部の一部位における外側壁体14の谷部14a内壁が内側壁体12の外壁と溶着しておらず(図1の端面参照)、もって、内側壁体12の外壁面と外側壁体14の内壁面との間に、U字溝10の長手方向に連通して延びると共に、外側壁体14の山部14b空間内に連通するドレン通路16が形成されている。
また、外側壁体14の山部14bに通水孔18が形成されている。
【0011】
通水孔18は、必ずしも山部14bの頂部でなくともよい。すなわち、通水孔18は、山部14b空間内に連通していればよく、位置は特に限定されない。
また、通水孔18は、U字溝10の両側壁の各山部14bの上部と下部にそれぞれ設けるのが好ましい。また、U字溝10の底部における山部14bに通水孔18を設けても良い。
【0012】
上記のように、外側壁体14の山部14bに、山部14b空間内に連通する通水孔18を設けたことによって、U字溝10を敷設した際、湧水や地盤表面からU字溝10の側部に回り込んだ水を底部にあるドレン通路16に導き、排水することが可能となる。
【0013】
ドレン通路16は、U字溝10の底部内に一体的に設けられていることから、複数のU字溝10を接続しながら敷設することにより、同時に、長いドレン通路18を形成でき、従来のように別途孔あきパイプを敷設する必要がないので、工数を低減でき、コストの削減が可能となる。
【0014】
図2は、U字溝10の製造装置および製造方法を示す説明図である。
押出機20の内側ダイ22および外側ダイ24から、溶融樹脂が2重パイプ状に押し出される。
内側ダイ22から押し出された溶融樹脂は、内側ダイ22の前方に配設された内部冷却金型26の外周面上に沿って先方に送り出され、冷却される。この内部冷却金型26の内部には冷却水通路(図示せず)が形成され、冷却水が供給される。内部冷却金型26はU字溝10の内側壁体12を成形するものであるが、断面が四角形状をなし、四角形状に形成された成形体が2つ割りにされることで、2つの内側壁体12が形成される。
【0015】
外側ダイ24、内部冷却金型26の外側を囲んで外部成形金型28が配設されている。
外部成形金型28の内壁面は、U字溝10の外側壁体14の波状形態を付与するため、波状に形成されている。
そして、外部成形金型28の、外側壁体14の波の山部14bを形成する部位、したがって、外部成形金型28でみれば内壁面の谷部に該当する部位に、複数の吸引孔29が設けられている。
【0016】
また、外部成形金型28を覆って吸引筒部30が設けられ、この吸引筒部30の適所に吸引孔32が設けられ、この吸引孔32から吸引筒部30内の空気を吸引することによって、吸引孔29から、外部成形金型28の内壁面の谷部空間内の空気を外方に吸引可能になっている。
【0017】
外部成形金型28は、図3に示すように、複数の金型28が連接された構造となっていて、各金型28は、水平左右方向に型開き可能な、2つの割り金型28a、28bに形成されている。各一群の割り金型群28a、および割り金型群28bは、図示しないチエーン機構により、図3に破線で示す循環ラインを循環可能となっている。
【0018】
そして、各一群の割り金型28a、割り金型28bは、図2に示す、外側ダイ24および内部冷却金型26を囲む部位を通過するときは、割り金型28a、28bが型閉じし、それ以外の部位では型開きの状態となるようになっている。この外部成形金型28内にも適宜機構の冷却水通路(図示せず)が形成され、溶融樹脂を冷却可能となっている。
【0019】
外側ダイ24からパイプ状に押し出された溶融樹脂は、型閉じしている外側成形金型28の内壁面に沿って進行する。そして、図2に示すように、外側成形金型28の内壁面の谷部空間が溶融樹脂によって密閉されると、この密閉空間内の空気が吸引孔29、32から吸引、排除され、これにより溶融樹脂が外側成形金型28の内壁面に密着され、これにより、溶融樹脂に波形が付与される。
【0020】
そして、溶融樹脂が内部冷却金型26の部位にまで進行してくると、外側成形金型28の内壁面の山部31(外側壁体14の谷部14aに相当するところ)によって、外側溶融樹脂が内側溶融樹脂に押圧され、これによって両溶融樹脂はこの部位で一体に溶着される。これによって、2重壁状の樹脂成形体34となる。この樹脂成形体34は、図3に示すように、外側成形金型28が循環移動されることによって、順次前方に送り出されるのである。
【0021】
このようにして、外側壁体14の谷部14aが、内側壁体12に溶着されるのであるが、本実施の形態では、図3に示すように、外側壁体14の谷部14aを内側壁体12に押圧することとなる、外部成形金型28の内壁面の山部31となる部位の一部31a(U字溝10の底部側となる部位)が切り欠かれ、これによって、当該切り欠かれた山部の部位31aでは外側溶融樹脂が内側溶融樹脂に押圧されず、したがってこの部位が溶着されず、これにより、前記のドレン通路16が形成されるのである。
【0022】
上記のようにして得られた樹脂成形体34を、図4に示す位置で2つに分割することで、2つのU字溝10を得ることができる。なお、通水孔18は、樹脂成形体34を得た後、適宜ドリル等で孔開けして形成する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】U字溝の斜視説明図である。
【図2】U字溝の成形金型およびU字溝の製造方法を示す説明図である。
【図3】外部成形金型の2つの割り金型の動きを示す説明図である。
【図4】樹脂成形体の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
10 U字溝
12 内側壁体
14 外側壁体
14a 谷部
14b 山部
16 ドレン通路
18 通水孔
20 押出機
22 内側ダイ
24 外側ダイ
26 内部冷却金型
28 外部成形金型
29 吸引孔
30 吸引筒体
31 山部
32 吸引孔
34 樹脂成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重壁構造の樹脂製U字溝であって、断面U字状をなす内側壁体と、該内側壁体の外壁面に沿って設けられ、内側壁体の長手方向に連続して波打つ波状をなし、波の谷部内壁が内側壁体の外壁と一体に溶着した外側壁体とからなる樹脂製U字溝において、
該U字溝の底部の一部位における前記外側壁体の谷部内壁が内側壁体の外壁と溶着しておらず、もって、前記内側壁体の外壁面と外側壁体の内壁面との間に、U字溝の長手方向に連通して延びると共に、前記外側壁体の山部空間内に連通するドレン通路が形成され、
前記外側壁体の山部に通水孔が形成されていることを特徴とする樹脂製U字溝。
【請求項2】
前記外側壁体の山部と谷部の断面形状が台形状をなすことを特徴とする請求項1記載の樹脂製U字溝。
【請求項3】
前記通水孔が、U字溝の両側壁の山部の上部と下部に開口されていることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂製U字溝。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−332729(P2007−332729A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168839(P2006−168839)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(390034795)鳥居化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】