橋桁の支承装置の取替え工法と孔内用仮受けジャッキ
【課題】橋脚の支承装置の取替え作業に際して、旧支承装置を解体撤去し新支承装置の設置固定が完了するまでには、一般に数十日から数ヶ月と長期間を必要とし、その間、大掛かりな仮受け部材の製作と設置が必要となり多くのコストと手間を要した。
【解決手段】支承装置の取替え作業に先立って、支承装置の下の部分の橋脚を水平方向に削孔し、該削孔内に孔内用仮受けジャッキを設置する準備工程と、仮受けジャッキを使って橋桁を仮受けした後に、前記削孔内に設置した孔内用仮受けジャッキを撤去し、次に該削孔穴の上部のコンクリート躯体と旧支承装置を撤去する工程と、前記の撤去したコンクリート躯体部分に、新支承装置を設置し硬化材を充填して該支承装置と橋脚上部とを固定した後、前記仮受けジャッキを撤去する工程とを具えた。
【解決手段】支承装置の取替え作業に先立って、支承装置の下の部分の橋脚を水平方向に削孔し、該削孔内に孔内用仮受けジャッキを設置する準備工程と、仮受けジャッキを使って橋桁を仮受けした後に、前記削孔内に設置した孔内用仮受けジャッキを撤去し、次に該削孔穴の上部のコンクリート躯体と旧支承装置を撤去する工程と、前記の撤去したコンクリート躯体部分に、新支承装置を設置し硬化材を充填して該支承装置と橋脚上部とを固定した後、前記仮受けジャッキを撤去する工程とを具えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の橋脚と橋桁との間に設けた、橋桁を支持するための支承装置の取替え工法と、該取替え工法に適用される孔内用仮受けジャッキに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道橋や道路橋などの橋桁は、橋脚上面に設けた支承装置で支持されているが、長年の使用によって耐用年数に達している場合や、地震に備えて耐震型の支承装置に交換する場合など、全国の橋で支承装置の取替え作業が行われており、これら取替え作業は今後益々増大すると予想される。
【0003】
橋脚上面に設けられた支承装置を取替える場合、一般に仮受けジャッキを使って一旦橋桁を持ち上げて支承装置から浮かした状態で、仮受け材を使用して橋桁を仮固定した後、支承装置を撤去し、その後新しい支承装置を固定設置する方法や、橋脚に鋼板や型鋼を組み合わせたブラケットを、例えば1橋脚に4基程度取付け、このブラケット上にジャッキを設置して橋桁の仮受けを行う方法などが行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、橋脚の支承装置の取替え作業に際して、旧支承装置を解体撤去し、新支承装置の設置固定が完了するまでには、一般に数十日から数ヶ月と長期間を必要とし、その間は橋桁を若干持上げて作業することになるが、数百トンもある橋桁を仮受けジャッキだけで長期間持上げて支持することは不可能であるため、通常は、橋桁を一旦仮受けジャッキで持上げて支承装置から浮かせた後、鋼材等を加工した仮受け部材を橋脚上面と橋桁下面の間にかませて橋桁荷重を受換えてから、仮受けジャッキを撤去する方法が行われるが、大掛かりな仮受け部材の製作と設置が必要となり多くのコストと手間を要した。
【0005】
又、橋脚上面と橋桁下面の間に仮受け部材を設置するスペースが無いケースもあり、その場合には橋脚の近傍に仮受け用のベントを設置する方法が行われるが、そのためのコストと手間が余計に必要となるのみならず、ベントを設置するスペースが無い場合もある。
【0006】
さらに、前述の鋼板や型鋼を組み合わせた仮受け用のブラケットを橋脚に取付ける方法では、橋脚に削孔し、この孔にブラケットを固定するためのアンカーボルトを埋めこんでいたが、この方法では橋脚に削孔するため、橋脚を損傷することになる。又、削孔に際し、橋脚内部の鉄筋との干渉のため所定の位置に削孔できないことがあるが、その場合にはブラケットの取り付け穴を現場で加工する必要が生じるなどの問題があった。
【0007】
一方、いずれの方法においても、支承装置の下部、即ち橋脚上面のコンクリート躯体が劣化している場合が多く見受けられ、その場合にはこれらを除去した後に新たに無収縮モルタルやコンクリートなどの高強度硬化材を打設する必要があるが、橋桁と橋脚の間の僅かな空間において支承装置の下部のコンクリート躯体をハツリ取るのは、作業スペースやハツリ装置の設置スペースが狭隘なことから、極めて困難な作業であった。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであり、上記のような問題点を解消し、作業性に優れ、設置場所などの適用条件の制約が少なく、短い期間で施工が可能な橋桁の支承装置の取替え工法と、孔内用仮受けジャッキを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の橋桁の支承装置の取替え工法は、請求項1に記載のように、橋脚上に設けた橋桁を支持する支承装置の取替え作業に先立って、支承装置の下の部分の橋脚上部を水平方向に削孔し、該削孔内に孔内用仮受けジャッキを設置する準備工程と、仮受けジャッキを使って橋桁を仮受けした後に、前記削孔内に設置した孔内用仮受けジャッキを撤去し、次に該削孔穴より上部のコンクリート躯体と旧支承装置を撤去する工程と、前記の撤去したコンクリート躯体部分に、新支承装置を設置し硬化材を充填して該支承装置と橋脚上部とを固定した後、前記仮受けジャッキを撤去する工程と、を具える事を特徴とする橋桁の支承装置の取替え工法である。
【0010】
上記のようにすれば、橋脚上に設けた橋桁を支持する支承装置の取替えに先立って、予め支承装置の下の部分の橋脚部を水平方向に削孔し、該削孔内に孔内用仮受けジャッキを設置する事前準備作業を、橋上の交通を遮断することなく行なうことが可能となり、支承装置の取替えに際しては、支承装置の近傍で一般的に使用する仮受けジャッキを使って橋桁を一旦仮受けし、次に前記削孔内に設置した孔内用仮受けジャッキを撤去すれば、削孔穴を利用して橋脚上面部のコンクリート躯体と旧支承装置を容易且つ短時間に除去することが可能となることから、大掛かりな仮受け材を使って長期的に仮受けを行う必要が無くなる。
【0011】
また、本発明に係る孔内用仮受けジャッキは、傾斜した接触面を備えた孔内面保持部材が上下方向に設置され、該接触面の傾斜に一致する接触面を備えた楔部材を、前記孔内面保持部材に対して、孔軸方向に遠隔操作で進退させることによって、前記孔内面保持部材が上下方向に進退することを特徴とする、橋桁の支承装置の取替え工法に適用される孔内用仮受けジャッキである。
【0012】
このようなジャッキにすれば、簡単な構造で大きな荷重を受け持つことが可能となり、又遠隔操作によってジャッキ本体部だけを削孔内の必要な位置に自由に設置して上部の荷重を仮受けすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記のとおり、本発明の橋桁の支承部交換方法と孔内用仮受けジャッキを適用すれば、橋上の交通を遮断することなく、橋脚上面部のコンクリート躯体と旧支承装置を容易且つ短時間に除去して新支承装置に取替えることが可能となり、従来のような大掛かりな仮受け材を使って長期的に仮受けを行う必要が無く、作業性が大幅に向上し、コストダウンすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の好ましい一実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1は一般的な橋脚1、橋桁2、並びに支承装置3を示す側面図であり、図2は同正面図である。尚、本図における橋桁2は鋼製桁の例を示しているが、コンクリート製であっても良い。
【0015】
図3から図8は、本発明に係る橋桁の支承装置の取替え工法を概略的に示す図であって、最初に、図3に示すように、支承装置の下部を水平方向に削孔して、削孔穴4を設けた後、直ちに孔内用仮受けジャッキAを挿入する。尚、孔内用仮受けジャッキAの詳細については図9から図13で詳述する。
【0016】
次に、図4に示すように、前記孔内用仮受けジャッキAを支承装置3の直下の位置まで挿入させた後、ジャッキAに内蔵された後述の孔内面保持部材101を拡張させ、孔の内壁面に当接させて上部荷重、即ち支承装置3の仮受けを行う。
【0017】
引き続いて、図5に示すように、支承装置3の近傍下部のコンクリートを除去する範囲をカバーするように、複数箇所を順次削孔しながら、前記と同様に孔内面保持部材101を拡張させ、孔壁内面に当接させて仮受けを行う。尚、図5では削孔穴が接するように連続して5箇所に設けているが、多少の間隔を設けて削孔しても良い。
【0018】
このようにすれば、支承部3の大きさに較べて比較的小さな口径の削孔穴を設けると同時に、削孔穴内で仮受けを行うため、別に新たな仮受けを行わなくとも良く、大掛かりな仮受け材などが不用であり簡便である。また、例えば鉄道橋の場合には終電から始発までの短時間しか作業ができないことが多いが、この作業は支承装置3を取替える本作業に先立って、予め行っておくことが可能であり都合が良い。
【0019】
次に図9から図13において、孔内用仮受けジャッキAについて詳述する。図9は孔内用仮受けジャッキAの軸方向の断面図であり、図10は図9におけるa−a断面図である。図9において、101は孔内面保持部材であって、上下方向に対称に設置されている。 図11は該孔内面保持部材101の三面図であり、(a)図は正面、(b)図は側面、(c)図はb−b断面を示している。
【0020】
図11において、101aは孔内面当接部であり、孔内面に沿うようなアール面である。101bは傾斜面部であり、後述の楔部材102の傾斜面に一致する。101cは側部ガイドであって、楔部材102の側面をガイドする。101dは伸縮材を設置する溝であって、後述のゴムバンドのような伸縮材110を設置する。
【0021】
図9に戻って説明すると、上下方向に対称に設置された孔内面保持部材101の間に、楔部材102が設置され、その中心軸部にネジジャッキ103がネジ込まれている。ネジジャッキ103に設けた鍔部103aは後部固定部材105と後部固定材カバー106によって軸方向の動きが規制されており、ネジジャッキ103に設けた面取り部103bを、ソケットレンチなどを使って回転させると、後部固定部材105に対して楔部材102が進退する。
【0022】
104は前部固定部材であって、連結ロッド107によって後部固定部材105と剛結されている。前部固定部材104に設けられたガイド部104aと後部固定部材105に設けられたガイド部105aは、前述の孔内面保持部材101に設けた側部ガイド101cをガイドする。即ち、孔内面保持部材101の動きを上下方向のみに規制する。
【0023】
108はハンドルであって、ピン部108aが後部固定材カバー106に設けたピン嵌め込み穴106aに嵌りあう。109はロッドであって、ソケット部109aがネジジャッキ103に設けた面取り部103bに嵌りあう。ハンドル108を反力として、ロッド109に設けた面取り部109bを、レンチなどを使用して回転させるとネジジャッキ103が回転して、楔部材102が進退し、それに伴い孔内面保持部材101が進退する。尚、図示のとおり、ハンドル108とロッド109の長さを孔口までよりも長くし、且つ着脱式にすれば、1セットのハンドルとロッドで複数個の孔内用仮受けジャッキAを操作できて都合が良い。
【0024】
110は、エンドレスのゴムバンドからなる伸縮材であって、孔内面保持部材101に備えた溝101dに嵌っており、孔内面保持部材101がバラバラに分解しないように、対抗する孔内面保持部材101同士を引っ張り合っている。尚、伸縮材としてスプリングなどを使って、孔内面保持部材101同士を引っ張り合ってもよい。
【0025】
孔内用仮受けジャッキAは、前述のような構造にすることで、上下方向の寸法を小さくする事が可能となり小径穴に適用できると共に、楔による倍力効果によって孔内面保持部材101を強力に孔壁内面に押し付けることができ、確実に穴の上部荷重を仮受けすることができる。尚、本例では楔部材の進退をネジジャッキで行う例を示したが、例えば油圧ジャッキなどを使って進退させても良く、多少離れた位置から遠隔操作的に楔部材を進退させることができれば特には制約されない。
【0026】
図12は、孔内用仮受けジャッキAの楔部材102を、ネジジャッキの操作をして前方方向に移動させて、孔内面保持部材101を上下方向に進出させ、ハンドル108とロッド109を取外した状態を示している。
【0027】
図13は、図9における孔内用仮受けジャッキAの概観図であり、112は孔内用仮受けジャッキAを引き戻すためのワイヤーである。
【0028】
図14は、孔内用仮受けジャッキAを削孔内で仮受けする手順を示す図であり、(a)図は、孔内面保持部材101を縮小させた状態で、孔内の所定の位置まで押し込んでいる状態を示し、(b)図は、ハンドル108を反力として、ロッド109に取り付けたレバー111を操作して、ネジジャッキ103を回転させ、孔内面保持部材101を上下方向に進出させて、孔壁内面に当接させた状態を示し、(c)図は、前記のハンドル、ロッド、レバーを取外す状態を示している。尚、孔内用仮受けジャッキAを取外す際は、上記説明と逆の手順で行う。
【0029】
前記のとおり、孔内用仮受けジャッキAを使用すれば、簡単な作業で簡便に孔内の自由な位置で仮受けを行ったり、取外したりすることができる。
【0030】
次に、再び交換作業の工程について、[0018]における説明の続きを、図6を使って説明する。5は、橋桁を短時間に限って仮受けするための仮受けジャッキであり、取替える支承装置3の近傍に設置して橋桁を仮受けする。次に削孔穴4内において仮受けしている孔内用仮受けジャッキAを、前述の手順で取外す。尚、ジャッキAを取外す前に、削孔穴内で一旦僅かにジャッキを拡張させれば、コンクリート躯体に水平方向のクラックを生じさせることができ、後述のコンクリートの撤去作業が一層容易になる。
【0031】
次に、図7に示すように、削孔穴4の上部、即ち支承装置3の下のコンクリート躯体部6を、ハツリ取って撤去すると同時に旧支承装置3も撤去するが、予め複数本の削孔穴4が設けられていることから、コンクリート躯体部6をハツリ取って撤去する作業は、極めて簡単且つ短時間に行うことができる。因みに、本発明の削孔穴4を設けずに、ハツリ取る場合には、作業スペースが限られていることから、小形のハツリ機しか使用できないことが多く、作業性や能率も悪い上に、支承装置直下はハツリ機を使用しても容易には全体をハツリ取ることがでず、長時間にわたる困難な作業を必要とする。
【0032】
前記のコンクリート躯体部6をハツリ取って撤去した後は、図8に示すように、新たな支承装置3を取り付け、次にハツリ取った箇所に無収縮・急硬化性モルタルやコンクリートなどの高強度硬化材を充填する。8はアンカーボルトであり、予め必要な数を設置しておくと良い。尚、必要に応じて鉄筋や型枠などを充填に先立って設置しても良い。
【0033】
前記にて充填した硬化材が、所定の強度まで硬化すれば、前述の仮受けジャッキ5を撤去し、一連の交換作業が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一般的な橋脚、橋桁、支承部を示す側面図である。
【図2】同、正面図である。
【図3】本発明に係る支承部の交換方法の内、削孔穴に孔内用仮受けジャッキを挿入している状態を示す側面の断面図である。
【図4】同、孔内用仮受けジャッキを使って仮受けした状態を示す側面の断面図である。
【図5】同、正面図である。
【図6】同、仮受けジャッキを設置し、孔内用仮受けジャッキを除去した状態を示す正面図である。
【図7】同、コンクリート躯体部6を、ハツリ取って撤去した状態を示す正面図である。
【図8】同、硬化材を充填した状態を示す側面の断面図である。
【図9】孔内用仮受けジャッキAの軸方向の断面図である。
【図10】図9におけるa−a断面図である。
【図11】孔内面保持部材101の三面図である。
【図12】図9における孔内用仮受けジャッキAを、上下方向に進出させた状態を示す図である。
【図13】図9における孔内用仮受けジャッキAの概観図である。
【図14】孔内用仮受けジャッキAを、削孔内で仮受けする手順を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
A 孔内用仮受けジャッキ
1 橋脚
2 橋桁
3 支承部
4 削孔穴
5 仮受けジャッキ
6 コンクリート躯体除去部
7 硬化材
8 アンカーボルト
101 孔内面保持部材
102 楔部材
103 ネジジャッキ
104 前部固定部材
105 後部固定部材
106 後部固定材カバー
107 連結ロッド
108 ハンドル
109 ロッド
110 伸縮材
111 レバー
112 ワイヤー
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の橋脚と橋桁との間に設けた、橋桁を支持するための支承装置の取替え工法と、該取替え工法に適用される孔内用仮受けジャッキに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道橋や道路橋などの橋桁は、橋脚上面に設けた支承装置で支持されているが、長年の使用によって耐用年数に達している場合や、地震に備えて耐震型の支承装置に交換する場合など、全国の橋で支承装置の取替え作業が行われており、これら取替え作業は今後益々増大すると予想される。
【0003】
橋脚上面に設けられた支承装置を取替える場合、一般に仮受けジャッキを使って一旦橋桁を持ち上げて支承装置から浮かした状態で、仮受け材を使用して橋桁を仮固定した後、支承装置を撤去し、その後新しい支承装置を固定設置する方法や、橋脚に鋼板や型鋼を組み合わせたブラケットを、例えば1橋脚に4基程度取付け、このブラケット上にジャッキを設置して橋桁の仮受けを行う方法などが行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、橋脚の支承装置の取替え作業に際して、旧支承装置を解体撤去し、新支承装置の設置固定が完了するまでには、一般に数十日から数ヶ月と長期間を必要とし、その間は橋桁を若干持上げて作業することになるが、数百トンもある橋桁を仮受けジャッキだけで長期間持上げて支持することは不可能であるため、通常は、橋桁を一旦仮受けジャッキで持上げて支承装置から浮かせた後、鋼材等を加工した仮受け部材を橋脚上面と橋桁下面の間にかませて橋桁荷重を受換えてから、仮受けジャッキを撤去する方法が行われるが、大掛かりな仮受け部材の製作と設置が必要となり多くのコストと手間を要した。
【0005】
又、橋脚上面と橋桁下面の間に仮受け部材を設置するスペースが無いケースもあり、その場合には橋脚の近傍に仮受け用のベントを設置する方法が行われるが、そのためのコストと手間が余計に必要となるのみならず、ベントを設置するスペースが無い場合もある。
【0006】
さらに、前述の鋼板や型鋼を組み合わせた仮受け用のブラケットを橋脚に取付ける方法では、橋脚に削孔し、この孔にブラケットを固定するためのアンカーボルトを埋めこんでいたが、この方法では橋脚に削孔するため、橋脚を損傷することになる。又、削孔に際し、橋脚内部の鉄筋との干渉のため所定の位置に削孔できないことがあるが、その場合にはブラケットの取り付け穴を現場で加工する必要が生じるなどの問題があった。
【0007】
一方、いずれの方法においても、支承装置の下部、即ち橋脚上面のコンクリート躯体が劣化している場合が多く見受けられ、その場合にはこれらを除去した後に新たに無収縮モルタルやコンクリートなどの高強度硬化材を打設する必要があるが、橋桁と橋脚の間の僅かな空間において支承装置の下部のコンクリート躯体をハツリ取るのは、作業スペースやハツリ装置の設置スペースが狭隘なことから、極めて困難な作業であった。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであり、上記のような問題点を解消し、作業性に優れ、設置場所などの適用条件の制約が少なく、短い期間で施工が可能な橋桁の支承装置の取替え工法と、孔内用仮受けジャッキを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の橋桁の支承装置の取替え工法は、請求項1に記載のように、橋脚上に設けた橋桁を支持する支承装置の取替え作業に先立って、支承装置の下の部分の橋脚上部を水平方向に削孔し、該削孔内に孔内用仮受けジャッキを設置する準備工程と、仮受けジャッキを使って橋桁を仮受けした後に、前記削孔内に設置した孔内用仮受けジャッキを撤去し、次に該削孔穴より上部のコンクリート躯体と旧支承装置を撤去する工程と、前記の撤去したコンクリート躯体部分に、新支承装置を設置し硬化材を充填して該支承装置と橋脚上部とを固定した後、前記仮受けジャッキを撤去する工程と、を具える事を特徴とする橋桁の支承装置の取替え工法である。
【0010】
上記のようにすれば、橋脚上に設けた橋桁を支持する支承装置の取替えに先立って、予め支承装置の下の部分の橋脚部を水平方向に削孔し、該削孔内に孔内用仮受けジャッキを設置する事前準備作業を、橋上の交通を遮断することなく行なうことが可能となり、支承装置の取替えに際しては、支承装置の近傍で一般的に使用する仮受けジャッキを使って橋桁を一旦仮受けし、次に前記削孔内に設置した孔内用仮受けジャッキを撤去すれば、削孔穴を利用して橋脚上面部のコンクリート躯体と旧支承装置を容易且つ短時間に除去することが可能となることから、大掛かりな仮受け材を使って長期的に仮受けを行う必要が無くなる。
【0011】
また、本発明に係る孔内用仮受けジャッキは、傾斜した接触面を備えた孔内面保持部材が上下方向に設置され、該接触面の傾斜に一致する接触面を備えた楔部材を、前記孔内面保持部材に対して、孔軸方向に遠隔操作で進退させることによって、前記孔内面保持部材が上下方向に進退することを特徴とする、橋桁の支承装置の取替え工法に適用される孔内用仮受けジャッキである。
【0012】
このようなジャッキにすれば、簡単な構造で大きな荷重を受け持つことが可能となり、又遠隔操作によってジャッキ本体部だけを削孔内の必要な位置に自由に設置して上部の荷重を仮受けすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記のとおり、本発明の橋桁の支承部交換方法と孔内用仮受けジャッキを適用すれば、橋上の交通を遮断することなく、橋脚上面部のコンクリート躯体と旧支承装置を容易且つ短時間に除去して新支承装置に取替えることが可能となり、従来のような大掛かりな仮受け材を使って長期的に仮受けを行う必要が無く、作業性が大幅に向上し、コストダウンすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の好ましい一実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1は一般的な橋脚1、橋桁2、並びに支承装置3を示す側面図であり、図2は同正面図である。尚、本図における橋桁2は鋼製桁の例を示しているが、コンクリート製であっても良い。
【0015】
図3から図8は、本発明に係る橋桁の支承装置の取替え工法を概略的に示す図であって、最初に、図3に示すように、支承装置の下部を水平方向に削孔して、削孔穴4を設けた後、直ちに孔内用仮受けジャッキAを挿入する。尚、孔内用仮受けジャッキAの詳細については図9から図13で詳述する。
【0016】
次に、図4に示すように、前記孔内用仮受けジャッキAを支承装置3の直下の位置まで挿入させた後、ジャッキAに内蔵された後述の孔内面保持部材101を拡張させ、孔の内壁面に当接させて上部荷重、即ち支承装置3の仮受けを行う。
【0017】
引き続いて、図5に示すように、支承装置3の近傍下部のコンクリートを除去する範囲をカバーするように、複数箇所を順次削孔しながら、前記と同様に孔内面保持部材101を拡張させ、孔壁内面に当接させて仮受けを行う。尚、図5では削孔穴が接するように連続して5箇所に設けているが、多少の間隔を設けて削孔しても良い。
【0018】
このようにすれば、支承部3の大きさに較べて比較的小さな口径の削孔穴を設けると同時に、削孔穴内で仮受けを行うため、別に新たな仮受けを行わなくとも良く、大掛かりな仮受け材などが不用であり簡便である。また、例えば鉄道橋の場合には終電から始発までの短時間しか作業ができないことが多いが、この作業は支承装置3を取替える本作業に先立って、予め行っておくことが可能であり都合が良い。
【0019】
次に図9から図13において、孔内用仮受けジャッキAについて詳述する。図9は孔内用仮受けジャッキAの軸方向の断面図であり、図10は図9におけるa−a断面図である。図9において、101は孔内面保持部材であって、上下方向に対称に設置されている。 図11は該孔内面保持部材101の三面図であり、(a)図は正面、(b)図は側面、(c)図はb−b断面を示している。
【0020】
図11において、101aは孔内面当接部であり、孔内面に沿うようなアール面である。101bは傾斜面部であり、後述の楔部材102の傾斜面に一致する。101cは側部ガイドであって、楔部材102の側面をガイドする。101dは伸縮材を設置する溝であって、後述のゴムバンドのような伸縮材110を設置する。
【0021】
図9に戻って説明すると、上下方向に対称に設置された孔内面保持部材101の間に、楔部材102が設置され、その中心軸部にネジジャッキ103がネジ込まれている。ネジジャッキ103に設けた鍔部103aは後部固定部材105と後部固定材カバー106によって軸方向の動きが規制されており、ネジジャッキ103に設けた面取り部103bを、ソケットレンチなどを使って回転させると、後部固定部材105に対して楔部材102が進退する。
【0022】
104は前部固定部材であって、連結ロッド107によって後部固定部材105と剛結されている。前部固定部材104に設けられたガイド部104aと後部固定部材105に設けられたガイド部105aは、前述の孔内面保持部材101に設けた側部ガイド101cをガイドする。即ち、孔内面保持部材101の動きを上下方向のみに規制する。
【0023】
108はハンドルであって、ピン部108aが後部固定材カバー106に設けたピン嵌め込み穴106aに嵌りあう。109はロッドであって、ソケット部109aがネジジャッキ103に設けた面取り部103bに嵌りあう。ハンドル108を反力として、ロッド109に設けた面取り部109bを、レンチなどを使用して回転させるとネジジャッキ103が回転して、楔部材102が進退し、それに伴い孔内面保持部材101が進退する。尚、図示のとおり、ハンドル108とロッド109の長さを孔口までよりも長くし、且つ着脱式にすれば、1セットのハンドルとロッドで複数個の孔内用仮受けジャッキAを操作できて都合が良い。
【0024】
110は、エンドレスのゴムバンドからなる伸縮材であって、孔内面保持部材101に備えた溝101dに嵌っており、孔内面保持部材101がバラバラに分解しないように、対抗する孔内面保持部材101同士を引っ張り合っている。尚、伸縮材としてスプリングなどを使って、孔内面保持部材101同士を引っ張り合ってもよい。
【0025】
孔内用仮受けジャッキAは、前述のような構造にすることで、上下方向の寸法を小さくする事が可能となり小径穴に適用できると共に、楔による倍力効果によって孔内面保持部材101を強力に孔壁内面に押し付けることができ、確実に穴の上部荷重を仮受けすることができる。尚、本例では楔部材の進退をネジジャッキで行う例を示したが、例えば油圧ジャッキなどを使って進退させても良く、多少離れた位置から遠隔操作的に楔部材を進退させることができれば特には制約されない。
【0026】
図12は、孔内用仮受けジャッキAの楔部材102を、ネジジャッキの操作をして前方方向に移動させて、孔内面保持部材101を上下方向に進出させ、ハンドル108とロッド109を取外した状態を示している。
【0027】
図13は、図9における孔内用仮受けジャッキAの概観図であり、112は孔内用仮受けジャッキAを引き戻すためのワイヤーである。
【0028】
図14は、孔内用仮受けジャッキAを削孔内で仮受けする手順を示す図であり、(a)図は、孔内面保持部材101を縮小させた状態で、孔内の所定の位置まで押し込んでいる状態を示し、(b)図は、ハンドル108を反力として、ロッド109に取り付けたレバー111を操作して、ネジジャッキ103を回転させ、孔内面保持部材101を上下方向に進出させて、孔壁内面に当接させた状態を示し、(c)図は、前記のハンドル、ロッド、レバーを取外す状態を示している。尚、孔内用仮受けジャッキAを取外す際は、上記説明と逆の手順で行う。
【0029】
前記のとおり、孔内用仮受けジャッキAを使用すれば、簡単な作業で簡便に孔内の自由な位置で仮受けを行ったり、取外したりすることができる。
【0030】
次に、再び交換作業の工程について、[0018]における説明の続きを、図6を使って説明する。5は、橋桁を短時間に限って仮受けするための仮受けジャッキであり、取替える支承装置3の近傍に設置して橋桁を仮受けする。次に削孔穴4内において仮受けしている孔内用仮受けジャッキAを、前述の手順で取外す。尚、ジャッキAを取外す前に、削孔穴内で一旦僅かにジャッキを拡張させれば、コンクリート躯体に水平方向のクラックを生じさせることができ、後述のコンクリートの撤去作業が一層容易になる。
【0031】
次に、図7に示すように、削孔穴4の上部、即ち支承装置3の下のコンクリート躯体部6を、ハツリ取って撤去すると同時に旧支承装置3も撤去するが、予め複数本の削孔穴4が設けられていることから、コンクリート躯体部6をハツリ取って撤去する作業は、極めて簡単且つ短時間に行うことができる。因みに、本発明の削孔穴4を設けずに、ハツリ取る場合には、作業スペースが限られていることから、小形のハツリ機しか使用できないことが多く、作業性や能率も悪い上に、支承装置直下はハツリ機を使用しても容易には全体をハツリ取ることがでず、長時間にわたる困難な作業を必要とする。
【0032】
前記のコンクリート躯体部6をハツリ取って撤去した後は、図8に示すように、新たな支承装置3を取り付け、次にハツリ取った箇所に無収縮・急硬化性モルタルやコンクリートなどの高強度硬化材を充填する。8はアンカーボルトであり、予め必要な数を設置しておくと良い。尚、必要に応じて鉄筋や型枠などを充填に先立って設置しても良い。
【0033】
前記にて充填した硬化材が、所定の強度まで硬化すれば、前述の仮受けジャッキ5を撤去し、一連の交換作業が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一般的な橋脚、橋桁、支承部を示す側面図である。
【図2】同、正面図である。
【図3】本発明に係る支承部の交換方法の内、削孔穴に孔内用仮受けジャッキを挿入している状態を示す側面の断面図である。
【図4】同、孔内用仮受けジャッキを使って仮受けした状態を示す側面の断面図である。
【図5】同、正面図である。
【図6】同、仮受けジャッキを設置し、孔内用仮受けジャッキを除去した状態を示す正面図である。
【図7】同、コンクリート躯体部6を、ハツリ取って撤去した状態を示す正面図である。
【図8】同、硬化材を充填した状態を示す側面の断面図である。
【図9】孔内用仮受けジャッキAの軸方向の断面図である。
【図10】図9におけるa−a断面図である。
【図11】孔内面保持部材101の三面図である。
【図12】図9における孔内用仮受けジャッキAを、上下方向に進出させた状態を示す図である。
【図13】図9における孔内用仮受けジャッキAの概観図である。
【図14】孔内用仮受けジャッキAを、削孔内で仮受けする手順を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
A 孔内用仮受けジャッキ
1 橋脚
2 橋桁
3 支承部
4 削孔穴
5 仮受けジャッキ
6 コンクリート躯体除去部
7 硬化材
8 アンカーボルト
101 孔内面保持部材
102 楔部材
103 ネジジャッキ
104 前部固定部材
105 後部固定部材
106 後部固定材カバー
107 連結ロッド
108 ハンドル
109 ロッド
110 伸縮材
111 レバー
112 ワイヤー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚上に設けた橋桁を支持する支承装置の取替え工法において、取替え作業に先立って該支承装置下の橋脚上部を水平方向に削孔し、該削孔内に孔内用仮受けジャッキを設置する準備工程と、
仮受けジャッキを使って橋桁を仮受けした後に、前記削孔内に設置した孔内用仮受けジャッキを撤去し、次に該削孔穴より上部のコンクリート躯体と旧支承装置を撤去する工程と
前記の撤去したコンクリート躯体部分に、新支承装置を設置し硬化材を充填して該支承装置と橋脚上部とを固定した後、前記仮受けジャッキを撤去する工程と、
を具える事を特徴とする橋桁の支承装置の取替え工法。
【請求項2】
傾斜した接触面を備えた孔内面保持部材が上下方向に設置され、該接触面の傾斜に一致する接触面を備えた楔部材を、前記孔内面保持部材に対して、孔軸方向に遠隔操作で進退させることによって、前記孔内面保持部材が上下方向に進退することを特徴とする請求項1記載の橋桁の支承装置の取替え工法に適用される孔内用仮受けジャッキ。
【請求項1】
橋脚上に設けた橋桁を支持する支承装置の取替え工法において、取替え作業に先立って該支承装置下の橋脚上部を水平方向に削孔し、該削孔内に孔内用仮受けジャッキを設置する準備工程と、
仮受けジャッキを使って橋桁を仮受けした後に、前記削孔内に設置した孔内用仮受けジャッキを撤去し、次に該削孔穴より上部のコンクリート躯体と旧支承装置を撤去する工程と
前記の撤去したコンクリート躯体部分に、新支承装置を設置し硬化材を充填して該支承装置と橋脚上部とを固定した後、前記仮受けジャッキを撤去する工程と、
を具える事を特徴とする橋桁の支承装置の取替え工法。
【請求項2】
傾斜した接触面を備えた孔内面保持部材が上下方向に設置され、該接触面の傾斜に一致する接触面を備えた楔部材を、前記孔内面保持部材に対して、孔軸方向に遠隔操作で進退させることによって、前記孔内面保持部材が上下方向に進退することを特徴とする請求項1記載の橋桁の支承装置の取替え工法に適用される孔内用仮受けジャッキ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−157006(P2008−157006A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−357370(P2006−357370)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(501468828)有限会社インテス (20)
【出願人】(596011792)大東工機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(501468828)有限会社インテス (20)
【出願人】(596011792)大東工機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]