説明

橋梁の架け替え工法

【課題】交通制限を最小限に抑えた橋梁の架け替え工法を提供すること。
【解決手段】既設橋梁21を新橋梁桁Nに架け替える橋梁の架け替え工法において、既設橋梁21の傍らに第一の台船24a、24b、24cを配置する工程と、その傍らであって、既設橋梁21とは反対側に第二の台船26、27、28を配置する工程と、第二の台船26、27、28上で新橋梁Nの桁を地組みする工程と、既設橋梁21の橋脚間の水上に第一の台船24a、24b、24cを移動させる工程と、第一の台船24a、24b、24c上に、切断した既設橋梁21の桁を支持させる工程と、第一の台船24a、24b、24cを架橋場所から離れた場所に移動させる工程と、第二の台船26、27、28を移動させ、第二の台船26、27、28上に支持された新橋梁Nの桁を既設橋梁21のあった位置に配置する工程と、新橋梁Nを据え付ける工程と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の架け替え工法に関するものであり、さらに詳しくは、施工中の通行止め期間が従来よりも短く、常設の構台が不要となる橋梁の架け替え工法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市河川に架けられた橋梁は、老朽化が進んでおり、架け替えが必要な時期となっている。これは、道路橋であると鉄道橋であると変わらない。橋梁の架け替え工法としては、既設橋梁に沿って新設橋を構築し、既設橋、新設橋をスライドさせる工法がある(たとえば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−143757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、河川橋や運河橋は、河川占用による大規模な工事が必要で、かつ長期間の交通規制を伴うという問題点があった。大規模な工事、しかもそれが長期間に及ぶとすれば、事業化が困難であった
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、極めて効率的に架け替えを行うことにより、施工中の通行止め期間が従来よりも短く、常設の構台が不要となる橋梁の架け替え工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、この発明による橋梁の架け替え工法は、水上に架けられた既設橋梁を新橋梁に架け替える橋梁の架け替え工法において、前記既設橋梁の傍らに第一の水上固定台船を配置する工程と、前記第一の水上固定台船上で前記新橋梁の桁を地組みする工程と、前記既設橋梁の橋脚間の水上に第二の水上固定台船を配置する工程と、前記第二の水上固定台船上の支持手段に、切断した前記既設橋梁の桁を支持させる工程と、前記第二の水上固定台船を架橋場所から離れた場所に移動させる工程と、第一の固定台船を移動させ、当該第一の固定台船上に支持された新橋梁の桁を前記既設橋梁のあった位置に配置する工程と、前記新橋梁を据え付ける工程と、を含むようにしたものである。
【0007】
この発明では、水上固定台船を使用する。水上固定台船は、水上の所望位置で水平方向および高さ方向をアンカーおよび杭材等で強固に固定できる台船である。この発明では、まず、前記既設橋梁の傍らに第一の水上固定台船を配置する(傍らとは、起重機のハンドリングが可能である近隣範囲という意味である。以下同じ)。そして、前記第一の水上固定台船上で前記新橋梁の桁を地組みする。地組みは、既設橋梁上に設置する起重機で行ってもよいし、河岸から起重機で行ってもよい。
【0008】
一方、前記既設橋梁の橋脚間の水上に第二の水上固定台船を配置する。これも上記と同様に既設橋梁上に設置する起重機で行ってもよいし、河岸から起重機で行ってもよい。そして、既設橋梁の下にもぐり込んだ前記第二の水上固定台船上に、前記既設橋梁の桁を支持させて、当該既設橋梁を切断する。一体または複数の分割体に切断された橋梁は、前記第二の水上固定台船に支持されたまま、当該第二の水上固定台船と共に曳航、牽引等で移動される。
【0009】
上記工程により、既設橋梁は、架橋場所から離れた場所に移動され、河岸または適当な荷揚げ位置で、荷揚げ、解体、搬送に付される。既設橋梁が取り除かれた位置に、第一の固定台船を移動させ、当該第一の固定台船上に支持された新橋梁の桁を配置し、最後に新橋梁を両端の道路、線路等の接続路に据え付ける。これにより、極めて効率的に新旧の橋梁の架け替えが可能となり、工期短縮、占有領域縮小、コスト削減が可能となる。
【0010】
つぎの発明による橋梁の架け替え工法は、水上に架けられた既設橋梁を新橋梁桁に架け替える橋梁の架け替え工法において、前記既設橋梁の傍らに第一の水上固定台船を配置する工程と、前記第一の水上固定台船の傍らであって、前記既設橋梁とは反対側に第二の水上固定台船を配置する工程と、前記第二の水上固定台船上で前記新橋梁の桁を地組みする工程と、前記既設橋梁の橋脚間の水上に第一の水上固定台船を移動させる工程と、前記第一の水上固定台船上に、切断した前記既設橋梁の桁を支持させる工程と、前記第一の水上固定台船を架橋場所から離れた場所に移動させる工程と、第二の水上固定台船を移動させ、当該第二の水上固定台船上に支持された新橋梁の桁を前記既設橋梁のあった位置に配置する工程と、前記新橋梁を据え付ける工程と、を含むようにしたものである。
【0011】
この発明でも、上記水上固定台船を使用する。この発明では、まず、前記既設橋梁の傍らに第一の水上固定台船を配置する。そして、前記第一の水上固定台船の傍らであって、前記既設橋梁とは反対側に第二の水上固定台船を配置する。その上で、前記新橋梁の桁を地組みする。地組みは、第一の水上固定台船上に設置する起重機で行ってもよいし、河岸から起重機で行ってもよい。なお、当該第一の水上固定台船上に起重機を設置するときは、既設橋梁上の起重機を利用する。
【0012】
つぎに、前記既設橋梁の橋脚間の水上に第一の水上固定台船を移動させる。この工程は、既設橋梁上に設置する起重機で行ってもよいし、曳航によって行ってもよい。そして、既設橋梁の下にもぐり込んだ前記第一の水上固定台船上に、前記既設橋梁の桁を支持させて、当該既設橋梁を切断する。一体または複数の分割体に切断された橋梁は、前記第一の水上固定台船に支持されたまま、当該第一の水上固定台船と共に曳航、牽引等で移動される。
【0013】
上記工程により、既設橋梁は、架橋場所から離れた場所に移動され、河岸または適当な荷揚げ位置で、荷揚げ、解体、搬送に付される。既設橋梁が取り除かれた位置に、第二の固定台船を移動させ、当該第二の固定台船上に支持された新橋梁の桁を配置し、最後に新橋梁を両端の道路、線路等の接続路に据え付ける。これにより、極めて効率的に新旧の橋梁の架け替えが可能となり、工期短縮、占有領域縮小、コスト削減が可能となる。
【0014】
つぎの発明による橋梁の架け替え工法は、前記橋梁の架け替え工法において、前記水上固定台船は、複数のブロックを組み合わせて構成される組立形式であるようにしたものである。
【0015】
水上固定台船を小さなブロックの組み合わせで構成すると、工事現場まで曳航するのも容易となる。また、陸上でトラック、トレーラで現場近傍まで当該ブロックを搬送した後、特に大型でない起重機で着水させる方式も容易となる。
【0016】
つぎの発明による橋梁の架け替え工法は、前記橋梁の架け替え工法において、前記水上固定台船は、水上に間隔を空けて複数用いるようにしたものである。
【0017】
橋梁が架設される河川、運河、海では、当然に水上交通が存在する。この発明では、前記水上固定台船は、水上に間隔を空けて複数用いるようにしたので、工事中、他の船舶の通り抜けが可能となる。
【0018】
つぎの発明による橋梁の架け替え工法は、前記橋梁の架け替え工法において、前記新橋梁を水上固定台船上でスライドさせるようにしたものである。
【0019】
新橋梁を水上固定台船上でスライドさせれば、台船を動かさずに新橋梁の桁を地組みできる。これにより、起重機も特に大型のものを使わずに済み、比較的小さな橋梁の架け替えにも対応可能となる。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る橋梁の架け替え工法によれば、極めて効率的に新旧橋梁の架け替えが可能となるので、既設橋(旧橋梁)の通行止め期間を最小にすることができる。また、常設の構台が不要なため、工費が削減でき、河川占用期間も最小になる。さらに、台船で既設橋梁の桁を移動可能であり、陸上から荷揚げ可能な場所に移動が容易となる。したがって、解体工程が、工事工程上の障害とならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものが含まれるものとする。
【実施例1】
【0022】
図1−1は、本発明の実施例1に係る橋梁の架け替え工法の第一ステップを示す平面図である。また、図1−2は、図1−1の工程を横からみたときの構成を示す断面図である。本発明は、河川、湖沼、運河、海等、水上に架けられた既設橋梁を新橋梁に架け替えるためのもので、この実施例1では、河川に架けられた橋梁の架け替え例について具体的に説明する。図1−1に示すように、既設橋梁1は、河川2をまたぐように架設されて取付道路に連結されている。
【0023】
本発明の第一ステップでは、既設橋梁1の傍らに第一の水上固定台船(以下、台船と称する。)を組み立て、配置する。台船4は、それ自体浮力を有する複数の小ブロックから成り、それを鉄骨等で結合させて1つの台船4にしたものである。この台船4の四隅には、杭材7等の金属棒状部材が当該台船4を垂直に貫通し、水底に固定されている。また、台船4は、本体と杭材7との相対位置をねじ、みぞカム等で変化させることにより、高さ方向の調整が可能となっている。
【0024】
また、当該杭材7と台船4との結合は、適当な高さでのピン貫通等、100tを越える荷重に耐えるべく、極めて強固になされる。これにより、台船4は、高さ方向に調整可能で、かつ固定可能となる。台船4の水平方向の移動は、上記杭材7を水底より抜き上げた状態で、船舶による曳航、または河岸からの牽引で行われる。水平方向に固定する際には、アンカーを打つと共に、上記杭材を打つ。これにより、台船4は、水平方向にも調整可能で、かつ固定可能となる。
【0025】
台船4の組立には、既設橋梁1上に設置される起重機3を利用してもよいし、陸地からの起重機3を利用してもよい。なお、上述のように、台船4は、複数のブロックの組み合わせであるから、工事現場まで曳航するのも容易である。また、陸上でトラック、トレーラで現場近傍まで当該ブロックを搬送した後、特に大型でない起重機で着水させる方式も容易である。
【0026】
台船4は、水上に間隔を空けて複数用いると都合が良い。橋脚6の合間を縫って移動、定着可能とり、橋梁が架設される河川、運河、海では、当然に水上交通が存在するから、工事中、それを遮断することなく、他の船舶の通り抜けが可能となるからである。
【0027】
また、台船4の上面には、のちに新橋梁の桁がこの上で地組みされることから、架台5(5a、5b)を組んでおくとよい。また、図の縦方向の架台5aには横取りのための軌条設備や転動設備を設けておくとよい。なお、これら台船4の組立は、夜間に既設橋梁1の道路を通行止めにして行い、昼間は開放して通行可能とすればよい。
【0028】
本発明の第二のステップでは、上記第一の台船4上で新橋梁の桁を地組みする。これを示したのが平面図の図2−1、断面図の図2−2、平面図の図3−1、断面図の図3−2、平面図の図4−1、および断面図の図4−2である。地組みは、既設橋梁1上に設置する起重機3で行ってもよいし、河岸から起重機3で行ってもよい。また、既設橋梁1の通行止め日数を短縮できる方法として、河川上よりクローラー台船にて施工することも可能である。地組みの際、台船4は、できるだけ既設橋梁1側に移動させておき、既設橋梁1から見て、台船4の奥に相当する部分8の台船4に新橋梁の桁分割体10aを荷下ろしできるようにしておく(図3−1、3−2参照)。これにより、起重機3は大型である必要がなくなり経済的である。
【0029】
そして、台船4を既設橋梁1から離れる方向に移動させ、今度は、台船4の手前側に新橋梁の桁分割体10aを荷下ろしする(図4−1、4−2参照)。既述したように、架台5aに、軌条設備や転動設備が設けられていると、新橋梁の桁分割体10aを台船4上でスライド(横取り)可能となる。この横取り方法を利用すれば、台船4を移動させることなく、上記奥部分8に新橋梁の桁を地組むことができる。これによっても、特に大きな起重機3を用いることなく、その振り幅の範囲内で、新橋梁の桁を地組みできる。なお、新橋梁の桁分割体10aは、トラックやトレーラTで既設橋梁1上に搬送される(図2−1参照)。
【0030】
本発明の第三のステップでは、既設橋梁1の橋脚6間の水上に第二の台船4を配置する。これを示したのが平面図の図5−1、および図5−1のA−A断面図である図5−2である。まず、台船4は、既設橋梁1の傍らであって、第一の台船4と反対側に配置される。台船4は、既設橋梁1上に設置する起重機3で行ってもよいし、河岸から起重機3で行ってもよい。また、台船4上には、上記第一のステップと同様に、架台14も設置しておくとよい。後述するが、架台14には、架台14が昇降可能となるジャッキ等の昇降装置を設けておくとよい。台船4は、その後移動させられ、既設橋梁1の橋脚6間に配置される。なお、このとき、第一の台船4上の新橋梁N(10、11、12)は、既設橋梁1に隣接させておく。これら台船4の組立は、夜間に既設橋梁1の道路を通行止めにして行い、昼間は開放して通行可能とすればよい。
【0031】
本発明の第四のステップでは、第二の台船4上の支持手段に、切断した既設橋梁1の桁を支持させる。また、第五のステップは、第二の台船4を架橋場所から離れた場所に移動させる。これを示したのが平面図の図6−1、および図6−1のB−B断面図である図6−2である。第二の台船4に既設橋梁1を支持させるためには、台船4の高さを上げるか、またはジャッキ等の昇降装置(図面省略)によって架台を上げるかのいずれか、または両方の組み合わせとすればよい。なお、通常は、安全のため、既設橋梁1を橋梁のたもとから起重機によって吊り上げ支持しておきながら、下から台船4の架台14で支持し、必要な箇所で既設橋梁1を切断する。一体または複数の分割体に切断された既設橋梁1は、第二の台船4に支持されたまま、第二の台船4と共に曳航、牽引等で架橋場所から離れた場所に移動され、河岸または適当な荷揚げ位置で、荷揚げ、解体、搬送に付される。なお、台船4に上記昇降装置を備えていれば、既設橋梁1の荷揚げや、解体を低い位置にして行うことができる。既設橋梁1の撤去は、夜間に既設橋梁1の連絡取り付け道路を通行止めにして行う。
【0032】
本発明の第六のステップでは、第一の台船4を移動させ、当該第一の台船4上に支持された新橋梁の桁を既設橋梁のあった位置に配置する。また、最終ステップで、新橋梁を据え付ける。これを示したのが平面図の図7−1、および図7−1のC−C断面図である図7−2である。上記工程により、既設橋梁1が取り除かれた位置に、第一の台船4を移動させ、第一の台船4上に支持された新橋梁Nの桁を配置し、最後に新橋梁Nを両端の道路、線路等の接続路に据え付ける。これにより、極めて効率的に新旧の橋梁の架け替えが完了する。なお、新橋梁Nの据え付けは、夜間に行い、昼間は据え付け箇所に仮設補強路を設けて通行止めを行わない。
【0033】
図8−1は、架け替え完了したときの新橋梁Nを示す平面図、図8−2は、図8−1のD−D断面図である。本発明による架け替え工法において、新橋梁Nが軽重量、高剛性のものであれば、既設橋梁1の橋脚を撤去することも可能となる。この撤去工程は、第一の台船4を既設橋梁1のあった位置に移動させるときに行えばよい。橋脚を撤去すれば、その後の水上交通にとって有益である。
【0034】
第一の台船4は、新橋梁を支持しながら移動する。この第一の台船4の移動に関しては、当該第一の台船4を、既設橋梁1よりも水流の上流側で組立て、配置すると、新橋梁が地組みされた後、水流により架橋位置に移動するのが容易となる。また、既設橋梁を撤去する前記第一の水上固定台船が、架橋位置から離れるのも容易となる。なお、水流は、河川の流れ、運河では河川の流れと潮流、海の潮流を意味する。
【0035】
以上により、この発明の実施例1に係る橋梁の架け替え工法によれば、極めて効率的に新旧橋梁の架け替えが可能となり、既設橋梁の通行止め期間を極めて短くすることができる。また、常設の構台が不要なため、工費が削減でき、河川占用期間も最小になる。さらに、台船で既設橋梁の桁を移動可能であり、陸上から荷揚げ可能な場所に移動が容易となる。したがって、解体工程が、工事工程上の障害とならない。
【実施例2】
【0036】
図9−1は、本発明の実施例2に係る橋梁の架け替え工法の第一ステップを示す平面図である。また、図9−2は、図1−1のE−E断面を示す断面図である。この実施例2では、実施例1とは異なる工程で水上に架けられた既設橋梁桁を新橋梁桁に架け替える工法を説明する。本発明の実施例2に係る第一のステップでは、既設橋梁21の傍らに第一の台船24を組み立て、配置する。この工程に関しては、実施例1と同様である。このときの台船24も、杭材25が適所にある実施例1の台船(図1−1の台船4)と同様である。
【0037】
また、台船24の組立には、既設橋梁21上に設置される起重機23を利用してもよいし、河岸からの起重機23を利用してもよい点も同様である。台船24は、水上に間隔を空けて複数用いると都合が良い。橋脚22の合間を縫って移動、定着可能になり、橋梁が架設される河川、運河、海では、当然に水上交通が存在するから、工事中、それを遮断することなく、他の船舶の通り抜けが可能となるからである。なお、これら台船24の組立は、夜間に既設橋梁21の道路を通行止めにして行い、昼間は開放して通行可能とすればよい。
【0038】
本発明の実施例2に係る第二のステップは、第一の台船の傍らであって、既設橋梁とは反対側に第二の台船を配置する。これを示したのが、平面図の図10−1、およびF−F断面図である図10−2である。第二の台船26、27、28を組立て、配置するためには、既設橋梁21から第一の台船24の上に起重機23を降ろし、それを利用すればよい。また、河岸から届く範囲であれば、河岸に設ける起重機23を利用してもよい。なお、起重機23を第一の台船24に降ろす際、または降ろしてから、第一の台船24の高さを上昇させておくのが好ましい。第二の台船26、27、28における作業が行いやすくなるからである。
【0039】
また、台船26、27、28の上面には、のちに新橋梁31の桁がこの上で地組みされることから、架台28、29、30を組んでおくとよい。これを示したのが、平面図の図11−1、およびG−G断面図である図11−2である。また、図の縦方向の架台には横取りのための軌条設備や転動設備を設けておくとよい。なお、これら台船26、27、28の組立は、夜間に既設橋梁21の道路を通行止めにして行い、昼間は開放して通行可能とすればよい。
【0040】
本発明の実施例2に係る第三のステップでは、第二の台船26、27、28上で新橋梁の桁31を地組みする。これを示したのが平面図の図12−1、断面図の図12−2である。地組みは、第一の台船24上に設置する起重機23で行ってもよいし、河岸から起重機23で行ってもよい。この実施例2では、既設橋梁21上に起重機23を設ける必要がないので、終日、通行止めが不要となる。台船26、27、28の架台30に、軌条設備や転動設備が設けられていれば、新橋梁の桁31bを台船26、27、28上でスライド(横取り)可能となる。
【0041】
横取り方法を利用すれば、台船26、27、28を移動させることなく、新橋梁の桁31を地組むことができる。これによっても、特に大きな起重機23を用いることなく、その振り幅の範囲内で、新橋梁の桁31を地組みできる。なお、新橋梁の分割体は、トラックやトレーラTで既設橋梁21上に搬送され、起重機23で吊り上げ、第二の台船26、27、28上で組み上げる。新橋梁N(31、32、33)が組み上がったら、第一の台船24の高さを、その後のステップに備えて下降させる(図13−1、13−2参照)。
【0042】
本発明の第四のステップでは、既設橋梁21の橋脚22間の水上に第一の台船24a、24b、24cを移動させる。これを示したのが平面図の図13−1、および図13−1のI−I断面図である図13−2である。第三のステップまでは、第一の台船24は、一つの矩形プラットホームを形成していたが、既設橋梁21の下にもぐりこむために、橋脚22との干渉を回避せねばならず、ここでは、三つに分解される。台船24は、複数のブロックの結合体であるから、分解するのも容易である。
【0043】
台船24a、24b、24c上には、上記第二のステップと同様に、架台34を設置しておくとよい。架台34には、架台34が昇降可能となるジャッキ等の昇降装置(図示省略)を設けておくとよい。台船24a、24b、24cは、その後移動させられ、既設橋梁21の橋脚22間に配置される。(図14−1、14−2)これらの工程は、既設橋梁21の道路を通行止めにする必要がなく、終日交通規制は不要である。
【0044】
本発明の第五のステップでは、第一の台船24a、24b、24c上のジャッキ付き架台等の支持手段に、切断した既設橋梁21の桁を支持させる。また、第六のステップは、第一の台船24a、24b、24cを架橋場所から離れた場所に移動させる。これを示したのが平面図の図15−1、および図15−1のK−K断面図である図15−2である。第一の台船24a、24b、24cに既設橋梁21を支持させるためには、台船24a、24b、24cの高さを上げるか、またはジャッキ等の昇降装置(図面省略)によって架台を上げるかのいずれか、または両方の組み合わせとすればよい。なお、通常は、安全のため、既設橋梁21を橋梁のたもとから起重機によって吊り上げ支持しておきながら、下から台船24a、24b、24cの架台34で支持し、必要な箇所で既設橋梁21を切断する。
【0045】
一体または複数の分割体に切断された既設橋梁21は、第一の台船24a、24b、24cに支持されたまま、曳航、牽引等で架橋場所から離れた場所に移動され、河岸または適当な荷揚げ位置で、荷揚げ、解体、搬送に付される。なお、台船24a、24b、24cに上記昇降装置を備えていれば、既設橋梁21の荷揚げや、解体を低い位置にして行うことができる。既設橋梁21の撤去は、夜間に既設橋梁21の連絡取り付け道路を通行止めにして行う。
【0046】
本発明の第七のステップでは、第二の台船26、27、28を移動させ、当該第二の台船26、27、28上に支持された新橋梁Nの桁を既設橋梁21のあった位置に配置する。また、最終ステップで、新橋梁を据え付ける。これを示したのが平面図の図16−1、および図16−1の断面図である図16−2である。上記工程により、既設橋梁21が取り除かれた位置に、第二の台船26、27、28を移動させ、第二の台船26、27、28上に支持された新橋梁Nの桁を配置し、最後に新橋梁Nを両端の道路、線路等の接続路に据え付ける。これにより、既設橋梁の通行止めを極力せずに、極めて効率的に新旧の橋梁の架け替えが完了する。なお、新橋梁Nの据え付けは、夜間に行い、昼間は据え付け箇所に仮設補強路を設けて通行止めを行わない。
【0047】
本発明による架け替え工法において、新橋梁Nが軽重量、高剛性のものであれば、既設橋梁21の橋脚を撤去することも可能となる。この撤去工程は、第一の台船24を既設橋梁21のあった位置に移動させるときに行えばよい。橋梁を撤去すれば、その後の水上交通にとって有益である。
【0048】
第二の台船26、27、28は、新橋梁Nを支持しながら移動する。この第二の台船26、27、28の移動に関しては、当該第二の台船26、27、28を、既設橋梁21よりも水流の上流側で組立て、配置すると、新橋梁31が地組みされた後、水流により架橋位置に移動するのが容易となる。また、既設橋梁21を撤去する前記第一の水上固定台船が、架橋位置から離れるのも容易となる。なお、水流は、河川の流れ、運河では河川の流れと潮流、海の潮流を意味する。
【0049】
以上により、この発明の実施例2に係る橋梁の架け替え工法によれば、極めて効率的に新旧橋梁の架け替えが可能となり、既設橋梁の通行止め期間を実施例1の場合よりも短くすることができる。また、常設の構台が不要なため、工費が削減でき、河川占用期間も最小になる。さらに、台船で既設橋梁の桁を移動可能であり、陸上から荷揚げ可能な場所に移動が容易となる。したがって、解体工程が、工事工程上の障害とならない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる橋梁の架け替え工法は、水上に架設され、老朽化した橋梁を架け替える際の交通渋滞抑制、特に昼間の交通渋滞抑制に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1−1】実施例1における第一の台船の組立工程を示す平面図である。
【図1−2】実施例1における第一の台船の組立工程を示す断面図である。
【図2−1】実施例1における新設桁地組み工程を示す平面図である。
【図2−2】実施例1における新設桁地組み工程を示す断面図である。
【図3−1】実施例1における新設桁地組み工程を示す平面図である。
【図3−2】実施例1における新設桁地組み工程を示す断面図である。
【図4−1】実施例1における新設桁地組み工程を示す平面図である。
【図4−2】実施例1における新設桁地組み工程を示す断面図である。
【図5−1】実施例1における第二の台船の組立工程を示す平面図である。
【図5−2】実施例1における第二の台船の組立工程を示す断面図である。
【図6−1】実施例1における既設桁撤去工程を示す平面図である。
【図6−2】実施例1における既設桁撤去工程を示す断面図である。
【図7−1】実施例1における新設桁据え付けの様子を示す平面図である。
【図7−2】実施例1における新設桁据え付けの様子を示す断面図である。
【図8−1】実施例1における架け替え完了状態を示す平面図である。
【図8−2】実施例1における架け替え完了状態を示す断面図である。
【図9−1】実施例2における第一の台船の組立工程を示す平面図である。
【図9−2】実施例2における第一の台船の組立工程を示す断面図である。
【図10−1】実施例2における第二の台船の組立工程を示す平面図である。
【図10−2】実施例2における第二の台船の組立工程を示す断面図である。
【図11−1】実施例2における第二の台船の組立工程を示す平面図である。
【図11−2】実施例2における第二の台船の組立工程を示す断面図である。
【図12−1】実施例2における新設桁地組み工程を示す平面図である。
【図12−2】実施例2における新設桁地組み工程を示す断面図である。
【図13−1】実施例2における第一の台船の高さ降下を示す平面図である。
【図13−2】実施例2における第一の台船の高さ降下を示す断面図である。
【図14−1】実施例2における第一の台船の既設桁への移動を示す平面図である。
【図14−2】実施例2における第一の台船の既設桁への移動を示す断面図である。
【図15−1】実施例2における既設桁撤去工程を示す平面図である。
【図15−2】実施例2における既設桁撤去工程を示す断面図である。
【図16−1】実施例2における架け替え完了状態を示す平面図である。
【図16−2】実施例2における架け替え完了状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1、21 既設橋梁
2 河川
3、23 起重機
4、24、24a、16、26、27、28、34 台船
5、5a、14、28、30、34 架台
6、22 橋脚
7、25 杭材
8 奥部分
9 分割体
10、11、12、31 新橋梁
31、31b、32、33 桁
N 新橋梁桁
T トレーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に架けられた既設橋梁を新橋梁に架け替える橋梁の架け替え工法において、
前記既設橋梁の傍らに第一の水上固定台船を配置する工程と、
前記第一の水上固定台船上で前記新橋梁の桁を地組みする工程と、
前記既設橋梁の橋脚間の水上に第二の水上固定台船を配置する工程と、
前記第二の水上固定台船上の支持手段に、切断した前記既設橋梁の桁を支持させる工程と、
前記第二の水上固定台船を架橋場所から離れた場所に移動させる工程と、
第一の固定台船を移動させ、当該第一の固定台船上に支持された新橋梁の桁を前記既設橋梁のあった位置に配置する工程と、
前記新橋梁を据え付ける工程と、
を含むことを特徴とする橋梁の架け替え工法。
【請求項2】
水上に架けられた既設橋梁を新橋梁桁に架け替える橋梁の架け替え工法において、
前記既設橋梁の傍らに第一の水上固定台船を配置する工程と、
前記第一の水上固定台船の傍らであって、前記既設橋梁とは反対側に第二の水上固定台船を配置する工程と、
前記第二の水上固定台船上で前記新橋梁の桁を地組みする工程と、
前記既設橋梁の橋脚間の水上に第一の水上固定台船を移動させる工程と、
前記第一の水上固定台船上に、切断した前記既設橋梁の桁を支持させる工程と、
前記第一の水上固定台船を架橋場所から離れた場所に移動させる工程と、
第二の水上固定台船を移動させ、当該第二の水上固定台船上に支持された新橋梁の桁を前記既設橋梁のあった位置に配置する工程と、
前記新橋梁を据え付ける工程と、
を含むことを特徴とする橋梁の架け替え工法。
【請求項3】
前記水上固定台船は、複数のブロックを組み合わせて構成される組立形式であることを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁の架け替え工法。
【請求項4】
前記水上固定台船は、水上に間隔を空けて複数用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の橋梁の架け替え工法。
【請求項5】
前記新橋梁を水上固定台船上でスライドさせることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の橋梁の架け替え工法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【公開番号】特開2007−321474(P2007−321474A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153976(P2006−153976)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(506122246)三菱重工橋梁エンジニアリング株式会社 (111)
【Fターム(参考)】