説明

橋梁用床版

【課題】改修工事などメンテナンスにおいて、隣接する床版ユニット同士間の連結強度が低下しにくい橋梁用床版を提供する。
【解決手段】互いに平行な複数の主桁K上に跨って固定され、且つ複数の床版ユニットU1,U2を連結して構成され、該床版ユニットU1,U2は、アルミニウム合金からなる複数の押出形材E1,E2を接合してなり、係る押出形材E1,E2の長手方向が上記主桁Kと直交するように固定され、隣接する床版ユニットU1,U2から互いに接近するように水平に延びた突出片10を一体に有し、該突出片10は、各床版ユニットU1,U2における押出形材E2ごとの表面5aよりも主桁K側の低い位置に形成されていると共に、各突出片10と、該突出片10の上・下面に配設した上下一対の添接板11,12とを貫通するボルトbにナットbが締結され、押出形材E2の表面5aと、突出片10の上面の基部との間に、上向きに凹んだ曲面Rが形成されている、橋梁用床版F。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁における複数の主桁上に跨って固定される床版に関し、特にメンテナンス時での連結強度に優れた橋梁用床版に関する。尚、本発明の対象となる橋梁には、歩道橋や添加橋、あるいは高架デッキないし高架廊下も含まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、橋体の軽量化および施工の合理化を図るため、鋼製の床版や鉄筋コンクリート床版に替わって、アルミニウム合金からなる複数の押出形材を接合したアルミニウム床版の採用が検討されている。
例えば、互いに平行に配置した複数のI型断面を有する鋼材からなる主桁の上に、複数のスタッドジベルを立設し、別途に複数の中空押出形材の押出方向の端縁同士を摩擦攪拌接合(FSW)した複数の床版ユニットを、それらの底面から中空部に上記スタッドジベルが挿入するように主桁上に載置し、該中空部の一部を密閉してモルタルを充填し、且つ該モルタルの一部を床版ユニットと前記主桁との間に所定の厚みで形成することで、複数の床版ユニットを主桁上に固定する床版の設置方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特許第4030825号公報(第1〜13頁、図1〜7)
【特許文献2】特開2005−213825号公報(第1〜19頁、図1〜14)
【0003】
例えば、前記特許文献2に記載された複数の床版ユニットを連結する場合、図10の左側に示すように、上下一対のフランジ2,3とこれらを接続するウェブ4とを有するI型断面の鋼材の主桁Kの上面2aに、予め、該上面2aに間隔を置いて複数のスタッドジベルZを立設させる。一方、隣接する床版ユニットu1,u2は、複数の中空押出形材を前記のように接合したもので、表・裏面板15,18、交互に対称な斜めの側壁17、および左右の上端縁から水平に延びた一対のリブ16を一体に有している。そして、上記床版ユニットu1,u2を構成する押出形材ごとの中空部sに前記ジベルZを挿入した状態で、該ジベルZ付近の密閉された中空部s、およびその直下の主桁Kとの間にモルタルmを充填・養生して、床版ユニットu1,u2を複数の主桁K上に固定している。
【0004】
ところで、主桁K上に隣接して固定された床版ユニットu1,u2を連結する方法として、MIG溶接や摩擦攪拌接合(FSW)などが考えられる。しかし、これらの方法は、必要な設備、接合条件、および品質などの問題により、施工現場における接合方法としては、一般には採用されていない。
そのため、図10の左側に示すように、それぞれの表面板15から先端が接近した一対のフランジ16,16の上下面に、添接板21,22を個別に配設し、これらを複数のボルトbおよびナットnを用いて締結する構造が挙げられる。その後、ユニットu1,u2ごとの表面板15やフランジ16などの上方には、下地材やアスファルトを含む道路面材24が所要の厚みで敷設される。
しかしながら、経年変化によるアスファルトの劣化に伴う道路改修工事を施すべく、道路面材24の大部分を剥離した際、図10の右側に示すように、道路面材24の破断面25に前記ボルトbや添接板21が露出するおそれがある。その結果、係るボルトbや添接板21を用いた連結構造自体が損傷を受け、その連結強度が低下する、という問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、複数の押出形材を接合した複数の床版ユニットを連結して橋梁用床版を構成するに際し、改修工事などメンテナンス時において隣接する床版ユニット同士間の連結強度が低下しにくい橋梁用床版を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、互いに隣接する床版ユニットの端縁の各突出片を、それらの表面よりも低い位置に配置し、上方の添接板やボルトの頭などを、各床版ユニットの表面以下のレベルに納まるようにする、ことに着想して成されたものである。
【0007】
即ち、本発明の橋梁用床版(請求項1)は、互いに平行な複数の主桁上に跨って固定され、且つ複数の床版ユニットを連結して構成される橋梁用床版であって、該床版ユニットは、アルミニウム合金からなる複数の押出形材を接合してなり、係る押出形材の長手方向が上記複数の主桁と直交するように固定され、隣接する2つの床版ユニットから互いに接近するように水平に延びた突出片を一体に有し、該突出片は、各床版ユニットにおける押出形材ごとの表面よりも主桁側の低い位置に形成されていると共に、上記各突出片と、該突出片の上・下面に配設した上下一対の添接板とを貫通するボルトにナットが締結されている、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、複数の主桁と直交するように固定される前記床版ユニットは、隣接する床版ユニットとの端部側に互いに接近するように水平に延びた突出片を上記押出形材ごとの表面よりも主桁側の低い位置に有している。そのため、隣接する床版ユニットを連結する一対の突出片の上・下面に配設した上下一対の添接板を貫通するボルトおよびこれに締結されるナットは、各床版ユニットを構成する押出形材の表面よりも主桁側の低い位置にあるので、経年変化によるアスファルトの劣化に伴う道路改修工事を施すべく、道路面材の大部分を剥離しても、ボルト頭が露出したり、上側の添接板が露出し難くなる。その結果、ボルト・ナットの締結が緩んだり、ボルトや添接板が損傷しにくく、床版を構成する複数の床版ユニット間における連結強度が低下しない。従って、改修工事を容易且つ安全に行え、以降のメンテナンスなどの維持管理も容易にし得る。
【0009】
尚、前記主桁には、例えば、I形鋼、あるいは複数の鋼板を溶接で組立てた断面I型の鋼桁が用いられる。しかし、主桁の材質、大きさ、および形状は、前記形態に限られず、架設される橋梁に要求される強度などの性能に応じて適宜変更することができる。
また、前記床版ユニットは、複数の押出形材を、例えば、摩擦攪拌接合(FSW)により接合することで形成される。複数の押出形材は、前記突出片を有する一対の端部用形材と、これらの間に接合される中間用形材とがある。但し、一対の端部用形材のみを接合してなる床版ユニットとしても良い。上記端部用形材および中間用形材は、中空部を有する形態が望ましい。
更に、前記複数の主桁の上面に立設した複数のスタッドジベルを、各床版ユニットごとの押出形材の中空部内に設けた密閉部に、該密閉部が位置する押出形材の底壁に明けた貫通孔から挿入し、係る密閉部にモルタルを充填することで、床版ユニットが複数の主桁上に固定される。
加えて、複数の主桁と床版ユニットとの間、およびその真上の床版ユニットの密閉された中空部には、前記スタッドジベルを受け入れるモルタルが充填される。
【0010】
また、本発明には、前記突出片の上面は、前記押出形材の表面よりも、前記ボルトの頭の高さ、座金の厚み、および前記添接板の板厚の合計値分だけ低い位置か、係る位置よりも更に低い位置に形成されている、橋梁用床版(請求項2)も含まれる。
これによれば、ボルトの頭は、各床版ユニットを構成する押出形材の表面と面一か、係る表面よりも低い主桁側に位置し、座金および上側の添接板は、押出形材の表面よりも低い主桁側に位置している。その結果、道路改修工事を施すべく、道路面材の大部分を剥離しても、ボルト頭や上側の添接板が確実に露出しにくくなる。従って、床版ユニット間の連結構造の損傷を防ぎ、且つ連結強度の低下を阻止することが可能となる。
【0011】
更に、本発明には、前記床版ユニットにおいて、前記押出形材の表面と、前記突出片の上面の基部との間に、上向きに凹んだ曲面が形成されている、橋梁用床版(請求項3)も含まれる。
これによれば、道路面材上を通過する車両の衝撃を伴う前記荷重を繰り返し受けても、隣接する床版ユニット同士の連結部分を構成する一対の突出片の基部付近に対する上記荷重に伴う応力集中を緩和できる。その結果、係る一対の突出片を含む押出形材の疲労強度の低下を阻止することができる。
尚、前記曲面に加え、前記突出片の下面の基部とこれに最接近する側壁との間にも、下向きに凹んだ曲面を更に形成することで、該突出片を含む押出形材の疲労強度の低下を一層確実に阻止することができる。
【0012】
加えて、本発明には、前記隣接する床版ユニットごとの各突出片の上面における平坦面に、前記添接板が配設されている、橋梁用床版(請求項4)も含まれる。
これによれば、上側に位置する添接板の端縁(エッジ)と、隣接する床版ユニットの突出片ごとの前記曲面とが接触しなくなるので、上記添接板が前記荷重を受けても、各曲面への損傷を防止できる。その結果、各突出片の疲労に伴う床版ユニット間の連結強度、および上記突出片を含む前記押出形材の疲労強度の低下を阻止することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の橋梁用床版(F)を構成する床版ユニットUnの概略、およびこれが固定される主桁Kの概略を示す斜視図である。
図1に示すように、左右一対(複数)の主桁Kは、上下一対の水平なフランジ2,3と、これらの中央部を連結する垂直なウェブ4とを有する断面I型の鋼桁からなり、図示しない複数の橋脚上に跨って水平に固定されている。
一方、床版ユニットUnは、図1に示すように、アルミニウム合金(例えば、JIS:A6N01S−T5、A6061S−T6)からなる複数の押出形材E1,E2を接合してなり、係る押出形材E1,E2の長手(押出)方向が前記主桁K,Kの長手方向と直交するように、各主桁Kのフランジ2の上面2a上に、後述するモルタルを介して固定される。
【0014】
前記床版ユニットUnは、図2の上側の断面図に示すように、互いに端部が接合される2個の中間用の押出形材E1と、これらの両端部に接合される2個の端部用の押出形材E2とから構成される。
中間用の押出形材E1は、図2の上側に示すように、上側の水平な表面板5、下側の水平な裏面板8、左右一対の側壁7、これらに囲まれたほぼ角形の中空部s、および表・裏面板5,8から左右に延びた長短一対ずつのフランジ6,9からなる断面を図示の前後方向の全長に沿って有する。
【0015】
一方、端部用の押出形材E2は、図2の上側に示すように、上側の水平な表面板5、下側の水平な裏面板8、左右一対の側壁7、これらに囲まれたほぼ角形の中空部s、一方のみに延びた前記と同じフランジ6、左右一対のフランジ9、および表面板5の表面5aよりも前記主桁K側の低い位置から水平に延びた突出片10からなる断面を図示の前後方向の全長に沿って有する。係る突出片10の基部と表面板5の表面5aとの間には、上向きに凹んだ曲面Rが形成されている。表面板5の表面5aから突出片10の上面までの深さdは、後述するボルト頭の高さ、座金の厚み、および、上側の添接板の板厚の合計値と同じか、これにより若干大である。
尚、上記突出片10の基部とこれに最接近する側壁7との間にも、上記曲面Rと同様な半径の曲面が形成されている。
【0016】
床版ユニットUnを形成するには、中間用の押出形材E1,E1のフランジ6同士の先端部、および隣接して接続すべき中間用の押出形材E1と端部用の押出形材E2とのフランジ6同士の先端部に対し、例えば、公知の摩擦攪拌接合(FSW)を施すことで行われる。
即ち、2個の押出形材E1同士、あるいは接続すべき押出形材E1,E2を両者のフランジ6の先端面を接触させた状態で拘束し、これらの隣接するフランジ6,6の突き合わせ面に沿って、下側および上側の少なくとも一方から円柱形の本体とその底面中央部から同軸心で延びる攪拌ピンとからなる接合ツールを、高速回転させ且つ軸方向に沿って押し込みつつ移動させる。
【0017】
その結果、図2中の白抜きの矢印の下側に示すように、中間用の押出形材E1,E1のフランジ6同士の先端部、および隣接して接続すべき中間用の押出形材E1と端部用の押出形材E2とのフランジ6同士の先端部は、一点鎖線に囲まれた部分拡大図で示すように、アルミニウム合金が固相状態で摩擦攪拌され且つ固化した上下一対の接合部Wによって接合される。そして、図示のように、中間用の押出形材E1,E1とこれらの両外側に位置する端部用の押出形材E2,E2とが、それぞれのフランジ6が水平に接続され、それらの表面板5の表面5aが連続して一体に接合された床版ユニットUn(U1〜Un)が形成される。
尚、床版ユニットUnは、図2で示した形態に限らず、1個または3個以上の中間用の押出形材E1の両外側に端部用の押出形材E2を接合した形態としても良いし、あるいは、2個の端部用の押出形材E2のみを接合した形態としても良い。また、複数の押出形材E1,E2の接合は、前記FSWに限らず、MIGなどの溶接によっても良い。
【0018】
次いで、複数の前記床版ユニットU1〜Unによって本発明の橋梁用床版Fを得るための施工工程を説明する。
予め、図3に示すように、橋梁Bを構成すべく、左右の橋脚(図示せず)上に架設された複数の主桁Kにおける上側のフランジ2の上面2a上に、軸部pおよび上端の太径の頭部hを有するスタッドジベルZを、各軸部pの下端を溶植することで、所定の位置ごとに、フランジ2の幅方向に沿って複数本(1〜4本)立設する。
次に、図4に示すように、各組ごとの複数本のスタッドジベルZを囲むように、主桁Kのフランジ2の上面2aに、平面視が矩形を呈する型枠kを配置する。
次いで、前記主桁Kの付近に搬入された複数の前記床版ユニットU1〜Unを、個別にクレーンなどによって、図4に示すように、複数の主桁K上における所定の位置ごとに配置された複数の型枠kの上に、前記押出形材E1,E2の長手(押出)方向が主桁Kの長手方向と直交するようにして載置する。
【0019】
この際、図4に示すように、隣接する床版ユニットU1,U2は、各突出片10の先端部を接近させた状態で、それぞれにおける端部用の押出形材E2の裏面板8において、各主桁Kの真上となる位置に予め開設した貫通孔8aから、前記スタッドジベルZを中空部s内に挿入させる。
尚、中空部s内において、上記貫通孔8aを挟んだ図4で前後の位置には、一対の仕切板と、これらを連結する複数本の間隔保持ボルト(何れも図示せず)とが配置され、係る一対の仕切板に挟まれた貫通孔8aを含む中空部sは、外部から密閉されている。また、前記スタッドジベルZを挿入する貫通孔8aや上記一対の仕切板などは、中間用の押出形材E1の中空部sにも配設する。
【0020】
次いで、図5に示すように、隣接する床版ユニットU1,U2における端部用の押出形材E2の接近し合った突出片10,10の上・下面に、上下一対の添接板11,12を配設する。係る添接板11,12は、アルミニウム合金からなる押出形材や板材、あるいは、鋼板からなり、鋼板からなる場合には、表面に電食防止用のコーティングがされている。
この際、添接板11における下側の端縁(エッジ)は、押出形材E2ごとの曲面Rを除いた突出片10,10の上面における平坦面に配設される。尚、添接板12における上側の端縁も、押出形材E2ごとの曲面を除いた突出片10,10の下面における平坦面に配設される。
次に、上記突出片10,10および添接板11,12を貫通する複数の貫通孔(図示せず)に、複数のボルトbを個別に貫通させ、それらのネジ部にナットnを個別に締結する。その結果、図5に示すように、互いに先端部が接近した突出片10,10が、添接板11,12を介して、複数組のボルトb・ナットnにより拘束および連結され、同時に隣接する床版ユニットU1,U2も連結される。
尚、上記ボルトb・ナットnとしては、アルミニウムの電食防止を目的とした各種のメッキ・コーティング処理が施された鋼製高力ボルト・ナット、ならびにステンレス鋼製高力ボルト・ナットがある。更に、締結強度を満たすものであれば、アルミニウム合金製高力ボルト・ナットからなるものでも良い。
【0021】
更に、図6の部分拡大図で示すように、連結された床版ユニットU1,U2における端部用の押出形材E2の表面板5において、前記貫通孔8aの真上の位置に開設された注入孔5bから、前後一対の仕切板(図示せず)に挟まれて密閉された中空部s内に、モルタルmを充填して養生する。この際、係るモルタルmの一部は、前記貫通孔8aを通じて、主桁K上の前記型枠kの内側にも充填される。
尚、上記密閉された中空部s内のエアは、注入孔5bから外部に放出されるが、係る注入孔5bの付近に設けたエア抜き孔から外部に放出させても良い。また、前記モルタルmの充填は、型枠kに設けた注入孔から中空部s内に行っても良い。
その結果、隣接する床版ユニットU1,U2(U1〜Un)は、互いの各突出片10を連結された状態で、複数の主桁Kの上方に跨って固定される。
【0022】
この際、図6に示すように、各ボルトbのボルト頭の頂面は、床版ユニットU1,U2の押出形材E2(E1)の表面5aのレベルと同じか、該レベルよりも若干主桁K側の低い位置にある。更に、上側の座金w、および上側の添接板11は、上記表面5aのレベルよりも低い主桁K側の位置にある。
これによって、複数の床版ユニットU1,U2(U1〜Un)が複数の主桁K上に跨って連結・固定された本発明の橋梁用床版Fが構成される。
そして、図7に示すように、前記モルタルmの養生後に、前記型枠kを取り外すと共に、橋梁用床版Fを構成する複数の床版ユニットU1,U2(U1〜Un)の上方に、下地材やアスファルトを含む道路面材14を所定の厚さで敷設する。その結果、係る道路面材14のアスファルト上を、車両などが走行可能な橋梁Bが形成される。
尚、前記押出形材E2におけるスタッドジベルZが挿入された中空部sなどへモルタルmの充填作業は、前記突出片10,10への添接板11,12の配置、およびボルトb・ナットnの締結作業の前に行っても良い。但し、この場合には、上記ボルトb・ナットnの締結作業中に、床版ユニットU1,U2(U1〜Un)間に拘束力が生じて、前記モルタルmが割れないように注意する必要がある。
【0023】
以上において説明した本発明の橋梁用床版Fによれば、複数の床版ユニットU1,U2(U1〜Un)を連結する一対の突出片10の上・下面に配設した上下一対の添接板11,12を貫通するボルトbおよびこれに締結されるナットnは、床版ユニットU1,U2を構成する押出形材E1,E2の表面5aよりも主桁K側の低い位置にある。そのため、経年変化によるアスファルトの劣化に伴う道路改修工事を施すべく、道路面材14の大部分を剥離しても、ボルトbの頭が露出したり、上側の添接板11が露出し難くなる。その結果、ボルト・ナットb,nの締結が緩んだり、ボルトbや添接板11が損傷しにくいので、床版Fを構成する複数の床版ユニットU1〜Un間の連結強度が低下しなくなる。
【0024】
更に、床版ユニットU1〜Unにおいて、押出形材E1,E2の表面5aと、前記突出片10の上面の基部との間に、上向きに凹んだ曲面Rが形成されているので、隣接する床版ユニットU1,U2の連結部分を構成する一対の突出片10,10の基部付近に対する前記荷重に伴う応力集中を緩和することができる。その結果、係る一対の突出片10を含む隣接する床版ユニットU1,U2の連結部分の疲労強度の低下を抑制することができる。
加えて、隣接する床版ユニットU1,U2の各突出片10の上面における平坦面に接して、上側の添接板11が配設されているので、係る添接板11の端縁(エッジ)と、各突出片10の基部側の曲面Rとが接触しなくなる。その結果、添接板11が前記荷重を受けても、各曲面Rへの損傷を防止できるため、各突出片10の疲労に伴う床版ユニットU1〜Un間の連結強度、および上記突出片10を含む前記押出形材E2の疲労強度の低下を阻止することが可能となる。
【0025】
本発明は、前述した形態に限定されるものではない。
例えば、押出形材E2の表面5aと前記突出片10の上面の基部との間に形成される上向きに凹んだ曲面Rは、図8の断面図で示すように、表面5a側のみが曲面rで且つ突出片10の上面の基部側をこれに連続する傾斜面(テーパ面)tとした形態、あるいは、図9の断面図で示すように、表面5a側が傾斜面tで且つ突出片10の上面の基部側をこれに連続する曲面rとした形態としても良い。
また、前記曲面Rに替えて、押出形材E2の表面5aと突出片10の上面の基部との間に、単一の傾斜面tを形成した形態としても良い。
更に、前記主桁Kは、単一のI形鋼に限らず、複数の鋼板を溶接で組立てた断面I型の鋼桁としたり、同様な断面を有するアルミニウム合金の押出形材を適用しても良い。特に、荷重が小さい歩道橋、添加橋、高架デッキ、あるいは高架廊下には、上記押出形材が好適である。
また、前記主桁Kが長手方向に沿って、上向きに緩く反ったキャンバを付されている場合、前記添接板11,12は、左右の突出片10,10間に位置する付近に小さな角度のへ字形の曲げを付与したものとしても良い。
加えて、スタッドジベルは、前記形態に限らず、直方体の本体とその上部に溶着したほぼ半円形のリング片などとからなる形態としても良い。
その他、本発明は、その趣旨を保った範囲で適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の橋梁用床版を構成する床版ユニットおよびこれが固定される主桁の概略を示す斜視図。
【図2】上記床版ユニットおよびこれを構成する押出形材を示す断面図。
【図3】主桁の上に床版ユニットを固定するための施工工程を示す概略図。
【図4】図3に続く施工工程を示す概略図。
【図5】図4に続く施工工程を示す概略図。
【図6】図5に続く施工工程および本発明の橋梁用床版を示す概略図。
【図7】上記橋梁用床版に対する仕上げ工程を示す概略図。
【図8】前記押出形材の異なる形態を示す部分断面図。
【図9】前記押出形材の更に異なる形態を示す部分断面図。
【図10】特許文献2の橋梁用床版の連結部分を示す参考形態の概略図。
【符号の説明】
【0027】
5a…………表面
10…………突出片
11,12…添接板
R……………曲面
b……………ボルト
n……………ナット
w……………座金
E1,E2…押出形材
K……………主桁
F……………橋梁用床版
B……………橋梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数の主桁上に跨って固定され、且つ複数の床版ユニットを連結して構成される橋梁用床版であって、
上記床版ユニットは、アルミニウム合金からなる複数の押出形材を接合してなり、係る押出形材の長手方向が上記複数の主桁と直交するように固定され、
隣接する2つの床版ユニットから互いに接近するように水平に延びた突出片を一体に有し、該突出片は、各床版ユニットにおける押出形材ごとの表面よりも主桁側の低い位置に形成されていると共に、
上記各突出片と、該突出片の上・下面に配設した上下一対の添接板とを貫通するボルトにナットが締結されている、
ことを特徴とする橋梁用床版。
【請求項2】
前記突出片の上面は、前記押出形材の表面よりも、前記ボルトの頭の高さ、座金の厚み、および前記添接板の板厚の合計値分だけ低い位置か、係る位置よりも更に低い位置に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁用床版。
【請求項3】
前記床版ユニットにおいて、前記押出形材の表面と、前記突出片の上面の基部との間に、上向きに凹んだ曲面が形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁用床版。
【請求項4】
前記隣接する床版ユニットごとの各突出片の上面における平坦面に、前記添接板が配設されている、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の橋梁用床版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−31605(P2010−31605A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197362(P2008−197362)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、道路橋用アルミニウム床版技術の開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】