説明

機器の制御装置

【課題】機器の制御装置の、制御装置本体への防湿効果を落とすことなく、防湿ポッティング材を大幅に減らすこと。
【解決手段】制御装置本体6を内装し、内部に防湿ポッティング材8を充填する保護ケース15は、内底部22に、前記制御装置本体6の半田面6b周辺を載置する曲線または直線により閉ループ状に形成した接触部17を設け、前記接触部17に前記制御装置本体6を密着固定することで前記制御装置本体6の裏面の半田面6b側に防湿ポッティング材8を充填しない閉空間16を形成し、保護ケース15の内底部22に微小な開口部24を設け、この開口部24周囲を囲うように保護ケース15内側にリブ25を配設したことにより、制御装置本体6への防湿効果を落とすことなく、防湿ポッティング材8を大幅に減らすことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転を制御する制御装置本体を防湿ポッティング材で防水処理した機器の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機器、特に、洗濯機などの水使用機器に搭載される制御装置には、プリント基板にスイッチや発光ダイオードなどの各種電子部品を実装しており、これらの防水性を得るために、各種電子部品の導体部表面にウレタン樹脂等よりなる防湿ポッティング材にて防水処理を行なっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4〜6は、特許文献1に記載された従来の洗濯機の制御装置の構成を示すものである。図4の制御装置構成の要部断面図に示すように、洗濯機の筐体1の上方には、上枠を形成するトップカバー2を有しており、このトップカバー2に操作部3を形成するとともに、上部筐体4と結合させている。前記トップカバー2と上部筐体4で構成した空間13内に配置した保護ケース5は、運転を制御する制御装置本体6を内装するもので、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂により、断面略コ字状の上面切欠の開放部を有し、底面が略長方形の平坦で浅底に形成している。
【0004】
前記制御装置本体6は、配線パターンを形成したプリント基板にスイッチ12や電子部品14を実装し、前記保護ケース5内に内装され、図5の要部分解斜視図に示すように、ねじ7により保護ケース5に固定する。
【0005】
保護ケース5内は、プリント基板の半田面(スイッチ12と反対側)にも防湿処理を行うために、図6の制御装置構成の防湿ポッティング注入方式を示す断面図に示すように、保護ケース側に設けた凸部5a、5bの段差により隙間を確保して充填できるようにしている。
【0006】
保護ケース5内にウレタン樹脂などよりなる防湿ポッティング材8を上部から、ポッティング注入器9により、プリント基板の表裏周囲を防湿ポッティング材8で完全に充填し、制御装置本体6を防湿処理して保護ケース一体型制御装置10を構成している。
【特許文献1】特開2002−315993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこのような従来の構成では、制御装置本体6のプリント基板の周囲全てを防湿ポッティング材で覆う必要がある為、防湿ポッティング材の注入量も多くなり、硬化させるために必要な時間も、例えば80℃の硬化炉で1時間以上の保持が必要であり、材料費に加えて生産性にも課題があった。
【0008】
また、制御装置本体6は、保護ケース5と一体となっているために、プリント基板上に実装された電子部品に不具合が判明した場合、スイッチや電子部品は防湿ポッティング材で覆われているため個々の修理はせず、保護ケース一体型制御装置10全体を交換修理するのが一般的で、交換時に、スイッチや電子部品に加えて、多量のウレタン樹脂等よりなる防湿ポッティング材を産業廃棄物として廃棄することになるという課題があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するもので、制御装置本体への防湿効果を落とすことなく、防湿ポッティング材を大幅に減らすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、表面に電子部材を実装し裏面を半田面としたプリント基板で構成した制御装置本体を、前記表面を上向けにして保護ケース内に収納し、前記保護ケース内に充填する防湿ポッティング材を備え、前記保護ケースは、内底部に、前記制御装置本体の半田面周辺を載置する曲線または直線により閉ループ状に形成した接触部を設け、前記接触部に前記制御装置本体を上方から密着固定することで前記制御装置本体の裏面の半田面側に防湿ポッティング材を充填しない閉空間を形成し、かつ、前記保護ケースの内底部に、前記閉空間と前記保護ケースの外部とを連通する微小な開口部を設け、前記開口部周囲を囲うように前記保護ケース内側にリブを配設したものである。
【0011】
これにより、保護ケースと制御装置本体の半田面との間に防湿ポッティング材を充填しない閉空間を形成し、保護ケースの内底部に微小な開口部を設け、この開口部周囲を囲うように保護ケース内側にリブを配設させることで、制御装置本体への防湿効果を落とすことなく、防湿ポッティング材を大幅に減らすことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の機器の制御装置は、制御装置本体への防湿効果を落とすことなく、防湿ポッティング材の使用量を大幅に減らせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、機器の運転を制御するプリント基板で構成され、表面に電子部材を実装し裏面を半田面とした制御装置本体と、前記制御装置本体を前記表面を上向けにして内装する内底部が平坦で浅底の保護ケースと、前記保護ケース内に充填し前記制御装置本体を防湿処理するウレタン樹脂等よりなる防湿ポッティング材とを備え、前記保護ケースは、前記内底部に、前記制御装置本体の半田面周辺を載置する曲線または直線により閉ループ状に形成した接触部を設け、前記接触部に前記制御装置本体を上方から密着固定することで前記制御装置本体の裏面の半田面側に防湿ポッティング材を充填しない閉空間を形成し、かつ、前記保護ケースの内底部に、前記閉空間と前記保護ケースの外部とを連通する微小な開口部を設け、前記開口部周囲を囲うように前記保護ケース内側にリブを配設したことにより、防湿ポッティング材を大幅に減らすことができるとともに、開口部により閉空間と大気との圧力差を無くし、呼吸作用による外部からの水分侵入で半田部が結露するのを防止して防湿効果の低下を防ぐことができる。また、製造上の問題等で、前記制御装置本体の裏面の防湿ポッティング材を充填しない閉空間に、防湿ポッティング材が流れ込んだとしても、前記開口部を塞いでしまうことを防止することができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明のリブは、制御装置本体を支持する高さで構成するとともに、前記制御装置本体を支持する面の一部に切り欠きを設けたことにより、前記制御装置の固定をより強固にできるとともに、閉空間と大気との圧力差による結露や上部からの防湿ポッティング材の流入などによる防湿効果の低下を防止することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における機器の制御装置の要部断面図であり、図2は同機器の制御装置の分解斜視図であり、図3は同機器の制御装置の要部拡大斜視図である。図1の要部断面図に示すように、洗濯機の筐体1上方に上部筐体4を配し、上枠を形成するトップカバー2とで構成した空間13内に、制御装置本体6を内設した上方に開放部
21を有する保護ケース15を配する。
【0017】
制御装置本体6は、プリント基板で構成され、保護ケース15の内底部22に高さ寸法Hの段差を形成するように隆起させて一体形成した接触部17に、電子部材を実装した表面6aを上向けにして制御装置本体6の周辺を密着載置しつつ、ねじ18にて締結固定する。よって、制御装置本体6の裏面の半田面6b側と保護ケース15の内底部22との間には高さ寸法Hの閉空間16が構成される。
【0018】
また、開放部21側から充填される防湿ポッティング材8は、前記閉空間16とは反対側の表面6a側、即ちスイッチ12や電子部材14などの実装側に充填され、プリント基板の半田面6b側(スイッチ12と反対側)である閉空間16には充填されない。従って、防湿ポッティング材8および制御装置本体6により密閉状態となり、閉空間16に面した制御装置本体6の半田面6b側は保護ケース15の外部と遮断する事ができる。
【0019】
また、保護ケース15と制御装置本体6の半田面6bの間に形成した閉空間16と外部とを連通する微小な開口部24(例えばφ0.8mm程度の小孔)を保護ケース15の内底部22に設けて、閉空間16と外部との圧力差を無くしている。そして、開口部24の周囲を囲うように高さ寸法Hのリブ25を構成しており、このリブ25の天面25aにも、制御装置本体6が接触して支持する構造となっている。
【0020】
図2の要部分解斜視図に示すように、保護ケース15は、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂により、上面切欠の開放部21を有し、底面が略長方形の浅底で平坦に形成し、内部周囲に、制御装置本体6が密着載置する高さ寸法Hの段差を有する接触部17を形成するとともに、開口部24の周囲を囲うように高さ寸法Hのリブ25を構成しており、このリブ25の天面25aにも、制御装置本体6が接触して支持する構造となっている。
【0021】
前記接触部17は、平面形状を曲線または直線により閉ループ状に形成し、制御装置本体6の半田面の周辺を載置し、制御装置本体6との密着性を高める為、保護ケース15の周縁部に複数個の取り付けボス部I9を一体形成し、複数個のネジ18にて周縁部を固定する。
【0022】
また、必要に応じて、接触部17と制御装置本体6との間に薄肉のゴムシート等で構成されたパッキン20を追加使用すれば、より密閉効果を高めることができる。
【0023】
図3は、保護ケース15と制御装置本体6の半田面6bの間に形成した閉空間16と外部とを連通する微小な開口部24周辺の要部拡大斜視図である。図に示すように開口部24の周囲を囲うように高さ寸法Hのリブ25を構成しており、さらにリブ25の天面25aの一部に切り欠き25bを設けている。
【0024】
以上のように構成された機器の制御装置について、以下その動作、作用、効果を説明する。まず、運転を制御する制御装置本体6を内装する内底部22が平坦で浅底の保護ケース15は、制御装置本体6の半田面6b側に閉空間16を形成し、前記保護ケース15に、前記制御装置本体6を防湿処理するウレタン樹脂等よりなる防湿ポッティング材8をスイッチ12等の電子部材側にのみ充填したので、防湿ポッティング材8を大幅に減らすとともに、大気から遮断させることができるので、防湿効果を得ることが可能となる。
【0025】
一般的に、制御装置をポッティングする際の厚みは、半田面は電子部品のリードやマイコン等があるため、最低でも3mm程度は必要であり、反対の部品面でも抵抗やLEDのリード等を覆うために最低でも3mmは必要である。半田面6b側の防湿ポッティング材
の充填が無くなることで、防湿ポッティング材の材料費は約半分になるため、材料コストを下げることができるとともに、加工生産性が向上し、かつ使用量を減らすことで環境にやさしい制御装置を提供することが可能となる。
【0026】
また、保護ケース15と制御装置本体6の半田面6bの間に形成した閉空間16は、閉空間16内部の圧力と周囲の圧力に差がある場合、呼吸作用が働き、閉空間16の外部が高温高湿状態の場合、内方に結露し、半田面6bの絶縁性を低下する恐れがあるが、閉空間16側と外部とを連通する微小な開口部24を設けることにより、閉空間16と外部との圧力差を無くし、呼吸作用による外部からの水侵入を防ぐことができるため、半田面6bが結露するのを防止することができる。
【0027】
そして、制御装置本体6の周辺は全周にわたって保護ケース15と密着しているため、上方から注入される防湿ポッティング材8は、制御装置本体6の裏面の半田面6b側には、基本的には侵入しないが、プリント基板に紙フェノール材を使用した場合など、生産加工行程で、半田ディップ槽での基板の反りが残っている場合があり、かつ、防湿ポッティング材8は充填時25℃における粘度が1300cpsと高いが、硬化するまでは、わずかな隙間があれば制御装置本体6と保護ケース15の接触部17との隙間から半田面6b側へ流れ込む可能性もある。しかし、万一このように防湿ポッティング材8が半田面6b側に流れ込んだとしても、開口部24の周囲を囲うように高さ寸法Hのリブ25を構成しているため、開口部24を防湿ポッティング材8で塞ぐことがなく、防湿性能が低下するのを防ぐことができる。
【0028】
さらに、リブ25は制御装置本体6が接触部17上に載置された時にほぼ接触して支持される高さ寸法H、すなわち制御装置本体6の周辺を密着載置する保護ケース15の内底部22の接触部17と同じ高さに構成されており、使用者が操作部3を操作して、スイッチ12を下に押しても、このリブ25で制御装置本体6を支えているため、制御装置本体6が反ってストレスが加わることを防止することができる。なお、このリブ25の配置場所としてはスイッチ12の下が望ましいことは言うまでもない。
【0029】
また、このリブ25の天面25aには一部に切り欠き25bを設けているため、この切り欠き25bは閉空間16とつながっており、外部とを連通する微小な開口部24の効果を低下させることがない。
【0030】
以上のように、本発明にかかる機器の制御装置は、保護ケースと制御装置本体の半田面との間に閉空間を形成させるとともに、保護ケースの内底部に微小な開口部を設け、この開口部周囲を囲うように保護ケース内側にリブを配設することで、制御装置本体への防湿効果を落とすことなく、防湿ポッティング材を大幅に減らすことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる機器の制御装置は、制御装置本体への防湿効果を落とすことなく、防湿ポッティング材を大幅に減らすことが可能となるので、洗濯機などの水使用機器に搭載される制御装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1における機器の制御装置の要部断面図
【図2】同機器の制御装置の要部分解斜視図
【図3】同機器の制御装置の要部拡大斜視図
【図4】従来の機器の制御装置の要部断面図
【図5】従来の機器の制御装置の要部分解斜視図
【図6】従来の機器の制御装置の防湿ポッティング注入方式を示す断面図
【符号の説明】
【0033】
6 制御装置本体
6a 表面
6b 半田面
8 防湿ポッティング材
15 保護ケース
16 閉空間
17 接触部
22 内底部
24 開口部
25 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の運転を制御するプリント基板で構成され、表面に電子部材を実装し裏面を半田面とした制御装置本体と、前記制御装置本体を前記表面を上向けにして内装する内底部が平坦で浅底の保護ケースと、前記保護ケース内に充填し前記制御装置本体を防湿処理するウレタン樹脂等よりなる防湿ポッティング材とを備え、前記保護ケースは、前記内底部に、前記制御装置本体の半田面周辺を載置する曲線または直線により閉ループ状に形成した接触部を設け、前記接触部に前記制御装置本体を上方から密着固定することで前記制御装置本体の裏面の半田面側に防湿ポッティング材を充填しない閉空間を形成し、かつ、前記保護ケースの内底部に、前記閉空間と前記保護ケースの外部とを連通する微小な開口部を設け、前記開口部周囲を囲うように前記保護ケース内側にリブを配設した機器の制御装置。
【請求項2】
リブは、制御装置本体を支持する高さで構成するとともに、前記制御装置本体を支持する面の一部に切り欠きを設けた請求項1に記載の機器の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279(P2010−279A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162910(P2008−162910)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】