説明

機器の制御装置

【課題】安価で背が高くない一般的なコネクタを使用した場合でも、防湿ポッティング材を充填した時にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入しないようにする。
【解決手段】コネクタ15をプリント基板13に実装し機器の運転を制御する制御装置本体12と、制御装置本体12を内装する略凹形状の保護ケース16と、制御装置本体12の充電露出部30を被覆する保護ケース内に充填した防湿ポッティング材20とを備え、プリント基板13上には、コネクタ15の周囲を囲む囲い部材18を設け、囲い部材18の高さは、プリント基板上面28から防湿ポッティング材上面部27までの高さより高くした構成の機器の制御装置とすることにより、コネクタの電気接続部にポッティング材が浸入せず、かつコストが安価でコネクタの高さ方向の制限を受けない設計の自由度が高い機器の制御装置を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転を制御する制御装置本体を防湿ポッティング材で防水処理した機器の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機器、特に、洗濯機などの水使用機器に搭載される制御装置には、プリント基板に抵抗やコンデンサなどの各種電子部品やコネクタを実装しており、これらの防水性を得るために、各種電子部品等の充電露出部にウレタン樹脂等よりなる防湿ポッティング材にて防水処理を行なっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4、図5は、特許文献1に記載された従来の洗濯機の制御装置の構成を示すものである。図4は、従来の機器の制御装置の側面図、図5は、同機器の制御装置の要部断面図である。
【0004】
図4に示すように、制御装置本体1は、プリント基板2に電子部品3やコネクタ4を半田実装しており、この制御装置本体1をポリプロピレン樹脂もしくはABS樹脂などの熱可塑性樹脂により成形された略凹形状の保護ケース5にツメにより固定する。保護ケース5内にウレタン樹脂などからなる防湿ポッティング材6を上部から、ポッティング注入器(図示せず)により充填し、制御装置本体1の防湿処理を施している。
【0005】
つぎに、図5に示すように、防湿ポッティング材6はプリント基板2の両面に半田実装した抵抗7やコンデンザ8やIC9等の充電露出部を覆い隠すように充填する。
【0006】
コネクタ4はハウジング4aと端子4bから構成され、端子4bをプリント基板2の裏面で半田固定している。またコネクタ4の電気接続部10に防湿ポッティング材6が浸入しないように電気接続部10の高さを防湿ポッティング材6より高い位置に設定した防湿ポッティング専用のコネクタを使用する。相手コネクタ11はコネクタ4同様に、ハウジング11aと端子11bとで構成され、端子11bには機器のメイン制御を行なうメイン制御装置本体(図示せず)に電気信号を伝えるためのリード線11cを圧着固定している。
【0007】
上記構成において、コネクタ4の電気接続部10には防湿ポッティング材6の浸入がなく相手コネクタ11をコネクタ4に接続した際、導通不良がなく確実に電気信号をメイン制御装置本体側に伝える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−315993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の構成では、コネクタの電気接続部に防湿ポッティング材が浸入しないように電気接続部の高さを防湿ポッティング材より高い位置に設定した防湿ポッティング専用のコネクタを使用することが必須条件となり、専用のコネクタを使うことでコストが高くなるという課題を有していた。また、防湿ポッティング専用のコネクタは背が高いので高さ方向に制限を受け、設計する上での制約が多くなり、製品の小型化等に対する寸法上の課題を有していた。
【0010】
また、市販の制御装置本体を洗濯機などの水使用機器に使用する場合、防湿ポッティング専用のコネクタを使用しなければ、防湿ポッティング材を充填する際にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入してしまうので、高価な防湿ポッティング専用のコネクタに変更して使用しなければならず、コスト高になるという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、制御装置に高価な防湿ポッティング専用のコネクタを使用せずに安価な一般的なコネクタを使用した場合でも、防湿ポッティング材を充填した時にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入せず、かつコストが安価でコネクタの高さ方向の制限を受けない機器の制御装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、安価な市販の制御装置本体を洗濯機などの水使用機器に使用する場合において、防湿ポッティング専用のコネクタに変更せずとも、防湿ポッティング材を充填した時にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入することなく市販の制御装置本体の状態のまま使用できるようにすることで、コストが安価でコネクタの高さ方向の制限を受けない機器の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の機器の制御装置は、コネクタをプリント基板に実装し機器の運転を制御する制御装置本体と、前記制御装置本体を内装する略凹形状の保護ケースと、前記制御装置本体の充電露出部を被覆する前記保護ケース内に充填した防湿ポッティング材とを備え、前記プリント基板上には、前記コネクタの周囲を囲む囲い部材を設け、前記囲い部材の高さは、前記プリント基板上面から前記防湿ポッティング材上面部までの高さより高くした構成としたものである。
【0014】
これによって、制御装置に高価な防湿ポッティング専用のコネクタを使用せずに一般的なコネクタを使用した場合でも、防湿ポッティング材を充填した時にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入しない機器の制御装置を実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御装置に高価な防湿ポッティング専用のコネクタを使用せずに、安価で背が高くない一般的なコネクタを使用した場合でも、防湿ポッティング材を充填した時にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入せず、かつコストが安価でコネクタの高さ方向の制限を受けない設計の自由度が高い機器の制御装置を実現することができる。
【0016】
また、市販の制御装置本体を洗濯機などの水使用機器に使用する場合において、防湿ポッティング専用のコネクタに変更せずとも、防湿ポッティング材を充填した時にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入することなく、市販の制御装置本体の状態のまま使用できるようにすることで、コストが安価でコネクタの高さ方向の制限を受けない設計の自由度が高い機器の制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における機器の制御装置の上面図
【図2】同機器の制御装置の側面図
【図3】同機器の制御装置の要部断面図
【図4】従来の機器の制御装置の側面図
【図5】従来の機器の制御装置の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、コネクタをプリント基板に実装し機器の運転を制御する制御装置本体と
、前記制御装置本体を内装する略凹形状の保護ケースと、前記制御装置本体の充電露出部を被覆する前記保護ケース内に充填した防湿ポッティング材とを備え、前記プリント基板上には、前記コネクタの周囲を囲む囲い部材を設け、前記囲い部材の高さは、前記プリント基板上面から前記防湿ポッティング材上面部までの高さより高くした構成とすることにより、制御装置に高価な防湿ポッティング専用のコネクタを使用せずに安価な一般的なコネクタを使用した場合でも、防湿ポッティング材を充填した時にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入せず、かつコストが安価でコネクタの高さ方向の制限を受けない設計の自由度が高い機器の制御装置を実現することができる。
【0019】
また、市販の制御装置本体を洗濯機などの水使用機器に使用する場合において、防湿ポッティング専用のコネクタに変更せずとも、防湿ポッティング材を充填した時にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入することなく、市販の制御装置本体の状態のまま使用できるようにすることで、コストが安価でコネクタの高さ方向の制限を受けない設計の自由度が高い機器の制御装置を実現することができる。
【0020】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記プリント基板と前記囲い部材との当接部の外周には、樹脂材を塗布した構成とすることにより、さらにコネクタの電気接続部に防湿ポッティング材が浸入することを確実に防ぐことができ、生産性を向上させることができる。
【0021】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記防湿ポッティング材の粘度が高くなるほど、前記囲い部材の高さが高くなるように設定した構成とすることにより、高い粘度の防湿ポッティング材を流しこんだときの樹脂の流れにより表面張力で囲い部材を乗り越えて、コネクタの上部より浸入しようとする防湿ポッティング材を防ぐことで、防湿ポッティング材の充填するときの速度設定に自由度を持たせることができるようになり、生産性を向上させることができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における機器の制御装置の上面図、図2は同機器の制御装置の側面図、図3は、同機器の制御装置の要部断面図である。
【0024】
図1及び2において、制御装置本体12は、プリント基板13に電子部品14やコネクタ15を半田実装しており、この制御装置本体12をポリプロピレン樹脂もしくはABS樹脂などの熱可塑性樹脂により成形された略凹形状の保護ケース16にツメ17にて固定する。
【0025】
またコネクタ15の周囲を覆うように、塩ビチューブからなる囲い部材18を上部から被せ、プリント基板上面28と当接させる。囲い部材18とプリント基板13との当接部26の外周にシリコン製の樹脂材19を塗布し、当接部26の隙間をシールする。
【0026】
囲い部材18の高さは、ウレタン樹脂などからなる防湿ポッティング材20を流しこむ際、樹脂の流れにより表面張力で囲い部材18を乗り越え、コネクタ15の上部から防湿ポッティング材が浸入することがある。これを防止するために、囲い部材18の高さH1は、プリント基板上面28から防湿ポッティング材上面部27までの高さH2の1.5倍に設定し、防湿ポッティング材20が囲い部材18を乗り越えないようにする。
【0027】
機器、特に、洗濯機などの水使用機器に搭載される制御装置では、保護ケース16内に
ウレタン樹脂などからなる防湿ポッティング材20を上部から約毎秒15gの速度でポッティング注入器(図示せず)より充填し、制御装置本体12の防湿処理を施している。
【0028】
図3において、防湿ポッティング材20はプリント基板13に半田実装した抵抗21やコンデンサ22やIC23等の充電露出部30を覆い隠すように、プリント基板13の上下両面に充填する。
【0029】
コネクタ15はハウジング15aと端子15bから構成され、端子15bをプリント基板13の表面で半田により固定している。またコネクタ15の電気接続部24に防湿ポッティング材20が浸入しないようにコネクタ15の周囲に囲い部材18を配置し、囲い部材18とプリント基板13の当接面にシリコン製の樹脂材19を塗布する。
【0030】
相手コネクタ25はコネクタ15と同様に、ハウジング25aと端子25bとで構成され、端子25bには機器のメイン制御を行なうメイン制御装置本体(図示せず)に電気信号を伝えるためのリード線25cを圧着固定している。
【0031】
以上のように構成された機器の制御装置について、以下にその動作、作用、および効果を説明する。
【0032】
図1、図2、図3において、防湿ポッティング材20を充填すると、コネクタ15のプリント基板13との当接面29には、囲い部材18があるので、防湿ポッティング材20の浸入を防ぐことができる。さらには、囲い部材18とプリント基板13との当接部26の外周に塗布されたシリコン製の樹脂材19により、一層確実に、当接面29への防湿ポッティング材20の浸入を防ぐことができる。
【0033】
これにより、コネクタ15の電気接続部24への防湿ポッティング材20の浸入を防ぐことができる。一方で、抵抗21やコンデンサ22やIC23等の充電露出部30については、防湿ポッティング材20によって覆い隠すことができる。
【0034】
これにより、従来例の図5のような、電気接続部10の高さを防湿ポッティング材6の上面より高い位置に設定した防湿ポッティング専用の背が高いコネクタを使用しなくても、図3のような一般的な背が高くないコネクタ15を用いて、防湿ポッティング材20の充填が確実にできるので、安価で、高さ方向の制約が少ない機器の制御装置を実現することができる。
【0035】
また、市販の制御装置本体12を洗濯機などの水使用機器に使用する場合、防湿ポッティング専用のコネクタに変更しなくても、コネクタ15の電気接続部24にポッティング材が浸入しないように、防湿ポッティング材20を充填することができる。
【0036】
また、粘度の高い樹脂の流れにより、表面張力で囲い部材18を乗り越え、コネクタ15の上部より防湿ポッティング材20が浸入しないように、囲い部材18の高さH1をプリント基板上面28から防湿ポッティング材上面部27までの高さH2の1.5倍に設定したことで、防湿ポッティング材の充填するときの速度設定に自由度を持たせることができるようになり、生産性を向上させることができる。
【0037】
また、本実施の形態では、図3で示したように、囲い部材18とプリント基板13との当接部26の外周にシリコン製の樹脂材19を塗布することでシールする構成としたが、あくまでも一例であり、防湿ポッティング材20の粘度が2000mPa・S以上の粘度の高いものを使用した場合には、表面張力が極めて大きくなり、当接部26の隙間から防湿ポッティング材20が侵入することがなくなる。即ち、この様な場合には、シリコン製
の樹脂材19を廃止することができ、シールをしなくても囲い部材18を設置するだけで防湿ポッティング材20の浸入を防ぐことができ、更に安価な機器の制御装置を実現することができる。
【0038】
上記実施の形態1は、洗濯機について記載したが、制御装置を使用する水回り機器であれば、同等の構成とすることにより、同等の効果を得ることができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる機器の制御装置は、制御装置に高価な防湿ポッティング専用のコネクタを使用せずに安価な一般的な背が高くないコネクタを使用した場合でも、防湿ポッティング材を充填した時にコネクタの電気接続部にポッティング材が浸入せず、かつコストが安価でコネクタの高さ方向の制限を受けない設計の自由度が高い機器の制御装置を実現することができるもので、洗濯機に限らず、制御装置を使用する水回り機器等に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
12 制御装置本体
13 プリント基板
14 電子部品
15 コネクタ
16 保護ケース
18 囲い部材
19 樹脂材
20 防湿ポッティング材
26 当接部
27 防湿ポッティング材上面部
28 プリント基板上面
30 充電露出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタをプリント基板に実装し機器の運転を制御する制御装置本体と、前記制御装置本体を内装する略凹形状の保護ケースと、前記制御装置本体の充電露出部を被覆する前記保護ケース内に充填した防湿ポッティング材とを備え、前記プリント基板上には、前記コネクタの周囲を囲む囲い部材を設け、前記囲い部材の高さは、前記プリント基板上面から前記防湿ポッティング材上面部までの高さより高くした構成の機器の制御装置。
【請求項2】
前記プリント基板と前記囲い部材との当接部の外周には、樹脂材を塗布した構成とする請求項1に記載の機器の制御装置。
【請求項3】
前記防湿ポッティング材の粘度が高くなるほど、前記囲い部材の高さが高くなるように設定した構成の請求項1または2に記載の機器の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69832(P2013−69832A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206930(P2011−206930)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】