説明

機器制御装置、機器制御装置の機能制限方法、および機能制限システム

【課題】プロセス制御に関連するフィールド機器の状態に基づいて、適切で安全な機能制限レベルを設定できる機器制御装置、機器制御装置の機能制限方法、および機能制限システムを提供する。
【解決手段】プロセス制御を行うシステムに配置されたフィールド機器に対して機器制御を行うとともに、この機器制御を実行するための複数の制御機能のいずれかを機能制限できる機器制御装置200において、フィールド機器の状態のうち、プロセス制御に関連する状態信号を取得する取得手段210と、取得手段210によって取得された状態信号に基づいて機能制限のレベルを設定する設定手段220と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器制御装置、機器制御装置の機能制限方法、および機能制限システムに関し、特に、安全な機能制限を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
化学プラントなどのプロセス制御システムでは、圧力伝送器、温度伝送器、流量計およびバルブポジショナなどのフィールド機器に対する設定、調整などの制御(以下、「機器制御」という)を行う機器制御装置(以下、「ホスト」という)が用いられる。
【0003】
ホストには、DCS(Distributed Contol System)、PC(Personal Computer)および携帯端末などがあり、例えばフィールドバスを介してフィールド機器に接続され、デジタル通信を行う。
【0004】
機器制御を実行するにあたって、設定機能、調整機能などの複数の制御機能があり、ホストは各種制御機能を実行することによって、フィールド機器を制御する。
【0005】
フィールドバスの規格には、複数の制御機能のうち、いずれの機能の実行を制限するかを定義した、Classと呼ばれる機能制限レベルが存在する。この機能制限レベルについて図3を用いて説明する。
【0006】
図3は、プロセス制御システムの構成図であり、図3(a)は、プロセス制御を行う工場が稼働中の構成図、図3(b)は、工場が稼働前の構成図である。
【0007】
図3(a)において、プロセス制御システム10aは、ホスト20a、21a、フィールド機器30a、31a、32a、フィールドバスFBを備える。
【0008】
フィールド機器30a、31a、32aは、圧力や流量などの測定および流量調整をするために、プロセス制御システム10aの中の配管、タンク、バルブ(図示しない)などに配置され、フィールドバスFBを介してホスト20a、21aに接続される。
【0009】
ここで、ホスト20aは、機能制限レベルのClass62に設定され、ホスト21aは、機能制限レベルのClass61に設定されている。
【0010】
機能制限レベルのClass62は、設定機能と調整機能が制限されて実行することができず、調整機能の調整値の読み込みだけを行うことができる。これによって、携帯端末であるホスト20aは、フィールド機器への設定、調整を行うことができない。
【0011】
一方、機能制限レベルのClass61は、機能制限が無く、すべての制御機能を実行することができる。これによって、DCSやPCであるホスト21aは、フィールド機器への設定、調整を行うことができる。
【0012】
機能制限レベルのClass62とClass61とを比較すると、Class62の方が、Class61よりも機能制限レベルは高いと言える。これによって、携帯端末であるホスト20aからのフィールド機器への不用意な設定変更、調整を防止できる。
【0013】
また、図3(b)は、図3(a)と同様の構成であり、ホスト20b、21b、フィールド機器30b、31b、32b、フィールドバスFBによってプロセス制御システム10bが構成される。
【0014】
ここで、図3(a)との違いは、ホスト20b、21bに設定された機能制限レベルである。具体的には、ホスト20bは、機能制限レベルのClass64に設定され、ホスト21bは、機能制限レベルのClass63に設定されている。
【0015】
基本的には、Class64はClass62と同様の機能制限を有し、Class63はClass61と同様の機能制限を有する。しかし、Class64とClass63は稼働中の工場では使用できない。稼働中の工場で使用できるのは、Class62とClass61である。なお、同一のホストには、異なる機能制限レベルを設定される場合もある。
【0016】
ホストへの機能制限レベルの設定は、ホストへの制御機能アプリケーションソフトウエアのインストール時に、ライセンス情報またはユーザーアカウントを確認して自動的に行われる。また、インストール後に、ユーザーが、ライセンス情報またはユーザーアカウントを使用して、機能制限レベルを変更することができる。
【0017】
特許文献1、2には、ライセンス認証、ユーザー認証またはイベントの発生によって、機能制限の制御を行う電子機器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2009−38584号公報
【特許文献2】特開2003−44798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ホストに設定される機能制限レベルは、制御対象であるフィールド機器の種類、稼働状態、アラームの種類、制御ループの形成状態または配置された位置などのプロセス制御に関連するフィールド機器の状態に基づいて決定されることが好ましい。
【0020】
しかし、上述したライセンス情報またはユーザーアカウントには、これらの状態が反映されていないため、ホストに不適切な機能制限レベルが設定される場合がある。このような場合、例えばホストは、設定変更してはいけないフィールド機器に設定変更ができてしまい、これによって工場へ多大な悪影響や被害をもたらすことがある。これは、ユーザーが機能制限レベルを誤って変更した場合も同様である。
【0021】
また、機能制限レベルが設定された既設のホストが別の場所に移された場合、ユーザーが適切な機能制限レベルへの変更を怠ると、同様に工場へ多大な悪影響や被害をもたらすことがある。
【0022】
本発明は、プロセス制御に関連するフィールド機器の状態に基づいて、適切で安全な機能制限レベルを設定できる機器制御装置、機器制御装置の機能制限方法、および機能制限システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、
プロセス制御を行うシステムに配置されたフィールド機器に対して機器制御を行うとともに、この機器制御を実行するための複数の制御機能のいずれかを機能制限できる機器制御装置において、
前記フィールド機器の状態のうち、前記プロセス制御に関連する状態信号を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記状態信号に基づいて前記機能制限のレベルを設定する設定手段と、
を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記取得手段は、前記フィールド機器の種類に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記フィールド機器がプロセス制御量に対してアクティブな種類の機器であり、この種類に応じた前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、パッシブな種類の機器よりも高いレベルに設定することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記アクティブな種類の機器は、バルブポジショナまたは電空変換器であることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記フィールド機器が前記プロセス制御の特定用途に用いられる種類の機器であり、この種類を表すキーワードを前記状態信号として前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、前記特定用途以外に用いられる種類の機器よりも高いレベルに設定することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載の発明において、
前記特定用途に用いられる種類の機器は、前記プロセス制御を行う工場の排水制御に用いられる機器であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記取得手段は、前記フィールド機器の稼動状態に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7に記載の発明において、
前記フィールド機器が稼動していることを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、稼動していない前記フィールド機器よりも高いレベルに設定することを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項8に記載の発明において、
フィールドバスのリンクマスターとして動作する前記フィールド機器が存在する場合、前記フィールド機器が稼動していることを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得することを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記取得手段は、前記フィールド機器の発するアラームの種類に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項10に記載の発明において、
前記機器制御を中止させるアラームであることを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、前記機器制御を中止させないアラームよりも高いレベルに設定することを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記取得手段は、前記フィールド機器による前記プロセス制御の制御ループの形成状態に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項12に記載の発明において、
前記制御ループが形成されたことを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、前記制御ループが形成されていない状態よりも高いレベルに設定することを特徴とする。
請求項14の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記取得手段は、前記フィールド機器の配置された位置に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする。
請求項15の発明は、請求項14に記載の発明において、
GPSまたは無線LANによって前記位置が得られ、
前記位置が前記プロセス制御における危険区域であることを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、前記危険区域以外に配置された前記フィールド機器よりも高いレベルに設定することを特徴とする。
請求項16の発明は、請求項1から15のいずれか一項に記載の発明において、
前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、ユーザーによって変更されたカスタムレベルに設定することができることを特徴とする。
請求項17の発明は、
プロセス制御を行うシステムに配置されたフィールド機器に対して機器制御を行うとともに、この機器制御を実行するための複数の制御機能のいずれかを機能制限できる機器制御装置の機能制限方法において、
前記フィールド機器の状態のうち、前記プロセス制御に関連する状態信号を取得する取得ステップと、
前記取得ステップによって取得された前記状態信号に基づいて前記機能制限のレベルを設定する設定ステップと、
を備えたことを特徴とする。
請求項18の発明は、
プロセス制御を行うシステムに配置されたフィールド機器と、
このフィールド機器に対して機器制御を行うとともに、この機器制御を実行するための複数の制御機能のいずれかを機能制限できる機器制御装置と、を有する機能制限システムにおいて、
前記機器制御装置は、
前記フィールド機器の状態のうち、前記プロセス制御に関連する状態信号を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記状態信号に基づいて前記機能制限のレベルを設定する設定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、フィールド機器の状態のうち、プロセス制御に関連する状態信号を取得し、この状態信号に基づいて機能制限レベルを設定する。この設定された機能制限のレベルに基づいて機器制御を行うことによって、適切で安全な機能制限レベルに設定された機器制御装置は、安全なプロセス制御を実行することができる。
【0025】
また、機能制限レベルが設定された既設の機器制御装置が別の場所に移された場合であっても、機器制御装置を適切で安全な機能制限レベルに変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した機器制御装置とフィールド機器からなる機能制限システムの構成図の例である。
【図2】本発明を適用した機器制御装置の機能制限レベル設定処理のフローチャート図の例である。
【図3】(a)は、プロセス制御を行う工場が稼働中のシステム構成図、(b)は、工場が稼働前のシステム構成図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本実施例を適用した、フィールド機器110、120、ホスト(機器制御装置)200などからなる機能制限システム100の構成図である。なお、これらのフィールド機器およびホストなどを用いたプロセス制御システムの構成図は、図3と同様である。
【0028】
図1において、フィールド機器110、120は、フィールドバスFBを介してホスト200に接続される。また、フィールド機器110、120の位置を検知するGPS(グローバルポジショニングセンサー)140および無線LAN(ローカルエリアネットワーク)センサー150が、ホスト200に接続される。
【0029】
ホスト200は、取得手段210、設定手段220およびユーザー設定手段250を備える。設定手段220は、各サーチモジュール221〜229、フィールドバスネットワーク接続モジュール230およびClass判定モジュール(Class判定項目選択モジュールを含む)240を備える。
【0030】
フィールドバスFB、GPS140および無線LANセンサー150は取得手段210に接続される。フィールドバスネットワーク接続モジュール230は、取得手段210および各サーチモジュール221〜227に接続される。なお、GPSモジュール228および無線LAN強度測定モジュール229は、取得手段210に接続される。
【0031】
Class判定モジュール240は、各サーチモジュール221〜229およびユーザー設定手段250に接続され、ユーザーアカウント310およびライセンス情報300を外部からの入力信号として受け取る。
【0032】
つぎに、ホスト200の動作について、さらに図2を用いて説明する。図2は、ホスト200の機能制限レベル(Class)設定処理のフローチャート図である。
【0033】
図2のステップS100において、ホスト200に制御機能アプリケーションソフトウエアがインストールされた後、ステップS110において、Class判定モジュール240は、ライセンス情報300またはユーザーアカウント310を受け取り、一旦これに基づくClassを設定する。
【0034】
続いて、ステップS120において、ホスト200は、一旦設定されたClassに基づいて、プロセス制御の運用を開始する。
【0035】
続いて、ステップS130において、取得手段210は、フィールドバスFBを介してフィールド機器110、120から、あるいはGPS140、無線LANセンサー150から、プロセス制御に関連するフィールド機器の状態信号を取得する(取得ステップ)。
【0036】
続いて、ステップS140、S150、S160〜S164において、設定手段220は、取得した状態信号に基づいてClass61〜64のいずれかを設定する、また、ユーザーによって、Class61〜64に変更を加えたカスタムレベルを設定することもできる(設定ステップ)。この設定手段については、後で詳述する。
【0037】
なお、設定手段220は、ユーザー設定手段250からカスタムレベルを取得して設定することにより、より細かく適切なレベル設定を行うことができる。
【0038】
続いて、ステップS170において、ホスト200は、設定された機能制限レベルに従って、フィールド機器110、120を制御し、プロセス制御の運用を続ける。
【0039】
ステップS180において、ホスト200は、プロセス制御の運用を続けながら、定期的にステップS130以降の取得ステップおよび設定ステップを繰り返す。
【0040】
つぎに、上述した設定手段について詳しく説明する。状態信号には、フィールド機器の種類、稼働状態、アラームの種類、制御ループの形成状態または配置された位置などに基づくものがあり、各々の状態信号による設定手段について、図1を用いて説明する。
【0041】
<フィールド機器の種類>
(1)特定機器
フィールド機器の種類のうち、バルブポジショナまたは電空変換器などの特定機器は、バルブを流れる流量を制御するものなので、誤設定、誤調整によって工場へ多大な悪影響や被害をもたらす恐れがある。
【0042】
フィールドバスFBに接続されたフィールド機器110がバルブポジショナまたは電空変換器などの特定機器の場合、特定機器サーチモジュール221は、取得手段210およびフィールドバスネットワーク接続モジュール230を介して、フィールド機器110から特定機器を表す信号を受け取る。なお、特定機器を表す信号は、予めユーザーによって与えられてもよい。
【0043】
そして、特定機器サーチモジュール221およびClass判定モジュール240は、機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定する。
【0044】
一方、特定機器がフィールドバスFB上に存在しない場合、機能制限レベルの低いClass61、Class63またはカスタムレベルを設定する。
【0045】
このように、特定機器がフィールドバスFB上に存在する場合、ホスト200に機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定することによって、設定および調整を実行できないので、誤設定、誤調整による工場への多大な悪影響や被害を防止することができる。
【0046】
(2)Input/Output機器
上述したバルブポジショナまたは電空変換器は、バルブを流れる流量を制御するもの、すなわち流量などのプロセス量を操作し変化させるものなので、アクティブな機器と呼ばれるとともに、Output機器とも呼ばれる。
【0047】
一方、圧力伝送器、温度伝送器および流量計などは、圧力、温度および流量などの測定を行うものなので、パッシブな機器と呼ばれるとともに、Input機器とも呼ばれる。
【0048】
上述の特定機器と同様に、フィールド機器110がバルブポジショナまたは電空変換器などのOutput機器(アクティブな機器)である場合、Input/Output機器サーチモジュール222は、取得手段210を介して、フィールド機器110からOutput機器を表す信号を受け取る。なお、Output機器を表す信号は、予めユーザーによって与えられてもよい。
【0049】
そして、Input/Output機器サーチモジュール222およびClass判定モジュール240は、機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定する。
【0050】
一方、Output機器がフィールドバスFB上に存在しない場合、すなわちInput機器(パッシブな機器)のみの場合、機能制限レベルの低いClass61、Class63またはカスタムレベルを設定する。
【0051】
このように、Output機器がフィールドバスFB上に存在する場合、ホスト200に機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定することによって、設定および調整を実行できないので、誤設定、誤調整による工場への多大な悪影響や被害を防止することができる。
【0052】
(3)特定用途に用いられる機器
プロセス制御を行う工場の排水制御などの特定用途に用いられるフィールド機器は、誤調整によって工場へ多大な悪影響や被害をもたらす恐れがある。
【0053】
フィールドバスFBに接続されたフィールド機器110が工場の排水制御などに用いられる場合、特定用途サーチモジュール223は、取得手段210を介して、フィールド機器110から特定用途の機器を表す信号、例えば特定のキーワードを受け取る。なお、特定用途の機器を表す信号は、予めユーザーによって与えられてもよい。
【0054】
そして、特定用途サーチモジュール223およびClass判定モジュール240は、受け取ったキーワードと予め記憶されたキーワードとを比較して一致した場合、機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定する。
【0055】
一方、特定用途に用いられるフィールド機器がフィールドバスFB上に存在しない場合、機能制限レベルの低いClass61、Class63またはカスタムレベルを設定する。
【0056】
このように、特定用途に用いられるフィールド機器がフィールドバスFB上に存在する場合、ホスト200に機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定することによって、設定および調整を実行できないので、誤設定、誤調整による工場への多大な悪影響や被害を防止することができる。
【0057】
<フィールド機器の稼働状態>
(1)フィールド機器のBlock Mode
フィールド機器の有するBlock Modeは、フィールド機器の稼働中では「Auto」に設定され、非稼働中では「O/S」に設定される。なお、Block Modeはフィールドバス規格によって定義されている。
【0058】
Actual Modeサーチモジュール224は、取得手段210を介して、フィールド機器110からBlock Modeのデータを受け取る。
【0059】
そして、Actual Modeサーチモジュール224およびClass判定モジュール240は、受け取ったデータが「Auto」の場合、Class61、Class62またはカスタムレベルを設定する。
【0060】
一方、受け取ったデータが「O/S」の場合、Class63、Class64またはカスタムレベルを設定する。
【0061】
このように、フィールド機器の稼働状態に応じた適切で安全な機能制限レベルを設定できる。
【0062】
(2)リンクマスター
フィールドバス規格によって定義されているリンクマスターとして動作するフィールド機器が存在する場合は稼働中であり、存在しない場合は非稼働中である。
【0063】
リンクマスターサーチモジュール225は、取得手段210を介して、フィールド機器110からリンクマスターとして動作しているか否かの信号を受け取る。
【0064】
そして、Actual Modeサーチモジュール224およびClass判定モジュール240は、受け取った信号がリンクマスターとして動作していることを表す場合、機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定する。
【0065】
一方、受け取った信号がリンクマスターとして動作していないことを表す場合、機能制限レベルの低いClass61、Class63またはカスタムレベルを設定する。
【0066】
このように、フィールド機器の稼働状態に応じた適切で安全な機能制限レベルを設定できる。
【0067】
<フィールド機器のアラームの種類>
フィールド機器は複数種類のアラームを出力する。このアラームの種類には、フィールド機器の調整を中止させなければならないものの他、調整を中止させずに迅速に調整を実行しなければならないものがある。
【0068】
アラームサーチモジュール226は、取得手段210を介して、フィールド機器110から発生しているアラームの種類を表す信号を受け取る。
【0069】
そして、アラームサーチモジュール226およびClass判定モジュール240は、受け取った信号が調整を中止させるアラームであることを表す場合、機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定する。
【0070】
一方、受け取った信号が調整を中止させないアラームであることを表す場合、機能制限レベルの低いClass61、Class63またはカスタムレベルを設定する。
【0071】
このように、フィールド機器の発するアラームの種類に応じた適切で安全な機能制限レベルを設定できる。
【0072】
<フィールド機器の制御ループ状態>
フィールドバスFBに接続されているフィールド機器のトポロジーから、フィールド機器によってプロセス制御の制御ループが形成されているか否かが判別できる。
【0073】
トポロジーサーチモジュール227は、取得手段210を介して、フィールド機器110からトポロジーを表す信号を受け取る。
【0074】
そして、トポロジーサーチモジュール227およびClass判定モジュール240は、受け取った信号から制御ループが形成されていると判断した場合、機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定する。
【0075】
一方、受け取った信号から制御ループが形成されていないと判断した場合、機能制限レベルの低いClass61、Class63またはカスタムレベルを設定する。
【0076】
このように、プロセス制御の制御ループの形成状態に応じた適切で安全な機能制限レベルを設定できる。
【0077】
<フィールド機器の配置>
フィールド機器が、プロセス制御を行う工場内の防爆エリアなどの危険区域に配置されている場合、誤設定、誤調整によって工場へ多大な悪影響や被害をもたらす恐れがある。
【0078】
GPS140によってフィールド機器110の位置を検知すると、取得手段210は、GPS140からフィールド機器110の位置信号を取得する。GPSモジュール228は、取得手段210からフィールド機器110の位置信号を受け取る。
【0079】
そして、GPSモジュール228およびClass判定モジュール240は、フィールド機器110の位置が危険区域内にある場合、機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定する。
【0080】
一方、危険区域内にない場合、機能制限レベルの低いClass61、Class63またはカスタムレベルを設定する。
【0081】
なお、GPS140の信号が届かない屋内にフィールド機器110が配置されている場合、フィールド機器110と通信している無線LANセンサー150の受信電波強度信号の測定によって、フィールド機器110の位置を検知できる。
【0082】
取得手段210は、無線LANセンサー150から受信電波強度信号を取得することができる。無線LAN強度測定モジュール229およびClass判定モジュール240は、受信電波強度信号から位置信号を求め、GPS140の場合と同様に、位置信号を用いて機能制限レベルの設定を行うことができる。
【0083】
このように、フィールド機器110の位置が危険区域内にある場合、ホスト200に機能制限レベルの高いClass62、Class64またはカスタムレベルを設定することによって、設定および調整を実行できないので、誤設定、誤調整による工場への多大な悪影響や被害を防止することができる。
【0084】
また、上述したフィールド機器の種類、稼働状態、アラームの種類、制御ループの形成状態、配置された位置を表す状態信号を2つ以上用い、この2つ以上の状態信号に基づいて機能制限レベルを設定してもよい。
【0085】
なお、取得手段210および設定手段220は、プロセッサによって所定のプログラムに従って実行、または論理回路によって実現してもよい。
【0086】
なお、本発明は、前述の実施例に限定されることなく、その本質を逸脱しない範囲で、さらに多くの変更および変形を含む。また、前述した各手段の組み合わせ以外の組み合わせを含むことができる。
【符号の説明】
【0087】
100 機能制限システム
110、120 フィールド機器
140 GPS
150 無線LANセンサー
200 ホスト(機器制御装置)
210 取得手段
220 設定手段
230 フィールドバスネットワーク接続モジュール
240 Class判定モジュール
250 ユーザー設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス制御を行うシステムに配置されたフィールド機器に対して機器制御を行うとともに、この機器制御を実行するための複数の制御機能のいずれかを機能制限できる機器制御装置において、
前記フィールド機器の状態のうち、前記プロセス制御に関連する状態信号を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記状態信号に基づいて前記機能制限のレベルを設定する設定手段と、
を備えたことを特徴とする機器制御装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記フィールド機器の種類に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする請求項1に記載の機器制御装置。
【請求項3】
前記フィールド機器がプロセス制御量に対してアクティブな種類の機器であり、この種類に応じた前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、パッシブな種類の機器よりも高いレベルに設定することを特徴とする請求項2に記載の機器制御装置。
【請求項4】
前記アクティブな種類の機器は、バルブポジショナまたは電空変換器であることを特徴とする請求項3に記載の機器制御装置。
【請求項5】
前記フィールド機器が前記プロセス制御の特定用途に用いられる種類の機器であり、この種類を表すキーワードを前記状態信号として前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、前記特定用途以外に用いられる種類の機器よりも高いレベルに設定することを特徴とする請求項2に記載の機器制御装置。
【請求項6】
前記特定用途に用いられる種類の機器は、前記プロセス制御を行う工場の排水制御に用いられる機器であることを特徴とする請求項5に記載の機器制御装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記フィールド機器の稼動状態に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする請求項1に記載の機器制御装置。
【請求項8】
前記フィールド機器が稼動していることを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、稼動していない前記フィールド機器よりも高いレベルに設定することを特徴とする請求項7に記載の機器制御装置。
【請求項9】
フィールドバスのリンクマスターとして動作する前記フィールド機器が存在する場合、前記フィールド機器が稼動していることを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得することを特徴とする請求項8に記載の機器制御装置。
【請求項10】
前記取得手段は、前記フィールド機器の発するアラームの種類に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする請求項1に記載の機器制御装置。
【請求項11】
前記機器制御を中止させるアラームであることを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、前記機器制御を中止させないアラームよりも高いレベルに設定することを特徴とする請求項10に記載の機器制御装置。
【請求項12】
前記取得手段は、前記フィールド機器による前記プロセス制御の制御ループの形成状態に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする請求項1に記載の機器制御装置。
【請求項13】
前記制御ループが形成されたことを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、前記制御ループが形成されていない状態よりも高いレベルに設定することを特徴とする請求項12に記載の機器制御装置。
【請求項14】
前記取得手段は、前記フィールド機器の配置された位置に応じた前記状態信号を取得することを特徴とする請求項1に記載の機器制御装置。
【請求項15】
GPSまたは無線LANによって前記位置が得られ、
前記位置が前記プロセス制御における危険区域であることを表す前記状態信号を前記取得手段によって取得した場合、前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、前記危険区域以外に配置された前記フィールド機器よりも高いレベルに設定することを特徴とする請求項14に記載の機器制御装置。
【請求項16】
前記設定手段は、前記機能制限のレベルを、ユーザーによって変更されたカスタムレベルに設定することができることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の機器制御装置。
【請求項17】
プロセス制御を行うシステムに配置されたフィールド機器に対して機器制御を行うとともに、この機器制御を実行するための複数の制御機能のいずれかを機能制限できる機器制御装置の機能制限方法において、
前記フィールド機器の状態のうち、前記プロセス制御に関連する状態信号を取得する取得ステップと、
前記取得ステップによって取得された前記状態信号に基づいて前記機能制限のレベルを設定する設定ステップと、
を備えたことを特徴とする機器制御装置の機能制限方法。
【請求項18】
プロセス制御を行うシステムに配置されたフィールド機器と、
このフィールド機器に対して機器制御を行うとともに、この機器制御を実行するための複数の制御機能のいずれかを機能制限できる機器制御装置と、を有する機能制限システムにおいて、
前記機器制御装置は、
前記フィールド機器の状態のうち、前記プロセス制御に関連する状態信号を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記状態信号に基づいて前記機能制限のレベルを設定する設定手段と、
を備えたことを特徴とする機能制限システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−10229(P2012−10229A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146078(P2010−146078)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】