説明

機械式に一体化されて近接結合されたプリントヘッド及び噴霧源

開示されている堆積装置は堆積ヘッドと構造的に一体化された1以上の噴霧器を備えている。堆積ヘッド全体が交換式であり、材料を再充填できる。堆積ヘッドは複数のノズルを有することができる。また、三次元材料堆積用の堆積装置は、傾斜不能な噴霧器に取り付けられた傾斜可能な堆積ヘッドを備えている。異なる複数の材料を同時的または順番に堆積させる方法及び装置も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦または非平坦である標的に直接的に材料を堆積する堆積ヘッド(プリントヘッド)に内蔵または隣接して配置された噴霧器を含んだ噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は2007年8月30日に出願された米国仮特許願60/969068「機械式に一体化されて近接結合されたプリントヘッド及び噴霧源」の優先権を主張する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記プリントヘッド及び噴霧源の課題を解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は材料を堆積するための堆積ヘッドに関する。この堆積ヘッドは1以上のキャリアガスインレット、1以上の噴霧器、それら噴霧器と構造的に一体化しているエアゾールマニフォールド、そのエアゾールマニフォールドと連通する1以上のエアゾール搬送導管、シースガスインレットおよび1以上の材料堆積アウトレットを含む。好適には、堆積ヘッドは、バーチャルインパクタと排気ガスアウトレットをさらに含む。
【0005】
このバーチャルインパクタは、噴霧器の少なくとも1つとエアゾールマニフォールドとの間に設置される。好適には堆積ヘッドは材料貯蔵部をさらに含み、オプションで、エアゾールマニフォールドから貯蔵部に未使用材料を運搬して戻すドレーンをさらに含む。オプションで堆積ヘッドは、再充填せずに長時間利用させること、望む温度に材料を維持すること、望む粘度に材料を維持すること、望む組成に材料を維持すること、および粒体の凝集を防止することの中から選択された本発明の目的に有用な外部の材料貯蔵部をさらに含む。
【0006】
好適には堆積ヘッドは、エアゾール搬送導管の少なくとも中央部を同心的に包囲するシースガスマニフォールドをさらに含む。オプションで堆積ヘッドは、導管アウトレットを含んだそれぞれのエアゾール搬送導管の一部を包囲するシースガスチャンバをさらに含む。好適には、エアゾール流が導管アウトレットから排出された後で、シースガス流とエアゾール流とがシースガスチャンバのアウトレットにて、またはその近辺にて組み合わされる前に、シースガス流がエアゾール流と実質的に平行となるようにエアゾール搬送導管は十分に長く提供される。
【0007】
オプションで堆積ヘッドを交換可能とし、設置前に材料が予備充填されている材料貯蔵部を含ませることができる。オプションでこのような堆積ヘッドを使い捨てタイプとし、あるいは再充填タイプとすることができる。オプションでそれぞれの噴霧器に、好適には堆積直前まで、または堆積処理中に混合及び/又は互いに反応することがないように異なる材料を噴霧させることができる。堆積される様々な材料の混合比を制御可能とすることが望ましい。オプションで噴霧器を同時的に操作することも、あるいはオプションで少なくとも2つの噴霧器を別々の時間に操作することもできる。
【0008】
本発明は堆積ヘッドと噴霧器とを含む三次元材料堆積装置にも関する。この堆積ヘッドと噴霧器は共に三次元的直線移動する。堆積ヘッドは傾斜可能であるが、噴霧器は傾斜不能である。好適には堆積装置は立体構造物の外側、内側及び/又は下側への材料堆積に有用であり、好適には堆積ヘッドは細い通路内に延び入るように設計されている。
【0009】
本発明は材料を堆積する方法にも関する。この方法は、第1エアゾールを形成する第1材料を噴霧化するステップと、第2エアゾールを形成する第2材料を噴霧化するステップと、第1エアゾールと第2エアゾールとを組み合わせるステップと、組み合わされたエアゾールをシースガスの環状流で包囲するステップと、組み合わされたエアゾールを集束させるステップと、エアゾールを堆積するステップとを含む。
【0010】
オプションでこれら噴霧化ステップは同時的または連続的に実施される。オプションでこの方法は、少なくとも一方のエアゾールの材料量を変動させるステップをさらに含む。オプションでこれら噴霧ステップは異なる設計の噴霧器を使用することができる。オプションでこの方法は複合構造物を堆積するステップをさらに含むことができる。
【0011】
本発明の1利点は液滴揮発と噴射過多とを減少させることによる改良された堆積を提供することである。
【0012】
本発明の別な利点はガス流開始と標的への材料堆積との間の時間のずれを減少させることである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】グラジエント材料加工に利用される本発明の堆積装置の概略図である。
【図2】噴霧器を備えたモノリシック型多口ノズル堆積ヘッドの概略図である。
【図3】1体のエアゾールジェットを有した一体型噴霧器の概略図である。
【図4】噴霧器、堆積ヘッドおよびバーチャルインパクタを一体化させた1体型堆積装置の概略断面図である。
【図5】堆積ヘッドおよびバーチャルインパクタを備えた一体型噴霧システムの別実施例を示す概略図である。
【図6】堆積ヘッドおよび流量減少装置を備えた多口ノズル一体型噴霧システムの別実施例を示す概略図である。
【図7】堆積ヘッドと一体化した複合噴霧器(一方は、1体のチャンバ内に収容された空圧式噴霧器であり、他方は別チャンバ内に収容された超音波式噴霧器)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的、他の利点および新規な特徴並びに利用範囲は、添付図面を活用した以下の詳細な説明で解説されている。本発明の目的および利点は、「請求の範囲」において定義された手段および方法並びにそれらの組み合わせによって達成されるであろう。
添付図面は本発明の実施例を図示しており、以下の説明と共に本発明の原理を解説する。これら図面は本発明の好適実施例を説明する目的のみに提供されているものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0015】
一般的に本発明は、空気力学を活用した集束を利用する液剤(液体)、溶液および液体/粒体縣濁物の高解像性能のマスクレス(マスクを利用しない)堆積(デポジション)のための装置と方法に関する。1実施形態では、対応する立体材料の標的表面に物理的、光学的及び/又は電気的特性を提供するために、エアゾール流が集束されて平坦または非平坦である標的上に堆積され、熱的または光化学的に処理されたパターン(紋様)を形成する。この処理技術はMD(マスクレスメソスケール材料堆積)技術と称されており、従来の厚膜処理技術で堆積される線より大幅に細い線(1ミクロン以下の線も可能)にてエアゾール化された材料を、好適にはマスクを利用することなく直接的に堆積する。
【0016】
好適にはMD装置は、外側筒流(以降“シース流”)と内側エアゾール含有キャリア流とで成る環状伝播ジェット流を形成するためにエアゾールジェット堆積ヘッドを含む。この環状エアゾールジェット噴射処理(プロセス)では、エアゾール流は、その堆積ヘッドに進入して(好適にはエアゾール化プロセス直後または加熱構造部通過直後)、堆積ヘッドオリフィス(噴射口)に向けてMD装置の進行方向軸に沿って方向付けられる。
【0017】
好適には、材料の処理量はエアゾールキャリアガス質量流量コントローラによって制御される。堆積ヘッドの内側では、好適にはエアゾール流は、典型的にはミリサイズのオリフィスを通過することにより当初に平行化処理される。好適には、その後に噴出粒体流は環状シースガスと組み合わされ、ノズルの目詰まりが防止され、エアゾール流が集束される。キャリアガスとシースガスにはほとんどの場合、圧縮空気または不活性ガスが利用される。それらの一方または両方は変性溶剤の蒸気内容物を含有できる。例えば、エアゾールが水溶液で形成される場合には水蒸気をキャリアガスまたはシースガスに加え、液滴蒸発を防止することができる。
【0018】
好適には、シースガスは、エアゾールインレット(入口)の下方のシース空気インレットに進入し、エアゾール流を含んだ環状流を形成する。エアゾールキャリアガスと同様に、好適にはシースガス流量は質量流量コントローラによって制御される。組み合わされたそれら流体は高速(〜50m/秒)にてオリフィスから標的に向かってノズルから噴出され、標的に命中する。この環状流はエアゾール流を標的上に集束し、約1ミクロン未満の線幅の図形(パターン)を堆積させる。パターンは標的に対して堆積ヘッドを移動させることで形成される。
【0019】
堆積ヘッドに隣接して配置された噴霧器
一般的には噴霧器は噴霧搬送手段を介して堆積ヘッドに連結されるが、堆積ヘッドに機械的には結合されていない。本発明の1実施形態では、噴霧器と堆積ヘッドとは完全に一体化されており、共通の構造要素を有する。
【0020】
明細書(請求項を含む)を通じて使用されている“噴霧器”とは、空気力、超音波力、機械力、または噴射プロセス、等々を利用して活性化されるアトマイザ(噴霧器)、ネビュライザ、トランスジューサ、プランジャ、または他の装置のことであり、液体(液剤)その他の材料から小滴または粒体を形成し、あるいは特に縣濁物をエアゾール化するために蒸気から粒体を濃縮形成するのに使用されるものである。
【0021】
噴霧器が堆積ヘッドに隣接しているか、あるいは堆積ヘッドと一体化しているなら、噴霧器と堆積ヘッドとの間の噴霧の搬送に必要な管体(導管)の長さは減少されるか管体そのものが不要となる。従って、管体中の噴霧の搬送時間は大きく短縮され、搬送時に発生する液滴による溶剤損失が最少となる。この特性によって噴出過多が防止され、従来よりも多い揮発性液剤の利用が可能となる。さらに搬送管体内の粒体損失が最少化されるか排除され、堆積システムの全体効率が向上し、目詰まり現象の発生が減少する。このシステムの反応時間もまた大幅に改善される。
【0022】
さらに、製品製造のためのシステム構築における利点は、近接結合された堆積ヘッドの利用に関する。小型基板の場合には、噴霧器と堆積ヘッドを固定し、基板を移動させることで自動化は簡単に実現する。この場合、堆積ヘッドに対する噴霧器の配置オプションは多数存在する。しかしながら、例えばフラットパネルディスプレイの場合にように大型基板製造の場合においては、状況は逆転し、堆積ヘッドを移動させるほうが簡単である。この場合、噴霧器の配置オプションは大幅に限定される。典型的には噴霧を固定噴霧器から移動ガントリに搭載された堆積ヘッドにまで搬送するのに長い管体が必要となる。統合による噴霧損失は莫大であり得、長時間の滞在による溶剤損失は噴霧を利用不能な程度にまで乾燥させることがある。
【0023】
別な利点はカートリッジ型である噴霧器および堆積ヘッドの構築である。この形態では、噴霧器と堆積ヘッドは、1体の装置としてのプリントシステムに設置および取り外しができるように連結されている。このカートリッジ設計では、噴霧器と堆積ヘッドは簡単迅速に交換できる。交換は通常のメンテナンス時にできる。あるいはノズルの目詰まり等の災難時に交換できる。この実施形態では、好適には噴霧器貯蔵部は供給材料により前もって充填され、交換装置が設置され次第、直ちに利用可能になる。
【0024】
関連する実施形態では、カートリッジ型装置はプリントシステムの迅速な部材交換を可能にする。例えば、材料Aを含むプリント(堆積)ヘッドは材料Bを含むプリントヘッドと迅速に交換できる。これらの実施形態においては、好適には噴霧器/堆積ヘッドまたはカートリッジは低価格となるように製造され、消耗品として販売される。これらを使い捨てとしても、あるいは再利用式としてもよい。
【0025】
1実施形態においては、噴霧器と堆積ヘッドは完全に一体化され、図4で示すように構造要素を共有して1体の装置になっている。好適にはこの形態は最もコンパクトであり、カートリッジ型装置の代表的形態である。
【0026】
空圧式噴霧器を作動させるのに必要な余剰ガスを除去するためにバーチャルインパクタが多用される。バーチャルインパクタは、噴霧器が一体化されている実施形態において堆積ヘッドとも一体化されている。噴霧を加熱し、溶剤を駆逐する目的でヒータも装置と一体化させることができる。噴霧化には必須ではないが、供給材料残量制御または材料不足警告、撹拌および温度制御等の噴霧器内の供給材料維持に必要な構成要素もオプションで噴霧器に内蔵できる。
【0027】
一般的に装置と一体化できる構成要素の他の例は検知と診断に関する。検知要素を直接的に装置に組み入れる理由はレスポンスと精度を改善するためである。例えば、圧力検知手段が堆積ヘッド内に組み入れ可能である。圧力検知は全体的な堆積ヘッド状況に関する重要な情報フィードバックを提供する。正常状態よりも高い圧力はノズルが目詰まりを起こしたことを示す。一方、正常状態よりも低い圧力はシステムに漏出が発生していることを示す。堆積ヘッドに1体以上の圧力センサを直接的に組み入れることで、フィードバックはさらに迅速化され、正確になる。材料の堆積比率を決定する噴霧検知手段も装置に内蔵させることができる。
【0028】
典型的なエアゾールジェットシステムは電子質量流量コントローラを利用し、比速度でガス量を測定する。典型的にはシースガスと噴霧ガスの流量は異なっており、供給材料と適用形態によって変動するであろう。調整機能が不要である特殊目的で構築された堆積ヘッドにおいては、電子質量流量コントローラは静的絞手段(スタティックレストリクション)によって交換可能である。所定サイズの静的絞手段は所定量のガスだけを所定上流圧のために通過させるだけである。上流圧を所定レベルに正確に制御することで、静的絞手段はシースガスおよび噴霧ガスに使用される電子質量流量コントローラと交換できるようサイズにすることができる。
【0029】
好適には、約16inHgの真空を発生させることができる真空ポンプが使用されるなら、バーチャルインパクタの排気ガスの質量流量コントローラは非常に簡単に取り外せる。この場合、絞り動作は限界オリフィスとして機能する。静的絞手段と、その他の制御要素とを堆積ヘッドと一体化すると、堆積ヘッドに進入しなければならないガス管体数が減少する。これは、基板ではなく堆積ヘッドが移動するような状況において特に有効である。
【0030】
どのような実施形態においても、噴霧器が堆積ヘッドに組み込まれているか否かにかかわらず、堆積ヘッドは1口ノズルまたは任意の数である多口ノズルの形態でよい。多噴射口配列体は任意の形状である1口以上のノズルを含んでいる。
【0031】
図1は堆積ヘッド内でエアゾールジェットと一体化された超音波式噴霧器の1実施例である。インク12は延び出したノズル25に隣接した貯蔵部内に収容されている。超音波式トランスジューサ10がインク12を噴霧化する。噴霧化されたインク18は、噴霧空気インレット14から進入する噴霧空気すなわちキャリアガスによって貯蔵部から運び出され、シールド24の周囲を通過し、隣接する噴霧マニフォールドに送られ、そこで噴霧搬送管体30に入る。シールドガスはシースガスマニフォールド28にシースガスインレット22から進入する。噴霧化されたインクが噴霧搬送管体30を通過するとき、延び出たノズル25に入る際にシースガスによって集束される。
【0032】
図2は1口ノズル型堆積ヘッドとバーチャルインパクタとを備えた一体型空圧式噴霧システムの1実施例である。噴霧化ガス36はインク貯蔵部34に入る。そこで噴霧化ガス36はインクを噴霧化し、噴霧化されたインク118をバーチャルインパクタ38に運搬する。噴霧化ガス36は少なくとも部分的に剥ぎ取られ、バーチャルインパクタのガス排気口32を通過して排出される。噴霧化されたインク118は下降してオプションのヒータ42を通過し、堆積ヘッド44内に進入する。シースガス122が堆積ヘッド内に進入し、噴霧化されたインク118を集束させる。
【0033】
図3は一体化された空圧式噴霧器、バーチャルインパクタおよび1口ノズル堆積ヘッドの別実施例を示す概略断面図である。流量調整可能なプランジャ19がインク縣濁液インレット17から入るインクの噴霧化に利用される。噴霧化されたインク218は隣接するバーチャルインパクタ138へ移動する。排気ガスは排気ガスアウトレット132を通ってバーチャルインパクタから排出される。続いて噴霧化されたインク218は隣接する堆積ヘッド144に移動し、そこでシースガス122がインクを集束させる。
【0034】
図4は一体型超音波式噴霧器を備えたモノリシック多口ノズルのエアゾールジェット型堆積ヘッドの1実施例を図示する。インク312は、好適にはノズル配列体326に隣接した貯蔵部に収容されている。超音波式トランスジューサ310がインクを噴霧化する。噴霧化されたインク318は噴霧空気インレット314を通過して進入する噴霧空気によって貯蔵部から運び出され、シールド324の周囲を通過して隣接するエアゾールマニフォールド320に方向付けられる。
【0035】
そこで噴霧化されたインク319はエアゾール搬送管体330に分割進入する。好適には、いかなる噴霧搬送管体330にも入らない噴霧化インク318はドレーン管316を介して、隣接する貯蔵部に戻され、リサイクルされる。シースガスはシースガスインレットを通ってシースガスマニフォールド328に進入する。噴霧化されたインク318は噴霧搬送管体330を通過する際に、ノズル配列体326に進入するシースガスによって集束される。
【0036】
図5はマニフォールドと流量減少装置とを利用する堆積ヘッドを備えた多口ノズル一体化空圧式噴霧システムの1実施例である。噴霧空気は噴霧空気インレット414からこの一体化システムの空圧式噴霧器452に入る。エアゾールを形成するように噴霧空気で運搬される噴霧材料は隣接するバーチャルインパクタ438に移動する。排気ガスは排気ガスアウトレット432を通過してバーチャルインパクタから排出される。エアゾールはマニフォールドインレット447に移動し、1以上の噴霧搬送管体430を介して1以上のシースガスチャンバ448に入る。
【0037】
シースガスはガスインレットポート422を介して堆積ヘッドに進入する。オプションでは、シースガスは噴霧搬送管体430に対して直角に配向され、噴霧搬送管体430の底部でエアゾール流と組み合わされる。噴霧搬送管体430はシースガスチャンバ448の底部にまで少なくとも部分的に、好適には直線形態で延びる。好適にはシースガスチャンバ448の全長は十分に長く提供され、組み合わされる前のシースガス流をエアゾール流と実質的に平行にし、好適には筒状の対称シースガス圧分布を発生させる。
【0038】
シースガス流はシースガスチャンバ448の底部またはその近辺でエアゾール流と組み合わされる。エアゾールキャリアガスをシースガスと組み合わせるために直線領域を提供する利点は、噴霧と組み合わせる前にシースガス流を十分に広げ、噴霧管体430の周囲に均等に配分し、組み合わせプロセス時に乱流の発生を最少化し、シース/噴霧の混合を最小化し、噴出過多を減少させ、高精度集束を達成させることである。さらに個々のシースガスチャンバ448による配列体のノズル間の“クロストーク(相互干渉)”が最小化する。
【0039】
オプションでマニフォールドを離間位置に配置することができる。あるいは堆積ヘッド上または堆積ヘッド内に設置できる。いずれの場合でも、マニフォールドには1以上の噴霧器を利用して材料供給することができる。図示の形態では、1体の流量減少装置(バーチャルインパクタ)が多口噴射配列体の堆積ヘッドのために利用される。十分量の余剰キャリアガスを除去するために1段階の流量減少ステップでは不充分である場合には多段階の減少ステップを採用してもよい。
【0040】
複数噴霧器
堆積装置は1以上の噴霧器を含むことができる。実質的に同一デザインである複数の噴霧器が利用され、堆積ヘッドから搬送されるさらに多量の噴霧を発生させ、高速製造を可能にするように生産効率を増加させる。この場合、実質的に同一である組成の材料が、好適には複数噴霧器の供給材料として利用される。複数噴霧器は共通の供給材料チャンバを有するか、オプションで別々のチャンバを利用することができる。材料同士の混合を防止するため、別々のチャンバは異なる組成の材料の収容に利用できる。複数の材料の場合には噴霧器は同時的に運用され、所望の混合比で材料を搬送できる。電子材料、接着剤、材料の前駆物質、または生物材料あるいはバイオ材料等の任意の材料が使用できる。
【0041】
使用材料はその組成、粘性、溶剤組成、縣濁液剤および他の多くの物理的、化学的並びに材料特性が異なっていてもよい。材料サンプルは混合可能なものでも混合不能なものでも構わず、反応性のものであってもよい。1例として、噴霧チャンバ内での相互反応を回避するためにモノマーや触媒のごとき材料は別々に保存される。好適にはそれら材料は堆積ステップ時に特定の混合比で混合される。別例では、異なる噴霧特性を備えた材料が別々に噴霧化され、それぞれの材料の噴霧比が最良化処理される。例えば、ガラス粒体の縣濁物を1体の噴霧器によって噴霧化し、銀粒体の縣濁物を別の噴霧器によって噴霧化することができる。ガラスと銀との混合比は最終的に堆積されたトレースによって制御できる。
【0042】
あるいは噴霧器は、材料を、同一場所または異なる場所に個別に搬送するように順番に運行できる。同一場所での堆積は複合構造物を形成し、異なる場所での堆積は基板の同一層上に複数の構造物を形成する。
【0043】
オプションで複数の噴霧器を異なる設計のものとすることができる。例えば、図7のように、1体の空圧式噴霧器を1体のチャンバ内に収容し、1体の超音波式噴霧器を別チャンバ内に収容することができる。これで材料の噴霧特性に合わせるように噴霧器を最良化する選択肢が与えられる。
【0044】
図6は1体の堆積ヘッドを介して複数の材料を同時的に堆積するためのMDプロセスを図示する。各噴霧器装置4a〜4cはそれぞれの材料サンプルの液滴を発生させる。好適にはその液滴はキャリアガスによって組み合わせチャンバ6の方向に向けられる。液滴流は組み合わせチャンバ6内で合流し、その後に堆積ヘッド2に向けられる。そうすれば複数種の材料サンプルの液滴は同時的に堆積される。好適には堆積の相対比は各噴霧器4a〜4cに入るキャリアガス比によって制御される。このキャリアガス比を継続的または間断的に変動させることができる。
【0045】
このような勾配(グラジエント)材料加工によって連続的混合比をキャリアガス流量によってコントロールさせることができる。この方法は複数の噴霧器と材料サンプルとを同時的に利用させることもできる。さらに、混合は標的上で行われ、材料サンプル小瓶内やエアゾール管内では行われない。このプロセスは様々な種類のサンプルを堆積させる。例えば、UV、熱硬化性または熱可塑性のポリマー、接着剤、溶剤、エッチング用コンパウンド、金属インク、抵抗、誘電および金属厚膜ペースト、タンパク質、酵素および他の生物材料並びにオリゴヌクレオチドが堆積される。
【0046】
勾配材料加工技術の適用形態には、限定はされないが、屈折率の3D粒度のごとき勾配オプティック、勾配繊維オプティック、合金堆積、セラミック/金属接合、噴射時の抵抗インクブレンド、組み合わせ新薬発見、連続グレースケール写真作製、連続カラー写真作製、RF(高周波)回路インピーダンス整合で利用する勾配接合、電子特徴部選択的エッチングのごとき標的上の化学反応、チップ上のDNA作製、並びに接着材料の保管期間延長、等々が含まれる。
【0047】
図7は堆積ヘッドを備えた複数の噴霧器の一体化を図示する。堆積ヘッド544の片側には噴霧空気インレット514を備えた超音波式噴霧器セクション550が存在する。堆積ヘッド544の他方側には噴霧空気インレット516と、排気ガスアウトレット532を備えたバーチャルインパクタ538とを備えた空圧式噴霧器552が存在する。シースガスインレット522はシースガス通路を図示していない。この実施例は材料の噴霧特性に合わせて最良化されているが、複数の超音波式噴霧器、複数の空圧式噴霧器、またはそれらの組み合わせのごとき、その他の組み合わせによる複数の噴霧器であっても可能である。
【0048】
一体化されていない噴霧器またはコンポーネント
噴霧器あるいはコンポーネントの一部を、堆積ヘッドを備えた1体の装置として一体化させることが好ましくない状況が存在する。例えば、典型的には堆積ヘッドは、垂直に対して随意の角度で設置されていてもプリント能力を有する。しかし、噴霧器は、適切な機能を提供するためには水平に維持されなければならない液体貯蔵部を含んでいる。よって、堆積ヘッドが折り曲げ自在な関節型である場合には、そのような噴霧器や堆積ヘッドを堅固に相互接続することはできず、関節動作時に噴霧器を水平に維持させなければならない。
【0049】
このような形態の1例は、ロボットアームの端部に搭載された噴霧器および堆積ヘッドである。この例では、噴霧器と堆積ヘッドの構造体はx軸、y軸およびz軸の方向に共に移動する。しかしこの堆積装置は、堆積ヘッドのみが自由に任意角度で傾斜するように設計されている。このような設計は、飛行機の機体等の大型構造物を含む構造物の外部、内部および下側等への三次元印刷において利用性がある。
【0050】
接近して結合されているが、完全一体化されてはいない噴霧器とプリントヘッドの別例においては、組み合わされた装置は堆積ヘッドが狭い通路内に延び入るように設計されている。
【0051】
設計によっては、オプションで噴霧器の噴霧発生部は堆積ヘッドに隣接して設置されるが、オプションで噴霧器の非噴霧発生部を離間させて設置することができる。例えば、超音波式噴霧器の駆動回路は堆積装置と離れて位置することができ、堆積装置と一体でなくともよい。供給材料の貯蔵部も離れて位置できる。離れて設置される貯蔵部は、ユーザによる管理がなくとも長期にわたって利用可能とするよう、堆積ヘッドと関連する貯蔵部を再充填させるのに利用できる。
【0052】
離れて配置された貯蔵部は、供給材料を特定の条件、例えば使用するまで温度に敏感な流体を冷蔵保存するのにも利用できる。他の形態の維持(粒体の凝集防止のための粘性調整、組成調整または超音波処理、等々)を離れた場所から実施することができる。供給材料は1方向のみに通流させることができる。例えば、離れた貯蔵部からインク貯蔵部にインクを再供給し、あるいは、メンテナンスあるいは貯蔵の目的でインク貯蔵部から離れた貯蔵部に戻すこともできる。
【0053】
材料
本発明は液体、溶液および液剤/粒体の縣濁物を堆積させることができる。1以上の溶質も含有する液体/粒体の縣濁物のごときの組み合わせであっても堆積できる。液体材料が好適ではあるものの、噴霧化に利用された後に乾燥ステップで除去される液体キャリアが使用される場合には、乾燥材料でも堆積できる。
【0054】
以上、超音波式噴霧化方法および空圧式噴霧化方法に言及した。これら方法はいずれも特定範囲の特性のみを有した流体の噴霧化に利用できるが、本発明に利用できる材料はこれら2つの噴霧化方法には限定されない。一方の噴霧化方法が特定材料に適していないことが判明した場合には、異なる噴霧化方法が選択でき、本発明に採用できる。また、本発明の実施は特定の液体ビヒクルまたは配合に頼らず、幅広い種類の材料源が利用できる。
【0055】
本発明をいくつかの好適実施例に言及して詳細に説明したが、それら以外の実施態様であっても同様に機能する。本発明の変形および改良は当業専門家には自明であろう。「請求の範囲」で定義された本発明はそれら変形および改良の全てを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を堆積する堆積ヘッドであって、
1以上のキャリアガスインレットと、
1以上の噴霧器と、
該1以上の噴霧器と構造的に一体化されているエアゾールマニフォールドと、
該エアゾールマニフォールドと通流結合する1以上のエアゾール搬送導管と、
シースガスインレットと、
1以上の材料堆積アウトレットと、
を含んで成ることを特徴とする堆積ヘッド。
【請求項2】
バーチャルインパクタと排気ガスアウトレットとをさらに含んでおり、該バーチャルインパクタは、1以上の噴霧器の中の少なくとも1つの噴霧器と、エアゾールマニフォールドとの間に設置されていることを特徴とする請求項1記載の堆積ヘッド。
【請求項3】
材料貯蔵部をさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載の堆積ヘッド。
【請求項4】
エアゾールマニフォールドから材料貯蔵部に未使用材料運搬するドレーンをさらに含んでいることを特徴とする請求項3記載の堆積ヘッド。
【請求項5】
再充填せずに長期にわたり運用させること、材料を望む温度で保管すること、材料を望む粘度で保管すること、材料を望む組成で保管すること、および粒体の凝集を防止すること、から選択される目的を達成させるために外部材料貯蔵部をさらに含んでいることを特徴とする請求項3記載の堆積ヘッド。
【請求項6】
1以上のエアゾール搬送導管の少なくとも中央部を同心的に包囲するシースガスマニフォールドをさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載の堆積ヘッド。
【請求項7】
導管アウトレットを備えたそれぞれのエアゾール搬送導管の一部を包囲するシースガスチャンバをさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載の堆積ヘッド。
【請求項8】
エアゾール搬送導管は十分に長く提供されており、エアゾール流が導管アウトレットから排出された後、シースガスチャンバのアウトレットにおいて、あるいはその近辺で組み合わされる前にシースガス流はエアゾール流に対して実質的に平行化されることを特徴とする請求項7記載の堆積ヘッド。
【請求項9】
交換可能であることを特徴とする請求項1記載の堆積ヘッド。
【請求項10】
設置前から材料が充填されている材料貯蔵部をさらに含んでいることを特徴とする請求項9記載の堆積ヘッド。
【請求項11】
使い捨て、あるいは再充填式であることを特徴とする請求項9記載の堆積ヘッド。
【請求項12】
1以上の噴霧器は複数の異なる材料を噴霧化することを特徴とする請求項1記載の堆積ヘッド。
【請求項13】
複数の異なる材料は堆積直前まで、あるいは堆積中には互いに混合せず、及び/又は互いに反応しないことを特徴とする請求項12記載の堆積ヘッド。
【請求項14】
堆積される材料の混合比は制御可能であることを特徴とする請求項12記載の堆積ヘッド。
【請求項15】
複数の噴霧器は同時的に運用されるか、あるいは少なくとも2体の噴霧器は異なる時間に運用されることを特徴とする請求項12記載の堆積ヘッド。
【請求項16】
三次元材料堆積装置であって、堆積ヘッドと噴霧器とを含んでおり、該堆積ヘッドと該噴霧器は伴って三次元の直線移動が可能であり、前記堆積ヘッドは傾斜可能であるが、前記噴霧器は傾斜不能であることを特徴とする材料装置。
【請求項17】
構造物の外部、内部及び/又は下側に材料を堆積するのに有用であることを特徴とする請求項16記載の材料堆積装置。
【請求項18】
堆積ヘッドが狭い通路内へ進入可能となるように設計されていることを特徴とする請求項16記載の材料堆積装置。
【請求項19】
材料を堆積する方法であって、
第1材料を噴霧化させて第1エアゾールを形成するステップと、
第2材料を噴霧化させて第2エアゾールを形成するステップと、
該第1エアゾールと該第2エアゾールとを組み合わせるステップと、
該組み合わされたエアゾールをシースガスの環状流で包囲させるステップと、
該組み合わされたエアゾールを集束させるステップと、
該集束されたエアゾールを堆積させるステップと、
を含んで成ることを特徴とする方法。
【請求項20】
両噴霧化ステップは同時的あるいは順番に実行されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
少なくとも一方のエアゾールの材料量を変動させるステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項22】
両噴霧化ステップは異なる設計の噴霧器を利用するものであることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項23】
複合構造物を堆積させるステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−537812(P2010−537812A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523198(P2010−523198)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/075042
【国際公開番号】WO2009/029942
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(501429955)オプトメック,インク. (6)
【Fターム(参考)】