説明

機械式過給機

【課題】専用部品の採用や部品点数の増大を防止しつつ入力回転の増速を可能とし、しかも限られたスペースでも設置可能な機械式過給機の提供にある。
【解決手段】
回転体を有し、回転体の回転により給気用の空気を送出する送出機構と、回転体を回転する入力軸20と、入力軸20に設けられ、伝動ベルト35を介して動力源の出力回転力の伝達を受けるプーリ34と、を備えた機械式過給機10ある。プーリ34よりも回転体側の入力軸20の端部に電磁クラッチ30が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジン等の動力を伝動ベルト等の機械的伝達手段により受けて駆動される機械式過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、車両に搭載される過給機として、エンジン等の動力をベルト等の機械的伝達手段により受けて駆動される機械式過給機(スーパーチャージャー)が広く知られている。
機械式過給機は、エンジンの出力状態に応じて作動させたり、あるいは停止させたりする必要があることから、クラッチを備える場合がある。
例えば、図4に示す機械式過給機60は、一対のロータ61、62と、入力軸63に取り付けられたプーリ64と、プーリ64に掛装され、エンジンからの動力を伝達する無端状の伝動ベルト65と、プーリ64の先端側に設けたクラッチ66と、を備えている。
因みに、プーリ64とロータ軸67との間には軸継手68が設けられている。
軸継手68は機械式過給機60の作動時における入力軸63の軸心とロータ軸67の軸心との位置ずれを吸収したり、機械式過給機60の組み付け時において各軸63、67の軸心を合わせやすくしたりする機能を持つ。
【0003】
機械式過給機60では、エンジンから受ける回転を増速させることが要求されるため、伝動ベルト65が掛装されるエンジン側のエンジンプーリに対して機械式過給機60側のプーリ64の小径化が必要となる。
しかし、図4に示すように、小径化されたプーリ64を利用したクラッチ66とする場合、プーリ64の小径化に対応させてクラッチ66を小型化しなければならない。
プーリ64の小径化に対応させて小型化されたクラッチ66を製作することは製造技術上の困難性が増大するという問題がある。
【0004】
そこで、プーリの小径化に対応させたクラッチの製作を回避する対策として、例えば、図5に示すように、エンジンEと機械式過給機70との間にクラッチ71を独立して配置する技術が存在する。
この技術では、図5に示すように、エンジンEのエンジンプーリとクラッチ71に掛装される伝動ベルト72と、クラッチ71と機械式過給機70のプーリ73に掛装される別の伝動ベルト74が設けられている。
この構成を採用すると、エンジンEと機械式過給機70の間にクラッチ71が介在されることからクラッチ71の小径化を回避することができ、クラッチ71の製作が容易となる。
【0005】
一方、別の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された機械式過給機の駆動力伝達装置を挙げることができる。
この機械式過給機の入力軸の端部にはプーリが設けられ、エンジンの出力軸に取り付けたプーリとの間にベルトが掛け回されている。
入力軸と入力軸に設けたプーリとの間には電磁クラッチが設けられている。また、ギヤケーシング内には互いに噛合する増速ギヤが設置されている。
【0006】
特許文献1に開示された機械式過給機によれば、電磁クラッチを動力伝達状態とした上で、エンジンの回転力がベルトに伝達されると、入力軸のプーリの回転が電磁クラッチを介して入力軸に伝達される。
さらに、入力軸に伝達された回転は、増速ギヤにより増速された後、タイミングギヤを介してロータへ伝達されてロータが回転する。
従って、特許文献1に開示された機械式過給機によれば、増速ギヤを設けたことにより、入力軸のプーリの小径化が回避され、プーリの小径化に対応させたクラッチを設ける必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平7−38663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図5に示す従来の技術では、エンジンと機械式過給機との間にクラッチを独立して設けるスペースが必要となる。
さらに、クラッチが回転軸を備えることでその分の回転軸の軸方向へのスペースも必要となり、機械式過給機の搭載スペースが限られた車両では搭載不可能な場合もある。
また、機械式過給機とクラッチに掛装されている伝動ベルトを専用部品として用意しなくてはならないという問題がある。
一方、特許文献1の機械式過給機の場合、ケーシング内に増速ギヤを設けることから、その分だけ部品点数が確実に増大するほか、入力軸の軸方向の寸法が大きくなるという問題がある。
また、特許文献1の機械式過給機は増速ギヤを備えることから、増速ギヤによる騒音が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、専用部品の採用や部品点数の増大を防止しつつ入力回転の増速を可能とし、しかも限られたスペースでも設置可能な機械式過給機の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、回転体を有し、前記回転体の回転により給気用の空気を送出する送出機構と、前記回転体を回転する入力軸と、前記入力軸に設けられ、伝動ベルトを介して動力源の出力回転力の伝達を受けるプーリと、を備えた機械式過給機において、前記プーリよりも前記回転体側の前記入力軸の端部に電磁クラッチが設けられることを特徴とする。
回転体は回転により給気用の空気を送出する要素であり、例えば、スクリュー式のロータやルーツ式のロータが好ましい。送出機構は回転体以外に送出に必要な要素を含んでもよい。
【0011】
本発明では、電磁クラッチがプーリよりも回転体側の入力軸の端部に設けられるから、プーリが小径化されてもプーリの小径化に対応させてクラッチを小型化する必要がない。
また、電磁クラッチがプーリと同軸に配置されているから、従来が必要とした軸継手の機能を電磁クラッチが果すことができ、軸継手を設ける必要がない。
また、プーリの小径化により増速ギヤを必要としないから過給機の大型化を回避することができる。
本発明によれば、専用部品の採用や部品点数の増大を抑制しつつ限られたスペースでも設置できるほか、入力回転の増速を可能とする機械式過給機を提供することができる。
【0012】
また、本発明では、上記の機械式過給機において、前記送出機構を収容する第1ハウジングと、前記第1ハウジングに接合され、前記クラッチを収容する第2ハウジングを有してもよい。
【0013】
この場合、第1ハウジングに接合される第2ハウジングは第1ハウジングから分離することができるから、例えば、電磁クラッチの保守点検や部品交換の際に第2ハウジングを取り外すだけでハウジング全体を分解する必要がない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専用部品の採用や部品点数の増大を防止しつつ入力回転の増速を可能とし、しかも限られたスペースでも設置可能な機械式過給機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る機械式過給機の断面図である。
【図2】本発明の実施形態の変更例1に係る機械式過給機の断面図である。
【図3】本発明の実施形態の変更例2に係る機械式過給機の断面図である。
【図4】従来の技術に係る機械式過給機の断面図である。
【図5】別の従来の技術の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る機械式過給機(以下、単に「過給機」と表記する)を図1に基づいて説明する。
図1に示す過給機10のハウジングは、一対のロータ21、22および一対のタイミングギヤ18、19を収容するロータハウジング11と、電磁クラッチ30を収容し、ロータハウジング11に接合されるクラッチハウジング14を有する。
本実施形態では、ロータハウジング11は第1ハウジングに相当し、クラッチハウジング14は第2ハウジングに相当する。
一対のロータ21、22は、回転体であって送出機構に相当する。
なお、送出機構はロータハウジング11に収容されるが、回転体以外の要素がロータハウジング11に収容されてもよい。
【0017】
ロータハウジング11には、一対のロータ21、22を収容するロータ室12と、タイミングギヤ18、19を収容するギヤ室13が形成されている。
ロータ室12には、互いに噛合する一対のロータ21、22により送出空間が形成される。
図示はしないがロータハウジング11は、給気用の空気を吸入する吸入口と空気を吐出する吐出口を備えている。
クラッチハウジング14には、電磁クラッチ30を収容するクラッチ室15が形成されているほか、クラッチ室15と連通する軸孔17を形成する筒状部16を有している。
【0018】
ロータハウジング11内に収容される一対のロータ21、22は、給気用の空気をロータ室12に導入し、エンジン(図示せず)の給気通路へ送出する回転体である。
一方のロータ21はロータ軸23と連結されており、ロータ軸23の回転により回転される駆動側のロータである。
他方のロータ22はロータ軸24と連結される従動側のロータであり、ロータ軸23が回転されるとタイミングギヤ18、19を介して回転される。
ロータ軸23におけるロータ室12とギヤ室13との間には軸受25が設けられ、ギヤ室13と反対側となるロータ軸23の端部には軸受26が設けられている。
軸受25、26は駆動側のロータ軸23をロータハウジング11に対して支承して、ロータ21をロータ室12において回転自在に支持する。
ロータ軸24におけるロータ室12とギヤ室13との間には軸受27が設けられ、ギヤ室13と反対側となるロータ軸24の端部には軸受28が設けられている。
軸受27、28は従動側のロータ軸24をロータハウジング11に対して支承して、ロータ22をロータ室12において回転自在に支持する。
【0019】
駆動側のロータ軸23におけるギヤ室13側の端部はギヤ室13を貫通してクラッチハウジング14内のクラッチ室15に達している。
駆動側のロータ軸23におけるギヤ室13を貫通する軸部に駆動側のタイミングギヤ18が取り付けられている。
従動側のロータ軸24におけるギヤ室13側の端部はギヤ室13内に突出している。
従動側のロータ軸24のギヤ室13に突出した端部に従動側のタイミングギヤ19が取り付けられている。
駆動側のタイミングギヤ18と従動側のタイミングギヤ19は互いに噛合し、駆動側のタイミングギヤ18の回転により、従動側のタイミングギヤ19は駆動側のタイミングギヤ18の回転方向と反対方向に回転する。
このため、一対のロータ21、22はタイミングギヤ18、19を介して相対回転し互いに噛み合う。
【0020】
駆動側のロータ軸23の端部には電磁クラッチ30の一部を構成するアーマチャ31が備えられている。
アーマチャ31はロータ軸23の回転に伴って回転するようにロータ軸23に取り付けられており、アーマチャ31の摩擦面はロータ軸23の軸心方向に対して直角な面を形成している。
クラッチハウジング14の軸孔17には入力軸20が挿入されている。
入力軸20は、軸方向に設けられた一対の軸受29によりクラッチハウジング14に対して回転自在に支承されている。
入力軸20のギヤ室13側の端部はクラッチ室15に突出しており、突出した端部には電磁クラッチ30の一部を構成するディスクロータ32が設けられている。
つまり、電磁クラッチ30はロータ21側の入力軸20の端部に設けられる。
入力軸20に設けられたディスクロータ32の摩擦面は、ロータ軸23に固定されているアーマチャ31の摩擦面と対向している。
【0021】
クラッチハウジング14のクラッチ室15には環状の電磁コイル33が設置されている。
電磁コイル33はディスクロータ32の摩擦面と反対側の面における外周付近と対向して隙間を空けて配置されている。
ディスクロータ32は電磁コイル33の励磁により磁化され、アーマチャ31が磁化されたディスクロータ32に吸着される。
アーマチャ31がディスクロータ32に吸着されると、アーマチャ31の摩擦面とディスクロータ32の摩擦面が当接され、入力軸20の回転がロータ軸23へ伝達される。
電磁コイル33の励磁が解除されて電磁コイル33が無励磁状態になると、アーマチャ31はディスクロータ32との吸着を解除し、アーマチャ31の摩擦面とディスクロータ32の摩擦面との当接が解除され、入力軸20の回転力はロータ軸23に伝達されない。
上記のように、本実施形態の電磁クラッチ30は、ロータ軸23のアーマチャ31、入力軸20のディスクロータ32および電磁コイル33とから主に構成される。
【0022】
なお、本実施形態の過給機10では、従来の過給機に備えられていた軸継手が設けられず、軸継手に代えて電磁クラッチ30が設けられている構成となっている。
電磁クラッチ30は、入力軸20の回転力をロータ軸23に伝達又は遮断するといったクラッチとしての機能のほかに、過給機10の運転時における駆動側のロータ軸23の軸心と入力軸20の軸心との位置ずれを吸収する機能を果す。
つまり、電磁クラッチ30は、従来の過給機に設けられていた軸継手の機能を果す。
また、入力軸20とロータ軸23の間に電磁クラッチ30を設けたことで、過給機10の組み付け時における入力軸20とロータ軸23の軸心の位置合わせが、軸継手を設けた過給機の場合と同様に簡単に行うことも可能である。
【0023】
入力軸20のディスクロータ32を設けた端部と反対の端部にはプーリ34が取り付けられている。
従って、プーリ34は電磁クラッチ30と同軸に配置されている。
プーリ34には伝動ベルト35が掛装され、伝動ベルト35は動力源となるエンジンに設けられたエンジンプーリ(図示せず)に掛装されている。
この実施形態では、プーリ34の一部がクラッチハウジング14の筒状部16の端部外周を覆う形状のプーリである。
筒状部16の端部外周を覆うプーリ34を用いることで、過給機10の軸方向への寸法が大きくなることを抑制している。
過給機10に設けたプーリ34の直径とエンジンプーリの直径とのプーリ比は、エンジンのプーリの回転数に対して過給機10のプーリ34が必要とする回転数を実現するように設定されている。
過給機10のプーリ34、エンジンプーリおよび伝動ベルト35により、エンジンプーリ回転数に対する過給機10のプーリ回転数の増速化がプーリ比に基づいて図られている。
【0024】
次に、本実施形態の過給機10の作動について説明する。
エンジンの運転中はエンジンプーリの出力回転力は、伝動ベルト35を介して過給機10のプーリ34に伝達される。
過給機10のプーリ34にはプーリ比に基づき増速された入力回転力が入力され、入力軸20が回転する。
【0025】
過給機10の作動が必要なエンジンの運転条件では、エンジンの運転中に電磁クラッチ30の電磁コイル33を励磁する。
電磁コイル33が励磁されている状態では、ディスクロータ32は磁化され、磁化されたディスクロータ32にアーマチャ31が吸着する。
このため、アーマチャ31の摩擦面とディスクロータ32の摩擦面は互いに当接しており、入力軸20の回転力はロータ軸23に伝達され、ロータ軸23は回転する。
ロータ軸23の回転によりタイミングギヤ18、19が相対回転し、タイミングギヤ18、19の相対回転に伴い、駆動側のロータ21および従動側のロータ22が相対回転する。
駆動側のロータ21および従動側のロータ22の相対回転により給気用の空気がエンジン側の給気通路へ吐出される。
このように、電磁クラッチ30の電磁コイル33が励磁している状態では、過給機10は作動する。
【0026】
過給機10の作動を必要としないエンジンの運転条件では、エンジンの運転中に電磁クラッチ30の電磁コイル33を無励磁状態としておく。
電磁コイル33の励磁が解除されている無励磁状態では、ディスクロータ32は磁化されず、ロータ軸23側のアーマチャ31は入力軸20側のディスクロータ32に吸着されない。
このため、入力軸20の回転力はロータ軸23に伝達されない。
【0027】
本実施形態の過給機は以下の作用効果を奏する。
(1)電磁クラッチ30がクラッチハウジング14内に設けられるから、プーリ34が小径化されてもプーリ34の小径化に対応させて電磁クラッチ30を小型化する必要がない。従って、電磁クラッチ30の製作が容易となり、過給機10を製作し易くなる。
(2)電磁クラッチ30がプーリ34と同軸に配置されているから、従来では必要とした軸継手の機能を電磁クラッチ30が果すことができ、軸継手が不要となる。これにより、過給機10の軸方向の寸法が大きくなることを抑制することができるほか、プーリ34と伝動ベルト35以外に増速のための構成を必要としない。
(3)プーリ34の小径化が容易となり、増速ギヤを必要としないから過給機10の大型化を防止することができる。また、過給機10は増速ギヤによる騒音発生の問題も生じることはない。また、プーリ34の小径化が容易になったことにより、汎用性のある伝動ベルト35を用いることができる。例えば、過給機10の作動とともにエンジンの補機を駆動する伝動ベルト35を用いることができる。
【0028】
(4)専用部品の採用や部品点数の増大を防止しつつ入力回転の増速を可能とし、しかも限られたスペースでも設置可能な過給機10を提供することができる。
(5)電磁クラッチ30は、入力軸20の回転力をロータ軸23に伝達又は遮断するといったクラッチとしての機能のほかに、過給機10の運転時における駆動側のロータ軸23の軸心と入力軸20と軸心との位置ずれを吸収することができる。
(6)入力軸20とロータ軸23の間に電磁クラッチ30を設けたことで、過給機10の組み付け時における入力軸20とロータ軸23の軸心の位置合わせが、軸継手の場合と同様に簡単に行うことも可能である。
【0029】
(7)電磁クラッチ30のサイズがプーリ34の寸法に制約されないから、プーリ比を変更する場合に、プーリ34のみをプーリ比に対応するプーリに交換すればよく、従来の過給機のようにプーリとともにクラッチを変更する必要はない。つまり、過給機10としての汎用性を向上することができる。
(8)電磁クラッチ30がクラッチハウジング14に内蔵されていることにより、電磁クラッチ30をハウジングの外部に設けた場合と比較すると、クラッチハウジング14により保護されるから電磁クラッチ30の信頼性が向上する。
【0030】
(変更例1)
実施形態の変更例1に係る過給機10について図2に基づき説明する。
上記の実施形態と共通の要素については、上記の実施形態の説明を援用して同じ符号をも用いる。
図2に示す変更例1は、実施形態のプーリ34よりもさらに小径化したプーリ41を用いた例である。
【0031】
図2に示すように、入力軸40のプーリ側の端部は筒状部16から外部へ突出している。
入力軸40において突出した端部にプーリ41が取り付けられている。
プーリ41は筒状部16の外周径とほぼ同じ程度の直径に設定されており、実施形態のプーリ34よりもさらに小径化したプーリである。
プーリ34のさらなる小径化によるプーリ41は、過給機10において回転の一層の増速化を図ることができる。
変更例1によれば、入力軸20よりも長い入力軸40に変更することで、実施形態のプーリ34よりもさらに小径のプーリ41を用いることができ、プーリ径の変更による増速可能な範囲を拡大することができる。
【0032】
(変更例2)
実施形態の変更例2に係る過給機10について図3に基づき説明する。
上記の実施形態と共通の要素については、上記の実施形態の説明を援用して同じ符号をも用いる。
図3に示す変更例2は、実施形態の電磁クラッチ30と異なる構造の電磁クラッチ50を用いた例である。
【0033】
図3に示すように、クラッチハウジング14のクラッチ室15に電磁クラッチ50が収容されている。
電磁クラッチ50は、ロータ軸23に取り付けられた有底円筒状のカップロータ51と、入力軸20に取り付けられた有底円筒状のアーマチャ52と、電磁コイル53を有する。
ロータ軸23のカップロータ51はロータハウジング11側へ向かって延在する周壁部51Aを有しており、周壁部51Aの外周面は摩擦面を形成している。
入力軸20のアーマチャ52は、ロータ軸23に設けたカップロータ51の周壁部51Aの外側を覆う周壁部52Aを有しており、周壁部52Aの内周面は摩擦面を形成している。
電磁コイル53はカップロータ51の周壁部51Aの内側に環状に配置されるようにロータハウジング11に固定されている。
【0034】
変更例2の電磁クラッチ50では、電磁コイル53の励磁により周壁部51Aが磁化され、入力軸20に設けたアーマチャ52の周壁部52Aがロータ軸23のカップロータ51に設けた周壁部51Aに吸着される。
つまり、電磁クラッチ50の励磁による周壁部51Aの外周面と、周壁部52Aの外周面との当接により入力軸20の回転力がロータ軸23に伝達される。
なお、電磁コイル53の励磁が解除されると、周壁部51Aの外周面と、周壁部52Aの外周面との当接は解除され、アーマチャ52の周壁部52Aはカップロータ51の周壁部51Aに吸着されない。
このため、入力軸20が回転されても、ロータ軸23へ入力軸20の回転力は伝達されず、ロータ21、22は回転しない。
【0035】
なお、上記の実施形態および変更例は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 上記の実施形態や変更例では、送出機構を構成する回転体を単に一対のロータとし、形式を特定しなかったが、一対のロータはスクリュー式のロータや断面多葉形のルーツ式のロータであってもよい。また、回転体は一対のロータ以外の回転体としてもよく、例えば、回転体をインペラとしてもよい。回転体や送出機構の構成は、給気用の空気を送出することができる構成であれば特に限定されない。
○ 上記の実施形態や変更例では、ロータハウジングとクラッチハウジングは互いに接合される構成としたが、ロータハウジングとクラッチハウジングは一体形成されてもよく、ハウジングの構成については特に限定されない。例えば、一体形成されたハウジングは縦断面を有するように2分割したハウジング分割体とすれば、送出機構や電磁クラッチの組み付けが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10、60、70 機械式過給機
11 ロータハウジング
12 ロータ室
13 ギヤ室
14 クラッチハウジング
15 クラッチ室
18、19 タイミングギヤ
20、40 入力軸
21、22 ロータ
23、24、67 ロータ軸
30、50 電磁クラッチ
31、52 アーマチャ
32 ディスクロータ
33、53 電磁コイル
34、41、64、73 プーリ
35、65、72、74 伝動ベルト
51 カップロータ
51A 周壁部
52A 周壁部
66、71 クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を有し、前記回転体の回転により給気用の空気を送出する送出機構と、
前記回転体を回転する入力軸と、
前記入力軸に設けられ、伝動ベルトを介して動力源の出力回転力の伝達を受けるプーリと、を備えた機械式過給機において、
前記プーリよりも前記回転体側の前記入力軸の端部に電磁クラッチが設けられることを特徴とする機械式過給機。
【請求項2】
前記送出機構を収容する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに接合され、前記クラッチを収容する第2ハウジングを有することを特徴とする請求項1記載の機械式過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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