説明

機械式駐車装置の融雪装置

【課題】降雪地方の屋外において使用する機械式駐車装置であっても、パレット上の降雪を融雪して、自動車の入庫を円滑に行い得ると共に、このような融雪作業を自動的に実施する。
【解決手段】複数段に配置したパレット1を、ピット7内に設けた主支柱3間で昇降させ、各パレット1に自動車6を格納し得る機械式駐車装置において、上段のパレット1にヒータ12を張り付け、パレット1に堆積した降雪を溶融するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外において使用する、パレットを二段又は数段に配置した機械式駐車装置に係り、特に上段のパレットに降り積もった雪を融雪することができる機械式駐車装置の融雪装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋外の駐車場において効率良く自動車の駐車台数を増加するために、二段又は三段昇降駐車装置が提案されている。この三段昇降駐車装置は、図5及び図6の両断面図に示すように、3枚のパレット1を挟むように支持するパレット支柱2を、主支柱3の間において昇降自在に構成したものである。このパレット1のパレット支柱2は、主支柱3に設けた駆動部4により、上下に昇降させるようになっている。このパレット1は、操作盤5を操作することにより、パレット支柱2と共に上昇させるだけで、載せている自動車6をピット7内から容易に出庫させることができるようになっている。
【0003】
逆に、下段のパレット1に自動車6を入庫させるときは、この下段のパレット1を入出庫レベルLにパレット支柱2と共に上昇させ、この位置で自動車6を載せる。同様に中段のパレット1に自動車6を入庫させるときは、この各パレット1を入出庫レベルLにパレット支柱2と共にピット7内から上昇させ、この位置で自動車6を載せる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の機械式駐車装置を降雪地方において使用するときは、上段のパレット1に雪が降り積もることがある。この上段のパレット1の積雪が高いときは、自動車6を載せることが困難になるという問題があった。また、パレット1上の積雪を除雪しないと、昼間の気温上昇で積雪の一部が融雪して流れ出し、この水分が主支柱3部分や駆動部4に流れ込み、その後の気温の低下でこの機構部分において氷結し、パレット支柱2を昇降させることが困難になり、機械式駐車装置への自動車6の入出庫を円滑に行えないという問題があった。
【0005】
このように豪雪地方では、パレット1を二段又は数段に配置した機械式駐車装置は、屋内に設置して使用するか、或いはこの機械式駐車装置の周囲を囲むように屋根付きの建物を建設しなければ使用することができないという問題を有していた。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、降雪地方の屋外において使用する機械式駐車装置であっても、パレット上の降雪を融雪して、自動車の入出庫を円滑に行ない得ると共に、このような融雪作業を自動的に実施することができる機械式駐車装置の融雪装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の機械式駐車装置の融雪装置によれば、複数段に配置したパレット(1)を、ピット(7)内に設けた主支柱(3)間で昇降させ、各パレット(1)に自動車(6)を格納し得る機械式駐車装置において、上段のパレット(1)にヒータ(12)を張り付け、該パレット(1)に堆積した降雪を溶融するように構成したことを特徴とする機械式駐車装置の融雪装置が提供される。
【0008】
また、上記の機械式駐車装置の融雪装置において、前記上段パレットに設けられた温度センサを備え、前記ヒータは、温度センサ(14)が所定の温度上昇を感知したときに、前記パレット(1)の加熱を停止する、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記の機械式駐車装置の融雪装置において、降雪を検知する降雪センサと、機械式駐車装置のうち上段パレット又は上段パレットとともに昇降する部位に設けられた第1電気接点と、上段パレットが自動車の入出庫レベルにあるとき前記第1電気接点と接続し、上段パレットが自動車の入出庫レベルより上の位置にあるときは第1電気接点と分離する第2電気接点とを備え、前記降雪センサが降雪を検知しかつ上段パレットが自動車の入出庫レベルにあるとき前記第1電気接点と前記第2電気接点を介して前記ヒータに加熱のための電力が供給され、上段パレットが入出庫レベルより上の位置に上昇して前記第1電気接点と前記第2電気接点が分離すると前記ヒータへの加熱のための電力供給が遮断される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パレットにヒータを張り付けたので、簡単な構成でこのパレットに堆積した降雪を溶融することができる。パレットの加熱温度の管理も確実に行うことができる。従って、降雪地方の屋外において屋根を設けなくても、機械式駐車装置に対して自動車の入出庫を円滑に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】機械式駐車装置の融雪装置の参考例を示す側断面図である。
【図2】温風噴射装置部分を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の機械式駐車装置の融雪装置の実施形態を示す側断面図である。
【図4】ヒータを張り付けたパレットを示す底面図である。
【図5】従来の三段昇降駐車装置を示す正断面図である。
【図6】従来の三段昇降駐車装置を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。図1は機械式駐車装置の融雪装置の参考例を示す断面図である。この機械式駐車装置は、2枚のパレット1を挟むように支持するパレット支柱2を、主支柱3の間において上下に昇降自在に構成したものである。このパレット1のパレット支柱2は、主支柱3に設けた駆動部4により、上下に昇降させるようになっている。このパレット1は、操作盤5を操作することにより、パレット支柱2と共に上昇させるだけで自動車6を容易にピット7内から出庫させることができるようになっている。
【0013】
図2は温風噴射装置部分を示す拡大断面図である。ピット7内には、上段のパレット1に向けて温風を噴射する温風噴射装置8を設けてある。この温風噴射装置8は、ピット7外にボイラー等の温風発生機9と、この温風発生機9で発生させた温風をピット7内に送るパイプ10と、このパイプ10の先端に設けた温風噴射口11とから成るものである。この温風噴射口11は、ピット7の壁面に、その噴射方向を可変し得るように取り付けたものである。
【0014】
このように構成したので、温風噴射装置8で、温風を上段のパレット1に向けて噴射することにより、このパレット1に堆積した降雪を溶融することができるので、降雪地方の屋外において屋根を設けなくても、機械式駐車装置に対して自動車の入出庫を円滑に行なうことができる。
【0015】
更に、温風噴射口11は、ピット7の壁面にその噴射方向を可変し得るように設けてあるため、各温風噴射口11の向きを上段のパレット1の下面に全域にわたるように向けて、このパレット1を効率良く加熱することができる。従って、このパレット1上の降雪を迅速に溶融することができる。
【0016】
図3は本発明の実施形態を示す側断面図である。図4はヒータを張り付けたパレットを示す底面図である。本発明の実施形態では、上述した参考例の温風噴射装置8に代えて、上段のパレット1の下面にヒータ12を張り付けたものである。このヒータ12の配線12aは、パレット1を構成する補強材1a部分を跨がせるのではなく、パレット1上面への伝熱効率を高めるために、天板1bに形成された凹分に貫通させてある。そこで、このパレット1に堆積した降雪を迅速に溶融することができる。
【0017】
また、パレット1にヒータ12を張り付けた構成では、単に効率よく堆積した降雪を溶融することができるだけではなく、加熱温度の管理も確実に行うことができる。例えば、豪雪地方では短時間で雪が降り積もるため、加熱温度が低いと降雪を完全に溶融することができないことがあるが、このような場合に加熱温度を高めるように管理することができる。
【0018】
このように構成した機械式駐車装置の融雪装置によれば、降雪センサ13により感知し、この降雪センサ13が降雪状態を感知すると、上述したように温風噴射装置8により上段のパレット1に向けて各温風噴射口11から温風を噴射することができる。この後、パレット1上に堆積した降雪を溶融し、パレット1に設けた温度センサが、所定の温度上昇を感知したときは、温風噴射装置8からの温風の噴射を停止させる。温度センサはパレット1自体に取り付ける必要があるが、降雪センサ13は必ずしもパレット1に設ける必要はなく、図3のように制御盤5の上に設けることができる。
【0019】
このように、パレット1上の降雪センサ13は降雪状態を感知し、雪が高く積もる前にパレット1に向けて温風を噴射することができるので、容易に融雪することができる。なお、雪が溶融して、新たな降雪もないときは、パレット1上の温度が上昇することになる。この温度上昇を、温度センサが感知したときに、温風の噴射を停止させることにより、エネルギーの無駄を回避することができる。
【0020】
一旦、止んだ降雪が再度降り出したら、降雪センサ13が降雪状態を感知して温風の噴射を開始する。またパレット1に向けて温風を噴射する方法に代えて、パレット1をヒータ12で加熱する方法でも自動的に融雪することができる。
【0021】
更に、パレット1を上昇させて自動車6を入出庫させるときに、温風噴射装置8からの温風を噴射させていると、自動車6に乗降車する人に雪や水滴がかかる不具合が生じることがある。そこで、パレット1が下降しているときのみに温風を噴射又はヒータ12を加熱し、パレット1が上昇するときは温風を噴射又はヒータ12を加熱が停止するように、例えば上段のパレット1に設けたコネクター等の第1電気接点15aと、これに接合する第2電気接点15bをピット7内に設けることができる(図1及び図3参照)。なお、各電気接点15a及び15bを取り付ける位置は、上段のパレット1に限定されず、パレット支柱2であってもよく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更を加えることができる。
【0022】
上述した機械式駐車装置の融雪装置は、ピットに設けた温風噴射装置で、温風を上段のパレットに向けて噴射又はヒータで加熱することにより、このパレット上に堆積した降雪を溶融することができるので、降雪地方の屋外において屋根を設けなくても、機械式駐車装置に対して自動車の入出庫を円滑に行なうことができる。
【0023】
また、温風噴射口は、ピットの壁面に噴射方向を可変して、各温風噴射口の向きを上段のパレットの下面全域にわたるように向けて、このパレットを効率良く加熱することができるので、このパレット上の降雪を迅速に溶融することができる。
【0024】
また、上述した機械式駐車装置の融雪装置は、融雪作業を自動的に実施することができるだけではなく、機械式駐車装置の上段のパレット上の降雪センサが降雪状態を感知し、雪が高く積もる前にパレットに向けて温風を噴射し、又はヒータを加熱することができるので、容易に融雪することができる。
【0025】
また、雪が溶融して新たな降雪もないときは、パレット上の温度が上昇し、この温度上昇を、温度センサが感知したときに、温風の噴射を停止させることにより、エネルギーの無駄を回避することができ、降雪を容易かつ迅速に融雪することができる、等の優れた効果がある。
【符号の説明】
【0026】
1 パレット
7 ピット
3 主支柱
6 自動車
8 温風噴射装置
11 噴射口
12 ヒータ
13 降雪センサ
15a 第1電気接点
15b 第2電気接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段に配置したパレット(1)を、ピット(7)内に設けた主支柱(3)間で昇降させ、各パレット(1)に自動車(6)を格納し得る機械式駐車装置において、
上段のパレット(1)にヒータ(12)を張り付け、該パレット(1)に堆積した降雪を溶融するように構成したことを特徴とする機械式駐車装置の融雪装置。
【請求項2】
前記上段パレットに設けられた温度センサを備え、
前記ヒータは、温度センサ(14)が所定の温度上昇を感知したときに、前記パレット(1)の加熱を停止する、ことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置の融雪装置。
【請求項3】
降雪を検知する降雪センサと、
機械式駐車装置のうち上段パレット又は上段パレットとともに昇降する部位に設けられた第1電気接点と、
上段パレットが自動車の入出庫レベルにあるとき前記第1電気接点と接続し、上段パレットが自動車の入出庫レベルより上の位置にあるときは第1電気接点と分離する第2電気接点とを備え、
前記降雪センサが降雪を検知しかつ上段パレットが自動車の入出庫レベルにあるとき前記第1電気接点と前記第2電気接点を介して前記ヒータに加熱のための電力が供給され、
上段パレットが入出庫レベルより上の位置に上昇して前記第1電気接点と前記第2電気接点が分離すると前記ヒータへの加熱のための電力供給が遮断される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機械式駐車装置の融雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−162047(P2009−162047A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38016(P2009−38016)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【分割の表示】特願2000−88974(P2000−88974)の分割
【原出願日】平成12年3月28日(2000.3.28)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】