説明

機械的処理時の繊維又は基材の摩擦特性を評価する方法

繊維または基材の摩擦特性の評価する方法。この方法は、毛髪繊維の損傷程度を評価するため、繊維若しくは基材の摩擦特性を最小限にするために、組成物の有効性を実証するために、並びに/又は宣伝文句を立証するために、有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維又は基材の摩擦特性を評価する方法に関する。本発明はまた、毛髪繊維の損傷程度を評価するためにも有用である。本発明は、繊維又は基材の摩擦特性を最小限にするために、組成物の有効性を実証するために、特に有用である。本発明は、宣伝文句を立証するために利用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
繊維、例えば、哺乳類の毛は、機械的に処理されると、例えば、梳かれたり、ブラッシングされたり、又は擦られたりすると、摩擦が生成される。摩擦の発生は、繊維の特性、繊維の状態に応じて、変化する。通常、繊維が滑らかであればあるほど、梳いたり、ブラッシングしたり、又は擦ったりする時に生成される摩擦が低くなる。同様に、乱雑及び/又はもつれた繊維は、機械処理時に生成される摩擦を増加させる。生成される摩擦はまた、繊維を機械的に処理するために使用される方法、及び/又は繊維を機械的に処理するために使用される装置に応じて変化する場合がある。生成される摩擦は、繊維が梳かれたり、ブラッシングされたり、擦られたりする回数及び頻度に応じて変わる場合がある。摩擦はまた、繊維を機械的に処理するために使用される装置に応じて変わる場合があり、例えば、間隔の狭い歯を備える櫛を使用すると、間隔の大きい歯を備える櫛よりも高い摩擦を生成する可能性が高い。
【0003】
毛髪の平滑度は、通常、毛髪の質に関連するが、損傷の程度にも関連する。毛髪の円滑度は、毛髪が損傷していると減少する。毛髪は、過剰な洗浄によって、不適切なヘアケア組成物で毛髪を手当することによって、有害な環境状況、例えば、汚染、太陽、雨に曝すことによって、損傷を受ける場合がある。毛髪はまた、脱色、パーマ、及び/又は髪染めの後、損傷を受ける場合がある。円滑度のこの減少は、キューティクル、つまり、毛髪繊維の最も外側部分の構造における変化によるものと考えられる。毛髪の損傷が大きければ大きいほど、機械処理時に生成される摩擦が大きくなる。対照的に、ヘアケア組成物、特にヘアコンディショニング組成物による毛髪の手当は、毛髪の円滑度を増加させ、機械的処理時に生成される摩擦を減少させることを狙いとする。機械的処理時に生成される摩擦を減少することは、機械的処理自体によって、つまり、毛髪を梳くことによって誘発される損傷を制限するので、また毛髪の機械的処理の体験を軽減するので、好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消費者及び/又はユーザーは、滑らかで損傷のない毛髪を有することに関心がある。損傷の程度は、消費者及び/又はユーザーにより、自分の毛髪を見ること及び/又は触ることにより評価されているにしか過ぎない場合がある。しかしながら、これらの方法は主観的であり、損傷の程度及び種類に関する情報をほとんど提供しない。円滑の程度はまた、櫛装置を毛髪に通過することにより、もつれをほぐすために必要な力が評価される櫛通り試験を使用して評価されてもよい。損傷の程度はまた、例えば、顕微鏡等の毛髪構造の検査を可能にする方法により評価されてもよい。損傷の程度はまた、毛髪の摩擦特性を評価するための方法により評価されてもよい。例えば、米国第6,817,222号を参照されたい。しかしながら、これらの方法は通常、多種の機器を必要とし、当業者により解釈されるが、消費者及び/又はユーザーにはほとんど理解可能ではない、データを提供する。対照的に、機械的処理時に生成される摩擦の直接的視覚化を可能にする方法における必要性が存在する。換言すれば、毛髪損傷の程度の直接的視覚化を可能にする方法に対する必要性が存在する。
【0005】
毛髪損傷を予防及び/又は手当するために、消費者及び/又はユーザーはヘアケア組成物を使用する。ヘアケア組成物は、多種多様な成分、例えば、コンディショニング剤を含むことができる。ヘアケア組成物は、例えば、有害環境への暴露により、毛髪が損傷することを予防することができる。ヘアケア組成物はまた、毛髪周囲に保護層を生成することにより、損傷を修理することもできる。消費者及び/又はユーザーは、通常、毛髪組成物が毛髪損傷の予防及び/又は手当に対して有効であるかどうかを知ることに興味を抱いている。したがって、毛髪の機械的処理時に生成される摩擦を最小限にするため、それにより毛髪損傷を予防及び/又は手当するために、ヘアケア組成物の有効性の正確な評価を可能にする方法に対する必要性が存在する。また、毛髪の機械的処理時に生成される摩擦を最小限にするために、ヘアケア組成物の有効性の直接的視覚化を可能にする方法に対する必要性も存在する。換言すれば、毛髪損傷を予防及び/又は手当するために、ヘアケア組成物の有効性の直接的視覚化を可能にする方法に対する必要性が存在する。
【0006】
多種多様なヘアケア組成物が市場で販売されている。消費者及び/又はユーザーは、毛髪損傷を予防及び/又は手当するためのより高い有効性を有する組成物を把握し、選択することに興味を抱いている。したがって、毛髪の機械的処理時に生成される摩擦を最小限にするため、それにより毛髪損傷を予防及び/又は手当するために、ヘアケア組成物の有効である期間の正確な比較を可能にする方法への必要性が存在する。したがって、毛髪の機械的処理時に生成される摩擦を最小限にするために、ヘアケア組成物の有効性を比較するための方法への必要性が存在する。換言すれば、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするために、ヘアケア組成物の有効性を比較するための方法への必要性が存在する。
【0007】
加えて、消費者及び/又はエンドユーザーを含む、非当業者により容易に理解され得る方法への必要性が存在する。また、毛髪の機械的処理時に生成される摩擦を最小限にするため、従って、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするために、ヘアケア組成物の有効性に関する宣伝文句を立証するための方法に対する必要性も存在する。また、毛髪の機械的処理時に生成される摩擦を最小限にするため、従って、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするために、少なくとも2つのヘアケア組成物の有効性の比較に関する宣伝文句を立証するための方法への必要性も存在する。最後に、その組成物は毛髪の機械的処理時に生成される摩擦を最小限にすることが可能で、従って、毛髪損傷を予防及び/又は手当てすることが可能である、ヘアケア組成物を市場に出す方法への必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、繊維又は基材の摩擦特性を評価するための方法に関し、
−少なくとも1種の繊維または基材からなる1つの試料を提供する工程と、
−摩擦装置を使用して摩擦を生成する方法により、1つの試料の少なくとも一部を機械的に処理する工程と、
−試料の少なくとも一部を機械的に処理した後における、試料及び/又は摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、を含む。
【0009】
好ましい態様において、方法は、
−温度データを色信号に変換する工程と、
−表示装置を使用して色信号を表実証する工程と、を更に含む。
【0010】
別の好ましい態様において、方法は、試料を組成物で手当てする工程を更に含み、その組成物は、機械的に処理される場合の繊維または基材の摩擦特性を最小限にすることが可能である。
【0011】
別の好ましい態様において、方法は、少なくとも1種の繊維または基材からなる少なくとも1つの追加の試料を提供する工程を更に含む。
【0012】
第2の態様において、本発明は、ヘアケア組成物の有効性を実証するための方法に関し、その組成物は機械的処理時に毛髪の摩擦特性を最小限にすることが可能であり、該方法は、
−毛髪の第1及び第2の試料を提供する工程と、
−第1の試料をヘアケア組成物で手当てする工程と、
−試料の少なくとも一部を梳く前における、試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
−櫛を使用して、第1及び第2の試料を機械的に処理する工程と、
−試料を機械的に処理した後における、試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
−それぞれの試料の少なくとも一部を梳く前及び梳いた後における、それぞれの試料及び/又は櫛の温度差を評価する工程と、
−第1及び第2の試料及び/又は櫛の温度差を比較する工程と、を含む。
【0013】
第3の態様において、本発明は、ヘアケア組成物の有効性を実証するために、ヘアケア組成物を市場に出すための方法であって、組成物は、機械的処理時に毛髪の摩擦特性を最小限にすることが可能であり、
(1)該ヘアケア組成物の販売を提供する工程と、
(2)少なくとも1つの毛髪試料が提供される場合の機械的処理時に毛髪の摩擦特性を最小限にするために、並びに/又は、毛髪損傷を予防及び/若しくは手当てするための、ヘアケア組成物の有効性を宣伝する工程と、
(3)該有効性を実証する工程と、を含み、
(a)該有効性を実証する工程は、少なくとも1つの毛髪試料を提供するステップと、
(b)試料の少なくとも一部を梳く前における、試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価するステップと、
(c)櫛を使用して、試料を機械的に処理するステップと、
(d)試料を機械的に処理した後における、試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価するステップと、
(e)試料の少なくとも一部を梳く前及び後における、試料及び/又は櫛の温度差を評価するステップと、
(f)(a)ステップ(b)、(d)及び(e)で取得された温度データを色信号に変換するステップと、
(g)表示装置を使用して色信号を表実証するステップとを含む方法を実行することによって、有効性を実証する、方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、摩擦装置を使用して試料の少なくとも一部を機械的に処理した後における、試料及び/又は摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価することにより、少なくとも1種の繊維または基材からなる試料の摩擦特性を評価するための方法に関する。本発明は、毛髪損傷の程度を評価するために利用されてもよい。本発明はまた、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするためのヘアケア組成物の有効性を実証するために利用されてもよい。本発明はまた、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするための、少なくとも2つのヘアケア組成物の有効性を比較するために利用されてもよい。本発明はまた、ヘアケア組成物を市場に出すために利用されてもよい。
【0015】
本発明者は、例えば、哺乳類の毛等の繊維の摩擦特性は、この試料の少なくとも一部を機械的に処理した後における、試料及び/又は摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程を含む方法により評価され得ることを発見した。具体的には、本発明者は、毛髪及び/又は摩擦装置の温度は、機械的処理時に生成される摩擦と相関関係があり、従って、毛髪損傷の程度と相関関係があることを発見した。機械的処理時の摩擦が大きければ大きいほど、機械的処理後の毛髪の温度及び/又は摩擦装置の温度の上昇が大きくなる。毛髪の摩擦特性は、梳くこと、ブラッシング、及び/又は擦ることに対する毛髪の抵抗に相関する。毛髪と摩擦装置、例えば、櫛との間に摩擦により生成されるエネルギーの一部は、熱として放出される。熱の放出は、従って、摩擦が発生する接触点で温度上昇を誘発する。
【0016】
本発明者はまた、この方法が宣伝文句を立証するために利用されてもよいことを発見した。試料又は少なくとも1つの試料が組成物で手当される場合、この方法は、機械的に処理される際の繊維または基材の摩擦特性を最小限にするための組成物の有効性を実証するために有用である。この実証は、機械的に処理される場合の繊維または基材の摩擦特性を最小限にするための、この組成物の有効性に関する宣伝文句を立証するために、及び/又はこの組成物を市場に出すために、有用である。より一般的には、この方法は、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするための組成物の有効性を実証するために有用で、実証は、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするための、この組成物の有効性に関する宣伝文句を立証するために利用されてもよい。特に、本発明者は、この方法が好適な手法において表示される場合、非当業者、つまり、消費者及びエンドユーザーが、組成物の有効性を容易に評価すること、さらに、この有効性をその他の組成物及び/又は組成物が含まれない場合の有効性と容易に比較することを可能にすることを発見した。いずれかの理論に捉われることを所望せず、消費者及び/又はエンドユーザーは、通常非当業者であり、宣伝文句が実験結果により証明/立証されることを所望すると考えられる。また、実演実験として、又は記録された映像を経由して、消費者の面前でこの方法を実行することによって、組成物の有効性について説得することができ、この組成物を購入及び/又は使用するように説得することができるとも考えられる。
【0017】
少なくとも1種の繊維又は基材からなる試料又は少なくとも1つの試料が組成物で手当される場合、その方法は、機械的処理時に生成される摩擦を最小限にするために、組成物の有効性を実証するために有用である。このため、その方法は、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするためのヘアケア組成物の有効性を実証するために有用である。いずれかの理論に捉われることを所望せず、毛髪を機械的に処理することにより生成される温度の上昇は、毛髪損傷の程度に比例すると考えられる。また、機械的処理時に生成される摩擦を最小限にすることにより、温度上昇を最小限にするための能力は、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするために、組成物の有効性と直接的に相関すると考えられる。
【0018】
本発明はまた、機械的処理時に生成される摩擦を最小限にするために、ヘアケア組成物の有効性を比較するためにも有用である。このため、この方法は、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするためのヘアケア組成物の有効性を実証するために有用である。いずれかの理論に捉われることを所望せず、異なるヘアケア組成物で手当される2つの試料間で毛髪を機械的に処理することにより生成される温度差の差は、毛髪損傷を予防及び/又は手当てするために、これらの組成物の有効性の差と直接的に相関すると考えられる。
【0019】
方法は、少なくとも1種の繊維又は基材からなる少なくとも1種の試料、好ましくは少なくとも1種の繊維又は基材からなる1つから5つまでの試料、より好ましくは少なくとも1種の繊維又は基材からなる1つの試料又は2つの試料を提供する工程を含む。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「繊維」とは、機械的処理時に、例えば、梳いたり、ブラッシングしたり、及び/又は擦りあわせたりすると摩擦を生成するように影響を受けやすい、任意の繊維を意味する。該繊維は、好ましくは哺乳類の毛、より好ましくはヒト、ウマ、猫、犬の毛で、更により好ましくはヒトの毛髪である。該哺乳類の毛は、切断された毛であってもよく、または成長している毛、例えば、人間等の生物の頭部で成長している毛髪であってもよい。機械的に処理されると、毛は、「摩擦力」とも呼ばれる、摩擦を生成することができる。あるいは、該繊維は、機械的処理時に摩擦を生成するように影響を受けやすく、布地、織物、衣類、不織布、紙を含む、多様な用途に使用される、任意の天然繊維または人工繊維であってもよい。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「基材」とは、機械的処理時に摩擦を生成するように影響を受けやすい、任意の繊維と等価の材料を意味する。前記基材は、好ましくは哺乳類の毛と等価の材料、更に好ましくはヒト毛髪と等価の材料である。例えば、ヒト毛髪と等価の材料は、従来の人工毛髪であってもよい。あるいは、該基材は、機械的処理時に摩擦を生成するように影響を受けやすく、布地、織物、衣類、不織布、紙を含む、多様な用途に使用される、任意の天然、人工、又は合成基材から選択されてもよい。
【0022】
少なくとも1種の繊維の試料又は試料それぞれは、片方の端で一つに束ねた多数の繊維を含んでいてよい。試料または試料それぞれは、好ましくは、繊維の末端部が全て実質的に同一の水平平面にあるように、該繊維の自由端を垂れ下げて、鉛直方向に吊り下げられる。
【0023】
該試料は、好ましくは、哺乳類の毛の束である。該毛試料は、好ましくは、0.1グラムから200グラムまで、より好ましくは2グラムから50グラムまで、更により好ましくは4グラムから20グラムの重量を有する。該毛はまた、好ましくは1cmから150cmまで、より好ましくは1cmから50cmまで、更により好ましくは5cmから30cmまで、尚より好ましくは6cmから12cmまでの長さを有する。少なくとも2つの毛試料が提供される場合、これらの試料は、試料間で偏差が+/−50%、好ましくは+/−30%、より好ましくは+/−10%の毛である同数の個別の毛を有する。
【0024】
その方法はまた、摩擦装置を使用して摩擦を生成する方法により、試料の少なくとも一部を機械的に処理する工程を含む。好ましくは、試料の少なくとも一部の機械的処理は、梳くこと、ブラッシング、擦ること、またはこれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、試料の少なくとも一部の機械的処理は、梳くことである。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「摩擦」(「摩擦推力とも呼ばれる)とは、機械的処理に対する、少なくとも1種の繊維及び/若しくは基材の試料の抵抗、並びに/又は摩擦装置の抵抗を意味する。繊維が毛又は毛と等価の材料である場合、梳くこと、ブラッシング及び/又は擦ること等の機械的処理時に生成される摩擦はグルーミング力とも呼ばれる。具体的には、繊維が毛である場合、梳いている時に生成される摩擦は櫛通り力と呼ばれる。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「摩擦装置」とは、摩擦装置が繊維又は基材の表面上に接触して通過する際に、摩擦装置と繊維または基材の表面との間で摩擦を生成する装置を意味する。繊維が毛又は毛と等価の材料である場合、摩擦装置は、毛を梳く、ブラッシング、及び/または擦るための任意の好適な装置であってもよい。例えば、摩擦装置は、櫛、ブラシ、又はゴム手袋であってもよい。好ましくは、摩擦装置は櫛である。
【0027】
試料は、全体的または部分的に機械処理されてもよい。試料が哺乳類の毛の束である場合、毛はその長さの半分が機械的に処理されてもよい。哺乳類の毛の2cmから30cm、好ましくは3cmから20cmまで、より好ましくは5cmから10cmまでの毛の一部分(又は一部)が、摩擦装置を使用して機械的に処理されてもよい。
【0028】
試料は、摩擦装置を使用して摩擦を生成するために、十分な時間、十分な回数、処理されてもよい。試料は、好ましくは1回から100回まで、より好ましくは1回から50回まで、機械的に処理される。試料は、好ましくは1秒から120秒まで、より好ましくは1秒から60秒まで、更に好ましくは1秒から30秒までの時間、機械的に処理される。機械的処理の頻度は、例えば、30秒あたり1回から100回まで、好ましくは30秒あたり10回から50回まで、より好ましくは30秒あたり20回から40回までであり得る。
【0029】
この方法はまた、試料の少なくとも一部を機械的に処理した後における、少なくとも1種の繊維又は基材からなる試料及び/又は摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程を含む。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「温度センサ」とは、物体の温度を検出かつ評価するために、さらに所望により温度データを記録するために、好適な任意の装置を意味する。好ましくは、本発明に係る温度センサは、低温偏差、例えば、約0.01℃の温度偏差を見分けるために好適な装置である。
【0031】
好ましくは、温度は、温度感知摩擦装置、赤外線カメラ、またはこれらの組み合わせから選択される温度センサを使用して評価される。より好ましくは、温度センサは赤外線カメラである。
【0032】
温度感知摩擦装置は、少なくとも部分的に、温度感受性材料から作製されてもよい。温度感受性材料は、その温度に応じて、その外観、例えば、色を変化する材料であってもよい。温度感受性材料は、その温度に応じて、その状態、例えば、固体から液体又は液体から気体に変化する材料であってもよい。温度感受性材料は、水銀であってもよい。
【0033】
低温偏差を見分けるために好適な任意の赤外線カメラが使用されてもよい。例えば、ニコン(Nikkon)のLAIRD−S270A(登録商標)が使用されてもよい。
【0034】
温度は、試料を機械的に処理した後、1秒から1時間、好ましくは1秒から10分、より好ましくは1秒から1分、評価されてもよい。
【0035】
この方法は、好ましくは15℃から50℃まで、好ましくは20℃から40℃まで、更により好ましくは20℃から30℃までの範囲に及ぶ温度を評価する工程を含む。
【0036】
この方法は、試料の少なくとも一部を機械的に処理する前における、試料及び/又は摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程を含む。試料の温度が、試料の機械的処理の前及び機械的処理の後の両方において、評価される場合、方法は、試料の少なくとも一部を機械的に処理する前及び後における、試料及び/又は摩擦装置の温度の差を評価する工程を更に含むことができる。
【0037】
温度の差は、「温度差」とも呼ばれるが、特定の摩擦度と相関する場合がある。例えば、0.1℃、0.5℃及び1.5℃の温度差は、それぞれ、低、中、高の摩擦度と相関してもよい。温度差と摩擦度との間の相関は、使用される繊維及び/又は基材に応じて異なる場合がある。また、使用される摩擦装置にも依存する場合がある。
【0038】
毛髪繊維又は毛髪と等価の材料の摩擦特性を評価する場合、温度の差は、特定の毛髪損傷程度に相関し得る。例えば、0.1℃、0.5℃及び1.5℃の温度差は、それぞれ、低、中、高の毛髪損傷程度に相関する場合がある。温度差と毛髪損傷程度との間の相関は、使用される繊維及び/又は基材に応じて異なる場合がある。また、使用される摩擦装置にも依存する場合がある。
【0039】
温度は、試料を機械的に処理する前、1秒から1時間まで、好ましくは1秒から10分まで、より好ましくは1秒から1分まで、評価されてもよい。
【0040】
温度差が及ぶ範囲は、使用される試料、並びに/又は使用される摩擦装置及び方法のパラメータに応じて変わる場合がある。
【0041】
この方法はまた、試料の少なくとも一部を機械的に処理している間における、試料及び/又は摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程も含むことができる。温度は、機械的処理の開始から終了まで連続的に評価されてもよい。あるいは、温度は、機械的処理の開始から終了まで、順次、例えば、毎秒、評価されてもよい。機械的処理の前及び/又は機械的処理の後だけでなく、機械的処理の間も温度を評価することは、温度の変化を評価し、したがって、時間の経過とともに機械的処理により誘発される摩擦の生成を評価するために、有用である。
【0042】
この方法は、温度データを、表示装置を使用して記録及び/又は表示され得る信号に変換する工程を含むことができる。この信号は、本明細書において「温度信号」と呼ばれる。方法はまた、表示装置を使用してこの温度信号を表示する工程も含むことができる。温度データから表示可能な温度信号への変換は、周知の手段を使用して実現されてもよい。
【0043】
温度データは、既定の時間に記録される連続的な温度信号として変換されてもよい。あるいは、温度は、既定の経過時間内に決定された間隔で記録される複数の温度信号として変換されてもよい。
【0044】
温度信号の表示は、実質的に即座であってもよく、表示装置を使用する温度信号の表示は、少なくとも1種の繊維及び/又は基材の試料が摩擦装置を使用して機械的に処理されると同時に表示される。温度信号の表示はまた、時間内に表示されてもよい。
【0045】
表示装置は、視覚的表示ユニット、好ましくは表示画面であってもよい。表示画面は、コンピュータ画面、ブラウン管装置、液晶表示画面、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0046】
好ましくは、温度データは色温度信号に変換される。色温度信号は、既定の温度に対応するように、標準化され得る。例えば、色温度信号は、青色から赤色までの範囲に及ぶ、カラースケールに応答することができ、色は、低い温度情報と相関し、一方で赤い色は高い温度上昇と相関する。
【0047】
温度データの色温度信号への変換、表示装置を使用するその記録及びその表示は、温度が、試料の少なくとも一部を機械的に処理する前、処理している間、及び処理した後において評価されると、特に有用である。
【0048】
方法は、試料を組成物で手当てする工程を含み、組成物は、摩擦装置を使用して摩擦を生成する方法で機械的に処理される場合、繊維又は基材の摩擦特性を最小限にすることが可能である。このような組成物は、本明細書においては「手当組成物」と呼ばれる。好ましくは、組成物はヘアケア組成物である。より好ましくは、組成物は、シャンプー、ヘアコンディショニング組成物、ヘアスタイリング組成物、又はこれらの組み合わせから選択される組成物である。更により好ましくは、組成物は、ヘアコンディショニング組成物である。
【0049】
本明細書で使用するとき、「コンディショニング組成物」とは、少なくとも1つのコンディショニング活性剤を含む組成物を意味する。コンディショニング剤は、何らかのシリコーン組成物、何らかの脂肪族アルコール等を含む、任意の従来のコンディショニング剤から選択されてもよい。ヘアコンディショニング剤の好適な例は、CFTA International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,11th edition,2006に発見され得る。
【0050】
試料は、試料のグラムあたり、好ましくは0.01mLから1mLまで、より好ましくは0.05mLから0.5mlLまでの組成物で手当される。
【0051】
あるいは、方法は、試料を組成物で手当てする工程を含むことができ、組成物は、摩擦装置を使用して摩擦を生成する方法で機械的に処理される場合の繊維または基材の摩擦特性を増加させることが可能である。このような組成物は、布地、織物、衣類、不織布、及び紙を含む、多様な用途に繊維又は基材を使用する場合に有用であり得る。
【0052】
方法は、少なくとも1種の繊維又は基材からなる少なくとも1つの追加の試料を提供する工程を含むことができる。
【0053】
少なくとも1つの追加の試料が提供される場合、この方法はまた、
−摩擦装置を使用して摩擦を生成する方法により、追加の試料又は追加の試料それぞれの少なくとも一部を機械的に処理する工程と、
−それぞれの追加の試料の少なくとも一部を機械的に処理した後における、追加の試料又は追加の試料それぞれ及び/又は摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
−全ての複数の試料の少なくとも一部を機械的に処理した後における、全ての複数の試料及び/又は全ての複数の摩擦装置の温度を比較する工程と、を含むこともできる。
【0054】
少なくとも1つの追加の試料が提供される場合、この方法はまた、
−1つの試料の少なくとも一部を機械的に処理する前における、複数の試料及び/又は複数の摩擦装置の温度を評価する工程と、
−それぞれの試料の少なくとも一部を機械的に処理する前及び処理する後における、試料それぞれ及び/又は摩擦装置それぞれの温度差を評価する工程と、
−全ての試料及び/又は全ての摩擦装置の温度差を比較する工程と、を含むこともできる。
【0055】
それぞれの少なくとも1つの追加の試料が提供される場合、この方法は、これらの試料の少なくとも一部を機械的に処理している間における、それぞれの試料及び/又は摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程も含むことができる。
【0056】
それぞれの少なくとも1つの追加の試料が提供される場合、それぞれの試料を機械的に処理する工程と、試料それぞれ及び/又は摩擦装置それぞれの温度を評価する工程と、全ての試料及び/又は全ての摩擦装置の間の温度差を比較する工程とは、試料の摩擦特性を比較するために有用であり得る。
【0057】
一実施形態において、使用される試料は互いに異なってもよい。試料は、異なる入手源からの哺乳類の毛、例えば、東洋人の毛髪対白人の毛髪の束であってもよい。試料はまた、異なる様式で機械的に処理された哺乳類の毛、例えば、手当されていない毛髪対脱色された毛髪及び又は染めた毛髪の束であってもよい。
【0058】
別の実施形態では、試料は、例えば、手当されていない毛髪対ヘアコンディショニング組成物で手当された毛髪等、繊維又は基材の摩擦特性を最小限にすることが可能である、異なる組成物で手当されてもよい。異なる組成物が使用される場合、全ての試料は互いに実質的に同質であること、つまり、同じ入手源並びに実質的に同じ重量、長さ、及び数であることが好ましい。
【0059】
更に別の実施形態では、試料は、例えば、歯の間隔が狭い櫛で処理される毛髪対歯の間隔が大きい櫛で処理される毛髪等、異なる摩擦装置を使用して機械的に処理されてもよい。異なる摩擦が使用される場合、全ての試料は互いに実質的に同質であること、つまり、同じ入手源並びに実質的に同じ重量、長さ、及び数であることが好ましい。
【0060】
一般的に、取得される温度データの互換性を改善するために、通常は、例えば、異なる試料、繊維又は基材の摩擦特性を最小限にすることが可能である異なる組成物による手当、異なる摩擦装置等、1つのパラメータだけを変えることが好ましい。このため、他の全ての実験条件及びパラメータは実質的に同じであることが好ましい。
【0061】
少なくとも1つの追加の試料が提供される場合、好ましくは合計で2つから10までの試料、より好ましくは合計で2つから5つまでの試料、更により好ましくは合計で2つの試料が提供される。
【0062】
少なくとも1つの追加の試料が提供される場合、繊維又は基材の摩擦特性を評価する方法は、同時に又は順次に実行されてもよい。
【0063】
同時に実行される場合、全ての試料を機械的に処理する工程は、実質的に同時に実行される。全試料の温度を評価する工程、及び所望に応じて温度差を比較する工程は、実質的に同時に実行される。従って、全ての試料の間の比較を促進するように、全ての試料を横に並べて定置することが有利な場合がある。2つの試料の間の距離は、摩擦生成を変更することなく、試料間の容易な比較を可能にするように十分であってもよい。片方の端で1つに束ねた哺乳類の毛の試料が提供される場合、鉛直方向に吊り下げられた試料を横に並べて定置することが有利な場合がある。
【0064】
順次に実行される場合、第1の試料を機械的に処理する工程、並びにこの試料及び/又は摩擦装置の温度を評価する工程を第1に実行することが好ましい。次に、第2の試料を機械的に処理する工程、並びにこの第2の試料及び/又は摩擦装置の温度を評価する工程を実行する。次に、任意の追加の試料を機械的に処理する工程、並びにこの試料及び/又は摩擦装置の温度を評価する工程を実行する。全ての試料それぞれ及び/又は全ての摩擦装置それぞれの摩擦特性を評価後、互いの間でのこれらのデータの比較を可能にするように、それぞれの試料で取得される温度データを記録することが有利な場合がある。
【0065】
好ましい実施形態において、それぞれの試料を提供する工程、及び/又は試料又は試料それぞれを機械的に処理する工程は、表示装置を使用して表示され得る信号として、記録装置を使用して記録されてもよい。記録装置はカメラであってもよい。
【0066】
これらの工程は、既定時間の間、連続信号、例えば、映像として記録されてもよく、または既定時間の間、決定された間隔で複数の信号、例えば、写真として記録されてもよい。例えば、10秒毎に写真が撮影されてもよい。
【0067】
表示装置は、視覚表示ユニット、好ましくは、上記のような表示画面であってもよい。
【0068】
信号、例えば、映像又は写真の記録並びに表示は、実質的に即座であるので、表示装置を使用する信号の表示は、試料又は試料それぞれが提供され、機械的に処理されると同時に表示される。信号の表示も時間内に表示される。
【0069】
試料又は試料それぞれを、提供する工程並びに機械的に処理する工程は、表示装置を使用して表示され得る信号に記録され、温度データもまた表示装置を使用して表示され得る温度信号として変換される場合、両方の信号を同時に表実証することが有利な場合がある。
【0070】
好ましい実施形態では、このような同時の表示は、温度データを表示可能な温度信号、例えば、色温度信号に変換するための適切な装置に関連するIRカメラ、及び適切な表示装置を使用して達成されてもよい。IRカメラは、試料又は試料それぞれを提供及び機械的に処理する工程、並びに試料又は試料それぞれ及び/若しくは摩擦装置又は摩擦装置それぞれの温度の評価の両方の撮影が可能である。IRカメラを使用することは、試料又は試料それぞれの機械的処理の前、機械的処理の間及び機械的処理の後における、温度の連続的な評価を可能にするため、特に有利である。
【0071】
表示画面を使用する場合、色温度信号は、単独又は組み合わせて使用される多様な様式で表示されてもよい。
【0072】
色温度信号は、適切な単位、例えば、摂氏温度又は華氏温度等で表現される数値として、画面に表示されてもよい。
【0073】
色温度信号はまた、温度範囲に対応するカラースケール、例えば、青色(温度範囲の下限)から赤色(温度範囲の)までの範囲のカラースケール、を使用して、色温度信号を実証する手段を備える画面上に表示されてもよい。色温度信号を実証する手段は、このスケールに沿ってスライドするカーソルであってもよい。この摩擦装置での試料の機械的処理時に、試料及び/又は摩擦装置の温度が上昇すると、カーソルは、青色から赤色に向かって、カラースケールに沿って比例的にスライドする。
【0074】
色温度信号はまた、機械的に処理された試料又は機械的に処理された試料それぞれの一部に、及び/若しくは摩擦装置又は摩擦装置それぞれにスーパーインポーズされてもよい。これによって、試料及び/又は摩擦装置は特定の色で画面上に表示される。好ましくは、色温度信号は、温度範囲が決定されたカラースケールに相関するように、標準化される。カラースケールが青色(温度範囲の下限)から赤色(温度範囲の)に及ぶ範囲である場合、試料及び/又は摩擦装置は、機械的に処理される前における、青色の試料及び/又は摩擦装置として表示されてもよく、さらに、試料及び/又は摩擦装置の温度が機械的処理の間に摩擦の生成時に上昇すると、試料及び/又は摩擦装置の色は、赤色に向かって変化してもよい。色温度信号を表実証するこの方式は、機械処理時の温度の上昇を視覚化する容易かつ正確な方式である。
【0075】
色温度信号の試料及び/又は摩擦装置上へのスーパーインポーズを使用することは、少なくとも2つの試料が並べられ、同時に処理される場合に特に有用である。試料が異なる場合、並びに/又は試料の摩擦特性を最小限にすることが可能である異なる組成物で処理されていた場合、並びに/又は試料が異なる摩擦装置で機械的に処理されていた場合、試料及び/若しくは摩擦装置の色の変化は、目視検査により容易に比較可能であろう。機械的処理と同時に試料及び/又は摩擦装置の間に色の顕著な差があることは、温度の差として、従って、試料間の摩擦特性の差として、容易に理解される。
【0076】
例えば、2つの毛髪試料が提供される場合(一方の試料は手当されず、他方はヘアケア組成物で手当される)、試料及び/又は摩擦装置の目視検査並びに色変化の比較は、試料及び/又は摩擦装置の温度の変化について容易かつ正確な理解を可能にする。手当されていない試料の機械的処理時の赤色に向かう色変化が、手当された試料の色変化よりも速い場合、これは、ヘアケア組成物が試料の摩擦特性を効果的に最小限にすること、従って、機械的処理時の温度上昇を制限することの正確な指標である。毛髪の摩擦特性の抑制は、毛髪損傷の予防及び/又は手当と相関するため、これは、ヘア組成物が、毛髪損傷を効果的に予防及び/又は手当てすることの正確な指標である。
【0077】
例えば、異なるヘアケア組成物で手当された2つの毛髪試料が提供される場合、試料及び/又は摩擦装置の色変化の目視検査並びに比較は、試料及び/又は摩擦装置の温度の変化に関する容易かつ正確な理解を可能にする。第1の手当された試料の機械的処理時の赤色に向かう色変化が、第2の手当された試料の色変化よりも顕著に速い場合、これは、第2の組成物は、第1の組成物に比較して、試料の摩擦特性を更に抑制し、従って、機械的処理時の温度上昇を更に制限することの正確な指標である。毛髪の摩擦特性の更なる抑制は、毛髪損傷の予防及び/又は手当と相関するため、これは、第2の組成物が毛髪損傷の予防及び/又は手当に対するより優れた有効性を有することの正確な指標である。
【0078】
この方法はまた、宣伝文句を立証するように、評価及び/又は比較評価を利用する工程も含むことができる。これは、この方法が、宣伝文句に関連して、非当業者、好ましくは消費者及び/又はエンドユーザーに示される場合、特に有利である。
【0079】
好ましくは、この方法は記録され、宣伝文句と組み合わせて、コマーシャルに組み込まれ、コマーシャルは、任意の画像伝搬支持体、例えば、消費者及び/又はエンドユーザにアクセス可能なテレビ画面、コンピュータ画面、劇場画面、店内画面上に表示されることが可能である。
【0080】
この方法が記録される場合、試料、少なくとも1つの試料又は試料それぞれを組成物で手当てする工程を記録することが必要ない場合がある。代わりに、試料、少なくとも1つの試料又は試料それぞれが組成物でそれ以前において、手当されたことを実証する工程が記録されてもよい。
【0081】
第2の態様において、本発明は、ヘアケア組成物の有効性を実証するための方法に関し、組成物は、機械的処理時に摩擦特性を最小限にすることが可能であり、該方法は、
−第1及び第2の毛髪試料を提供する工程と、
−第1の試料をヘアケア組成物で手当てする工程と、
−複数の試料の少なくとも一部を梳く前における、複数の試料及び/又は複数の櫛の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
−櫛を使用して、第1及び第2の試料を機械的に処理する工程と、
−試料を機械的に処理した後における、試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
−それぞれの試料の少なくとも一部を梳く前及び梳く後における、それぞれの試料及び/又は櫛の温度差を評価する工程と、
−第1及び第2の試料及び/又は櫛の温度差を比較する工程と、を含む。
【0082】
第2の試料は、異なるヘアケア組成物で手当されてもよく、あるいは、第2の試料は手当されなくてもよい。
【0083】
第3の態様において、本発明は、ヘアケア組成物の有効性を実証するために、ヘアケア組成物を市場に出すための方法に関し、組成物は、機械的の処理時に毛髪の摩擦特性を最小限にすることが可能であり、
(1)該ヘアケア組成物の販売を提供するための工程と、
(2)少なくとも1つの毛髪試料が提供されている場合の機械的処理時に毛髪の摩擦特性を最小限にするための、並びに/又は、毛髪損傷を予防及び/若しくは手当するための、ヘアケア組成物の有効性を宣伝する工程と、を含み、
(3)該有効性を実証する工程は、
(a)少なくとも1つの毛髪試料を提供するステップと、
(b)試料の少なくとも一部を梳く前における、試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価するステップと、
(c)櫛を使用して、試料を機械的に処理するステップと、
(d)試料を機械的に処理した後における、試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価するステップと、
(e)試料の少なくとも一部を梳く前及び後における、試料及び/又は櫛の温度差を評価するステップと、
(f)ステップ(b)、(d)及び(e)で取得される温度データを色信号に変換するステップと、
(g)表示装置を使用して、色信号を表実証するステップとを含む方法を実行することによって、該有効性を実証する、方法を含む。
【実施例】
【0084】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある好ましい実施形態を更に説明及び実証する。この実施例は、実例の目的のためにだけ挙げられるもので、その範囲を逸脱することなく、その多数の変化が可能であるため、本発明の制限として解釈されるべきではない。
【0085】
東洋人の健康で丸いヒトの毛髪の試料が提供される。試料は、約2グラム(総重量)の重量及び約15cmの長さを有する毛髪の束である。実験は、温度が約23℃で相対湿度が約45% RHである、温度及び湿度が管理されたチャンバ内で行なわれる。
【0086】
工程A−第1の試料は、水性キャリア内に33%の界面活性剤、つまり、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、コカミドDEA及びキシレンスルホン酸アンモニウムを含む、コンディショニングなしのシャンプーで処理される。この第1の試料は、対照試料、つまり、コンディショニング組成物で手当されない試料である。試料は、シンク上につるされ、水は38℃の温度及び1.5gpmの圧力に調整される。試料は、15秒間完全にぬらしてから、0.2ccの組成物が試料に均等に適用される。組成物は、親指及び人差し指を使用して、30秒間、毛髪に搾り出す。次に、試料は、片手で試料の後ろを支えることにより、水が試料全体に流れ落ちることを可能にして、30秒間水ですすがれる。組成物を適用する工程、組成物を搾り出す工程、及び組成物をすすぐ工程は、もう一度繰り返される。余分な水は取り去られる。次に、試料は、約23℃の温度及び約45% RHの相対湿度のチャンバで一晩乾燥させる。
【0087】
工程B−第2の試料は、約16%の界面活性剤、つまり、ラウレス硫酸アンモニウム及びラウリル硫酸アンモニウム、並びに1.1%のコンディショニング組成物、つまり、セチルアルコール及びジメチコンを含む、コンディショニングシャンプーで処理される。このコンディショニングシャンプーは、本明細書では「コンディショニング組成物(1)」と呼ばれる。この第2の試料は、手当された試料(1)、つまり、コンディショニング組成物(1)で手当された試料である。試料は、シンク上につるされ、水は、温度38°及び圧力1.5gpmに調整される。試料は、15秒間完全にぬらしてから、0.1ccのコンディショニング組成物(1)が試料に均等に適用される。組成物は、親指と人差し指を使用して、30秒間、搾り出す。次に、手当された試料(1)は、片手で試料の後ろを支えることにより、水が試料全体に流れ落ちることを可能にして、30秒間、水ですすがれる。余分な水は取り去られる。次に、試料は、約23℃の温度及び約45% RHの相対湿度のチャンバで一晩乾燥させる。
【0088】
工程C−第3の試料は、約14%の界面活性剤、つまり、ラウレス硫酸アンモニア及びラウリル硫酸アンモニア、並びに約5.25%のコンディショニング組成物、つまり、セチルアルコール及びジメチコンを含むコンディショニングシャンプーで手当される。このコンディショニングシャンプーは、本明細書において、「コンディショニング組成物(2)」と呼ばれる。この第3の試料は、手当された試料(2)、つまり、コンディショニング組成物(2)で手当された試料である。試料は、シンク上につるされ、水は、温度38°及び圧力1.5pgmに調整される。試料は、15秒間完全にぬらされてから、0.1ccのコンディショニング組成物が試料に均等に適用される。組成物は、親指及び人差し指を使用して、30秒間、搾り出す。次に、手当された試料(2)は、片手で試料の後ろを支えることにより、水が試料全体に流れ落ちることを可能にして、30秒間、水ですすがれる。余分な水は取り去られる。次に、試料は、約23℃の温度及び約45% RHの相対湿度のチャンバで一晩乾燥させる。
【0089】
工程D−それぞれの試料は、一晩乾燥後、上端で一つに束ねられている多数の毛髪を形成しているが、毛髪の末端部は全て実質的に同一の水平平面にあるように、毛髪の遊離下端をぶら下げて鉛直方向に吊り下げられる。
【0090】
工程E−試料の遊離下末端部は、毛髪を固定して静止しておくために、親指及び人差し指を使用して、固く掴まれる。
【0091】
工程F−試料の上末端部と下末端部との間に位置する、8cmの毛髪の一区分が、櫛通り装置を使用して、機械的に処理される。櫛装置は、「櫛」とも呼ばれ、Krest 400 Cleopatra All Purpose Professional用櫛である。この櫛は、ニトリルゴムから作製されている。櫛は、機械的に処理される試料の区分の一番上で、毛髪を通過する。次に、毛髪は、梳く工程あたり約1秒間にこの区分の一番上から一番下まで梳かれる。毛髪を梳く工程は、10秒あたりおよそ10回の頻度で、10回繰り返される。
【0092】
工程G−機械的に処理されている試料の区分の温度は、赤外線カメラNikon LAIRD−S270A(登録商標)を使用して、機械的処理と同時に評価される。IRカメラは、毛髪試料から約100cmに定置される。温度は、22.5℃から27.5℃の範囲に及んで評価される。梳かれている毛髪の区分の温度は、梳く工程それぞれの後、徐々に増加する。毛髪の温度は、毛髪を梳き始める約1分前から、毛髪を梳いた1分後まで、連続的に記録される。第1の梳く工程及び最後の梳く工程の後で、梳いた毛髪の区分の温度を比較することによって、機械的に処理している毛髪により誘発される温度の差、従って、梳く時に生成される摩擦により誘発される温度の差を評価することが可能になる。
【0093】
工程H−約22.5℃から27.5℃までの範囲の温度は、可視光線スペクトル(青色から赤色まで)を模倣するカラースケールに相関する。IRカメラを使用すると、温度の変化は、毛髪の色の変化により直接的に観察可能である。
【0094】
対照試料及び手当された試料を機械的に処理する工程(工程D及びE)、並びに対照試料及び手当された試料の温度を評価する工程(工程FからH)は、同時に又は個別に実行されてもよい。同時に実行される場合、対照試料及び手当された試料は、対照試料及び手当された試料の温度の差並びに/又は色の変化の比較を容易にするために、横に並べて定置されてもよい。
【0095】
対照試料、手当された試料(1)及び手当された試料(2)の温度並びに温度差は、以下の表に詳しく記載する。
【0096】
【表1】

【0097】
対照試料の温度差は、手当した試料(1)及び手当試料(2)の温度差よりも大きい。これは、手当した毛髪試料を梳く時に生成される摩擦は、対照試料に比較して抑制されることを実証する。コンディショニング組成物で毛髪を手当てすると、毛髪の摩擦特性を最小限にする傾向がある。
【0098】
工程I−工程Fがもう一度繰り返された。
【0099】
工程J−櫛の温度は、赤外線カメラNikon LAIRD−S270A(登録商標)を使用して、機械的処理の前及び後において、評価される。IRカメラは、毛髪試料から約100cmに定置される。温度は、22.5℃から27.5℃までの範囲に及んで評価される。第1の梳く工程前及び最後の梳く工程の後で、櫛の温度を比較することによって、機械的に処理する毛髪により誘発される温度の差、これにより、梳く時に生成される摩擦により誘発される温度の差を評価することが可能になる。
【0100】
工程K−約22.5℃から27.5℃までの範囲の温度は、可視光線スペクトル(青色から赤色まで)を模倣するカラースケールに相関する。IRカメラを使用すると、温度の変化は、毛髪の色の変化により直接的に観察可能である。
【0101】
対照試料、手当した試料(1)及び手当した試料(2)を処理するために使用された櫛の温度並びに温度差は、以下の表に詳しく記載する。
【0102】
【表2】

【0103】
櫛(対照試料)の温度差は、櫛(試料(1)を処理)及び櫛(試料(2)を処理))の温度差よりも高い。これは、手当された毛髪試料を梳く時に生成される摩擦は、対照試料に比較して抑制されることを実証する。毛髪をコンディショニング組成物で手当てすると、毛髪の摩擦特性を最小限にする傾向がある。
【0104】
実証のFからHまでの工程及び/又はIからKまでの工程は、記録されてもよく、取得されるビデオ及び/又は写真は、コマーシャルに組み入れられてもよい。
【0105】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指定されない限り、こうした寸法それぞれは、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0106】
いずれの文献の引用もこうした文献が本明細書中で開示又は特許請求の範囲に記載されるいずれかの発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他のあらゆる参照文献との組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。いずれの文献の引用も、こうした文献が本明細書中で開示又は特許請求の範囲に記載されるいずれかの発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他のあらゆる参照文献との組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書における用語のいずれかの意味又は定義が、援用文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義を優先するものとする。
【0107】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正が可能であることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維又は基材の摩擦特性を評価するための方法であって、
−少なくとも1種の繊維又は基材からなる1つの試料を提供する工程と、
−摩擦装置を使用して摩擦を生成する方法により、前記試料の少なくとも一部を機械的に処理する工程と、
−前記試料の少なくとも一部を機械的に処理した後における、前記試料及び/又は前記摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
−前記試料の少なくとも一部を機械的に処理する前における、前記試料及び/又は前記摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
−前記試料の少なくとも一部を機械的に処理する前及び処理した後における、前記試料及び/又は前記摩擦装置の温度差を評価する工程と、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料の少なくとも一部を機械的に処理している間における、前記試料及び/又は前記摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
−温度データを色信号に変換する工程と、
−表示装置を使用して、前記色信号を表示する工程と、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
−少なくとも1種の繊維又は基材からなる少なくとも1つの追加の試料を提供する工程と、
−摩擦装置を使用して摩擦を生成する方法により、前記追加の試料の少なくとも一部を機械的に処理する工程と、
−前記追加試料の少なくとも一部を機械的に処理した後における、前記追加の試料及び/又は前記摩擦装置の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
−全ての前記試料の少なくとも一部を機械的に処理した後における、全ての前記試料及び/又は全ての前記摩擦装置の温度を比較する工程と、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
−1つの前記試料の少なくとも一部を機械的に処理する前における、前記複数の試料及び/又は前記複数の摩擦装置の温度を評価する工程と、
−前記試料それぞれの少なくとも一部を機械的に処理する前及び処理した後における、前記試料それぞれ及び/又は前記摩擦装置それぞれの温度差を評価する工程と、
−全ての前記試料及び/又は全ての前記摩擦装置の温度差を比較する工程と、を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、片方の端が一つに束ねられている多数の繊維を含み、鉛直方向に吊り下げられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が、0.1グラムから200グラムまでの重量及び1cmから50cmまでの長さを有する、哺乳類の毛の束である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記試料を組成物でトリートメントする方法を含み、前記組成物は、摩擦装置を使用して摩擦を生成する方法で機械的に処理されると、繊維または基材の摩擦特性を最小限にすることが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、ヘアケア組成物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料の少なくとも一部の前記機械的処理が、梳くこと、ブラッシング、擦ること、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記摩擦装置が櫛である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記試料の少なくとも一部が、1秒から120秒までの間に、1回から100回まで梳かされる、ブラッシングされる、又は擦られる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記温度が、温度感知摩擦装置、赤外線カメラ、又はこれらの組み合わせから選択される温度センサを使用して評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記温度センサが、赤外線カメラである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記温度が、15℃から50℃までの範囲に及ぶ、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ヘアケア組成物の有効性を実証するための方法であって、前記組成物が、機械的処理時に毛髪の摩擦特性を最小限にすることが可能であり、
−第1及び第2の毛髪試料を提供する工程と、
−第1の試料をヘアケア組成物でトリートメントする工程と、
−前記試料の少なくとも一部を梳く前における、前記試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
−櫛を使用して、前記第1及び第2の試料を機械的に処理する工程と、
−前記試料を機械的に処理した後における、前記試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価する工程と、
−前記試料の少なくとも一部を梳く前及び梳いた後における、それぞれの前記試料及び/又は前記櫛の温度差を評価する工程と、
−前記第1及び第2の試料及び/又は前記櫛の温度差を比較する工程と、を含む、方法。
【請求項18】
ヘアケア組成物の有効性を実証するために、ヘアケア組成物を市場に出すための方法であって、前記組成物は、機械的処理時に毛髪の摩擦特性を最小限にすることが可能であり、
(1)前記ヘアケア組成物の販売を提供するための工程と、
(2)少なくとも1つの毛髪試料が提供される場合の機械的処理時に毛髪の摩擦特性を最小限にするための、並びに/又は、毛髪損傷を予防及び/若しくは手当するための、前記ヘアケア組成物の有効性を宣伝する工程と、
(3)前記有効性を実証する工程と、
を含み、
前記有効性を実証する工程は、
(a)少なくとも1つの毛髪試料を提供するステップと、
(b)前記試料の少なくとも一部を梳く前における、前記試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価するステップと、
(c)櫛を使用して、前記試料を機械的に処理するステップと、
(d)前記試料を機械的に処理した後における、前記試料及び/又は櫛の温度を、温度センサを使用して評価するステップと、
(e)前記試料の少なくとも一部を梳く前及び後における、試料及び/又は櫛の温度差を評価するステップと、
(f)ステップ(b)、(d)及び(e)で取得される温度データを色信号に変換するステップと、
(g)表示装置を使用して、前記色信号を表示するステップと
を含む方法を実行することによって、前記有効性を実証する、方法。

【公表番号】特表2012−500975(P2012−500975A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524062(P2011−524062)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/054713
【国際公開番号】WO2010/027718
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】