説明

機能付与用シート

【課題】 生体のうち貼付可能な部位を従来より増加させることができる機能付与用シートを提供する。
【解決手段】 機能付与用シート10は、生体90に貼付されるための粘着面20aが形成されたシート20と、生体90に所定の機能を付与するための機能付与物質を生体90内に導入するための穴91aを生体90の皮膚91に開けるためにシート20に対して粘着面20a側に固定されたマイクロパイル31とを備え、マイクロパイル31は、生体90内で溶解する性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に所定の機能を付与するための機能付与用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機能付与用シートとして、生体の皮膚に穴を開けるための皮膚用針を備え、生体に所定の機能を付与するための物質(以下「機能付与物質」という。)を皮膚用針によって皮膚に開けられた穴を介して生体内に導入するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1227632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の機能付与用シートにおいては、生体のうち曲がっている部位や曲がる部位(例えば肘や膝等)の皮膚に貼付されても、外力によって変形させられない限り皮膚用針の幾つかが皮膚に刺さらないので、十分な量の機能付与物質を生体内に導入することができない可能性があった。また、従来の機能付与用シートにおいては、生体のうち曲がっている部位や曲がる部位の皮膚に貼付され、全ての皮膚用針が皮膚に刺さるように外力によって変形させられた場合、皮膚用針に無理な力が加わって皮膚用針が折れて生体内に残留する可能性があった。したがって、従来の機能付与用シートにおいては、生体のうち曲がっている部位や曲がる部位の皮膚に貼付されることは、好ましくなかった。
【0005】
本発明は、生体のうち貼付可能な部位を従来より増加させることができる機能付与用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の機能付与用シートは、生体に貼付されるための粘着性の面が形成されたシートと、前記生体に所定の機能を付与するための物質を前記生体内に導入するための穴を前記生体の皮膚に開けるために前記シートに対して前記面側に固定された皮膚用針とを備え、前記皮膚用針は、前記生体内で溶解する性質を有した構成を有している。
【0007】
この構成により、本発明の機能付与用シートは、皮膚用針が皮膚内で折れても生体内で溶解するので、生体のうち曲がっている部位や曲がる部位の皮膚に貼付されても十分な量の機能付与物質を生体内に導入することができる。したがって、本発明の機能付与用シートは、生体のうち貼付可能な部位を従来より増加させることができる。
【0008】
本発明の機能付与用シートは、前記物質を通過させる通過穴が形成され、前記皮膚用針は、前記通過穴を覆って前記シートに対して固定された構成を有している。
【0009】
この構成により、本発明の機能付与用シートは、皮膚用針が溶解して生じた生体の穴を介して機能付与物質を生体内に導入することができる。
【0010】
本発明の機能付与用シートは、生体に貼付されるための粘着性の面が形成されたシートと、前記生体に所定の機能を付与するための物質を前記生体内に導入するための穴を前記生体の皮膚に開けるために前記シートに対して前記面側に固定された複数本の皮膚用針とを備え、前記複数本の皮膚用針は、複数の塊に分割されて前記シートに対して固定された構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の機能付与用シートは、皮膚用針が塊毎に別々に変位することができるので、生体のうち曲がっている部位や曲がる部位の皮膚に貼付されても、十分な量の機能付与物質を生体内に導入することができるだけの十分な本数の皮膚用針を皮膚に刺すことができる。したがって、本発明の機能付与用シートは、生体のうち貼付可能な部位を従来より増加させることができる。
【0012】
本発明の機能付与用シートの前記シートは、伸縮性を有した構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の機能付与用シートは、シート自体が伸縮することができるので、生体のうち曲がっている部位や曲がる部位の皮膚に貼付されても皮膚から剥がれることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、生体のうち貼付可能な部位を従来より増加させることができる機能付与用シートを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態に係る機能付与用シートの構成について説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る機能付与用シート10は、生体90に貼付されるための粘着性の面(以下「粘着面」という。)20aが形成された伸縮性を有するシート20と、機能付与物質を生体90内に導入するための穴91aを生体90の皮膚91に開けるための皮膚用針としての複数のマイクロパイル31と、それぞれ1本のマイクロパイル31を支持しシート20の粘着面20aに貼付されて固定された複数の基台32とを備えている。即ち、マイクロパイル31は、それぞれ1本づつからなる複数の塊30に分割されてシート20に固定されている。
【0018】
マイクロパイル31及び基台32は、生体90内で溶解する材料(例えばマルトースや蛋白質等)が主成分であり、機能付与物質が混入されている。また、マイクロパイル31は、長さが数百μm以下の針である。
【0019】
なお、マイクロパイル31及び基台32は、図3(a)に示すように材料40がヒーター81によって加熱された後、図3(b)に示すように矢印82aで示す方向に移動させられたピン82が材料40に付着され、更に、図3(c)に示すようにピン82が矢印82bで示す方向に移動されて材料40の一部がピン82に付着して引き伸ばされることによって製造される。以下、図3に示すように材料の張力を利用したマイクロパイルの製造方法を張力製法という。
【0020】
次に、機能付与用シート10の使用方法について説明する。
【0021】
機能付与用シート10の利用者は、シート20を持ってマイクロパイル31を自己又は他人の皮膚91に押し当てながらシート20の粘着面20aの粘着性を利用して図2に示すように機能付与用シート10を皮膚91に貼り付けることができる。ここで、マイクロパイル31が十分に微細に製造されていれば、マイクロパイル31が皮膚91に刺された人は、痛みを感じることが無い。
【0022】
なお、利用者は、マイクロパイル31を皮膚91に刺した状態でシート20を介して基台32に負荷を加えることによって、マイクロパイル31を基台32から切断し、マイクロパイル31を皮膚91内に残留させても良い。もちろん、利用者は、マイクロパイル31を皮膚91に残留させず、マイクロパイル31を皮膚91に刺した状態で一定期間経過した後、シート20を剥がすことによってマイクロパイル31を皮膚91から抜き出しても良い。
【0023】
マイクロパイル31は、皮膚91に刺された状態で一定期間保持されると、皮膚91に含まれる水分等で溶解される。
【0024】
したがって、マイクロパイル31が皮膚91内で溶解された人は、マイクロパイル31内の機能付与物質によって種々の効果を得ることができる。例えば、マイクロパイル31内の機能付与物質が食紅等の着色剤であるとき、マイクロパイル31が皮膚91内で溶解されて機能付与用シート10が皮膚91から剥がされた人は、皮膚91に化粧等の装飾効果を得ることができる。また、マイクロパイル31内の機能付与物質が紫外線吸収剤であるとき、マイクロパイル31が皮膚91内で溶解されて機能付与用シート10が皮膚91から剥がされた人は、皮膚91に日焼け止め効果を得ることができる。また、マイクロパイル31内の機能付与物質がインシュリン等の薬剤であるとき、マイクロパイル31が皮膚91内で溶解された人は、病気の治療や予防が行われることになる。
【0025】
なお、機能付与用シート10は、図1に示す構成でなくても良い。例えば、機能付与用シート10は、図4に示すように、基台32を設けずにマイクロパイル31がシート20の粘着面20aに直接固定されていても良いし、図5に示すように、張力製法ではなく、鋳型によって製造されたマイクロパイル31がシート20の粘着面20aに固定されていても良い。また、機能付与用シート10は、図6に示すように、シート20が円形であっても良いし、図7に示すように、シート20が長方形であっても良い。また、機能付与用シート10は、図8に示すように、それぞれ複数本のマイクロパイル31を有した2つの塊30に分割されてマイクロパイル31がシート20に対して固定されていても良い。
【0026】
以上に説明したように、機能付与用シート10は、マイクロパイル31が皮膚91内で折れても生体90内で溶解し消失するので、生体90のうち曲がっている部位や曲がる部位の皮膚91に貼付されても十分な量の機能付与物質を生体90内に導入することができる。したがって、機能付与用シート10は、生体90のうち貼付可能な部位を従来より増加させることができる。なお、図1、図4、図5、図6、図7及び図8に示す機能付与用シート10は、それぞれ1本以上のマイクロパイル31を有した複数の塊30に分割されてマイクロパイル31がシート20に固定されているが、マイクロパイル31が生体90内で溶解する性質を有している場合には、図9に示すように全てのマイクロパイル31を有した1つの塊30だけがシート20に固定されていても良い。
【0027】
また、図1、図4、図5、図6、図7及び図8に示す機能付与用シート10は、それぞれ1本以上のマイクロパイル31を有した複数の塊30に分割されてマイクロパイル31がシート20に固定されており、マイクロパイル31が塊30毎に別々に変位することができるので、生体90のうち曲がっている部位や曲がる部位の皮膚91に貼付されても、十分な量の機能付与物質を生体90内に導入することができるだけの十分な本数のマイクロパイル31を皮膚91に刺すことができる。したがって、図1、図4、図5、図6、図7及び図8に示す機能付与用シート10は、生体90のうち貼付可能な部位を従来より増加させることができる。なお、機能付与用シート10は、それぞれ1本以上のマイクロパイル31を有した複数の塊30に分割されてマイクロパイル31がシート20に対して固定されている場合には、マイクロパイル31が生体90内で溶解する性質を有していなくても良い。
【0028】
また、機能付与用シート10は、シート20が伸縮性を有しており、シート20自体が伸縮することができるので、生体90のうち曲がっている部位や曲がる部位の皮膚91に貼付されても皮膚91から剥がれることを抑制することができる。もちろん、シート20は、伸縮性を有していなくても良い。
【0029】
(第2の実施の形態)
まず、第2の実施の形態に係る機能付与用シートの構成について説明する。
【0030】
図10に示すように、本実施の形態に係る機能付与用シート110は、生体90(図2参照。)に貼付されるための粘着面120aが形成された伸縮性を有するシート120と、シート120内に収納された機能付与物質125と、機能付与物質125を生体90内に導入するための穴91a(図2参照。)を生体90の皮膚91(図2参照。)に開けるための皮膚用針としての複数のマイクロパイル131とを備えている。即ち、マイクロパイル131は、それぞれ1本づつからなる複数の塊130に分割されてシート120に固定されている。
【0031】
シート120は、粘着面120aが形成された生体貼付部121と、粘着面120a側とは反対側から生体貼付部121に接着されて生体貼付部121とともに機能付与物質125の収納空間120bを形成したカバー部122とを備えている。生体貼付部121は、収納空間120bに収納された機能付与物質125を通過させる複数の通過穴120cが粘着面120a側に形成されている。
【0032】
マイクロパイル131は、生体90内で溶解する材料(例えばマルトースや蛋白質等)が主成分であり、シート120の通過穴120cを覆ってシート120の粘着面120aに固定されている。また、マイクロパイル131は、長さが数百μm以下の針である。
【0033】
次に、機能付与用シート110の使用方法について説明する。
【0034】
機能付与用シート110の利用者は、シート120を持ってマイクロパイル131を自己又は他人の皮膚91に押し当てながらシート120の粘着面120aの粘着性を利用して機能付与用シート110を皮膚91に貼り付けることができる。ここで、マイクロパイル131が十分に微細に製造されていれば、マイクロパイル131が皮膚91に刺された人は、痛みを感じることが無い。
【0035】
マイクロパイル131は、皮膚91に刺された状態で一定期間保持されると、皮膚91に含まれる水分等で溶解される。
【0036】
したがって、機能付与物質125は、マイクロパイル131の溶解によって通過穴120cを介してシート120外に出て、マイクロパイル131が溶解して生じた生体90の穴91aを介して生体90内に導入される。
【0037】
なお、機能付与用シート110は、マイクロパイル131に機能付与物質125を混入せずに、マイクロパイル131とは別に機能付与物質125を備えているので、マイクロパイル131が張力製法等によって高温に加熱されて製造される場合であっても、高温に弱い物質を機能付与物質125として備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る機能付与用シートは、生体のうち貼付可能な部位を従来より増加させることができるので、生体のうち曲がっている部位や曲がる部位の皮膚に貼付される機能付与用シート等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る機能付与用シートの外観斜視図
【図2】図1に示す機能付与用シートの使用状態での側面断面図
【図3】(a)図1に示す機能付与用シートのマイクロパイル及び基台の材料の加熱状態での側面図 (b)ピンが付着された状態での図3(a)に示す材料の側面図 (c)図3(b)に示す材料からピンが離隔されて製造されたマイクロパイル及び基台の側面図
【図4】図1に示す構成とは異なる構成での本発明の第1の実施の形態に係る機能付与用シートの外観斜視図
【図5】図1及び図4に示す構成とは異なる構成での本発明の第1の実施の形態に係る機能付与用シートの外観斜視図
【図6】(a)図1、図4及び図5に示す構成とは異なる構成での本発明の第1の実施の形態に係る機能付与用シートの上面図 (b)図6(a)に示す機能付与用シートの側面図
【図7】(a)図1、図4、図5及び図6に示す構成とは異なる構成での本発明の第1の実施の形態に係る機能付与用シートの上面図 (b)図7(a)に示す機能付与用シートの側面図
【図8】図1、図4、図5、図6及び図7に示す構成とは異なる構成での本発明の第1の実施の形態に係る機能付与用シートの外観斜視図
【図9】図1、図4、図5、図6、図7及び図8に示す構成とは異なる構成での本発明の第1の実施の形態に係る機能付与用シートの外観斜視図
【図10】(a)本発明の第2の実施の形態に係る機能付与用シートの上面図 (b)図10(a)に示す機能付与用シートの側面断面図
【符号の説明】
【0040】
10 機能付与用シート
20 シート
20a 粘着面(粘着性の面)
30 塊
31 マイクロパイル(皮膚用針)
90 生体
91 皮膚
91a 穴
110 機能付与用シート
120 シート
120a 粘着面(粘着性の面)
120c 通過穴
130 塊
131 マイクロパイル(皮膚用針)
125 機能付与物質(生体に所定の機能を付与するための物質)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に貼付されるための粘着性の面が形成されたシートと、前記生体に所定の機能を付与するための物質を前記生体内に導入するための穴を前記生体の皮膚に開けるために前記シートに対して前記面側に固定された皮膚用針とを備え、
前記皮膚用針は、前記生体内で溶解する性質を有したことを特徴とする機能付与用シート。
【請求項2】
前記物質を通過させる通過穴が形成され、
前記皮膚用針は、前記通過穴を覆って前記シートに対して固定されたことを特徴とする請求項1に記載の機能付与用シート。
【請求項3】
生体に貼付されるための粘着性の面が形成されたシートと、前記生体に所定の機能を付与するための物質を前記生体内に導入するための穴を前記生体の皮膚に開けるために前記シートに対して前記面側に固定された複数本の皮膚用針とを備え、
前記複数本の皮膚用針は、複数の塊に分割されて前記シートに対して固定されたことを特徴とする機能付与用シート。
【請求項4】
前記シートは、伸縮性を有したことを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の機能付与用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−345984(P2006−345984A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173622(P2005−173622)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【出願人】(501206493)株式会社ナノデバイス・システム研究所 (7)
【Fターム(参考)】