説明

機能性ポリアミド微粒子の製造方法

【課題】 粒子形状、粒度分布等を容易に制御できる機能性ポリアミド微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】酸クロライド及びジアミン化合物からポリアミドを合成する方法において、
(a)酸クロライド及びジアミン化合物の少なくとも一方が機能性基を有し、かつ、当該酸クロライドを有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、当該ジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とをそれぞれ調製する第一工程、及び
(b)第2級アミン及び/又は第3級アミンの存在下に、第一溶液と第二溶液とを混合し、機能性基を有するポリアミド微粒子を混合溶液から析出させる第二工程、
を含むことを特徴とする機能性ポリアミド微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性ポリアミド微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、耐熱性、耐薬品性、機械的特性等に優れた材料であり、電子・電気部品、自動車、衣料等の用途のほか、金属又はセラミックスの代替材料として幅広く利用されている。
【0003】
ポリアミド微粒子の製造方法としては、a)予め重合されたナイロン6、66、12等(ポリマー)を蟻酸等の良溶媒に溶かし、その後貧溶媒である蒸留水、メタノール、アセトン等に曇点まで滴下するという方法、b)ポリマー重合後の溶液を、温度を上昇させてナイロンを完全に溶解させて、厳密に温度制御しながら微粒子(約2〜10μm)を沈殿させるという方法等が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、ポリマーを重合する過程と、そのポリマーから微粒子を調製する過程の2段階が必要となり、特に後者の過程においては温度等の調製条件を厳密に制御する必要もあることから、その工程が煩雑であるという欠点がある。また、これら方法ではナイロン(ポリマー)を溶解させる必要があるが、ナイロンは耐薬品性が高く、蟻酸、硫酸等のごく一部の有機溶媒にしか溶けず、取り扱いが困難である。さらに、上記方法によっては、比較的大きな粒径(約2〜10μm程度)のポリアミド粒子しか得られないという問題もある。
【0005】
ポリアミド微粒子の他の製造方法としては、ポリアミドを凍結乾燥後粉砕し、微粒子(数十〜数百μm)にするという方法が提案されている。
しかしながら、かかる方法では粒形のコントロールが非常に困難である。また、上記方法で得られるポリアミド微粒子は、粒径も大きく、その分布幅も広いという問題がある。
【0006】
また、これとは別に、ジアミンとジ酸クロライドの溶液を水の存在下で超音波照射しながらポリアミド微粒子を合成する方法も提案されている(特許文献3)。
しかしながら、特許文献3の方法では、ポリアミド微粒子に機能性を付与する方法については言及されない。粒子形状、粒度分布等が制御されたポリアミド微粒子に種々の機能を付与することができれば、さらなる用途の拡大が期待される。
【特許文献1】特開2002−80629号公報
【特許文献2】特公昭47−25157号公報
【特許文献3】特開2004−2731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粒子形状、粒度分布等を容易に制御できる機能性ポリアミド微粒子の製造方法を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、より単分散性に優れた機能性ポリアミド微粒子を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の工程を有する製造方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の機能性ポリアミド微粒子の製造方法に係るものである。
1.酸クロライド及びジアミン化合物からポリアミドを合成する方法において、
(a)酸クロライド及びジアミン化合物の少なくとも一方が機能性基を有し、かつ、当該酸クロライドを有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、当該ジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とをそれぞれ調製する第一工程、及び
(b)第2級アミン及び/又は第3級アミンの存在下に、第一溶液と第二溶液とを混合し、機能性基を有するポリアミド微粒子を混合溶液から析出させる第二工程、
を含むことを特徴とする機能性ポリアミド微粒子の製造方法。
2.第2級アミン及び/又は第3級アミンが第一溶液及び第二溶液のいずれにも可溶である、上記項1に記載の製造方法。
3.第3級アミンが複素環式第3級アミン、脂環式第3級アミン、脂肪族第3級アミン及び芳香族第3級アミンの少なくとも1種である上記項1又は2に記載の製造方法
4.第2級アミンが複素環式第2級アミン、脂環式第2級アミン、脂肪族第2級アミン及び芳香族第2級アミンの少なくとも1種である上記項1又は2に記載の製造方法。
5.第3級アミンがピリジン及び/又はトリエチレンジアミンである上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
6.第二溶液が、機能性基を有しないジアミン化合物をさらに含む上記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7.第二溶液が、機能性基を有するジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる溶液と、機能性基を有しないジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる溶液とを混合して得られる上記項6に記載の製造方法。
8.第二工程を超音波による撹拌下で行う上記項1〜7のいずれかに記載の方法。
9.第一溶液における有機溶媒が、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトフェノン及びシクロヘキサノンの少なくとも1種を含む上記項1〜8のいずれかに記載の方法。
10.第二溶液における有機溶媒が、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトフェノン及びシクロヘキサノンの少なくとも1種を含む上記項1〜9のいずれかに記載の方法。
11.上記項1〜10のいずれかに記載の方法により得ることができる機能性ポリアミド微粒子。
12.上記項1〜10のいずれかに記載の方法において得られるポリアミド微粒子であって、平均粒径が0.01〜5μmである機能性ポリアミド微粒子。
13.上記項11又は12に記載の機能性ポリアミド微粒子であって、ガラス転移温度を示すことを特徴とする機能性ポリアミド微粒子。
14.上記項11又は12に記載の機能性ポリアミド微粒子であって、ガラス転移温度を示さないことを特徴とする機能性ポリアミド微粒子。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、従来のように厳密な温度制御等を必要とせず、微細で且つ粒径の均一な機能性ポリアミド微粒子を比較的容易に得ることができる。また、本発明の方法では、従来の方法と比べて蟻酸や硫酸等取り扱い困難な溶媒を用いる必要がないので、工業的な方法として適している。さらに、本発明の方法では、その条件を適宜変更することによって所望の粒径、粒子形状、粒度分布等に制御することも比較的容易である。特に、本発明では粒子表面がフラットで(すなわち、比表面積が小さい)、単分散性に優れたポリアミド微粒子を得ることができる。
【0011】
このようにして得られた本発明の機能性ポリアミド微粒子は、その粒子表面に機能性基を有していることから、接着剤、塗料、印刷インク中の分散剤、医療用担体、磁気記録媒体、化粧品の基材、プラスチックの改質材、クロマトグラフィー担体、層間絶縁膜用材料等の用途により幅広く用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の機能性ポリアミド微粒子の製造方法は、
酸クロライド及びジアミン化合物からポリアミドを合成する方法において、
(a)酸クロライド及びジアミン化合物の少なくとも一方が機能性基を有し、かつ、当該酸クロライドを有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、当該ジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とをそれぞれ調製する第一工程、及び
(b)第2級アミン及び/又は第3級アミンの存在下に、第一溶液と第二溶液とを混合し、機能性基を有するポリアミド微粒子を混合溶液から析出させる第二工程、
を含むことを特徴とする。
【0013】
1.機能性ポリアミド微粒子の製造方法
本発明は、ポリアミド微粒子及びその製造方法に関するものであるが、本明細書において、「ポリアミド」には、「ポリアミドイミド」が含まれる。
以下、本発明の製造方法を、各工程ごとに詳細に説明する。
【0014】
(1)第一工程
本発明では、酸クロライド及びジアミン化合物を原料として用い、ポリアミド微粒子を調製する。まず第一工程として、酸クロライド化合物を有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、ジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とをそれぞれ調製する。この場合、酸クロライド及びジアミン化合物の少なくとも一方が機能性基を有するものを用いる。
【0015】
機能性基としては、得られる微粒子表面上に所望の機能を付与できる限り特に限定されない。例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)、アルケン類(−CH=CH−)、アルキン類(−C≡C−)、ビニルエーテル類(−CH=CH−O−)、アミド基(−CONH)、ニトリル基(−C≡N)、イソシアネート基(−N=C=O)、ニトロ基(−NO)、スルホン基(−SOH)、チオール基(−SH)、クラウンエーテル基等の官能基のほか、−CF基、−CCl基、−CBr等を挙げることができる。なお、原料として使用されるジアミン化合物及び酸クロライドにあっては、それぞれ基−NH及び基−COClを有しているが、最終的に得られる微粒子表面上にそれらの基が存在する場合には、本発明の機能性基に包含される。
【0016】
本発明では、これらの機能性基を1種又は2種以上有する化合物の1種又は2種以上を用いることができる。また、一つの化合物に2種以上の機能性基を有する場合は、これらの機能性基は同一でも良いし、あるいは互いに異なっていても良い。本発明では、得られるポリアミド微粒子の所望の物性、最終製品の用途等に応じて、これら機能性基を微粒子表面に適宜付与することができる。
【0017】
これらの原料を用いた上で、第一工程として、酸クロライドを有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、ジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とをそれぞれ調製する。すなわち、本発明では、酸クロライドとジアミン化合物とは、それぞれ別個の溶液として調製しておくことを必須とする。
【0018】
(イ)第一溶液
第一溶液で用いる酸クロライドは、特に制限されず、例えば従来のポリアミド合成で用いられているものと同様のものが使用できる。
【0019】
酸クロライドとしては、酸ジクロライドのほか、酸トリクロライド、酸テトラクロライド等が挙げられるが、一般的には酸ジクロライドを好適に用いることができる。例えば、シュウ酸ジクロライド、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、フマル酸ジクロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、ムコン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、ノナン酸ジクロライド、ウンデカン酸ジクロライド等の脂肪族酸ジクロライド;1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジクロライド、1,3−シクロブタンジカルボン酸ジクロライド、1,3−シクロペンタンジカルボン酸ジクロライド、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド等の脂環族酸ジクロライド;フタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、1,5−(9−オキソフルオレン)ジカルボン酸ジクロライド、1,4−アントラセンジカルボン酸ジクロライド、1,4−アントラキノンジカルボン酸ジクロライド、2,5−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、1,5−ビフェニレンジカルボン酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド、4,4’−メチレン二安息香酸ジクロライド、4,4’−イソプロピリデン二安息香酸ジクロライド、4,4’−ビベンジルジカルボン酸ジクロライド、4,4’−スチルベンジカルボン酸ジクロライド、4,4’−トランジカルボン酸ジクロライド、4,4’−カルボニル二安息香酸ジクロライド、4,4’−オキシ二安息香酸ジクロライド、4,4’−スルホニル二安息香酸ジクロライド、4,4’−ジチオ二安息香酸ジクロライド、p−フェニレン二酢酸ジクロライド、3,3’−p−フェニレンジプロピオン酸ジクロライド等の芳香族酸ジクロライドを挙げることができる。これら酸クロライドは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
機能性基を有する酸クロライドを用いる場合には、上記酸クロライドであって、かつ、前記に掲げた機能性基を有するものを使用することができる。例えば、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジクロライド、4−ニトロフタル酸ジクロライド、3−ニトロフタル酸ジクロライド、4―メチルフタル酸ジクロライド、テトラクロロフタル酸ジクロライド等を挙げることができる。また、後記のポリアミドイミドに使用できる酸クロライドの酸ジクロライド、酸トリクロライド等で前記の機能性基を有するものも、本発明の酸クロライド(原料)として使用することができる。
【0021】
本発明では、機能性基を有する酸クロライドと、機能性基を有しない酸クロライドとを併用することも可能である。これにより、得られるポリアミド微粒子の特性を任意に制御することができる。この場合の両者の割合は、機能性基の種類、機能性基の所望の付与量等に応じて適宜設定することができる。
【0022】
また、酸クロライドは、得られるポリアミド微粒子の所望の特性等に応じて適宜選択することができる。例えば、酸クロライドとして芳香族酸ジクロライド(特にテレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド及びイソフタル酸ジクロライドの少なくとも1種)を用いると、得られるポリアミド微粒子の単分散性及び耐熱性を向上させることができる。
【0023】
本発明のポリアミドには、ポリアミドイミドも含まれる。従って、酸クロライドとして、従来のポリアミドイミド合成で用いられているものを使用できる。例えば、トリメリット酸クロライド、ピロメリット酸クロライド、オキシジフタル酸クロライド、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸クロライド、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸クロライド、ジエチルピロメリテイトジアシルクロライド、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸クロライド、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)フタル酸クロライド、m(p)−フェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸クロライド、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸クロライド、1−カルボキシメチル−2,3−5シクロペンタントリカルボン酸クロライド、等の酸クロライドを用いることができる。これら酸クロライドとしては、酸ジクロライド、酸トリクロライド又は酸テトラクロライドのいずれであっても良い。
【0024】
また、ポリアミドイミドを製造する際には、酸クロライドに加えて、カルボン酸の無水物として、トリメリット酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジエチルピロメリテイトジアシル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m(p)−フェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3−5シクロペンタントリカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0025】
第一溶液で用いる有機溶媒は、実質的に酸クロライドが溶解し、かつ、生成するポリアミドが溶解しないものであれば特に制限されない。例えば、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトフェノン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等の、第2級アミン又は第3級アミンが可溶な溶媒が挙げられ、これらの少なくとも1種を含む溶媒を使用することができる。第一溶液においては、これらの中でも、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトフェノン及びシクロヘキサノンの少なくとも1種を含む溶媒が好ましい。なお、用いる酸クロライドの種類によって、アセトン等の溶媒にすぐ溶解しない場合があるが、このような場合には第2級又は第3級アミンとアセトン等との混合液に溶解させるか、あるいは予め第2級又は第3級アミンに溶解させた後にアセトン等に溶解させれば良い。
【0026】
第一溶液における酸クロライドの濃度は、用いる酸クロライドの種類、第二溶液の濃度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.001〜0.2モル/リットル程度、好ましくは0.0025〜0.1モル/リットル程度とする。第一溶液における酸クロライドの濃度がかかる範囲内であると、粒子間の凝集及び合一が抑制でき、単分散のものが得られやすいので好ましい。
【0027】
(ロ) 第二溶液
第二溶液で用いるジアミン化合物は、特に限定されず、公知のポリアミド合成で使用されているものを挙げることができる。例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビベンジル、R(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、S(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン等の1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(nは、3〜10)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン;1,2−ジアミノメタン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノドデカン、1,11−ジアミノウンデカン等の脂肪族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミンのほか、3,4−ジアミノピリジン、1,4−ジアミノ−2−ブタノン等を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。特に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を用いると、単分散性・耐熱性が向上するので好ましい。
【0028】
また、本発明では、ジアミン化合物のほかに、他のアミン系化合物(モノアミン化合物、多価アミン化合物等)も用いることができる。これらにより、得られるポリアミドの特性を変えることができる。
【0029】
機能性基を有するジアミン化合物を用いる場合には、上記ジアミン化合物であって、前記で挙げた機能性基を有するものを使用することができる。例えば、1,3−ジアミノ−2−プロピルアルコール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4―メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,5−ジアミノベンゾトリフルオライド、3,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジアミノベンジジン、2,4,6−トリアミノピリミジン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン等を用いることができる。
【0030】
本発明では、機能性基を有するジアミン化合物と、機能性基を有しないジアミン化合物とを併用することもできる。これより、得られるポリアミド微粒子の特性等を変えることができる。この場合の両者の割合は、機能性基の種類、機能性基の所望の付与量等に応じて適宜設定することができる。
【0031】
第二溶液で用いる有機溶媒は、実質的に前記ジアミン化合物が溶解し、かつ、生成するポリアミドが溶解しないものであれば特に制限されない。例えば、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトフェノン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等の、第2級アミン及び/又は第3級アミンが可溶な溶媒が挙げられ、これらの少なくとも1種を含む溶媒を使用できる。第二溶液においては、これらの中でも、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトフェノン及びシクロヘキサノンの少なくとも1種を含む溶媒が好ましい。なお、用いるジアミン化合物の種類によって、アセトン等の溶媒にすぐ溶解しない場合があるが、このような場合には第2級又は第3級アミンとアセトン等との混合液に溶解させるか、あるいは予め第2級又は第3級アミンに溶解させた後にアセトン等に溶解させれば良い。
【0032】
また、機能性基を有しないジアミン化合物を併用する場合には、機能性基を有するジアミン化合物の溶液(以下「溶液A」ともいう。)と、機能性基を有しないジアミン化合物の溶液(以下「溶液B」ともいう。)とを予め別々に調製した後、両者を混合することにより第二溶液を好適に調製することもできる。この場合、機能性基を有するジアミン化合物の溶液の溶媒と、機能性基を有しないジアミン化合物の溶液の溶媒とは、同じであっても良いし、互いに相溶性があれば異なっていても良い。
【0033】
溶液Aと溶液Bとを用いて第二溶液を調製する場合、溶液Aと溶液Bとの混合割合は、用いるジアミン化合物の種類、機能性基の種類、所望の特性等に応じて適宜設定すれば良い。
【0034】
また、第二溶液の溶媒は、第一溶液の溶媒と同一であっても良いし、互いに相溶性を有していれば異なっていても良い。
【0035】
第二溶液におけるジアミン化合物の濃度は、用いるジアミン化合物の種類、第一溶液の濃度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.001〜0.2モル/リットル程度、好ましくは0.0025〜0.1モル/リットル程度とする。第二溶液におけるジアミン化合物の濃度がかかる範囲内であると、粒子間の凝集及び合一が抑制でき、単分散のものが得られやすいので好ましい。上記の溶液A及び溶液Bも、同様の濃度に設定すれば良い。
【0036】
(2)第二工程
第二工程では、第一溶液と第二溶液とを混合し、第2級アミン及び/又は第3級アミンの存在下に反応を行い、混合溶液からポリアミド微粒子を析出させる。
【0037】
第一溶液と第二溶液との混合比率は、酸クロライド、ジアミン化合物の種類、各溶液の濃度等によって適宜変更できるが、通常は酸クロライド:ジアミン化合物=1:0.5〜1.5程度(モル比)、好ましくは1:0.9〜1.1となるような比率で混合すれば良い。
【0038】
第二工程で使用する第2級アミン及び第3級アミンは、特に制限されないが、好ましくは、第一溶液と第二溶液のいずれにも可溶である化合物である。なお、液体(すなわち、有機溶媒)であっても固体であってもよい。
【0039】
例えば、第2級アミンとしては、複素環式第2級アミン、脂環式第2級アミン、脂肪族第2級アミン及び芳香族第2級アミンの少なくとも1種が好ましく例示できる。第3級アミンとしては、複素環式第3級アミン、脂環式第3級アミン、脂肪族第3級アミン及び芳香族第3級アミンの少なくとも1種が好ましく例示できる。
【0040】
より具体的に、複素環式第2級アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピロール、ピロリジン、ピペラジン、3−ピロリン等が挙げられる。
【0041】
複素環式第3級アミンとしては、例えば、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、N,N’―ジメチルピペラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0042】
本発明では、同一分子中に第2級アミン及び第3級アミンの両方を有する複素環式アミンも使用できる。同一分子中に第2級アミン及び第3級アミンの両方を有する複素環式アミンとしては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、プリン等が挙げられる。これらの複素環式アミンは、複素環式第2級アミン及び複素環式第3級アミンのいずれにも属する。
【0043】
脂環式第2級アミンとしては、例えば、2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(イソキヌクリジン)、3,7-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン(ビスピジン)、9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン(グラナタニン)、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ペプタン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0044】
脂環式第3級アミンとしては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(トリエチレンジアミン)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)、1-アザビシクロ[3.2.2]ノナン(ホモキヌクリジン)、9-メチル-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン(グラナタン)、N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエチル−シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0045】
脂肪式第2級アミンとしては、例えば、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−イソ−アミルアミン、ジ−n−アミルアミン、ジベンジルアミン、2−(N-メチルアミノ)ヘプタン等が挙げられる。
【0046】
脂肪式第3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチル−ジエチルアミン、N−エチル−ジメチルアミン、N−エチル−ジアミルアミン、N,N, N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N, N′, N”, N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N, N′, N”, N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン等が挙げられる。
【0047】
芳香族第2級アミンとしては、例えば、N−メチルアニリン、N−イソブチルアニリン、N−エチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0048】
芳香族第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N−エチル−N−メチルアニリン、トリフェニレンアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、より小さい粒子径を有し、かつ粒子表面がフラットな粒子が得られる観点から、複素環式第3級アミン及び/又は脂環式第3級アミンが好ましく、特にピリジン及び/又はトリエチレンジアミンが好ましい。
【0050】
第二工程で用いる第2級アミン及び/又は第3級アミンの存在下には、第2級アミン及び第3級アミン以外の他の有機溶媒が含まれていてもよい。他の有機溶媒は、例えば第一溶液及び第二溶液で詳述したものが挙げられる。
【0051】
また、第2級アミン及び第3級アミンが固体である場合は、上記アセトン等の溶媒に溶かした溶液を用いても良い。また、固体を第一溶液又は第二溶液に直接溶解してもよい。
【0052】
第2級アミン及び/又は第3級アミンは、第一溶液と第二溶液の混合直前に、第一溶液及び/又は第二溶液に加えれば良いが、第二溶液へ加えておくのが好ましい。
【0053】
第2級アミン及び/又は第3級アミンの添加量は、用いる酸クロライド及びジアミン化合物の種類、第一溶液及び第二溶液の濃度、得られるポリアミド微粒子の所望の(平均)粒径等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は、第2級又は第3級アミンが有機溶媒の場合は、第一溶液又は第二溶液100mlに対して1〜200ml程度、好ましくは1〜100ml程度である。固体の場合は、第一溶液又は第二溶液100mlに対して、通常0.00002〜0.01mol程度、好ましくは0.0001〜0.005mol程度である。
【0054】
第2級アミン及び/又は第3級アミンを添加することによって、単分散性が高い球状微粒子を得ることが可能となる。
【0055】
第二工程では、特に撹拌しながらポリアミドを析出させることが好ましい。撹拌は、公知の撹拌方法(撹拌装置)によって実施することができる。本発明では、特に超音波によって撹拌することがより好ましい。超音波による撹拌によって、通常の撹拌法に比べて平均粒径で約50%程度の微細化も可能となる。また、超音波撹拌により、粒径がより整った粒子が得られる。超音波による撹拌は、公知の超音波装置(例えば超音波洗浄器)及び操作条件をそのまま採用できる。超音波の周波数は、所望の(平均)粒径等に応じて適宜設定すれば良く、通常は28〜1000kHz程度、好ましくは28〜100kHz程度とすれば良い。
【0056】
第二工程における温度は、特に制限されず、通常0〜100℃程度、好ましくは0〜40℃程度とすれば良い。混合溶液を冷却し、反応速度を小さくした方が、粒径が整ったより球状に近い微粒子が得られるので、第二工程の温度は、室温(25℃)以下程度、特に0〜20℃程度がさらに好ましい。なお、撹拌はポリアミドの析出が実質的に完了するまで行えば良く、撹拌時間は、通常30秒〜30分間程度であるが、かかる範囲外となっても差し支えない。
【0057】
第二工程で沈殿生成したポリアミド微粒子は、遠心分離法等の公知の方法に従って固液分離して回収すれば良い。
【0058】
ポリアミドとしてポリアミドイミドを得ようとする場合、酸クロライドとしてトリメリット酸クロライドや無水カルボン酸として無水トリメリット酸等のポリアミドイミド合成で用いられているものを用い、第二工程で得られた微粒子に存在するカルボキシル基とアミド基を縮合してイミド化すれば良い。イミド化する方法は特に制限されないが、本発明では特に(i)有機溶媒中に分散させ、加熱(通常130℃以上、好ましくは130〜250℃程度の温度で加熱すれば良い)してイミド化する方法(熱閉環)、又は(ii)有機溶媒中における化学反応によりイミド化する方法(化学閉環)を採用することが望ましい。
【0059】
2.機能性ポリアミド微粒子
本発明の機能性ポリアミド微粒子(粉末)は、球状として生成される場合は、一般には、平均粒径0.01〜5μm程度(特に0.01〜3μm程度、好ましくは0.02〜1μm、さらに好ましくは0.02〜0.8μm、最も好ましくは0.03〜0.5μm)である。
【0060】
また、本発明の方法によれば、球状として生成されたポリアミド微粒子は、単分散に近い球状粒子として得られ、標準偏差0.0001〜0.25程度(好ましくは0.0005〜0.15程度)、変動係数1〜25%程度(好ましくは1〜15%程度)の範囲にある単分散状のものである。
【0061】
また、本発明方法によるポリアミド微粒子(粉末)は、一般には比表面積が5〜200m2/g程度(好ましくは10〜150m2/g程度)である。
【0062】
さらに、本発明方法によるポリアミド微粒子は、ガラス転移温度(Tg)を示すもの及びそれを示さないものの双方を包含する。
【0063】
ポリアミド微粒子のガラス転移点の有無は、製造条件(特に、用いる酸クロライド及び/又はジアミン化合物の種類)を変更することによって適宜制御することができる。
【0064】
本発明には、上記したような範囲の平均粒径、標準偏差、変動係数、比表面積等の特徴を有するポリアミドイミド微粒子も含まれる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより一層明確にする。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0066】
なお、実施例における超音波撹拌は超音波洗浄器「ULTRASONIC CLEANER VS-100 III SUNPAR 」を用いた。
【0067】
本発明における各物性は次のようにしてそれぞれ測定した。
【0068】
(1)ガラス転移温度等
ガラス転移温度(Tg)については、示差走査熱量測定法(DSC)により求めた。測定条件は、温度速度10℃/min、窒素50ml/minとした。熱分解温度(Td)については、熱重量示差熱分析(TGDTA)により求めた。測定条件は、昇温速度10℃/min、窒素200ml/minとした。
【0069】
(2)平均粒径等
平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)(「S-4700」日立製作所製)で観察し、そのSEM写真から任意の100個の微粒子を選び出し、これら微粒子の粒径の平均を下式(1)に従って求めた。
【0070】
【数1】

【0071】
また、この平均粒径の値に基づいて下記の数式(2)及び(3)に従い標準偏差(S)、さらには数式(4)に従って変動係数(C)も求めた。変動係数が小さいほど粒径のバラツキが少ないことを示す。
【0072】
【数2】

【0073】
【数3】

【0074】
【数4】

【0075】
(3)比表面積
比表面積は、不活性気体として窒素を用いたBET法により求めた。
【0076】
実施例1
(粒子表面にアミノ基を有するポリアミド微粒子の調製)
まず、第一溶液として4,4'−ビフェニルジカルボニルクロリド0.0005 molをアセトンに溶解させた50 ml溶液(4,4'−ビフェニルジカルボニルクロリド/ アセトン=0.0005 mol / 50 ml溶液という。)、第二溶液として3,3’−ジアミノベンジジン/ アセトン=0.0005 mol / 50 ml溶液をそれぞれ調製し、約4℃まで冷却した。
【0077】
その後、第二溶液にピリジン5 mlを加え、攪拌した。次いで、氷浴中でさらに第一溶液を混合し、周波数28 kHzの超音波で30 分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが単分散状の均一な球状粒子から構成されていることを確認した。そのイメージ図を図1に示す。このポリアミド微粒子の平均粒径は0.105μm、標準偏差0.0117、変動係数11.141 %、比表面積39.68 m2/gであった。熱分解温度(Td(5wt% loss))は246℃で、ガラス転移温度(Tg)は示さなかった。
【0078】
実施例2
(粒子表面に水酸基を有するポリアミド微粒子の調製)
まず、第一溶液としてイソフタル酸ジクロライド0.0005 molをジオキサンに溶解させた50 ml溶液(イソフタル酸ジクロライド/ジオキサン=0.0005 mol/50 ml溶液という。以下同じ。)、第二溶液として4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル/ジオキサン=0.0005 mol/50 ml溶液をそれぞれ調製し、約12℃まで冷却した。
【0079】
その後、第二溶液にピリジン5mlを加え、攪拌した。次いで、水浴中でさらに第一溶液を混合し、周波数28 kHzの超音波で30 分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが単分散状の均一な球状粒子から構成されていることを確認した。そのイメージ図を図2に示す。このポリアミド微粒子の平均粒径は0.116μm、 標準偏差0.0134、変動係数11.532 %、比表面積35.92 m2/gであった。熱分解温度(Td(5wt% loss))は303℃で、ガラス転移温度(Tg)は示さなかった。
【0080】
実施例3
(粒子表面に水酸基を有するポリアミド微粒子の調製)
まず、第一溶液としてイソフタル酸ジクロライド/酢酸エチル=0.0005 mol/50 ml溶液、第二溶液として4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル/酢酸エチル=0.0005 mol/50 ml溶液をそれぞれ調製し、約4℃まで冷却した。
その後、第二溶液にピリジン5mlを加え、攪拌した。次いで、氷浴中でさらに第一溶液を混合し、周波数28 kHzの超音波で30 分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが単分散状の均一な球状粒子から構成されていることを確認した。そのイメージ図を図3に示す。このポリアミド微粒子の平均粒径は0.044μm、標準偏差0.0032、変動係数7.303 %、比表面積94.70 m2/gであった。熱分解温度(Td(5wt% loss))は298℃で、ガラス転移温度(Tg)は示さなかった。
【0081】
実施例4
(粒子表面にカルボキシル基を有するポリアミド微粒子の調製)
まず、第一溶液として4,4'−ビフェニルジカルボニルクロリド/アセトン=0.0005 mol/50 ml溶液、第二溶液として3,5−ジアミノ安息香酸/アセトン=0.0005 mol/50 ml溶液をそれぞれ調製し、約4℃まで冷却した。
その後、第二溶液にピリジン3mlを加え、攪拌した。次いで、氷浴中でさらに第一溶液を混合し、周波数28 kHzの超音波で30 分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが単分散状の均一な球状粒子から構成されていることを確認した。そのイメージ図を図4に示す。このポリアミド微粒子の平均粒径は0.0909μm、標準偏差0.00496、変動係数5.453 %、比表面積45.84 m2/gであった。熱分解温度(Td(5wt% loss))は354℃で、ガラス転移温度(Tg)は示さなかった。
【0082】
(実施例5)
(粒子表面にカルボキシル基を有するポリアミド微粒子の調製)
まず、第一溶液として4,4'−ビフェニルジカルボニルクロリド/アセトン=0.0005 mol/50 ml溶液、第二溶液として3,5−ジアミノ安息香酸/アセトン=0.0005 mol/50 ml溶液をそれぞれ調製し、約4℃まで冷却した。
その後、第二溶液にトリエチレンジアミン0.020gを加え、攪拌した。次いで、氷浴中でさらに第一溶液を混合し、周波数28 kHzの超音波で30 分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが単分散状の均一な球状粒子から構成されていることを確認した。そのイメージ図を図5に示す。このポリアミド微粒子の平均粒径は0.162μm、標準偏差0.0203、変動係数12.528 %、比表面積25.72 m2/gであった。熱分解温度(Td(5wt% loss))は347℃で、ガラス転移温度(Tg)は示さなかった。
【0083】
実施例6
(粒子表面にメチル基を有するポリアミド微粒子の調製)
まず、第一溶液としてテレフタル酸ジクロライド/アセトン=0.0005 mol/50 ml溶液、第二溶液として4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジフェニルメタン/アセトン=0.0005 mol/50 ml溶液をそれぞれ調製し、約4℃まで冷却した。
その後、第二溶液にピリジン5mlを加え、攪拌した。次いで、氷浴中でさらに第一溶液を混合し、周波数28 kHzの超音波で30 分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが単分散状の均一な球状粒子から構成されていることを確認した。そのイメージ図を図6に示す。このポリアミド微粒子の平均粒径は0.135μm、標準偏差0.00588、変動係数4.352 %、比表面積30.86 m2/gであった。熱分解温度(Td(5wt% loss))は419℃で、ガラス転移温度(Tg)は244℃を示した。
【0084】
実施例7
(粒子表面にCF基を有するポリアミド微粒子の調製)
まず、第一溶液として4,4'−ビフェニルジカルボニルクロリド/ジオキサン=0.0005 mol/50 ml溶液、第二溶液として2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン/ジオキサン=0.0005 mol/50 ml溶液をそれぞれ調製し、約12℃まで冷却した。
【0085】
その後、第二溶液にピリジン5mlを加え、攪拌した。次いで、水浴中でさらに第一溶液を混合し、周波数28 kHzの超音波で30 分間攪拌し、反応させることにより、ポリアミドを析出した。得られたポリアミドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ポリアミドが単分散状の均一な球状粒子から構成されていることを確認した。そのイメージ図を図7に示す。このポリアミド微粒子の平均粒径は0.219μm、標準偏差0.0143、変動係数6.529 %、比表面積19.03 m2/gであった。熱分解温度(Td(5wt% loss))は457℃で、ガラス転移温度(Tg)は示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は実施例1で得られたポリアミド微粒子の粒子形状を示す図である。
【図2】図2は実施例2で得られたポリアミド微粒子の粒子形状を示す図である。
【図3】図3は実施例3で得られたポリアミド微粒子の粒子形状を示す図である。
【図4】図4は実施例4で得られたポリアミド微粒子の粒子形状を示す図である。
【図5】図5は実施例5で得られたポリアミド微粒子の粒子形状を示す図である。
【図6】図6は実施例6で得られたポリアミド微粒子の粒子形状を示す図である。
【図7】図7は実施例7で得られたポリアミド微粒子の粒子形状を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸クロライド及びジアミン化合物からポリアミドを合成する方法において、
(a)酸クロライド及びジアミン化合物の少なくとも一方が機能性基を有し、かつ、当該酸クロライドを有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、当該ジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とをそれぞれ調製する第一工程、及び
(b)第2級アミン及び/又は第3級アミンの存在下に、第一溶液と第二溶液とを混合し、機能性基を有するポリアミド微粒子を混合溶液から析出させる第二工程、
を含むことを特徴とする機能性ポリアミド微粒子の製造方法。
【請求項2】
第2級アミン及び/又は第3級アミンが第一溶液及び第二溶液のいずれにも可溶である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第3級アミンが複素環式第3級アミン、脂環式第3級アミン、脂肪族第3級アミン及び芳香族第3級アミンの少なくとも1種である請求項1又は2に記載の製造方法
【請求項4】
第2級アミンが複素環式第2級アミン、脂環式第2級アミン、脂肪族第2級アミン及び芳香族第2級アミンの少なくとも1種である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
第3級アミンがピリジン及び/又はトリエチレンジアミンである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
第二溶液が、機能性基を有しないジアミン化合物をさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
第二溶液が、機能性基を有するジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる溶液と、機能性基を有しないジアミン化合物を有機溶媒に溶解してなる溶液とを混合して得られる請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
第二工程を超音波による撹拌下で行う請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第一溶液における有機溶媒が、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトフェノン及びシクロヘキサノンの少なくとも1種を含む請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
第二溶液における有機溶媒が、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトフェノン及びシクロヘキサノンの少なくとも1種を含む請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法により得ることができる機能性ポリアミド微粒子。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法において得られるポリアミド微粒子であって、平均粒径が0.01〜5μmである機能性ポリアミド微粒子。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の機能性ポリアミド微粒子であって、ガラス転移温度を示すことを特徴とする機能性ポリアミド微粒子。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の機能性ポリアミド微粒子であって、ガラス転移温度を示さないことを特徴とする機能性ポリアミド微粒子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−257345(P2006−257345A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79360(P2005−79360)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】