説明

機能性素子およびその製造方法

【課題】基板上に形成された隔壁内に塗工液を塗布し乾燥させて固化させる乾燥工程を有する機能性素子において、機能層の中心部および端部の厚みの差が機能に不都合を発生させない程度の差となる形状に形成することが可能な機能性素子の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】隔壁形状、塗工液の粘度、塗工液の表面張力、および塗工液の乾燥速度について、いずれかの値を調整することにより、乾燥中の液滴の流動が充分に行われ、機能層の中心部と端部の厚みの差が低減され、機能層の膜厚と隔壁高さの差が+0.1μmから−0.3μmまでの範囲に収まる領域をD3、隔壁間の距離をD4としたとき、
D3/D4 ≧ 0.9
を満たすような、平坦な形状を得ることが出来る。これにより、厚みの差に起因する問題が発生する可能性を低減させ、高性能な機能性素子が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された隔壁内に溶媒を含む機能層形成用塗工液を塗布し、前記塗布膜を乾燥させて固化させる工程を経て得られる機能性素子において、その機能に不都合を生じさせないために高精度に平坦な機能層を有する機能性素子とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、より高精細かつ美麗なディスプレイの製造競争が激化している。その中で、より高精細で薄層であるといった要求を満たすものとして、有機エレクトロルミネッセント素子(以下、有機EL素子とする)やカラーフィルタなどが注目を浴びている。これら有機EL素子やカラーフィルタの製造には、機能層と呼ばれる層を形成するために微細なパターニング技術が要求される。ここで、機能層とは、カラーフィルタにおいては赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の光を選択的に透過させる着色層のことを指し、有機EL素子においては、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の光を発光する発光層のことを指すものとする。また、以下では、このような機能層を有する基板のことを、機能性素子と呼称する。
【0003】
この微細パターニングを行う従来からの方法としては、フォトリソグラフィ方式がある。フォトリソグラフィ方式では、機能層を形成するために、基板全体に塗布膜を形成した後に不要な部分を取り除くことで微細パターニングを行うが、そのため塗布膜の多くの部分が不要となり、材料の無駄や工程数の増加を招く。
【0004】
フォトリソグラフィ方式以外の微細パターニング技術として、近年、インキジェット方式が注目を集めている。インキジェット方式は、基板上で機能層を形成したい箇所にのみ塗工液を吐出して塗布膜を形成するものである。そのため、材料の無駄がほとんど発生せず、環境負荷の低減と大幅なコストダウン、形成工程の短縮など利点が多い方法である。
【0005】
インキジェット方式を用いて微細パターニングを行う基板の製造方法として、特許文献1〜3に記載されている方法が提案されている。特許文献1〜3には、インキジェット方式を用いたカラーフィルタ基板の製造方法として、異なる色の着色インキが混合してしまう不良を防ぐために、含フッ素化合物などの撥インキ剤を含有させた黒色樹脂層をフォトリソグラフィ方式等で形成し、隔壁とすることが記載されている。
【0006】
上述のようにして形成した隔壁内に塗工液を吐出、乾燥させる方法により形成された機能層の形状は、平坦とならずに凸形状や凹形状になる場合が多い。凸形状となるか凹形状となるかは、機能層の素材性質や基板の性質によって変化する。中心部と端部の膜厚差が大きい場合、その差を起因とする問題が発生する。カラーフィルタの着色層においては、膜厚差に起因する色ムラや、コントラスト性能が低下するといった影響を及ぼす。
【0007】
より高精細で、機能に不都合を生じない程度の平坦性を有する機能性素子を製造するために、特許文献4では平坦性を向上するための手法が発明されている。
【0008】
しかし特許文献4の方法では、乾燥し硬化した機能層のみに限れば平坦であるものの、隔壁と機能層との間に段差があるという問題があった。カラーフィルタにおいては、硬化した着色樹脂組成物と隔壁を形成するブラックマトリクスとの間に段差が生じ、その段差が色ムラの発生する原因となった。
【0009】
特許文献5では、乾燥後の形状が凸形状の場合は溶媒の揮発速度を速く、凹形状の場合は揮発速度を遅くすることによって平坦性の向上を行うことが提案されている。しかし送風による制御では、送風自体の制御が難しいことに起因するムラが発生するため、高い膜厚精度を要求される製品では使用することが困難である。また、生産性の向上の為に揮発速度は出来る限り速いことが要求されているため、生産において揮発速度の制御を行うことは難しい。
【0010】
【特許文献1】特開平6−347637号公報
【特許文献2】特開平7−35915号公報
【特許文献3】特開平7−35917号公報
【特許文献4】特開2006−243588号公報
【特許文献5】特開2003−266003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
基板上の、隔壁で区切られた領域であるセルの内部に、塗工液を吐出して形成した塗布膜には、乾燥後の形状においてセル中央部の膜厚がセル周縁部の膜厚よりも厚くなる傾向がある。その膜厚差が機能層の機能に不都合を及ぼし、カラーフィルタにおける色ムラの発生、またそれに伴う高コントラスト比が得られないといった問題が発生する。本発明は、このような問題が生じないよう、隔壁内の乾燥後の塗布膜が充分な平坦性を有するように製造するための製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明の請求項1においては、溶媒を含む機能層形成用塗工液を、基板上に形成された隔壁内部に塗布することにより塗布膜を形成した後、前記塗布膜を乾燥させて固化させる乾燥工程を有する機能性素子の製造方法において、乾燥時における塗工液の粘度をη[mPa・s]、揮発速度をJ[m/s]、表面張力をγ[mN/m]、隔壁のアスペクト比をεとしたとき、
α=3ηJ/εγ
で表されるパラメータαが、前記乾燥工程での前記塗工液中の溶質の重量%が80%を超えるまで、
α<10
を満たすことを特徴とする機能性素子の製造方法としたものである。
【0013】
本発明は、塗工液の液滴の流動による平坦化を妨げないよう、乾燥過程の大部分においてパラメータαが一定値以下に抑えられるような塗工液、および隔壁形状を用いることで、機能に障害を持たない程度に高い平坦性を持った機能層が得られることを特徴とする機能性素子の製造方法である。
【0014】
本発明においては、表面張力による流動を充分に行わせるために、隔壁のアスペクト比、粘度、表面張力のいずれかの値を制御することで平坦化することを特徴とする。これにより、粘度、表面張力、隔壁のアスペクト比、いずれかの値が制御不可能であっても、他のいずれかの値を制御することで、機能層の中心部と端部における膜厚の差が小さくなり平坦化され、膜厚差に起因する問題が起こる可能性を低減させる効果がある。
【0015】
液滴の乾燥現象は、気層の状態や隔壁内の液滴の濃度分布などによって複雑な挙動を示す。しかし表面張力による流動が充分に起きている間は、乾燥が進むにつれ平坦性が向上していく。また数値解析により、請求項1に記載の式により算出されるパラメータαが、表面張力による液の流動状態をよく表していることを見出した。これを利用することにより、乾燥過程における大部分において液の流動が充分に起きる条件を算出することが出来る。本発明は以上の知見に基づいてなされたものである。
【0016】
請求項1に記載の発明は、上記のような充分な液滴流動状態を保つために、乾燥過程の大部分においてパラメータαを10以下とすることを特徴とする機能性素子の製造方法である。ただし、乾燥が進むにつれ塗工液の表面張力や粘度が変化することを鑑み、乾燥過程の大部分とは、乾燥中の塗工液における溶質含有量が全体の80%を超えるまでとする。
【0017】
また、本発明の請求項2においては、塗工液の物性に合わせて隔壁のアスペクト比εを調整することにより、請求項1記載のパラメータαが
α<10
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造方法としたものである。
【0018】
また、本発明の請求項3においては、前記乾燥工程での前記塗工液中の溶質の重量%が80%を超えるまで、塗工液の粘度が1200000[mPa・s]を超えないことにより、請求項1に記載のパラメータαが
α<10
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造方法としたものである。
【0019】
また、本発明の請求項4においては、隔壁のアスペクト比ε、および塗工液の粘度に合わせて塗工液の表面張力を調整することにより、請求項1に記載のパラメータαが
α<10
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造方法としたものである。
【0020】
また、本発明の請求項5においては、前記機能層形成用塗工液がインクジェット法により塗布されることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造方法としたものである。
【0021】
請求項1〜4のいずれかに記載の発明は、請求項5に記載するように、機能層形成用塗工液の塗布方法がインクジェット法であるときに、大きな効果を発揮する。インクジェット法により隔壁内に吐出された液滴は、乾燥後に平坦性が低く膜厚差の大きな凸形状もしくは凹形状を形成するおそれが大きく、本発明はそれら機能層の凸形状や凹形状を平坦化する効果を持つためである。
【0022】
また、本発明の請求項6においては、請求項1〜5までのいずれかに記載の機能性素子の製造方法により、着色層が形成されたことを特徴とするカラーフィルタとしたものである。
【0023】
請求項1〜5のいずれかに記載の機能性素子の製造方法によりカラーフィルタを製造すると着色層の平坦性が高くできるため、コントラスト性能が良くコストを低減したカラーフィルタを得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、パラメータαの値を10以下に維持することにより平坦な形状の機能性素子を得ることができる。これにより、隔壁高さと機能層の膜厚に大きな差が無く、かつ画素内の色のバラつきなどの問題がないカラーフィルタを得ることが出来る、という効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、パラメータαの値の制御方法として、塗工液の粘度、表面張力、隔壁のアスペクト比のいずれかについて制御を行えば良く、要求される製品仕様や生産形態に応じて制御を行い、平坦な機能層を持つ機能性素子を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
ここで最初に、本発明における機能層の平坦性について定義しておく。図1に示すように隔壁の高さをD1、隔壁内の機能層の各部分の膜厚をD2としたとき、
−0.3μm < D2−D1 < 0.1μm
の範囲内にある領域を平坦な領域D3とし、隔壁に囲まれた機能層の領域を表す隔壁間の距離をD4としたときにD3/D4を平坦領域の割合とする。
【0027】
さらに図2に示すように、
D3/D4 ≧ 0.9
を満たすとき、機能層が平坦であるとする。また、図3に示すように、
D3/D4 < 0.9
を満たす時、機能層が平坦ではないとする。
【0028】
液滴の乾燥は一般的に液滴の濃度状態や気層の状態に応じた複雑な乾燥挙動を示す。乾燥初期においては、表面張力の効果による液の流動により徐々に平坦性が向上していく。しかし乾燥が進むにつれ充分な液の流動が行われなくなり、複雑な乾燥挙動による非平坦化効果が液の流動による平坦化効果を上回ることによって、乾燥後の機能層における平坦性が失われる。
【0029】
請求項1に記載の式により定義されたパラメータαは、表面張力による液滴内の流動の度合いを表しており、このパラメータαを充分に小さな値となるように操作することにより、乾燥過程を通して充分な液滴の流動が行われる。そこで本発明においては、パラメータαの定義式の中のパラメータを調整することにより充分な液の流動を確保し、形成された機能層の平坦化を実現する。
【0030】
発明者らは、上記の液滴の流動性を確保するためには、パラメータαを低い値に保てばよいことを発見した。より具体的には、パラメータαが10を超えないような条件で乾燥を行うことで、平坦な機能性素子を得ることが出来る。
【0031】
パラメータαを制御する方法としては、塗工液の粘度、表面張力、隔壁のアスペクト比のうち、必要に応じて、いずれか一つ、または二つ以上を組み合わせて、条件を設定することにより、制御を行えば良い。
【0032】
本発明における塗工液の塗布手段としては、隔壁内に液滴を吐出する吐出装置であれば特に限定はされないが、具体的な塗布手段のひとつとしてはインクジェット装置などをあげることができる。
【0033】
粘度の制御方法としては、塗工液の組成を、乾燥が進んでも粘度が上昇しにくいものとする、もしくは高温での乾燥を行うようにすればよい。液滴の粘度は温度が上昇するにつれ低下するためである。
【0034】
表面張力の制御方法としては、高い表面張力を持つ塗工液の組成を用いるようにすればよい。
【0035】
ここで、隔壁のアスペクト比とは、図1に示すように隔壁の高さD1と隔壁間の距離D4の比のことであり、隔壁のアスペクト比の制御は、隔壁の高さD1と隔壁間の距離D4のどちらかまたは両方を調整して行なえばよく、特に制限されない。
【実施例】
【0036】
<実施例1>
塗工液の粘度の値を制御することで、乾燥過程全体を通してパラメータαが10を超えない条件での数値解析を行い、乾燥終了後の機能層の膜厚について、平坦であるかどうかを調べた。隔壁アスペクト比、および乾燥時の塗布膜の物性として、表1に示す構成のものを用いた。

【表1】

【0037】
隔壁高さをD1、機能層の膜厚をD2としたとき
−0.3μm < D2−D1 < 0.1μm
を満たす平坦領域D3と隔壁間の距離D4の割合(D3/D4)と、設定した塗布膜の粘度の関係を、表2に示す。

【表2】

【0038】
表2に示したように、粘度を調整することでパラメータαが10を超えないとき、乾燥後の機能層の形状は、
D3/D4 ≧ 0.9
の範囲内にあるものであった。
【0039】
<比較例1>
表1と同じ隔壁アスペクト比、および乾燥時の塗布膜の物性の条件で、粘度の値を調整することにより、パラメータαが10を超えるような条件での乾燥を行い、乾燥終了後の機能層の膜厚について、平坦であるかどうかを調べた。結果を表3に示す。

【表3】

【0040】
塗布膜の乾燥後形状は凸形状であり、いずれの結果も
D3/D4 < 0.9
の範囲内にあるものであった。
【0041】
<実施例2>
表面張力の値を制限することで、乾燥過程全体を通してパラメータαが10を超えない条件での数値解析を行い、乾燥終了後の機能層の膜厚について、平坦であるかどうかを調べた。隔壁アスペクト比、および乾燥開始時の塗布膜の物性として、表4に示す構成のものを用いた。

【表4】

【0042】
隔壁高さをD1、機能層の膜厚をD2としたとき
−0.3μm < D2−D1 < 0.1μm
を満たす平坦領域D3と隔壁間の距離D4の割合(D3/D4)と、設定した塗布膜の表面張力の関係を、表5に示す。

【表5】

【0043】
表5に示したように、表面張力を調整することでパラメータαが10を超えないとき、乾燥後の機能層の形状は、
D3/D4 ≧ 0.9
の範囲内にあるものであった。
【0044】
<比較例2>
表4と同じ隔壁アスペクト比、および乾燥時の塗布膜の物性の条件で、表面張力の値を調整することにより、パラメータαが10を超えるような条件での乾燥を行い、乾燥終了後の機能層の膜厚について、平坦であるかどうかを調べた。結果を表6に示す。

【表6】

【0045】
塗布膜の乾燥後形状は凸形状であり、いずれも
D3/D4 < 0.9
の範囲内にあるものであった。
【0046】
<実施例3>
本発明についてさらに具体的に述べるために、以下に述べる構成のカラーフィルタによる実施例を説明する。
【0047】
(ブラックマトリクスの作成)
無アルカリガラス(コーニング社製「#1737」)基板上にカーボンブラックを含有したレジスト剤(新日鉄化学社製ブラックマトリクス用ネガ型レジストインキ「V−259 BK739P」)に感光性シリコン化合物(例えばジメチルポリシラン)を10%添加したものを膜厚がおよそ2.0μmとなるようにスピンコートし、プリベークを行った。その後、パラメータαの値を制御するため、隔壁のアスペクト比が1:58.5となるように調整しながら露光、現像、ポストベーク処理を行って、隔壁となるブラックマトリクスを形成した。
【0048】
(カラーインキの調整)
機能性素子として着色インキを用いるため、着色インキの調製を以下のようにして行った。メタクリル酸20部、メチルメタクリレート10部、ブチルメタクリレート55部、ヒドロキシエチルメタクリレート15部を乳酸ブチル300gに溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75部を加え70℃にて5時間の反応によりアクリル共重合樹脂を得た。得られたアクリル共重合樹脂を樹脂濃度が20%になるようにジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈し、アクリルワニスとした。
【0049】
さらに下記組成(A1)の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して赤色顔料の分散体(A1’)を作成した。
【0050】
組成(A1)の混合物:
顔料:C.I.Pigment Red 254 18重量部
顔料:C.I.Pigment Red 177 2重量部
アクリルワニス(固形分20%) 108重量部
【0051】
その後、下記組成(B1)の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過して赤色着色材料(B1’)を得た。
【0052】
組成(B1)の混合物:
赤色顔料の分散体(A1’) 128重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 50重量部
テトラエチレングリコールジメチルエーテル 30重量部
【0053】
(カラーインク基板への塗布)
前記ガラス基板上のブラックマトリクスの開口部に、150dpiヘッド(セイコーインスツルメンツ社製)を搭載したインクジェット印刷装置により、赤色着色材料(B1’)を108pl(ピコリットル)吐出し、塗布した。
【0054】
(乾燥方法)
赤色着色材料(B1’)を塗布したガラス基板を、開放雰囲気下にて常温で放置することにより乾燥を行い、カラーフィルタの着色層を得た。
【0055】
以上のカラーフィルタの製造過程において、塗工液中の溶質の重量%が80%のときパラメータα=6489であり、α<10を満たす。
【0056】
このようにして作製されたカラーフィルタについて、光干渉式表面形状測定装置を用いて画素の中央部断面形状を測定した。隔壁間の距離D4がおよそ120μmの測定箇所において、隔壁の高さD1に対して機能層の膜厚D2が
−0.3μm < D2−D1 < 0.1μm
を満たす機能層の領域D3は、112μmに渡り、
D3/D4 ≧ 0.9
の範囲内にあった。
【0057】
<比較例3>
ガラス基板、着色インキの材料および作製方法、塗布方法、乾燥方法は<実施例3>と同様の条件とし、隔壁のアスペクト比のみ1:75として、カラーフィルタの着色層を作成した。この条件では、乾燥中の塗工液中の溶質の重量%が80%のとき、パラメータαは5×10である。
【0058】
このようにして作製されたカラーフィルタについて、光干渉式表面形状測定装置を用いて画素の中央部断面形状を測定した。隔壁間の距離D4がおよそ150μmの測定箇所において、隔壁の高さD1に対して機能層の膜厚D2が
−0.3μm < D2−D1 < 0.1μm
を満たす機能層の領域D3は55.4μmで、
D3/D4 < 0.9
の範囲内にあった。
【0059】
<実施例4>
(ブラックマトリクスの作成)
実施例3と同様のガラス基板、材料を用い、同様の手順により、隔壁のアスペクト比が1:75となるように調整しながら露光、現像、ポストベーク処理を行って、隔壁となるブラックマトリクスを形成した。
【0060】
(カラーインキの調整)
下記組成の混合物から、実施例3と同様の方法で青色着色材料を得た。
【0061】
青色着色材料を得るための混合物の組成:
青色顔料:C.I.Pigment Blue 15 50重量部
紫色顔料:C.I.Pigment Violet 23 2重量部
分散剤:ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」 6重量部
アクリルワニス(固形分20%) 200重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 100重量部
テトラエチレングリコールジメチルエーテル 60重量部
【0062】
(カラーフィルタ基板への塗布)
実施例3と同様にして、青色着色材料の塗布を行った。
【0063】
(乾燥方法)
80℃に熱したホットプレート上に、青色着色材料を塗布したガラス基板を置いて乾燥させ、カラーフィルタの着色層を得た。
【0064】
以上のカラーフィルタの製造過程において、塗工液中の溶質の重量%が80%のときパラメータα=5528であり、α<10を満たす。
【0065】
このようにして作製したカラーフィルタ着色層について、光干渉式表面形状測定装置を用いて画素の中央部断面形状を測定した。隔壁間の距離D4がおよそ150μmの測定箇所において、隔壁の高さD1に対して機能層の膜厚D2が
−0.3μm < D2−D1 < 0.1μm
を満たす機能層の領域D3は、147μmに渡り、
D3/D4 ≧ 0.9
の範囲内にあるものであった。
【0066】
<比較例4>
<実施例4>で使用したインキに比して、固形分濃度が高いときに粘度が高いインキを用いて実施例4と同様の操作を行い、カラーフィルタの着色層を作成した。このとき、乾燥中の塗工液中の溶質の重量%が80%のとき、パラメータαは5×10であった。
【0067】
このようにして作製されたカラーフィルタについて、光干渉式表面形状測定装置を用いて画素の中央部断面形状を測定した。隔壁間の距離D4がおよそ150μmの測定箇所において、隔壁の高さD1に対して機能層の膜厚D2が
−0.3μm < D2−D1 < 0.1μm
を満たす機能層の領域D3は53.0μmで、
D3/D4 < 0.9
の範囲内にあるものであった。

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】隔壁内に形成された塗布膜の乾燥により得られる機能層形状の一例を示した概略断面図である。
【図2】本発明により平坦化された機能層の一例を示した概略断面図である。
【図3】従来における機能性素子において、平坦ではない凸形状に形成された機能層の一例を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 … 隔壁
2 … 基材
3 … 機能層
D1 … 隔壁の高さ
D2 … 任意の位置における機能層の膜厚
D3 … −0.3μm < D2−D1 < 0.1μm を満たす領域
D4 … 隔壁間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒を含む機能層形成用塗工液を、基板上に形成された隔壁内部に塗布することにより塗布膜を形成した後、前記塗布膜を乾燥させて固化させる乾燥工程を有する機能性素子の製造方法において、乾燥時における塗工液の粘度をη[mPa・s]、揮発速度をJ[m/s]、表面張力をγ[mN/m]、隔壁のアスペクト比をεとしたとき、
α=3ηJ/εγ
で表されるパラメータαが、前記乾燥工程での前記塗工液中の溶質の重量%が80%を超えるまで、
α<10
を満たすことを特徴とする機能性素子の製造方法。
【請求項2】
塗工液の物性に合わせて隔壁のアスペクト比εを調整することにより、請求項1記載のパラメータαが
α<10
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程での前記塗工液中の溶質の重量%が80%を超えるまで、塗工液の粘度が1200000[mPa・s]を超えないことにより、請求項1に記載のパラメータαが
α<10
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造方法。
【請求項4】
隔壁のアスペクト比ε、および塗工液の粘度に合わせて塗工液の表面張力を調整することにより、請求項1に記載のパラメータαが
α<10
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造方法。
【請求項5】
前記機能層形成用塗工液がインクジェット法により塗布されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の機能性素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5までのいずれかに記載の機能性素子の製造方法により、着色層が形成されたことを特徴とするカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−214067(P2009−214067A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62353(P2008−62353)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】