説明

機能成分を保持したポリアミノ酸誘導体および組成物

【課題】 特定の波長帯の光を吸収するポリアミノ酸誘導体またはその組成物であって、水や適当な溶剤に溶解可能で、かつ高い生体適合性と生分解性を併せ持つポリアミノ酸誘導体またはその組成物を提供し、また化粧品などの原料として有用な生体適合性があり、感触良好な水溶性の高分子紫外線吸収剤を提供する。
【解決手段】 機能分子がポリアミノ酸誘導体分子に結合しているポリアミノ酸誘導体であり、当該機能分子が生体機能分子であり、また当該機能分子が化粧料および/または外用剤成分に適用される機能分子である前記ポリアミノ酸誘導体。
また、前記ポリアミノ酸誘導体が、化粧料および/または外用剤成分に適用されることを特徴とするポリアミノ酸誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸誘導体のポリマーであって、該化合物またはその溶液が種々の機能分子、特に生体機能分子を結合させることで新機能を発現することができるポリアミノ酸誘導体に関し、より具体的には例えば、特定波長の光を吸収し、かつ高い生体適合性と生分解性を併せ持つポリアミノ酸誘導体及びその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品や医薬品として、様々な生理活性を有する化合物が開発され、利用されてきている。これら化合物は、生理・生化学的な機能、すなわち、生体分子や細胞と相互作用することで、生体における様々な化学反応を促進または抑制する能力を示す。しかしながら、これらの化合物を単体で生体に作用させるだけでは、化合物が本来持っている生理・生化学的機能を十分に発揮できない場合がある。また、多くの化合物は望まれる生理・生化学的機能に加えて、生体にとって好ましくない副次的な影響を及ぼすことがある。このような観点から、生理活性を有する化合物を所望の部位で所望の次期、あるいは期間にわたって、所望の量だけ作用させるようなシステムの開発が試みられてきた。これらの多くは、生理活性を有する化合物または生体に物理的、化学的な作用を及ぼす化合物とは直接関連のない他の材料との複合化を中心とした製剤化技術によってなされてきた。
【0003】
上記の流れから、前記のような様々な生理活性または生体に物理的、化学的な作用を有する化合物を、機能分子として捕らえ、生体適合性の高い材料等に何らかの形で付与して用いることができないか、従来から種々検討されてきたが、未だ有効な方法は開発されていないのが現状である。
【0004】
また、近年、生活用品、衛生用品、医療用品等、人に身近な製品の材料は、生体に影響を与えない生体適合材料であり、且つ生分解性であることが必要とされて来ている。特に化粧品等、直接肌に触れる剤に配合されるものは肌に優しい生体適合性を有するものの要求がある。
【0005】
従来、化粧品分野で使用されている生体機能分子を含む材料は、その低分子量のために皮膚内部への移行があり、刺激性等の問題がある。またその生体機能分子は単分子である以上、溶剤への溶解性は分子そのものの性質に由来しこれに合わせて組成物調製する必要がある。
【0006】
例えば紫外線吸収剤はほとんどが非水溶性であり、化粧品に配合するためには予め溶解可能な油分に溶解させて用いる必要がある。また、一般的な紫外線吸収剤は化粧品配合可能な油分に対する溶解性が低いため結晶が析出するなどの問題点があった。これらの問題点に対応するために紫外線吸収剤を結合させたポリマーが報告されている(特許文献1)。しかしながら、記述のポリマーは無水マレイン酸をラジカル共重合によって作製したものが開示されており、アクリル酸系ポリマー、メタクリル酸系ポリマー、スチレン系ポリマーなどと同様に、生体適合性や環境に放出した場合の分解性等に問題がある。さらに一般の紫外線吸収剤は油分にしか溶解しないその性質上肌に添付するとベタつき、水の洗浄では容易に流れ落ちない等の問題があった。
【特許文献1】特開1998−231467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、生活用品、衛生用品、医療用品等、人に身近な製品の材料は、生体に影響を与えない生体適合材料であり、且つ生分解性であることが必要とされて来ている。特に化粧品等、直接肌に触れる剤に配合されるものは肌に優しい生体適合性を有するものの要求がある。一方、肌に添付する種々の生理活性作用または生体に物理的、化学的な作用を有する化合物がある。例えば、保湿、抗シワ、抗酸化、美白、紫外線吸収などの機能を有し、主に化粧品分野に求められる化合物である。これらは、単独で使用すれば、生理活性をもつ性質あるいはその低分子量のために皮膚内部への移行に伴う刺激性等の問題がある。
【0008】
この中の紫外線吸収剤を使用する分野では、地球環境変化、例えばオゾンホールの拡大などによって、より強度の紫外線が地表に届くようになり紫外線防止対策は益々重要になっている。例えば化粧品、外用剤として種々の日焼止めやサンスクリーンが市販されているが、従来の紫外線吸収剤はその低分子量のために皮膚内部への移行があり、刺激性等の問題があって、具体的な配合制限が設けてある。またそのほとんどが非水溶性であり、化粧品に配合するためには適当な油分に予め溶解させて用いる必要があり、その剤形に著しい制限がある。基剤が種々の剤形に対応できることは、化粧品分野に限らず重要な課題である。
【0009】
以上のことから、本発明は、種々の機能分子を直接生体適合性の高いポリアミノ酸誘導体に結合することによって、単分子では成しえない生体に適用する場合の効果改善、例えば、生体への親和性改善、溶剤溶解性コントロール、皮膚への刺激性を含む影響の改善等を目的とする。 特に本発明は特定の波長帯の光を吸収するポリアミノ酸誘導体またはその組成物であって、水や適当な溶剤に溶解可能で、かつ高い生体適合性と生分解性を併せ持つポリアミノ酸誘導体またはその組成物を提供することを目的とする。
また、本発明の目的は、化粧品などの原料として有用な生体適合性があり、感触良好な水溶性の高分子紫外線吸収剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ポリアミノ酸は自然界に広く分布し、生物体内の蛋白質構成要素として存在し、生体適合性については非常に良好な性質を有している。また、生分解性も有するので、生体内で使用しても、また外部環境下に廃棄されても速やかに分解される。したがって、先に述べたような各種用途において、非常に有用なポリマーである。
【0011】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、特定波長帯の光を吸収する化合物をポリアミノ酸誘導体にグラフトすることにより、生体適合性に優れたアミノ酸を原料とした特定の構造単位を有するポリアミノ酸誘導体で、特定の溶媒に溶解して特定波長帯の光を吸収することができることを見出した。さらに驚くべきことに機能性分子の密度がある程度増加すると、飛躍的に紫外線吸収能が強くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
また、本発明者等は、上記の通り、ポリアミノ酸骨格に特定波長を吸収する化合物をグラフトさせることにより、新規な水溶性高分子紫外線吸収剤を開発し、本発明を完成した。
【0013】
本発明は特定波長帯の光を吸収し遮断するポリマーまたはその組成物であって、かつ高い生体適合性と生分解性を併せ持つポリアミノ酸誘導体組成物である。
【0014】
即ち、本発明は、
1.機能分子がポリアミノ酸誘導体分子に結合しているポリアミノ酸誘導体。
2.機能分子が生体機能分子である前記1記載のポリアミノ酸誘導体。
3.機能分子が、化粧料および/または外用剤成分に適用される機能分子であることを特徴とする前記1または2記載のポリアミノ酸誘導体。
4.ポリアミノ酸誘導体が、化粧料および/または外用剤成分に適用されるポリアミノ酸誘導体であることを特徴とする前記3記載のポリアミノ酸誘導体。
5.波長240〜400nm間で任意の波長の光を吸収する前記1〜4の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
6.機能分子が、前記ポリアミノ酸誘導体に接触した液体に溶出しないことを特徴とする前記5記載のポリアミノ酸誘導体。
7.ポリアミノ酸誘導体が水溶性である前記5または6記載のポリアミノ酸誘導体。
8.ポリアミノ酸誘導体が、紫外線を遮断及び/または吸収することを特徴とする前記5〜7の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
9.下記一般式(I)乃至(III)
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Rは波長240〜400nm間で任意の波長の光を吸収する化合物の誘導体残基を示し、Rはヒドロキシ基またはヘテロ原子を含んでも構わない炭素原子数1〜20の不飽和または飽和炭化水素基を示し、Xは酸素原子、窒素原子およびイオウ原子から選択され、Yは水素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種以上の元素を示し、mは1〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表されるα型、β型又はγ型ポリアミノ酸単量体単位から構成され且つ一般式(I)の単量体単位を少なくとも1単位以上含む前記5〜8の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
10.ポリアミノ酸誘導体が、ポリアスパラギン酸誘導体である前記5〜9の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
11.前記一般式(I)におけるRが、けい皮酸誘導体残基、サリチル酸誘導体残基、安息香酸誘導体残基、ベンゾフェノン誘導体残基、ジベンゾイルメタン誘導体残基、ベンズイミダゾール誘導体残基、トリアジン誘導体残基、カンファースルホン酸誘導体残基およびトリアゾール誘導体残基からなる群から選択される少なくとも1種類を含む前記9記載のポリアミノ酸誘導体。
12.前記一般式(II)におけるRが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ヒドロキシアルキニル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルケニル基、アルコキシアルキニル基、アミノアルキル基、アミノアルケニル基、アミノアルキニル基、アルキルアミノアルキル基、アルキルアミノアルケニル基及びアルキルアミノアルキニル基からなる群から選択される少なくとも1種類を含む前記9または11記載のポリアミノ酸誘導体。
13.一般式(I)の単量体単位の含有量により紫外線吸収強度を制御することを特徴とする前記9〜12の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
14.前記1〜13の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体を含有してなるポリアミノ酸誘導体組成物。
15.前記1〜13の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体または前記14記載のポリアミノ酸誘導体組成物を含有することを特徴とする紫外線吸収剤。
16.前記15記載の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする化粧料または外用剤。
に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生体適合性に優れたアミノ酸を原料とした特定の構造単位を有するポリアミノ酸誘導体またはこれを含有する組成物が紫外線吸収作用を有し、水をはじめとする各種溶剤に溶解することで、化粧品や外用剤における種々の剤、例えば日焼止め、化粧水、整髪剤を初めとする紫外線対策に必要とされる剤形全般に配合することができ、かつ高い生体適合性と生分解性を併せ持つポリアミノ酸誘導体またはその組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、ポリアミノ酸誘導体またはその組成物が、機能性分子を結合することにより、種々の機能を発現することを特徴とする。特に特定波長を吸収または遮断することを特徴とするポリアミノ酸誘導体またはその組成物に関するものである。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明とは、機能分子がポリアミノ酸誘導体分子に結合しているポリアミノ酸誘導体、であり、当該機能分子が生体機能分子であり、また当該機能分子が化粧料および/または外用剤成分に適用される機能分子である、前記ポリアミノ酸誘導体、である。
【0023】
また、前記ポリアミノ酸誘導体が、化粧料および/または外用剤成分に適用されることを特徴とするポリアミノ酸誘導体、である。
【0024】
本発明において、ポリアミノ酸とは、アミノ酸がペプチド縮重合した重合体をも包含する。また本発明において、重合体及びポリマーは相互に等価な意味である。重合体(ポリマー)を構成する単量体単位の配列の様式は、共重合体(コポリマー)である場合はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体の何れでもよい。また、重合体(ポリマー)の分子鎖は、線状、大環状、分岐状、星状、三次元網目状のいずれでも良い。本発明において、炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状の何れでもよく、原子団の中に、N、O、S等のCやH以外の原子が含まれていてもよい。
【0025】
本発明における機能分子とは、化粧品や医薬品成分等に代表されるような、様々な機能を有する分子のことであり、具体的には、様々な生理活性を有する化合物である。さらに具体的には、生体機能分子が挙げられ、ここで生体機能分子とは、化粧品や医薬品の活性成分を初めとして、天然、非天然の化合物のうち、細胞や生体に対して何らかの化学的、物理的作用を有するものをいう。本発明において、より具体的には、肌に添付する種々の生理活性作用または生体に物理的、化学的な作用を有する生体機能分子が挙げられる。例えば、保湿、抗シワ、抗酸化、美白、紫外線吸収などの機能を有する分子である。これらの機能以外で生体機能以外の分野で使用される機能を有する分子であっても構わない。また本発明においては、上記機能分子が化粧料および/または外用剤成分に適用される機能分子であることも、より好ましい態様の1つである。
【0026】
本発明のポリアミノ酸誘導体は、その基本骨格がアミノ酸誘導体の単量体単位から成るものであればよく、特に制限はないが、特に、ポリアスパラギン酸誘導体であることが好ましい。具体的には、下記一般式(I)乃至(III)
【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
(式中、Rは波長240〜400nm間で任意の波長の光を吸収する化合物の誘導体残基を示し、Rはヒドロキシ基またはヘテロ原子を含んでも構わない炭素原子数1〜20の不飽和または飽和炭化水素基を示し、Xは酸素原子、窒素原子およびイオウ原子から選択され、Yは水素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種以上の元素を示し、mは1〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表されるα型、β型又はγ型ポリアミノ酸単量体単位から構成され且つ一般式(I)の単量体単位を少なくとも1単位以上含むポリアミノ酸誘導体、である。
【0031】
本発明においては、α型、β型又はγ型ポリアミノ酸単量体単位の少なくとも一般式(III)の割合が多くなればX−Yで示される親水性基の影響が大きくなるため、ポリマーの水溶性が大きくなり、また一般式(II)の割合が多くなればRで示される基の影響が大きくなるため、水を含め各種溶剤への溶解性をコントロールできる。また、一般式(I)の割合が多くなれば紫外線吸収強度が大きくなり疎水性が増す。一般式(I)、(II)、(III)の組成割合は、各々0〜100重量%から選択できる。
【0032】
本発明のポリアミノ酸誘導体においては、上記一般式(I)の単量体単位を少なくとも1単位以上含むポリアミノ酸誘導体であることがより好ましい。
【0033】
一般式(I)の単量体単位において、Rは波長240〜400nm間で任意の波長の光を吸収する化合物の誘導体残基を示す。
【0034】
上記Rとしては、波長240〜400nm間で任意の波長の光を吸収する化合物の誘導体残基から選択されるものであればよく、特に制限されない。
【0035】
本発明においては、特にけい皮酸誘導体残基、サリチル酸誘導体残基、安息香酸誘導体残基、ベンゾフェノン誘導体残基、ジベンゾイルメタン誘導体残基、ベンズイミダゾール誘導体残基、トリアジン誘導体残基、カンファースルホン酸誘導体残基、トリアゾール誘導体残基の様に紫外線吸収作用を有する化合物の残基から選択されることが好ましい。
【0036】
一般式(II)の単量体単位において、Rはヒドロキシ基またはヘテロ原子を含んでも構わない炭素原子数1〜20の不飽和または飽和炭化水素基を示す。
【0037】
上記において、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ヒドロキシアルキニル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルケニル基、アルコキシアルキニル基、アミノアルキル基、アミノアルケニル基、アミノアルキニル基、アルキルアミノアルキル基、アルキルアミノアルケニル基、アルキルアミノアルキニル基、等が挙げられる。以下、より具体的に説明する。
【0038】
ここで、上記「アルキル」とは、線状でもよいし、枝分かれしてもよいアルキルであり、具体的には例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル等が挙げられる。上記「アルケニル」としては、1〜3個の2重結合を有する炭素数2〜10の直鎖または分岐鎖のアルケニルが挙げられ,具体的には例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチルエテニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、1,3−オクタジエニル、2−ノネニル、1,3−ノナジエニル、2−デセニル等が挙げられる。上記「アルキニル基」としては、1〜3個の3重結合を有する炭素数2〜10の直鎖または分岐鎖のアルキニルが挙げられ、具体的には例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、4−ペンチニル、1−オクチニル、6−メチル−1−ヘプチニル、2−デシニル等が挙げられる。
【0039】
さらに、上記に説明したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基にそれぞれヒドロキシル基が結合したヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ヒドロキシアルキニル基、また、(アルキル基に酸素が結合した)アルコキシ基が結合したアルコキシアルキル基、アルコキシアルケニル基、アルコキシアルキニル基、また、アミノ基が結合したアミノアルキル基、アミノアルケニル基、アミノアルキニル基、また、(アミノ基にアルキル基が結合した)アルキルアミノ基が結合したアルキルアミノアルキル基、アルキルアミノアルケニル基、アルキルアミノアルキニル基、等が挙げられる。
【0040】
さらに、上記におけるRが、飽和、不飽和のアルキル基から選択でき、特にヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、デセノイル基、オレイル基、エルシル基、リノイル基、エチニル基、プロパルギル基、N,N−ジメチルアミノプロピル基、N,N−ジエチルアミノプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、メトキシペンチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基およびエトキシペンチル基のように、疎水性、親水性の基から選択されることが好ましい。
【0041】
一般式(II)の構造を取り入れることで肌上に添付した剤の洗浄による除去性をコントロールすることができる。即ち一般式(II)の構造がない時、洗浄による除去効果が非常に良好となる。
【0042】
一般式(III)の単量体単位において、Xは酸素原子、窒素原子およびイオウ原子から選択され、Yは水素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種以上の元素を示す。
【0043】
また、mは1〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示す。
【0044】
より具体的には、Yは水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択でき、特にリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属から選択されることが好ましい。
【0045】
本発明のポリアミノ酸誘導体において、α−アミド型単量体単位及びβ−アミド型単量体単位は、何れか一方のみが存在していてもよく、両者が併存していてもよい。併存している場合、α−アミド型単量体単位とβ−アミド型単量体単位の比率は特に限定されない。
【0046】
本発明で用いられるポリアミノ酸誘導体は、例えば、ポリこはく酸イミドを原料として製造できる。
【0047】
ポリこはく酸イミドは、従来より知られる各種の方法で製造でき、例えば、J.Am.Chem.Soc.,80,3361(1985) には、アスパラギン酸を200℃で2〜3時間加熱縮合させることにより、ポリこはく酸イミドを製造する方法が開示されている。特公昭48−20638号公報には、85%のリン酸を触媒としてロータリーエバポレーターを使用して薄膜状でアスパラギン酸の反応を行うことにより、高分子量のポリこはく酸イミドを得る方法が開示されている。米国特許第5057597号には、工業的にポリこはく酸イミドを得る方法として、流動床によりポリアスパラギン酸を加熱縮合させる方法が開示されている。また。さらに高分子量のポリこはく酸イミドを必要とする場合には、上記の方法で得られたポリこはく酸イミドを、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合剤で処理することにより連結することもできる。
【0048】
本発明のポリアミノ酸誘導体を製造する為に使用するポリこはく酸イミドの分子量は、所望の特性を有する生成物が実質的に得られれば特に制限されない。一般的には、ポリこはく酸イミドの分子量は、2000〜500000程度が好ましく、10000〜400000程度がより好ましく、15000〜200000程度が特に好ましい。この分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中、45℃で測定し、ポリスチレン標準で求めた値である。使用するポリこはく酸イミドの分子量が低ければ、得られるポリアミノ酸誘導体の分子量も低くなり、ポリこはく酸イミドの分子量が高ければ、得られるポリアミノ酸誘導体の分子量も高くなる。
【0049】
本発明のポリこはく酸イミドからポリアミノ酸誘導体を製造する際の方法は、特に制限されず、例えば、以下の製造方法が挙げられる。先ず、ポリこはく酸イミドを適当な溶媒に溶解する。この溶媒としては、ポリこはく酸イミドが溶解し、アミン類との反応で副反応を起こさなければ特に限定されない。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が用いられる。
【0050】
この溶媒中で、ポリこはく酸イミドのイミド環に対して、アミノ基を有する化合物(アミン類)を反応させる。ポリこはく酸イミドのイミド環のモル数に対して、アミン類を1倍モル添加し反応を行うと、アミン類はイミド環を開環させて付加し、側鎖のグラフト構造を形成する。
【0051】
次いで、得られた反応混合物を、貧溶媒中に排出する。この貧溶媒としては、ポリアミノ酸誘導体が沈殿し、その後濾過乾燥した際に、ポリアミノ酸誘導体の結晶中に残存しないような溶媒であれば特に限定されない。例えば、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール等が用いられる。上述のようにして得た沈殿を濾取し、貧溶媒で洗浄し、乾燥することにより、目的のポリアミノ酸誘導体が得られる。
【0052】
また本発明のポリアミノ酸誘導体は、を適当な溶媒に溶解することが好ましいが、特に水、エタノール、グリセリン、エチレングリコール、1,3−ブタンジオールなどの溶媒に溶解することが好ましい。更に水に溶解することが最も好ましい。
【0053】
以上により得られた、本発明のポリアミノ酸誘導体は、波長240〜400nm間で任意の波長の光を吸収することができる。 従って、より具体的にはポリアミノ酸誘導体が、紫外線を遮断及び/または吸収することができる。
【0054】
また、本発明のポリアミノ酸誘導体は、アミノ酸単量体の構造を制御することにより、ポリアミノ酸誘導体に結合している機能分子が、ポリアミノ酸誘導体に接触した液体、例えば、水等に、溶出しないようにすることができる。
【0055】
また、本発明のポリアミノ酸誘導体は水溶性であるが、アミノ酸単量体の構造を制御することにより、水を含め各種溶剤への溶解性をコントロール(制御)することができる。
【0056】
また、本発明のポリアミノ酸誘導体それ自体を、化粧料および/または外用剤成分として適用することができる。
【0057】
本発明のポリアミノ酸誘導体組成物は、ポリアミノ酸誘導体を少なくとも1種以上含有するものであり、通常は、これらを適当な溶媒に溶解した溶液の形態が好ましい。本発明の組成物としては、他のポリアミノ酸誘導体を含んでいても構わない。本発明の組成物としては、他のポリアミノ酸誘導体を含んでいても構わない。さらに、上記の他、必要に応じて、香料、防腐剤、安定剤、ミネラル成分、着色料、洗浄剤等の補助成分(添加剤)を含んでいても良い。
【0058】
本発明のポリアミノ酸誘導体組成物を構成する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、以下の無機、有機溶媒が挙げられる。より具体的には例えば、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、植物抽出水、植物エキス、植物性オイル等の植物由来液、シリコン系オイル等が挙げられる。中でも好ましいものとして水、エタノールが挙げられる。
【0059】
本発明の組成物において、ポリアミノ酸誘導体と溶媒の混合比に特に制限はなく、どのような混合割合であっても構わない。通常、ポリアミノ酸誘導体濃度で0.1ppm〜60重量%、好ましくは、1ppm〜30重量%である。また場合によっては、ポリアミノ酸誘導体のみであっても構わない。
【0060】
また、他の紫外線吸収剤や添加剤と配合する場合は実質的に目的の溶解性、増粘性や増泡性などの液性を損なわない範囲で配合できる。通常、酸化チタンや酸化亜鉛はで10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。同様に添加剤も実質的に目的の溶解性、増粘性や増泡性などの液性を損なわない範囲で配合できる。通常、配合濃度で20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0061】
さらに、上記の他、必要に応じて、他の紫外線吸収剤、色素、着色料、香料、安定剤、ミネラル成分、アルコール、防腐剤、顔料、抗酸化剤、流動パラフィン、界面活性剤、水溶性高分子、塩類、ミネラル成分、pH調節剤、洗浄剤等の補助成分(添加剤)などを本発明のポリアミノ酸誘導体の機能を損なわない範囲内で添加してもよく、これらが添加された化粧品、外用剤も本発明に含まれる。化粧品、外用剤の形態は、特に限定されるものではなく、また製造については従来知られている方法を採用することができる。
【0062】
本発明の紫外線吸収剤は、前記ポリアミノ酸誘導体または前記ポリアミノ酸誘導体組成物を含有することを特徴とする紫外線吸収剤、である。当該紫外線吸収剤は、化粧料や外用剤に配合したり、紫外線吸収を必要とする剤等に添加して用いられるものである。
【0063】
添加できるポリアミノ酸誘導体以外の紫外線吸収剤や添加剤量は実質的に目的の溶解性、増粘性や増泡性などの液性を損なわない範囲で配合できる。通常、配合濃度で20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。添加できる紫外線吸収剤としては酸化チタン、酸化亜鉛、パラメトキシけい皮酸2−エチルヘキシル、パラメトキシけい皮酸オクチル、ジパラメトキシけい皮酸モノ2−エチルヘキシルグリセリル、シノキサート、2,5−ジイソプロピルけい皮酸メチル、トリメトキシけい皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、その他メトキシけい皮酸とそのエステル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル、その他サリチル酸とそのエステル、パラアミノ安息香酸およびそのエステル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、パラジメチル安息香酸アミル、その他アミノ安息香酸誘導体とそのエステル、2−ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸およびその三水塩、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、その他ベンゾフェノン誘導体、4−tert−ブチル−4‘−メトキシベンゾイルメタン、その他ジベンゾイルメタン誘導体、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸ナトリウム、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン、2,4,6−トリス〔4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ〕−1,3,5−トリアジン、フェルラ酸、1−シアノ−3,3−ジフェニルプロパン−2−エン酸2−エチルヘキシル、テレフタリリデンカンファースルホン酸、ドロメトリゾールトリシロキサンなどが挙げられる。
【0064】
本発明のポリアミノ酸誘導体は、その溶液が特定波長の光吸収性を有する機能を有することを特徴とする。吸光度の具体的な方法は次の通りである。まず、ポリアミノ酸誘導体を水又はその他の溶媒を使用して溶解し任意の濃度の溶液を調製する。UVメーター用のガラスセルに入れ、装置にセットし光波長を変化させながら吸光度を測定する。
【0065】
また、本発明のポリアミノ酸誘導体は、一般式(I)の単量体単位の含有量により、紫外線吸収強度を制御することが可能である。
【0066】
本発明では、紫外線吸収剤を、化粧料または外用剤に含有させることもできる。
【0067】
本発明の化粧料、即ち、紫外線吸収を有するポリアミノ酸誘導体または組成物の配合先は、化粧料一般、具体的には化粧水、保湿液、洗顔オイル、クレンジングオイル、クレンジングミルク、クレンジングローション、マッサージオイル、モイスチャークリーム、シェービングオイル、シェービングローション、シェービングムース、日焼け止めローション、日焼け用オイル、ボディーローション、ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアートリートメント、養毛オイル、ヘアオイル、ヘアムース、香油、ヘアリキッド、セットローション、ヘアスプレー、ヘアブリーチ、カラーリンス、カラースプレー、パーマネントウェーブ液、ハンドローションが挙げられる。
【0068】
本発明の外用剤、即ち、紫外線吸収を有するポリアミノ酸誘導体または組成物の配合先は、外用医薬品に配合するもの全般が挙げられ、湿布剤、鎮痛剤、冷却剤、除熱剤、保温剤、消毒殺菌剤、角質軟化剤、抗真菌剤、日焼防止剤、皮膚漂白剤、皮膚着色剤、肉芽発生剤、表皮形成剤、養毛発毛剤、防臭剤、発汗抑制剤、ビタミン剤などが挙げられる。
【0069】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
【0070】
本実施例において、原料のポリこはく酸イミド(以下PSIと略記する)としては、重量平均分子量(以下Mwと略記する)が97000のものを用いた。このMwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと略記する)溶液中、45℃で測定し、ポリスチレン標準で求めた値である。また、反応容器としては、攪拌機、ヒーター、温度計及び窒素ラインを備えたセパラブル・フラスコを使用し、反応中は反応系を充分に攪拌しながら実施した。
紫外線吸収曲線はUVメーター(島津製作所製UV−2500PC)を用いて測定した。
【0071】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等限定されるものではない。
【0072】
[合成例1]
p−メトキシけい皮酸 3−アミノプロピルエステル塩酸塩(APMPA)の合成
2l四口フラスコにN−Boc−プロパノールアミン55.2g(0.315mol)、p−メトキシけい皮酸53.5g(0.30mol)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)3.67g(0.03mol)を秤量した。次にテトラヒドロフラン(THF)800mlを加え氷水で冷却、攪拌した。溶解後内温3℃でN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)60.4g(0.315mol)を添加し、次いでジクロロメタン800mlを添加すると、反応が進行し液色が黄色くなった。内温3℃で1時間攪拌し、次いで室温で15時間攪拌後、TLCで確認したところ原料のp−メトキシけい皮酸は消失していた。反応液を濃縮乾固し、再度ジクロロメタンに溶解して重曹水、水、3%クエン酸にて順次洗浄した。その後分液して得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過して濾液を濃縮乾固して油状物100.5gを得た。
【0073】
1l三つ口フラスコ中、得られた油状物95gを酢酸エチル800mlに溶解し、氷冷して3℃で12%塩酸182.5g(0.6mol)を添加し30分間攪拌した。その後室温で一晩攪拌したが反応が完了していなかったため、12%塩酸91.3g(0.3mol)を加えて、更に一昼夜反応を継続し、反応完了させた。次いで反応液を濃縮乾固して白黄色の固体を得た。得られた固体にエーテルを添加して1時間リパルプを行い、結晶を濾別洗浄後、真空乾燥して、APMPA72gを得た。
【実施例1】
【0074】
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)50モル%を導入したポリアスパラギン酸誘導体(PA−APMPA)の合成と紫外線吸収曲線の測定
まず反応容器内にPSI10.1g(単量体単位で0.1mol)とDMF40.0gを入れ、50℃加熱下で完全に溶解させた。次いで、APMPA13.6g(0.05mol)(こはく酸イミド単位に対して50モル%)を添加し、次いでトリエチルアミン(以下TEAと略記する)5.6g(0.05mol)を添加した。反応容器内の温度を50℃に保ちながら5時間反応させ、次いで反応容器を冷却し、室温になったところで600mlのアセトン中に滴下し晶析・濾過した。濾過した結晶を500mlの純水でリパルプ後、濾過して33gの結晶を得た。この結晶を40mlの水中に装入し、攪拌しながら室温で20%水酸化ナトリウム水溶液7.6gをpH9〜11にコントロールしながら滴下した。滴下終了時には結晶は溶解し均一な溶液となった。次いで反応液をメタノール−アセトン(1/4)混合溶媒1l中に攪拌しながら滴下することにより反応物を沈澱させ、濾過により回収し、減圧乾燥してPA−APMPA6.8gを得た。
【0075】
得られたPA−APMPAのMwは54000であった。(GPCの測定条件は0.1mol/Lの塩化カリウム水溶液を移動相とし40℃でポリエチレンオキシド標準で求めた。)
得られたPA−APMPAを10重量%になるように水に溶解したところ完全に溶解した。
【0076】
また、得られたPA−APMPAの50ppm水溶液を調製し、UVメーターで紫外線吸収曲線を描いたところ、250〜370nmに吸収を持つ曲線が得られた。吸収曲線は図1に示す。
【実施例2】
【0077】
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)40モル%を導入したポリアスパラギン酸誘導体(PA−APMPA)の合成と紫外線吸収曲線の測定
APMPAの使用量を10.9g(こはく酸イミド単位に対して40モル%)、TEAの使用量を4.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアスパラギン酸誘導体を合成し、5.7gのPA−APMPAを得た。得られたPA−APMPAのMwは68000で水に溶解した。また得られたPA−APMPAの50ppm水溶液は250〜360nmに吸収があった。吸収曲線は図1に示す。
【実施例3】
【0078】
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)30モル%を導入したポリアスパラギン酸誘導体(PA−APMPA)の合成と紫外線吸収曲線の測定
APMPAの使用量を8.2g(こはく酸イミド単位に対して30モル%)、TEAの使用量を3.3gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアスパラギン酸誘導体を合成し17.4gのPA−APMPAを得た。得られたPA−APMPAのMwは53000で水に溶解した。また得られたPA−APMPAの50ppm水溶液は250〜340nmに吸収があった。吸収曲線は図1に示す。
【実施例4】
【0079】
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)20モル%を導入したポリアスパラギン酸誘導体(PA−APMPA)の合成と紫外線吸収曲線の測定
APMPAの使用量を5.4g(こはく酸イミド単位に対して20モル%)、TEAの使用量を2.2gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアスパラギン酸誘導体を合成し11.7gのPA−APMPAを得た。得られたPA−APMPAのMwは69000で水に溶解した。また得られたPA−APMPAの50ppm水溶液は250〜330nmに吸収があった。吸収曲線は図1に示す。
【実施例5】
【0080】
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)10モル%を導入したポリアスパラギン酸誘導体(PA−APMPA)の合成と紫外線吸収曲線の測定
APMPAの使用量を2.7g(こはく酸イミド単位に対して10モル%)、TEAの使用量を1.1gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアスパラギン酸誘導体を合成し16.4gのPA−APMPAを得た。得られたPA−APMPAのMwは76000で水に溶解した。また得られたPA−APMPAの50ppm水溶液は250〜330nmに吸収があった。吸収曲線は図1に示す。
【実施例6】
【0081】
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)を導入したポリアスパラギン酸誘導体(PA−APMPA)の紫外線遮断試験
実施例1で得られたPA−APMPAの0.4mg/ml、2mg/ml、10mg/mlの各濃度の水溶液を調製し、対照の水を含めて4点のサンプルをフィルム上の0.38cmの面積に各2点ずつ40μl添付し乾燥した。UVラベルシートの上に各サンプルを塗膜したフィルムを乗せ、308nmの光を5分照射し、UVラベルシートが感光したかどうかを観察した。この結果、PA−APMPA2mg/ml以上で紫外線を遮断する能力が発揮され、10mg/ml以上では完全に遮断した。結果を図2に示す。着色のない部分が紫外線を遮断したことを示す。
【0082】
[合成例2]
ポリマー末端にオレイル基を導入したポリコハク酸イミドの合成
酸無水物法によりPSIへの脂肪族炭化水素基の導入を行った。反応槽内でオレイン酸(1.2ml)とペプチド合成用DMF(7ml)を室温で混合し、反応槽を−15℃前後でコントロールしたドライアイス−アセトニトリル冷媒中で冷やした後、窒素気流下、N−メチルモルホリン(0.4ml)を添加し、次いで塩化イソブチルホルメート(0.476ml)を加えて2分間反応させた。予め、PSIをDMFで溶解した液にN−メチルモルホリン(0.4ml)を反応槽内に滴下した。反応温度を−15℃に保ちながら30分間反応した後、室温で60分間反応を行った。反応液をメタノールに排出し晶析を行い、生じた沈殿物をろ過してオレイル化ポリこはく酸イミド(o−PSI)を得た。
【0083】
[合成例3]
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)を導入したポリこはく酸イミド−パラメトキシけい皮酸(PSI−pMCA)複合体の合成
PSI (分子量:2500;0.1g)を0.5mlのDMFに溶解した。別途p−メトキシけい皮酸(pMCA;13mg)を130μlのジメチルスルホキシド(以下DMSOと略記する)に溶解した。また、EDC(10mg)をDMSO(300μl)に溶解した。これらをよく混ぜ、室温で1時間放置して反応させた。反応液に20倍量のエタノールを加えて晶析し沈殿物を得た。得られた沈殿物は乾燥機にて乾燥し、PSI−pMCAを得た。
【0084】
[合成例4]
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)を導入したオレイル化ポリこはく酸イミド−パラメトキシけい皮酸(o−PSI−pMCA)複合体の合成
合成例2で得られたo−PSI (分子量:2500;0.1g)を0.5mlのDMFに溶解した。別途pMCA13mgを130μlのDMSOに溶解した。また、EDC(10mg)をDMSO(300μl)に溶解した。これらをよく混ぜ、室温で1時間放置して反応させた。反応液に20倍量のエタノールを加えて晶析し沈殿物を得た。得られた沈殿物は乾燥機にて乾燥し、o−PSI−pMCAを得た。
【実施例7】
【0085】
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)及びアルキル基を導入したポリアスパラギン酸誘導体(o−PA−pMCA−アルキル基)の合成と水溶性試験
合成例4で得られたo−PSI−pMCA複合体(0.1g)をDMF(0.5ml)に溶解した。また、アルキルアミン(ブチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン)を複合体に対して等モル、又は3倍モル、又は9倍モルとなるようにDMSOに溶解した。上記のo−PSI−pMCA複合体溶液及び各アルキルアミン溶液とトリエチルアミン/DMF溶液(200mg/ml)をアルキルアミンと等モルとなるように混合し、70℃に加熱して12〜72時間反応させた。アルキルアミンの結合量はHPLCにより未反応のアルキルアミンを定量することで算定した。反応物を加水分解し、晶析により精製し、o−PA−pMCA−アルキル基複合体とした。
【0086】
それぞれの複合体におけるアルキル基の導入率、ならびに水溶性について表1に示す。アルキル基の炭素数が増えるほど、また導入率が高くなるほど水への溶解性が低くなった。
【0087】
【表1】

【実施例8】
【0088】
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)を導入したオレイル化ポリアスパラギン酸−パラメトキシけい皮酸−アルキル(o−PA−pMCA−アルキル基)複合体の皮膚定着性評価
実施例7で得られたo−PA−pMCA−アルキル基複合体の皮膚定着性の評価は、複合体をミニブタ皮膚に塗布後、水による洗浄により回収される複合体を定量することにより行った。ミニブタ摘出皮膚(日本チャールズリバーより入手)は添付された手順書に従い、皮下部分を取り除いた後、皮膚表面をキムワイプに浸したPBS(Phosphate Buffer Saline)およびアセトン/エーテル(=1:1)で処置した。1×1cm四方にマジックで印を付け、複合体サンプルを水に溶解または懸濁させ、13μg/13μL/1cm、または、130μg/13μL/1cmとなるように皮膚に添加して軽く摺り込み、1時間室温に放置して乾燥させた。50μLの水を複合体を塗布した皮膚表面に滴下し、ピペッティングしながら洗浄し、洗浄液を回収した。回収液を希釈して分光光度計により310nmの吸光度を測定することで、回収された複合体量を算定し、添加量から差し引くことで定着量を算定した。各複合体について、3回の独立した試験にから得られた定着率の平均値とその標準偏差を表2に示した。この結果から、複合体の疎水性が高まることにより、水での洗浄に対する抵抗性が大きくなった。
【0089】
[実験例1]
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)を導入したポリアスパラギン酸−パラメトキシけい皮酸(PA−pMCA)複合体の合成と皮膚定着性評価
合成例3で得られたPSI−pMCAを水酸化ナトリウム溶液を用いて加水分解し、PA−pMCA複合体を得た。
pMCAのPSIへの結合率の算出は、未反応のpMCA量をHPLCにより検出することで行った。合成された複合体の回収率は80%以上、活性成分の導入効率は90%以上であった。
得られたPA−pMCA複合体を実施例8のo−PA−pMCA−アルキル基複合体に換えて皮膚定着性を評価した。結果を表2に示した。
【0090】
[実験例2]
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)を導入したオレイル化ポリアスパラギン酸−パラメトキシけい皮酸(o−PA−pMCA)複合体の合成と皮膚定着性評価
合成例4で得られたo−PSI−pMCAをを水酸化ナトリウム溶液を用いて加水分解し、それぞれ、オレイル化ポリアスパラギン酸−パラメトキシけい皮酸(o−PA−pMCA)複合体を得た。
pMCAのo−PSIへの結合率の算出は、未反応のpMCA量をHPLCにより検出することで行った。合成された複合体の回収率は80%以上、活性成分の導入効率は90%以上であった。
得られたo−PA−pMCA複合体を実施例8のo−PA−pMCA−アルキル基複合体に換えて皮膚定着性を評価した。結果を表2に示した。
【0091】
【表2】

【実施例9】
【0092】
p−メトキシけい皮酸誘導体(紫外線吸収性機能分子)を導入したポリアスパラギン酸−パラメトキシけい皮酸誘導体(PA−APMPA)複合体の皮膚洗浄性評価
実施例6で調製したPA−APMPAの0.4mg/ml、2mg/ml、10mg/mlの各濃度の水溶液調製し、豚皮表面の0.38cmの面積に40μl添付する以外は実施例8の同様に操作し皮膚洗浄性を評価した。この結果、各サンプルは2回の洗浄で殆どが流れ落ちた。結果を図3に示す。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、生体適合性に優れたアミノ酸を原料とした特定の構造単位を有するポリアミノ酸誘導体またはこれを含有する組成物が紫外線吸収作用を有し、水をはじめとする各種溶剤に溶解することで、化粧品や外用剤における種々の剤、例えば日焼止め、化粧水、整髪剤を初めとする紫外線対策に必要とされる剤形全般に配合することができ、かつ高い生体適合性と生分解性を併せ持つポリアミノ酸誘導体またはその組成物を提供することができる。
本発明により得られる紫外線吸収剤は、化粧料または外用剤に含有させることもできる。
【0094】
本発明の化粧料、即ち、紫外線吸収を有するポリアミノ酸誘導体または組成物の配合先は、化粧料一般、具体的には化粧水、保湿液、洗顔オイル、クレンジングオイル、クレンジングミルク、クレンジングローション、マッサージオイル、モイスチャークリーム、シェービングオイル、シェービングローション、シェービングムース、日焼け止めローション、日焼け用オイル、ボディーローション、ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアートリートメント、養毛オイル、ヘアオイル、ヘアムース、香油、ヘアリキッド、セットローション、ヘアスプレー、ヘアブリーチ、カラーリンス、カラースプレー、パーマネントウェーブ液、ハンドローションが挙げられる。
【0095】
本発明の外用剤、即ち、紫外線吸収を有するポリアミノ酸誘導体または組成物の配合先は、外用医薬品に配合するもの全般が挙げられ、湿布剤、鎮痛剤、冷却剤、除熱剤、保温剤、消毒殺菌剤、角質軟化剤、抗真菌剤、日焼防止剤、皮膚漂白剤、皮膚着色剤、肉芽発生剤、表皮形成剤、養毛発毛剤、防臭剤、発汗抑制剤、ビタミン剤などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本願のポリアミノ酸誘導体におけるAPMPA導入率と吸光度(UV吸収曲線)との関係について説明した図である。
【図2】本願のポリアミノ酸誘導体におけるAPMPA導入量と紫外線遮断能力との関係について説明した図である。
【図3】本願のポリアミノ酸誘導体における皮膚洗浄性評価について説明した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能分子がポリアミノ酸誘導体分子に結合しているポリアミノ酸誘導体。
【請求項2】
機能分子が生体機能分子である請求項1記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項3】
機能分子が、化粧料および/または外用剤成分に適用される機能分子であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項4】
ポリアミノ酸誘導体が、化粧料および/または外用剤成分に適用されるポリアミノ酸誘導体であることを特徴とする請求項3記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項5】
波長240〜400nm間で任意の波長の光を吸収する請求項1〜4の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項6】
機能分子が、前記ポリアミノ酸誘導体に接触した液体に溶出しないことを特徴とする請求項5記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項7】
ポリアミノ酸誘導体が水溶性である請求項5または6記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項8】
ポリアミノ酸誘導体が、紫外線を遮断及び/または吸収することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項9】
下記一般式(I)乃至(III)
【化1】

【化2】

【化3】

(式中、Rは波長240〜400nm間で任意の波長の光を吸収する化合物の誘導体残基を示し、Rはヒドロキシ基またはヘテロ原子を含んでも構わない炭素原子数1〜20の不飽和または飽和炭化水素基を示し、Xは酸素原子、窒素原子およびイオウ原子から選択され、Yは水素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種以上の元素を示し、mは1〜2の整数を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表されるα型、β型又はγ型ポリアミノ酸単量体単位から構成され且つ一般式(I)の単量体単位を少なくとも1単位以上含む請求項5〜8の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項10】
ポリアミノ酸誘導体が、ポリアスパラギン酸誘導体である請求項5〜9の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項11】
前記一般式(I)におけるRが、けい皮酸誘導体残基、サリチル酸誘導体残基、安息香酸誘導体残基、ベンゾフェノン誘導体残基、ジベンゾイルメタン誘導体残基、ベンズイミダゾール誘導体残基、トリアジン誘導体残基、カンファースルホン酸誘導体残基およびトリアゾール誘導体残基からなる群から選択される少なくとも1種類を含む請求項9記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項12】
前記一般式(II)におけるRが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルケニル基、ヒドロキシアルキニル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルケニル基、アルコキシアルキニル基、アミノアルキル基、アミノアルケニル基、アミノアルキニル基、アルキルアミノアルキル基、アルキルアミノアルケニル基及びアルキルアミノアルキニル基からなる群から選択される少なくとも1種類を含む請求項9または11記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項13】
一般式(I)の単量体単位の含有量により紫外線吸収強度を制御することを特徴とする請求項9〜12の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体。
【請求項14】
請求項1〜13の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体を含有してなるポリアミノ酸誘導体組成物。
【請求項15】
請求項1〜13の何れかに記載のポリアミノ酸誘導体または請求項14記載のポリアミノ酸誘導体組成物を含有することを特徴とする紫外線吸収剤。
【請求項16】
請求項15記載の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項17】
請求項15記載の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−154111(P2007−154111A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354158(P2005−354158)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】