機能素子
【課題】本発明の課題は、製造適性に優れ、均一な面内出力が得られる改良された機能素子、特に改良された有機電界発光素子が提供することであり、特に改良された有機電界発光素子を提供することである。
【解決手段】基板上に、一対の電極3,4と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層11と、前記電極の少なくとも一方に電流を入力するための端子3a,3bを配してなる機能素子1であって、前記電極間に絶縁物12を含有し、該絶縁物の密度が前記端子からの距離が遠い部分でより小さいか、あるいは、前記少なくとも一方の電極に切り欠け部を有し、前記端子からの距離が遠くなるに従い電極面積に対する切り欠け部面積比率が小さいことを特徴とする機能素子。
【解決手段】基板上に、一対の電極3,4と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層11と、前記電極の少なくとも一方に電流を入力するための端子3a,3bを配してなる機能素子1であって、前記電極間に絶縁物12を含有し、該絶縁物の密度が前記端子からの距離が遠い部分でより小さいか、あるいは、前記少なくとも一方の電極に切り欠け部を有し、前記端子からの距離が遠くなるに従い電極面積に対する切り欠け部面積比率が小さいことを特徴とする機能素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能素子に関する。特に有機電解発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能素子、特に有機電解発光素子が開発されている。
有機電解発光素子には、電流を通じることによって励起され発光する薄膜材料が用いられており、低電圧で高輝度の発光が得られるために、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い潜在用途を有し、それらの分野でデバイスの薄型化、軽量化、小型化、および低消費電力などの利点を有する。このため、将来の電子ディスプレイ市場の主役としての期待が大きい。しかしながら、実用的にこれらの分野で従来のディスプレイに代わって用いられるためには、発光輝度と色調、広い使用環境条件下での耐久性、低価格化、および大量生産性など多くの技術改良が課題となっている。
【0003】
線状光源の有機電界発光素子が要望されている。例えば液晶用バックライトやイメージセンサーなどのための白色光源(例えば、特許文献1参照。)、走査露光用あるいは画像読み取り用光源(例えば、特許文献2参照。)としてストライプ電極を利用した線状有機電界発光素子が開示されている。しかしながら、電極端子からの距離が遠くなるほど電圧低下が起こるために発光強度が低下し、均一な明るさを得ることが出来ないという基本的な問題を有している。この問題は特に面発光を利用する場合に、大きな解決すべき課題である。
例えば、有機発光層の厚みを端子から遠くなるほど厚くして発光量を増強して、電圧低下により発光強度低下を補償する試みが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。あるいは、補助配線を設けて、端子からの距離が遠くなるほど補助配線による電流が多く供給されるようにして、電圧低下を補償する試みも提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、これらのいずれも素子構成を複雑にし、現実的な素子製造適性に欠ける。従って、より実現性のある改良手段が望まれる。
【特許文献1】特開2003−51380号公報
【特許文献2】特開2005−260821号公報
【特許文献3】特開平11−40362号公報
【特許文献4】特開2002−156633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、製造適性に優れ、均一な面内出力が得られる改良された機能素子を提供することであり、特に改良された有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
<1> 基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極の少なくとも一方に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極間に絶縁物を含有し、電極面積に対する該絶縁物の面積比率が前記端子からの距離が遠くなるに従い、次第に小さくなることを特徴とする機能素子。
<2> 前記絶縁物が不連続相を形成して含有されていることを特徴とする<1>に記載の機能素子。
<3> 前記絶縁物を含有する層は前記絶縁物が不連続相を形成し、かつ、導電性物質が連続相を形成している層構成を特徴とする<2>に記載の機能素子。
<4> 前記電極の少なくとも一方がストライプ状であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の機能素子。
<5> 前記機能素子が有機電界発光素子であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の機能素子。
<6> 前記絶縁物が、電気抵抗が100Ω以上の有機物または無機物であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の機能素子。
<7> 前記絶縁物が、感光性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の機能素子。
<8>
前記絶縁物が、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素、および炭化珪素からなる群から選ばれたものであることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載の機能素子。
<9>
前記絶縁物が、該絶縁物の数及び/又は面積を変えて密度分布がつけられていることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載の機能素子。
<10> 基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極の少なくとも一方の電極に切り欠け部を有し、前記端子からの距離が遠くなるに従い電極面積に対する切り欠け部面積比率が小さいことを特徴とする機能素子。
<11> 前記電極の少なくとも一方がストライプ状であることを特徴とする<10>に記載の機能素子。
<12> 前記電極の一方がストライプ状で、他方が平面状であり、該平面状電極上に前記切り欠け部を有することを特徴とする<11>に記載の機能素子。
<13> 前記ストライプ状電極を複数配列して有し、該複数配列に対応して、前記平面状電極上に、前記切り欠け部を複数配列して有することを特徴とする<12>に記載の機能素子。
<14> 前記ストライプ状電極上に前記切り欠け部を有することを特徴とする<11>に記載の機能素子。
<15> 前記ストライプ状電極上に前記切り欠け部を複数配列して有することを特徴とする<14>に記載の機能素子。
<16> 前記機能素子が有機電界発光素子であることを特徴とする<10>〜<15>のいずれか1項に記載の機能素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、製造適性に優れ、均一な面内出力が得られる改良された機能素子が提供される。特に改良された有機電界発光素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の態様
本発明の第1の態様に係る機能素子は、基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極の少なくとも一方に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極間に絶縁物を含有し、該絶縁物の密度が前記端子からの距離が近い部分より遠い部分でより小さいことを特徴とする。好ましくは、前記絶縁物は前記電極間に不連続相を形成して存在し、より好ましくは連続相を形成する導電性物質、および不連続相を形成する前記絶縁物を含有する層として存在する。
【0008】
本発明の第1の態様に係る素子は、絶縁物が端子からの距離が離れるほどその分布密度が低くなるので、電圧降下を補償して面内で均一な電流密度が得られるため、出力機能が均一に得られる。
例えば面発光素子の場合、面全体に渉って均一な発光強度を得ることが出来る。
また、絶縁物を含む層は、導電物質を連続相として、絶縁物を不連続相として含有する層であって、その形成手段は例えばフォトリソグラフィーにより絶縁物の量を距離に応じて変化させるなどのより容易に製造可能な手段より選ぶことができ、生産性上も優れている。
【0009】
前記絶縁物を含有する層が前記電極間に配された層であり、好ましくは前記電極の少なくとも一方がストライプ状である。
好ましくは前記機能素子が有機電界発光素子である。
【0010】
1.絶縁物
本発明における絶縁物は電極間に含有され、不連続相を形成し、かつ前記絶縁物の密度が前記端子からの距離が近い部分より遠い部分でより少なく分布する。好ましくは、導電性物質からなる連続相と前記絶縁物よりなる不連続相より構成される。
好ましくは、前記絶縁物を含有する層が前記電極と前記機能層との間に配される。
【0011】
1)絶縁物
<素材の説明>
本発明に用いられる絶縁物は、電気抵抗が100Ω以上の有機物または無機物であることが好ましく、より好ましくは、電気抵抗が数MΩ以上の有機物または無機物である。
−有機素材−
有機絶縁材料として用いられる従来公知の素材を利用することができる。好ましくは、感光性樹脂もしくは熱硬化性樹脂であり、溶融もしくは溶剤に溶解して充填後、紫外線や可視光線あるいは加熱により硬化させて物理的強度の強い膜が形成される。
感光性樹脂もしくは熱硬化性樹脂としては、特に限定されることは無く、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。中でも水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましい。
有機絶縁層の形成方法は特に限定されることはなく、樹脂を塗布した後、フォトリソグラフィー法により所定のパターンを得る方法、或いはディスペンサーを用いて直接所定のパターンを得る方法等が挙げられる。
【0012】
−無機絶縁素材−
本発明に用いられる無機絶縁層の素材としては、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素、および炭化珪素が好ましく用いられる。
本発明に用いられる無機絶縁層は、CVD法、イオンプレーティング法、スパッタリング法もしくは蒸着法により形成することが出来る。
【0013】
<密度分布>
機能層を有する素子は電極端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性がわかれば機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もることができ、電圧降下の相対比に対応した密度で絶縁物を前記一対の電極間に電圧降下の大きいほど密度を低く形成すれば良い。少なくとも一方の電極端子からの距離が離れるほど絶縁物密度を低くすることにより、電圧降下による電流密度分布を補償して面内の出力を均一にすることが出来る。例えば面発光素子の場合、面全体に渉って均一な発光強度を得ることが出来る。
【0014】
絶縁物の密度分布における最大密度と最低密度の値およびそれらの差は、上記したように電極端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性がわかれば機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もることができるので、見積もられた電圧降下の分布に対応した密度とすることが好ましい。絶縁物の密度分布を形成するにあたり例えば下記に示すような方法で密度分布をつけることが好ましい。
・端子からの距離に応じて同一面積の絶縁物の数で分布をつける。
・絶縁物を同一数にして面積を変え分布をつける。
・数、面積両方で分布をつける。
また絶縁物の厚さは積層する有機層と同等程度以上であることが好ましい。
【0015】
2)導電性物質
本発明においては、絶縁物が不連続に分布し、該絶縁物の間隙を導電性物質が埋め、該導電性物質が連続相を形成していることが好ましい。本発明に用いられる導電性物質は、機能素子に用いられるいかなる機能素材であっても良い。好ましくは発光素子に用いられる有機物もしくは無機物より選ばれ、好ましくは、電気抵抗が数10Ω以下の有機物または無機物である。
【0016】
<導電性物質層の形成方法>
本発明における導電性物質からなる連続相は、機能素子の機能層を設ける通常の方法によって設けることができる。
例えば、絶縁物層を設けた後に導電性物質を蒸着等の手段で絶縁物層の上に沈積させると、導電性物質が絶縁物の上およびその間隙を埋めることにより、導電性物質層を形成することが出来る。
あるいは、絶縁物と導電性物質を共蒸着し、その比率を端子からの距離に応じて変化させることにより形成することもできる。
【0017】
2.有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子は、発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、ブロック層、電子注入層、および正孔注入層などの従来知られている有機化合物層を有しても良い。
【0018】
以下、詳細に説明する。
1)層構成
<電極>
本発明の有機電界発光素子の一対の電極は、少なくとも一方は透明電極であり、もう一方の電極は透明であっても、非透明であっても良い。
<有機化合物層の構成>
前記有機化合物層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電極間に形成されるのが好ましい。
有機化合物層の形状、大きさ、および厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0020】
以下に各層について詳細に説明する。
2)正孔輸送層
本発明に用いられる正孔輸送層は正孔輸送材を含む。前記正孔輸送材としては正孔を輸送する機能、もしくは陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているもので有れば特に制限されることはなく用いることが出来る。本発明に用いられる正孔輸送材としては、低分子正孔輸送材、および高分子正孔輸送材のいずれも用いることができる。
本発明に用いられる正孔輸送材の具体例として、例えば以下の材料を挙げることができる。
【0021】
カルバゾ−ル誘導体、トリアゾ−ル誘導体、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、イミダゾ−ル誘導体、ポリアリ−ルアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリ−ルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、およびポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
正孔輸送層の厚みとしては、200nmを越えると駆動電圧が上昇することがあり、10nm未満であると該発光素子が短絡することがあるので、10nm〜200nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。
【0023】
3)正孔注入層
本発明おいては、正孔輸送層と陽極の間に正孔注入層を設けることができる。
正孔注入層とは、陽極から正孔輸送層に正孔を注入しやすくする層であり、具体的には前記正孔輸送材の中でイオン化ポテンシャルの小さな材料が好適に用いられる。例えばフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、およびスターバースト型トリアリールアミン化合物等を挙げることができ、好適に用いることができる。
正孔注入層の膜厚は、1nm〜30nmが好ましい。
【0024】
4)発光層
本発明に用いられる発光層は、少なくとも一種の発光材料を含み、必要に応じて正孔輸送材、電子輸送材、ホスト材を含んでもよい。
本発明に用いられる発光材料としては特に限定されることはなく、蛍光発光材料または燐光発光材料のいずれも用いることができる。発光効率の点から燐光発光材料が好ましい。
【0025】
蛍光発光材料としては、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、およびポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
燐光発光材料としては特に限定されることはないが、オルトメタル化金属錯体、又はポルフィリン金属錯体が好ましい。
【0027】
上記オルトメタル化金属錯体とは、例えば山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」150頁〜232頁、裳華房社(1982年発行)やH.Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、71〜77頁、135〜146頁、Springer−Verlag社(1987年発行)等に記載されている化合物群の総称である。該オルトメタル化金属錯体を発光材料として発光層に用いることは、高輝度で発光効率に優れる点で有利である。
【0028】
上記オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては、種々のものがあり、上記文献にも記載されているが、その中でも好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、および2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有してもよい。また、上記オルトメタル化金属錯体は、上記配位子のほかに、他の配位子を有していてもよい。
【0029】
本発明で用いるオルトメタル化金属錯体は、Inorg Chem.,1991年,30号,1685頁、同1988年,27号,3464頁、同1994年,33号,545頁、Inorg.Chim.Acta,1991年,181号,245頁、J.Organomet.Chem.,1987年,335号,293頁、J.Am.Chem.Soc.1985年,107号,1431頁等、種々の公知の手法で合成することができる。
上記オルトメタル化錯体の中でも、三重項励起子から発光する化合物が本発明においては発光効率向上の観点から好適に使用することができる。
【0030】
また、ポルフィリン金属錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。
燐光発光材料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、蛍光発光材料と燐光発光材料を同時に用いてもよい。
【0031】
ホスト材とは、その励起状態から、蛍光発光材料または燐光発光材料へエネルギー移動を起こし、その結果、蛍光発光材料または燐光発光材料を発光させる機能を有する材料のことである。
【0032】
ホスト材としては、励起子エネルギーを発光材料にエネルギー移動させる、発光材料の会合を防ぐ等の機能を有している化合物ならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、具体的にはカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、およびポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ホスト材の発光層における含有量としては0質量%〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは0質量%〜99.0質量%である。
【0033】
5)ブロック層
本発明においては、発光層と電子輸送層との間にブロック層を設けることができる。ブロック層とは発光層で生成した励起子の拡散を抑制する層であり、また正孔が陰極側に突き抜けることを抑制する層である。
【0034】
ブロック層に用いられる材料は、電子輸送層より電子を受け取り、発光層にわたす事のできる材料であれば特に限定されることはなく、一般的な電子輸送材を用いることができる。例えば以下の材料を挙げることができる。トリアゾ−ル誘導体、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
6)電子輸送層
本発明においては電子輸送材を含む電子輸送層を設けることができる。
電子輸送材としては電子を輸送する機能、もしくは陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば制限されることはなく、前記ブロック層の説明時に挙げた電子輸送材を好適に用いることができる。
前記電子輸送層の厚みとしては、10nm〜200nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。
【0036】
前記厚みが、200nmを越えると駆動電圧が上昇し、10nm未満であると該発光素子が短絡するおそれがあるため、10nm〜200nmが好ましい。
【0037】
7)電子注入層
本発明おいては、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を設けることができる。
電子注入層とは、陰極から電子輸送層に電子を注入しやすくする層であり、具体的にはフッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム等のリチウム塩、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属塩、酸化リチウム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、または酸化マグネシウム等の絶縁性金属酸化物等を好適に用いることができる。
電子注入層の膜厚は0.1nm〜5nmが好ましい。
【0038】
8)有機化合物層の形成方法
前記有機化合物層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、ディッピング、スピンコ−ト法、ディップコ−ト法、キャスト法、ダイコ−ト法、ロ−ルコ−ト法、バ−コ−ト法、またはグラビアコ−ト法等の湿式成膜法いずれによっても好適に成膜することができる。
中でも発光効率、耐久性の点から乾式法が好ましい。
【0039】
次に、本発明の有機電界発光素子に用いられる基板と電極について説明する。
9)基板
本発明に用いられる基板の材料としては、第一の基板および第二の基板ともに水分を透過させない材料又は水分透過率の極めて低い材料が好ましく、また、前記有機化合物層から発せられる光を散乱乃至減衰等させることのない材料が好ましい。具体的例として、例えばYSZ(ジルコニア安定化イットリウム)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、アリルジグリコ−ルカ−ボネ−ト、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、およびポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の合成樹脂等の有機材料、などが挙げられる。
前記有機材料の場合、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性、低吸湿性等に優れていることが好ましい。これらの中でも、前記透明電極の材料が該透明電極の材料として好適に使用される酸化錫インジウム(ITO)である場合には、該酸化錫インジウム(ITO)との格子定数の差が小さい材料が好ましい。これらの材料は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、前記形状としては、板状である。前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0041】
基板は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいが、前記発光層から発せられる光を散乱あるいは減衰等させることがない点で、無色透明であるのが好ましい。
【0042】
基板には、その表面又は裏面(前記透明電極側)に透湿防止層(ガスバリア層)を設けるのが好ましい。前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。該透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
基板には、さらに必要に応じて、ハ−ドコ−ト層、およびアンダ−コ−ト層などを設けてもよい。
【0043】
10)陽極
本発明に用いられる陽極としては、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0044】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。具体例としては、アンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0045】
陽極は例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、該陽極の形成は、直流あるいは高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。また陽極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式成膜法に従って陽極を形成することができる。
【0046】
陽極の前記発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、該陽極は、前記基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0047】
なお、前記陽極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0048】
陽極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μmであり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。
陽極は、無色透明であっても、有色透明であってもよく、該陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。この透過率は、分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0049】
陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シ−エムシ−刊(1999)に詳述があり、これらを本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した陽極が好ましい。
【0050】
11)陰極
本発明に用いることの出来る陰極としては、通常、前記有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0051】
陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、および電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、またはCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0052】
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、又はアルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金若しくは混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0053】
陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されていて、これらを本発明に適用することができる。
【0054】
陰極の形成法は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、前記陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0055】
陰極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0056】
陰極の有機電界発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができるが、有機化合物層上に形成されるのが好ましい。この場合、該陰極は、前記有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と有機化合物層との間に前記アルカリ金属又は前記アルカリ土類金属のフッ化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで設けてもよい。
なお、該誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレ−ティング法等により形成することができる。
【0057】
陰極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μmであり、50nm〜1μmが好ましい。
陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、前記陰極の材料を1nm〜10nmの厚みに薄く成膜し、更に前記ITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0058】
3.素子構造
本発明における素子の構成を図面により説明する。
【0059】
図1は本発明の第1の態様に係る機能素子の一例を示す概念図である。図1(A)は平面概念図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A’断面の概念図である。機能を説明するための概念図であって、基板、封止等の保護層など直接本発明の機能の説明に関係しない部材は省略してある。
基板上にストライプ状に陽極電極3を配し、該陽極電極3は端子部3aと3bとを有する。陽極3上には不連続に絶縁物12を配し、両端の陽極電極端子3a,3bからの距離が遠ざかるにつれて絶縁物密度が小さくなるよう配されている。
陽極電極3と陰極4との間に導電性物質11を有する。該導電性物質11は絶縁物12の間隙を埋め連続相を形成している。4aは陰極端子である。両極3,4間に電圧を印加するストライプ状陽極電極3と陰極電極4とによって挟持された発光領域6で発光する。
【0060】
図2は本発明の機能素子のストライプ状陽極電極上に配された絶縁物の1つの密度パターンを示す概念図である。陽極電極3上に端子部3aと3bを除いて不連続に絶縁物12を配し、該絶縁物の密度が両端子部3a,3bからの距離が遠くなるに従い小さくなる。絶縁物12は楕円形で示されているが、この楕円とその大きさは絶縁物の密度の大小を概念的に示すものであって、本発明における絶縁物の形状が特に限定されるものではない。例えば円形や楕円形の他に長方形/正方形などの矩形であったり、幾何学的形状であっても、不定形であっても構わない。電極端子からの距離、電極抵抗、機能素子のI−V特性および機能性素子形状により生じる電圧降下から見積られる電圧降下の分布に対応して、電圧降下の大きい箇所では絶縁物密度が低く配される。
絶縁物12の間隙は導電性物質11によって埋められ、該導電性物質11が連続相を形成している。
【0061】
図3は図2の絶縁物の密度パターンを有する機能素子の陽極端子部からの距離と絶縁物密度(相対比)の関係を示す概念図である。
横軸の左端と右端は陽極電極の端子部3aと3bである。縦軸は端子部における絶縁物密度を1.0としたときの相対密度である。
【0062】
図4は絶縁物の別の密度パターンを示す概念図である。ストライプ状陽極電極上に2列の絶縁物密度分布を有する。
【0063】
図5は絶縁物のさらに別の密度パターンを示す概念図である。ストライプ状陽極電極上に複数列の絶縁物密度分布を有する。
ここで示したのは絶縁物の密度分布をつけるための一例であり、特に上記に限定されるものではない。
【0064】
(樹脂封止層)
本発明の機能素子は、樹脂封止層により、大気との接触により酸素や水分による素子性能の劣化を抑制することが好ましい。
<素材>
樹脂封止層の樹脂素材としては、特に限定されることはなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、またはエステル系樹脂等を用いることができるが、中でも水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、または光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
<作製方法>
樹脂封止層の形成方法は特に限定されることはなく、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着または熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法が挙げられる。
<膜厚み>
樹脂封止層の厚みは1μm以上、1mm以下が好ましい。更に好ましくは5μm以上、100μm以下であり、最も好ましくは10μm以上50μm以下である。これよりも薄いと、第2の基板を装着時に上記無機膜を損傷する恐れがある。またこれよりも厚いと電界発光素子自体の厚みが厚くなり、有機電界発光素子の特徴である薄膜性を損なうことになる。
【0065】
(封止接着剤)
本発明に用いられる封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
<素材>
前記封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、中でも光硬化型エポキシ系接着剤が好ましい。
【0066】
また、上記材料にフィラーを添加することも好ましい。
封止剤に添加されているフィラーとしては、SiO2、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)またはSiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。フィラーの添加により、封止剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、および耐湿性が向上する。
【0067】
<乾燥剤>
封止接着剤は乾燥剤を含有しても良い。乾燥剤としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、または酸化ストロンチウムが好ましい。
封止接着剤に対する乾燥剤の添加量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05質量%以上15質量%以下である。これよりも少ないと、乾燥剤の添加効果が薄れることになり、またこれよりも多い場合には封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になるおそれがあるため、0.01質量%〜20質量%が好ましい。
<封止接着剤の処方>
・ポリマー組成、濃度、
封止接着剤としては特に限定されることはなく、前記のものを用いることができる。例えば光硬化型エポキシ系接着剤としては長瀬ケムテック(株)製のXNR5516を挙げることができる。そこに直接前記乾燥剤を添加し、分散せしめれば良い。
・厚み
封止接着剤の塗布厚みは1μm以上1mm以下であることが好ましい。これよりも薄いと封止接着剤を均一に塗れなくなり、またこれよりも厚いと、水分が侵入する道筋が広くなるおそれがあるため、塗布厚みは1μm〜1mmが好ましい。
<封止方法>
本発明においては、上記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより機能素子を得ることができる。
【0068】
第2の態様
本発明の第2の態様に係る機能素子は、基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極の少なくとも一方に切り欠け部を有し、該切り欠け部面積が前記端子からの距離が遠くなるに従い切り欠け部の面積比率が小さいことを特徴とする。電極、機能層間で電圧降下の影響をうけるものであれば、前記機能素子の形状は特に問わない。端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性がわかれば機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もることができ、電圧降下の相対比に対応して切り欠け部を作製することができる。
【0069】
本発明の素子は、少なくとも一方の電極面積が端子からの距離が離れるほど大きくなるので、電圧降下による電流密度分布を補償して面内の出力が均一に得られる。例えば面発光素子の場合、面全体に渉って均一な発光強度を得ることが出来る。
また、電極に切り欠け部を設けるだけであり、例えば電極を蒸着などにより設ける際にマスクキングすることで容易に製造可能であり、生産性上も優れている。
【0070】
好ましくは前記機能層の少なくとも1層が発光層である。好ましくは前記機能素子が有機電界発光素子である。
【0071】
1.有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子は、発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、ブロック層、電子注入層、および正孔注入層などの従来知られている有機化合物層を有しても良い。
【0072】
以下、詳細に説明する。
1)層構成
<電極>
本発明の有機電界発光素子の一対の電極は、少なくとも一方は透明電極であり、もう一方の電極は透明であっても、非透明であっても良い。
<有機化合物層の構成>
前記有機化合物層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一対の電極間に形成されれば良い。有機化合物層の形状、面積、大きさ、および厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0073】
なお、2)正孔輸送層、3)正孔注入層、4)発光層、5)ブロック層、6)電子輸送層、7)電子注入層、8)有機化合物層の形成方法、及び9)基板については、前記第1の態様と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
10)陽極
本発明の第2の態様に用いられる陽極としては、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有しており、かつ、陽極で切り欠け部を形成する場合は端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性から機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もり、電圧降下の相対比に対応して切り欠け部を作製する。切り欠け部の形成方法は下記に示すように適宜選択することができる。
【0075】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。具体例としては、アンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0076】
陽極は例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、該陽極の形成は、直流あるいは高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。また陽極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式成膜法に従って行うことができる。
【0077】
陽極の前記発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、該陽極は、前記基板における一方の表面の全体に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0078】
前記陽極のパタ−ニングは上記したように端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性から機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もり、電圧降下の相対比に対応するように電極面積を計算し切り欠け部を形成する。切り欠け部の形成は、具体的にはフォトリソグラフィ−などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0079】
陽極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μmであり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。
陽極は、無色透明であっても、有色透明であってもよく、該陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。この透過率は、分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0080】
陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シ−エムシ−刊(1999)に詳述があり、これらを本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した陽極が好ましい。
【0081】
11)陰極
本発明に用いることの出来る陰極としては、通常、前記有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有しておりかつ、陰極で切り欠け部を形成する場合は端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性から機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もり、電圧降下の相対比に対応して切り欠け部を作製する。切り欠け部の形成方法は下記に示すように適宜選択することができる。
【0082】
陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、および電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、またはCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0083】
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ度類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、又はアルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金若しくは混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0084】
陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されていて、これらを本発明に適用することができる。
【0085】
陰極の形成法は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、前記陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0086】
陰極のパタ−ニングは、上記したように端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性から機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もり、電圧降下の相対比に対応するように電極面積を計算し切り欠け部を形成する。具体的にはフォトリソグラフィ−などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0087】
陰極の有機電界発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができるが、有機化合物層上に形成されるのが好ましい。この場合、該陰極は、前記有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と有機化合物層との間に前記アルカリ金属又は前記アルカリ土類金属のフッ化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで設けてもよい。
なお、該誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレ−ティング法等により形成することができる。
【0088】
陰極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μmであり、50nm〜1μmが好ましい。
陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、前記陰極の材料を1nm〜10nmの厚みに薄く成膜し、更に前記ITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0089】
2.切り欠け部の構造
本発明における素子の構成を図面により説明する。
【0090】
図8は本発明の第2の態様に係る機能素子の一例を示す概念図である。図8(A)は平面概念図であり、図8(B)は図8(A)のA−A’断面の概念図である。いずれも機能を説明するための概念図であって、基板、封止等の保護層など直接本発明の機能の説明に関係しない部材は省略してある。
基板上にストライプ状に陽極電極23を配し、該陽極電極23は端子部23aと23bとを有する。陽極上には切り欠け部を設け、該切り欠け部は両端の陽極電極端子からの距離が遠ざかるにつれて切り欠け面積が小さくなるよう配されている。
陽極電極23と陰極24との間に機能層32を有する。24aは陰極端子である。両電極間に電圧を印加するとストライプ状陽極23と陰極24とによって挟持された発光領域26で発光する。
【0091】
図9は本発明の機能素子のストライプ状陽極電極上に配された切り欠け部の1つの面積パターンを示す概念図である。陽極電極23上に端子部23aと23bを除いて不連続に切り欠け部31を配し、該切り欠け面積比率が両端子部23a,23bからの距離とともに小さくなる。切り欠け面積比率は、電極面積に対する切り欠け部面積の比率である。切り欠け部は楕円形で示されているが、この楕円とその大きさは切り欠け面積の大小を概念的に示すものであって、本発明における切り欠け部の形状はこれに限定されるものではない。
電極端子からの距離、電極抵抗、機能素子のI−V特性および機能性素子形状により生じる電圧降下から見積られる電圧降下の分布に対応して、電圧降下の大きい箇所では切り欠け面積を低くする。
切り欠け部間の間隙は導電性の機能層32によって埋められ、該導電性機能層32が連続相層を形成している。
【0092】
図10は図9の切り欠けの面積パターンを有する機能素子の陽極端子部からの距離と電極面積比(発光面積比)の関係を示す概念図である。
電極面積比は、切り欠けが全くない場合の面積に対する、切り欠け部を設けた場合の電極面積の比率である。
横軸の左端と右端は陽極電極の端子部23aと23bである。縦軸は電極面積比であって、陽極電極の存在する箇所で発光するので、発光面積比に対応する。
【0093】
図11は切り欠けの別の面積パターンを示す概念図である。ストライプ状陽極電極上に2列の切り欠け部の面積分布を有する。
【0094】
図12は切り欠けのさらに別の面積パターンを示す概念図である。ストライプ状陽極電極上に複数列の切り欠け部の面積分布を有し、該ストライプ状電極の端子部以外の辺部において中心部より切り欠け面積比率を高く配して有する。これにより、ストライプの長辺部から中心部に向かっても副次的に生じる電圧降下がさらに改良される。
【0095】
陽極電極に設ける切り欠け部の形状はどのような形状でもかまわないが、電圧降下の相対比に対応するように電極面積を計算し切り欠け部を形成する方が好ましい。また、切り欠け部が目視で認識されることが問題になる場合は、〜数100μm以下の大きさで形成しその集合体にすることが好ましい。
【0096】
図13は本発明の機能素子の別の態様で、陰極電極に切り欠けを設けた素子の概念図である。ストライプ状陽極23に対応して平面状陰極24の対向する位置に切り欠け部31を設けている。切り欠け面積は、陽極端子部23aおよび23bより遠くに位置するほど小さい。
【0097】
図14は別の切り欠け部のパターンを示す概念図である。ストライプ状陽極に対応して平面状陰極の対向する位置に2列の切り欠け部を設け、それぞれの面積が端子部より遠い位置ほど小さく設けられている。
【0098】
図15に示す態様では、陰極電極の各切り欠けを複数の小サイズの切り欠けの集合体で構成している。さらにストライプ状電極の辺部より中心部において切り欠け面積をより小さく設けている。これにより、ストライプの長辺部から中心部に向かって生じる電圧降下による輝度ムラが改良される。
【0099】
陰極電極に設ける切り欠け部の形状はどのような形状でもかまわないが、電圧降下の相対比に対応するように電極面積を計算し切り欠け部を形成する方が好ましい。また、切り欠け部が目視で認識されることが問題になる場合は、〜数100μm以下の大きさで形成しその集合体にすることが好ましい。
【0100】
<切り欠け部の形成方法>
陽極に切り欠け部を形成する場合は、例えば、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などで前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、前記形成法にて基板上に均一に成膜した後、フォトリソグラフィー及びエッチングによりストライプ形状を形成する。ストライプ形状を形成した後、切り欠け部をフォトリソグラフィー及びエッチングにより形成する。
また、陰極に切り欠け部を形成する場合はマスクを重ね合わせて切り欠け部を形成することができる。
【0101】
3.その他の素子構成部材
(樹脂封止層)
本発明の機能素子は樹脂封止層により大気との接触により、酸素や水分による素子性能の劣化を抑制することが好ましい。
樹脂封止層の樹脂素材、作製方法、膜厚みは前記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
(封止接着剤)
本発明に用いられる封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
封止接着剤の材料、フィラー、乾燥剤、封止接着剤の処方、封止方法も前記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【実施例】
【0103】
以下に実施例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に記載する実施例によって制限されるものではない。
【0104】
実施例1
1.本発明の第1の態様に係る有機発光素子の作製
(ストライプ電極の形成)
無アルカリ基板上に、ITOからなる陽極電極を、スパッタリング法により200nmの膜厚に成膜し、ウェットエッチング法により幅100μm、電極間の間隔100μm、長さ50cmのストライプ状に形成した。
上記ストライプ電極の両端各3.5cmを端子部とした。
【0105】
(絶縁層の形成)
上記形状と陽極端子からの距離、電極抵抗、および機能性素子のI−V特性から電圧降下を見積もり、得られた電圧降下の分布に対応して、電圧降下が高い所ほど絶縁物密度を低くして絶縁層を設けた。絶縁層は感光性樹脂(ノボラック系樹脂)を用い、フォトリソグラフィー法により形成し、膜厚は1μmとした。
【0106】
(有機EL層の形成)
次いで、所定の位置に開口部を有する蒸着マスクを用いて有機EL層を堆積した。
この場合の有機EL層は、層構成及び厚さは、例えば、30nmのMTDATA〔4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェルアミン〕からなる正孔注入層、20nmのα−NPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−〔1,1’−ビフェニル〕4,4’−ジアミン)からなる正孔輸送層、30nmのホストAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノニナート)アルミニウム)に発光材料t(npa)py(1,3,6,8−テトラ〔N−(ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ピレンをドープした発光層、20nmのAlq3からなる電子輸送層を順次真空蒸着して形成した。
次いで、所定の位置に開口部を有する上部電極用蒸着マスクを用いて有機EL層を覆うように、Alからなる上部電極を形成することにより有機EL素子1を作製した。
【0107】
(比較の有機EL素子Aの作製)
有機EL素子1において、絶縁層を除いてその他は有機EL素子1と同様にして有機EL素子Aを作製した。
【0108】
2.性能評価項目および結果
輝度ムラ評価装置を用い、ライン内での輝度ムラを評価した。駆動条件としては陽極の両端に180V電圧を印加した。
輝度ムラ測定結果を図6および図7に示した。図6は比較の有機EL素子Aについての測定結果を示す。図7は本発明の有機EL素子1についての測定結果を示す。横軸の0点は陽極端子部の一端であり、430mmの点がもう一端の位置である。これらの間が発光領域である。
図6と図7の結果より、絶縁物がない場合、端子部に対して両端より最も離れた中央部付近では端子部に近い部分に比べて約60%以上輝度が低下するのに対して、本発明の絶縁物層を設けることによって全領域で輝度ムラを5%以内に少なくすることができることがわかる。
【0109】
実施例2
1.本発明の第2の態様に係る素子の作製
(ストライプ電極の形成)
無アルカリ基板上に、ITOからなる陽極電極を、スパッタリング法により200nmの膜厚に成膜し、ウェットエッチングにより幅100μmで間隔100μm、長さ50cmのストライプ状に形成した。
上記ストライプ電極の両端各3.5cmを電極端子部とした。
【0110】
(有機EL層の形成)
次いで、所定の位置に開口部を有する蒸着マスクを用いて有機EL層を堆積した。
この場合の有機EL層は、層構成及び厚さは、例えば、30nmのMTDATA〔4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェルアミン〕からなる正孔注入層、20nmのα−NPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−〔1,1’−ビフェニル〕4,4’−ジアミン)からなる正孔輸送層、30nmのホストAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノニナート)アルミニウム)に発光材料t(npa)py(1,3,6,8−テトラ〔N−(ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ピレンをドープした発光層、20nmのAlq3からなる電子輸送層を順次真空蒸着して形成した。
【0111】
(平面状陰極の形成)
次いで、所定の位置に開口部を有する上部電極用蒸着マスクを用いて有機EL層を覆うように、Alからなる上部電極を形成した。本発明の素子21ではさらにストライプ状陽極電極と対向した位置に下記の切り欠け部を設けた。
・素子21:Alを陽極に対向した陰極部(発光部)にはストライプ状陽極電極の端子からの距離が遠くなるほど切り欠け面積を小さくした。面積パターンは、陽極端子からの距離、電極抵抗、および機能性素子のI−V特性から電圧降下を見積もり、得られた電圧降下の分布に対応して、電圧降下が高い所ほど切り欠け面積を小さくした。
・比較の素子B:切り欠けの無い均一な陰極電極を蒸着した。
【0112】
2.性能評価
(発光強度分布の測定)
測定は輝度ムラ評価装置を用い、ライン内での輝度ムラを評価した。駆動条件としては陽極の両端に180V電圧を印加した。
輝度ムラ測定結果を図16および図17に示した。横軸の0点は陽極端子部の一端であり、430mmの点がもう一端の位置である。これらの間が発光領域である。
図16は比較の素子Bについての測定結果であり、両端の端子部付近の輝度に対して、端子部から最も離れた中央部付近の輝度が60%以上低下した。一方、本発明の素子1は端子部付近および中央部ともほぼ等しい輝度を示し、輝度ムラを5%以内であった。このように電圧降下に対応した面積で切り欠け部を電極に設置することによりに輝度ムラを著しく改良することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の態様に係る機能素子の概念図である。
【図2】陰極電極上の絶縁物の1つの密度パターンを示す概念図である。
【図3】機能素子の陽極端子からの距離と絶縁物密度比の関係を示す概念図である。
【図4】絶縁物の別の密度パターンを示す概念図である。
【図5】絶縁物の別の密度パターンを示す概念図である。
【図6】絶縁物層を有しない比較の有機EL素子の輝度ムラの測定図である。
【図7】本発明の絶縁物層を密度分布して有する有機EL素子の輝度ムラの測定図である。
【図8】本発明の第2の態様に係る機能素子の概念図である。
【図9】陽極電極に切り欠け部を設けた1つのパターンを示す概念図である。
【図10】本発明の機能素子の発光面積と陽極端子からの距離の関係を示す概念図である。
【図11】陽極電極の別の切り欠けパターンを示す概念図である。
【図12】陽極電極の別の切り欠けパターンを示す概念図である。
【図13】陰極電極に設けられた切り欠けパターンを示す概念図である。
【図14】陰極電極に設けられた別の切り欠けパターンを示す概念図である。
【図15】陰極電極に設けられた別の切り欠けパターンを示す概念図である。
【図16】切り欠け部を有しない比較の有機EL素子の輝度ムラの測定図である。
【図17】本発明の切り欠け部有する有機EL素子の輝度ムラの測定図である。
【符号の説明】
【0114】
1:機能素子
3:陽極電極
3a、3b:陽極電極端子部
4:陰極
4a:陰極端子部
6:発光領域
11:導電性物質
12:絶縁物
21:機能素子
23:陽極
23a、23b:陽極端子
24:陰極
24a:陰極端子
26:発光領域
31:切り欠け部
32:機能層
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能素子に関する。特に有機電解発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能素子、特に有機電解発光素子が開発されている。
有機電解発光素子には、電流を通じることによって励起され発光する薄膜材料が用いられており、低電圧で高輝度の発光が得られるために、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い潜在用途を有し、それらの分野でデバイスの薄型化、軽量化、小型化、および低消費電力などの利点を有する。このため、将来の電子ディスプレイ市場の主役としての期待が大きい。しかしながら、実用的にこれらの分野で従来のディスプレイに代わって用いられるためには、発光輝度と色調、広い使用環境条件下での耐久性、低価格化、および大量生産性など多くの技術改良が課題となっている。
【0003】
線状光源の有機電界発光素子が要望されている。例えば液晶用バックライトやイメージセンサーなどのための白色光源(例えば、特許文献1参照。)、走査露光用あるいは画像読み取り用光源(例えば、特許文献2参照。)としてストライプ電極を利用した線状有機電界発光素子が開示されている。しかしながら、電極端子からの距離が遠くなるほど電圧低下が起こるために発光強度が低下し、均一な明るさを得ることが出来ないという基本的な問題を有している。この問題は特に面発光を利用する場合に、大きな解決すべき課題である。
例えば、有機発光層の厚みを端子から遠くなるほど厚くして発光量を増強して、電圧低下により発光強度低下を補償する試みが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。あるいは、補助配線を設けて、端子からの距離が遠くなるほど補助配線による電流が多く供給されるようにして、電圧低下を補償する試みも提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、これらのいずれも素子構成を複雑にし、現実的な素子製造適性に欠ける。従って、より実現性のある改良手段が望まれる。
【特許文献1】特開2003−51380号公報
【特許文献2】特開2005−260821号公報
【特許文献3】特開平11−40362号公報
【特許文献4】特開2002−156633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、製造適性に優れ、均一な面内出力が得られる改良された機能素子を提供することであり、特に改良された有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
<1> 基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極の少なくとも一方に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極間に絶縁物を含有し、電極面積に対する該絶縁物の面積比率が前記端子からの距離が遠くなるに従い、次第に小さくなることを特徴とする機能素子。
<2> 前記絶縁物が不連続相を形成して含有されていることを特徴とする<1>に記載の機能素子。
<3> 前記絶縁物を含有する層は前記絶縁物が不連続相を形成し、かつ、導電性物質が連続相を形成している層構成を特徴とする<2>に記載の機能素子。
<4> 前記電極の少なくとも一方がストライプ状であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の機能素子。
<5> 前記機能素子が有機電界発光素子であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の機能素子。
<6> 前記絶縁物が、電気抵抗が100Ω以上の有機物または無機物であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の機能素子。
<7> 前記絶縁物が、感光性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の機能素子。
<8>
前記絶縁物が、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素、および炭化珪素からなる群から選ばれたものであることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載の機能素子。
<9>
前記絶縁物が、該絶縁物の数及び/又は面積を変えて密度分布がつけられていることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載の機能素子。
<10> 基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極の少なくとも一方の電極に切り欠け部を有し、前記端子からの距離が遠くなるに従い電極面積に対する切り欠け部面積比率が小さいことを特徴とする機能素子。
<11> 前記電極の少なくとも一方がストライプ状であることを特徴とする<10>に記載の機能素子。
<12> 前記電極の一方がストライプ状で、他方が平面状であり、該平面状電極上に前記切り欠け部を有することを特徴とする<11>に記載の機能素子。
<13> 前記ストライプ状電極を複数配列して有し、該複数配列に対応して、前記平面状電極上に、前記切り欠け部を複数配列して有することを特徴とする<12>に記載の機能素子。
<14> 前記ストライプ状電極上に前記切り欠け部を有することを特徴とする<11>に記載の機能素子。
<15> 前記ストライプ状電極上に前記切り欠け部を複数配列して有することを特徴とする<14>に記載の機能素子。
<16> 前記機能素子が有機電界発光素子であることを特徴とする<10>〜<15>のいずれか1項に記載の機能素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、製造適性に優れ、均一な面内出力が得られる改良された機能素子が提供される。特に改良された有機電界発光素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の態様
本発明の第1の態様に係る機能素子は、基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極の少なくとも一方に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極間に絶縁物を含有し、該絶縁物の密度が前記端子からの距離が近い部分より遠い部分でより小さいことを特徴とする。好ましくは、前記絶縁物は前記電極間に不連続相を形成して存在し、より好ましくは連続相を形成する導電性物質、および不連続相を形成する前記絶縁物を含有する層として存在する。
【0008】
本発明の第1の態様に係る素子は、絶縁物が端子からの距離が離れるほどその分布密度が低くなるので、電圧降下を補償して面内で均一な電流密度が得られるため、出力機能が均一に得られる。
例えば面発光素子の場合、面全体に渉って均一な発光強度を得ることが出来る。
また、絶縁物を含む層は、導電物質を連続相として、絶縁物を不連続相として含有する層であって、その形成手段は例えばフォトリソグラフィーにより絶縁物の量を距離に応じて変化させるなどのより容易に製造可能な手段より選ぶことができ、生産性上も優れている。
【0009】
前記絶縁物を含有する層が前記電極間に配された層であり、好ましくは前記電極の少なくとも一方がストライプ状である。
好ましくは前記機能素子が有機電界発光素子である。
【0010】
1.絶縁物
本発明における絶縁物は電極間に含有され、不連続相を形成し、かつ前記絶縁物の密度が前記端子からの距離が近い部分より遠い部分でより少なく分布する。好ましくは、導電性物質からなる連続相と前記絶縁物よりなる不連続相より構成される。
好ましくは、前記絶縁物を含有する層が前記電極と前記機能層との間に配される。
【0011】
1)絶縁物
<素材の説明>
本発明に用いられる絶縁物は、電気抵抗が100Ω以上の有機物または無機物であることが好ましく、より好ましくは、電気抵抗が数MΩ以上の有機物または無機物である。
−有機素材−
有機絶縁材料として用いられる従来公知の素材を利用することができる。好ましくは、感光性樹脂もしくは熱硬化性樹脂であり、溶融もしくは溶剤に溶解して充填後、紫外線や可視光線あるいは加熱により硬化させて物理的強度の強い膜が形成される。
感光性樹脂もしくは熱硬化性樹脂としては、特に限定されることは無く、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。中でも水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましい。
有機絶縁層の形成方法は特に限定されることはなく、樹脂を塗布した後、フォトリソグラフィー法により所定のパターンを得る方法、或いはディスペンサーを用いて直接所定のパターンを得る方法等が挙げられる。
【0012】
−無機絶縁素材−
本発明に用いられる無機絶縁層の素材としては、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素、および炭化珪素が好ましく用いられる。
本発明に用いられる無機絶縁層は、CVD法、イオンプレーティング法、スパッタリング法もしくは蒸着法により形成することが出来る。
【0013】
<密度分布>
機能層を有する素子は電極端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性がわかれば機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もることができ、電圧降下の相対比に対応した密度で絶縁物を前記一対の電極間に電圧降下の大きいほど密度を低く形成すれば良い。少なくとも一方の電極端子からの距離が離れるほど絶縁物密度を低くすることにより、電圧降下による電流密度分布を補償して面内の出力を均一にすることが出来る。例えば面発光素子の場合、面全体に渉って均一な発光強度を得ることが出来る。
【0014】
絶縁物の密度分布における最大密度と最低密度の値およびそれらの差は、上記したように電極端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性がわかれば機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もることができるので、見積もられた電圧降下の分布に対応した密度とすることが好ましい。絶縁物の密度分布を形成するにあたり例えば下記に示すような方法で密度分布をつけることが好ましい。
・端子からの距離に応じて同一面積の絶縁物の数で分布をつける。
・絶縁物を同一数にして面積を変え分布をつける。
・数、面積両方で分布をつける。
また絶縁物の厚さは積層する有機層と同等程度以上であることが好ましい。
【0015】
2)導電性物質
本発明においては、絶縁物が不連続に分布し、該絶縁物の間隙を導電性物質が埋め、該導電性物質が連続相を形成していることが好ましい。本発明に用いられる導電性物質は、機能素子に用いられるいかなる機能素材であっても良い。好ましくは発光素子に用いられる有機物もしくは無機物より選ばれ、好ましくは、電気抵抗が数10Ω以下の有機物または無機物である。
【0016】
<導電性物質層の形成方法>
本発明における導電性物質からなる連続相は、機能素子の機能層を設ける通常の方法によって設けることができる。
例えば、絶縁物層を設けた後に導電性物質を蒸着等の手段で絶縁物層の上に沈積させると、導電性物質が絶縁物の上およびその間隙を埋めることにより、導電性物質層を形成することが出来る。
あるいは、絶縁物と導電性物質を共蒸着し、その比率を端子からの距離に応じて変化させることにより形成することもできる。
【0017】
2.有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子は、発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、ブロック層、電子注入層、および正孔注入層などの従来知られている有機化合物層を有しても良い。
【0018】
以下、詳細に説明する。
1)層構成
<電極>
本発明の有機電界発光素子の一対の電極は、少なくとも一方は透明電極であり、もう一方の電極は透明であっても、非透明であっても良い。
<有機化合物層の構成>
前記有機化合物層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電極間に形成されるのが好ましい。
有機化合物層の形状、大きさ、および厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0020】
以下に各層について詳細に説明する。
2)正孔輸送層
本発明に用いられる正孔輸送層は正孔輸送材を含む。前記正孔輸送材としては正孔を輸送する機能、もしくは陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているもので有れば特に制限されることはなく用いることが出来る。本発明に用いられる正孔輸送材としては、低分子正孔輸送材、および高分子正孔輸送材のいずれも用いることができる。
本発明に用いられる正孔輸送材の具体例として、例えば以下の材料を挙げることができる。
【0021】
カルバゾ−ル誘導体、トリアゾ−ル誘導体、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、イミダゾ−ル誘導体、ポリアリ−ルアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリ−ルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、およびポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
正孔輸送層の厚みとしては、200nmを越えると駆動電圧が上昇することがあり、10nm未満であると該発光素子が短絡することがあるので、10nm〜200nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。
【0023】
3)正孔注入層
本発明おいては、正孔輸送層と陽極の間に正孔注入層を設けることができる。
正孔注入層とは、陽極から正孔輸送層に正孔を注入しやすくする層であり、具体的には前記正孔輸送材の中でイオン化ポテンシャルの小さな材料が好適に用いられる。例えばフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、およびスターバースト型トリアリールアミン化合物等を挙げることができ、好適に用いることができる。
正孔注入層の膜厚は、1nm〜30nmが好ましい。
【0024】
4)発光層
本発明に用いられる発光層は、少なくとも一種の発光材料を含み、必要に応じて正孔輸送材、電子輸送材、ホスト材を含んでもよい。
本発明に用いられる発光材料としては特に限定されることはなく、蛍光発光材料または燐光発光材料のいずれも用いることができる。発光効率の点から燐光発光材料が好ましい。
【0025】
蛍光発光材料としては、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、およびポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
燐光発光材料としては特に限定されることはないが、オルトメタル化金属錯体、又はポルフィリン金属錯体が好ましい。
【0027】
上記オルトメタル化金属錯体とは、例えば山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」150頁〜232頁、裳華房社(1982年発行)やH.Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、71〜77頁、135〜146頁、Springer−Verlag社(1987年発行)等に記載されている化合物群の総称である。該オルトメタル化金属錯体を発光材料として発光層に用いることは、高輝度で発光効率に優れる点で有利である。
【0028】
上記オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては、種々のものがあり、上記文献にも記載されているが、その中でも好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、および2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有してもよい。また、上記オルトメタル化金属錯体は、上記配位子のほかに、他の配位子を有していてもよい。
【0029】
本発明で用いるオルトメタル化金属錯体は、Inorg Chem.,1991年,30号,1685頁、同1988年,27号,3464頁、同1994年,33号,545頁、Inorg.Chim.Acta,1991年,181号,245頁、J.Organomet.Chem.,1987年,335号,293頁、J.Am.Chem.Soc.1985年,107号,1431頁等、種々の公知の手法で合成することができる。
上記オルトメタル化錯体の中でも、三重項励起子から発光する化合物が本発明においては発光効率向上の観点から好適に使用することができる。
【0030】
また、ポルフィリン金属錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。
燐光発光材料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、蛍光発光材料と燐光発光材料を同時に用いてもよい。
【0031】
ホスト材とは、その励起状態から、蛍光発光材料または燐光発光材料へエネルギー移動を起こし、その結果、蛍光発光材料または燐光発光材料を発光させる機能を有する材料のことである。
【0032】
ホスト材としては、励起子エネルギーを発光材料にエネルギー移動させる、発光材料の会合を防ぐ等の機能を有している化合物ならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、具体的にはカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、およびポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ホスト材の発光層における含有量としては0質量%〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは0質量%〜99.0質量%である。
【0033】
5)ブロック層
本発明においては、発光層と電子輸送層との間にブロック層を設けることができる。ブロック層とは発光層で生成した励起子の拡散を抑制する層であり、また正孔が陰極側に突き抜けることを抑制する層である。
【0034】
ブロック層に用いられる材料は、電子輸送層より電子を受け取り、発光層にわたす事のできる材料であれば特に限定されることはなく、一般的な電子輸送材を用いることができる。例えば以下の材料を挙げることができる。トリアゾ−ル誘導体、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
6)電子輸送層
本発明においては電子輸送材を含む電子輸送層を設けることができる。
電子輸送材としては電子を輸送する機能、もしくは陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば制限されることはなく、前記ブロック層の説明時に挙げた電子輸送材を好適に用いることができる。
前記電子輸送層の厚みとしては、10nm〜200nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。
【0036】
前記厚みが、200nmを越えると駆動電圧が上昇し、10nm未満であると該発光素子が短絡するおそれがあるため、10nm〜200nmが好ましい。
【0037】
7)電子注入層
本発明おいては、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を設けることができる。
電子注入層とは、陰極から電子輸送層に電子を注入しやすくする層であり、具体的にはフッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム等のリチウム塩、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属塩、酸化リチウム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、または酸化マグネシウム等の絶縁性金属酸化物等を好適に用いることができる。
電子注入層の膜厚は0.1nm〜5nmが好ましい。
【0038】
8)有機化合物層の形成方法
前記有機化合物層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、ディッピング、スピンコ−ト法、ディップコ−ト法、キャスト法、ダイコ−ト法、ロ−ルコ−ト法、バ−コ−ト法、またはグラビアコ−ト法等の湿式成膜法いずれによっても好適に成膜することができる。
中でも発光効率、耐久性の点から乾式法が好ましい。
【0039】
次に、本発明の有機電界発光素子に用いられる基板と電極について説明する。
9)基板
本発明に用いられる基板の材料としては、第一の基板および第二の基板ともに水分を透過させない材料又は水分透過率の極めて低い材料が好ましく、また、前記有機化合物層から発せられる光を散乱乃至減衰等させることのない材料が好ましい。具体的例として、例えばYSZ(ジルコニア安定化イットリウム)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、アリルジグリコ−ルカ−ボネ−ト、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、およびポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の合成樹脂等の有機材料、などが挙げられる。
前記有機材料の場合、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性、低吸湿性等に優れていることが好ましい。これらの中でも、前記透明電極の材料が該透明電極の材料として好適に使用される酸化錫インジウム(ITO)である場合には、該酸化錫インジウム(ITO)との格子定数の差が小さい材料が好ましい。これらの材料は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、前記形状としては、板状である。前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0041】
基板は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいが、前記発光層から発せられる光を散乱あるいは減衰等させることがない点で、無色透明であるのが好ましい。
【0042】
基板には、その表面又は裏面(前記透明電極側)に透湿防止層(ガスバリア層)を設けるのが好ましい。前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。該透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
基板には、さらに必要に応じて、ハ−ドコ−ト層、およびアンダ−コ−ト層などを設けてもよい。
【0043】
10)陽極
本発明に用いられる陽極としては、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0044】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。具体例としては、アンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0045】
陽極は例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、該陽極の形成は、直流あるいは高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。また陽極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式成膜法に従って陽極を形成することができる。
【0046】
陽極の前記発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、該陽極は、前記基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0047】
なお、前記陽極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0048】
陽極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μmであり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。
陽極は、無色透明であっても、有色透明であってもよく、該陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。この透過率は、分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0049】
陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シ−エムシ−刊(1999)に詳述があり、これらを本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した陽極が好ましい。
【0050】
11)陰極
本発明に用いることの出来る陰極としては、通常、前記有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0051】
陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、および電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、またはCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0052】
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、又はアルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金若しくは混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0053】
陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されていて、これらを本発明に適用することができる。
【0054】
陰極の形成法は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、前記陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0055】
陰極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0056】
陰極の有機電界発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができるが、有機化合物層上に形成されるのが好ましい。この場合、該陰極は、前記有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と有機化合物層との間に前記アルカリ金属又は前記アルカリ土類金属のフッ化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで設けてもよい。
なお、該誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレ−ティング法等により形成することができる。
【0057】
陰極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μmであり、50nm〜1μmが好ましい。
陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、前記陰極の材料を1nm〜10nmの厚みに薄く成膜し、更に前記ITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0058】
3.素子構造
本発明における素子の構成を図面により説明する。
【0059】
図1は本発明の第1の態様に係る機能素子の一例を示す概念図である。図1(A)は平面概念図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A’断面の概念図である。機能を説明するための概念図であって、基板、封止等の保護層など直接本発明の機能の説明に関係しない部材は省略してある。
基板上にストライプ状に陽極電極3を配し、該陽極電極3は端子部3aと3bとを有する。陽極3上には不連続に絶縁物12を配し、両端の陽極電極端子3a,3bからの距離が遠ざかるにつれて絶縁物密度が小さくなるよう配されている。
陽極電極3と陰極4との間に導電性物質11を有する。該導電性物質11は絶縁物12の間隙を埋め連続相を形成している。4aは陰極端子である。両極3,4間に電圧を印加するストライプ状陽極電極3と陰極電極4とによって挟持された発光領域6で発光する。
【0060】
図2は本発明の機能素子のストライプ状陽極電極上に配された絶縁物の1つの密度パターンを示す概念図である。陽極電極3上に端子部3aと3bを除いて不連続に絶縁物12を配し、該絶縁物の密度が両端子部3a,3bからの距離が遠くなるに従い小さくなる。絶縁物12は楕円形で示されているが、この楕円とその大きさは絶縁物の密度の大小を概念的に示すものであって、本発明における絶縁物の形状が特に限定されるものではない。例えば円形や楕円形の他に長方形/正方形などの矩形であったり、幾何学的形状であっても、不定形であっても構わない。電極端子からの距離、電極抵抗、機能素子のI−V特性および機能性素子形状により生じる電圧降下から見積られる電圧降下の分布に対応して、電圧降下の大きい箇所では絶縁物密度が低く配される。
絶縁物12の間隙は導電性物質11によって埋められ、該導電性物質11が連続相を形成している。
【0061】
図3は図2の絶縁物の密度パターンを有する機能素子の陽極端子部からの距離と絶縁物密度(相対比)の関係を示す概念図である。
横軸の左端と右端は陽極電極の端子部3aと3bである。縦軸は端子部における絶縁物密度を1.0としたときの相対密度である。
【0062】
図4は絶縁物の別の密度パターンを示す概念図である。ストライプ状陽極電極上に2列の絶縁物密度分布を有する。
【0063】
図5は絶縁物のさらに別の密度パターンを示す概念図である。ストライプ状陽極電極上に複数列の絶縁物密度分布を有する。
ここで示したのは絶縁物の密度分布をつけるための一例であり、特に上記に限定されるものではない。
【0064】
(樹脂封止層)
本発明の機能素子は、樹脂封止層により、大気との接触により酸素や水分による素子性能の劣化を抑制することが好ましい。
<素材>
樹脂封止層の樹脂素材としては、特に限定されることはなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、またはエステル系樹脂等を用いることができるが、中でも水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、または光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
<作製方法>
樹脂封止層の形成方法は特に限定されることはなく、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着または熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法が挙げられる。
<膜厚み>
樹脂封止層の厚みは1μm以上、1mm以下が好ましい。更に好ましくは5μm以上、100μm以下であり、最も好ましくは10μm以上50μm以下である。これよりも薄いと、第2の基板を装着時に上記無機膜を損傷する恐れがある。またこれよりも厚いと電界発光素子自体の厚みが厚くなり、有機電界発光素子の特徴である薄膜性を損なうことになる。
【0065】
(封止接着剤)
本発明に用いられる封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
<素材>
前記封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、中でも光硬化型エポキシ系接着剤が好ましい。
【0066】
また、上記材料にフィラーを添加することも好ましい。
封止剤に添加されているフィラーとしては、SiO2、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)またはSiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。フィラーの添加により、封止剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、および耐湿性が向上する。
【0067】
<乾燥剤>
封止接着剤は乾燥剤を含有しても良い。乾燥剤としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、または酸化ストロンチウムが好ましい。
封止接着剤に対する乾燥剤の添加量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05質量%以上15質量%以下である。これよりも少ないと、乾燥剤の添加効果が薄れることになり、またこれよりも多い場合には封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になるおそれがあるため、0.01質量%〜20質量%が好ましい。
<封止接着剤の処方>
・ポリマー組成、濃度、
封止接着剤としては特に限定されることはなく、前記のものを用いることができる。例えば光硬化型エポキシ系接着剤としては長瀬ケムテック(株)製のXNR5516を挙げることができる。そこに直接前記乾燥剤を添加し、分散せしめれば良い。
・厚み
封止接着剤の塗布厚みは1μm以上1mm以下であることが好ましい。これよりも薄いと封止接着剤を均一に塗れなくなり、またこれよりも厚いと、水分が侵入する道筋が広くなるおそれがあるため、塗布厚みは1μm〜1mmが好ましい。
<封止方法>
本発明においては、上記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより機能素子を得ることができる。
【0068】
第2の態様
本発明の第2の態様に係る機能素子は、基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極の少なくとも一方に切り欠け部を有し、該切り欠け部面積が前記端子からの距離が遠くなるに従い切り欠け部の面積比率が小さいことを特徴とする。電極、機能層間で電圧降下の影響をうけるものであれば、前記機能素子の形状は特に問わない。端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性がわかれば機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もることができ、電圧降下の相対比に対応して切り欠け部を作製することができる。
【0069】
本発明の素子は、少なくとも一方の電極面積が端子からの距離が離れるほど大きくなるので、電圧降下による電流密度分布を補償して面内の出力が均一に得られる。例えば面発光素子の場合、面全体に渉って均一な発光強度を得ることが出来る。
また、電極に切り欠け部を設けるだけであり、例えば電極を蒸着などにより設ける際にマスクキングすることで容易に製造可能であり、生産性上も優れている。
【0070】
好ましくは前記機能層の少なくとも1層が発光層である。好ましくは前記機能素子が有機電界発光素子である。
【0071】
1.有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子は、発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、ブロック層、電子注入層、および正孔注入層などの従来知られている有機化合物層を有しても良い。
【0072】
以下、詳細に説明する。
1)層構成
<電極>
本発明の有機電界発光素子の一対の電極は、少なくとも一方は透明電極であり、もう一方の電極は透明であっても、非透明であっても良い。
<有機化合物層の構成>
前記有機化合物層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一対の電極間に形成されれば良い。有機化合物層の形状、面積、大きさ、および厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0073】
なお、2)正孔輸送層、3)正孔注入層、4)発光層、5)ブロック層、6)電子輸送層、7)電子注入層、8)有機化合物層の形成方法、及び9)基板については、前記第1の態様と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
10)陽極
本発明の第2の態様に用いられる陽極としては、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有しており、かつ、陽極で切り欠け部を形成する場合は端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性から機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もり、電圧降下の相対比に対応して切り欠け部を作製する。切り欠け部の形成方法は下記に示すように適宜選択することができる。
【0075】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。具体例としては、アンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0076】
陽極は例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、該陽極の形成は、直流あるいは高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。また陽極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式成膜法に従って行うことができる。
【0077】
陽極の前記発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、該陽極は、前記基板における一方の表面の全体に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0078】
前記陽極のパタ−ニングは上記したように端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性から機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もり、電圧降下の相対比に対応するように電極面積を計算し切り欠け部を形成する。切り欠け部の形成は、具体的にはフォトリソグラフィ−などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0079】
陽極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μmであり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。
陽極は、無色透明であっても、有色透明であってもよく、該陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。この透過率は、分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0080】
陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シ−エムシ−刊(1999)に詳述があり、これらを本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した陽極が好ましい。
【0081】
11)陰極
本発明に用いることの出来る陰極としては、通常、前記有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有しておりかつ、陰極で切り欠け部を形成する場合は端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性から機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もり、電圧降下の相対比に対応して切り欠け部を作製する。切り欠け部の形成方法は下記に示すように適宜選択することができる。
【0082】
陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、および電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、またはCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0083】
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ度類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、又はアルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金若しくは混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0084】
陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されていて、これらを本発明に適用することができる。
【0085】
陰極の形成法は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、前記陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0086】
陰極のパタ−ニングは、上記したように端子からの距離、電極抵抗、機能性素子のI−V特性から機能性素子形状により生じる電圧降下を見積もり、電圧降下の相対比に対応するように電極面積を計算し切り欠け部を形成する。具体的にはフォトリソグラフィ−などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0087】
陰極の有機電界発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができるが、有機化合物層上に形成されるのが好ましい。この場合、該陰極は、前記有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と有機化合物層との間に前記アルカリ金属又は前記アルカリ土類金属のフッ化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで設けてもよい。
なお、該誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレ−ティング法等により形成することができる。
【0088】
陰極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μmであり、50nm〜1μmが好ましい。
陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、前記陰極の材料を1nm〜10nmの厚みに薄く成膜し、更に前記ITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0089】
2.切り欠け部の構造
本発明における素子の構成を図面により説明する。
【0090】
図8は本発明の第2の態様に係る機能素子の一例を示す概念図である。図8(A)は平面概念図であり、図8(B)は図8(A)のA−A’断面の概念図である。いずれも機能を説明するための概念図であって、基板、封止等の保護層など直接本発明の機能の説明に関係しない部材は省略してある。
基板上にストライプ状に陽極電極23を配し、該陽極電極23は端子部23aと23bとを有する。陽極上には切り欠け部を設け、該切り欠け部は両端の陽極電極端子からの距離が遠ざかるにつれて切り欠け面積が小さくなるよう配されている。
陽極電極23と陰極24との間に機能層32を有する。24aは陰極端子である。両電極間に電圧を印加するとストライプ状陽極23と陰極24とによって挟持された発光領域26で発光する。
【0091】
図9は本発明の機能素子のストライプ状陽極電極上に配された切り欠け部の1つの面積パターンを示す概念図である。陽極電極23上に端子部23aと23bを除いて不連続に切り欠け部31を配し、該切り欠け面積比率が両端子部23a,23bからの距離とともに小さくなる。切り欠け面積比率は、電極面積に対する切り欠け部面積の比率である。切り欠け部は楕円形で示されているが、この楕円とその大きさは切り欠け面積の大小を概念的に示すものであって、本発明における切り欠け部の形状はこれに限定されるものではない。
電極端子からの距離、電極抵抗、機能素子のI−V特性および機能性素子形状により生じる電圧降下から見積られる電圧降下の分布に対応して、電圧降下の大きい箇所では切り欠け面積を低くする。
切り欠け部間の間隙は導電性の機能層32によって埋められ、該導電性機能層32が連続相層を形成している。
【0092】
図10は図9の切り欠けの面積パターンを有する機能素子の陽極端子部からの距離と電極面積比(発光面積比)の関係を示す概念図である。
電極面積比は、切り欠けが全くない場合の面積に対する、切り欠け部を設けた場合の電極面積の比率である。
横軸の左端と右端は陽極電極の端子部23aと23bである。縦軸は電極面積比であって、陽極電極の存在する箇所で発光するので、発光面積比に対応する。
【0093】
図11は切り欠けの別の面積パターンを示す概念図である。ストライプ状陽極電極上に2列の切り欠け部の面積分布を有する。
【0094】
図12は切り欠けのさらに別の面積パターンを示す概念図である。ストライプ状陽極電極上に複数列の切り欠け部の面積分布を有し、該ストライプ状電極の端子部以外の辺部において中心部より切り欠け面積比率を高く配して有する。これにより、ストライプの長辺部から中心部に向かっても副次的に生じる電圧降下がさらに改良される。
【0095】
陽極電極に設ける切り欠け部の形状はどのような形状でもかまわないが、電圧降下の相対比に対応するように電極面積を計算し切り欠け部を形成する方が好ましい。また、切り欠け部が目視で認識されることが問題になる場合は、〜数100μm以下の大きさで形成しその集合体にすることが好ましい。
【0096】
図13は本発明の機能素子の別の態様で、陰極電極に切り欠けを設けた素子の概念図である。ストライプ状陽極23に対応して平面状陰極24の対向する位置に切り欠け部31を設けている。切り欠け面積は、陽極端子部23aおよび23bより遠くに位置するほど小さい。
【0097】
図14は別の切り欠け部のパターンを示す概念図である。ストライプ状陽極に対応して平面状陰極の対向する位置に2列の切り欠け部を設け、それぞれの面積が端子部より遠い位置ほど小さく設けられている。
【0098】
図15に示す態様では、陰極電極の各切り欠けを複数の小サイズの切り欠けの集合体で構成している。さらにストライプ状電極の辺部より中心部において切り欠け面積をより小さく設けている。これにより、ストライプの長辺部から中心部に向かって生じる電圧降下による輝度ムラが改良される。
【0099】
陰極電極に設ける切り欠け部の形状はどのような形状でもかまわないが、電圧降下の相対比に対応するように電極面積を計算し切り欠け部を形成する方が好ましい。また、切り欠け部が目視で認識されることが問題になる場合は、〜数100μm以下の大きさで形成しその集合体にすることが好ましい。
【0100】
<切り欠け部の形成方法>
陽極に切り欠け部を形成する場合は、例えば、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などで前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、前記形成法にて基板上に均一に成膜した後、フォトリソグラフィー及びエッチングによりストライプ形状を形成する。ストライプ形状を形成した後、切り欠け部をフォトリソグラフィー及びエッチングにより形成する。
また、陰極に切り欠け部を形成する場合はマスクを重ね合わせて切り欠け部を形成することができる。
【0101】
3.その他の素子構成部材
(樹脂封止層)
本発明の機能素子は樹脂封止層により大気との接触により、酸素や水分による素子性能の劣化を抑制することが好ましい。
樹脂封止層の樹脂素材、作製方法、膜厚みは前記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
(封止接着剤)
本発明に用いられる封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
封止接着剤の材料、フィラー、乾燥剤、封止接着剤の処方、封止方法も前記第1の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【実施例】
【0103】
以下に実施例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に記載する実施例によって制限されるものではない。
【0104】
実施例1
1.本発明の第1の態様に係る有機発光素子の作製
(ストライプ電極の形成)
無アルカリ基板上に、ITOからなる陽極電極を、スパッタリング法により200nmの膜厚に成膜し、ウェットエッチング法により幅100μm、電極間の間隔100μm、長さ50cmのストライプ状に形成した。
上記ストライプ電極の両端各3.5cmを端子部とした。
【0105】
(絶縁層の形成)
上記形状と陽極端子からの距離、電極抵抗、および機能性素子のI−V特性から電圧降下を見積もり、得られた電圧降下の分布に対応して、電圧降下が高い所ほど絶縁物密度を低くして絶縁層を設けた。絶縁層は感光性樹脂(ノボラック系樹脂)を用い、フォトリソグラフィー法により形成し、膜厚は1μmとした。
【0106】
(有機EL層の形成)
次いで、所定の位置に開口部を有する蒸着マスクを用いて有機EL層を堆積した。
この場合の有機EL層は、層構成及び厚さは、例えば、30nmのMTDATA〔4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェルアミン〕からなる正孔注入層、20nmのα−NPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−〔1,1’−ビフェニル〕4,4’−ジアミン)からなる正孔輸送層、30nmのホストAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノニナート)アルミニウム)に発光材料t(npa)py(1,3,6,8−テトラ〔N−(ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ピレンをドープした発光層、20nmのAlq3からなる電子輸送層を順次真空蒸着して形成した。
次いで、所定の位置に開口部を有する上部電極用蒸着マスクを用いて有機EL層を覆うように、Alからなる上部電極を形成することにより有機EL素子1を作製した。
【0107】
(比較の有機EL素子Aの作製)
有機EL素子1において、絶縁層を除いてその他は有機EL素子1と同様にして有機EL素子Aを作製した。
【0108】
2.性能評価項目および結果
輝度ムラ評価装置を用い、ライン内での輝度ムラを評価した。駆動条件としては陽極の両端に180V電圧を印加した。
輝度ムラ測定結果を図6および図7に示した。図6は比較の有機EL素子Aについての測定結果を示す。図7は本発明の有機EL素子1についての測定結果を示す。横軸の0点は陽極端子部の一端であり、430mmの点がもう一端の位置である。これらの間が発光領域である。
図6と図7の結果より、絶縁物がない場合、端子部に対して両端より最も離れた中央部付近では端子部に近い部分に比べて約60%以上輝度が低下するのに対して、本発明の絶縁物層を設けることによって全領域で輝度ムラを5%以内に少なくすることができることがわかる。
【0109】
実施例2
1.本発明の第2の態様に係る素子の作製
(ストライプ電極の形成)
無アルカリ基板上に、ITOからなる陽極電極を、スパッタリング法により200nmの膜厚に成膜し、ウェットエッチングにより幅100μmで間隔100μm、長さ50cmのストライプ状に形成した。
上記ストライプ電極の両端各3.5cmを電極端子部とした。
【0110】
(有機EL層の形成)
次いで、所定の位置に開口部を有する蒸着マスクを用いて有機EL層を堆積した。
この場合の有機EL層は、層構成及び厚さは、例えば、30nmのMTDATA〔4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェルアミン〕からなる正孔注入層、20nmのα−NPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−〔1,1’−ビフェニル〕4,4’−ジアミン)からなる正孔輸送層、30nmのホストAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノニナート)アルミニウム)に発光材料t(npa)py(1,3,6,8−テトラ〔N−(ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ピレンをドープした発光層、20nmのAlq3からなる電子輸送層を順次真空蒸着して形成した。
【0111】
(平面状陰極の形成)
次いで、所定の位置に開口部を有する上部電極用蒸着マスクを用いて有機EL層を覆うように、Alからなる上部電極を形成した。本発明の素子21ではさらにストライプ状陽極電極と対向した位置に下記の切り欠け部を設けた。
・素子21:Alを陽極に対向した陰極部(発光部)にはストライプ状陽極電極の端子からの距離が遠くなるほど切り欠け面積を小さくした。面積パターンは、陽極端子からの距離、電極抵抗、および機能性素子のI−V特性から電圧降下を見積もり、得られた電圧降下の分布に対応して、電圧降下が高い所ほど切り欠け面積を小さくした。
・比較の素子B:切り欠けの無い均一な陰極電極を蒸着した。
【0112】
2.性能評価
(発光強度分布の測定)
測定は輝度ムラ評価装置を用い、ライン内での輝度ムラを評価した。駆動条件としては陽極の両端に180V電圧を印加した。
輝度ムラ測定結果を図16および図17に示した。横軸の0点は陽極端子部の一端であり、430mmの点がもう一端の位置である。これらの間が発光領域である。
図16は比較の素子Bについての測定結果であり、両端の端子部付近の輝度に対して、端子部から最も離れた中央部付近の輝度が60%以上低下した。一方、本発明の素子1は端子部付近および中央部ともほぼ等しい輝度を示し、輝度ムラを5%以内であった。このように電圧降下に対応した面積で切り欠け部を電極に設置することによりに輝度ムラを著しく改良することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の態様に係る機能素子の概念図である。
【図2】陰極電極上の絶縁物の1つの密度パターンを示す概念図である。
【図3】機能素子の陽極端子からの距離と絶縁物密度比の関係を示す概念図である。
【図4】絶縁物の別の密度パターンを示す概念図である。
【図5】絶縁物の別の密度パターンを示す概念図である。
【図6】絶縁物層を有しない比較の有機EL素子の輝度ムラの測定図である。
【図7】本発明の絶縁物層を密度分布して有する有機EL素子の輝度ムラの測定図である。
【図8】本発明の第2の態様に係る機能素子の概念図である。
【図9】陽極電極に切り欠け部を設けた1つのパターンを示す概念図である。
【図10】本発明の機能素子の発光面積と陽極端子からの距離の関係を示す概念図である。
【図11】陽極電極の別の切り欠けパターンを示す概念図である。
【図12】陽極電極の別の切り欠けパターンを示す概念図である。
【図13】陰極電極に設けられた切り欠けパターンを示す概念図である。
【図14】陰極電極に設けられた別の切り欠けパターンを示す概念図である。
【図15】陰極電極に設けられた別の切り欠けパターンを示す概念図である。
【図16】切り欠け部を有しない比較の有機EL素子の輝度ムラの測定図である。
【図17】本発明の切り欠け部有する有機EL素子の輝度ムラの測定図である。
【符号の説明】
【0114】
1:機能素子
3:陽極電極
3a、3b:陽極電極端子部
4:陰極
4a:陰極端子部
6:発光領域
11:導電性物質
12:絶縁物
21:機能素子
23:陽極
23a、23b:陽極端子
24:陰極
24a:陰極端子
26:発光領域
31:切り欠け部
32:機能層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極の少なくとも一方に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極間に絶縁物を含有し、該絶縁物の密度が前記端子からの距離が遠くなるに従い、次第に小さくなることを特徴とする機能素子。
【請求項2】
前記絶縁物が不連続相を形成して含有されていることを特徴とする請求項1に記載の機能素子。
【請求項3】
前記絶縁物を含有する層は前記絶縁物が不連続相を形成し、かつ、導電性物質が連続相を形成していることを特徴とする請求項2に記載の機能素子。
【請求項4】
前記電極の少なくとも一方がストライプ状であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項5】
前記機能素子が有機電界発光素子であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項6】
前記絶縁物が、電気抵抗が100Ω以上の有機物または無機物であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項7】
前記絶縁物が、感光性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項8】
前記絶縁物が、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素、および炭化珪素からなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項9】
前記絶縁物が、該絶縁物の数及び/又は面積を変えて密度分布がつけられていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項10】
基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極の少なくとも一方の電極に切り欠け部を有し、前記端子からの距離が遠くなるに従い電極面積に対する切り欠け部面積比率が小さいことを特徴とする機能素子。
【請求項11】
前記電極の少なくとも一方がストライプ状であることを特徴とする請求項10に記載の機能素子。
【請求項12】
前記電極の一方がストライプ状で、他方が平面状であり、該平面状電極上に前記切り欠け部を有することを特徴とする請求項11に記載の機能素子。
【請求項13】
前記ストライプ状電極を複数配列して有し、該複数配列に対応して、前記平面状電極上に、前記切り欠け部を複数配列して有することを特徴とする請求項12に記載の機能素子。
【請求項14】
前記ストライプ状電極上に前記切り欠け部を有することを特徴とする請求項11に記載の機能素子。
【請求項15】
前記ストライプ状電極上に前記切り欠け部を複数配列して有することを特徴とする請求項14に記載の機能素子。
【請求項16】
前記機能素子が有機電界発光素子であることを特徴とする請求項10〜請求項15のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項1】
基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極の少なくとも一方に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極間に絶縁物を含有し、該絶縁物の密度が前記端子からの距離が遠くなるに従い、次第に小さくなることを特徴とする機能素子。
【請求項2】
前記絶縁物が不連続相を形成して含有されていることを特徴とする請求項1に記載の機能素子。
【請求項3】
前記絶縁物を含有する層は前記絶縁物が不連続相を形成し、かつ、導電性物質が連続相を形成していることを特徴とする請求項2に記載の機能素子。
【請求項4】
前記電極の少なくとも一方がストライプ状であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項5】
前記機能素子が有機電界発光素子であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項6】
前記絶縁物が、電気抵抗が100Ω以上の有機物または無機物であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項7】
前記絶縁物が、感光性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項8】
前記絶縁物が、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素、および炭化珪素からなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項9】
前記絶縁物が、該絶縁物の数及び/又は面積を変えて密度分布がつけられていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項10】
基板上に、一対の電極と、少なくとも該電極間に挟持され、印加電流に応じて出力が変化する機能層と、前記電極に電流を入力するための端子を配してなる機能素子であって、前記電極の少なくとも一方の電極に切り欠け部を有し、前記端子からの距離が遠くなるに従い電極面積に対する切り欠け部面積比率が小さいことを特徴とする機能素子。
【請求項11】
前記電極の少なくとも一方がストライプ状であることを特徴とする請求項10に記載の機能素子。
【請求項12】
前記電極の一方がストライプ状で、他方が平面状であり、該平面状電極上に前記切り欠け部を有することを特徴とする請求項11に記載の機能素子。
【請求項13】
前記ストライプ状電極を複数配列して有し、該複数配列に対応して、前記平面状電極上に、前記切り欠け部を複数配列して有することを特徴とする請求項12に記載の機能素子。
【請求項14】
前記ストライプ状電極上に前記切り欠け部を有することを特徴とする請求項11に記載の機能素子。
【請求項15】
前記ストライプ状電極上に前記切り欠け部を複数配列して有することを特徴とする請求項14に記載の機能素子。
【請求項16】
前記機能素子が有機電界発光素子であることを特徴とする請求項10〜請求項15のいずれか1項に記載の機能素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−294441(P2007−294441A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89029(P2007−89029)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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