説明

欠陥マーキング装置

【課題】長さ方向に搬送される長尺のシート状製品の欠陥を検査装置により検出し、ペン先の乾燥によるマーキング性の低下を招くことなく、検出された欠陥部分に油性マーキングペンを用いてマーキングを施すことができる欠陥マーキング装置を提供する。
【解決手段】長さ方向に搬送される長尺のシート状製品の欠陥を検査装置により検出し、該検査装置より搬送方向の下流側において検出された欠陥部分にマーキングを施す装置において、ペン先を封鎖するシャッターを備えた油性マーキングペン収納管に収納された油性マーキングペンによりマーキングを施し、検査装置から送られる信号に基づいて油性マーキングペン収納管のシャッターが開かれ、油性マーキングペンが押し出されてペン先によりシート状製品の欠陥部分にマーキングが施され、マーキングを施し終えたのち油性マーキングペンが引き込まれ、シャッターが閉じられることを特徴とする欠陥マーキング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥マーキング装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、長さ方向に搬送される長尺のシート状製品の欠陥を検査装置により検出し、ペン先の乾燥によるマーキング性の低下を招くことなく、検出された欠陥部分に油性マーキングペンを用いてマーキングを施すことができる欠陥マーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂フィルム、シートなどの長尺のシート状製品の製造工程では、シート状製品が搬送される工程において、検査装置により欠陥が自動的に検出され、搬送方向の下流側において検出された欠陥部分にマーキングが施され、後工程においてマーキングを指標として欠陥部分の除去又は補修が行われる。欠陥の検出とマーキングは、CCDなどの撮像手段により得られた画像を処理して欠陥を認識し、シート状製品の搬送速度と欠陥の大きさに応じて、検査装置より搬送方向の下流側にあるマーキング装置を作動させ、欠陥部分にシート状製品の長手方向と平行なマーキングを施すことにより行われる。撮像手段と計算機の進歩により、マーキング位置を正確に定めることは容易になったが、シート状製品へのマーキングは物理的な手段に頼らざるを得ないので、まだ多くの問題があり、さまざまなマーキング手段が試みられている。
例えば、シート状製品をカットして一定の形状の区画部分を切り出す際に、該区画部分に欠陥が含まれていないことを確実に保証し、かつ歩留まりの低下を抑制することができるシート状製品の欠陥マーキング方法として、欠陥部分に対し、幅方向の両側で予め定める範囲の近傍となる位置にマーキングを施すシート状製品の欠陥マーキング方法が提案され、欠陥部分にフェルトペンでマーキングしたり、インクジェット方式のマーカーを用いる方法が述べられている(特許文献1)。しかし、フェルトペンは、速乾性のインキを用いるとペン先が短時間のうちに乾燥してマーキングが困難になり、溶剤の蒸発を防ぐために遅乾性のインキを用いると、シート状製品に付着したインキが製造設備やシート状製品の他の部分に転写しやすく、転写を防ぐためには、マーキングを施したのちにシート状製品を乾燥機に通す必要が生ずる。インクジェット方式も、速乾性のインキを用いるとヘッドの詰まりを生じやすく、ヘッド先端のクリーニングを頻繁に行う必要があり、遅乾性のインキを用いると、シート状製品の乾燥が必要になる。
マーキングしたインクが滲んだり、消えたりするおそれのないマーキング方式として、シート状製品の欠陥部分に、砥石材などを用いて傷をつける方法が提案されている(特許文献2)。また、シート状物が有する欠陥をマーキングにより明示する方法として、欠陥を有する側とは反対側の面に、硬度が高い素材又は刃からなるマーキング具を用いて、刃傷、切削痕又は磨耗痕をつける方法が提案されている(特許文献3)。しかし、シート状製品に傷をつけると、その部分の強度が低下し、その後の加工工程において破断などの事故を生じやすい。また、シート状製品に傷をつけると、必ず削り屑が発生し、削り屑を製品の中に巻き込むと製品の品質が低下し、発生した削り屑を完全に除去するためには、特殊な吸引装置などを必要とし、コスト高となる。
【特許文献1】特開2001−305070号公報(第5頁)
【特許文献2】特開2002−303580号公報(第2頁、第5頁)
【特許文献3】特開2002−338111号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、長さ方向に搬送される長尺のシート状製品の欠陥を検査装置により検出し、ペン先の乾燥によるマーキング性の低下を招くことなく、検出された欠陥部分に油性マーキングペンを用いてマーキングを施すことができる欠陥マーキング装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シート状製品の欠陥部分に、ペン先を封鎖するシャッターを備えた油性マーキングペンによりマーキングを施し、検査装置より送られる信号に基づいて、シャッターの開放、油性マーキングペンの押し出しによるマーキング、油性マーキングペンの引き込み、シャッターの閉鎖をこの順で行うことにより、油性マーキングペンのペン先の乾燥を防ぎ、速乾性のインキを用いて効率的にシート状製品の欠陥部分にマーキングを施すことが可能となることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)長さ方向に搬送される長尺のシート状製品の欠陥を検査装置により検出し、該検査装置より搬送方向の下流側において検出された欠陥部分にマーキングを施す装置において、ペン先を封鎖するシャッターを備えた油性マーキングペン収納管に収納された油性マーキングペンによりマーキングを施し、検査装置から送られる信号に基づいて油性マーキングペン収納管のシャッターが開かれ、油性マーキングペンが押し出されてペン先によりシート状製品の欠陥部分にマーキングが施され、マーキングを施し終えたのち油性マーキングペンが引き込まれ、シャッターが閉じられることを特徴とする欠陥マーキング装置、
(2)シャッターの開閉をエアシリンダーの作動により行い、油性マーキングペンの押し出しと引き込みをソレノイドの作動により行う(1)記載の欠陥マーキング装置、
(3)シャッターの開閉及び油性マーキングペンの押し出しと引き込みを、それぞれ別個のソレノイドの作動により行う(1)記載の欠陥マーキング装置、及び、
(4)油性マーキングペンのインキの溶剤が、20℃における蒸気圧が0.5〜10kPaである非ハロゲン系脂肪族化合物を80重量%以上含有する(1)記載の欠陥マーキング装置、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(5)検査装置がラインセンサーである(1)記載の欠陥マーキング装置、及び、
(6)油性マーキングペンが、シート状製品の幅方向に等間隔で多数個配列され、検査装置により欠陥が検出されたとき、幅方向において欠陥に最も近い油性マーキングペンが動いてマーキングを施す(1)記載の欠陥マーキング装置、
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明の欠陥マーキング装置によれば、シート状製品の欠陥部分にマーキングを施す油性マーキングペンのペン先が乾燥することがないので、速乾性のインキを用いて、乾燥工程のない短い製造ラインで、効率的に欠陥部分にマーキングを施すことができる。マーキングの近傍の欠陥部分を目視により認識し得るときは、溶剤を用いてインキを拭き取り、欠陥部分のみを除去又は補修することができるので、シート状製品を最終製品の原材料として有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の欠陥マーキング装置は、長さ方向に搬送される長尺のシート状製品の欠陥を検査装置により検出し、該検査装置より搬送方向の下流側において検出された欠陥部分にマーキングを施す装置において、ペン先を封鎖するシャッターを備えた油性マーキングペン収納管に収納された油性マーキングペンによりマーキングを施し、検査装置から送られる信号に基づいて油性マーキングペン収納管のシャッターが開かれ、油性マーキングペンが押し出されてペン先によりシート状製品の欠陥部分にマーキングが施され、マーキングを施し終えたのち油性マーキングペンが引き込まれ、シャッターが閉じられる欠陥マーキング装置である。
【0007】
本発明装置においては、シャッターの開閉をエアシリンダーの作動により行い、油性マーキングペンの押し出しと引き込みをソレノイドの作動により行うことができる。図1は、本発明の欠陥マーキング装置の一態様の説明図である。シート状製品1は、矢印の方向に搬送されている。シート状製品が、CCDカメラ2により撮像され、検査装置3により画像処理が行われる。シート状製品に欠陥が検出されたとき、検査装置3から駆動装置4に信号が送られる。駆動装置には、油性マーキングペン収納管5に収納された油性マーキングペンを押し出し又は引き込むソレノイド6と、油性マーキングペン収納管のシャッター7を開閉するエアシリンダー8が設けられている。検査装置から駆動装置に欠陥検出の信号が送られると、エアシリンダー8が作動してシャッター7が開く。次いで、ソレノイド6が作動して油性マーキングペン収納管5の中に収納されている油性マーキングペンが押し出され、支持ロール9の上を搬送されるシート状製品の所定の位置にマーキングを施したのち、油性マーキングペンが油性マーキングペン収納管の中に引き込まれ、エアシリンダー8の作動によりシャッター7が閉じられる。ソレノイドの作動時間は20ms以下とすることができるので、油性マーキングペンの押し出しと引き込みを迅速に行い、シート状製品の欠陥を的確にマーキングすることができる。エアシリンダーの作動時間は、ソレノイドの作動時間より長いので、シート状製品に欠陥が連続して検出された場合は、一連の欠陥のマーキングが終わるまでシャッターを開いたままとし、一連の欠陥のマーキングの終了後にシャッターを閉じる。欠陥が検出されない時間帯は油性マーキングペンを収納管の中に収納し、ペン先の乾燥を防ぐので、速乾性のインキを用いることができる。
【0008】
本発明装置においては、シャッターの開閉及び油性マーキングペンの押し出しと引き込みを、それぞれ別個のソレノイドの作動により行うことができる。図2は、本発明の欠陥マーキング装置の他の態様の説明図である。シート状製品1は、矢印の方向に搬送されている。シート状製品が、CCDカメラ2により撮像され、検査装置3により画像処理が行われる。シート状製品に欠陥が検出されたとき、検査装置3から駆動装置4に信号が送られる。駆動装置には、油性マーキングペン収納管5に収納された油性マーキングペンを押し出し又は引き込むソレノイド6と、油性マーキングペン収納管のシャッター10を開閉するソレノイド11が設けられている。検査装置から駆動装置に欠陥検出の信号が送られると、ソレノイド11が作動してシャッター10が開く。次いで、ソレノイド6が作動して油性マーキングペン収納管5の中に収納されている油性マーキングペンが押し出され、支持ロール9の上を搬送されるシート状製品の所定の位置にマーキングを施したのち、油性マーキングペンが油性マーキングペン収納管の中に引き込まれ、ソレノイド11の作動によりシャッター10が閉じられる。ソレノイドの作動時間は20ms以下とすることができるので、シャッターの開閉及び油性マーキングペンの押し出しと引き込みを、それぞれ別個のソレノイドの作動により行うことにより、油性マーキングペン収納管のシャッターが開放されている時間を短縮し、ペン先の乾燥を防ぎ、速乾性のインキを用いることができる。
【0009】
本発明装置において、油性マーキングペンの移動方向に特に制限はなく、例えば、油性マーキングペンが上方より下降してシート状製品にマーキングを施したのち上方へ引き込まれる構成とすることができ、油性マーキングペンが水平方向に移動してシート状製品にマーキングを施したのち引き込まれる構成とすることもでき、油性マーキングペンが下方より上昇してシート状製品にマーキングを施したのち下方へ引き込まれる構成とすることもでき、あるいは、油性マーキングペンが移動する方向を垂直又は水平以外の任意の角度とすることもできる。油性マーキングペンの押し出しと引き込みをソレノイドの作動により行う場合は、油性マーキングペンを引き込む力はバネによるので、油性マーキングペンの移動は水平方向であることが好ましい。
本発明装置において、油性マーキングペンによりシート状製品にマーキングを施す位置に特に制限はなく、例えば、シート状製品を搬送する支持ロールとシート状製品の接線上でマーキングを施すことができ、あるいは、支持ロールとシート状製品の接線より下流側又は上流側に離れた位置でマーキングを施すこともできる。支持ロールとシート状製品の接線上でマーキングを施すと油性マーキングペンのペン先の損耗が進みやすく、支持ロールとシート状製品の接線より大きく離れた位置でマーキングを施すと安定したマーキングが困難になるので、マーキングを施す位置は、支持ロールとシート状製品の接線から1〜10mm離れた位置であることが好ましく、3〜8mm離れた位置であることがより好ましい。
【0010】
本発明装置においては、油性マーキングペンのインキの溶剤が、20℃における蒸気圧が0.5〜10kPaである非ハロゲン系脂肪族化合物を80重量%以上含有することが好ましく、油性マーキングペンのインキの溶剤が、20℃における蒸気圧が3〜9kPaである非ハロゲン系脂肪族化合物のみからなることがより好ましい。非ハロゲン系脂肪族化合物は、多くのプラスチックに対して不活性であり、シート状製品に損傷を与えることなくマーキングを施すことができる。溶媒として芳香族化合物又はハロゲン系脂肪族化合物を用いてマーキングを施すと、シート状製品に損傷を与えるおそれがあるので、溶剤が非ハロゲン系脂肪族化合物80重量%以上を含有することが好ましい。溶剤の20℃における蒸気圧が0.5kPa未満であると、インキの乾燥が遅く、製造装置やシート状製品の他の部分に転写したり、乾燥が必要となって製造ラインが複雑で長くなるおそれがある。溶剤の20℃における蒸気圧が10kPaを超えると、油性マーキングペン収納管にシャッターを備えても、溶剤の蒸発によりペン先が乾燥するおそれがある。
【0011】
20℃における蒸気圧が0.5〜10kPaである非ハロゲン系脂肪族化合物としては、例えば、ヘプタン(4.7)、オクタン(1.5)、ノナン(0.67)、メチルシクロヘキサン(4.9)などの炭化水素、エタノール(6.0)、プロパノール(1.9)、イソプロピルアルコール(4.3)、ブチルアルコール(0.73)、イソブチルアルコール(1.2)、sec−ブチルアルコール(1.7)、t−ブチルアルコール(4.1)などのアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(1.1)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(0.80)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1.0)、エチレングリコールジエチルエーテル(1.3)などのグリコールエーテル、メチルエチルケトン(9.3)、メチルプロピルケトン(1.6)、メチルブチルケトン(1.6)、メチルイソブチルケトン(2.1)、ジプロピルケトン(0.69)などのケトン、ギ酸ブチル(2.9)、ギ酸イソブチル(4.4)、酢酸プロピル(3.3)、酢酸イソプロピル(6.4)、酢酸ブチル(1.1)、酢酸イソブチル(1.7)、プロピオン酸エチル(3.7)、プロピオン酸ブチル(6.0)などのエステルなどを挙げることができる。これらの中で、アルコール及びグリコールエーテルを特に好適に用いることができる。なお、化合物名に付した括弧内の数値は、20℃における蒸気圧をkPa単位で表した値である。
【0012】
本発明装置においては、油性マーキングペンのインキの溶剤として混合溶剤を用いることができる。混合溶剤の一成分として、20℃における蒸気圧の高い溶剤を用いることにより、溶剤の蒸気圧を高めてインキに速乾性を付与することができる。20℃における蒸気圧の高い溶剤としては、例えば、メタノール(12.8)、アセトン(24.5)などを挙げることができる。混合溶剤の蒸気圧は、定温定圧気液平衡関係から求めることができる。
本発明装置においては、油性マーキングペンのインキにペンタエリスリトール脂肪酸エステルを添加することができる。油性マーキングペンのインキにペンタエリスリトール脂肪酸エステルを添加することにより、ペン先の乾燥枯渇を防いで、かすれることのない安定したマーキングを施すことができる。
【0013】
本発明装置に用いる油性マーキングペンは、ガラス板上に連続5回手書きでらせん状に筆記し、20秒後に白色度75%以上の筆記用紙を重ね、底面の直径50mm、質量500gの重りで用紙を圧着させて1分間静置し、用紙を離したときに、用紙に筆記線が転写されていないことが好ましく、同様に10秒後に筆記用紙を圧着させたときに筆記線が転写されていないことがより好ましく、同様に4秒後に筆記用紙を圧着させたときに筆記線が転写されていないことがさらに好ましい。
本発明装置に用いる油性マーキングペンのペン先の材質に特に制限はなく、繊維製ペン先又はプラスチックペン先のいずれをも用いることができる。油性マーキングペンのペン先の太さに特に制限はないが、記録された線の幅が0.3〜2.5mmであることが好ましく、1〜2mmであることがより好ましい。記録された線の幅が0.3mm未満であると、マーキングが不明瞭になる場合が生ずるおそれがある。記録された線の幅が2.5mmを超えると、筆記距離が短くなるおそれがある。本発明装置に用いる油性マーキングペンの色に特に制限はなく、検査するシート状製品の色に応じて、目視により認識しやすい色を適宜選択することができる。
【0014】
本発明装置においては、油性マーキングペンが、シート状製品の幅方向に等間隔で多数個配列され、検査装置より欠陥が検出されたとき、幅方向において欠陥に最も近い油性マーキングペンが動いてマーキングを施すことが好ましい。図3は、本発明装置の他の態様の油性マーキングペン収納管の配列を示す側面図及び上面図である。本態様においては、シート状製品の全幅にわたって、多数のエアシリンダー又はソレノイドにより駆動されるシャッターと、多数のソレノイドによって駆動される油性マーキングペンを収納した油性マーキングペン収納管5が等間隔に配列されている。
検査装置において欠陥が検出されたとき、シャッター開閉用エアシリンダー又はソレノイドにより、シート状製品の幅方向において欠陥に最も近い油性マーキングペン収納管のシャッターが開かれ、油性マーキングペン押し出し引き込みソレノイドによりシート状製品の幅方向において欠陥に最も近い油性マーキングペンが押し出されてマーキングが施される。マーキングの長さは、あらかじめ設定した値となるように検査装置において演算することが好ましい。シート状製品の欠陥が長いときは、複数個のマーキングを間欠的に施すことができる。
【0015】
本発明装置において、欠陥部分に施したマーキングを指標として、欠陥を目視により認識し得る場合は、後加工工程において、欠陥部分を除去又は補修し、さらに必要に応じて、マーキングを溶剤などを用いて拭き取ることができる。マーキングを拭き取ることにより、マーキングが施された部分も最終製品の原材料として利用することができる。図4は、本発明装置の欠陥マーキング機構の説明図である。本装置においては、油性マーキングペンのペン先A、B、C、D、…が等間隔d(mm)で多数個油性マーキングペン収納管の中に配列されている。検査装置により長尺のシート状製品12に欠陥13が検出されたとき、検査装置より搬送方向の下流側において、幅方向において欠陥に最も近い油性マーキングペンが押し出され、ペン先Bによってシート状製品にマーキング14が施される。幅方向において欠陥に最も近い油性マーキングペンが押し出されるので、マーキングと欠陥の距離はd/2(mm)以下である。欠陥を目視により認識できない場合には、長さがマーキングの長さa(mm)であり、幅がマーキングの両側にd/2(mm)ずつ離れた線で構成される長方形15の部分を除去する。欠陥はこの長方形の内部に必ず存在するので、本発明装置では、1本のマーキングのみを施し、マーキングを中央にして油性マーキングペンの間隔に等しい部分を除去することにより、欠陥部分を確実に除去することができる。
【0016】
本発明装置においては、シート状製品の幅方向に多数個配列させている油性マーキングペンの間隔は、30mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましい。油性マーキングペンの間隔を短くすることにより、欠陥部分が目視により認識できない場合に、シート状製品の除去する部分を少なくすることができる。油性マーキングペンは、インクジェット方式のマーキング装置に比べて付帯設備を必要としないので、隣接する油性マーキングペンの間隔を、油性マーキングペン収納管の太さに近いところまで狭めることができる。
【0017】
図5は、本発明装置の欠陥マーキング方式の一態様の説明図である。駆動装置から送られる信号によりエアシリンダー8が作動し、油性マーキングペン収納管のシャッター7が開かれる。次いで、油性マーキングペン押し出し引き込みソレノイド6が作動して、油性マーキングペン収納管5から油性マーキングペン16が押し出され、ペン先17により搬送されるシート状製品1にマーキングが施される。マーキングを終了すると、ソレノイドの作動により油性マーキングペンが油性マーキングペン収納管の中に引き込まれる。油性マーキングペンが引き込まれると、エアシリンダー8が作動してシャッター7が押し出されて、油性マーキングペン収納管が閉じられる。
【0018】
図6は、本発明装置の欠陥マーキング方式の他の態様の説明図である。駆動装置から送られる信号によりシャッター開閉ソレノイド11が作動し、ワイヤー18が引かれて油性マーキングペン収納管のシャッター10が開かれる。次いで、油性マーキングペン押し出し引き込みソレノイド6が作動して、油性マーキングペン収納管5から油性マーキングペン19が押し出され、ペン先20により搬送されるシート状製品1にマーキングが施される。マーキングを終了すると、ソレノイド6の作動により油性マーキングペンが油性マーキングペン収納管の中に引き込まれる。油性マーキングペンが引き込まれると、ソレノイド11が作動してワイヤー18が緩められ、シャッターがスプリングコイル21により押し出されて、油性マーキングペン収納管が閉じられる。
【0019】
本発明装置においては、検査装置として、ラインセンサー、エリアセンサーなどの固体撮像素子を備えた画像処理装置を用いることができる。これらの中で、ラインセンサーを特に好適に用いることができる。
本発明装置を用いて欠陥部分にマーキングを施すシート状製品に特に制限はないが、本発明装置は液晶用光学フィルム又はシートに対して特に好適に適用することができる。液晶表示装置などに用いられる液晶用光学フィルム又はシートは、ごく微細な欠陥であっても表示画面のムラとなって現れるので、欠陥のないことが厳しく求められる。また、液晶用光学フィルム又はシートは、最終製品としては長尺のまま用いられることがなく、長方形に裁断して用いられる場合が多いので、欠陥が発見されたときにはその部分を容易に除去することができる。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
幅1,600mm、厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの検査を行った。ポリエチレンテレフタレートフィルムの上方に、CCDカメラ8台を200mm間隔で取り付け、ポリエチレンテレフタレートフィルムの下方に、CCDカメラと対応する位置に光源を設置した。CCDカメラと光源より2.0m下流のポリエチレンテレフタレートフィルムの上方に、幅1,600mmの中にソレノイドにより作動される油性マーキングペンの収納管と、エアシリンダーにより作動される該収納管のシャッターとの組み合わせ64組を25mm間隔で備えたマーキングヘッドと、ポリエチレンテレフタレートフィルムの下方に、マーキングヘッドと対向する位置に支持ロールを設けた。
油性マーキングペンのインキの溶剤は、エタノール70重量%とプロピレングリコールモノメチルエーテル30重量%との混合溶剤とし、ペン先は繊維製で、太さ1.5mmの円柱状とした。インキの色は、カーボンブラックの配合により黒とした。
CCDカメラの撮像を処理して欠陥を検出する検査装置と、検査装置から送られる信号により、欠陥部分に最も近い油性マーキングペン収納管のシャッターを開き、油性マーキングペンを押し出す駆動装置を接続した。ポリエチレンテレフタレートフィルムを速度20m/minで搬送し、欠陥を検出してマーキングを施した。10時間に、35箇所の欠陥が検出された。欠陥はすべて微細なフィッシュアイであり、幅方向について、マーキングからの距離はすべて12.5mm以内であった。また、10時間にわたって、油性マーキングペンのペン先は乾燥することなく、安定して明瞭なマーキングを施すことができた。
【0021】
実施例2
幅1,400mm、厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの検査を行った。ポリエチレンテレフタレートフィルムの上方に、CCDカメラ7台を200mm間隔で取り付け、ポリエチレンテレフタレートフィルムの下方に、CCDカメラと対向する位置に光源を設置した。CCDカメラと光源より2.0m下流のポリエチレンテレフタレートフィルムの上方に、幅1,400mmの中にソレノイドにより作動される油性マーキングペンの収納管と、ソレノイドにより作動される該収納管のシャッターとの組み合わせ70組を20mm間隔で備えたマーキングヘッドと、ポリエチレンテレフタレートフィルムの下方に、マーキングヘッドと対向する位置に支持ロールを設けた。
油性マーキングペンのインキの溶剤は、エタノールとし、ペン先は繊維製で、太さ1.0mmの円柱状とした。インキの色は、カーボンブラックの配合により黒とした。
CCDカメラの撮像を処理して欠陥を検出する検査装置と、検査装置から送られる信号により、欠陥部分に最も近い油性マーキングペン収納管のシャッターを開き、油性マーキングペンを押し出す駆動装置を接続した。ポリエチレンテレフタレートフィルムを速度20m/minで搬送し、欠陥を検出してマーキングを施した。10時間に、41箇所の欠陥が検出された。欠陥はすべて微細なフィッシュアイであり、幅方向について、マーキングからの距離はすべて10mm以内であった。また、10時間にわたって、油性マーキングペンのペン先は乾燥することなく、安定して明瞭なマーキングを施すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の欠陥マーキング装置は、マーキング材料として油性マーキングペンを用い、平常時は油性マーキングペンをシャッターが閉じられた油性マーキングペン収納管に収納し、シート状製品に欠陥が検出されてマーキングを施すときのみシャッターが開いて油性マーキングペンが押し出される。したがって、速乾性のインキを用いてもペン先が乾燥してマーキング不良を生ずることがなく、シート状製品に施されたマーキングは常温で短時間で乾燥するので、乾燥設備などの付帯設備を必要とせず、効率的かつ経済的にシート状製品の欠陥の検査を行うことができる。また、検出された欠陥が目視により認識することができる場合は、マーキングを溶剤などを用いて拭き取ることにより、マーキングが施された箇所も最終製品の原材料として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の欠陥マーキング装置の一態様の説明図である。
【図2】本発明の欠陥マーキング装置の他の態様の説明図である。
【図3】油性マーキングペン収納管の配列を示す側面図及び上面図である。
【図4】本発明装置の欠陥マーキング機構の説明図である。
【図5】本発明装置の欠陥マーキング方式の一態様の説明図である。
【図6】本発明装置の欠陥マーキング方式の他の態様の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 シート状製品
2 CCDカメラ
3 検査装置
4 駆動装置
5 油性マーキングペン収納管
6 ソレノイド
7 シャッター
8 エアシリンダー
9 支持ロール
10 シャッター
11 ソレノイド
12 シート状製品
13 欠陥
14 マーキング
15 長方形
16 油性マーキングペン
17 ペン先
18 ワイヤー
19 油性マーキングペン
20 ペン先
21 スプリングコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に搬送される長尺のシート状製品の欠陥を検査装置により検出し、該検査装置より搬送方向の下流側において検出された欠陥部分にマーキングを施す装置において、ペン先を封鎖するシャッターを備えた油性マーキングペン収納管に収納された油性マーキングペンによりマーキングを施し、検査装置から送られる信号に基づいて油性マーキングペン収納管のシャッターが開かれ、油性マーキングペンが押し出されてペン先によりシート状製品の欠陥部分にマーキングが施され、マーキングを施し終えたのち油性マーキングペンが引き込まれ、シャッターが閉じられることを特徴とする欠陥マーキング装置。
【請求項2】
シャッターの開閉をエアシリンダーの作動により行い、油性マーキングペンの押し出しと引き込みをソレノイドの作動により行う請求項1記載の欠陥マーキング装置。
【請求項3】
シャッターの開閉及び油性マーキングペンの押し出しと引き込みを、それぞれ別個のソレノイドの作動により行う請求項1記載の欠陥マーキング装置。
【請求項4】
油性マーキングペンのインキの溶剤が、20℃における蒸気圧が0.5〜10kPaである非ハロゲン系脂肪族化合物を80重量%以上含有する請求項1記載の欠陥マーキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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