説明

欠陥検出装置、光ディスク装置及び欠陥検出方法

【課題】指紋付着等の信号振幅の減衰量が比較的小さく、欠陥領域内で振幅レベルが変動する特性を有する欠陥の検出精度を高める。
【解決手段】欠陥検出装置1は、入力されたRF信号のピークレベルを検出したピークホールド信号S1のボトムレベルを検出して得られるボトムホールド信号S2と、電圧閾値Vthとを比較回路12において比較し、欠陥検出信号を出力する。また、ピークホールド信号S1の信号レベルの減衰速度よりボトムホールド信号S2の信号レベルの減衰速度が小さくなるよう、信号S1を生成する高速ピークホールド回路10及び信号S2を生成する低速ボトムホールド回路11の減衰特性が決定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて情報再生及び情報記録の少なくとも一方を行う光ディスク装置等の情報記録再生装置において使用され、光ディスク等の情報記録媒体から再生された信号を用いて情報記録媒体の欠陥を検出する欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、レーザ光を光ディスクに照射し、光ディスクによる反射光の変化を検出することで光ディスクに記憶された情報の再生を行う。光ディスク装置には、CD−ROM、DVD−ROM等の再生専用型の光ディスクから情報の再生のみを行う装置、及び、CD−R、DVD−R等の追記型の光ディスクやCD−RW、DVD−RAM等の書き換え可能型の光ディスクに対して情報記録及び情報再生を行う装置がある。
【0003】
光ディスクに対する情報記録又は光ディスクからの情報再生を行う際には、トラッキングサーボ制御、フォーカスサーボ制御、スピンドルサーボ制御及びスレッドサーボ制御が行われる。トラッキングサーボ制御とは、光ディスクからの反射光を用いて光スポット中心と光ディスクのグルーブ中心との位置ずれを検出し、この位置すれを補正するよう駆動部を制御することにより、光ディスク上のグルーブ中心に光スポットの中心を維持する制御である。また、フォーカスサーボ制御は、光ディスクからの反射光を用いてレーザ光を集光する対物レンズの焦点位置のずれを検出し、この焦点ずれを補正するよう駆動部を制御することによって、光ディスクの上下ぶれに追随して、レーザ光を集光する対物レンズの焦点位置を光ディスクの面上に維持する制御である。スピンドルサーボ制御は、再生RF信号のデータレート、ウォブル周波数を一定とするようにスピンドル回転数を制御するものである。また、スレッドサーボ制御は、トラッキングエラー信号のDC成分に追従し、レンズ傾きの抑制、長距離シークをするための制御である。
【0004】
光ディスクには、光ディスク面へのゴミ又は指紋の付着や光ディスク面の傷等の欠陥領域が存在する場合がある。このような欠陥領域では光ディスクから正確な反射光を得られず、上述したサーボ制御を正常に行うことができない。このため、光ディスクによって反射された反射光の変化によって光ディスクの欠陥領域を検出し、欠陥領域中ではサーボ制御を欠陥領域前の状態に固定する等の対処を行って、サーボ制御の不具合を防止することが従来から行われている。また、光ディスクの欠陥領域を検出する装置及び方法は、例えば、特許文献1及び2に開示されている。
【0005】
特許文献1には、光ディスクから再生したRF信号の信号振幅に対する閾値判定を行って欠陥を検出する欠陥検出装置が開示されている。具体的には、RF信号のトップピークレベルが所定の閾値を下回る領域を欠陥領域と判定し、欠陥領域にあるときはRF信号を増幅する可変利得増幅器(VGA)のゲインを抑制する。これにより、欠陥領域脱出後の過増幅による再生信号レベルの変動に起因するトラッキングサーボ制御の不具合を防止するものである。
【0006】
特許文献2には、3ビーム法での副ビーム(±1次回折光)のトップピークレベルに対する閾値判定を行うことにより欠陥領域を検出する光ディスク装置が開示されている。
【0007】
また、RF信号等の再生信号のトップピークレベルに対して直接的に閾値判定を行う欠陥検出方法だけでなく、RF信号のトップピークレベルとRF信号のボトムピークレベルとの差分に対する閾値判定を行うもの、減衰速度の異なる2つのピークホールド回路によってRF信号のトップピークレベルをホールドすることにより2つのピークホールド信号を生成し、これら2つのピークホールド信号の差分に対する閾値判定を行う方法も行われている。
【特許文献1】特開2005−166151号公報
【特許文献2】特開2004−146013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光ディスク表面への指紋の付着による欠陥は、光ディスク面の傷等の他の欠陥に比べて、再生信号の振幅の減衰量が小さく、また、欠陥領域内での反射率の変動があるために信号振幅の減衰量が一様でないという特徴がある。このような欠陥が存在する場合に、特許文献1及び2に開示されているような再生信号のトップピークレベル対する閾値判定、又は再生信号のトップピークレベルと他の信号との差分に対する閾値判定によって欠陥の検出を行うと、欠陥領域中での反射率のムラによって再生信号のトップピークレベルが変動することにより、再生信号のトップピークレベルが欠陥領域脱出判定の閾値を超過し、これによって欠陥領域脱出と誤判定してしまう可能性がある。
【0009】
このように、従来の欠陥検出装置及び欠陥検出方法には、指紋付着等の信号振幅の減衰量が比較的小さく、欠陥領域内で振幅レベルが変動する特性を有する欠陥を正しく検出できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる欠陥検出装置は、情報記録媒体による反射光を検出することによって得られる再生信号を用いて、情報記録媒体の欠陥領域を検出する欠陥検出装置である。具体的には、前記再生信号のピークレベルを検出した第1のピークホールド信号のボトムレベルを検出して得られる第1のボトムホールド信号の信号レベルの変動に基づいて欠陥領域を検出するものであり、かつ、前記第1のピークホールド信号の信号レベルの減衰速度より前記第1のボトムホールド信号の減衰速度が小さいことを特徴とする。
【0011】
ここで再生信号とは、例えば、光ディスクから再生されるRF信号やウォブル信号等である。再生信号のピークレベルをホールドした信号(第1のピークホールド信号)をさらにボトムホールドして得られる信号(第1のボトムホールド信号)は、第1のピークホールド信号の微小な振幅変動を抑制したものとなる。したがって、第1のボトムホールド信号を用いて欠陥領域を判定することにより、欠陥領域内における再生信号や第1のピークホールド信号の微小な振幅変動に起因する欠陥領域脱出の誤検出を抑制することができる。これにより、指紋付着等の信号振幅の減衰量が比較的小さく、欠陥領域内で振幅レベルが変動する特性を有する欠陥の検出精度を向上することができる。
【0012】
本発明にかかる光ディスク装置は、上述した本発明にかかる欠陥検出装置を備え、当該欠陥検出装置によって、光ディスクの欠陥領域を検出するものである。上述したように、本発明にかかる欠陥検出装置を用いることで、欠陥領域の検出精度を向上することができる。このため、本発明にかかる欠陥検出装置が出力する欠陥検出信号を用いてトラッキングサーボ制御を行うことで、サーボ制御の安定性を向上させることができる。なお、さらに、本発明にかかる欠陥検出装置による欠陥検出結果に基づいて、光ディスクから再生されたRF信号を増幅するAGC増幅部の利得制御等を行うこととしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、欠陥の検出精度の高い欠陥検出装置及び欠陥検出方法、並びにこれらの欠陥検出装置又は欠陥検出方法を用いてサーボ制御の安定性を向上させた光ディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0015】
発明の実施の形態1.
本実施の形態にかかる欠陥検出装置1の構成を図1に示す。欠陥検出装置1は、光ディスクから再生されたRF信号を入力し、入力されたRF信号を用いて光ディスクの欠陥を検出し、欠陥検出信号を外部に出力する。
【0016】
図1において、高速ピークホールド回路10は、入力されたRF信号のトップピークレベルを検出して、ピークホールド信号S1を出力する。このように、高速ピークホールド回路10は、入力されたRF信号のトップピークレベルのエンベロープを検出する回路である。なお、高速ピークホールド回路10は、入力されたRF信号の高周波重畳成分を取り除いた上で、十分に早い時間で欠陥突入を検出できる程度のピークレベルへの追随性を有し、かつ、出力信号S1の減衰速度が後述する低速ボトムホールド回路11の出力信号S2の減衰速度に比べて大きいという減衰特性を有する。
【0017】
低速ボトムホールド回路11は、高速ピークホールド回路10の出力信号S1を入力し、入力された信号S1のボトムピークレベルを検出して、ボトムホールド信号S2を出力する。なお、上述したように、低速ボトムホールド回路11の出力信号S2の減衰速度は、高速ピークホールド回路10の出力信号S1の減衰速度より小さいという減衰特性を有する。
【0018】
比較回路12は、低速ボトムホールド回路12の出力信号S2と、電圧閾値Vthとを比較し、信号S2の値が電圧閾値Vth以下となる場合に光ディスクの欠陥領域であることを示す欠陥検出信号を出力する。つまり、電圧閾値Vthは、欠陥領域への突入及び脱出を判定するための基準値である。
【0019】
D/Aコンバータ(DAC)13は、比較回路12に対して電圧閾値Vthを出力する。D/Aコンバータ(DAC)13の入力デジタル値を変更することで、電圧閾値Vthを変更可能である。
【0020】
上述したRF信号、信号S1、信号S2及び欠陥検出信号の関係を図2の波形図を用いて説明する。図2の最上段に示す波形は、光ディスクから再生されたRF信号の一例である。図2のRF信号における信号振幅の減少した領域は、指紋の付着等による欠陥領域を示している。
【0021】
図2のRF信号を高速ピークホールド回路10に入力することによって得られる信号S1の波形は、図2の上から2段目の波形のようになる。さらに、図2の信号S1を低速ボトムホールド回路11に入力することによって得られる信号S2の波形は、図2の上から3段目の波形のようになる。
【0022】
図2に示すように、低速ボトムホールド回路11の出力信号S2は、RF信号のトップピークレベルのエンベロープを示す信号S1の微小な振幅変動を抑制したものとなる。より詳細に述べると、信号S1の値が減少する際には、信号S2は信号S1に速やかに追随する。一方、信号S1の値が増加する際には、信号S2は信号S1に追随することなく、低速ボトムホールド回路11の減衰特性によって定まる速度で増加する。つまり、RF信号のピークホールド後にさらにボトムホールドを行うことにより、RF信号のピークレベル上昇時の波形変化を鈍化させることができる。このような信号S2を、図2の電圧閾値Vthと比較すれば、欠陥領域内で信号S2の値が閾値Vthを越えることはなく、欠陥検出装置1が出力する欠陥検出信号の波形は図2の最下段に示すようになる。欠陥検出信号のHighレベルは欠陥領域を示し、Lowレベルは欠陥領域でないことを示す。
【0023】
上述したように、光ディスク表面への指紋の付着による欠陥は、光ディスク面の傷等の他の欠陥に比べて、再生信号の振幅の減衰量が小さく、また、欠陥領域内での反射率の変動があるために信号振幅の減衰量が一様でないという特徴がある。このような欠陥に対して、従来の欠陥検出装置は、RF信号のトップエンベロープ信号である信号S1を電圧閾値Vthと比較することにより、欠陥領域の検出を行っていた。図2に示す信号S1の値を電圧閾値Vthと比較して得られる従来の欠陥検出信号の波形を図9に示す。このように、従来の欠陥検出方法では、欠陥領域内においてRF信号の振幅変動があると、信号S1の値が電圧閾値Vthを超過し、欠陥領域内であるにも関わらず欠陥でないと誤判定する場合がある。
【0024】
これに対して、本実施の形態にかかる欠陥検出装置1は、RF信号のトップピークをホールドした信号S1をさらにボトムホールドして得られる信号S2を用いて、欠陥領域を検出している。このため、欠陥領域内におけるRF信号の微小な振幅変動に起因する欠陥領域脱出の誤検出を抑制することができる。
【0025】
このように誤検出を抑制できることによって、従来は欠陥領域として検出することが困難であったRF信号の信号振幅の減少が小さい欠陥の検出が可能となる。このため、欠陥検出装置1を用いることにより、電圧閾値Vthを従来に比べて高く設定して欠陥検出を行うことが可能となり、小さな欠陥に対する検出感度を向上させることができる。さらに、電圧閾値Vthを従来に比べて高く設定できることによって、欠陥領域への突入判定の応答性を向上できる。このため、欠陥検出装置1が出力する欠陥検出信号を用いて光ディスク装置のトラッキングサーボ制御や、RF信号を増幅する増幅回路の利得制御を行うことにより、サーボ制御の安定性を向上させることができる。
【0026】
なお、欠陥検出装置1では、ボトムホールド後の信号S2に対する閾値判定によって欠陥領域からの脱出を判定するため、信号S1に対する閾値判定によって欠陥領域の脱出を判定する場合に比べて、欠陥領域脱出の判定タイミングが遅くなるという性質がある。しかしながら、欠陥領域突入時はトラッキングサーボ制御、RF信号増幅時の利得制御といったサーボ制御を速やかにホールドするために高速応答が要求されるのに対して、欠陥領域脱出の判定に対する高速応答の要求は大きくない。欠陥領域と判定している間は、サーボ制御がホールドされているため、欠陥回復判定が遅れることによるサーボ制御への影響は小さいためである。
【0027】
本実施の形態にかかる欠陥検出装置1の具体的な構成例を図3に示す。図3は、アナログ回路による構成例を示している。図3のピークホールド回路10は、入力電圧(RF信号)に対するコンパレータとして動作するオペアンプ101、コンデンサC1の充放電を制御するスイッチとして動作するNPN型トランジスタ102、コンデンサC1の放電速度を決定する抵抗R1、及びインピーダンス変換を行うボルテージフォロワとして動作するオペアンプ103により構成されている。オペアンプ103からオペアンプ101へのネガティブフィードバックによって、コンデンサC1が入力電圧(RF信号レベル)まで充電されたことを検出すると、コンデンサC1の充電が停止される。RF信号のトップピークレベル上昇時は、コンデンサC1を充電することでオペアンプ103からの出力レベルがピークレベルの変化に追従する。また、RF信号のトップピークレベル下降時は、コンデンサC1の放電による電圧降下によってピークレベルの変化に追従することとなる。
【0028】
また、図3のボトムホールド回路11は、入力電圧(信号S1)に対するコンパレータとして動作するオペアンプ111、コンデンサC2の充放電を制御するスイッチとして動作するPNP型トランジスタ112、コンデンサC2の放電速度を決定する抵抗R2、及びインピーダンス変換を行うボルテージフォロワとして動作するオペアンプ113により構成されている。入力信号S1のレベル下降時は、PNPトランジスタ112がONとなり、コンデンサC2が充電されるので、オペアンプ113からの出力レベルが入力信号S1の変化に追従する。また、入力信号S1のレベル上昇時は、コンデンサC2が放電することでオペアンプ113からの出力レベルが漸増する。
【0029】
図3の比較回路12は、オペアンプ121を用いて構成されている。なお、閾値電圧Vthを与えるDAC13の記載は省略している。
【0030】
図3の構成では、高速ピークホールド回路10の減衰時定数C1×R1と、低速ボトムホールド回路11の減衰時定数C2×R2とを、C1×R1<C2×R2の関係式が成立するよう決定する。なお、図3の構成は一例であり、欠陥検出装置1は他の回路構成によっても実現できること、またデジタル回路によっても実現できることは勿論である。
【0031】
次に、本実施の形態にかかる欠陥検出装置1を用いた光ディスク装置の構成例を図4に示す。図4の光ディスク装置100は、光ディスク40に対する記録及び再生を行うものである。スピンドルモータ(SPM)41は、光ディスク40を所定の速度で回転駆動するモータである。光学ヘッド42は、光ディスク40の記録面に対してレーザ光を照射するレーザ光源、レーザ光を光ディスク40の記録面に集光させる対物レンズ、光ディスク40の記録面によって反射されたレーザ光を受光し、主信号(A,B,C,D)及び補助信号(E,F)を出力する6分割光検出器、並びにトラッキングエラー及びフォーカスエラーを補正するためのファインアクチュエータ等を備える。
【0032】
駆動部43は、サーボ制御部44からの制御信号に応じて、SPM41の駆動、光学ヘッド42を光ディスク40の径方向に移動させるコースアクチュエータの駆動、及びファインアクチュエータの駆動を行う。
【0033】
サーボ制御部44は、光学ヘッド42から出力される主信号(A,B,C,D)及び補助信号(E,F)を用いてトラッキングエラー及びフォーカスエラーを検出し、これらを補正するようファインアクチュエータを動作させるための制御信号を生成して、駆動部43に出力する。
【0034】
AGC増幅部は、自動利得制御(AGC)機能を備える増幅器であり、光学ヘッド42から出力される主信号(A,B,C,D)を加算して得られるRF信号を所定レベルまで増幅して出力する。
【0035】
信号処理部46は、光ディスク40から読み出されたRF信号に対する同期化、復調、復号処理を行い、復号後のデータを外部ホストとのインタフェースに出力する。また、光ディスク40に記録するデータを外部ホストから入力し、符号化及び変調後に記録パルスとしてレーザ駆動部47に出力される。
【0036】
レーザ駆動部47は、光ディスク40の書き込み位置に応じたパワー設定値で光ヘッド42が備えるレーザ光源を駆動する。
【0037】
光ディスク装置100が備える欠陥検出装置1は、光学ヘッド42から出力される主信号(A,B,C,D)を加算して得られるRF信号を入力して、上述した欠陥領域の検出動作を行う。欠陥検出装置1が欠陥を検出した場合は、欠陥検出信号(図4のDEF信号)がサーボ制御部44及びAGC増幅部45に出力される。欠陥検出信号を受信したサーボ制御部44は、トラッキングサーボ制御を欠陥検出前の状態にホールドすることにより、トラッキングサーボ制御の暴走を防ぐ。また、欠陥検出信号を受信したAGC増幅部45は、RF信号に対する利得を欠陥検出前の利得にホールドすることにより、RF信号の過増幅を防止する。
【0038】
上述したように本実施の形態にかかる欠陥検出装置1によれば、欠陥領域の検出精度を向上させることができる。このため、欠陥検出装置1が出力する欠陥検出信号を用いてサーボ制御部44によるトラッキングサーボ制御、及びRF信号を増幅するAGC増幅部45の利得制御を行うことにより、光ディスク装置100のサーボ制御の安定性を向上させることができる。
【0039】
なお、図4に示した光ディスク装置1の構成は一例である。欠陥検出回路1がAGC増幅部45の後段に設けられる場合もあるし、AGC増幅部45を構成する複数の増幅回路の間に設けられる場合もある。また、欠陥検出回路1が出力する欠陥検出信号を用いて行われる制御は、上述したトラッキングサーボ制御及びAGC増幅部45の利得制御の少なくとも一方でも良いし、さらにDVD−RAMディスク等への書き込み処理前に行われる欠陥領域の検出に利用しても良い。
【0040】
その他の実施の形態.
発明の実施の形態1にかかる欠陥検出装置1は、RF信号のトップピークをホールドした信号S1をさらにボトムホールドして得られる信号S2に対する閾値判定によって欠陥領域を検出する構成であった。しかしながら、欠陥領域を検出するための閾値判定の対象となる信号は信号S2に限られない。例えば、図5に示す欠陥検出装置2は、減衰速度の異なる2つのピークホールド回路によってRF信号のトップピークレベルをホールドすることにより2つのピークホールド信号を生成し、これら2つのピークホールド信号の差分に対する閾値判定を行うものである。
【0041】
欠陥検出装置2が備える低速ピークホールド回路21は、RF信号のトップピークレベルをホールドするものあって、高速ピークホールド回路10に比べて減衰速度が小さいものである。また、差分回路22は、低速ボトムホールド回路11によって生成された信号S2と、低速ピークホールド回路21によって生成されたピークホールド信号S3との差分信号S4(S4=S3−S2)を生成する。得られた信号S4を比較回路12において電圧閾値Vthと比較することによっても欠陥領域を検出することができる。RF信号、信号S1乃至S4、並びに欠陥検出信号の波形図を図6に示す。
【0042】
また、図6に示す欠陥検出装置3は、RF信号のトップピークレベルとRF信号のボトムピークレベルとの差分に対する閾値判定を行うことにより、欠陥領域を検出するものである。欠陥検出装置3が備えるボトムホールド回路31は、RF信号のボトムピークレベルをホールドするものである。また、差分回路32は、低速ボトムホールド回路11によって生成された信号S2と、ボトムホールド回路31によって生成されたボトムホールド信号S5との差分信号S6(S6=S2−S5)を生成する。このようにして得られた信号S6を比較回路12において電圧閾値Vthと比較することによっても欠陥領域を検出することができる。RF信号、信号S1、S2、S5及びS6、並びに欠陥検出信号の波形図を図8に示す。
【0043】
このように、欠陥領域を検出するための閾値判定には様々な信号を用いることが可能であるが、RF信号のトップピークをホールドした信号S1をさらにボトムホールドして得られる信号S2、又は信号S2と他の信号との差分に対する閾値判定など、信号S2を利用した判定によって欠陥領域を検出することにより、欠陥領域の検出精度を高めることができる。
【0044】
上述した発明の実施の形態では、RF信号を入力信号として欠陥領域を検出する場合を説明した。しかしながら、RF信号に替えて、光ディスクの欠陥領域の情報が反映された他の再生信号を入力して欠陥領域の検出を行うことも可能である。例えば、未記録のDVD−RAMディスクの欠陥領域を検出する場合には、ウォブリングされたプリグルーブから再生されるウォブル信号を本発明にかかる欠陥検出装置に入力して、欠陥領域の検出を行ってもよい。
【0045】
上述した発明の実施の形態では、1つ信号(信号S2、S4、又はS6)に対する1つの閾値判定によって、欠陥領域への突入及び欠陥領域からの脱出を判定する場合を説明した。このような構成は、欠陥検出装置1の回路規模を削減できる点で有効である。しかしながら、欠陥領域への突入と欠陥領域からの脱出とを別個の閾値によって判定してもよい。また、欠陥領域への突入と欠陥領域からの脱出とを、別信号を用いて判定してもよい。
【0046】
例えば、発明の実施の形態1にかかる欠陥検出装置1において、欠陥領域への突入は信号S1を用いて判定し、欠陥領域からの脱出は信号S2を用いて判定してもよい。信号S1のほうが信号S2に比べてRF信号のピークレベル変動からの遅延が小さいため、欠陥領域への突入判定の応答性が向上する。なお、少なくとも欠陥領域からの脱出判定に信号S2を用いた判定を行うことにより、欠陥領域からの脱出を誤判定すること抑制できるため、欠陥領域の検出精度を高めることができる。
【0047】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】発明の実施の形態1にかかる欠陥検出装置の構成図である。
【図2】発明の実施の形態1にかかる欠陥検出装置の動作を示す波形図である。
【図3】発明の実施の形態1にかかる欠陥検出装置の実施例を示す図である。
【図4】発明の実施の形態1にかかる欠陥検出装置を備える磁気ディスク装置の構成例を示す図である。
【図5】本発明にかかる欠陥検出装置の構成図である。
【図6】本発明にかかる欠陥検出装置の動作を示す波形図である。
【図7】本発明にかかる欠陥検出装置の構成図である。
【図8】本発明にかかる欠陥検出装置の動作を示す波形図である。
【図9】従来の欠陥検出装置の動作を示す波形図である。
【符号の説明】
【0049】
1、2、3 欠陥検出装置
10 高速ピークホールド回路
11 低速ボトムホールド回路
12 比較回路
13 D/Aコンバータ(DAC)
100 光ディスク装置
40 光ディスク
41 光学ヘッド
42 スピンドルモータ(SPM)
43 駆動部
44 サーボ制御部
45 AGC増幅部
46 信号処理部
47 レーザ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体による反射光を検出することによって得られる再生信号を用いて、情報記録媒体の欠陥領域を検出する欠陥検出装置であって、
前記再生信号のピークレベルを検出した第1のピークホールド信号のボトムレベルを検出して得られる第1のボトムホールド信号の信号レベルの変動に基づいて欠陥領域を検出するものであり、
前記第1のピークホールド信号の信号レベルの減衰速度より前記第1のボトムホールド信号の信号レベルの減衰速度が小さいことを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項2】
前記再生信号のピークレベルを検出し、前記第1のピークホールド信号を生成する第1のピークホールド部と、
前記第1のピークホールド信号のボトムレベルを検出し、前記第1のボトムホールド信号を生成する第1のボトムホールド部と、
前記第1のボトムホールド信号を用いた閾値判定を行う比較部と、
を備える請求項1に記載の欠陥検出装置。
【請求項3】
前記第1のピークホールド部の減衰時定数が前記第1のボトムホールド部の減衰時定数より小さい、請求項2に記載の欠陥検出装置。
【請求項4】
前記第1のボトムホールド信号を用いた閾値判定によって、欠陥領域からの脱出を検出する、請求項1又は2に記載の欠陥検出装置。
【請求項5】
前記第1のボトムホールド信号を用いた閾値判定によって、欠陥領域への突入を検出する、請求項4に記載の欠陥検出装置。
【請求項6】
前記第1のピークホールド信号を用いた閾値判定によって、欠陥領域への突入を検出する、請求項4に記載の欠陥検出装置。
【請求項7】
前記再生信号のピークレベルを検出し、前記第1のピークホールド信号より減衰速度が小さい第2のピークホールド信号を生成する第2のピークホールド部をさらに備え、
前記検出部は、前記第2のピークホールド信号と前記第1のボトムホールド信号との差分信号に対する閾値判定によって欠陥領域からの脱出を判定する、請求項2に記載の欠陥検出装置。
【請求項8】
前記再生信号のボトムレベルを検出し、第2のボトムホールド信号を生成する第2のボトムホールド部をさらに備え、
前記検出部は、前記第1のボトムホールド信号と前記第2のボトムホールド信号との差分信号に対する閾値判定によって欠陥領域からの脱出を判定する、請求項2に記載の欠陥検出装置。
【請求項9】
光ディスクに対する情報記録又は光ディスクからの情報再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクからの再生信号を入力し、前記再生信号のピークレベルを検出したピークホールド信号のボトムレベルを検出して得られるボトムホールド信号の信号レベルの変動に基づいて欠陥検出信号を生成し、かつ、前記ピークホールド信号の信号レベルの減衰速度より前記ボトムホールド信号の信号レベルの減衰速度が小さい欠陥検出装置を備え、
前記欠陥検出信号に応じて、前記光ディスクに対するトラッキングサーボの制御状態の切り替えを行う光ディスク装置。
【請求項10】
前記再生信号は、RF信号又はウォブル信号である請求項9に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
情報記録媒体による反射光を検出することによって得られる再生信号を用いて、情報記録媒体の欠陥領域を検出する欠陥検出方法であって、
前記再生信号に対するピークホールドによってピークホールド信号を生成し、
前記ピークホールド信号に対するボトムホールドによって、前記ピークホールド信号の減衰速度より減衰速度が小さいボトムホールド信号を生成し、
前記ボトムホールド信号を用いた閾値判定によって前記欠陥領域を検出する欠陥検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−250017(P2007−250017A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67673(P2006−67673)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】