説明

次亜塩素酸水の製造装置

【課題】殺菌に好適な所望の濃度の次亜塩素酸水を小形の装置で効率よく安全に製造する次亜塩素酸水の製造装置と製造方法を提供する。
【解決手段】水が貯留されている貯留室2と、希塩酸が供給され塩素ガスを発生する陰陽両極間に隔膜が存在しない電解槽4を収容している収容室3と、該電解槽4からの塩素ガスを前記貯留室2内の水に混入して次亜塩素酸水を生成する混入管路9とからなり、該混入管路9は、循環管9Aと混入管9Bとからなり、該循環管9Aは、U字状に形成されて前記収容室3内に設けられ、一端部が前記貯留室2の底面に連通接続していると共に他端部が該底面に貫通して接続し、前記混入管9Bはその根部が前記電解槽4に連通接続していると共に先端部が前記循環管9Aの中間部に連通接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺菌水として有効な次亜塩素酸水の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の次亜塩素酸水の製造装置として図5に示すように、原水タンクaから陰陽両極間に隔膜が存在しない電解槽bに原水送水管cを接続すると共に、塩酸タンクdからの塩酸供給管eを前記原水送水管cに連通接続し、前記電解槽bにおいて所望の濃度の次亜塩素酸水を得るようにしたものが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
尚、図5において、fは前記原水送水管cに介在した原水ポンプ、gは前記塩酸供給管eに介在した塩酸用定量ポンプ、hは前記電解槽bからの電解処理液の排出管を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−128336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の次亜塩素酸水の製造装置によれば、以下のような問題点があった。
【0006】
(1)電解槽bで生成できる次亜塩素酸水の量が少ないので、必要とされる量の次亜塩素酸水を生成するためには電解槽bを大きくする必要がある。また、電解槽bを大きくすると使用する電力も大きくなるので、コストが上がるという問題があった。
【0007】
(2)電解層bで高濃度の次亜塩素酸水を生成させるには、かなりの電圧、電流を必要とし、経済性、安全性に問題があった。
【0008】
(3)電解層bで生成出来る次亜塩素酸水の量が少ないので、一定濃度の次亜塩素酸水に調整するのが難しく、かつ高濃度に調整するのも難しい。そして、その制御システムが必要となりコストが上がるという問題があった。
【0009】
(4)水道管や大型の貯留水タンクから水を供給する場合、減圧弁などの流量制御装置が必要となり、生成装置の構造、構成が複雑となる。また、その制御が難しく、結果として制御装置が高価となってしまう。
【0010】
(5)使用する原水の水質、特に硬度によって、生成する次亜塩素酸水のPHの調整が難しいという問題があった。
【0011】
(6)使用する原水の有機物含量が多い場合、次亜塩素酸水の次亜塩素酸濃度を一定に保つことが難しいという問題があった。
【0012】
(7)電解層bで生成する次亜塩素酸水量が小さいので100ppm以上の高濃度の次亜塩素酸水を生成することが難しいという問題があった。
【0013】
本発明はこれらの問題点を解消し、所望の濃度の次亜塩素酸水を容易に得ることができる次亜塩素酸水の製造装置と製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成すべく、第1発明は製造装置に関し、水が貯留されている貯留室と、希塩酸が供給され塩素ガスを発生する陰陽両極間に隔膜が存在しない電解槽を収容している収容室と、該電解槽からの塩素ガスを前記貯留室内の水に混入して次亜塩素酸水を生成する混入管路とからなる。又第2発明は製造方法に関し、前記貯留室と前記収容室を上下に一体形又は分離形に形成した。
【発明の効果】
【0015】
本発明の装置によれば、構造簡単で且つコンパクトとなり、業務用に限らず、家庭用としての使用に好適となり、又同じ電解槽において同じ電気分解条件で、貯留室の水を所望の濃度に至るまで循環させることによって、徐々に所望の濃度の次亜塩酸水を容易に生成でき、又本発明の方法によれば、簡単に単純に容易にかつ安全で経済的に誰にでも所望する生成量及び、所望する濃度の次亜塩素酸水を生成することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の次亜塩素酸水の製造装置の実施例1の縦断面説明図である。
【図2】細分化手段の一部を截除した正面図である。
【図3】本発明の次亜塩素酸水の製造装置の実施例2の縦断面説明図である。
【図4】本発明の次亜塩素酸水の製造装置の実施例3の縦断面説明図である。
【図5】従来の次亜塩素酸水の製造装置の管路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0018】
本発明の次亜塩素酸水の製造装置の実施例1を図1及び図2により説明する。
【0019】
図1は本発明の次亜塩素酸水の製造装置の実施例1の縦断面説明図であり、図2は細分化手段の一部を截除した正面図である。
【0020】
図1において、1はケーシングを示し、該ケーシング1は、直方体状の筐体からなり、該ケーシング1内において、その中間部に床平板1aを架設して該ケーシング1内を上下に仕切り、該床平板1aを介してその上方に貯留室2を、又下方に収容室3を形成した。
【0021】
そして、該収容室3内に電解槽4と希塩酸タンク5が設けられており、該電解槽4はその内部に陽極6aと陰極6bを互に間隔を存して並設しており、これら陽極6aと陰極6bとの間には隔膜が存在しない。
【0022】
又、前記希塩酸タンク5から前記電解槽4の底部に送水管7を接続すると共に該送水管7に希塩酸ポンプ8が介在されており、該希塩酸ポンプ8の駆動により前記希塩酸タンク5内の希塩酸を前記電解槽4に供給するようにした。
【0023】
9は混入管路を示し、該混入管路9は循環管9Aと混入管9Bとからなり、該循環管9AはU字状の管からなり、その一端部が前記貯留室2の底面、即ち、前記床平板1aに接続して前記貯留室2内に連通していると共に、該循環管9Aの他端部は該床平板1aを貫通して接続し該他端部の上方部が前記貯留室2内に突出し、突出した該上方部に、ガスを細分化する細分化手段10を結着した。
【0024】
ここで該細分化手段10は図2に示す如く、例えばステンレス或いはセラミックス等の耐塩素材製で有蓋筒状のキャップ体10aと、該キャップ体10a内に収容されている例えばグラスウールからなるガス細分化材10bとからなり、該キャップ体10aの周面部及び頂面部は多孔を有するように形成されている。
【0025】
又、前記混入管9Bは、その根部を前記電解槽4の頂部に接続すると共に、先端部11aを前記循環管9Bに接続した。
【0026】
ここで、前記混入管9Bの前記先端部9Baを斜め上方に向うように形成して前記循環管9Bに連通接続し、該循環管9B内の水に前記混入管9Bからのガスが混入し易くした。
【0027】
11は気泡の迂回流動手段を示し、該迂回流動手段11は、邪魔板11aからなり、該邪魔板11aは円板をその中心部が下方に湾曲した形状に形成され、前記貯留室2内において前記細分化手段10の真上に間隔を存して設けられている。
【0028】
12は前記貯留室2内の上面より所定の下方位置に設けたレベル計、13は該貯留室2の下面より外方に導出するように前記ケーシング1に設けた次亜塩素酸水の流出管、14は該流出管13に介在した流量調節弁、15は前記貯留室2の上面に形成した水の流入口、16は該流入口15を閉める蓋体、17は該蓋体16に設けられている水素ガスの排気口、18は前記希塩酸ポンプ8の吐出側の前記送水管7に介在した逆止弁を示し、該逆止弁18により運転停止時に前記電解槽4からの次亜塩素酸水が希塩酸タンク5に逆流するのを防止すると共に、前記希塩酸ポンプ8のチューブ等を保護するようにした。
【0029】
次に前記実施例装置による次亜塩素酸水の製造方法とその効果について説明する。
【0030】
先ず、前記流入口15より水を貯留室2内に所定レベルまで貯留して前記蓋体16を該流入口15に締付ける。この所定レベルまで水が貯留されることによりレベル計12が作動し、運転開始が可能状態となる。
【0031】
又、前記貯留室2内に貯留された水の一部は前記循環管9A内にも充満する。
【0032】
その後、希塩酸ポンプ8を駆動して希塩酸タンク5内の希塩酸を電解槽4内に供給する。
【0033】
そして該電解槽4において、希塩酸に浸漬されている陰陽両極6a、6bに通電して原水を電解処理し、水素ガス、塩素ガスを発生し、このように発生した塩素ガスと水素ガスは、混入管9B内を流動して循環管9A内の水に混入する。
【0034】
ここで、該混入管9Bの先端部9Baは斜め上方に向うように形成されているので、前記ガスの循環管9A中の水への混入がスムーズに行われる。
【0035】
このように塩素ガスと水素ガスを混入した水は前記循環管9A内を上昇し、該循環管9Aの他端部の上方部に結着した細分化手段10によりガスの気泡は細分化され、細分化された前記塩素ガスは、前記邪魔板11aにより、貯留室2内に迂回して上方への移動が阻止されているあいだに、水に溶解・分解されて、次亜塩素酸水が生成される。
【0036】
初期の時点では、貯留室2内の次亜塩素酸水は低濃度であるが、循環管9A及び貯留室2内を循環して徐々に濃度の高い次亜塩素酸水になってくる。そして貯留室2内の次亜塩素酸水が所望の濃度になるまで運転を継続する。
【0037】
このように所望の濃度の次亜塩素酸水は、前記流量調節弁14を所定の開度で、所定の時間に開弁することにより、流出管13より所望の量が得られる。
【0038】
そして、流出管13により次亜塩素散水が流出して貯留室2内の液面が低下した場合には、水を補充して液面が上昇してレベル計12が作動しないかぎり、再運転ができない。又、前記希塩酸タンク5内の下方部に補助レベル計を設置して、該希塩酸タンク5内の希塩酸が少量になったときにも運転の再開をできないようにしてもよい。
【0039】
尚、水に溶けない水素ガスは前記蓋体16に形成した排気口17から少しずつ抜けていくので、危険性がない。
【0040】
しかし、塩素ガスは、漏れると危険であるので、速やかに水に溶解させる必要があり、このために塩素ガスの気泡を細分化手段10により細分化して小さな気泡として溶解し易くし、更に前記邪魔板11aにより気泡が迂回して上昇するようにして溶解が終了するのに充分な距離と時間がとれるようにした。
【0041】
このように、電解槽4の両電極6a、6bの電流制御や、希塩酸ポンプ8の運転制御による希塩酸の供給制御や、製造装置の運転の時間制御により、次亜塩素酸水の濃度と量の調整が可能である。
【0042】
又、製造装置の運転時間を予め制限して高濃度の次亜塩素酸水の生成を防止するようにしてもよい。
【0043】
例えば運転時間が5分で、20ppm、10分で40ppm、15分で60ppm、20分で80ppmの如く次亜塩素酸水の濃度を予め制限しておく。
【実施例2】
【0044】
本発明の次亜塩素酸水の製造装置の実施例2を図3により説明する。
【0045】
図3は本発明の次亜塩素酸水の製造装置の実施例2の縦断面説明図である。
【0046】
本実施例2においては、混入管路9は混入管9Cからなり、該混入管9Cは、根部を電解槽4の頂部に接続すると共に先端部を前記貯留室2の底面、即ち、前記床平板1aに貫通接続し、貯留室2内に突出した該先端部の上方部に細分化手段10を結着した。
【0047】
本実施例2は管路を簡略化したことに特徴がある。
【0048】
尚、前記実施例1及び実施例2のいずれにおいても、貯留室2と収容室3とがケーシング1に一体に形成されている例を示したが、貯留室と収容室を個別に形成し、該収容室の上面上に前記貯留室を係脱可能に載置する分離形に形成してもよい。
【実施例3】
【0049】
本発明の次亜塩素酸水の製造装置の実施例3を図4により説明する。
【0050】
本実施例3においては、貯留室2Aと収容室3Aをそれぞれ個別に形成して、これら貯留室2Aと収容室3Aを左右に並置した。
【0051】
混入管路9は混入管9Dからなり、該混入管9Dは例えば可撓性のホースからなり、根部を電解槽4の頂部に接続すると共に前記収容室3の上面壁の孔を貫通して該収容室3の外部に導出し、中間部において前記貯留室2の上面壁の孔を貫通し、先端部を該貯留室2内の下面近傍においてU字状に折り返して、上方に向う端末部に細分化手段10を結着した。
【0052】
本実施例においては、貯留室となる容器を準備して、該容器内に所定量を水を満たしておくことにより所望の濃度の次亜塩素酸水をバッチ式に得ることができる。
【0053】
尚、貯留室内の水が軟水であったり、有機物が含有されている場合には、Ca,Mg,Na,K等を含むアルカリ性のPH調整剤を前記貯留室内に混合させて中和し、望ましいPHの範囲の次亜塩素酸水を容易に得ることが出来るとともに、有機物に消化された分の次亜塩素酸の量を補って、望ましい範囲の次亜塩素酸水を容易に得ることができる。
【0054】
又、ガスの気泡の細分化を更に促進するために、貯留室内に撹拌機を取付けても良い。。
【0055】
尚、前述のいずれの実施例においても、混入管の先端部の端末に細分化手段10を結着すると共に、該細分化手段10の真上に邪魔板11aを設置した例を示したが、貯留室2内の水の深さが十分にあったり、又は前述の如く撹拌機による撹拌が十分に行なわれて、塩素ガスが十分に水に溶解して水面上へ流出しないことが確認できれば、前記細分化手段10や邪魔板11aを省略して構造の簡素化を図ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の次亜塩素酸水の製造装置及び製造方法は、食品工場、養鶏場、搾乳場、農場、医療や介護施設、レストラン、家庭等で利用される。
【符号の説明】
【0057】
1 ケーシング
2 貯留室
3 収容室
4 電解槽
6a 陽極
6b 陰極
9 混入管路
9A 循環管
9B 混入管
9C 混入管
9D 混入管
10 細分化手段
11 迂回流動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が貯留されている貯留室と、希塩酸が供給され塩素ガスを発生する陰陽両極間に隔膜が存在しない電解槽を収容している収容室と、該電解槽からの塩素ガスを前記貯留室内の水に混入して次亜塩素酸水を生成する混入管路とからなる次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項2】
前記貯留室と前記収容室を上下に一体形又は分離形に形成した請求項1記載の次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項3】
前記混入管路は混入管からなり、該混入管は、その先端部において前記貯留室の底面を貫通して接続した請求項2に記載の次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項4】
前記混入管の前記先端部にガスの気泡を細かくする細分化手段を結着した請求項3に記載の次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項5】
前記混入管路は、循環管と混入管とからなり、該循環管は、U字状に形成されて前記収容室内に設けられ、一端部が前記貯留室の底面に連通接続していると共に他端部が該底面に貫通して接続し、前記混入管はその根部が前記電解槽に連通接続していると共に先端部が前記循環管の中間部に連通接続している請求項2に記載の次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項6】
前記循環管の前記他端部の上方部にガスの気泡を細かくする細分化手段を結着した請求項5に記載の次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項7】
前記貯留室と前記収容室は左右に並設されている請求項1に記載の次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項8】
前記混入管路は混入管からなり、該混入管は根部が前記電解槽に接続していると共に、中間部において前記貯留室の上面又は側面の上部より該貯留室内に導入され、先端部が該貯留室内の下部で上方に臨むように配置されている請求項7に記載の次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項9】
前記混入管の先端部の端末部に、ガスの気泡を細かくする細分化手段を結着した請求項8に記載の次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項10】
前記貯留室内において、前記細分化手段の上方に細分化した気泡を迂回流動させる迂回流動手段を設けた請求項4又は請求項6又は請求項9に記載の次亜塩素酸水の製造装置。
【請求項11】
供給される希塩酸を中間に隔膜が存在しない陰陽両極の電解槽で、連続的に電解処理して塩素ガスを発生し、所望量の水が貯留されている貯留室内の水に前記塩素ガスを混入して次亜塩素酸水を生成して前記貯留室内の次亜塩素酸水の濃度を徐々に高めて、所望する生成量と濃度の次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−85979(P2013−85979A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225652(P2011−225652)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(506247619)株式会社デイリーテクノ (5)
【Fターム(参考)】