説明

歌声ピッチの正確さにより変化する旋律連動式カラオケ電飾システム

【課題】電飾システムにより歌声ピッチの正確さを、わかりやすくという観点よりもむしろ、美しく華やかに楽しく電飾表現する技術を提供する。
【解決手段】マイコン21は、ある音符データAを受信した際にあるランプBを音高対応色で発光させる。このときの輝度は、最大輝度の50パーセント程度の標準値である。これより少し遅れて、音符データAに対応するピッチ確度データCを受信することになる。マイコン21は、ピッチ確度データCが標準範囲に収まっていれば、ランプBの輝度は変えない。ピッチ確度データCが標準範囲より悪い場合(ピッチ誤差が大きい場合)、データCが悪いほどランプBの輝度を小さくする。反対に、ピッチ確度データCが標準範囲より良い場合(ピッチ誤差が小さい場合)、データCが良いほどランプBの輝度を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多色発光可能な複数個のLEDランプをカラオケデータに基づいて伴奏音楽に同調させて発光制御するカラオケ電飾システムに関し、とくに、音伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声ピッチの正確さを音楽に同調させて電飾により表現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、音楽コンサートではステージ照明や電飾を音楽に合わせて変化させることは普通に行われてきた。そのため、音楽に合わせて自動的に照明や電飾さらにはディスプレイを制御するいろいろな技術も開発されてきた。たとえば、特開平7−289746号公報「音の変化を光の変化に変換する装置」、特許第3388530号公報「音楽演出用照明装置」、特開平4−151199号公報「アニメーション合成表示装置」、特開2004−163767号公報「環境同期制御システム」などに種々の技術が開示されている。
【0003】
もちろんカラオケの分野においても、カラオケデータに基づいて照明や電飾を音楽に合わせて自動的に変化させる照明制御技術が採用された。たとえば、特開平6−19488号公報「カラオケ装置」、特開平7−302686号公報「カラオケ用照明制御装置」、特開平7−73975号公報「照明制御装置」、特開平7−73976号公報「照明制御装置」、特許第4257300号公報「カラオケ端末装置」などに種々の技術が開示されている。
【0004】
最近のカラオケ利用シーンにおいて顕著なことの1つに、歌唱力の採点システムに対する利用者の人気がきわめて高いことがある。その背景には、歌唱力の採点技術が著しく進歩し、カラオケ装置の採点能力に対する利用者の信頼感が高まったことがあげられる。装置が機械的に行う採点に対する人々の信頼感が高まったため、多くの人が自分の採点結果と他人の採点結果を比べ、競うことを楽しむようになった。特開2004−206009号公報や特開2005−107087号公報には進歩した採点技術が詳しく解説されている。特開2005−99288号公報には採点結果を楽しく出力する技術が詳しく解説されている。
【0005】
カラオケ伴奏音楽に合わせて歌っている人の採点データに基づいて、歌の巧拙により照明を変化させるシステムも開発された。その詳細が特開平9−166992号公報に開示されている。このシステムにおいては、複数種類の照明の明るさやミラーボールの回転・停止などを歌唱中に逐次出力される採点データに基づいて変化させ、採点データが良いほど明るく華やかな照明環境を創出し、採点データが悪いと暗く陰鬱な照明環境にするように構成されている。
【0006】
カラオケで歌う人は自分が正しい旋律で歌えているのかという点に強い関心がある。好きな楽曲を正しく上手く歌えるようになりたくてカラオケで練習している人はとりわけである。カラオケ採点でも歌声ピッチの正確さ(カラオケデータ中の歌唱旋律ピッチに対する誤差の程度)は主要な採点要素となっている。
【0007】
カラオケ採点技術の分野においては、歌声ピッチの正確さを測定する技術の改良がなされているとともに、測定結果を歌い手にリアルタイムに知らせるための表示技術についていろいろな発明が創作されている。特許第3949544号公報「歌声ピッチの誤差をバーグラフに表示するカラオケ装置」、特開2008−225117号公報「ピッチ表示制御装置」、特開2008−225116号公報「評価装置及びカラオケ装置」、特開2006−276693号公報「歌唱評価装置およびプログラム」においては、歌声ピッチの正確さを歌い手にわかりやすく知らせる表示技術が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、さいきん顕著に進歩したLEDディスプレイ技術・LED照明技術を活用した、多色発光可能な複数個のLEDランプをカラオケデータに基づいて伴奏音楽に同調させるカラオケ電飾システムを前提とし、この電飾システムにより歌声ピッチの正確さを、わかりやすくという観点よりもむしろ、美しく華やかに楽しく電飾表現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る旋律連動式カラオケ電飾システムは、つぎの事項(1)〜(7)により特定されるものである。
(1)電飾器具と、電飾制御装置と、カラオケ装置を備えた旋律連動式カラオケ電飾システムであること
(2)電飾器具は、多色発光可能な複数のLEDランプを含むこと
(3)電飾制御装置は、電飾器具の各LEDランプを個別に発光駆動可能であること
(4)カラオケ装置は、演奏する伴奏音楽に同期して、当該音楽の歌唱旋律の各音符データを逐次電飾制御装置に送信すること
(5)電飾制御装置は、音符データの各音高にそれぞれ異なる発光色を対応づけし、ある音符データをカラオケ装置から受信した際に当該音符データの音高対応色にてあるLEDランプを所定期間発光させ、カラオケ装置からつぎの音符データを受信した際に当該音符データの音高対応色にて別のLEDランプを所定期間発光させること
(6)カラオケ装置は、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声を採取し、歌唱旋律の音符データの音高に対する歌声ピッチの正確さを表すピッチ確度データを生成して電飾制御装置に送信すること
(7)電飾制御装置は、受信した音符データに基づいてLEDランプを音高対応色にて発光させる期間において、その音符データに対応するピッチ確度データを受信した際、当該ランプの発光輝度をピッチ確度データに基づいて変化させ、ピッチ確度が高いほど輝度を大きくし、ピッチ確度が低いほど輝度を小さくすること
【発明の効果】
【0010】
リクエスト曲を歌い始めると、歌唱旋律の進行に合わせて、歌唱旋律の音符データの音高対応色でLEDランプが次々と発光し、旋律に同調するように多色の電飾が広がってくる。歌い手が旋律を正しいピッチで歌えていると、電飾はより明るく華やかな雰囲気をかもし出す。歌い手のピッチ誤差が大きいと、電飾は薄暗く沈んだ雰囲気になる。歌い手が特定の音高を正しいピッチで歌えていないとか、特定の音高については正確に歌えているという状況が、特定の音高対応色は明るく発光し、別の特定の音高対応色は薄暗くしか発光しないという電飾表現を生みだすことになる。あたかも、歌唱旋律の音高の連なりの要素と、歌声のピッチの正確さという要素が描き手となり、多数のLEDランプによって歌唱進行に合わせたモザイク画を描いていくような電飾表現が実現する。その電飾表現は演奏される楽曲や歌い手により異なる多彩なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例におけるカラオケ電飾システムの概略図である。
【図2】実施例における電飾制御装置と電飾器具の構成図である。
【図3】実施例における電飾器具の外観図である。
【実施例】
【0012】
===システムの概要===
この発明に係るカラオケ電飾システムは、図1に示すように、カラオケ装置1と電飾制御装置2と電飾器具3とからなる。この実施例の電飾器具3は、図3に示すように、多色発光可能な1024個のLEDランプ4を縦32個×横32個の行列に配設したドットマトリクス型LEDディスプレイのような形態をしており、たとえば縦横各1〜2メートル程度の寸法である。
【0013】
各LEDランプ4は、図2に示すように、赤色LED・緑色LED・青色LEDを含んだ集合ランプであり、3原色LEDの各輝度を多階調に変化させることで、LEDランプ4の輝度と色を変化させることができる。電飾制御装置2の定電流ドライバ22は、LEDディスプレイに用いられている一般的なパルス幅制御(PWM制御)方式のLEDドライバである。
【0014】
電飾制御装置2のマイコン21は、(1024×3)個の各LEDの輝度データとして4ビットのデータ(16階調を表現可能)を生成して定電流ドライバ22に直列入力してラッチさせる。この動作を1/60秒の周期で繰り返し行う。つまりマイコン21は、1秒間に60回の繰り返し周期で、1個のLEDランプ4の輝度と色を指定する4×3=12ビットのランプ制御データを1024個分生成して定電流ドライバ22にラッチし、1024個のLEDランプ4の輝度と色を変化させることができる。
【0015】
===カラオケ装置1===
カラオケ装置1は、基本的に、周知慣用のカラオケ装置と同等の構成を備えるものである。この明細書においては、周知慣用のカラオケ技術に関する記述は必要最小限に留めることとする。
【0016】
この発明において、カラオケ装置1は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、当該カラオケデータに含まれている歌唱旋律パートの音符データ列を音楽進行に同期して逐次抽出し、電飾制御装置2に逐次送信する。
【0017】
またカラオケ装置1は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声ピッチを逐次検出し、歌唱旋律の音符データの音高と比較し、発声すべきピッチを基準として実際の歌声ピッチの正確さを表すデータ(ピッチ確度データ)を逐次生成し、電飾制御装置2に逐次送信する。
【0018】
===電飾制御装置2===
上述したように、カラオケ演奏と歌唱が始まると、電飾制御装置2はカラオケ装置1から、歌唱旋律の音符データを逐次受信するとともに、音符データ受信から少し遅れてピッチ確度データを逐次受信する。電飾制御装置2は、逐次受信する音符データとピッチ確度データに基づいて、電飾器具3のLEDランプ4の発光態様を制御する。
【0019】
電飾制御装置2のマイコン21は、音符データの音高と色特定データとの対応付けして記述した色テーブルを備えており、音符データを受信した際、その音符データの音高に対応する色特定データ(その色のことを音高対応色とする)を色テーブルから抽出し、その音高対応色にてあるLEDランプ4を発光させる制御を行う。どのLEDランプ4を発光させるのかは、いろいろな方式により決定することができる。たとえば、各ランプの発光順をランダムに選んでもよい。また、ランプが順番に発光することで適当な紋様を描くように、その発光順をあらかじめ設定しておいてもよい。
【0020】
上記の発光順の設定テーブルを何種類も用意しておき、その中からランダムに選出した設定テーブルに従って発光順を制御することは好ましい。さらに、カラオケの楽曲IDに対応付けして発光順を設定しておき、カラオケ装置1で演奏開始された楽曲の楽曲IDに基づいて楽曲専用の発光順で制御することもできる。なお、1つの音符データを受信した際に1つのランプを音高対応色で発光させるのに限らず、複数のランプを同時に音高対応色で発光させるようにしてもよい。
【0021】
上記の色テーブルについても同じ考え方を採り入れることが好ましい。つまり、カラオケの楽曲IDまたはジャンルIDに対応付けして色テーブルを用意しておき、カラオケ装置1で演奏開始された楽曲の楽曲IDまたはジャンルIDに対応する色テーブルを特定して、その色テーブルに従って音高対応色を決定する構成である。この構成によれば、楽曲の曲調・和声進行・趣向などに相応しい音高対応色の電飾表現が可能になる。
【0022】
===ランプ制御データの生成===
マイコン21は、1024個のLEDランプ4に対応したランプ制御データを一時記憶するビデオRAMを備えており、あるランプをある色とある輝度で発光させることを決定したならば、ビデオRAMの対応エリアにそのランプ制御データを書き込む。並行してマイコン21は、1/60秒の周期でビデオRAMのランプ制御データを読み出して定電流ドライバ22に向けて直列出力し、全1024個分のランプ制御データを定電流ドライバ22にラッチさせる。定電流ドライバ22は、ラッチされた全1024個分のランプ制御データに基づいた輝度と色で各LEDランプ4を発光させる(もちろん輝度がゼロであれば発光しない)。
【0023】
マイコン21は、ある音符データAを受信した際にあるランプBを音高対応色で発光させる。このときの輝度は、最大輝度の50パーセント程度の標準値である。これより少し遅れて、音符データAに対応するピッチ確度データCを受信することになる。マイコン21は、ピッチ確度データCが標準範囲に収まっていれば、ランプBの輝度は変えない。ピッチ確度データCが標準範囲より悪い場合(ピッチ誤差が大きい場合)、データCが悪いほどランプBの輝度を小さくする。反対に、ピッチ確度データCが標準範囲より良い場合(ピッチ誤差が小さい場合)、データCが良いほどランプBの輝度を大きくする。
【0024】
電飾制御装置2はカラオケ装置1から音符データとピッチ確度データを受信するごとに以上の処理を行う。これにより、歌い手がリクエスト曲を歌い始めると、歌唱旋律の進行に合わせて、歌唱旋律の音符データの音高対応色でLEDランプ4が次々と発光し、旋律に同調するように多色の電飾が広がってくる。歌い手が旋律を正しいピッチで歌えていると、電飾はより明るく華やかな雰囲気をかもし出す。歌い手のピッチ誤差が大きいと、電飾は薄暗く沈んだ雰囲気になる。歌い手が特定の音高を正しいピッチで歌えていなかったり、特定の音高については正確に歌えていると、特定の音高対応色は明るく発光し、別の特定の音高対応色は薄暗くしか発光しないという歌い手固有の電飾表現が生みだされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電飾器具と、電飾制御装置と、カラオケ装置を備えた旋律連動式カラオケ電飾システムであって、
電飾器具は、多色発光可能な複数のLEDランプを含み、
電飾制御装置は、電飾器具の各LEDランプを個別に発光駆動可能であり、
カラオケ装置は、演奏する伴奏音楽に同期して、当該音楽の歌唱旋律の各音符データを逐次電飾制御装置に送信し、
電飾制御装置は、音符データの各音高にそれぞれ異なる発光色を対応づけし、ある音符データをカラオケ装置から受信した際に当該音符データの音高対応色にてあるLEDランプを所定期間発光させ、カラオケ装置からつぎの音符データを受信した際に当該音符データの音高対応色にて別のLEDランプを所定期間発光させ、
カラオケ装置は、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声を採取し、歌唱旋律の音符データの音高に対する歌声ピッチの正確さを表すピッチ確度データを生成して電飾制御装置に送信し、
電飾制御装置は、受信した音符データに基づいてLEDランプを音高対応色にて発光させる期間において、その音符データに対応するピッチ確度データを受信した際、当該ランプの発光輝度をピッチ確度データに基づいて変化させ、ピッチ確度が高いほど輝度を大きくし、ピッチ確度が低いほど輝度を小さくする
旋律連動式カラオケ電飾システム。
【請求項2】
電飾制御装置は、LEDランプの発光順をランダムに決定する
請求項1に記載の旋律連動式カラオケ電飾システム。
【請求項3】
電飾制御装置は、楽曲IDとランプ発光順を対応づけて記憶し、カラオケ装置にて演奏される楽曲の楽曲IDに対応するランプ発光順に従って制御を行う
請求項1に記載の旋律連動式カラオケ電飾システム。
【請求項4】
電飾制御装置は、音高と色特定データを対応付けした楽曲IDごとの色テーブルを記憶し、カラオケ装置にて演奏される楽曲の楽曲IDに対応する色テーブルに従って制御を行う
請求項1〜3のいずれかに記載の旋律連動式カラオケ電飾システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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