説明

止水弁用ダイヤフラムパッキン

【課題】基布を不要とすることができる止水弁用ダイヤフラムパッキンを提供する。
【解決手段】ダイヤフラム式止水弁の弁胴部側に固定される固定部と、この固定部の内周側に形成された折り返し形状の可撓部と、この可撓部の内周側に形成された可動部とからなる止水弁用ダイヤフラムパッキンは、合成ゴムにより一体成形されている。ダイヤフラムパッキンは、可撓部の弾性変形により固定部に対してその軸線方向に可動部を相対変位させるとともにその相対変位位置に応じた弾性反力を発生する。可動部の相対変位位置がダイヤフラム式止水弁の弁閉位置に対応する最小変位位置のときの弾性反力は、0.45N以上かつ1.4N以下の範囲内の大きさとされている。また、相対変位位置が最小変位位置以外の相対変位位置のときに発生する弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.43倍以上かつ2.10倍以下の比率範囲内の大きさとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイヤフラム式止水弁において止水状態及び吐水状態を切り替えるダイヤフラムに用いられる止水弁用ダイヤフラムパッキンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば小便器において使用後に洗浄水を供給するフラッシュバルブ装置には、特許文献1に記載されたようなダイヤフラム式止水弁が用いられている。図4に示すように、このダイヤフラム式止水弁は、給水管に接続される1次側水路11aと、小便器の給水管に接続される2次側水路11bとを弁胴13内に備えるとともに、1次側水路11aと2次側水路11bとの間に設けられた弁口15がダイヤフラムパッキン18によって開閉される構成を備えている。ダイヤフラムパッキン18は、弁胴13側に固定される固定部20と、この固定部20の内周側において折り返し形状に形成された可撓部21と、この可撓部21の内周側に形成された可動部22とを備えている。このダイヤフラムパッキン18は、可撓部21の弾性変形により、前記固定部20に対してその軸線方向に可動部22を相対変位させるとともに、その相対変位量に応じた弾性反力を発生する。そして、ダイヤフラムパッキン18は、固定部20に対する可動部22の相対変位によって発生する弾性反力によって可動部22を弁口15側に付勢する。
【0003】
ダイヤフラムパッキン18の背面側には、1次側水路11aに連通された背圧室27が設けられ、小便器の使用後に使用者がダイヤフラム式止水弁の押しボタンを押すと、背圧室27から2次側水路11bに水が一時的に抜かれ、1次側水路11aの水圧によりダイヤフラムパッキン18の可動部22が背圧室27側に押される。このため、1次側水路11aが弁口15を介して2次側水路11bに連通され、洗浄水が小便器に供給される。一方、1次側水路11aの水が、ダイヤフラムパッキン18に設けられた連通孔28を通じて背圧室27に徐々に流入し、背圧室27内の水圧が上昇する。この結果、ダイヤフラムパッキン18の可動部22が、可撓部21の弾性により弁口15側に当接し、1次側水路11aと2次側水路11bとの連通が遮断される。すると、小便器への洗浄水の供給が停止される。
【0004】
ところで、上記のようなダイヤフラムパッキンには、耐久性を向上させるために、ダイヤフラムパッキンの形状に合わせて予め成形された基布がゴムの内部に入れられている。これは、可撓部の強度、さらには耐久性を向上させるためである。このようなダイヤフラムパッキンは、例えば特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2003−202084号公報
【特許文献2】特開平11−351421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献2に記載されたダイヤフラムパッキンの製造は、次のように行われている。まず、成形金型で成形したゴムプレフォームに基布筒状体を被せ、この基布筒状体を熱収縮させることによりゴムプレフォームの外周面近傍に埋設させる。次に、この状態でゴムプレフォームを熱加硫することにより、基布が埋め込まれたゴムパッキンとする。このため、このダイヤフラムパッキンには、基布が必要であるとともに、基布筒状体を熱収縮させる工数が必要であり、コストが高かった。
【0006】
この発明の目的は、基布を不要とすることができる止水弁用ダイヤフラムパッキンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ダイヤフラム式止水弁の弁胴部側に固定される固定部と、この固定部の内周側において折り返し形状に形成された可撓部と、この可撓部の内周側に形成された可動部とからなり、前記可撓部の弾性変形により前記固定部に対しその軸線方向に前記可動部が相対変位可能であるとともにその相対変位位置に応じた弾性反力を発生する止水弁用ダイヤフラムパッキンであって、合成ゴム材料によって一体成形されており、前記相対変位位置が前記ダイヤフラム式止水弁の弁閉時に対応する最小変位位置のときに発生する前記弾性反力を0.45N以上かつ1.4N以下の範囲内の大きさとするとともに、同相対変位位置が前記最小変位位置以外の相対変位位置のときに発生する弾性反力を同最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.43倍以上かつ2.10倍以下の比率範囲内の大きさとしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記可撓部の厚さを、0.45mm以上かつ0.8mm以下の範囲内の値としたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ゴムの硬度を、JIS K 6253の規格におけるタイプAデュロメータ硬さで50以上かつ70以下の範囲内の値としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ダイヤフラム式止水弁における閉弁時の水密性が確保され、止水時における水の漏れが防止される。また、低水圧状態における止水性も確保される。すなわち、この発明では、固定部に対する可動部の軸線方向における相対変位位置がダイヤフラム式止水弁の弁閉時に対応する最小変位位置のときに発生する弾性反力を0.45N以上かつ1.4Nの範囲内の大きさとしている。この弾性反力の範囲は、基布がなくても従来の基布入りのダイヤフラムパッキンにおいて確保されていた弾性反力の範囲と同等である。このため、ダイヤフラム式止水弁の止水時において、ダイヤフラムパッキンを含む弁体が止水弁本体の弁座に対し好適な強さで密接する。従って、ダイヤフラム式止水弁において、閉弁時の水密性と、低水圧状態における止水性とを確保することができる。加えて、この発明によれば、ダイヤフラム式止水弁の吐水時における最大瞬間吐水量が確保されるとともに、総吐水量が確保される。すなわち、この発明では、相対変位位置が相対変位範囲における最小変位位置以外の変位位置であるときに発生する弾性反力を、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.43倍以上かつ2.10倍以下の比率範囲内の大きさとしている。この比率範囲は、基布がなくても従来の基布入りのダイヤフラムパッキンにおいて確保されていた比率範囲と同等である。このため、ダイヤフラム式止水弁の吐水時において、可動部の最大相対変位量が確保されるとともに、可動部が最小変位位置からさらに相対変位している時間の長さが確保される。従って、ダイヤフラム式止水弁において、吐水時における最大瞬間吐水量及び総吐水量が共に確保される。ゆえに、合成ゴム材料により一体成形されたダイヤフラムパッキンによって、ダイヤフラム式止水弁に必要な性能を確保することができる。このため、基布を不要とすることができる。
【0010】
また、可撓部の厚さを、0.45mm以上かつ0.8mm以下の範囲内の値とすることが好ましい。この構成によれば、固定部に対する可動部の相対変位位置が止水弁の弁閉時に対応する最小変位位置のときに発生する弾性反力を0.45N以上かつ1.4N以下の範囲内の大きさとすることができるとともに、同相対変位位置が前記可動部の相対変位範囲における最小変位位置以外の変位位置のときに発生する反力を、同最小変位位置のときの弾性反力の0.43倍以上かつ2.10倍以下の比率範囲内の値とすることができる。
【0011】
また、ゴムの硬度を、JIS K 6253の規格におけるタイプAデュロメータ硬さで50以上かつ70以下の範囲内の値とすることが好ましい。この構成によれば、固定部に対する可動部の相対変位位置が止水弁の弁閉時に対応する最小変位位置のときに発生する弾性反力を0.45N以上かつ1.4N以下の範囲内の大きさとすることができるとともに、同相対変位位置が前記可動部の相対変位範囲における最小変位位置以外の変位位置のときに発生する弾性反力を、同最小変位位置のときの弾性反力の0.43倍以上かつ2.10倍以下の比率範囲内の値とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、この発明を、小便器用のフラッシュバルブ装置に備えられたダイヤフラムパッキンに具体化した一実施形態について図1〜図4に従って説明する。
図4に示すように、ダイヤフラム式止水弁としてのフラッシュバルブ装置10は、第1ハウジング12を備えるとともに、この第1ハウジング12とともに弁胴13を構成する第2ハウジング14を備えている。第1ハウジング12には、水道管が接続された1次側水路11aと、小便器側に接続される2次側水路11bとが形成されている。
【0013】
第1ハウジング12には、1次側水路11aと2次側水路11bとを連通するための弁口15が設けられるとともに、第2ハウジング14の下側には、この弁口15に対面する弁室16が設けられている。弁室16内には、弁口15を開閉するダイヤフラム弁体17が配置され、このダイヤフラム弁体17は、合成ゴムにより一体成形された環状のダイヤフラムパッキン18を備えている。
【0014】
ダイヤフラムパッキン18は、図1に示すように、外周縁を構成する固定部20、この固定部20の内周側に形成されるとともに折り返し形状とされた可撓部21、及び、この可撓部21の内周側に形成された可動部22を備えている。ダイヤフラムパッキン18は、JIS K 6253の規格におけるタイプAデュロメータ硬さで50以上かつ70以下の範囲内の硬度とされるとともに、可撓部21は、0.45mm以上かつ0.8mm以下の範囲内の厚さに設定されている。自然状態のダイヤフラムパッキン18においては、図1において、固定部20の下面と可動部22の下面とがほぼ同じ位置に配置される。また、ダイヤフラムパッキン18の可動部22は、図1に二点鎖線で示すように、可撓部21の弾性変形により、固定部20に対してその軸線方向に相対変位可能となっている。このとき、可撓部21は、可動部22を元の位置に戻そうとする軸線方向下向きの弾性反力を、そのときの相対変位量に応じた大きさで発生する。
【0015】
図4に示すように、ダイヤフラムパッキン18は、固定部20が第1ハウジング12と第2ハウジング14との間に挟持された状態で弁室16内に保持されている。ダイヤフラムパッキン18の内周側には、前記可撓部21の内周側の壁面に密接する略円筒形状の形状保持部材23が配置されるとともに、弁口15内に沿って案内された状態で形状保持部材23に結合された変位案内部材24が配置されている。また、ダイヤフラムパッキン18の内周側には、形状保持部材23及び変位案内部材24に挟持されるとともに形状保持部材23との間でダイヤフラムパッキン18の可動部22を挟持する結合部材25と、変位案内部材24と結合部材25との間に挟持されるとともに弁口15の弁座15aに当接可能なシール部材26とが配置されている。このダイヤフラム弁体17は、弁室16の上部側を背圧室27として1次側水路11a側から区画するとともに、シール部材26を弁口15の弁座15a(図2に図示)に当接させることにより1次側水路11aと2次側水路11bとの弁室16の下部側を通じた連通を遮断可能とされている。また、ダイヤフラム弁体17は、ダイヤフラムパッキン18の可撓部21の弾性変形により、弁口15の軸線方向、すなわち、ダイヤフラムパッキン18の軸線方向に変位可能となっている。さらに、ダイヤフラム弁体17には、1次側水路11aと背圧室27とを常時連通する連通路28が設けられている。
【0016】
このダイヤフラム弁体17は、シール部材26が弁口15の弁座15aに当接した状態に保持される。このとき、ダイヤフラムパッキン18の可動部22は、シール部材26が弁座15aに当接することにより、可撓部21の弾性変形を伴って、固定部20に対し上方に所定の変位量だけ相対変位した位置(以下、最小変位位置という。)に配置される。また、ダイヤフラム弁体17は、弁室16の天井面と、変位案内部材24の上部との間に介在された圧縮コイルばね29の弾性付勢力によってシール部材26が弁座15aに当接する位置に保持される。
【0017】
また、図2に示すように、第2ハウジング14の上壁部には、弁室16内に貫通する雌ねじ孔14aが設けられ、この雌ねじ孔14aには、下端が弁室16内に配置された水量調節ねじ30が螺合されている。そして、水量調節ねじ30の下端にダイヤフラム弁体17の変位案内部材24の上面が当接されることにより、ダイヤフラム弁体17の上方への変位を規制するようになっている。従って、ダイヤフラム弁体17は、シール部材26が弁座15aに当接する弁閉位置から、変位案内部材24が水量調節ねじ30に当接する弁開位置までの範囲を変位する。この弁開位置は、水量調節ねじ30の設定により、所定範囲で調節可能である。このとき、ダイヤフラムパッキン18の可動部22は、弁開位置に対応した前記最小変位位置から、任意の弁開位置に対応した変位位置までの範囲を変位する。この変位位置は、最小変位位置から所定の最大変位位置までの所定範囲内の任意の位置である。
【0018】
最小変位位置における可動部22の固定部20に対する相対変位量は1mmとされるとともに、このとき可撓部21が発生する弾性反力の大きさは、ゴム硬度、及び、可撓部21の厚さの設定により0.45N以上かつ1.4Nの範囲内の値とされている。また、所定範囲の変位位置に対応する相対変位量の範囲は1〜15mmとされている。すなわち、可動部22の固定部20に対する相対変位量の範囲は1〜15mmである。そして、最小変位位置以外の変位位置において可撓部21が発生する弾性反力は、ゴム硬度、及び、可撓部21の厚さの設定により、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.43倍以上かつ2.10倍以下の比率範囲内の大きさとされている。
【0019】
また、第1ハウジング12及び第2ハウジング14により、背圧室27を2次側水路11bに連通する水抜通路31が形成されている。また、第1ハウジング12には、小便器の使用者の操作により、水抜通路31を介して背圧室27から2次側水路11bに水を抜くための周知の起動弁32が設けられている。
【0020】
以上のように構成されたフラッシュバルブ装置10において、起動弁32が操作されていない状態では、図4に示すように、可動部22の最小変位位置に対応して可撓部21が発生する弾性反力と、圧縮コイルばね29の反力とにより、ダイヤフラム弁体17のシール部材26が弁座15aに押し付けられた状態で保持される。また、背圧室27における水圧が1次側水路11aにおける水圧と同じとなっているため、ダイヤフラム弁体17に対し下向きに加わる力の大きさが、上向きに加わる力の大きさを上回る。このため、ダイヤフラム弁体17は、背圧室27と1次側水路11aとの水圧差に基づく下向きの力により弁座15aに押し付けられる。
【0021】
小便器の使用者により起動弁32が操作されると、背圧室27の水が水抜通路31を通じて2次側水路11bに排出され、背圧室27の水圧によりダイヤフラム弁体17に加わる下向きの力が消失する。そして、1次側水路11aの水圧によりダイヤフラム弁体17に対して加わる上向きの力が、ダイヤフラムパッキン18の可撓部21の弾性反力、及び、圧縮コイルばね29の反力による下向きの力を上回る。このため、ダイヤフラム弁体17は、図2に示すように、ダイヤフラムパッキン18の可撓部21の弾性変形を伴って弁室16内を上方に変位し、ダイヤフラム弁体17のシール部材26が弁座15aから離間する。この結果、1次側水路11aから2次側水路11bに水道水が供給され、この水道水が小便器に供給される。
【0022】
起動弁32が使用者により操作されなくなると、背圧室27から2次側水路11bへの水抜通路31を通じた水の排出が停止される。すると、連通路28を通じて1次側水路11aから背圧室27に導入される水によって背圧室27における水圧が徐々に上昇し、背圧室27の水圧によりダイヤフラム弁体17に対して加わる下向きの力が徐々に増大する。このため、ダイヤフラム弁体17が弁室16内を徐々に下降して、1次側水路11aと2次側水路11bとの連通度合いが徐々に小さくなる。そして、ダイヤフラム弁体17の下降に伴ってシール部材26が弁座15aに押し付けられると、1次側水路11aから2次側水路11bへの水の供給が停止される。
【0023】
従って、起動弁32が操作された時点からダイヤフラム弁体17が自動で弁座15aに当接するまでの間、1次側水路11aから2次側水路11bに水が供給され、この水が小便器に供給される。
【0024】
以上のように構成されたダイヤフラムパッキン18においては、可動部22がフラッシュバルブ装置10の閉弁状態に対応する最小変位位置のときに可撓部21が発生する弾性反力を0.45N以上かつ1.4N以下の範囲内の大きさとしている。この弾性反力の範囲は、従来の基布入りのダイヤフラムパッキンにおいて確保されていた反力の範囲と同等である。このため、フラッシュバルブ装置10の止水状態においてシール部材26が弁座15aに対して好適な範囲内の強さで押し付けられる。従って、フラッシュバルブ装置10における閉弁状態での水密性が確保され、止水状態において1次側水路11aから2次側水路11bへの水の漏れが防止される。また、低水圧状態における止水性が確保される。ゆえに、小便器の未使用時における水の漏れが防止される。加えて、可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外の変位位置であるときに可撓部21が発生する弾性反力を、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.43倍以上かつ2.10倍以下の比率範囲内の大きさとしている。この比率範囲は、従来の基布入りのダイヤフラムパッキンにおいて確保されていた比率範囲と同等である。このため、フラッシュバルブ装置10の吐水時において、可動部22の最大相対変位量が確保されるとともに、可動部22が最小変位位置から離れている時間の長さが確保される。このため、フラッシュバルブ装置10の吐水時における最大瞬間吐水量が確保されるとともに総吐水量が確保されるので、小便器における洗浄性が確保される。従って、合成ゴム材料により一体成形されたダイヤフラムパッキン18によって、ダイヤフラム式止水弁に必要な性能を確保することができるので、基布を不要とすることができる。ゆえに、ダイヤフラムパッキン18のコストを低減することができる。
【0025】
次に、上記のように構成されたダイヤフラムパッキン18の実施例について比較例とともに説明する。
【実施例】
【0026】
(製造条件)
各実施例1〜6及び比較例1,2に共通するダイヤフラムパッキン18の製造条件は、以下の通りである。
【0027】
a.原料 : エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(Ethylene Propylene Diene Monomer;EPDM)、又は、塩素化ポリエチレン(Chlorinated Polyethylene : CPE )。
【0028】
b.成形方法 : 射出成形による一体成形。
(評価方法)
ダイヤフラムパッキン18において、その固定部20に対してその軸線方向に可動部22を相対変位させたときに、その相対変位量に対応して可撓部21が発生する弾性反力の大きさを測定する。また、ダイヤフラムパッキン18として、ゴム材料の硬度と、可撓部21の厚さとを異ならせたものを用意し、これらに対して、相対変位量に対する弾性反力の大きさをそれぞれ測定する。
【0029】
(評価結果)
ゴム材料の硬度と、可撓部21の厚さとを異ならせたダイヤフラムパッキン18の各実施例1〜6及び各比較例1,2について、相対変位量に対する弾性反力の関係を評価した結果は以下の通りである。
【0030】
【表1】

図3に示すグラフは、各実施例1〜6及び各比較例1,2について、固定部20に対する軸線方向での可動部22の相対変位量と、この相対変位量に対応して可撓部21が発生する軸線方向の弾性反力との関係を示している。ゴム材料の硬度は、JIS K 6253の規格におけるタイプAデュロメータ硬さで50以上かつ70以下の範囲内で設定され、可撓部21の厚さは、0.45mm以上かつ0.8mm以下の範囲内で設定されている。また、表1は、各実施形態1〜6及び各比較例1,2について、固定部20に対する可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外の相対変位位置であるときに発生する弾性反力の最大値及び最小値と、最小変位位置のときの弾性反力に対する同最大値及び最小値の比率とを示している。
【0031】
表1に示すように、ゴム材料の硬度を60とするとともに可撓部21の厚さを0.45mmとした実施例1では、最小変位位置のときに発生する弾性反力の大きさが0.45Nとなるとともに、最小変位位置以外での弾性反力の最小値が0.2N、同じく最大値が0.6となる。従って、可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外のときの弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.44〜1.33の比率範囲内の大きさとなる。
【0032】
また、ゴム材料の硬度を70とするとともに可撓部21の厚さを0.45mmとした実施例2では、最小変位位置のときに発生する弾性反力の大きさが0.7Nとなるとともに、最小変位位置以外での弾性反力の最小値が0.3N、同じく最大値が1.0Nとなる。従って、可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外のときの弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.43〜1.43の比率範囲内の大きさとなる。
【0033】
また、ゴム材料の硬度を50とするとともに可撓部21の厚さを0.6mmとした実施例3では、最小変位位置のときに発生する弾性反力の大きさが0.6Nとなるとともに、最小変位位置以外での弾性反力の最小値が0.3N、同じく最大値が0.95Nとなる。従って、可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外のときの弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.50〜1.58の比率範囲内の大きさとなる。
【0034】
また、ゴム材料の硬度を60とするとともに可撓部21の厚さを0.6mmとした実施例4では、最小変位位置のときに発生する弾性反力の大きさが0.9Nとなるとともに、最小変位位置以外での弾性反力の最小値が0.4N、同じく最大値が1.4Nとなる。従って、可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外のときの弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.44〜1.56の比率範囲内の大きさとなる。
【0035】
また、ゴム材料の硬度を70とするとともに可撓部21の厚さを0.6mmとした実施例5では、最小変位位置のときに発生する弾性反力の大きさが1.4Nとなるとともに、最小変位位置以外での弾性反力の最小値が0.7N、同じく最大値が2.1Nとなる。従って、可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外のときの弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.50〜1.50の比率範囲内の大きさとなる。
【0036】
また、ゴム材料の硬度を50とするとともに可撓部21の厚さを0.8mmとした実施例6では、最小変位位置のときに発生する弾性反力の大きさが1.0Nとなるとともに、最小変位位置以外での弾性反力の最小値が0.8N、同じく最大値が2.1Nとなる。従って、可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外のときの弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.80〜2.10の比率範囲内の大きさとなる。
【0037】
これに対し、ゴム材料の硬度を70とするとともに可撓部21の厚さを0.8mmとした比較例1では、最小変位位置のときに発生する弾性反力の大きさが2.4Nとなるとともに、最小変位位置以外での弾性反力の最小値が1.9N、同じく最大値が5.0Nとなる。従って、可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外のときの弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.79〜2.08の比率範囲内の大きさとなる。
【0038】
また、ゴム材料の硬度を60とするとともに可撓部21の厚さを1.0mmとした比較例2では、最小変位位置のときに発生する弾性反力の大きさが2.2Nとなるとともに、最小変位位置以外での弾性反力の最小値が1.2N、同じく最大値が5.0Nとなる。従って、可動部22の相対変位位置が最小変位位置以外のときの弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.55〜2.27の比率範囲内の大きさとなる。
【0039】
従って、ダイヤフラムパッキン18が、各実施例1〜6から把握される下記の条件を満たしていれば、フラッシュバルブ装置10の閉弁状態に対応する最小変位位置においてダイヤフラムパッキン18が発生する反力が0.45N以上かつ1.4N以下の範囲内の大きさとなる。また、最小変位位置以外の変位位置においてダイヤフラムパッキン18が発生する弾性反力は、最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.43倍以上かつ2.10倍以下の比率範囲内の大きさとなる。
【0040】
・可撓部21の厚さが0.45mm以上かつ0.80mm以下の範囲内であること。
・ゴム硬度が50以上かつ70以下の範囲内であること。
このようなダイヤフラムパッキン18であれば、基布がなくても、基布入りのダイヤフラムパッキンと同等の機能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態のダイヤフラムパッキンを示す縦断面図。
【図2】吐水状態のダイヤフラム式吐水弁の要部を示す縦断面図。
【図3】実施例及び比較例の評価結果を示すグラフ。
【図4】フラッシュバルブ装置を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0042】
10…ダイヤフラム式止水弁としてのフラッシュバルブ装置、12…弁胴部を構成する第1ハウジング、13…弁胴部、14…同じく第2ハウジング、20…固定部、21…可撓部、22…可動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラム式止水弁の弁胴部側に固定される固定部と、この固定部の内周側において折り返し形状に形成された可撓部と、この可撓部の内周側に形成された可動部とからなり、前記可撓部の弾性変形により前記固定部に対しその軸線方向に前記可動部が相対変位可能であるとともにその相対変位位置に応じた弾性反力を発生する止水弁用ダイヤフラムパッキンであって、
合成ゴム材料によって一体成形されており、前記相対変位位置が前記ダイヤフラム式止水弁の弁閉時に対応する最小変位位置のときに発生する前記弾性反力を0.45N以上かつ1.4N以下の範囲内の大きさとするとともに、同相対変位位置が前記最小変位位置以外の相対変位位置のときに発生する弾性反力を同最小変位位置のときに発生する弾性反力の0.43倍以上かつ2.10倍以下の比率範囲内の大きさとしたことを特徴とする止水弁用ダイヤフラムパッキン。
【請求項2】
前記可撓部の厚さを、0.45mm以上かつ0.8mm以下の範囲内の値としたことを特徴とする請求項1に記載の止水弁用ダイヤフラムパッキン。
【請求項3】
前記ゴムの硬度を、JIS K 6253の規格におけるタイプAデュロメータ硬さで50以上かつ70以下の範囲内の値としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の止水弁用ダイヤフラムパッキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−187187(P2007−187187A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3863(P2006−3863)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(596004761)イノアックエラストマー株式会社 (33)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】