説明

正常な呼吸リズムを回復するための組み合わせS−ニトロソチオールをベースとする製薬学的製品

本発明は、睡眠、肥満、ある種の薬物および他の医学症状に関連する無呼吸および換気過少の処置を含む、正常な呼吸制御の欠如を処置する方法に対向される。ある態様では、本発明は、化合物の少なくとも1種が正常な呼吸の欠如を処置する、2種以上の化合物の組み合わせ物を含んでなる組成物を投与することによって、呼吸の障害された制御を処置することに対向される。1つの態様では、化合物はS−ニトロシル化作用物質である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
呼吸の正常な制御は、血液、組織および脳における二酸化炭素、pHおよび酸素レベルのような化学的刺激に対する身体の判断および応答を伴う複雑なプロセスである。呼吸制御はまた、覚醒状態(wakefulness)(すなわち、患者が目覚めているか、または眠っているか)によって影響される。脳髄質内には、呼吸に影響を与え、そして呼吸作業を実行する筋肉への命令を発する種々のシグナルを判断する呼吸制御中枢が存在する。鍵になる筋肉群は、腹部、横隔膜、咽頭および胸郭に置かれている。中枢および末梢に置かれたセンサーが、次に、酸素要求量の変化への応答を可能にする脳の中枢呼吸制御域に対する入力を提供する。
【0002】
正常な呼吸リズムは、主として、二酸化炭素レベル(CO)における変化に対する身体の迅速な応答によって維持される。増大されたCOレベルは、より高い酸素レベルと、それに続くより低いCOレベルをもたらす呼吸の速度と深さを増大するよう身体に信号を伝える。反対に、低いCOレベルは、呼吸への刺激が不在であるので、無呼吸(呼吸しない)期間をもたらすであろう。これは、人が過度に呼吸する場合に起ることがある。
【0003】
脳の役割に加えて、呼吸の制御は、末梢および中枢の両化学受容器からのフィードバックの結果である−各々の正確な寄与は未知であるが。
【0004】
疾病の一次または二次的特徴として正常な呼吸リズムの喪失を有する広い種類の疾病が存在する。一次的な呼吸リズム制御の喪失は、無呼吸(呼吸が繰り返して10〜60秒間停止する中枢性、混合性および閉塞性)および先天性中枢性換気過少症候群である。呼吸リズムの二次的喪失は、慢性心肺疾患(例えば、心不全、慢性気管支炎、気腫および切迫した呼吸不全)、過剰体重(例えば、肥満−換気過少症候群)、ある種の薬物(例えば、麻酔薬、鎮静薬、抗不安薬、催眠薬、アルコール、麻酔性鎮痛薬)および/または神経系に影響する因子(例えば、卒中、腫瘍、外傷、照射損傷、ALS)によるものであってもよい。身体が慢性的に低レベルの酸素に曝露される慢性閉塞性肺疾患では、身体がCO/pH呼吸刺激を部分的に中和する効果を有する重炭酸塩の腎臓媒介の保持によって低pHに適応する。かくして、患者は、低感受性の酸素に基づく系に頼らねばならない。
【0005】
特に、睡眠中の正常な呼吸リズムの喪失は共通の症状である。睡眠時無呼吸は、頻繁に起きる無呼吸もしくは部分呼吸の期間を特徴とする。これらの無呼吸に寄与する鍵因子は、CO受容器感受性における減少、低酸素換気応答感受性における減少(例えば、低酸素レベルに対する応答の減少)および「覚醒(wakefulness)」の喪失を含む。正常な呼吸リズムが乱されるとともに、低酸素症(および関連する酸化ストレス)と、最後には重篤な心臓血管の結末(高血圧、卒中、心臓発作)がもたらされる。いびきは、睡眠時無呼吸と合わせていくつかの特徴を有する。上部気道筋はそれらの緊張(tone)を失って、いびきに関連する音だけでなく、低酸素をもたらすであろう非効率な空気流動をもたらす。
【0006】
多くの呼吸制御障害のための決定的な処置は、機械的換気か、または正の気道圧デバイス(例えば、連続ポジティブ気道圧デバイス(CPAPデバイス)、2−レベル・ポジティブ気道圧デバイス(BiPAPデバイス))のいずれかである。数種の薬理学的作用物質が、睡眠関連呼吸障害における呼吸を制御するための介入物(interventions)として提案された。De Backerは総説を提供し、そしてプロゲスチン(Progestin)、アルミトリン(Almitrine)およびアセタゾールアミドを記述した(非特許文献1)。HudgelおよびThanakitcharuもまた、睡眠障害性呼吸の薬理学的処置の総説を提供し、そして他の作用物質に加えて、メドロキシプロゲステロン(medroxyprogesterone)、甲状腺還納(thyroid replacement)、アセタゾールアミド、テオフィリン(theophylline)、三環式抗うつ薬、セロトニン再吸収インヒビターおよびクロニジン(clonidine)を記述した(非特許文献2)。2005年には、QureshiおよびLee−Chiongは、広範な種類の薬理学的処置を含む、閉塞性睡眠時無呼吸症を処置するための種々の医学的選択肢の総説を提供した。数種の作用物質は、ベンゾジアゼピン、麻薬、アセタゾールアミド、抗うつ薬、およびアゴニスト、再吸収インヒビターまたはアンタゴニストのいずれかのようなセロトニンに影響を与える作用物質を含んだ(非特許文献3)。
【0007】
特に、DeBackerは、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤アセタゾールアミドの低用量が、呼吸刺激のメカニズムとしてpHを低下させるというその伝統的作用には関係しない有益な効果を発揮するとみられることを指摘した。中枢性無呼吸患者における小さい無統制の臨床研究では、低用量のアセタゾールアミドは、無呼吸エピソードを処置前の25.5から処置1カ月後には6.8に減少させる(73%)ことが見出だされた。比較的低い低下(約25%)は、顕著に閉塞性睡眠時無呼吸を有する患者において見られた。
【0008】
さらに近年、CarleyおよびRadulovackiは、閉塞性睡眠時無呼吸において崩壊する、のどの部分の運動緊張(tone)を増加させるためにセロトニンアゴニスト/アンタゴニスト組み合わせ物の使用を記述した(非特許文献4)。この概念は、現在、Organon and Cypress Bioscienceおよび別グループ、BTG,plcからなる共同体によって商業的に開発中である(参照、例えば、特許文献1、2および3)。
【0009】
GastonおよびGozalは、S−ニトロソチオール・シグナル伝達経路が、細かい(minute)換気を増大することによって呼吸を制御させるために使用できることを例証することによって基本的に異なるアプローチを提案した(特許文献4、これは完全に、引用によって本明細書に組み入れられている)。彼らは、中枢的に媒介される低酸素換気応答系が、ある種のS−ニトロソチオール化合物の制御下にあることを最初に例証した。GastonおよびGozalは、他の反応の中でも、呼吸の速度と深さの増大を惹起する低酸素レベルに対する身体の典型的な応答を誘導することができる1群の化合物を例証している。
【0010】
哺乳動物が呼吸し、そして利用できる酸素量と身体の需要量にしたがって呼吸を改変する能力は、生残のためには必須である。一次的もしくは二次的いずれかの原因による呼吸リズムの喪失を特徴とする種々の症状が存在する。米国におけるもっとも頻度の高い症状の数例について罹患した個人の評価は、睡眠時無呼吸症:1.5〜2千万人;肥満−換気過少症候群:0.5〜1千万人;慢性心疾患:5百万人;慢性閉塞性肺疾患(COPD)/慢性気管支炎:1千万人;薬物由来の換気過少:2〜5百万人;および機械的換気離脱:0.5百万人を含む。
【0011】
呼吸の制御は複雑なプロセスである。それは、呼吸動因(respiratory drive)、およびまた空気流動が起きるチューブの直径を必要とする。例えば、動物がストローを通して呼吸することを仮想せよ。ストローが乾燥していて、かつ壁が堅い場合には、空気は、吸気(陰圧)および呼気(陽圧)の両方においてスムーズに流れるであろう。しかしながら、ストローが濡れてくると、吸入中に壁はつぶれ、そして動物は少しの空気も吸入することができなくなる。この「濡れたストロー」の例は、睡眠時無呼吸症に罹患した患者でたまたま起きることを部分的に表している。睡眠時無呼吸を有する患者が睡眠に入ると、呼吸動因は減少し、そして気道における筋肉の緊張は減少し、かつ気道は吸気中につぶれて、正常な呼吸に対する閉塞を惹起する。睡眠時無呼吸症のための現在の処置は、主として、正の気道圧(PAP)デバイスの使用である。これらのデバイスによるコンプライアンスは通常非常に乏しい。正の気道圧デバイスに対して単独でもまた補助物としても使用されて、気道の能力を維持するために必要な圧力を低下させることができる製薬学的生産物は、これらのPAPデバイスによるコンプライアンスを改善するか、または処置の代替手段を提供するかいずれかの重要な進歩になるであろう。
【0012】
したがって、COおよび/または酸素における変化に対応して、身体の正常な呼吸制御系の全部または一部を回復することができる組み合わせ製薬学的生産物は、呼吸制御障害の発生および重篤度の減少において有益であろう。現在、最小の副作用により患者に投与できるそのような生産物に対する未対処のニーズが存在している。本発明はこのニーズに向かい、そして対処する。
【特許文献1】米国特許出願公開第20060039866号
【特許文献2】米国特許出願公開第20060039867号
【特許文献3】米国特許出願公開第20060122127号
【特許文献4】国際特許出願公開第WO03/015605号
【非特許文献1】DeBacker WA,1995 Eur.Respir.J.8:1372−1383
【非特許文献2】Hudgel DW and Thanakitcharu S.1998 Am J Respir Crit Care Med 158:691−699
【非特許文献3】Qureshi A and Lee−Chiong,JR,TL Sem.Resp Crit Care Med 2005;26:96−108
【非特許文献4】Carley and Radulovacki,1999,Am.J.Respir.Crit.Care Med.160:1824−1829
【発明の開示】
【0013】
本発明は、S−ニトロソチオール第一の化合物を含んでなる第一の組成物、およびS−ニトロソチオール化合物ではない第二の化合物を含んでなる第二の組成物であって、第二の化合物が呼吸リズムを安定化する活性を有する組成物、を含んでなる、呼吸リズムを安定化するための治療用組成物を含む。
【0014】
ある態様では、第二の化合物は、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、セロトニンアゴニスト、セロトニンアンタゴニスト、NADPHオキシダーゼ阻害剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、COX−2インヒビターおよびテオフィリンからなる群から選ばれる。1つの実施態様では、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、アセタゾールアミドおよびトピラメートからなる群から選ばれる。その他の実施態様では、第二の化合物は、ミルタジピン(mirtazipine)およびセチプチリン(setiptiline)からなる群から選ばれる四環式抗うつ薬である。
【0015】
その他の実施態様では、セロトニンアゴニストは、ミルタザペン(mirtazapene)、ブスピロン(buspirone)およびセロトニン再吸収インヒビターからなる群から選ばれる。ある実施態様では、セロトニンアンタゴニストはオンダンセトロン(ondansetron)である。
【0016】
その他の実施態様では、本発明は、アポシニン(apocynin)、4−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、N−バニリルノナンアミド(N−vanillylnonanamide)およびスタウロスポリン(staurosporine)からなる群から選ばれるNADPHオキシダーゼ阻害剤を含む。
【0017】
本発明は、S−ニトロソチオール第一の化合物を含んでなる第一の組成物、およびS−ニトロソチオール化合物ではない第二の化合物を含んでなる第二の組成物であって、第二の化合物が呼吸リズムを安定化する活性を有する組成物、を含んでなる治療用組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の呼吸リズムを安定化する方法を含む。
【0018】
本発明は、第三の化合物がS−ニトロソチオール化合物である、第三の化合物をさらに含んでなる治療用組成物を含む。また本発明は、第三の化合物がS−ニトロソチオール化合物ではない、第三の化合物をさらに含んでなる治療用組成物を含む。
【0019】
本発明は、本明細書に記述されるような組成物および製薬学的に許容できる担体を含んでなる製薬学的組成物を含む。
【0020】
本発明は、本明細書に記述されるような治療用組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の呼吸リズムを安定化する方法を含む。
【0021】
また本発明は、哺乳動物の呼吸リズムを安定化する方法であって、該方法が請求項1の治療用組成物を哺乳動物に投与することを含み、該方法が換気補助デバイスにより該哺乳動物を処置することをさらに含む方法を含む。ある実施態様では、換気補助デバイスは、CPAPデバイスおよびBiPAPデバイスからなる群から選ばれる。
【0022】
本発明の方法では、投与の経路は、非経口、経口および口腔内からなる群から選ばれる。ある実施態様では、投与の非経口経路は、経皮、静脈内、筋肉内および皮内からなる群から選ばれる。その他の実施態様では、組成物は、少なくとも2種の投与経路によって投与される。
【0023】
本発明は、S−ニトロソチオール第一の化合物を含んでなる第一の組成物;およびS−ニトロソチオール化合物ではない第二の化合物を含んでなる第二の組成物であって、第二の化合物が弧束核(nucleus tractus solitarius)における脳幹呼吸制御中枢のレベルにおける細かい(minute)換気(V)を増大する活性を有する、組成物;を含んでなる治療用組成物を個人に投与する段階を含む、個人の弧束核における脳幹呼吸制御中枢のレベルにおける細かい換気(V)を増大する方法を含む。
【0024】
本発明を具体的に説明する目的のために、本発明のある種の実施態様を図面において描写している。しかしながら、本発明は、図面において描写される実施態様の正確な配置および手段に限定されるものではない。
【0025】
図1は、哺乳動物の呼吸制御の複雑かつ相互に関連する性質を具体的に説明している。
【0026】
図2A−2Cを含む図2は、呼吸制御に影響する因子を具体的に説明している。図2Aは、正常な呼吸制御に影響する因子を具体的に説明している。正常には、呼吸動因は状態の範囲を越えて(across)作用することができ、そして二酸化炭素と酸素レベルが主動因物(driver)であり、そして相互関係様式で働く。図2Bは、障害された呼吸制御に影響する因子を具体的に説明している。広い範囲の因子が個々に、または組み合わされて働いて、呼吸動因を減少させ呼吸停止または不十分な呼吸をもたらす。究極の結末は、心臓血管の、神経学的および/または代謝的結果をもたらす低酸素症である。図2Cは、障害された呼吸制御の有効な薬物治療のために考慮される因子を具体的に説明している。薬物は、定められた経路を通して、または上部気道における空気流動を改善することによって、呼吸動因を回復するのを助けるために有用である。究極の結末は、本発明の1つの実施態様では、障害された呼吸(例えば、無呼吸、減呼吸、換気過少)、低酸素症および関連する結果を低下させることである。
【0027】
本発明は、賞賛すべき活性を提供する他の薬物とともに、S−ニトロソチオールの投与による低酸素換気応答制御を組み合わせることによって、睡眠時無呼吸を処置するための、組み合わせ物、または「多薬物(multi−drug)」、アプローチに関する。
【0028】
本発明は、2種以上の化合物の組み合わせ物を含んでなる組成物が、経路の1つが呼吸リズムの回復のためにS−ニトロソチオール処置により影響される2つ以上の生理学的経路に作用することによって、呼吸制御の障害の処置において増進された有効性を提供してもよいことを提供する。本発明のその他の態様では、2種以上の化合物の組み合わせ物を含んでなる組成物は、同じ生理学的経路に作用することによって、呼吸制御の障害の処置において増進された有効性を提供してもよい。
【0029】
乏しいまたは非効率な呼吸動因は換気過少をもたらし、これはさらに低酸素症をもたらす。低酸素症の主な初期の臨床的発現は、うとうと状態または過度の日中の眠気である。したがって、低下された呼吸動因およびそれに由来する低酸素症を惹起する薬物は、生命の本質に否定的に強い衝撃を与える、生命を脅かす呼吸抑鬱症および/または過度の日中の眠気という恐れのゆえに、それらの有用性において時には制限される。呼吸動因不足からの低酸素のその他の結末は、長期間の心臓血管および/または代謝の結末に結び付けられる酸化ストレスである。酸化ストレスを低下させるのを助ける作用物質とともに、呼吸リズムを回復させる化合物を組み合わせた組み合わせ生産物は、低酸素の短期および長期結果を軽減する重要な二重作用方式を提供することができる。
【0030】
本明細書に記述されるように、呼吸動因を減少させる薬物の呼吸抑制効果を打ち消すようにS−ニトロソチオール化合物を含む組み合わせ組成物は、血液および組織における正常な酸素レベルを維持するのを助けることによって患者に対して利益を提供することができる。限定されるものではない例としては、麻酔性鎮痛薬(例えば、モルフィン、フェンタニル、オキシコドン、ブプレノルフィン)が疼痛を緩和するためにがん患者に投与される。この用量は、呼吸抑制の恐れによってしばしば制限される。加えて、これらの薬物による部分的呼吸抑制は、低酸素症とそれに由来する過度の日中の眠気を惹起し、これが生命の質を衰弱させ、かつ重度に低下させることがある。一般的麻酔薬は、呼吸に対して類似の抑制効果を発揮することがあり、そして手術室から外科回復域への患者の移行を遅らせる。それ故、S−ニトロソチオール化合物を含んでなる組み合わせ組成物は、麻酔薬の長引く影響を打ち消し、そして患者を自分自身で呼吸可能にさせるのに十分な呼吸動因を回復するために有用である。
【0031】
限定されるものではないその他の例としては、過剰体重が呼吸動因を低下させることがあり、これが換気過少と低酸素をもたらす。この症状は、肥満−換気過少症候群と呼ばれる。過剰体重は、また、睡眠関連呼吸障害における危険因子である。したがって、S−ニトロソチオール化合物を含んでなる組み合わせ組成物は、肥満の呼吸抑制効果を打ち消すのに有用である。
【0032】
また、本発明の組み合わせ組成物は、上部気道の筋肉緊張を増大し、換気/潅流(perfusion)の適合を改善し、そして本明細書に記述されるように、なかんずく、エリトロポイエチン生産を増大するために有用である。
【0033】
<発明の詳細な記述>
定義
本明細書で使用されるように、次に示す用語の各々は、本節においてそれに関連する意味を有する。
【0034】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的の1つ、または1つ以上(少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。例を挙げれば、「an element」は、1つまたは1つ以上の要素を意味する。
【0035】
用語「about」は、当業者によって理解でき、そしてそれが使用される文脈においてある程度まで変えることができる。
【0036】
本明細書で使用されるように、用語「無呼吸」は、呼吸の間欠的停止をもたらす正常呼吸の不在を意味する。
【0037】
「アンチセンス」は、特に、ポリペプチドをコードしている二本鎖DNA分子の非コーディング鎖の核酸配列、または非コーディング鎖に対して実質的に相同である配列を指す。本明細書で定義されるように、アンチセンス配列は、ポリペプチドをコードしている二本鎖DNA分子の配列に対して相補的である。アンチセンス配列がDNA分子のコーディング鎖のコーディング部分にのみ相補的であることは必ずしも必要ではない。アンチセンス配列は、ポリペプチドをコードしているDNA分子のコーディング配列上の特定の調節配列に相補的であってもよく、この調節配列はコーディング配列の発現を制御する。
【0038】
「Cheyne−Stokes呼吸」は、無呼吸および/または減呼吸をもたらす呼吸の漸強パターンを特徴とする特定の呼吸パターンを指す。この症状の目立つ特質は、呼吸が血液酸素レベルと位相が異なってくることである。
【0039】
本明細書で使用されるように「内因性」は、生体、細胞、組織または系の内からのまたはその内で産生されるすべての材料を指す。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「外因性」は、生体、細胞、組織または系の外から導入されるかまたはその外で産生されるすべての材料を指す。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「発現」は、そのプロモーターによって作動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0042】
本明細書で使用されるように用語「発現ベクター」は、転写されることが可能な遺伝子産物の少なくとも一部をコードしている核酸配列を含有するベクターを指す。ある場合には、RNA分子は、次にタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドに翻訳される。他の場合には、これらの配列は、例えば、アンチセンス分子、siRNA、リボザイムなどの産生において翻訳されない。発現ベクターは種々の調節配列を含有してもよく、これらは、特定の宿主生物における操作可能に結合されたコーディング配列の転写および可能ならば翻訳のために必須の核酸配列を指す。転写および翻訳を支配する調節配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、同様に他の機能に役立つ核酸配列を含有してもよい。
【0043】
「減呼吸」は、多くの点で無呼吸に類似している;しかしながら、呼吸は完全には停止しないが、部分的に停止される(すなわち、正常呼吸の100%未満であるが、正常呼吸の0%以上である)。減呼吸はまた、「部分無呼吸」として本明細書で言及され、そして閉塞性、中枢性または混合タイプに再分割することができる。
【0044】
「単離された核酸」は、天然に存在する状態においてそれに隣接する配列から分離された核酸セグメントまたはフラグメント、すなわち、そのフラグメントに正常に隣接する配列、すなわちそれが天然に存在するゲノムにおいてフラグメントに隣接する配列、から除去されたDNAフラグメントを指す。この用語はまた、核酸に天然に随伴する他の構成成分から、すなわち、細胞において天然にそれに随伴するRNAまたはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸に適用する。したがって、この用語は、例えば、ベクター中に、自律的に複製するプラスミドまたはウイルス中に、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれれているか、あるいは他の配列とは独立した別の分子として(すなわち、PCRまたは制限酵素消化によって生産されたcDNAまたはゲノムもしくはcDNAフラグメントとして)存在している組み換えDNAを含む。それはまた、さらなるポリペプチド配列をコードしているハイブリッド遺伝子の一部である組み換えDNAを含む。
【0045】
本明細書で使用されるように、用語「調節する」は、生物学的状態における何らかの変化、すなわち、増加、減少などを指すことが意味される。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語「プロモーター/調節配列」は、プロモーター/調節配列に操作可能に結合された遺伝子産物の発現のために要求される核酸配列を意味する。ある例では、この配列はコアプロモーター配列であってもよく、他の例では、この配列はまた、遺伝子産物の発現のために要求されるエンハンサー配列および他の調節要素を含んでもよい。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的方式で遺伝子産物を発現するものであってもよい。
【0047】
本明細書で使用されるように、「製薬学的に有効な量」は、組成物が投与される哺乳動物に対して有益な効果を提供するのに十分な治療用組成物の量である。
【0048】
用語が本明細書で使用されるように、「S−ニトロソチオール経路」は、酸素の血液レベルに関係する情報がS−ニトロソチオールシグナル伝達を通して脳に伝達されるように生じるシグナル伝達経路およびシグナル伝達機構を指す。
【0049】
説明
本発明の組成物およびその使用
本発明は、呼吸の障害された制御を処置するための組成物および方法を含む。1つの実施態様では、本発明は睡眠時無呼吸を処置するための方法および組成物を提供する。
【0050】
睡眠中、呼吸は、睡眠の時期または深さとともに変化する。若干の個人は、短い間隔で呼吸を停止する。そのような無呼吸のエピソードがより高い頻度になり、かつより長く続く場合、それらは身体の酸素レベルを減少させ、これが睡眠を乱すことがある。患者は完全には覚醒していないが、睡眠の深い安静期からは目覚めていて、その結果、翌日は疲れを感じる。
【0051】
睡眠時無呼吸の2つの主なタイプがあり、これらが一緒に起きることもある。もっとも普通のものは閉塞性睡眠時無呼吸であり、この場合、呼吸は、通常、のどの背部の主気道の一時的閉塞によって遮断される。このことは、舌とのどの筋肉が弛緩して主気道を閉鎖させるので、しばしば起きる。胸と横隔膜の筋肉は、継続して呼吸しようとするが、閉塞がいかなる空気流動も阻止する。数秒〜数分続く短間隔の後では、酸素レベルは低下するので、呼吸努力は一層強くなり、これが最後に閉塞を開放し、そして空気流動を回復させる。これはしばしば大きな荒い鼻息と攣縮とともに起きるので、患者は深い睡眠から起こされる。数回の呼吸後、酸素レベルは正常に戻り、患者は睡眠に落ち、主気道の筋肉が弛緩し、そして閉塞が再び起きる。次いで、この周期が、ある睡眠期中に繰り返し反復される。閉塞性睡眠時無呼吸を有するほとんどの人はいびきをかくので、彼らの主気道が睡眠中既に一部閉塞されていることが示唆されるが、いびきをかくすべての人が閉塞性睡眠時無呼吸を有するとは限らない。
【0052】
睡眠時無呼吸のあまり一般的ではない形態は、中枢性睡眠時無呼吸であり、呼吸の中枢性制御が異常であるのでそのように呼ばれる。この制御中枢は脳にあり、そしてその機能は種々の因子によって破壊されることがある。空気流動に対する閉塞はない。脳が、突然、呼吸を維持する胸と横隔膜の筋肉へのシグナル伝達をできなくなるので、睡眠時無呼吸を有する患者は呼吸を停止する。これらの患者は、荒い鼻息と身体の攣縮により呼吸を回復しないが、種々の間隔で呼吸を単に開始および停止する。メカニズムは閉塞性睡眠時無呼吸とは異なるけれども、睡眠は周期的酸素の減少によってなお妨げられ、そして患者は同じ日中の症候を患う。
【0053】
若干の患者は、無呼吸の2つの原因の組み合わせ症状を患うこともあり、この障害は混合(mixed)睡眠時無呼吸と呼ばれ、また「複合(complex)睡眠時無呼吸」とも言われる。
【0054】
過度の日中の眠気と前記他の症候を有すると指摘された個人において、特に彼らが、いびきをかき、安眠を有しない場合には、睡眠時無呼吸症が疑われるべきである。一般には、これらの患者は、長年大きないびきを発し、ほとんどが男性であり、そして日中の眠気が何カ月にもわたって進行性の問題になっていることを指めす。あまり一般的ではないが、彼らは遺尿症または陰萎に困らされているかもしれない。睡眠問題は、しばしばアルコールまたは鎮静剤投薬によって悪化させられる。彼らはまた、患者の家族および友人、特にベッドパートナーによって一層容易に気づかされる。
【0055】
本発明の化合物および方法は、S−ニトロソチオールシグナル伝達経路に関連するすべての他の呼吸制御に適用可能であると理解されるべきである。すなわち、本発明は、2種以上の化合物の組み合わせ物を含んでなる組成物が、経路の1つが呼吸リズムの回復のためにS−ニトロソチオール処置によって影響される、2つ以上の生理学的経路に作用することによる呼吸制御の障害の処置において増進された有効性を提供できることを提供する。
【0056】
本発明のその他の態様では、2種以上の化合物の組み合わせ物を含んでなる組成物は、同じ生理学的経路に作用することによる呼吸制御の障害の処置において増進された有効性を提供できる。本発明の1つの態様では、組成物は睡眠時無呼吸症を処置するために使用される。
【0057】
本発明によれば、S−ニトロソチオール化合物と一緒に使用される第2の化合物は、本明細書に詳細に詳細に記述されるように、特定の性質または活性について選ぶことができる。本発明の1つの態様では、第3、第4またはさらなる化合物は、同様に、本明細書に詳細に詳細に記述されるように、特定の性質または活性について選ばれた非S−ニトロソチオール化合物であってもよい。次に示すものが、そのような化合物の限定されるものではない例であるが、いかなる点においても本発明において有用な唯一のそのような化合物であると考えられてはならない。本開示を身につけた(armed)場合、熟達者は、本発明によるS−ニトロソチオール化合物との組み合わせで有用な第2(または第3、第4、第5などの)化合物をいかにして同定するを理解できる。
【0058】
表1.本発明によるS−ニトロソチオール化合物との組み合わせで有用な化合物の例
a.呼吸リズムを安定化する活性を有する化合物
i.カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(例えば、アセタゾールアミド、トピラメー ト)
ii.呼吸の刺激(例えば、カフェイン、テオフィリン)
iii.麻薬アンタゴニスト(例えば、ナロキソン)
iv.ホルモン(例えば、メドロキシプロゲステロン)
b.セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリンまたはGABAに及ぼす活性によって
上部気道の開通性を増加させる活性を有する化合物
i.セロトニン作用物質(例えば、5HT1Aアゴニスト・ブスピロン、セロトニン 再吸収インヒビター、5HT3受容体アンタゴニスト、例えばオンダンセトロ ン)
ii.ドーパミンおよび/またはノルエピネフリン作用物質(例えば、ロピネロール
(ropinerole)、ミルナシプラン(milnacipran))
iii.四環式抗うつ薬(例えば、ミルタジピン、セチプチリン)
c.覚醒を促進する活性を有する化合物
i.モダフィニル、r−モダフィニル、アンフェタミン)
d.癲癇発作を減少させる活性を有する化合物
i.ゾニサミド(zonisamide)
e.炎症を減少させることによって上部気道の開通性を増加させる活性を有する化合物
i.抗ヒスタミン薬(例えば、セチリジン(cetirizine)、アゼラスチン
(azelastine)、デスロラチジン(desloratidine)、 フェクソフェナジン(fexofenadine)
ii.ロイコトリエン・アンタゴニスト(例えば、モンテルカスト
(montelukast))
iii.5−リポキシゲナーゼ阻害剤(例えば、ジロイトン(zileuton))
iv.ステロイド(例えば、フルチカソン(fluticasone))
v.COX−2インヒビター
f.その主治療学的効果に対する副作用として呼吸動因を減少させる活性を有する化
合物
i.オピオイド鎮痛薬(例えば、モルヒネ、メペリジン、フェンタニル、オキシコド
ン、ブプレノルフィン)
ii.鎮静性催眠薬(例えば、ロラゼパム、ゾルピデム(zolpidem)、ザレ
プロン(zaleplon))
iii.一般的麻酔薬(例えば、ハロタン、エンフラン、チオペンタール)
iv.エチルアルコール
g.喘息および/または慢性閉塞性肺疾患のような疾病において肺機能を改善する活性
を有する化合物
i.ステロイド(例えば、ブデソニド(budesonide)、フルチカソン
(fluticasone)、サルメテオール(salmeterol)/フルチ カソン組み合わせ物)
ii.気管支拡張薬(例えば、サルブタモール、サルメテロール)
iii.抗コリン作動薬(例えば、チオトロピウム(tiotropium)、イパ トロピウム(ipatropium))
h.機械的換気または正の気道圧を介して呼吸を助けるためのデバイス使用
i.機械的換気器
ii.CPAP
iii.BiPAP
【0059】
製薬工業における組み合わせ薬物は、適度に共通していて、そしてそのような薬物の製造および使用は、当業者によって理解できる。例えば、Advair(R)は、ステロイド化合物と気管支拡張化合物の組み合わせ物であり、そして喘息の処置のために使用される。
【0060】
本発明による2種以上の化合物を含んでなる組み合わせ物は、限定されるものではないが、S−ニトロソチオール化合物+アセタゾールアミド(およびトピラメートを含む他のカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤)、S−ニトロソチオール化合物+セロトニンアゴニスト作用物質(例えば、5HT1Aアゴニスト・ブスピロン;セロトニン再吸収インヒビター)、S−ニトロソチオール化合物+セロトニンアンタゴニスト作用物質(例えば、5HT3受容体アンタゴニスト、例えばオンダンセトロン)、S−ニトロソチオール化合物+四環式抗うつ薬(例えば、ミルタジピン、セチプチリン)、S−ニトロソチオール化合物+モダフィニル、S−ニトロソチオール化合物+r−モダフィニル、S−ニトロソチオール化合物+ノルエピネフリンおよび/またはドーパミンのニューロン吸収に影響する化合物(例えば、ロピネロール、ミルナシプラン)、S−ニトロソチオール化合物+ゾニサミド、S−ニトロソチオール化合物+脳活性を刺激し、そして/またはオピオイドアンタゴニストである作用物質(例えば、ドキサプラム、ナロキソン、カフェイン)、S−ニトロソチオール化合物+呼吸抑制を惹起する麻酔性鎮痛薬(例えば、モルヒネ、メペリジン、フェンタニル、オキシコドン、ブプレノルフィン)、S−ニトロソチオール化合物+呼吸抑制を惹起する一般麻酔薬(ハロタン、エンフラン、チオペンタール)、S−ニトロソチオール化合物+テオフィリン、S−ニトロソチオール化合物+喘息または慢性閉塞性肺疾患を処置するために普通に使用されるステロイドおよび/または気管支拡張作用物質(例えば、ブデソニド、フルチカソン、サルブタモール、フォルモテロール、サルメテロール/フルチカソン組み合わせ物、チオトロピウム、イパトロピウム)、S−ニトロソチオール+抗ヒスタミン薬(例えば、セチリンジン、アゼラスチン、デスロラチジン、フェクソフェナジン)、S−ニトロソチオール化合物+鎮静/催眠薬(例えば、ロラゼパム、ゾルピデム、ザレプロン)、および正の気道圧呼吸デバイス(CPAPおよびBiPAPを含む)との組み合わせにおけるS−ニトロソチオール化合物を含む。本明細書に記述されるように、S−ニトロソチオール化合物と組み合わせて有用な他の化合物は、米国特許出願公開第20060039866号に記述されており、これは引用によって本明細書に完全に組み入れられている。
【0061】
本発明の1つの実施態様では、少なくとも1種の化合物がS−ニトロソチオール経路を通して作用する2種以上の化合物の組み合わせ物は、正常な呼吸リズムを回復するために付加的または相乗的効果を提供することができる。本発明のその他の実施態様では、少なくとも1種の化合物がS−ニトロソチオール経路を通して作用する2種以上の化合物の組み合わせ物は、同時に投与されても、また投与されなくてもよいその他の薬物の呼吸抑制効果を打ち消す効果を提供する。
【0062】
S−ニトロソチオール化合物、または「SNO」は、種々の臨床的利益を有することが記述されてきた。これらは、限定されるものではないが、呼吸動因における増大、上部気道における筋肉緊張の増大、肺における酸素交換の改善(「換気潅流の適合」)、およびエリトロポイエチン(EPO)、赤血球生産を増加させる天然ホルモンの生産増加を含む。増加したEPO生産は、呼吸問題(随伴する低酸素とともに)および貧血を有する患者において特に有用である。そのような症状は、低酸素レベルおよび酸素を運ぶ細胞の低計数という「二重のネガティブ効果」をもたらす(例えば、早熟の無呼吸、腎臓透析患者)。
【0063】
本発明の1つの態様では、本発明の化合物は、化合物が投与される形態において有用である。すなわち、患者に投与される化合物の化学的構造および式は、本発明の方法にしたがって活性である化合物である。その他の態様では、本発明の化合物は、患者に投与される構造または式とは別の形態において活性である。本発明のこの態様では、化合物は、最初に、化合物が患者に投与される形態から変化、付加、分解、代謝または別に改変されねばならない。限定されるものではない例として、N−アセチルシステイン(NAC)は1つのそのような化合物である。NACはプロドラッグとして患者に投与され、これが身体によってS−ニトロソチオール−N−アセチルシステイン(SNOAC)に代謝される。SNOAC、代謝された化合物は、続いて、例えば、患者の呼吸を整える上で活性になる。参照、例えば、国際特許出願公開第WO03/015605号、これは完全に本明細書に引用によって組み入れられている。
【0064】
本発明のその他の態様では、S−ニトロソチオール化合物は、既知のS−ニトロソチオール化合物の類似体、誘導体または改変物である。いくつかの限定されるものではない例として、本発明によって包含されるS−ニトロソチオール化合物は、N−アセチルシステインの類似体、N−アセチルシステインの誘導体、N−アセチルシステインの改変物およびN−アセチルシステインの代謝物を含む。
【0065】
S−ニトロソチオール化合物の類似体および誘導体が、本明細書に記述される本発明にしたがって製造し、使用することができることは、本明細書に記述される開示を身につけた場合、当業者によって理解することができる。当業者は、S−ニトロソチオール化合物の部分を同定して改変する方法、さらにそのような改変物を作成する方法を、本発明にしたがって理解できる。したがって、本明細書に記述される詳細な説明に基づいて、当業者は、本発明の化合物の活性、すなわち、1種以上のさらなる化合物と組み合わせて使用される場合に、本発明にしたがって呼吸を制御する能力、を有する類似体または誘導体を同定するために、そのような化合物をアッセイする方法を知ることができる。
【0066】
限定されるものではない例として、本発明による組み合わせ物は、N−アセチルシステインと組み合わされたアセタゾールアミドを含む。ある実施態様では、本発明による組み合わせ物は、N−アセチルシステインと組み合わされた低用量のアセタゾールアミド(例えば、250mg/dayまたはそれ以下)を含む。いかなる理論にも制約されることを願わなければ、アセタゾールアミドおよびN−アセチルシステインの組み合わせ物は、正常な呼吸リズムを回復する方式で相補的または相乗的に作用できる。アセタゾールアミドは、COに対する身体の感受性を回復するように作用することができ、そしてN−アセチルシステインは、低酸素レベルに対する呼吸中枢の感受性を回復するように作用できる。
【0067】
アセタゾールアミドは、弱い利尿薬として長年使用されてきた(すなわち、尿の排出を増加させるためまたは高山病の処置を助けるために)。アセタゾールアミドはまた、二酸化炭素に基づく呼吸動因経路をとおして作用すると考えられる。血液のpHを低下させることによって作用することが提案されているが、これは、それが呼吸動因に影響する唯一の方法ではないかもしれない。呼吸動因における減少は、二酸化炭素成分、酸素成分、または両成分一緒の乏しい機能によって惹起されるのかもしれない。これらの成分は、事実、相関関係にあり、1成分への影響を惹起することが、他の成分そして呼吸動因全体に影響するのであろう。
【0068】
したがって、本発明の1つの実施態様では、両COおよびO動因が減少される睡眠時無呼吸のような症例では、組み合わせ組成物は、患者の臨床的利益および/または処置を提供するために使用される。すなわち、1つの実施態様では、本発明は睡眠時無呼吸症を処置する方法を提供する。
【0069】
伝統的な思考は、以前は、処置のために必要とされるアセタゾールアミドの用量は、大多数の患者における長期使用では非常に毒性があるということであった。しかしながら、比較的低用量のアセタゾールアミドは、特に、本発明による1種以上の他の成分との組み合わせにおいては、呼吸動因に対して望ましい効果を生むのに十分であろう。比較的高い用量で使用された場合の副作用の波及のために、比較的低用量において、より有効である他の化合物は、限定されるものではないがテオフィリンを含む。
【0070】
本発明による組み合わせ組成物は、正常な呼吸制御の欠如を特徴とするすべての症状を治療するために有用である。限定されるものではない例として、そのような症状は、睡眠時無呼吸(限定されるものではないが心不全、腎疾患および卒中の共存症状を含む中枢性、混合および閉塞性)、睡眠障害性呼吸(特にいびきおよび目覚めを伴う)、慢性気管支炎、COPD、喘息、アレルギーおよび神経学的疾患(例えば、卒中、筋委縮性外側硬化症(ALS))を含む。本発明の方法および組成物により処置できる他の症状は、限定されるものではないが、いびき、肥満−換気過少症候群、早熟の無呼吸、薬物(例えば、麻酔性鎮痛薬、鎮静薬、アルコール、睡眠ピル、麻酔薬)による呼吸抑制、中枢性先天性換気過少症候群、卒中、外傷、手術および/または照射による換気過少、および高い高度への順応を含む。
【0071】
また、本発明による組み合わせ組成物は、本明細書で他に記述されているような正の気道圧(PAP)デバイスを使用して処置できるすべての症状の処置を助けるために有用である。
【0072】
限定されるものではない例として、本発明はまた、高い高度への順応の症候を処置および/または緩和するため、または高い高度への順応を容易にするために使用されてもよい。遺伝的多様性は、人間が低酸素レベルに対応する方法において役割を演じる。ある者は、呼吸の速度および深さを増大させることによって迅速に対応するが、他のある者は比較的ゆっくりである。迅速に適応する能力が重要である若干の症例が存在する。例えば、高い高度(例えば、アフガニスタンでは12,000フィート)において迅速に戦闘態勢に入る兵士は、最高性能で軍事行動する必要がある。低酸素への遅い応答は過度の疲労と低い作業性能をもたらすであろう。兵士のために、これは生命を脅かすことになるであろう。挙げられた極端な高度では、症例はかなり明瞭である。ニューヨークからデンバーへの移動(5,000フィート)または長い航空機の飛行からの時差ボケ(6,000フィートの機内圧力)のような比較的低い高度においてもまた適用されてもよい。
【0073】
セロトニンアゴニストまたは再吸収インヒビター化合物(例えば、ミルタザピン(Mirtazapine))は、上部気道の緊張の回復を助けてつぶれるのを防ぐことが動物において例証された。本発明のある態様では、SNO/セロトニンアゴニスト組み合わせ組成物が使用されるが、ここでは、SNOは呼吸動因を改善するために使用され、そしてセロトニンアゴニストは、上部気道の緊張を改善して、空気の流動を助け、そして閉塞の予防を助ける。
【0074】
その他の実施態様では、本発明は、酸化ストレスを低下させることを意図した作用物質とSNOの組み合わせ物を含む。身体が呼吸を停止し、そして酸素レベルが落ちる場合、睡眠時無呼吸と他の症状に関連する心臓血管合併症の直接的原因となると信じられる酸化ストレスをもたらす一連の反応が存在する。心臓血管合併症は死亡の主要な原因である。
【0075】
本発明のある態様では、組み合わせ組成物はN−アセチルシステインを含み、これは、SNO産生には関係しない代謝経路を介して酸化ストレスを低下させるために使用される。すなわち、また本発明は、N−アセチルシステインまたはその他のSNO含有化合物が、その他の薬物、第2の化合物が呼吸動因を増大するように働く第2のSNO、または非SNO化合物、例えば限定されるものではないがアセタゾルアミド、のいずれかと組み合わされて酸化ストレスを低下させる、方法および組み合わせ組成物を含む。本発明の方法および組成物において有用な他の組み合わせ物は、本開示において記述される開示を身につけた当業者によっては理解することができる。
【0076】
その他の態様では、本発明は、SNO化合物と、哺乳動物において酸化ストレスを処置および/または予防する化合物とを含んでなる組み合わせ組成物を含む。1つの実施態様では、本発明は、本発明の化合物を投与することによって正常な呼吸を欠く患者を処置する方法を含む。
【0077】
睡眠時無呼吸における酸素付加(oxygenation)パターンを複製する頻繁な低酸素/再酸素付加事象(event)は、1つの実施態様ではNADPHオキシダーゼを、そしてその他の実施態様では覚醒に活性なニューロンを含む、選ばれた脳域における炎症前の(proinflammatory)遺伝子発現を誘導する。1つの実施態様では、機能性NADPHオキシダーゼの欠如およびNADPHオキシダーゼの薬理学的阻害は、断続的な低酸素に由来する神経行動(neurobehavioral)の、酸化還元および炎症前変化に対する抵抗力を付与することが決定され、それによって閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を有する人における酸化的病的状態を予防するための可能性のある標的を目立たせた。
【0078】
米国特許出願公開第20060154856号(引用によって本明細書に完全に組み入れられている)は、脳における断続的な低酸素に由来する傷害の重要な起源としてNADPHオキシダーゼを同定している。その他の実施態様では、OSAを有する人におけるNADPHオキシダーゼの活性化は、この疾病に関連する心臓血管の病的状態に寄与する。したがって、NADPHオキシダーゼ経路は、普及している障害、睡眠時無呼吸症の神経行動および心臓血管の両病的状態に関連する価値ある薬物療法の標的である。本発明の1つの態様によれば、本発明は、NADPHオキシダーゼ阻害剤および少なくとも1種の他の化合物を含んでなる組成物の治療学的に有効な量を被験者に投与することを含む、該被験者における睡眠時無呼吸、減呼吸症候群からもたらされる心臓血管の病的状態、神経行動の病的状態またはその組み合わせ状態を処置する方法を提供する。1つの実施態様では、少なくとも1種の他の化合物はS−ニトロソチオールシグナル伝達経路のインヒビターである。NADPHオキシダーゼ阻害剤は、限定されるものではないが、アポシニン、または4−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、N−バニリルノナンアミドおよびスタウロスポリンを含む。
【0079】
その他の実施態様では、本発明は、SNOと炎症を低下させることを意図した作用物質との組み合わせ物を含む。例は、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト(または5−リポキシゲナーゼ阻害剤)、抗ヒスタミンまたは抗炎症剤(例えば、COX−2インヒビターまたはステロイド)を含む。1つの態様では、本発明は、正常な呼吸を欠く患者を処置するような組み合わせ組成物を使用する方法を含む。
【0080】
睡眠障害性の呼吸を有する患者は、炎症を惹起し、そして十分に空気を獲得するそれらの能力を低下させる乱れた空気流動を有する。本明細書で他に議論されるように、SNO化合物は、呼吸動因を増大し、そして上部気道通路の直径を増加することができる。したがって、本発明によれば、SNOプラス抗炎症化合物を含んでなる組み合わせ組成物は、補足的な治療利益を提供するために有用である(Goldbart et al,Am.J.Respir.Crit.Care.Med.2005;172:364−370)。
【0081】
限定されるものではない例として、本発明の組成物および方法を使用する、ロイコトリエンアンタゴニスト療法は、乱れた空気流動からもたらされる炎症を減少させ、正常な呼吸の欠如を患った患者の呼吸を整えることができる。炎症が気道通路のサイズを減少させるので、これが、乱れた空気流動が空気流動をさらに制限する炎症を惹起する理由である。本発明によれば、抗炎症薬を含む組み合わせ組成生産物は、種々の形態の睡眠障害性の呼吸を有する成人および子供の両患者のためにさらなる利益を提供するのに有用である。
【0082】
本発明の1つの態様では、ロイコトリエンアンタゴニスト(または5−リポキシゲナーゼオキシダーゼ阻害剤)との組み合わせにおける、SNOプロドラッグ(例えば、N−アセチルシステイン)またはSNOは、同時にそのような呼吸障害に関連した炎症を最小化しつつ、呼吸の障害された制御を処置するために有用である。
【0083】
本発明のそのような態様では、本発明は、正常な呼吸制御の欠如を伴う疾病または障害の処置のための3種以上の化合物を含んでなる組み合わせ組成物を含む。また本発明は、方法が、正常な呼吸制御の欠如を伴う疾病または障害の処置のための3種以上の化合物を含んでなる組み合わせ組成物を使用する、哺乳動物を処置する方法を含む。本発明による組成物は1種以上のSNO化合物を含んでもよい。その他の実施態様では、本発明による組成物は、3種以上の非SNO化合物を含んでもよい。本発明の組み合わせ組成物において有用な化合物は本明細書で他に詳細に記述されている。
【0084】
本発明のその他の態様では、正常な呼吸を欠く患者を処置する方法は、本明細書に記述されるような本発明の化合物を投与すること、およびさらに、正常な呼吸の欠如を処置するためのデバイスを使用する患者を処置することを含む。本明細書で他に詳細に記述されるように、そのようなデバイスは、限定されるものではないがCPAPおよびBiPAPデバイスを含む。
【0085】
製薬学的組成物
本発明はまた、本発明の方法を実行するために適当なタンパク質またはペプチドおよび/または単離された核酸の製薬学的組成物の使用を包含する。本明細書に記述される化合物の組成物および組み合わせ物は、障害された呼吸の処置および睡眠に関連した呼吸障害の処置において、付加的、補足的または相乗的効果を産むために、単独でまたはさらなる化合物と組み合わせて使用することができる。
【0086】
ある実施態様では、本発明を実行するために有用な製薬学的組成物は、1ng/kg/日〜100mg/kg/日の用量を送達するように投与されてもよい。その他の実施態様では、本発明を実行するために有用な製薬学的組成物は、1ng/kg/日〜500mg/kg/日の用量を送達するように投与されてもよい。
【0087】
有用である製薬学的に許容できる担体は、限定されるものではないが、グリセロール、水、食塩水、エタノールおよび他の製薬学的に許容できるリン酸塩および有機酸塩のような塩溶液を含む。これらおよび他の製薬学的に許容できる担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1991,Mack Publication Co.,New Jersey)において記述されている。
【0088】
製薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液または溶液の形態で製造、包装または販売されてもよい。この懸濁液または溶液は、既知の技術にしたがって調合されてもよく、そして有効成分に加えて、本明細書に記述されるさらなる成分、例えば分散剤、湿潤剤または懸濁化剤を含んでもよい。そのような無菌の注射用調合物は、例えば、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒、例えば水または1,3−ブタンジオールを用いて製造されてもよい。他の希釈剤および溶媒は、限定されるものではないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および不揮発油、例えば合成モノ−またはジ−グリセリドを含む。
【0089】
本発明の方法において有用である製薬学的組成物は、経口、肛門内、膣内、非経口、局所、肺、鼻内、口腔内、眼内投与、または他の投与経路のために適当な調合物において投与、製造、包装、および/または販売されてもよい。他の意図される調合物は、射出されるナノ粒子、リポソーム調製物、有効成分を含有する再密封された赤血球、および免役学的調合物を含む。
【0090】
本発明の組成物は、限定されるものではないが、経口、肛門内、膣内、非経口、局所、肺、鼻内、口腔内または眼内投与経路を含む、種々の投与経路を介して投与されてもよい。投与経路は、当業者にとっては容易に明らかであり、そして処置される疾病の種類および重篤度、処置される家畜またはヒト患者の種類および年齢などを含む、すべての多数のファクターに依存するであろう。
【0091】
本発明の方法において有用である製薬学的組成物は、経口固形調合物、点眼剤、坐剤、エアゾル剤、局所または他の類似調合物において全身性に投与されてもよい。硫酸ヘパリンまたはその生物学的等価物のような化合物に加えて、そのような製薬学的組成物は、薬物投与を増進および容易にするために既知の製薬学的許容できる担体および他の成分を含有してもよい。他の可能な調合物、例えばナノ粒子、リポソーム、再密封された赤血球、および免役学的システムもまた、本発明の方法にしたがって化合物を投与するために使用されてもよい。
【0092】
本明細書に記述される方法のいずれかを使用して同定される化合物、およびそのような化合物の組み合わせ物は、障害された呼吸の制御の処置のために調合され、そして哺乳動物に投与されてもよい。
【0093】
そのような製薬学的組成物は、被験者への投与のために適当な形態物において単独の有効成分からなってもよく、または製薬学的組成物は、少なくとも1種の有効成分および1種の以上の製薬学的に許容できる担体、1種の以上のさらなる成分、またはこれらの若干の組み合わせ物を含んでもよい。有効成分は、当該技術分野において周知であるような、生理学的に許容できるエステルまたは塩の形態、例えば生理学的に許容できるカチオンまたはアニオンとの組み合わせにおける製薬学的組成物において存在してもよい。
【0094】
医薬品の局所投与のための障害は表皮の角質層である。角質層は、タンパク質、コレステロール、スフィンゴ脂質、遊離脂肪酸および種々の他の脂質からなる高度に抵抗性の層であり、そして角化した細胞および生活細胞を含む。角質層を通る化合物の浸透速度(流動)を制限するファクターの1つは、皮膚表面上に負荷または適用することができる活性物質の量である。皮膚の単位面積当たり適用される活性物質の量が大きければ、皮膚表面と皮膚の下層の間の濃度勾配が大きくなり、次いで、皮膚を通る活性物質の拡散力は大きくなる。したがって、より高濃度の活性物質を含有する調合物は、より一層、皮膚を通る活性物質の浸透をもたらすであろうし、そしてすべての他のことが同様であれば、より低濃度を有する調合物よりも、より多くのそれを、より一層変わらない速度でもたらすと考えられる。
【0095】
本明細書に記述される製薬学的組成物の調合物は、薬理学の技術分野では既知の、または後に開発されたすべての方法によって製造することができる。一般に、そのような製造方法は、有効成分を、担体または1種以上の他の補助成分と組み合わせ、次いで、必要または所望であれば、その生産物を所望の単一または多用量単位に成形または包装する段階を含む。
【0096】
本明細書で提供される製薬学的組成物の説明は、基本的に、ヒトに対する倫理的投与のために適当である製薬学的組成物に対向されるけれども、そのような組成物は一般にあらゆる種類の動物への投与のために適当であることは当業者によって理解することができる。本組成物を種々の動物への投与のために適当にさせるために、ヒトに対する投与のために適当な製薬学的組成物の改変は十分理解され、そして熟練獣医薬者は、必要ならば、単なる普通の実験によってそのような改変を設計および実行することができる。本発明の製薬学的組成物の投与が考えられる被験者は、限定されるものではないが、ヒトおよび他の霊長類、商業的に関連する哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよびイヌを含む哺乳動物を含む。
【0097】
本発明の方法において有用である製薬学的組成物は、経口、肛門内、膣内、非経口、局所、肺、鼻内、口腔内、眼内、胸膜内投与、または他の投与経路のために適当な調合物において、製造、包装、または販売されてもよい。他の意図される調合物は、射出されるナノ粒子、リポソーム調製物、有効成分を含有する再密封された赤血球、および免役学的調合物を含む。
【0098】
本発明の製薬学的組成物は、1単一単位用量として、または複数の単一単位用量として、バルクで製造、包装または販売されてもよい。本明細書で使用されるように、「単位用量(unit dose)」は、有効成分の予定量を含んでなる製薬学的組成物の分別された量である。有効成分の量は、一般に、被験者に投与されるであろう有効成分の投与量(dosage)、またはそのような投与量の都合のよいフラクション、例えばそのような投与量の1/2または1/3に等しい。
【0099】
本発明の製薬学的組成物における有効成分、製薬学的に許容できる担体およびいずれかさらなる成分の相対的な量は、処置される被験者の同一性、サイズおよび症状に応じて、および組成物が投与される経路に応じて変えることができる。例として、組成物は0.1%〜100%(w/w)の有効成分を含んでもよい。
【0100】
本発明の製薬学的組成物の制御放出または持続放出調合物は、慣用の技術を用いて作成できる。局所投与のために適当な調合物は、限定されるものではないが、液状または半液状調製物、例えばリニメント剤、ローション剤、水中油または油中水乳剤、例えばクリーム剤、軟膏剤またはパスタ剤、および液剤または懸濁剤を含む。局所的に投与できる調合物は、有効成分の濃度が溶媒中の有効成分の溶解度限界くらい高くてもよいが、例えば、約1%〜約10%(w/w)の有効成分を含んでもよい。局所投与のための調合物は、さらに、本明細書に記述されるさらなる成分の1種以上を含んでもよい。
【0101】
浸透の増進剤が使用されてもよい。これらの材料は皮膚を横断する薬物の浸透速度を増加させる。当該技術分野における局所的増進剤は、エタノール、モノラウリン酸グリセロール、PGML(ポリエチレングリコールモノラウレート)、ジメチルスルホキシドなどを含む。他の増進剤は、オレイン酸、オレイルアルコール、エトキシジグリコール、ラウロカプラム、アルカンカルボン酸、ジメチルスルホキシド、極性脂質またはN−メチル−2−ピロリドンを含む。
【0102】
本発明の組成物のあるものの局所送達のための1つの許容できる媒質はリポソームを含有してもよい。リポソームの組成物およびそれらの使用は当該技術分野において既知である(例えば、参照Contanza、米国特許第6,323,219号)。
【0103】
調合される活性化合物の起源は、一般に、化合物の特定の形態に依存するであろう。低有機分子およびペプチジルまたはオリゴフラグメントは、化学的に合成することができ、そして製薬学的用途のために適当な純粋形態物において提供することができる。天然の抽出物の生産物は、当該技術分野において既知の技術にしたがって精製することができる。化合物の組み換え起源もまた当業者にとっては利用可能である。
【0104】
その他の実施態様では、局所的に活性のある製薬学的組成物は、場合によっては、他の成分、例えばアジュバント、抗酸化剤、キレート剤、界面活性剤、起泡剤、湿潤剤、乳化剤、増粘剤、緩衝剤、保存剤、などと組み合わされてもよい。その他の実施態様では、透過または浸透増進剤は、組成物中に含まれ、そして透過増進剤を欠く組成物に較べて、角質層中へのおよび角質層を通しての有効成分の経皮浸透を改善することに有効である。オレイン酸、オレイルアルコール、エトキシジグリコール、ラウロカプラム、アルカンカルボン酸、ジメチルスルホキシド、極性脂質、またはN−メチル−2−ピロリドンを含む種々の透過増進剤は、当業者にとって既知である。その他の態様では、組成物は、屈水性作用物質(hydrotropic aget)をさらに含んでもよく、これは、角質層の構造における障害を増大するように機能して、角質層を横断する輸送を増加させる。種々の屈水性作用物質、例えばイソプロピルアルコール、プロピレングリコールまたはキシレンスルホン酸ナトリウムが、当業者にとって既知である。
【0105】
局所的に活性のある製薬学的組成物は、所望の変化に影響する有効な量において適用されるべきである。本明細書で使用されるように、「有効な量」は、変化が望まれる皮膚表面の領域を覆うのに十分な量を意味すべきである。活性化合物は、組成物の重量容量で約0.0001%〜約15%の量で存在すべきである。より好ましくは、それは、組成物の約0.0005%〜約5%の量で存在すべきであり;もっとも好ましくは、それは、組成物の約0.001%〜約1%の量で存在すべきである。そのような化合物は合成によりまたは天然に得られてもよい。
【0106】
生物起源から直接作成される液状誘導物および天然抽出物は、約1〜約99%の濃度(w/v)で本発明の組成物において使用されてもよい。天然抽出物およびプロテアーゼ阻害剤のフラクションは、組成物の約0.01%〜約20%、より好ましくは約1%〜約10%の種々の好適な範囲を有してもよい。もちろん、本発明の活性作用物質の混合物は、組み合わされてもよく、そして同じ調合物において一緒に、または異なる調合物の連続適用において使用されてもよい。
【0107】
本発明の組成物は、組成物の総重量で約0.005%〜2.0%の保存剤を含んでもよい。保存剤は、それが、例えば、空気、あるいは治療ゲル剤またはクリーム剤のような本発明の組成物を適用するために使用される指との接触を含む患者の皮膚、への曝露により環境における汚染物に曝露される場合、繰り返される患者の使用による水性ゲル剤におけるような損耗を防ぐために使用される。本発明にしたがって有用な保存剤の例は、限定されるものではないが、ベンジルアルコール、ソルビン酸、パラベン、イミドウレア(imidurea)およびそれらの組み合わせ物からなる群から選ばれるものを含む。特に好適な保存剤は、約0.5%〜2.0%ベンジルアルコールおよび0.05%〜0.5%ソルビン酸の組み合わせ物である。
【0108】
組成物は、好ましくは、水性ゲル調合物における本発明において使用するための化合物の分解を阻止する抗酸化剤およびキレート剤を含む。若干の化合物のための好適な抗酸化剤は、組成物の総重量で約0.01%〜0.3wt%の好適な範囲におけるBHT、BHA、α−トコフェロールおよびアスコルビン酸,より好ましくは0.03%〜0.1wt%の範囲におけるBHTである。好ましくは、キレート剤は組成物の総重量で0.01%〜0.5wt%の量で存在する。特に好適なキレート剤は、組成物の総重量で約0.01%〜0.20%の重量範囲における、より好ましくは0.02%〜0.10wt%の範囲におけるエデト酸塩(例えば、エデト酸二ナトリウム)およびクエン酸を含む。キレート剤は、調合物の貯蔵寿命に対して有害であるかもしれない組成物中の金属鉄をキレートするために有用である。したがって、BHTおよびエデト酸二ナトリウムは、それぞれ、若干の化合物のために特に好適な抗酸化剤およびキレート剤であるが、当業者には既知である他の適当な等価の抗酸化剤およびキレート剤が置換されてもよい。
また、制御放出調製物が使用されてもよく、そしてそのような調製物を使用する方法は当業者にとって既知である。
【0109】
若干の場合には、使用される用量形態物は、例えば、特性の変更において所望の放出プロフィルを提供するために、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、透過性膜、浸透性システム、多層コーティング、ミクロ粒子、リポソームまたはミクロスフェアまたはそれらの組み合わせ物を使用して、その中の1種以上の有効成分の緩慢(slow)または制御放出形態物として使用されてもよい。
【0110】
本明細書に記述されるものを含む、当業者には既知の適当な制御放出調合物は、本発明の製薬学的組成物による使用のために容易に選ぶことができる。かくして、制御放出のために適合される経口投与に適当な単一用量形態物、例えば錠剤、カプセル剤、ゲルカップ剤(gelcaps)およびカプレット剤(caplets)は、本発明によって包含される。
【0111】
ほとんどの制御放出製薬学的生産物は、それらの非制御対応物によって達成されるより以上に薬物療法を改善するという共通した目標を有する。理想的には、医学的処置における最適に設計された制御放出調製物の使用は、最小量の時間において症状を治癒または制御するように用いられている最小量の薬物物質を特徴とする。制御放出調合物の長所は、薬物活性の延長、投薬頻度の低下および患者コンプライアンスの増大を含む。さらに、制御放出調合物は、作用の開始時間または他の特性、例えば薬物の血液レベルに影響を与えるように使用することができ、かくして、副作用の発生に影響を与えることができる。
【0112】
ほとんどの制御放出調合物は、所望の治療効果を速やかに生じる薬物の量を最初に放出し、そして長時間にわたってこの治療効果のレベルを維持するための薬物の別の量を徐々に、かつ継続して放出するように設計される。体内において薬物のこの一定レベルを維持するためには、薬物は、身体から代謝され、そして排出される薬物の量を置換できる速度で用量形態物から放出されねばならない。
【0113】
有効成分の制御放出は、種々の誘導因子、例えばpH、温度、酵素、水または他の生理学的条件または化合物によって刺激することができる。本発明の文脈上、用語「制御放出成分」は、限定されるものではないが、有効成分の制御放出を促進するポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、リポソームまたはミクロスフェアまたはそれらの組み合わせ物を含む、化合物として本明細書では定義される。
【0114】
液状懸濁剤は、水性または油性媒質において有効成分の懸濁を達成する慣用の方法を用いて調製されてもよい。水性媒質は、例えば、水および等張食塩水を含む。油性媒質は、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えば落花生、オリーブ、ゴマまたはココナッツ油、分溜植物油、および鉱油、例えば液状パラフィンを含む。
【0115】
液状懸濁物は、さらに、限定されるものではないが、懸濁化剤、分散または湿潤化剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩類、着香剤、着色剤および甘味剤を含む、1種以上のさらなる成分を含んでもよい。油状懸濁剤は、さらに増粘剤を含んでもよい。既知の懸濁化剤は、限定されるものではないが、ソルビトールシロップ、水素化食用脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アラビヤゴム、およびセルロース誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。既知の分散または湿潤化剤は、限定されるものではないが、天然に存在するホスファチド、例えばレシチン、アルキレンオキシドと、脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、脂肪酸およびヘキシトール(hexitol)由来の部分エステル、または脂肪酸および無水ヘキシトール由来の部分エステルとの、縮合生成物(例えば、それぞれ、ポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)を含む。既知乳化剤は、限定されるものではないが、レシチンおよびアラビヤゴムを含む。既知保存剤は、限定されるものではないが、メチル、エチルまたはn−プロピル−パラ−ヒドロキシベンゾエート、アスコルビン酸およびソルビン酸を含む。既知甘味剤は、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロースおよびサッカリンを含む。油状懸濁剤のための既知増粘剤は、ミツロウ、硬質パラフィンおよびセチルアルコールを含む。
【0116】
水性または油性溶媒における有効成分の液状液剤は、液状懸濁剤と実質的に同じ方式で調製されてもよいが、主な差異は、有効成分が溶媒中に懸濁されるよりもむしろ溶解される点である。本発明の製薬学的組成物の液状液剤は、液状懸濁剤に関して記述された成分の各々を含んでもよく、懸濁化剤が必ずしも溶媒における有効成分の溶解を助けなくてもよいと理解される。水性溶媒は、例えば、水および等張食塩水を含む。油性溶媒は、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えば落花生、オリーブ、ゴマまたはココナッツ油、分溜植物油、および鉱油、例えば液状パラフィンを含む。
【0117】
本発明の製薬学的調製物の粉末状および顆粒状調合物は、既知の方法を用いて調製されてもよい。そのような調合物は、被験者に直接投与されてもよく、また例えば、錠剤を形成するか、カプセル剤に充填するか、あるいはそれに水性または油性媒質を添加することによって水性または油性の懸濁液または溶液を作成するために使用されてもよい。これらの調合物の各々は、さらに、1種以上の分散または湿潤化剤、懸濁化剤および保存剤を含んでもよい。さらなる添加物、例えば賦形剤、および甘味、着香または着色剤がまた、これらの調合物中に含まれてもよい。
【0118】
本発明の製薬学的組成物はまた、水中油乳剤または油中水乳剤も形態で製造、包装または販売されてもよい。油相は、植物油、例えばオリーブまたは落花生油、鉱油、例えば液状パラフィン、またはこれらの組み合わせ物であってもよい。そのような組成物はさらに、1種以上の乳化剤、例えば天然に存在するアラビヤゴムまたはトラガカントゴムのようなゴム類、天然に存在するホスファチド、例えば大豆またはレシチンホスファチド、脂肪酸および無水ヘキシトールの組み合わせ物由来のエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエート、およびそのような部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含んでもよい。これらの乳化剤はまた、例えば、甘味または着香剤を含むさらなる成分を含有してもよい。
本明細書で使用されるように、「油性」液体は、炭素を含有する液体分子を含み、そして水より低い極性を示す液体である。
【0119】
経口投与のために適当な本発明の製薬学的組成物の調合物は、各々が有効成分の予定量を含有する、限定されるものではないが錠剤、硬質もしくは軟質カプセル剤、カシェ剤(cachet)、トローチ剤またはロゼンジ剤を含む、個別の固形用量単位の形態において製造、包装または販売されてもよい。経口投与のために適当な他の調合物は、限定されるものではないが、粉末状もしくは顆粒状調合物、水性もしくは油性懸濁剤、水性もしくは油性液剤、パスタ剤、ゲル剤、練り歯磨き、マウスウォッシュ剤、コーティング剤、洗口液、または乳剤を含む。用語、洗口液もしくはマウスウォッシュ剤は本明細書では互換性をもって使用される。
【0120】
本発明の製薬学的組成物は、経口または口腔投与のために適当な調合物において製造、包装または販売されてもよい。そのような調合物は、限定されるものではないが、ゲル剤、液剤、懸濁剤、パスタ剤、練り歯磨き、マウスウォッシュもしくは洗口液、およびコーティング剤を含んでもよい。例えば、本発明の洗口液は、約1.4%における本発明の化合物、クロ−ルヘキシジン(chlorhexidine)グルコネート(0.12%)、エタノール(11.2%)、ナトリウムサッカリン(0.15%)、FD&C BlueNo.1(0.001%)、ペパーミント油(0.5%)、グリセリン(10.0%)、Tween60(0.3%)および100%までの水を含んでもよい。その他の実施態様では、本発明の練り歯磨きは、約5.5%における本発明の化合物、水中70%のソルビトール(25.0%)、ナトリウムサッカリン(0.15%)、ラウリル硫酸ナトリウム(1.75%)、carbopol 934、6%懸濁液(15%)、スペアミント油(1.0%)、水中50%水酸化ナトリウム(0.76%)、二塩基性リン酸カルシウム二水和物(45%)および100%までの水を含んでもよい。本明細書に記述される調合物の例は、必ずしもすべてではなく、そして本発明が、これらの調合物および本明細書には記述されないが、当業者には既知である他の調合物のさらなる改変物を含むことが理解される。
【0121】
有効成分を含んでなる錠剤は、例えば、有効成分を、場合によっては1種以上のさらなる成分とともに圧縮または成形することによって作成されてもよい。圧縮錠剤は、場合によっては1種以上の結合剤、滑沢剤、添加物、界面活性剤および分散化剤と混合された、粉末状もしくは顆粒状調製物のような自由流動性形態物における有効成分を、適当な装置において圧縮することによって製造されてもよい。成形錠剤は、有効成分、製薬学的に許容できる担体、および混合物を湿潤化するのに少なくとも十分な液体の混合物を、適当な装置において成形することによって作成されてもよい。錠剤の製造において使用される製薬学的に許容できる添加物は、限定されるものではないが、不活性希釈剤、顆粒化および崩壊剤、結合剤および滑沢剤を含む。既知の分散剤は、限定されるものではないが、ポテト澱粉およびナトリウム澱粉グリコラート(glycollate)を含む。既知の界面活性剤は、限定されるものではないが、ラウリル硫酸ナトリウムを含む。既知の希釈剤は、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびリン酸ナトリウムを含む。既知の顆粒化および崩壊剤は、限定されるものではないが、コーンスターチおよびアルギン酸を含む。既知の結合剤は、限定されるものではないが、ゼラチン、アラビヤゴム、前糊化されたトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。既知の滑沢剤は、限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカおよびタルクを含む。
【0122】
錠剤は皮膜を施されなくてもよく、あるいは被験者の胃腸管における崩壊の遅延を達成する既知の方法を用いて皮膜を施されてもよく、これによって、有効成分の持続される放出と吸収を提供する。例としては、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルが錠剤をコートするために使用されてもよい。さらなる例としては、錠剤は米国特許第4,256,108号;同第4,160,452号;および同第4,265,874号に記述される方法を用いてコートされて、浸透性制御放出錠剤が形成されてもよい。錠剤は、製薬学的に美しく、口に合う調製物を提供するために、さらに、甘味剤、着香剤、着色剤、保存剤またはこれらの若干の組み合わせ物を含んでもよい。
【0123】
有効成分を含んでなる硬質カプセル剤は、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を用いて作成されてもよい。そのような硬質カプセル剤は有効成分を含み、そして例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンのような不活性な固形希釈剤を含む、さらなる成分を含んでもよい。
有効成分を含んでなる軟質カプセル剤は、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を用いて作成されてもよい。そのような軟質カプセル剤は有効成分を含み、これは水または油媒質、例えばピーナッツ油、液状パラフィンまたはオリーブ油と混合されてもよい。
【0124】
経口投与のために適当である本発明の製薬学的組成物の液状調合物は、液状形態においても、あるいは使用前に水またはその他の適当な媒質による再構成を意図される乾燥生産物の形態においても、製造、包装および販売されてもよい。
【0125】
本発明の製薬学的組成物は、肛門内投与のために適当な調合物において製造、包装または販売されてもよい。そのような組成物は、例えば、坐剤、保持浣腸調製物および直腸もしくは結腸刺激のための液剤の形態で存在してもよい。
【0126】
坐剤調合物は、通常の室温(すなわち、約20℃)では固形であり、かつ被験者の肛門内温度(すなわち、健康なヒトでは約37℃)では液状である、非刺激性の製薬学的に許容できる添加物と有効成分を組み合わせることによって作成されてもよい。適当な製薬学的に許容できる添加物は、限定されるものではないが、ココアバター、ポリエチレングリコールおよび種々のグリセリドを含む。坐剤調合物は、さらに、限定されるものではないが抗酸化剤および保存剤を含む、種々のさらなる成分を含んでもよい。
【0127】
直腸または結腸刺激のための保持浣腸調製物または液剤は、有効成分を製薬学的に許容できる液状担体と組み合わせることによって作成されてもよい。当該技術分野において周知のように、浣腸調製物は被験者の肛門の解剖学的構造に適応された送達デバイスを用いて投与されてもよく、そしてデバイス内に装填されてもよい。浣腸調製物は、さらに、限定されるものではないが、抗酸化剤および保存剤を含む種々のさらなる成分を含んでもよい。
【0128】
化学的組成物を用いて材料を充満またはコートする方法は当該技術分野において既知であり、そして限定されるものではないが、表面上に化学的組成物を沈着または結合させる方法、材料の合成の間に材料の構造中に化学的組成物を組み入れる(すなわち、生理学的に分解可能な材料によるように)方法、および後に乾燥しても、またしなくても、吸収材料中に水性または油性の溶液または懸濁液を吸収させる方法を含む。
【0129】
本明細書に使用されるように、製薬学的組成物の「非経口投与」は、被験者の組織に肉体的破れ目をつくることを特徴とする投与、および組織における破れ目を通しての製薬学的組成物の投与といういずれかの経路を含む。かくして非経口投与は、限定されるものではないが、組成物の注射、外科的切開をとおしての組成物の適用、組織に侵入する非外科的創傷をとおしての組成物の適用などによる製薬学的組成物の投与を含む。特に、非経口投与は、限定されるものではないが、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内の注射、および腎臓透析注入技術を含むことが意図される。
【0130】
非経口投与のために適当な製薬学的組成物の調合物は、製薬学的に許容できる担体、例えば無菌水または無菌等張食塩水と組み合わされた有効成分を含む。そのような調合物は、ボーラス投与または連続投与のために適当な形態物において製造、包装または販売されてもよい。注射調合物は、単位用量形態物、例えばアンプルまたは保存剤を含有する多用量容器において製造、包装または販売されてもよい。非経口投与のための調合物は、限定されるものではないが、油性または水性媒質における懸濁剤、液剤、乳剤、パスタ剤、および移植可能な持続放出または生分解性調合物を含む。そのような調合物は、さらに、限定されるものではないが、懸濁化剤、安定剤または分散剤を含む、1種以上のさらなる成分を含んでもよい。非経口投与のための調合物の1つの実施態様では、有効成分は、再構成組成物の非経口投与の前に、適当な媒質(例えば、無菌の発熱物質を含まない水)により再構成するための乾燥(すなわち、粉末状または顆粒状)形態物において提供される。
【0131】
製薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液または溶液の形態において製造、包装または販売されてもよい。この懸濁液または溶液は既知の技術にしたがって調合されてもよく、そして有効成分に加えて、本明細書に記述されるさらなる成分、例えば分散剤、湿潤剤または懸濁化剤を含んでもよい。そのような無菌の注射調合物は、例えば、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒、例えば水または1,3−ブタンジオールを使用して調製されてもよい。他の許容できる希釈剤および溶媒は、限定されるものではないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および不揮発油、例えば合成モノ−もしくはジ−グリセリドを含む。有用である他の非経口的に投与できる調合物は、微結晶形態、リポソーム調製物において、または生分解性ポリマーシステムの成分として、有効成分を含むそれらのものを含む。持続放出または移植のための組成物は、製薬学的に許容できるポリマー材料または疎水性材料、例えば乳濁液、イオン交換樹脂、難溶性ポリマーまたは難溶性塩を含んでもよい。
【0132】
本発明の製薬学的組成物は、口腔内投与のために適当な調合物において製造、包装または販売されてもよい。そのような調合物は、例えば、慣用の方法を使用して作成される錠剤またはロゼンジ剤の形態において存在してもよく、そして例えば、0.1〜20%(w/w)の有効成分、経口的に溶解可能または分解可能な組成物および場合によっては、本明細書に記述される1種以上のさらなる成分を含んでなるバランス量(balance)を含んでもよい。あるいはまた、口腔内投与のために適当な調合物は、有効成分を含んでなる散剤またはエアゾル用もしくは噴霧用の液剤もしくは懸濁剤を含んでもよい。そのような粉末化、エアゾル化もしくは噴霧される調合物は、分散された場合、好ましくは約0.1〜約200ナノメーターの範囲の平均粒子もしくは小滴サイズを有し、そしてさらに、本明細書に記述される1種以上のさらなる成分を含んでもよい。
【0133】
本明細書で使用されるように、「さらなる成分」は、限定されるものではないが、次に示す:添加物;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;顆粒化および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;着香剤;着色剤;保存剤;生理学的に分解される組成物、例えばゼラチン;水性媒質および溶媒;油性媒質および溶媒;懸濁化剤;分散または湿潤剤;乳化剤、解乳化剤;緩衝剤;塩類;増粘剤;賦形剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗菌抗カビ剤;安定剤;および製薬学的に許容できるポリマー材料または疎水性材料の1種以上を含む。本発明の製薬学的組成物に含くまれもよい他の「さらなる成分」は、当該技術分野において既知であり、そして例えば、Genaro,ed.(1985,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA)に記述されており、これは引用によって本明細書に組み入れられている。
【0134】
典型的には、動物、好ましくはヒトに投与されてもよい本発明の化合物の用量は、限定されるものではないが、動物の種類、処置されている疾病状態の種類、動物の年齢および投与経路を含む、いくつかの因子に応じて変えることができる。
【0135】
化合物は1日数回の頻度で動物に投与されてもよく、あるいはそれは1日1回、1週1回、2週毎に1回、1カ月1回のような少ない頻度で、あるいは数カ月毎に1回またはわずか1年に1回またはそれ以下のような一層少ない頻度で投与されてもよい。用量の回数は、熟達技術者にとっては容易に明らかにでき、そして限定されるものではないが、処置されている疾病の種類および重篤度、動物の種類および年齢、などのようないくつかの因子に依存するであろう。
【実施例】
【0136】
本発明は、ここに、次の実施例を引用して説明される。これらの実施例は、単に具体的な説明の目的のために提供され、そして本発明はこれらの実施例によって制約されるものではなく、むしろ本明細書に提供される教示の結果として明らかにされるすべての改変物を包含する。
【0137】
例1:組み合わせ組成物をアッセイする方法
呼吸制御に作用する薬物の効果を評価するための確立された方法は、呼吸に影響を与える重要な因子がしっかりと制御され、追跡することができる閉鎖系を創成することである。例えば、制御系は、酸素濃度、二酸化炭素濃度および大気圧について確立される。
【0138】
動物に基づく評価では、多数の呼吸機能測定値の身体全体または鼻のみの評価を可能にする系が利用できる。また、アレルギー、炎症、COPDおよび麻酔性鎮痛薬の使用と組み合わせられた、呼吸の動物モデル(例えば、モルモット、イヌ、齧歯類)が確立されている。限定されるものではない例として、Lovelace Respiratory Research Institute(Albuquerque,NM)は、新薬および環境曝露用途に関する評価の一部としてそのようなモデルを確立することにおいて広い経験を有する。
【0139】
類似する系はヒトの試験についても確立された。Hildebrandtら(Blood 2002;99:1552−1555)は酸素と二酸化炭素濃度の条件の変更下でN−アセチルシステインの評価のために使用されたプロトコルを記述した。さらに、United States military(Naval Aerospace Medical Research Command,Pensacola FL.,US Army Research Institute of Enviromental Medicine,Natick,MA)は、身体全体および顔のみの両方の曝露/追跡系を含む方法を開発した(Sausen et al.Aviat Space Environ Med 2003;74:1190−7)。
【0140】
最後に、機械的換気装置に接続されている入院患者は、呼吸に及ぼす薬物の効果を緻密に評価する機会を提供する。酸素と二酸化炭素のレベルは、呼吸パラメーターが分刻みで(minute−by−minute basis)測定される環境において制御することができる。
【0141】
前記動物およびヒトに基づく系に加えて、ある種の生化学的マーカーが低酸素に由来する慢性酸化ストレスを指示するように使用される、緊急(emerging)分野が存在する。1例は酸化ストレスを指示するための種々のイソプロスタン(isoprostane)の使用である(Cracowski JL and Durand T.Fundam Clin Pharmacol 2006;20:417−27)。
【0142】
本明細書に引用される各々およびすべての特許、特許出願および公表物の開示は、完全に引用によって本明細書に組み入れられている。
【0143】
本発明は特定の実施態様に関して開示されたが、本発明の他の実施態様および改変物が、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく当業者によって誘導されてもよいことは明白である。付随する請求項は、すべてのそのような実施態様および等価の改変物を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】哺乳動物の呼吸制御の複雑かつ相互に関連する性質を具体的に説明している。
【図2A】正常な呼吸制御に影響する因子を具体的に説明している。正常には、呼吸動因は状態の範囲を越えて(across)作用することができ、そして二酸化炭素と酸素レベルが主動因物(driver)であり、そして相互関係様式で働く。
【図2B】障害された呼吸制御に影響する因子を具体的に説明している。広い範囲の因子が個々に、または組み合わされて働いて、呼吸動因を減少させ呼吸停止または不十分な呼吸をもたらす。究極の結末は、心臓血管の、神経学的および/または代謝的結果をもたらす低酸素症である。
【図2C】障害された呼吸制御の有効な薬物治療のために考慮される因子を具体的に説明している。薬物は、定められた経路を通して、または上部気道における空気流動を改善することによって、呼吸動因を回復するのを助けるために有用である。究極の結末は、本発明の1つの実施態様では、障害された呼吸(例えば、無呼吸、減呼吸、換気過少)、低酸素症および関連する結果を低下させることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用組成物が、
a.S−ニトロソチオール第一の化合物を含んでなる第一の組成物;および
b.S−ニトロソチオール化合物ではない第二の化合物を含んでなる第二の組成物であって,かつ、該第二の化合物が呼吸リズムを安定化する活性を有する組成物:
を含む、呼吸リズムを安定化するための治療用組成物。
【請求項2】
請求項1記載の治療用組成物を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物の呼吸リズムを安定化する方法。
【請求項3】
第二の化合物が、呼吸リズムを安定化する能力を有する化合物である、請求項1記載の治療用組成物。
【請求項4】
第二の化合物が、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、呼吸刺激剤、麻薬アンタゴニストおよびホルモンからなる群から選ばれる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
第二の化合物が、上部気道の開通性を増加させる活性を有する化合物である、請求項1の治療用組成物。
【請求項6】
第二の化合物が、セロトニンアゴニスト、セロトニンアンタゴニスト、四環式抗うつ薬、ドーパミンに作用する作用物質、およびノルエピネフリンに作用する作用物質からなる群から選ばれる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第二の化合物が、覚醒を促進する活性を有する化合物である、請求項1記載の治療用組成物。
【請求項8】
第二の化合物が、癲癇発作を減少させる活性を有する化合物である、請求項1記載の治療用組成物。
【請求項9】
第二の化合物が、炎症を減少させることによって上部気道の開通性を増加させる活性を有する化合物である、請求項1記載の治療用組成物。
【請求項10】
第二の化合物が、抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン アンタゴニスト、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、ステロイドおよびCOX−2インヒビターからなる群から選ばれる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第二の化合物が、呼吸動因を減少させる活性を有する化合物である、請求項1記載の治療用組成物。
【請求項12】
第二の化合物が、オピオイド鎮痛薬、鎮静性催眠薬および一般的麻酔薬からなる群から選ばれる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
第二の化合物が、肺機能を改善する活性を有する化合物である、請求項1記載の治療用組成物。
【請求項14】
第二の化合物が、ステロイド、気管支拡張薬および抗コリン作動薬からなる群から選ばれる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
S−ニトロソチオール化合物である第三の化合物をさらに含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
S−ニトロソチオール化合物ではない、第三の化合物をさらに含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
請求項8または9の1つに記載の治療用組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の呼吸リズムを安定化する方法。
【請求項18】
請求項1記載の治療用組成物を哺乳動物に投与することを含み、換気補助デバイスを用いて該哺乳動物を処置することをさらに含む、哺乳動物の呼吸リズムを安定化する方法。
【請求項19】
換気補助デバイスが、機械的換気器、CPAPデバイスおよびBiPAPデバイスからなる群から選ばれる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
請求項1記載の治療用組成物および製薬学的に許容できる担体を含んでなる、製薬学的組成物。
【請求項21】
請求項13記載の治療用組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の呼吸リズムを安定化する方法。
【請求項22】
投与経路が、非経口、経口および口腔内投与経路からなる群から選ばれる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
非経口投与経路が、経皮、静脈内、筋肉内および皮内投与経路からなる群から選ばれる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
組成物が、少なくとも2つの投与経路によって投与される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
a.S−ニトロソチオール第一の化合物を含んでなる第一の組成物;および
b.S−ニトロソチオール化合物ではない第二の化合物を含んでなる第二の組成物であって、該第二の化合物が弧束核(nucleus tractus solitarius)における脳幹呼吸制御中枢のレベルにおける細かい換気(V)を増大する活性を有する、組成物;
を含んでなる治療用組成物を個人に投与する段階を含む、該個人の弧束核における脳幹呼吸制御中枢のレベルにおける細かい換気(V)を増大する方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2009−508965(P2009−508965A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532389(P2008−532389)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/036846
【国際公開番号】WO2007/035879
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508085039)ガレオン・フアーマシユーチカルズ (2)
【Fターム(参考)】