説明

正方晶チタン酸バリウム粒子とその製造方法並びにセラミックコンデンサ

【課題】コンデンサ中の誘電体層の薄層化、高積層化に伴い、チタン酸バリウム粒子が充填されたグリーンシートが薄膜化されても、十分な信頼性、電気的特性を保つことのできるチタン酸バリウム粒子と、その製造方法、並びに当該チタン酸バリウム粒子を用いたセラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】Ti当量で0.077molの四塩化チタン水溶液へ、アンモニア水溶液を添加して水酸化チタンゲルを得、この水酸化チタンゲルに窒素雰囲気下において水酸化バリウム水溶液をBa当量で0.154mol添加して、BaTiO3換算で0.3mol/kgのスラリーを得、このスラリー
をオートクレーブに投入し200℃で96時間水熱合成を行って平均粒子径が0.20μm、粒子径分布が0.21で、均斉度が0.91、真円度が0.83、D50/DTEMの値が1.3、結晶構造が
ペロブスカイトで結晶軸比c/aが.008、Ba/Tiが0.99である球状で分散性の高い正方晶チタン酸バリウム粒子を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ等に用いられるチタン酸バリウム粒子およびその製造方法並びにセラミックコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパソコン及びその周辺機器などの小型化、高性能化の進展が著しい。そこに用いられる電子部品、例えば積層セラミックコンデンサにおいても小型化、大容量化といった観点で開発が進められており、コンデンサ中の誘電体層の薄層化、高積層化が進められている。この誘電体層の原料としては、主に高誘電体材料であるチタン酸バリウムの粒子が用いられている。
【0003】
一方、チタン酸バリウムの粒子の製造方法としては、固相法、シュウ酸塩法、、ゾルゲル法、水熱合成法が知られている。固相法は、酸化チタンと炭酸バリウムの混合粉末を高温で固相合成してチタン酸バリウムを生成する(例えば、非特許文献1参照)方法である。
【0004】
シュウ酸塩法は塩化バリウム水溶液と四塩化チタン水用液を混合し、この混合物をシュウ酸水溶液に滴下、攪拌してシュウ酸バリウムチタニルを生成、塩素を洗浄除去後、シュウ酸バリウムチタニルを脱水乾燥し、それを仮焼してチタン酸バリウムを生成する(例え
ば、非特許文献2参照)方法である。
【0005】
ゾルゲル法は、チタンアルコキシドと水酸化バリウムとの混合液より複合アルコキシドを生成後、当該複合アルコキシドを仮焼してチタン酸バリウムを生成する方法である。
【0006】
水熱合成法は、塩化チタンと塩化バリウムをアルカリ溶液下において水熱処理することによりチタン酸バリウムを生成する(例えば、特許文献1,2、非特許文献3参照)方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】工業化学雑誌第70巻第6号(1967)
【非特許文献2】窯業協会誌92(1)1984
【非特許文献3】工業化学雑誌第59巻第8号(1956)
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61-031345号公報
【特許文献2】特開2002-211926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
チタン酸バリウムの粒子は、バインダー、溶剤、添加剤と混合してスラリーとなり、シート成形機によりグリーンシート化された後、誘電体層となり、当該誘電体層が積層されて積層セラミックコンデンサとなるが、コンデンサ中の誘電体層の薄層化、高積層化の要求に伴い、チタン酸バリウムの粒子に対しても、薄膜化されたグリーンシート内においても、均一に充填できること、電気容量等の電気的特性のバラツキが低いこと等が要求されている。ところが、従来の技術に係るチタン酸バリウムの粒子では、グリーンシートを薄膜化した際、均一に充填することが困難で、電気的特性のバラツキも大きく、信頼性の低
いものであった。
【0010】
そこで発明が解決しようとする課題は、例えばコンデンサ中の誘電体層の薄層化、高積層化に伴い、チタン酸バリウム粒子が充填されたグリーンシートが薄膜化されても、十分な信頼性、電気的特性を保つことのできるチタン酸バリウム粒子と、その製造方法、並びに当該チタン酸バリウム粒子を用いたセラミックコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明者らが研究を行った結果、チタン酸バリウム粒子の電子顕微鏡で測定した平均粒子径、粒子径分布、均斉度、真円度、結晶軸 比c/a、等が所定の条件を満たしていることが肝要であることに想到した。さらに、本発明者らは、当該諸条件を満たすチタン酸バリウム粒子の容易且つ生産コストの安価な製造法に想到した。
【0012】
すなわち、上述の課題を解決するための第1の手段は、
電子顕微鏡像から測定した平均粒子径をDTEMとしたとき、DTEMが0.3μm以下、粒子径分布が0.5以下、均斉度が0.90以上、真円度が0.80以上、結晶軸比c/aが1.005以上
、バリウムとチタンとのモル比Ba/Tiが0.99以上、1.01以下、動的光散乱法により測定し
た粒度分布における累積径50%となる値をD50としたとき、D50/DTEMが3.0以
下であることを特徴とする正方晶チタン酸バリウム粒子である。
【0013】
第2の手段は、
水熱合成法によるチタン酸バリウム粒子の製造方法であって、
チタン塩と水酸化バリウム水溶液とを、バリウムとチタンとのモル比Ba/Tiが1.5〜10.0となるよう混合し、
当該混合溶液を150℃以上、250℃以下の温度範囲で、24時間以上、水熱処理することを特徴とする正方晶チタン酸バリウム粒子の製造方法である。
【0014】
第3の手段は、
第1の手段に記載の正方晶チタン酸バリウム粒子、または、第2の手段に記載の正方晶チタン酸バリウム粒子の製造方法により製造した正方晶チタン酸バリウム粒子を用いたことを特徴とするセラミックコンデンサである。
【発明の効果】
【0015】
第1の手段に係る正方晶チタン酸バリウム粒子は、電子顕微鏡像から測定した平均粒子径DTEMが0.3μm以下、粒子径分布が0.5以下、均斉度が0.90以上、真円度が0.80以上
、結晶軸比c/aが1.005以上、バリウムとチタンとのモル比Ba/Tiが0.99以上、1.01以下、
動的光散乱法により測定した粒度分布から求めた平均粒子径をD50としたとき、D50/DTEMが3.0以下であるので、グリーンシートが薄膜化されても、十分な信頼性、電
気的特性を保つことができた。
【0016】
第2の手段に係る正方晶チタン酸バリウム粒子の製造方法によれば、電子顕微鏡像から測定した平均粒子径DTEMが0.3μm以下、粒子径分布が0.5以下、均斉度が0.90以上、
真円度が0.80以上、結晶軸比c/aが1.005以上、バリウムとチタンとのモル比Ba/Tiが0.99
以上、1.01以下、動的光散乱法により測定した粒度分布から求めた平均粒子径をD50としたときD50/DTEMが3.0以下である、正方晶チタン酸バリウム粒子を容易且つ安
価な生産コストで製造することができた。
【0017】
第3の手段に係るセラミックコンデンサは、誘電体層であるグリーンシートを薄膜化できるので、薄層化、高積層化に際し電気特性の不安定化、新たな設備投資、生産コストの上昇等を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例3に係るチタン酸バリウム微粒子の透過型電子顕微鏡写真(20,000倍)である。
【図2】実施例6に係るチタン酸バリウム微粒子の透過型電子顕微鏡写真(20,000倍)である。
【図3】比較例1に係るチタン酸バリウム微粒子の透過型電子顕微鏡写真(20,000倍)である。
【図4】実施例3に係るチタン酸バリウム微粒子のX線回折パターンである。
【図5】比較例1に係るチタン酸バリウム微粒子のX線回折パターンである。
【図6】実施例1〜7、比較例1〜6の微粒子特性測定結果の一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、所望の粒子特性を有する正方晶チタン酸バリウム粒子を製造するため、水熱合成法を基礎とした製造法を鋭意研究した。その結果、製造原料としてチタン塩と水酸化バリウム水溶液とを選択し、当該チタン塩と水酸化バリウムとの仕込量においてバリウムとチタンとのモル比Ba/Tiが1.5〜10.0 となるよう混合し、当該混合溶液を150℃以上、250℃以下の温度範囲で、24時間以上、水熱処理することで、電子顕微鏡像から測定し
た平均粒子径DTEMが 0.3μm以下、粒子径分布が0.5以下、均斉度が0.90以上、真円度が0.80以上、結晶軸比c/aが1.005以上、バリウムとチタンとのモル比 Ba/Tiが0.99以上、1.01以下、マイクロトラックを用いた動的光散乱法により測定した粒度分布から求めた平均粒子径をD50としたときD50/DTEMが3.0以下である、正方晶チタン酸バリウ
ム粒子を製造することができたものである。
【0020】
以下、まず本発明に係るチタン酸バリウム粒子の製造方法を記載しながら、本発明の実施形態について説明する。
まず、純水へチタン塩として四塩化チタン水溶液を攪拌下で添加した後、アルカリ溶液を添加して四塩化チタンを加水分解し、洗浄・ろ過して水酸化チタンゲルを得る。この水酸化チタンゲルに、窒素雰囲気下において水酸化バリウム水溶液をBa/Tiのモル比で1.5〜10.0となるよう添加し、加水してスラリーを得る。このスラリーを攪拌して40〜100℃で0.5〜5時間熟成した後、オートクレーブに投入し、150〜250℃で24時間以上、好ましくは 48〜100時間水熱合成を行う。反応後、室温まで冷却した後、窒素雰囲気下において生成
物を洗浄・ろ過し、105〜150℃で12時間乾燥して、チタン酸バリウム粒子を得る。
【0021】
ここで、原料として、水酸化チタンゲルと水酸化バリウム水溶液との替わりに、四塩化チタンと水酸化バリウム水溶液を用いても、本発明に係るチタン酸バリウムを得ることができる。この場合は、窒素雰囲気下で水酸化バリウム水溶液に水酸化ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ溶液を添加し、四塩化チタン水溶液をバリウムとチタンとのモル比Ba/Tiで1.5〜10.0となるよう添加し、加水してスラリーを得る。このスラリーを攪拌して40〜100℃で 0.5〜5時間熟成した後、オートクレーブに投入し、150〜250℃で24時間以上、好ましくは48〜100時間水熱合成を行う。反応後、室温まで冷却した後、窒素雰囲気下に
おいて生成物を洗浄・ろ過し、105〜150℃で12時間乾燥して、チタン酸バリウム粒子を得た。
さらに上記のいずれの場合においても、チタン塩として、四塩化チタンを硫酸チタンに代替することもできる。
【0022】
次に、チタン酸バリウム粒子の粒子特性の評価方法例について説明する。
平均粒子径、粒子径分布、均斉度、真円度、粒子形状は、電子顕微鏡写真等の電子顕微鏡像(例えば、20,000倍の透過型電子顕微鏡写真)より求めた。まずチタン酸バリウム粒子の電子顕微鏡写真より、重なりのない300個の粒子を選び、当該粒子の長径、短径を測
定し、その長径の平均値を平均粒子径DTEMとして求めた。粒子径分布は、当該粒子の粒度分布の標準偏差を、前記平均粒子径DTEMで除して求めたもので、粒度分布のシャープさの指標である。粒子形状は、前記電子顕微鏡写真等の電子顕微鏡像から判断した。均斉度は、前記測定した長径と短径の比の平均値として求めた。真円度は、前記平均粒子径DTEMを 基に、粒子形状が真球と仮定した場合の比表面積を、BET法により測定した比表面積で除したものである。次に、当該チタン酸バリウム粒子の粒度分布を、マイクロトラックを用いた動的光散乱法により測定した。尚、測定においては、前処理として当該チタン酸バリウム粒子を適宜な分散媒へ十分に分散させ、マイクロトラックにて粒度分布を測定し、当該粒度分布から累積径50%となる値を求め、その値をD50とした。そして、当該D50を前記DTEMで除してD50/DTEMの値を求めた。当該D50/DTEMの値は、粒子の分散性の指標である。
【0023】
チタン酸バリウム粒子の結晶構造、結晶系は、X線回折により測定した回折パターンか
ら判断した。結晶軸比c/aは、X線回折パターンより格子定数を求め、a軸とc軸の格子定数の比より算出した。
【0024】
次に、チタン酸バリウム粒子の粒子特性の評価結果について説明する。
まず、チタン酸バリウム粒子の平均粒子径が0.3μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下、もっとも好ましくは0.1μm以下であり、誘電体層の厚みが 数μm以内となった場合においても誘電体層の充填密度が高まり信頼性が向上する。0.3μmを超えると誘電体層の充填密度が低く信頼性が低下するおそれがある。そして、粒子径分布が0.5以下、さらに好ま
しくは0.3以下であると、チタン酸バリウム粒子間の特性バラツキが抑えられるため、誘
電体層の電気容量のバラツキを低減することができる。均斉度が0.90以上、真円度が0.80以上であると、チタン酸バリウム粒子等をグリーンシートにした際の粒子間の空隙が少なくできるため、充填密度が高まり信頼性が向上する。均斉度は0.90未満、真円度は0.80未満であるとグリーンシートにした際粒子間の空隙が大きくなり充填密度が低く信頼性が低下するおそれがある。チタン酸バリウム粒子のD50/DTEMの値は、当該粒子の分散性を示しており、D50/DTEMの値が3.0以下、好ましくは2.5以下であると、スラリー化に際し、溶剤中に容易に分散することができ、グリーンシートにした際の充填密度が高まり信頼性が向上する。D50/DTEMの値が3.0を超えると溶剤中への分散が困難
で、グリーンシート化した際の充填密度が低く、また凝集粒子の生成により欠陥が生じるなど、信頼性が低下するおそれがある。
また本発明に係るチタン酸バリウム粒子の粒子形状は球状に近く、さらに、熱処理工程を経ていないため、粒子間焼結がなく分散時の粘性が高くならないため、ペースト化の際に固形分割合を高くできるので、チタン酸バリウム粒子自体の充填性とあいまって、高密度のコンデンサを製造することができる。
【0025】
チタン酸バリウム粒子結晶の結晶軸比c/aが1.005以上、好ましくは1.008以上、更に好
ましくは1.009以上であると、強誘電特性を示すチタン 酸バリウム粒子結晶の正方晶割合が高いことから高い誘電特性を示すことができる。結晶軸比c/aが1.005未満であると疑似立方晶の割合が高くなり誘電 特性が低くなる。バリウムとチタンとのモル比Ba/Tiが、0.99〜1.01であると水酸化イオンなどの不純物や格子欠陥が少ないことから強誘電特性を
示す正方晶の割合が高くなる。チタン酸バリウム粒子結晶のBa/Tiが0.99未満であると水
酸化物イオンなどの不純物や格子欠陥が多く存在し、疑似立方晶の割合が高くなり誘電特性が低下するおそれがある。また、Ba/Tiが1.01を超えるとBaの炭酸塩やBaリッチ化合物
などの不純物が存在して誘電特性が低下するおそれがある。
【0026】
上述した本発明に係る製造方法により、平均粒子径が0.3μm以下、粒子径分布が0.5以
下で、均斉度が0.90以上、真円度が0.80以上であり、D50/DTEMの値が3.0以下で
、結晶構造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.005以上であり、Ba/Tiが0.99〜1.01であ
ることを特徴とする球状の正方晶チタン酸バリウム粒子を直接合成できる理由は明確でないが、過剰量のバリウムイオン、水酸化物イオンが存在する反応環境において150℃以上
で、チタン化合物と反応することにより溶解・再析出が活発になり、且つこの溶解・再析出状態を24時間以上継続することで、不純物である水酸化物イオンや水などを粒内に含有することなく粒成長できたことによると推測される。
【0027】
本発明に係る球状の正方晶チタン酸バリウム粒子は、粒子径が小さく、粒度分布が狭く、均斉度が高く、粒子形状が球状で分散性が高く、誘電特性に関しては、Ba/Tiが組成が
均一で正方晶の割合が高い。この結果、例えば、セラミックコンデンサ中の誘電体層の薄層化、高積層化に伴うグリーンシートの薄膜化に、新たな設備投資や生産コストの上昇なしに対応できる。この結果、生産コストの上昇を招くことなく、小型、高性能のセラミックコンデンサを製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
25℃に保持した純水に、Ti当量で0.077molの四塩化チタン水溶液を攪拌下で添加し、概ね5wt%水溶液とした後、5%アンモニア水溶液を 114gゆっくり添加して四塩化チタン
を加水分解し、生成した沈殿を洗浄・ろ過して水酸化チタンゲルを得る。この水酸化チタンゲルに窒素雰囲気下において 水酸化バリウム水溶液をBa当量で0.154mol添加し、加水
してBaTiO3換算で0.3mol/kgのスラリーを得る。このスラリーを60℃で30分間攪拌して熟
成した後、オートクレーブに投入し200℃で96時間水熱合成を行う。反応後、室温まで冷
却した後、窒素雰囲気下において洗浄・ろ過し、105℃で12時間乾燥してチタン酸バリウ
ム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.20μm
、粒子径分布が0.21で、均斉度が0.91、真円度が0.83、D50/DTEMが1.3、結晶構
造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.008、Ba/Tiが0.99である球状で分散性の高い正方
晶チタン酸バリウム微粒子であった。
尚、D50を求めるための、マイクロトラックを用いた動的光散乱法による測定は、前処理において、当該チタン酸バリウム微粒子の分散媒として純水を用い、超音波ホモジナイザーを用いて超音波出力150Wで3分間の分散処理をおこなった後、日機装(株)社製マ
イクロトラックUPA150にて粒度分布を測定して求めた。そして当該粒度分布から累積径50%となる値を求め、その値をD50とした。以下、実施例2〜7、比較例1〜6においても、同様にしてD50の値を求めた。
【0029】
(実施例2)
水熱合成を250℃で96時間とした以外は実施例1と同様にして、チタン酸バリウム微粒
子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.23μm
、粒子径分布が0.20で、均斉度が0.92、真円度が0.84、D50/DTEMが1.3、結晶構
造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.010、Ba/Tiが0.99である球状で分散性の高い正方
晶チタン酸バリウム微粒子であった。
【0030】
(実施例3)
四塩化チタン水溶液の添加量をTi当量で0.077mol、水酸化バリウム水溶液の添加量をBa当量で0.230molとした以外は実施例1と同様にして、チタン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.17μm
、粒子径分布が0.19で、均斉度が0.93、真円度が0.85、D50/DTEMが1.4、結晶構
造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.010、Ba/Tiが0.99である球状で分散性の高い正方
晶チタン酸バリウム微粒子であった。
尚、本実施例に係るチタン酸バリウム微粒子の透過型電子顕微鏡写真(20,000倍)を図1に、X線回折パターンを図4に示す。
【0031】
(実施例4)
四塩化チタン水溶液の添加量をTi当量で0.077mol、水酸化バリウム水溶液の添加量をBa当量で0.230molとし、水熱合成を250℃で96時間とした以外は実施例1と同様にして、チ
タン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.24μm
、粒子径分布が0.18で、均斉度が0.94、真円度が0.86、D50/DTEMが1.3、結晶構
造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.010、Ba/Tiが1.00である球状で分散性の高い正方
晶チタン酸バリウム微粒子であった。
【0032】
(実施例5)
四塩化チタン水溶液から水酸化チタンゲルを得、この水酸化チタンゲルと水酸化バリウム水溶液とを反応させる替わりに、窒素雰囲気下で水酸化バリウム水溶液に水酸化ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ溶液を添加し、四塩化チタン水溶液をBa/Tiのモル比で
3となるよう添加し、加水してスラリーを得た以外は、実施例1と同様にして、チタン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.15μm
、粒子径分布が0.22、均斉度が0.91、真円度が0.83、D50/DTEMが1.5、結晶構造
がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.009、Ba/Tiが0.99である球状で分散性の高い正方晶
チタン酸バリウム微粒子であった。
【0033】
(実施例6)
四塩化チタン水溶液から水酸化チタンゲルを得、この水酸化チタンゲルと水酸化バリウム水溶液とを反応させる替わりに、窒素雰囲気下で水酸化バリウム水溶液に水酸化ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ溶液を添加し、四塩化チタン水溶液をBa/Tiのモル比で1.5となるよう添加し、加水してスラリーを得、水熱合成を240℃で24時間とした以外は、
実施例1と同様にして、チタン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.08μm
、粒子径分布が0.18、均斉度が0.92、真円度が0.97、D50/DTEMが2.5、結晶構造
がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.006、Ba/Tiが0.99である球状で分散性の高い正方晶
チタン酸バリウム微粒子であった。
尚、本実施例に係るチタン酸バリウム微粒子の透過型電子顕微鏡写真(20,000倍)を図2に示す。
【0034】
(実施例7)
四塩化チタン水溶液の添加量をTi当量で0.077mol、水酸化バリウム水溶液の添加量をBa当量で0.116molとし、水熱合成を200℃で24時間とした以外は実施例1と同様にして、チ
タン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.10μm
、粒子径分布が0.14で、均斉度が0.91、真円度が0.92、D50/DTEMが2.1、結晶構
造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.007、Ba/Tiが0.99である球状で分散性の高い正方
晶チタン酸バリウム微粒子であった。
【0035】
(比較例1)
四塩化チタン水溶液の添加量をTi当量で0.077mol、水酸化バリウム水溶液の添加量をBa当量で0.077molとし、水熱合成を150℃で96時間とした以外は実施例1と同様にして、チ
タン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.25μm
、粒子径分布が0.23で、均斉度が0.86、真円度が0.73と低く、D50/DTEMが1.2、
結晶構造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.000と低く、Ba/Tiが0.92と低い、球状で分
散性の高い疑似立方晶チタン酸バリウム微粒子であった。
尚、本比較例に係るチタン酸バリウム微粒子の透過型電子顕微鏡写真(20,000倍)を図3に、X線回折パターンを図5に示す。
【0036】
(比較例2)
四塩化チタン水溶液の添加量をTi当量で0.077mol、水酸化バリウム水溶液の添加量をBa当量で0.077molとし、水熱合成を300℃で96時間とした以外は実施例1と同様にして、チ
タン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.28μm
、粒子径分布が0.21で、均斉度が0.89と低く、真円度が0.82、D50/DTEMが1.3、
結晶構造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.000と低く、Ba/Tiが0.95と低い、球状で分
散性の高い疑似立方晶チタン酸バリウム微粒子であった。
【0037】
(比較例3)
四塩化チタン水溶液の添加量をTi当量で0.077mol、水酸化バリウム水溶液の添加量をBa当量で0.230molとし、水熱合成を300℃で24時間とした以外は実施例1と同様にして、チ
タン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.34μm
と大きく、粒子径分布が0.21で、均斉度が0.89と低く、真円度が0.86、D50/DTEMが1.2、結晶構造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.009、Ba/Tiが0.99、球状で分散性の高い正方晶チタン酸バリウム微粒子であった。
【0038】
(比較例4)
40℃に保った塩化チタン水溶液139.3g(Ti=0.48mol)に水1250mlを加え、ここへ、5.0wt%のアンモニア水483mlを30分間かけて添加し水酸化チタンスラリーを得、水洗ろ別した。窒素雰囲気下にて、当該水酸化チタンへ、水酸化バリウム151.4g(Ba=0.48mol)を加え、加水してBaTiO3換算で0.8mol/kgのスラリーを得る。このスラリーを60℃で30分
間攪拌して熟成した後、オートクレーブに投入し150℃で5時間水熱合成を行う。反応後、室温まで冷却した後、窒素雰囲気下において洗浄・ろ過し、105℃で12時間乾燥してチタ
ン酸バリウム微粒子を 得た。このチタン酸バリウム微粒子を1020℃で3時間仮焼して、仮焼後のチタン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.68μm
と大きく、粒子径分布が0.62と広く、均斉度が0.78と低く、D50/DTEMが7.7と高
く、結晶構造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.009、Ba/Tiが0.97である多角形状で分
散性の低い正方晶チタン酸バリウム微粒子であった。
【0039】
(比較例5)
四塩化チタン水溶液175.2g(Ti当量で0.600mol)を窒素雰囲気下で、純水250mlに加え、ここへプロピオン酸ナトリウム11.6gを含む6.1N水酸化ナトリウム水溶液557mlを添加して四塩化チタンを加水分解し、生成した沈殿を洗浄・ろ過して水酸化チタンコロイドを得る。この水酸化チタンコロイドに窒素雰囲気下において、水酸化バリウム197.1g(Ba当
量で0.606mol)を 含む水酸化バリウム水溶液1000mlを加え、さらに加水して全量を2000mlとしスラリーを得る。このスラリーを70℃で2時間攪拌して熟成した後、オートクレーブ
に投入し150℃で16時間水熱合成を行う。反応後、室温まで冷却した後、窒素雰囲気下に
おいて洗浄・ろ過し、105℃で12時間乾燥してチタン酸バリウム微粒子を得た。このチタ
ン酸バリウム微粒子を1020℃で3時間仮焼して、仮焼後のチタン酸バリウム微粒子を得た

得られた仮焼後のチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が
0.37μmと大きく、粒子径分布が0.58と広く、均斉度が0.90、D50/DTEMが9.5と高く、結晶構造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.007、Ba/Tiが0.98と小さく、多角形状
で分散性の低い正方晶チタン酸バリウム微粒子であった。
【0040】
(比較例6)
25℃に保持した純水に、Ti当量で0.077molのチタンテトライソプロポキシド水溶液を攪拌下で添加し、概ね5wt%水溶液とした後、5%アンモニア水溶液を114gゆっくり添加し
て四塩化チタンを加水分解し、生成した沈殿を洗浄・ろ過して水酸化チタンゲルを得る。この水酸化チタンゲルに窒素雰囲気下において水酸化バリウム水溶液をBa当量で0.154mol添加し、加水してBaTiO3換算で0.3mol/kgのスラリーを得る。このスラリーを 60℃で30分間攪拌して熟成した後、オートクレーブに投入し150℃で16時間水熱合成を行う。反応後
、室温まで冷却した後、窒素雰囲気下において洗浄・ろ過し、105℃で12時間乾燥してチ
タン酸バリウム微粒子を得た。
得られたチタン酸バリウム微粒子の微粒子特性を測定した結果、平均粒子径が0.22μm
、粒子径分布が0.22で、均斉度が0.86と低く、D50/DTEMが1.3、結晶構造がペロ
ブスカイトで結晶軸比c/aが1.009、Ba/Tiが0.98と低い立方体形状で分散性の高い正方晶
チタン酸バリウム微粒子であった。
【0041】
(まとめ)
実施例1〜7で得られたチタン酸バリウム微粒子は平均粒子径が0.3μm以下、粒子径分布が0.5以下で、均斉度が0.90以上、真円度が0.80以上であり、D50/DTEMが3.0以下で、結晶構造がペロブスカイトで結晶軸比c/aが1.005以上であり、Ba/Tiが0.99〜1.01
であることを特徴とする球状で分散性の高い正方晶チタン酸バリウム微粒子であった。
一方、比較例1,2ではBa/Tiが1の場合、結晶系は疑似立方晶であった。比較例3では反応温度300℃では微粒子で結晶系は正方晶となったが、粒子径が大きくなった。比較例
4,比較例5とも熱処理により結晶系は正方晶となるが、粒成長により粒子径が大きくなり、粒子間の焼結によりD50/DTEMの値が高かった。また、熱処理温度を下げた場合も、粒成長は抑制できたが粒子間焼結によるD50/DTEMの値の上昇があり、結晶性も低かった。比較例6では微粒子で結晶系は正方晶となったが、粒子形状が球形ではなく立方体形となった。
尚、実施例1〜7、比較例1〜6の微粒子特性測定結果の一覧表を図6に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡像から測定した平均粒子径をDTEMとしたとき、DTEMが0.3μm以下、粒子径分布が0.5以下、均斉度が0.90以上、真円度が0.80以上、結晶軸比c/aが1.009以上
、バリウムとチタンとのモル比Ba/Tiが0.99以上、1.01以下、動的光散乱法により測定し
た粒度分布における累積径50%となる値をD50としたとき、D50/DTEMが3.0以
下であることを特徴とする正方晶チタン酸バリウム粒子。
【請求項2】
電子顕微鏡像から測定した平均粒子径をDTEMとしたとき、DTEMが0.1μm以下、粒子径分布が0.5以下、均斉度が0.90以上、真円度が0.80以上、結晶軸比c/aが1.005以上
、バリウムとチタンとのモル比Ba/Tiが0.99以上、1.01以下、動的光散乱法により測定し
た粒度分布における累積径50%となる値をD50としたとき、D50/DTEMが3.0以
下であることを特徴とする正方晶チタン酸バリウム粒子。
【請求項3】
水熱合成法によるチタン酸バリウム粒子の製造方法であって、
水酸化チタンゲルと水酸化バリウム水溶液とを、バリウムとチタンとのモル比Ba/Tiが1.5〜10.0となるよう混合し、当該混合溶液を150℃以上、250℃以下の温度範囲で、24時間以上、水熱処理することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の正方晶チタン酸バリウム粒子の製造方法。
【請求項4】
純水へ、四塩化チタン水溶液とアンモニア水溶液とを添加して、四塩化チタンを加水分解し、生成した沈殿を洗浄・ろ過して水酸化チタンゲルを得る工程と、
得られた水酸化チタンゲルへ、窒素雰囲気下において水酸化バリウム水溶液を添加し、加水してスラリーを得る工程と、
得られたスラリーへ水熱合成処理を行った後、窒素雰囲気下において洗浄・ろ過し、乾燥してチタン酸バリウム微粒子を得る工程と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の正方晶チタン酸バリウム粒子の製造方法。
【請求項5】
窒素雰囲気下で、水酸化バリウム水溶液へ、アルカリ溶液と四塩化チタン水溶液とを添加し、加水してスラリーを得る工程と、
得られたスラリーへ水熱合成処理を行った後、窒素雰囲気下において洗浄・ろ過し、乾燥してチタン酸バリウム微粒子を得る工程と、を有することを特徴とする、請求項2に記載の正方晶チタン酸バリウム粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2のいずれかに記載の正方晶チタン酸バリウム粒子を用いていることを特徴とするセラミックコンデンサ。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−173932(P2010−173932A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63611(P2010−63611)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【分割の表示】特願2005−43128(P2005−43128)の分割
【原出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【Fターム(参考)】