説明

正極活物質および非水電解質二次電池

【課題】高容量を有し、且つサイクル特性、低温重負荷特性および安全性を向上させることができる正極活物質および非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】正極2は、正極活物質を有し、正極活物質は、式LitCoMs2(Mは、Fe,V,Cr,Ti,Mg,Al,B,Caから選ばれた少なくとも一種の元素である。s、tは、0≦s≦0.03、0.05≦t≦1.15の範囲内である。)で表されたリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物と、式LixCo1-yy2(Aは、Mg,Alから選ばれた少なくとも一種の元素である。x、yは、各々0.05≦x≦1.15、0≦y≦0.03の範囲内である。)で表されたリチウムコバルト複合酸化物とが混合されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、正極活物質および非水電解質二次電池に関し、より詳しくは、組成の異なる2種類のリチウムコバルト複合酸化物を有する正極活物質およびこれを用いた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積技術の進歩に伴った電子機器の発展とその小型化への進展から、携帯電子機器の電源となる電池への要求が高まっている。電池に求められる特性は、小型且つ軽量で長持ちする充放電可能な二次電池である。
【0003】
これらの特性を持つ小型二次電池としては、ニッケル水素電池、ニッカド電池、リチウムイオン二次電池などが挙げられるが、中でも4V級の高い電圧と高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池は、大きな消費電力を有しており、一次電池では対応できない携帯電子機器などへの需要も高まっている。
【0004】
リチウムイオン二次電池の特徴としては、他の電池と比較して酸化還元電位が高い正極と酸化還元電位の低い負極を組み合わせていることで、容量が大きい、すなわちエネルギー密度が大きい電池を作製できる点にあり、現在、リチウムイオン二次電池の正極活物質として、主流となっているものは、リチウムコバルト複合酸化物である。
【0005】
このリチウムコバルト複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池は、平均放電電位が高いという利点があるものの、サイクル特性が良くないことや低温での大出力放電時では、電圧低下が激しく、例えば、寒冷地においてパソコンの電源を入れた際、出力不足により起動しない問題が考えられる。
【0006】
また、例えば、特許文献1には、一般式LiCoxyz2(式中、Aは、Al、Cr、V、Mn、又はFeから選ばれる少なくとも1種を表し、Bは、Mg又はCaから選ばれる少なくとも1種を表す。また、x、y、zは、それぞれ0.9≦x<1、0.001≦y≦0.05、0.001≦z≦0.05の範囲の数である。)で表されたリチウムコバルト複合酸化物が記載されているが、この正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、高温特性を向上できるものの、負荷特性および低温特性については満足できる程度の特性を得ることができない。
【特許文献1】特開2001−319652号公報
【0007】
さらに、例えば、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を改善するために、リチウムコバルト複合酸化物の合成時にジルコニウム(Zr)を添加することが提案されている。さらに、電極充填性を上げるために、ジルコニウム(Zr)を添加したリチウムコバルト複合酸化物を、粗粉・微粉として混合して用いることで、リチウムイオン二次電池の高容量化を実現することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ジルコニウム(Zr)を添加したリチウムコバルト複合酸化物を粗紛・微紛として混合して用いると、セルの高容量化を実現できるものの、著しく安全性が低下する問題があり、また、サイクル特性、低温重負荷特性についてもさらなる向上が求められていた。
【0009】
したがって、この発明の目的は、高容量を有し、且つサイクル特性、低温重負荷特性および安全性を向上させることができる正極活物質および非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、
化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物と、化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物とが混合されたものであり、
ジルコニウム(Zr)の含有量は、化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物のコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0005以上0.01以下の範囲内であり、
化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の含有量は、10wt%〜40wt%であること
を特徴とする正極活物質である。
(化1)
LitCoMs2
(化1中、Mは、鉄(Fe),バナジウム(V),クロム(Cr),チタン(Ti),マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al),ホウ素(B),カルシウム(Ca)から選ばれた少なくとも一種の元素である。s、tは、0≦s≦0.03、0.05≦t≦1.15の範囲内である。)
(化2)
LixCo1-yy2
(化2中、Aは、マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al)から選ばれた少なくとも一種の元素である。x、yは、各々0.05≦x≦1.15、0≦y≦0.03の範囲内である。)
【0011】
第2の発明は、
正極と、負極と、非水電解質およびセパレータとを有し、
正極は、正極活物質を有し、
正極活物質は、
化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物と、化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物とが混合されたものであり、
ジルコニウム(Zr)の含有量は、化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物のコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0005以上0.01以下の範囲内であり、
化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の含有量は、10wt%〜40wt%であること
を特徴とする非水電解質二次電池である。
(化1)
LitCoMs2
(化1中、Mは、鉄(Fe),バナジウム(V),クロム(Cr),チタン(Ti),マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al),ホウ素(B),カルシウム(Ca)から選ばれた少なくとも一種の元素である。s、tは、0≦s≦0.03、0.05≦t≦1.15の範囲内である。)
(化2)
LixCo1-yy2
(化2中、Aは、マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al)から選ばれた少なくとも一種の元素である。x、yは、各々0.05≦x≦1.15、0≦y≦0.03の範囲内である。)
【0012】
第1の発明および第2の発明では、粗粉にジルコニウム(Zr)を添加したリチウムコバルト複合酸化物を用い、微粉に熱安定性の高いリチウムコバルト複合酸化物を組み合わせることで、高容量を有し、且つサイクル特性、低温重負荷特性、および安全性を向上させることができる。
【0013】
具体的には、正極活物質は、ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物に、化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物10wt%〜40wt%を混合したものであることを特徴とし、さらに、ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、50%積算平均粒径が10μm〜30μmの範囲内、化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の50%積算平均粒径が2μm〜10μmの範囲内となるように規定されたものを混合したものである。この正極活物質を用いて、体積密度が3.1g/cm3〜3.7g/cm3の範囲内となるように作製した電極を用いて非水電解質二次電池を作製することで、高容量を有し、且つサイクル特性、低温重負荷特性および安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、非水電解質二次電池において、高容量を有し、且つサイクル特性、低温重負荷特性および安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)第1の実施形態
(1−1)非水電解質二次電池の構成
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明の第1の実施形態による非水電解質二次電池の断面構造を表している。
【0016】
この二次電池は、満充電状態における開回路電圧が例えば4.2V〜4.6V、または4.25V〜4.6Vである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶1の内部に、帯状の正極2と帯状の負極3とがセパレータ4を介して巻回された巻回電極体20を有している。
【0017】
電池缶1は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶1の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板5,6がそれぞれ配置されている。
【0018】
電池缶1の開放端部には、電池蓋7と、この電池蓋7の内側に設けられた安全弁機構8および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)9とが、ガスケット10を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶1の内部は密閉されている。電池蓋7は、例えば、電池缶1と同様の材料により構成されている。安全弁機構8は、熱感抵抗素子9を介して電池蓋7と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板11が反転して電池蓋7と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子9は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット10は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0019】
巻回電極体20は、例えば、センターピン12を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極2には、例えばアルミニウム(Al)などよりなる正極リード13が接続されており、負極3には、例えばニッケル(Ni)などよりなる負極リード14が接続されている。正極リード13は、安全弁機構8に溶接されることにより電池蓋7と電気的に接続されており、負極リード14は、電池缶1に溶接され電気的に接続されている。
【0020】
[正極]
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。図2に示すように、正極2は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体2Aと、正極集電体2Aの両面に設けられた正極合剤層2Bとを有している。正極2の電極体積密度は、3.45g/cm3〜3.70g/cm3の範囲内であることが好ましい。3.45g/cm3より小さいと電池容量が低下してしまうからである。3.70g/cm3より大きいとプレスにより正極合材層2Bを形成することが困難となるからである。
【0021】
正極集電体2Aは、例えば、アルミニウム(Al)箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケル(Ni)箔等の金属箔により構成されている。正極合剤層2Bは、例えば、正極活物質を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含んでいてもよい。
【0022】
[正極活物質]
正極活物質としては、化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物と、化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物とが混合されたものを用いる。
(化1)
LitCoMs2
(化1中、Mは、鉄(Fe),バナジウム(V),クロム(Cr),チタン(Ti),マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al),ホウ素(B),カルシウム(Ca)から選ばれた少なくとも一種の元素である。s、tは、0≦s≦0.03、0.05≦t≦1.15の範囲内である。)
(化2)
LixCo1-yy2
(化2中、Aは、マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al)から選ばれた少なくとも一種の元素である。x、yは、各々0.05≦x≦1.15、0≦y≦0.03の範囲内である。)
【0023】
ジルコニウム(Zr)の含有量は、化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物のコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0005以上0.01以下の範囲内であることが好ましい。なお、ジルコニウム(Zr)の少なくとも一部は、例えば酸化ジルコニウムまたはジルコン酸リチウムなどの化合物として、化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物の結晶粒界に存在している。これによりリチウムコバルト複合酸化物の結晶構造をより安定化させることができるようになっている。また、ジルコニウム(Zr)の一部は化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物に固溶していてもよく、また、化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物の粒子の表面に存在していてもよい。
【0024】
化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の含有量は、正極活物質の総量に対して10wt%〜40wt%である。化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の含有量を、10wt%より少なくしても、逆に40wt%より多くしても、電極の充填密度としては低下し、初期容量が低下するからである。
【0025】
化1および化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物は、六方晶系の層状構造を有する結晶構造である。上述のように、リチウム(Li)は、tが0.05≦t≦1.15の範囲内、xが0.05≦x≦1.15の範囲内にあることが好ましい。また、化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物は、1次粒子であることが好ましい。2次粒子である場合、電極の体積密度が上がらないため、セル容量が少なくなってしまうからである。
【0026】
ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物の積算平均粒径は、10μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。10μmより小さい粒径は、電極充填性が低下しセル容量が低下するためである。30μmより大きいと、電極の体積密度が上がらないうえに、低温負荷特性も低下するからである。化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の積算平均粒径は、2μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。2μmより小さいと、作製する点で困難だからである。10μmより大きいと、電極の体積密度が上がらず、初期容量が低下するからである。
【0027】
[負極]
図2に示すように、負極3は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体3Aと、負極集電体3Aの両面に設けられた負極合剤層3Bとを有している。負極集電体3Aは、例えば銅(Cu)箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケル(Ni)箔などの金属箔により構成されている。負極合剤層3Bは、例えば、負極活物質を含んでおり、必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
【0028】
負極活物質としては、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料(以下、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料と適宜称する。)を含んでいる。リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、例えば、炭素材料、金属化合物、酸化物、硫化物、LiN3などのリチウム窒化物、リチウム金属、リチウムと合金を形成する金属、あるいは高分子材料などが挙げられる。
【0029】
炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロール等が挙げられる。
【0030】
このようなリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料のなかでも、充放電電位が比較的リチウム金属に近いものが好ましい。負極3の充放電電位が低いほど電池の高エネルギー密度化が容易となるからである。なかでも炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性を得ることができるので好ましい。
【0031】
リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、また、リチウム金属単体、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が挙げられる。これらは高いエネルギー密度を得ることができるので好ましく、特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。なお、本明細書において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうち2種以上が共存するものがある。
【0032】
このような金属元素あるいは半金属元素としては、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム(Al),インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式MasMbtLiu、あるいは化学式MapMcqMdrで表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよびrの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0、r≧0である。
【0033】
なかでも、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0034】
この他、MnO2、V25、V613、NiS、MoSなど、リチウムを含まない無機化合物も、正負極のいずれかに用いることができる。
【0035】
[電解液]
電解液としては、非水溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解液を用いることができる。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートのうちの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。特に、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとを混合して含むようにすれば、よりサイクル特性を向上させることができるので好ましい。非水溶媒としては、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートまたはメチルプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステルの中から、少なくとも1種を含んでいることが好ましい。サイクル特性をより向上させることができるからである。
【0036】
非水溶媒としては、さらに、2,4−ジフルオロアニソールおよびビニレンカーボネートのうちの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を改善することができ、ビニレンカーボネートはサイクル特性をより向上させることができるからである。特に、これらを混合して含んでいれば、放電容量およびサイクル特性を共に向上させることができるのでより好ましい。
【0037】
非水溶媒としては、さらに、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、これら化合物の水素基の一部または全部をフッ素基で置換したもの、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチル等のいずれか1種または2種以上を含んでいてもよい。
【0038】
組み合わせる電極によっては、上記非水溶媒群に含まれる物質の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換したものを用いることにより、電極反応の可逆性が向上する場合がある。したがって、これらの物質を適宜用いることも可能である。
【0039】
電解質塩であるリチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、LiBF2(ox)、LiBOB、あるいはLiBrが適当であり、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いることができる。なかでも、LiPF6は、高いイオン伝導性を得ることができるとともに、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0040】
[セパレータ]
セパレータ材料としては、従来の電池に使用されてきたものを利用することが可能である。例えば、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等を挙げることができる。なかでも、合成樹脂微多孔膜が好ましく、例えば、ショート防止効果に優れ、且つシャットダウン効果による電池の安全性向上が可能な点から、ポリオレフィン製微孔性フィルムを用いることが、特に好ましい。ポリオレフィン製微孔性フィルムとして、より具体的には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン樹脂からなる微多孔膜を挙げることができる。
【0041】
さらに、セパレータ材料としては、シャットダウン温度がより低いポリエチレンと耐酸化性に優れるポリプロピレンを積層または混合したものを用いることが、シャットダウン性能とフロート特性の両立が図れる点から、より好ましい。
【0042】
(1−2)非水電解質二次電池の製造方法
次に、この発明の第1の実施形態による非水電解質二次電池の製造方法について説明する。以下、一例として円筒型の非水電解質二次電池を挙げて、非水電解質二次電池の製造方法について説明する。
【0043】
正極2は、以下に述べるようにして作製する。まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。
【0044】
なお、正極活物質としてのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物の合成方法としては、例えば、遷移金属源としてコバルト(Co)酸化物と、ジルコニウム(Zr)とを各組成に応じて調製、混合し、これにリチウム源となるLiCO3を混合し、大気雰囲気中で850℃〜1100℃に焼成することにより行う。ここで遷移金属源としては、例えば、遷移金属の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等、また、複数の遷移金属を含む複合遷移金属の水酸化塩、炭酸塩なども使用可能であり、上述したものに限定されるものではない。リチウム源の出発原料としては、上述したもの以外には、例えば、Li2O、LiOH・H2O、LiNiO3などを用いることができる。化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の合成方法についても、上述したものと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0045】
次に、この正極合剤スラリーを正極集電体2Aに塗布し溶剤を乾燥させた後、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極合剤層2Bを形成し、正極2を作製する。
【0046】
負極3は、以下に述べるようにして作製する。まず、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。
【0047】
次に、この負極合剤スラリーを負極集電体3Aに塗布し溶剤を乾燥させた後、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極合剤層3Bを形成し、負極3を作製する。
【0048】
次に、正極集電体2Aに正極リード13を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体3Aに負極リード14を溶接などにより取り付ける。次に、正極2と、負極3とをセパレータ4を介して巻回し、正極リード13の先端部を安全弁機構8に溶接すると共に、負極リード14の先端部を電池缶1に溶接して、巻回した正極2および負極3を一対の絶縁板5,6で挟み電池缶1の内部に収納する。
【0049】
次に、電解液を電池缶1の内部に注入し、電解液をセパレータ4に含浸させる。次に、電池缶1の開口端部に電池蓋7、安全弁機構8および熱感抵抗素子9を、ガスケット10を介してかしめることにより固定する。以上により、この発明の第1の実施形態による非水電解質二次電池が作製される。
【0050】
この発明の第1の実施形態による非水電解質二次電池では、充電を行うと、例えば、正極2からリチウムイオンが離脱し、電解液を介して負極3に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極3からリチウムイオンが離脱し、電解液を介して正極2に吸蔵される。
【0051】
(2)第2の実施形態
(2−1)非水電解質二次電池の構成
図3は、この発明の第2の実施形態による非水電解質二次電池の構造を示す。図3に示すように、この非水電解質二次電池は、電池素子30を防湿性ラミネートフィルムからなる外装材37に収容し、電池素子30の周囲を溶着することにより封止してなる。電池素子30には、正極リード32および負極リード33が備えられ、これらのリードは、外装材37に挟まれて外部へと引き出される。正極リード32および負極リード33のそれぞれの両面には、外装材37との接着性を向上させるために樹脂片34および樹脂片35が被覆されている。
【0052】
[外装材]
外装材37は、例えば、接着層、金属層、表面保護層を順次積層した積層構造を有する。接着層は高分子フィルムからなり、この高分子フィルムを構成する材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)が挙げられる。金属層は金属箔からなり、この金属箔を構成する材料としては、例えばアルミニウム(Al)が挙げられる。また、金属箔を構成する材料としては、アルミニウム以外の金属を用いることも可能である。表面保護層を構成する材料としては、例えばナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。なお、接着層側の面が、電池素子30を収納する側の収納面となる。
【0053】
[電池素子]
この電池素子30は、例えば、図4に示すように、両面にゲル電解質層45が設けられた帯状の負極43と、セパレータ44と、両面にゲル電解質層45が設けられた帯状の正極42と、セパレータ44とを積層し、長手方向に巻回されてなる巻回型の電池素子30である。
【0054】
正極42は、帯状の正極集電体42Aと、この正極集電体42Aの両面に形成された正極合剤層42Bとからなる。正極集電体42Aは、例えばアルミニウム(Al)などからなる金属箔である。
【0055】
正極42の長手方向の一端部には、例えばスポット溶接または超音波溶接で接続された正極リード32が設けられている。この正極リード32の材料としては、例えばアルミニウム(Al)等の金属を用いることができる。
【0056】
負極43は、帯状の負極集電体43Aと、この負極集電体43Aの両面に形成された負極合剤層43Bとからなる。負極集電体43Aは、例えば、銅(Cu)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔により構成されている。
【0057】
また、負極43の長手方向の一端部にも正極42と同様に、例えばスポット溶接または超音波溶接で接続された負極リード33が設けられている。この負極リード33の材料としては、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)等を用いることができる。
【0058】
ゲル電解質層45以外のことは、上述の第1の実施形態と同様であるので、以下ではゲル電解質層45について説明する。
【0059】
ゲル電解質層45は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル電解質層45は高いイオン伝導率を得ることができるとともに、電池の漏液を防止できるので好ましい。電解液の構成(すなわち液状の溶媒、電解質塩および添加剤)は、第1の実施形態と同様である。
【0060】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートを挙げることができる。特に電気化学的な安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0061】
(2−2)非水電解質二次電池の製造方法
次に、この発明の第2の実施形態による非水電解質二次電池の製造方法について説明する。まず、正極42および負極43のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶媒とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶媒を揮発させてゲル電解質層45を形成する。なお、予め正極集電体の端部に正極リード32を溶接により取り付けるとともにに、負極集電体3Aの端部に負極リード33を溶接により取り付けるようにする。
【0062】
次に、ゲル電解質層45が形成された正極42と負極43とを、セパレータ44を介して積層し積層体とした後、この積層体をその長手方向に巻回して、巻回型の電池素子30を形成する。
【0063】
次に、ラミネートフィルムからなる外装材37を深絞り加工することで凹部36を形成し、電池素子30をこの凹部36に挿入し、外装材37の未加工部分を凹部36上部に折り返し、凹部36の外周部分を熱溶着し密封する。以上により、この発明の第2の実施形態による非水電解質二次電池が作製される。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下に説明する実施例および比較例において、一般式LitCoMs2で表すことができるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物、および一般式LitCoMs2で表すことができるリチウムコバルト複合酸化物を正極材Iと適宜称する。一般式LixCo1-yy2で表すことができるリチウムコバルト複合酸化物を正極材IIと適宜称する。
【0065】
<実施例1〜実施例12、比較例1〜比較例11>
<実施例1>
正極材Iの作製
一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0005となるように炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoO2で表されるリチウム複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。
【0066】
正極合剤スラリーの作製
次に、上述のようにして作製した正極材Iと、正極材IIであるリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.98Al0.01Mg0.012)とを、重量比で正極材I:正極材II=9:1となるように混合した。
【0067】
次に、この混合した正極材90重量%に導電剤としてグラファイトを7重量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3重量%とを混合し、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて、これにより、正極合剤スラリーを作製した。
【0068】
非水電解質二次電池の作製
次に、この正極合剤スラリーを用いて、以下に説明するようにして、円筒型非水電解質二次電池を作製した。
【0069】
正極は、次のようにして作製した。正極合剤スラリーを厚さ15μmの帯状のアルミニウム箔の両面に均一に塗布・乾燥し、その後、ローラープレス機で圧縮成型した。以上により、帯状の正極を作製した。
【0070】
負極は、次のようにして作製した。まず、負極活物質として、粉末状の人造黒鉛90重量%にポリフッ化ビニリデン(PVdF)10重量%を混合し、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーを作製した。次に、この負極合剤スラリーを厚さ12μmの銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥後にローラープレス機で圧縮成型することで帯状の負極を作製した。
【0071】
帯状の正極および負極を作製した後、多孔性ポリオレフィンをセパレータとして用い、このセパレータと正極と負極とを、負極、セパレ−タ、正極、セパレータの順に積層し、渦巻型に多数回巻回することにより、渦巻き型の電極体を作製した。
【0072】
次に、この電極体をニッケルメッキが施された鉄製電池缶に収納し、電極体の上下両面に絶縁板を配置した。次に、アルミニウム製の正極リードの一端を正極集電体から導出して、電池蓋と電気的な導通が確保された安全弁の突起部に溶接した。また。ニッケル製負極リードを負極集電体から導出して電池缶の底部に溶接した。
【0073】
電解液は、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとの体積混合比が1:1である混合溶液に1mol/dm3の濃度になるようにしてLiPF6を溶解して非水電解液を調製した。
【0074】
次に、電極体が組み込まれた電池缶内に電解液を注入した後、絶縁封口ガスケットを介して電池缶をかしめることにより、安全弁、PTC素子および電池蓋を固定した。以上により、外径が18mmで高さが65mmである、実施例1の円筒型非水電解質二次電池を作製した。
【0075】
<実施例2>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoO2で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例2の二次電池を作製した。
【0076】
<実施例3>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0100となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoO2で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例3の二次電池を作製した。
【0077】
<実施例4>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.03(Al)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.032で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例4の二次電池を作製した。
【0078】
<実施例5>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.03(Mg)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoMg0.032で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例5の二次電池を作製した。
【0079】
<実施例6>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.03(Al;0.015、Mg;0.015)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.015Mg0.0152で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例6の二次電池を作製した。
【0080】
<実施例7>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.03(Fe)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、水酸化第二鉄を混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoFe0.032で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例7の二次電池を作製した。
【0081】
<実施例8>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.03(V)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化バナジウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoV0.032で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例8の二次電池を作製した。
【0082】
<実施例9>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.03(Cr)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化クロムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoCr0.032で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例9の二次電池を作製した。
【0083】
<実施例10>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.03(Ti)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化チタンを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoTi0.032で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例10の二次電池を作製した。
【0084】
<実施例11>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.03(B)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、ホウ酸を混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoB0.032で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例11の二次電池を作製した。
【0085】
<実施例12>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.03(Ca)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、水酸化カルシウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoCa0.032で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、実施例12の二次電池を作製した。
【0086】
<比較例1>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルトを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のリチウムコバルト複合酸化物(Li1.15CoO2)を作製した。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例1の二次電池を作製した。
【0087】
<比較例2>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0200となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoO2で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例2の二次電池を作製した。
【0088】
<比較例3>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.05(Al)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.052で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例3の二次電池を作製した。
【0089】
<比較例4>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.05(Mg)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoMg0.052で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例4の二次電池を作製した。
【0090】
<比較例5>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.05(Al;0.025、Mg;0.025)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.025Mg0.0252で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例5の二次電池を作製した。
【0091】
<比較例6>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.05(Fe)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、水酸化第二鉄を混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoFe0.052で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例6の二次電池を作製した。
【0092】
<比較例7>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.05(V)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化バナジウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoV0.052で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例7の二次電池を作製した。
【0093】
<比較例8>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.05(Cr)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化クロムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoCr0.052で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例8の二次電池を作製した。
【0094】
<比較例9>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.05(Ti)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化チタンを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoTi0.052で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例9の二次電池を作製した。
【0095】
<比較例10>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.05(B)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、ホウ酸を混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoB0.052で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例10の二次電池を作製した。
【0096】
<比較例11>
正極材Iとして、一般式LitCoMs2においてt=1.15、s=0.05(Ca)となり、ジルコニウム(Zr)の含有量が、コバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0010となるように市販の炭酸リチウム、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、水酸化カルシウムを混合して、これらを大気中で焼成し、粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を作製した。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoCa0.052で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。これ以降の工程は、実施例1と同様にして、比較例11の二次電池を作製した。
【0097】
なお、実施例1〜実施例12および比較例1〜比較例11において、作製した粉末状のジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(正極材I)をX線回折法により測定を行ったところ、LiCoO2とほぼ同等の構造をとる物質であるものと同定した。確認できたピークは、LiCoO2由来のもの以外はなく、このサンプルが単層であることを示している。
【0098】
さらに、実施例1〜実施例12および比較例1〜比較例11において、正極材Iの50%積算粒径は、15μmに調整した。正極材IIの50%積算粒径は、5μmに調整するようにした。なお、50%積算粒径(D50)は、レーザー回折/散乱式測定装置を用いて測定した。
【0099】
初期容量および初期充放電効率の測定
上述のようにして作製した実施例1〜実施例12および比較例1〜比較例11の二次電池について、環境温度25℃、充電電圧4.20V、充電電流1000mA、充電時間2.5時間の条件で充電を行った後、放電電流750mA、終止電圧3.0Vで放電を行い
初期容量を求めた。次に、上述のようにして求めた初期容量に基づき初期充放電効率を求めた。
容量維持率の測定
さらに、環境温度25℃で充放電を繰り返し、150サイクル目の放電容量を測定して、初期容量に対する容量維持率を求めた。ここで、容量維持率は、下記の式1により求めた。
(式1)
容量維持率(%)=(150サイクル目の放電容量/初期容量)×100
低温出力特性の評価
また、同様の工程により作製した非水電解質二次電池の3サイクル目において、充電電圧4.2Vから環境温度0℃、20Wでの出力放電を行い、その際の電圧降下を記録した。
【0100】
表1に初期容量、初期充放電効率、150サイクル時の容量維持率、0℃20W出力時の電圧降下の測定結果を示す。なお、表中のrは、正極材Iにおけるコバルト(Co)に対するジルコニウム(Zr)のモル比(Zr/Co)を示す。
【0101】
【表1】

【0102】
表1に示すように、正極材Iとして、ジルコニウム(Zr)の含有量をコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0005以上0.01以下の範囲内とし、sの値を0≦s≦0.03の範囲内としたジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物に、正極材IIであるLi1.10Co0.98Al0.01Mg0.01を添加した正極活物質を用いることで、サイクル特性および低温出力特性が大きく向上することが確認できた。
【0103】
<実施例13〜実施例16、比較例12〜比較例14>
<実施例13>
正極材Iとして、ジルコニウム(Zr)をコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.005含有するジルコニウム含有リチウム複合酸化物(Li1.15CoAl0.01Mg0.012)を用いた。正極材IIとして、x=1.10、y=0に調整したリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10CoO2)を用いた。正極材Iと正極材IIとの重量比を、正極材I:正極材II=60:40とした。これ以外は、実施例1と同様にして、実施例13の二次電池を作製した。
【0104】
<実施例14>
正極材IIとして、x=1.10、y=0.03(Al)に調整したリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.97Al0.032)を用いた。これ以外は、実施例13と同様にして、実施例14の二次電池を作製した。
【0105】
<実施例15>
正極材IIとして、x=1.10、y=0.03(Mg)に調整したリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.97Mg0.032)を用いた。これ以外は、実施例13と同様にして、実施例15の二次電池を作製した。
【0106】
<実施例16>
正極材IIとして、x=1.10、y=0.03(Al;0.015,Mg;0.015)に調整したリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.97Al0.015Mg0.0152)を用いた。これ以外は、実施例13と同様にして、実施例16の二次電池を作製した。
【0107】
<比較例12>
正極材IIとして、x=1.10、y=0.05(Al)となるように調整したリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.95Al0.052)を用いた。これ以外は、実施例13と同様にして、比較例12の二次電池を作製した。
【0108】
<比較例13>
正極材IIとして、x=1.10、y=0.05(Mg)となるように調整したリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.95Mg0.052)を用いた。これ以外は、実施例13と同様にして、比較例13の二次電池を作製した。
【0109】
<比較例14>
正極材IIとして、x=1.10、y=0.005(Zr)となるように調整したリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.995Zr0.0052)を用いた。これ以外は、実施例13と同様にして、比較例14の二次電池を作製した。
【0110】
以上により作製した実施例13〜実施例16および比較例12〜比較例14の二次電池について、実施例1と同様にして、初期容量および初期充放電効率の測定、低温出力特性の評価を行った。
【0111】
示査走査熱量分析法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)による発熱開始温度測定
また、上述のようにして作製した実施例13〜実施例16および比較例12〜比較例14の二次電池において用いた正極活物質をコインセルにて4.20Vまで充電し、これを乾燥させたものを用いて、DSCによる発熱開始温度の測定を行った。
【0112】
表2に、初期容量、初期充放電効率、150サイクル時の容量維持率、0℃20W出力時の電圧降下の測定結果を示す。
【0113】
【表2】

【0114】
表2に示すように、正極材IIにおいて、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg)を0≦y≦0.03の範囲で用いることで、初期容量、初期充放電効率、低温出力特性を向上できることがわかる。さらに、正極材IIにおいて、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg)を0≦y≦0.03の範囲で用いることで、熱安定性を向上できることが確認できた。
【0115】
<実施例6、実施例17〜実施例19、比較例15〜比較例16>
<実施例17>
正極材Iと正極材IIを、重量比が正極材I:正極材II=85:15となるように混合した以外は、実施例6と同様にして、実施例17の二次電池を作製した。
【0116】
<実施例18>
正極材Iと正極材IIを、重量比が正極材I:正極材II=75:25となるように混合した以外は、実施例6と同様にして、実施例18の二次電池を作製した。
【0117】
<実施例19>
正極材Iと正極材IIを、重量比が正極材I:正極材II=60:40となるように混合した以外は、実施例6と同様にして、実施例19の二次電池を作製した。
【0118】
<比較例15>
正極材Iと正極材IIを、重量比が正極材I:正極材II=100:0となるように混合した以外は、実施例6と同様にして、比較例15の二次電池を作製した。
【0119】
<比較例16>
正極材Iと正極材IIを、重量比が正極材I:正極材II=50:50となるように混合した以外は、実施例6と同様にして、比較例16の二次電池を作製した。
【0120】
次に、実施例6、実施例17〜実施例19および比較例15〜比較例16の二次電池について、実施例1と同様にして、初期容量の測定、初期充放電効率の測定、低温出力特性の評価、4.4Vの高充電電圧でのサイクル特性評価を行った。さらに、実施例6、実施例17〜実施例18および比較例15〜比較例16では、電極体積密度の測定を行った。
【0121】
電極体積密度の測定
電極体積密度の測定は、作製した正極をφ20mmの円形に打ち抜き、この打ち抜いたものの厚みおよび重量を測定し、Al箔の厚み・重量を差し引いた上で、重量を体積で除することにより求めた。
【0122】
表3に、初期容量、初期充放電効率、DSCによる正極発熱開始温度、0℃20W出力時の電圧降下の測定結果を示す。なお、表中のrは、正極材Iにおけるコバルト(Co)に対するジルコニウム(Zr)のモル比を示す。
【0123】
【表3】

【0124】
表3に示すように、正極材IIの添加比率を10wt%より少なくしても、逆に40wt%以上であっても電極の体積密度としては低下するため、初期容量が低下する。したがって、正極材IIの混合割合としては、10wt%〜40wt%であることが望ましい。また、電極の体積密度としては、初期容量を考慮する点から3.50g/cm3以上であることが望ましい。また、最も充填性の高い実施例13においても最大プレス圧で3.70g/cm3は超えないことが確認された。
【0125】
<実施例20〜実施例23、比較例17〜比較例19>
<実施例20>
正極材Iとして、ジルコニウム(Zr)をコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.001有し、50%積算粒径が30μmのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を用いた。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.015Mg0.0152で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。正極材IIとして、50%積算粒径が10μmのリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.98Al0.01Mg0.012)を用いた。正極材Iと正極材IIとを、正極材I:正極材II=85:15の重量比で混合した。これ以外は、実施例1と同様にして、実施例20の二次電池を作製した。
【0126】
<実施例21>
正極材Iとして、ジルコニウム(Zr)をコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.001有し、50%積算粒径が30μmのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を用いた。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.015Mg0.0152で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。正極材IIとして、50%積算粒径が2μmのリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.98Al0.01Mg0.012)を用いた。正極材Iと正極材IIとを、正極材I:正極材II=85:15の重量比で混合した。これ以外は、実施例1と同様にして、実施例21の二次電池を作製した。
【0127】
<実施例22>
正極材Iとして、ジルコニウム(Zr)をコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.001有し、50%積算粒径が10μmのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を用いた。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.015Mg0.0152で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。正極材IIとして、50%積算粒径が10μmのリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.98Al0.01Mg0.012)を用いた。正極材Iと正極材IIとを、正極材I:正極材II=85:15の重量比で混合した。これ以外は、実施例1と同様にして、実施例22の二次電池を作製した。
【0128】
<実施例23>
正極材Iとして、ジルコニウム(Zr)をコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.001有し、50%積算粒径が10μmのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を用いた。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.015Mg0.0152で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。正極材IIとして、50%積算粒径が2μmのリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.98Al0.01Mg0.012)を用いた。正極材Iと正極材IIとを、正極材I:正極材II=85:15の重量比で混合した。これ以外は、実施例1と同様にして、実施例23の二次電池を作製した。
【0129】
<比較例17>
正極材Iとして、ジルコニウム(Zr)をコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.001有し、50%積算粒径が40μmのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を用いた。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.015Mg0.0152で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。正極材IIとして、50%積算粒径が10μmのリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.98Al0.01Mg0.012)を用いた。正極材Iと正極材IIとを、正極材I:正極材II=85:15の重量比で混合した。これ以外は、実施例1と同様にして、比較例17の二次電池を作製した。
【0130】
<比較例18>
正極材Iとして、ジルコニウム(Zr)をコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.001有し、50%積算粒径が15μmのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を用いた。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.015Mg0.0152で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。正極材IIとして、50%積算粒径が15μmのリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.98Al0.01Mg0.012)を用いた。正極材Iと正極材IIとを、正極材I:正極材II=85:15の重量比で混合した。これ以外は、実施例1と同様にして、比較例18の二次電池を作製した。
【0131】
<比較例19>
正極材Iとして、ジルコニウム(Zr)をコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.001有し、50%積算粒径が5μmのジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を用いた。このジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物は、Li1.15CoAl0.015Mg0.0152で表されるリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するものである。正極材IIとして、50%積算粒径が10μmのリチウムコバルト複合酸化物(Li1.10Co0.98Al0.01Mg0.012)を用いた。正極材Iと正極材IIとを、正極材I:正極材II=85:15の重量比で混合した。これ以外は、実施例1と同様にして、比較例19の二次電池を作製した。
【0132】
次に、実施例20〜実施例23および比較例17〜比較例19の二次電池について、実施例1と同様にして、初期容量の測定、初期充放電効率の測定、150サイクル時の容量維持率、低温出力特性の評価を行った。
【0133】
表4に、初期容量、初期充放電効率、150サイクル時の容量維持率、0℃20W出力時の電圧降下、電極の最大体積密度の測定結果を示す。
【0134】
【表4】

【0135】
表4に示すように、正極材Iの50%積算粒径が30μmを超えると、電極の体積密度が上がらないうえに、低温負荷特性も低下することが確認された。また、正極材Iの積算粒径が10μm未満だと、電極の体積密度としてはあがらず、初期容量は低下することが確認された。さらに、正極材IIの50%積算粒径が10μmを超えると、電極の体積密度としてはあがらず、初期容量は低下することが確認された。
【0136】
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、その形状においては、特に限定されない。円筒型、角型、コイン型、ボタン型等を呈するものであってもよい。また、例えば、電極の集電体の形状としては、特に限定するものではないが、箔上の他に、メッシュエキスパンドメタル等の網状のものを用いることができる。
【0137】
さらに、第1の実施形態では、電解質として、電解液を有する非水電解質二次電池、第2の実施形態では、電解質として、ゲル電解質を有する非水電解質二次電池について説明したがこれらに限定されるものではない。
【0138】
例えば、電解質としては、上述したものの他にイオン伝導性高分子を利用した高分子固体電解質、またはイオン伝導性無機材料を利用した無機固体電解質なども用いることも可能であり、これらを単独あるいは他の電解質と組み合わせて用いてもよい。高分子固体電解質に用いることができる高分子化合物としては、例えばポリエーテル、ポリエステル、ポリフォスファゼン、あるいはポリシロキサンなどを挙げることができる。無機固体電解質としては、例えばイオン伝導性セラミックス、イオン伝導性結晶、あるいはイオン伝導性ガラスなどを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】この発明の第1の実施形態による非水電解質二次電池の概略断面図である。
【図2】図1に示した巻回電極体の一部の拡大断面図である。
【図3】この発明の第2の実施形態による非水電解質二次電池の構造を示す概略図である。
【図4】図3に示した電池素子の一部の拡大断面である。
【符号の説明】
【0140】
1・・・電池缶
2・・・正極
2A・・・正極集電体
2B・・・正極合剤層
3A・・・負極集電体
3B・・・負極合剤層
3・・・負極
4・・・セパレータ
5,6・・・絶縁板
7・・・電池蓋
8・・・安全弁機構
9・・・熱感抵抗素子
10・・・ガスケット
11・・・ディスク板
12・・・センターピン
13・・・正極リード
14・・・負極リード
20・・・巻回電極体
30・・・電池素子
32・・・正極リード
33・・・負極リード
34,35・・・樹脂片
35・・・負極リード
36・・・凹部
37・・・外装材
42・・・正極
42A・・・正極集電体
42B・・・正極合剤層
43・・・負極
43A・・・負極集電体
43B・・・負極合剤層
44・・・セパレータ
45・・・ゲル電解質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物と、化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物とが混合されたものであり、
上記ジルコニウム(Zr)の含有量は、上記化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物のコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0005以上0.01以下の範囲内であり、
上記化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の含有量は、10wt%〜40wt%であること
を特徴とする正極活物質。
(化1)
LitCoMs2
(化1中、Mは、鉄(Fe),バナジウム(V),クロム(Cr),チタン(Ti),マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al),ホウ素(B),カルシウム(Ca)から選ばれた少なくとも一種の元素である。s、tは、0≦s≦0.03、0.05≦t≦1.15の範囲内である。)
(化2)
LixCo1-yy2
(化2中、Aは、マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al)から選ばれた少なくとも一種の元素である。x、yは、各々0.05≦x≦1.15、0≦y≦0.03の範囲内である。)
【請求項2】
請求項1において、
上記ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物の50%積算平均粒径は、10μm〜30μmの範囲内であること
を特徴とする正極活物質。
【請求項3】
請求項1において、
上記化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の50%積算平均粒径は、2μm〜10μmの範囲内であること
を特徴とする正極活物質。
【請求項4】
正極と、負極と、非水電解質およびセパレータとを有し、
上記正極は、正極活物質を有し、
上記正極活物質は、
化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物に副成分元素としてジルコニウム(Zr)を含有するジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物と、化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物とが混合されたものであり、
上記ジルコニウム(Zr)の含有量は、上記化1で表されたリチウムコバルト複合酸化物のコバルト(Co)に対するモル比(Zr/Co)で0.0005以上0.01以下の範囲内であり、
上記化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の含有量は、10wt%〜40wt%であること
を特徴とする非水電解質二次電池。
(化1)
LitCoMs2
(化1中、Mは、鉄(Fe),バナジウム(V),クロム(Cr),チタン(Ti),マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al),ホウ素(B),カルシウム(Ca)から選ばれた少なくとも一種の元素である。s、tは、0≦s≦0.03、0.05≦t≦1.15の範囲内である。)
(化2)
LixCo1-yy2
(化2中、Aは、マグネシウム(Mg),アルミニウム(Al)から選ばれた少なくとも一種の元素である。x、yは、各々0.05≦x≦1.15、0≦y≦0.03の範囲内である。)
【請求項5】
請求項4において、
上記ジルコニウム含有リチウムコバルト複合酸化物の50%積算平均粒径は、10μm〜30μmの範囲内であること
を特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項6】
請求項4において、
上記化2で表されたリチウムコバルト複合酸化物の50%積算平均粒径は、2μm〜10μmの範囲内であること
を特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項7】
請求項4において、
上記正極の電極体積密度は、3.45g/cm3〜3.70g/cm3の範囲内であること
を特徴とする非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−214090(P2007−214090A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35531(P2006−35531)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】