説明

歩行型管理機

【課題】 このような点に着目してなされたものであって、クラッチシフタの設置個数を適正に設定し、適正なクラッチシフタを備えたサイドクラッチ機構に対する操作系の配置構成に工夫を凝らした歩行型管理機を提供する。
【解決手段】 上部に配置したエンジン3からの動力を、上下向きに配置した伝動軸12によって、下部に配置した左右のサイドクラッチ機構E及び左右の出力部1Aに伝達可能に構成する。左右のサイドクラッチ機構E毎に、入切状態に切り換えるクラッチシフタ23、27を装備する。クラッチシフタ23に操作力を伝達する筒状シフト操作軸20の内部に、クラッチシフタ27に操作力を伝達するシフト操作軸22を配置して二重軸構造部分を構成し、伝動軸12と二重軸構造部分を前後に配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方に原動部を配置するとともに、下方にサイドクラッチ機構及び左右の出力軸部を配置してある歩行型管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
左右のサイドクラッチ機構を構成するに、左右出力軸部(公報内の番号:8A、8B)に跨ってエンジン動力を受ける入力ベベルギヤ(公報内の番号:21)を外嵌するとともに、入力ベベルギヤのボス部(公報内の名称番号:筒状軸23)と左右の出力軸部との間に動力伝達用のボール状連結具(公報内の名称番号:伝動ボール24)を介在させ、かつ、ボール状連結具を動力伝達状態と非動力伝達状態とに切り換えるクラッチスリーブ(公報内の名称番号:ホルダー25)を設け、クラッチスリーブを駆動するものとして単一のクラッチシフタ(公報内の名称番号:シフトフォーク27)を設けていた。
このクラッチシフタを駆動操作するものとして、縦向き伝動軸(公報内の番号:6)の後方に、上下向き姿勢の単一のシフト操作軸(公報内の名称番号:操作軸28)を設け、そのシフト操作軸を伝動ケース(公報内の名称番号:ミッションケース2)内に配置していた。
【特許文献1】特開2000−316303号公報(段落〔0035〕,図3〜図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成においては、クラッチシフタが単一のものであるので、左右のサイドクラッチ機構を共に切り状態に切り換えることができなかった。
したがって、両出力軸部を切り状態に切り換えることができないので、操作性が十分でない面もあった。
【0004】
本発明の目的は、このような点に着目してなされたものであって、クラッチシフタの設置個数を適正に設定し、適正なクラッチシフタを備えたサイドクラッチ機構に対する操作系の配置構成に工夫を凝らした歩行型管理機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、上部に配置した原動部からの動力を、上下向きに配置した伝動機構によって、下部に配置した左右のサイドクラッチ機構及び左右の出力部に伝達可能に構成するとともに、前記左右のサイドクラッチ機構に、そのサイドクラッチ機構を入切状態に切り換えるクラッチシフタを装備し、前記左右一方のクラッチシフタに操作力を伝達する一方の操作連係機構部に筒状シフト操作軸を備え、前記左右他方のクラッチシフタに操作力を伝達する他方の操作連係機構部に他方のシフト操作軸を備え、前記筒状シフト操作軸の内部空間に前記他方のシフト操作軸を配置して、前記操作連係機構に二重軸構造部分を備え、前記伝動機構と前記二重軸構造部分を前後に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0006】
〔作用効果〕
左右のサイドクラッチ機構を構成するに、二つのクラッチシフタを設けた。これによって、左右のサイドクラッチ機構を共に切り状態に切り換えることができ、原動部を停止することなく、左右の出力軸部への動力伝達を停止でき、歩行型管理機の運転操作において、操縦性を向上させることができる。
二つのクラッチシフタを操作するに、二系統の操作系が必要となるが、その操作系の一部に二重軸構造部分を備えてあるので、この部分では、一軸構造部分と略同様の占有スペースで済む。
しかも、この二重軸構造部分を原動部から出力軸部へ動力伝達する伝動機構と前後に配置してあるので、上部に配置された原動部と下部に配置されたサイドクラッチ機構及び出力軸部との間に形成された空きスペースに二重軸構造部分を配置することとなり、二重軸構造部分と伝動機構とで空間の有効利用を図ることができる。
前後方向から見て、伝動機構と二重軸構造部分とが重なり、二重軸構造が部分伝動機構から横側方に出ることがないので、作業時の土の抵抗も大きなものにならない。
【0007】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記伝動機構を収納する伝動ケースを設け、前記伝動ケース内に前記二重軸構造部分を配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0008】
〔作用効果〕
二重軸構造部分を伝動機構用の伝動ケース内に配置することができるので、二重軸構造部分の保護を図ることができるとともに、二重軸構造部分を覆うためのケースを専用に設ける必要がない。しかも、二本のシフト操作軸を二重軸構造にして伝動ケース内に収納してあるので、伝動ケース内での占有スペースを少なくでき、二重軸構造部分を伝動ケース内に収納することも容易に行えるものである。
【0009】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記伝動機構にウォームとウォームホイールとからなるウォーム減速機構を備えるとともに、前記ウォームホイールを前記出力部と同一軸芯位置に配置し、前記ウォームホイールを挟んで前記ウォームと前記二重軸構造部分とを前後に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
大径のウォームホイールを挟んでウォームと二重軸構造部分とを前後に配置したので、ウォームとウォームホイールとを前後に配置するだけの場合に比べて、ウォームホイールを中心とした前後バランスを良好なものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
歩行型管理機Aは、図1に示すように、上下向き姿勢の伝動機構Bを備えた伝動ケース2の下端部に出力部としての推進軸兼用の耕耘軸1を架設するとともに、耕耘軸1に耕耘爪11を備えた耕耘装置10を取り付け、伝動ケース2の上端部をラッパ状に広げてその上端部に原動部としてのエンジン3を搭載し、エンジン3をエンジンカバー6で被覆し、伝動ケース2の下端部の後面に操縦ハンドル5を取り付け、操縦ハンドル5にサイドクラッチ操作具(図示せず)を設け、伝動ケース2の上方に作業用ヒッチ部材4を後向きに延出して抵抗棒9を取り付けて、構成してある。
【0012】
図1及び図2に示すように、伝動ケース2におけるエンジン3、後記する遠心クラッチ機構C等を装備する上部収納空間Pと後記するサイドクラッチ機構E等を収納する下部収納空間Qとを形成してあり、上部収納空間Pと下部収納空間Qとに亘って上下向き姿勢の前後二つの連通空間R、Sを形成してある。
【0013】
図1及び図2に示すように、伝動ケース2において、上部収納空間Pを形成する上部ケース2C、下部収納空間Qを形成する出力伝動ケース2D、ウォームギヤ機構Dへの動力用伝動軸12が収納されている前連通空間Rを形成する動力伝達用伝動ケース2E、サイドクラッチ機構Eに対する二重操作軸20、22が収納されている後連通空間Sを形成するクラッチ操作用伝動ケース2Fとを形成する。
【0014】
上記した、上部ケース2C、出力伝動ケース2D、動力伝達用伝動ケース2E、クラッチ操作用伝動ケース2Fは、四角形状を呈するように連結構成されており、上部ケース2C、出力伝動ケース2D、動力伝達用伝動ケース2E、クラッチ操作用伝動ケース2Fで囲まれた中央部分2Gは壁面になって、上記した上部ケース2C、出力伝動ケース2D、動力伝達用伝動ケース2E、クラッチ操作用伝動ケース2Fを一体的に連結している。
ただし、この中央部分2Gは左右方向に貫通する孔が形成されていてもよく、また、全く、壁が存在しない状態でもよい。
【0015】
伝動機構Bについて説明する。図2及び図3に示すように、伝動機構Bは、エンジン3から下向きに延出された出力軸3Aに連動連結された遠心クラッチ機構Cと、遠心クラッチ機構Cの下方に上下向き姿勢で前連通空間R内に配置された伝動軸12と、伝動軸12の下端部に対応して設けてあるウォーム減速機構Dとで構成してある。
遠心クラッチ機構Cは、エンジン回転速度が設定速度(例えばアイドリング回転速度)まで下がると自動的にクラッチ切り状態となり、エンジン回転速度が設定速度より高くなると自動的にクラッチ入り状態となり、専用のクラッチ操作レバーなどを要することなく、エンジン2に対するアクセル操作でクラッチの入り切りを行うことができる。
【0016】
ウォーム減速機構Dについて説明する。図2及び図3に示すように、ウォーム減速機構Dは、伝動軸12の下端部に一体回転する状態で取り付け固定されたウォーム13と、そのウォーム13の後方に配置した耕耘軸1に遊転支持されたウォームホイール15とで構成してある。
【0017】
ウォームホイール15と耕耘軸1との連係構造について説明する。図2及び図3に示すように、耕耘軸1を構成する左右の出力軸部1Aを突き合わせ状態で、伝動ケース2の左右の側壁にベアリング16を介して夫々支持するとともに、左右出力軸部1Aの突き合わせ部位に、ウォームホイール15のボス部15Aを外嵌して、左右出力軸部1Aを連結してある。
【0018】
図2から図5に示すように、左右出力軸部1Aの軸芯位置には、突き合わせ部位において連通する収納穴が形成してあり、両出力軸部1Aの収納穴に、位置決めピン14が収納されている。これによって、出力軸部1Aが同心位置に位置決めされることとなる。
ウォームホイール15のボス部15Aを、両出力軸部1Aを支持するベアリング16に達する長さに形成して、ウォームホイール15を上記位置決めピン14によって位置決めされた出力軸部1Aに外嵌して、装着してある。
【0019】
ウォームホイール15と耕耘軸1の出力軸部1Aとの間に形成される左右サイドクラッチ機構Eについて説明する。図2から図5に示すように、ウォームホイール15の左右に延出されたボス部15Aに夫々クラッチスリーブ17をスライド移動自在に外嵌するとともに、クラッチスリーブ17とベアリング16との間に、後記する付勢スプリング18を受け止める受ディスク19を配置してある。
【0020】
クラッチスリーブ17について説明する。図2及び図5に示すように、左右端部側に大径のフランジ部17Aを設けるとともに、フランジ部17Aより小径の円筒状本体部17Bとを形成する。円筒状本体部17Bの受ディスク19に対向する面に受ディスク19より離れる方向に凹入する環状溝17aが形成してあり、この環状溝17a内に受ディスク19とクラッチスリーブ17とを離間させて、クラッチスリーブ17をクラッチ入り方向に付勢する付勢スプリング18,18を装着してある。
【0021】
図2及び図5に示すように、クラッチスリーブ17のウォームホイール15に向かう面側で、クラッチスリーブ17の軸線位置に形成した挿通孔17dの入口部分に、後記するボール状連結具21に乗り上がり押え込む凹入状カム面17bを形成している。
一方、ウォームホイール15のクラッチスリーブ17に対向する両側面には、肉厚方向に入り込む凹入部15bを形成してあるとともに、この凹入部15b内に当接規制突起15cが円周方向複数箇所に設けてある。この当接規制突起15cが、クラッチスリーブ17のウォームホイール15に対向する側面に当接して、クラッチスリーブ17とウォームホイール15との近接間隔を維持するように構成してある。
【0022】
図2及び図5に示すように、ウォームホイール15のボス部15Aには、両出力軸部1Aに対応して、夫々、前記したボール状連結具21を載置する載置座15dが円周方向複数箇所に形成してあり、載置座15dは、耕耘軸1の出力軸部1Aに向けて開口する貫通孔でもある。このように載置座15dは貫通孔であるので、ボール状連結具21は、出力軸部1A側に突出することができる。
一方、出力軸部1Aの載置座15dに対向する外周面には、円周方向の複数箇所に亘って係合溝部1aが形成してあり、ボール状連結具21が入り込み係合する状態を形成する。
以上、ウォームホイール15、クラッチスリーブ17、ボール状連結具21等によって、サイドクラッチ機構Eを構成してある。
【0023】
サイドクラッチ機構Eに対する操作連係機構Fについて説明する。図2から図4に示すように、伝動軸12の後方側に操作連係機構Fの一部を担う二重軸構造部分が配置されている。二重軸構造部分は、左右一方のサイドクラッチ機構Eに連係される筒状シフト操作軸20と左右他方のサイドクラッチ機構Eに連係される他方のシフト操作軸22とで構成されている。一方の筒状シフト操作軸20を外側に位置させて、その筒状シフト操作軸20の内部空間に他方のシフト操作軸22を収納し、二重軸構造部分を伝動ケース2の後連通空間S内に設置してある。
【0024】
図2及び図4に示すように、内側に位置するシフト操作軸22の下端部に、一方のサイドクラッチ機構Eのクラッチスリーブ17を切換移動させる一方のクラッチシフタ23を取付固定し、シフト操作軸22の一方のクラッチシフタ23取付位置より下方に突出する下端部を、伝動ケース2の底面に形成した受止座2aに挿入するとともに、一方のクラッチシフタ23の後記する下側の板状基端部23Aにおける下向き面と伝動ケース2の底面との間に板状の滑り軸受35を配置して、シフト操作軸22の下端を受け止め構成している。
【0025】
一方のクラッチシフタ23は、上下一対の板状基端部23A、23Aをシフト操作軸22に固着するとともに、板状基端部23A、23Aよりクラッチスリーブ17に向けて夫々作用部23B、23Bを延出して、クラッチスリーブ17に作用させるべく構成してある。クラッチシフタ23をシフト操作軸22の軸芯回りで回転させることによって、クラッチスリーブ17を出力軸部1Aの軸線方向に切換移動可能である。
【0026】
図2〜図4に示すように、内側に位置するシフト操作軸22の上端は、伝動ケース2における遠心クラッチ機構C等を収納する上部収納空間P内に突出して設けてあり、シフト操作軸22の上端位置に、後記する左右一方の連係操作軸25からの操作力を受ける一方の連動アーム24が一体回転可能に装着してある。
一方の連動アーム24基端部の下向面と筒状シフト操作軸20の上端との間にワッシャ26を介在させて、筒状シフト操作軸20を介して前記した後連通空間Sを上部収納空間P内に突出形成するボス部bで、後記するように外側に位置する筒状シフト操作軸20を介して内側に位置するシフト操作軸22を受止支持するように構成してある。
【0027】
図2〜図4に示すように、筒状シフト操作軸20の下端部を下部収納空間Q内に突出させ、その突出する下端部に左右他方のクラッチシフタ27を固着してある。筒状シフト操作軸20の上端を上部収納空間P内に突出させるとともに、その突出端に後記する左右他方の連係操作軸29からの操作力を受ける他方の連動アーム28が一体回転可能に装着してある。
【0028】
図2〜図4に示すように、他方の連動アーム28と後連通空間Sの上端に形成されたボス部b上端との間に受止用ワッシャ30を配して、他方の連動アーム28を受止用ワッシャ30に載置することによって、筒状シフト操作軸20を支持する構成を採っている。尚、他方の連動アーム28は、筒状シフト操作軸20に嵌着されている軸用止め輪31によって受け止められて、上方への移動が規制されている。
【0029】
次ぎに、二重軸構造部分に操作力を伝達する構成について説明する。図2〜図4に示すように、前記した一方の連動アーム24の下方で左右方向に沿った状態で左右一方の連係操作軸25を、伝動ケース2の内面より突出させた上側支持ボス2Aに挿入支持する。左右一方の連係操作軸25の上側支持ボス2Aより上部収納空間P内に突出する内端部に、シフト操作軸22に装着された一方の連動アーム24に当接作用する一方の駆動アーム32を取り付けてある。
【0030】
図2〜図4に示すように、左右一方の連係操作軸25の伝動ケース2より外方に突出した外端部には、左右一方の受動アーム33が取り付けてあり、図示してはいないサイドクラッチ操作具に左右一方のワイヤ連係機構34を介して左右一方の受動アーム33を連係してある。
ここに、左右一方の連係操作機構Fを構成し、特に、左右一方のクラッチシフタ23、ー方の連動アーム24、一方の回転操作軸25、一方の駆動アーム32、一方の受動アーム33、一方のワイヤ連携機構34を左右一方の連係操作機構部と称する。
【0031】
次ぎに、左右他方の操作連係機構Fの構成について説明する。図2〜図4に示すように、前記した他方の連動アーム28の下方で、かつ、左右一方の連係操作軸25に対向させて左右方向に沿った状態で左右他方の連係操作軸29を伝動ケース2の内面より突出させた下側支持ボス2Bに挿入支持するとともに、左右他方の連係操作軸29の下側支持ボス2Bより上部収納空間P内に突出する内端部に、筒状シフト操作軸20に装着された他方の連動アーム28に当接作用する他方の駆動アーム36を取り付けてある。
【0032】
図2〜図4に示すように、左右他方の連係操作軸29の伝動ケース2より外方に突出した外端部には、左右他方の受動アーム37が取り付けてあり、図示してはいないサイドクラッチ操作具に左右他方のワイヤ連係機構38を介して左右他方の受動アーム37を連係してある。以上のような構成によって、左右他方の操作連係機構Fを構成してある。
【0033】
以上のような構成により、左右一方のサイドクラッチ操作具を操作すると、左右一方のワイヤ連係機構Fを介して左右一方の受動アーム33が回動駆動される。この受動アーム33の回動を受けて、左右一方の連係操作軸25、左右一方の駆動アーム32、左右一方の連動アーム24、内側のシフト操作軸22、左右一方のクラッチシフタ23が順番に駆動され、入り付勢されている左右一方のクラッチスリーブ17が付勢スプリング18の付勢力に抗してウォームホイール15より離間し、サイドクラッチ機構Eを切り状態にする。
これによって、一方のサイドクラッチ機構Eが切り操作される。他方のクラッチ操作具は操作されていないので、他方のサイドクラッチ機構Eは入り状態に維持される。
【0034】
左右一方のサイドクラッチ操作具への操作を解除して、一方のワイヤ連係機構34を緩め操作すると、クラッチスリーブ17は、付勢スプリング18の付勢力を受けてウォームホイール15に近接する。その場合に、クラッチスリーブ17の円筒状本体部17Bにおけるウォームホイール15に対向する先端部が、ウォームホイール15の凹入部15b内に入り込み、当接規制突起15cに当接する。
この状態でクラッチスリーブ17の内周面がボール状連結具21に乗り上がりそのボール状連結具21を軸芯側に押し込むことによって、図5に示すように、ボール状連結具21が、ウォームホイール13のボス部15Aの載置座15dと出力軸部1Aの係合溝部1aとに入り込み、ウォームホイール15から一方の出力軸部1Aに動力伝達可能な状態に切り換える。
【0035】
以上のような連係操作機構Fを構成する二重軸構造部分を、伝動軸12の後方に形成された後方空間内に収納することができ、空き空間の有効利用が図れた。
ここに、他方の連係操作機構Fを構成し、特に、左右他方のクラッチシフタ27、他方の連動アーム28、他方の回転操作軸29、他方の駆動アーム36、他方の受動アーム37、他方のワイヤ連係機構38を左右他方の連係操作機構部と称する。
【0036】
他方のクラッチ操作具を切り操作すれば、左右他方のワイヤ連係機構38を介して左右他方の受動アーム37が回動駆動される。この受動アーム37の回動を受けて、左右他方の連係操作軸29、左右他方の駆動アーム36、左右他方の連動アーム28、外側の筒状シフト操作軸20、左右他方のクラッチシフタ27が順番に駆動され、入り付勢されている左右他方のクラッチスリーブ17がクラッチ切り方向に移動され、左右他方のサイドクラッチ機構Eが切り作動される。
両サイドクラッチ機構Eを切り操作する場合には、左右のクラッチ操作具を操作すればよい。
【0037】
〔第2実施形態〕
第1実施形態と異なる部分を主として説明する。図6及び図7に示すように、エンジン3から遊星減速機構G、入切クラッチH、伝動機構B、ベベルギヤ機構Jを介してサイドクラッチ機構Eに伝達する構造を採っている。また、サイドクラッチ機構Eに対する連係操作機構Fが異なるので、これについても詳述する。
【0038】
第1実施形態で示した前連通空間R内に伝動軸12を配置する点は同様であるが、伝動軸12の前連通空間Rより下方に突出した下端に出力ベベルギヤ7を取付固定するとともに、ウォームホイル15の代わりに、入力ベベルギヤ8を出力軸部1Aに亘って架設し、出力ベベルギヤ7と入力ベベルギヤ8とで、エンジン3からの動力をサイドクラッチ機構Eに伝達するベベルギヤ機構Jを構成する。
【0039】
図6及び図7に示すように、第1実施形態で示した後連通空間S内には、シフト操作軸22と筒状シフト操作軸20の二重軸構造が配置されており、夫々のシフト操作軸には、クラッチシフタ23、27が取り付けてある。後連通空間Sより上方に突出するシフト操作軸22の軸端には、一方の受止ピン40が固着され、筒状シフト操作軸20の軸端には、他方の受止ピン41が固着されるとともに、両受止ピン40、41が片持ち状に後ろ向きに延出されている。
【0040】
図6及び図7に示すように、両受止ピン40、41が延出された先には、一対の連係操作軸42、43が同一高さで左右に隣接する状態で平行配置してある。一対の連係操作軸42、43は、伝動ケース2の後壁2Cに支持されており、前端部を上部収納空間P内に突出させて設けてある。一対の連係操作軸42、43の前端部には、操作アーム42A、43Aが立設され、両受止ピン40、41に当接作用すべく構成してある。
【0041】
一対の連係操作軸42、43の伝動ケース2の後壁2Cより突出した後端には、一対の受動アーム44、45が取り付けてあり、ワイヤ連係機構を介してサイドクラッチ操作具(図示せず)に連係してある。
上記構成において、一方の連係操作軸42を駆動して一方の操作アーム42Aを回転駆動すると、一方の受止ピン40にその一方の操作アーム42Aが当接して、シフト操作軸22が押された方向に水平回動する。シフト操作軸22が回転されると、第1実施形態と同様に、一方のサイドクラッチ機構Eが切り作動される。
【0042】
他方の連係操作軸43を駆動して他方の操作アーム43Aを回転駆動すると、他方の受止ピン41にその他方の操作アーム43Aが当接して、筒状シフト操作軸20が押された方向に水平回動する。筒状シフト操作軸20が回転されると、第1実施形態と同様に、他方のサイドクラッチ機構Eが切り作動される。
【0043】
〔他の実施例〕
(1)耕耘軸1に対して推進車輪を取り付けて、耕耘軸1を推進軸として利用してもよい。
(2)原動部としては、エンジン2の代わりに電動モータ等を使用してもよい。
(3)伝動機構Bとしては、チェーン伝動機構、タイミングベルト等が使用可能である。
(4)筒状シフト操作軸20の内部に収納されるシフト操作軸22としては、中実棒状のものを図示したが、筒状の軸であってもよい。
(5)二重軸構造部分は、伝動機構Bより前方に位置させてもよい。
(6)二重軸構造部分は、伝動機構Bの前後に位置するものであれば、伝動ケース2の外方に位置させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】歩行型管理機の全体側面図
【図2】第1実施形態におけるウォーム減速機構、サイドクラッチ機構を示す縦断側面図
【図3】図2に対応する縦断正面図
【図4】サイドクラッチ機構に対する操作連係機構を示す横断平面図
【図5】図3の一部拡大断面図
【図6】第2実施形態におけるウォーム減速機構、サイドクラッチ機構を示す縦断側面図
【図7】図6に対応する縦断背面図
【符号の説明】
【0045】
1A 出力軸部
2 伝動ケース
3 エンジン(原動部)
5 操縦ハンドル
12 伝動軸
13 ウォーム
15 ウォームホイール
23 支持軸(同一軸)
24 クラッチシフター
B 伝動機構
D ウォーム減速機構
E サイドクラッチ機構
F 操作連係機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に配置した原動部からの動力を、上下向きに配置した伝動機構によって、下部に配置した左右のサイドクラッチ機構及び左右の出力部に伝達可能に構成するとともに、前記左右のサイドクラッチ機構に、そのサイドクラッチ機構を入切状態に切り換えるクラッチシフタを装備し、前記左右一方のクラッチシフタに操作力を伝達する一方の操作連係機構部に筒状シフト操作軸を備え、前記左右他方のクラッチシフタに操作力を伝達する他方の操作連係機構部に他方のシフト操作軸を備え、前記筒状シフト操作軸の内部空間に前記他方のシフト操作軸を配置して、前記操作連係機構に二重軸構造部分を備え、前記伝動機構と前記二重軸構造部分を前後に配置してある歩行型管理機。
【請求項2】
前記伝動機構を収納する伝動ケースを設け、前記伝動ケース内に前記二重軸構造部分を配置してある請求項1記載の歩行型管理機。
【請求項3】
前記伝動機構にウォームとウォームホイールとからなるウォーム減速機構を備えるとともに、前記ウォームホイールを前記出力部と同一軸芯位置に配置し、前記ウォームホイールを挟んで前記ウォームと前記二重軸構造部分とを前後に配置してある請求項1または2記載の歩行型管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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