説明

歩行補助装置

【課題】患脚を健常脚と同等に動かせないことを許容しつつ、患脚の動きを円滑に補助する歩行補助装置を提供する。
【解決手段】ユーザの一方の脚にトルクを与えて歩行動作を補助する歩行補助装置10は、記憶装置32とコントローラ30を備える。記憶装置32には、両脚の軌道が同じ曲線を描く歩行時の脚の軌道を記述した基準歩行パターンが記憶されている。コントローラは、脚センサによって検出されるユーザの第2脚の動きに同期してモータ26を制御する。コントローラは、次の処理、即ち、(1)基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道を時間軸又は前後方向距離軸のいずれか一方の軸に沿って1でない係数で伸縮した目標遊脚軌道を生成する処理、(2)第1脚の遊脚中の動きが目標遊脚軌道に追従するようにモータ26を制御する処理を実行する。歩行補助装置10は、1でない係数を導入することによって、健常脚用の軌道から患脚用の軌道を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚の関節にトルクを与えることによってユーザの歩行を補助する歩行補助装置に関する。特に、一方の脚を他方の脚と同じようには自由に動かすことのできないユーザの歩行を補助する歩行補助装置に関する。以下では、自由に動かすことのできる脚を健常脚(sound leg)と称し、自由に動かすことのできない脚を患脚(affected leg)と称する。
【背景技術】
【0002】
患脚の関節にトルクを与えることによってユーザの歩行を補助する歩行補助装置が研究されている。例えば、特許文献1には、健常脚の動きと同じになるように患脚の関節にトルクを与える歩行補助装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−314670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の歩行補助装置が対象とするユーザは、患脚を健常脚と同等に動かすことができない。即ち、健常脚が描く軌道と患脚が描く軌道が異なる。従って、健常脚の動きと同じになるように患脚の関節にトルクを与える歩行補助装置は、ユーザに無理を強いることなる。他方、ユーザに合わせて患脚の目標軌道のみを予め作成し、その目標軌道に追従するように患脚の関節を補助する装置では、適切な補助ができない。歩行とは両脚の動きが同期した運動であるから、健常脚の動きを無視した患脚補助は健常脚の動きとずれを生じ易い。患脚を健常脚と同等に動かせないことを許容しつつ、患脚の動きを円滑に補助する歩行補助装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一方の脚を自由に動かせないユーザの歩行動作を子細に観察すると、患脚を一歩踏み出したときの歩幅が、健常脚を一歩踏み出したときの歩幅よりも小さい。ここで、「歩幅」とは、一方の脚を踏み出したときの両足先間の距離を意味する。本明細書では、健常脚を一歩踏み出したときの歩幅を「健常脚の歩幅」と称し、患脚を一歩踏み出したときの歩幅を「患脚の歩幅」と称する。また、患脚を一歩踏み出すのに要する時間は健常脚を一歩踏み出すのに要する時間よりも長い。本明細書では、健常脚の歩幅に対する患脚の歩幅の比を歩幅比と称し、健常脚を一歩踏み出すのに要する時間に対する患脚を一歩踏み出すのに要する時間の比をステップ時間比と称する。一般に、歩幅比は1より小さく、ステップ時間比は1より大きい。歩幅比やステップ時間比は、歩行中はほぼ一定である。発明者らは、歩行中の健常脚の軌道と患脚の軌道の関係が、歩幅比やステップ時間比と相関があるという知見を得た。
【0006】
本願発明は、この知見に基づいて創作された。本願発明の技術的思想は次の通りである。両脚の軌道が描く曲線がほぼ同じである理想的な歩行パターンを予め用意し、その歩行パターンにおける一方の脚の軌道を歩幅比、ステップ時間比、或いはその両方で伸縮する。健常脚の動きに同期しながら、伸縮させた歩行パターンに追従するように、患脚の関節にトルクを与える。そのようなメカニズムを備えることによって、患脚が健常脚の軌道と異なる軌道を描くことを許容しながら患脚の動きを補助することができる。
【0007】
以下では、ユーザの患脚を「第1脚」と表し、健常脚を「第2脚」と表す。これは、歩行補助装置の技術を特徴付ける上では、健常脚と患脚を区別する必要がないからである。
【0008】
本発明の歩行補助装置は、記憶装置と脚センサとアクチュエータとコントローラを備える。記憶装置は、基準歩行パターンを記憶している。基準歩行パターンとは、両脚の軌道が同じ曲線を描く歩行時の脚の軌道を記述した時系列データである。即ち、基準歩行パターンは、両脚を同等に動かせる場合の理想的な軌道を表す。脚センサは、ユーザの各脚の動きを検出する。アクチュエータは、ユーザに装着されて第1脚の関節にトルクを加える。コントローラは、脚センサによって検出されるユーザの第2脚の動きに同期してアクチュエータを制御する。ここで、コントローラは、以下の処理を実行する。
(1)基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道を時間軸又は前後方向距離軸のいずれか一方の軸に沿って1でない係数で伸縮した目標遊脚軌道を生成する処理。なお、基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道を時間軸と前後方向距離軸の双方でそれぞれ伸縮してもよい。また、基準歩行パターンにおいては、第1脚の遊脚時の軌道と第2脚の遊脚時の軌道は等しい。あえて「基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道」としたのは、基準歩行パターンに基づいて生成される目標遊脚軌道における動作タイミングを、ユーザの第1脚の動作タイミングに対応させる必要があるからである。
(2)第1脚の遊脚中の動きが目標遊脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御する処理。
【0009】
この歩行補助装置は、「1でない係数」を導入することによって、健常脚用の脚軌道(基準歩行データ)から患脚用の目標軌道を生成する。「1でない係数」は、前記した歩幅比、或いはステップ時間比でよい。これらの比は、予め計測等によって求めてもよいし、歩行補助装置を装着したユーザの歩行動作からリアルタイムで求めることもできる。いずれの場合でも、本発明の歩行補助装置は、両脚の軌道の曲線が同じである基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道をその係数で伸縮させることによって、健常脚の軌道と異なる軌道に追従するように患脚の関節にトルクを与えることができる。「1でない係数」は、健常脚の軌道と患脚の軌道との間の非対称性を決定する係数であるので、以下では非対称性係数と称する。
【0010】
非対称性係数としての歩幅比をリアルタイムで求める場合、上記(1)の処理は次のとおりである。
(1−a1)脚センサの出力に基づいて、第1脚の歩幅と第2脚の歩幅との歩幅比を非対称性係数として決定する処理。
(1−a2)基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道を脚の前後方向の距離軸に沿って非対称性係数で伸縮した目標遊脚軌道を生成する処理。
【0011】
非対称性係数としてのステップ時間比をリアルタイムで求める場合、上記(1)の処理は次のとおりである。
(1−b1)脚センサの出力に基づいて、第1脚を一歩踏み出すのに要する時間と第2脚を一歩踏み出すのに要する時間との時間比を非対称性係数として決定する処理。
(1−b1)基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道を時間軸に沿って非対称性係数で伸縮した目標遊脚軌道を生成する処理。
【0012】
ステップ時間比を非対称性係数として採用する場合、基準歩行パターンと非対称性係数から、立脚中の患脚の目標軌道も得ることができる。以下、健常脚を一歩踏み出すのに要する時間を健常脚の所要時間と称し、患脚を一歩踏み出すのに要する時間を患脚の所要時間と称する。前述したように、ステップ時間比とは、健常脚の所要時間に対する患脚の所要時間の比である。ここで、健常脚の所要時間は、患脚が立脚である時間に対応する。同様に、患脚の所要時間は、健常脚が立脚である時間に対応する。従って、ステップ時間比の逆数は、健常脚が立脚である時間に対する患脚が立脚である時間の比に対応する。この関係を用いることによって、基準歩行パターンから患脚の目標立脚軌道を生成することができる。コントローラの処理は具体的には以下のとおりである。
(3)基準歩行パターンにおける第1脚の立脚時の軌道を時間軸に沿って非対称性係数の逆数で伸縮した目標立脚軌道を生成する。
(4)第1脚の立脚中の動きが目標立脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御する。
上記の歩行補助装置は、歩行期間全体に亘って患脚を補助することができる。なお、両脚が接地している状態を立脚期間に含めるか、遊脚期間に含めるか、或いはいずれの期間にも含めないかは、定義に依存する。どのような定義を用いても本発明の技術は成立する。
【0013】
コントローラは、歩行補助装置の使用時間の経過とともに非対称性係数を1に漸近させることが好ましい。歩幅比やステップ時間比をリアルタイムに求める場合、ユーザの歩行能力の回復に伴って非対称性係数が適応的に1に漸近することもあれば、歩行補助装置が積極的に非対称性係数を1に漸近させてもよい。非対称性係数が1とは、目標遊脚軌道が基準歩行パターンにおける遊脚の軌道と同じであることを意味する。すなわち、非対称性係数を1に漸近させると、基準歩行パターンにおける遊脚軌道と目標遊脚軌道との非対称性が漸減する。非対称性係数を積極的に1に漸近させることによって、ユーザの歩行能力の回復を促進させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザが患脚を健常脚と同等に動かせないことを許容しつつ、患脚の動きを円滑に補助する歩行補助装置を実現することができる。
【実施例】
【0015】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例の歩行補助装置を説明する。図1に、ユーザに装着された歩行補助装置10を模式的に示す。図1(A)は正面図を示し、図1(B)は側面図を示す。本実施例では、ユーザは、左脚の膝関節を自由に動かすことができないとする。即ち、左脚が患脚に相当し、右脚が健常脚に相当する。また、左脚が請求項に記述された第1脚に対応し、右脚が請求項に記述された第2脚に対応する。歩行補助装置10は、右脚(健常脚、第2脚)の動きに同期しながら、左脚(患脚、第1脚)の膝関節に適切なトルクを加え、ユーザの歩行動作を補助する。
【0016】
歩行補助装置10は、右脚装具12R、左脚装具12L、及びそれらを連結する支持バー28からなる。支持バー28は、ユーザの背中側に配置され、右脚装具12Rの上端と左脚装具12Lの上端を連結している。
【0017】
右脚装具12Rは、ユーザの大腿部から下腿部に沿って右脚の外側に装着される。右脚装具12Rは、上部リンク14Rと下部リンク16Rを有しており、2つのリンクは、回転可能に連結されている。上部リンク14Rは、ベルトでユーザの大腿部に固定される。下部リンク16Rは、ベルトでユーザの下腿部に固定される。上部リンク14Rと下部リンク16Rの連結部は、右膝関節の外側に位置する。連結部には膝エンコーダ20Rが備えられており、右膝関節の角度を検出する。
【0018】
上部リンク14Rの上端が回転ジョイントを介して支持バー28に連結されている。回転ジョイントには腰エンコーダ22Rが取り付けられている。腰エンコーダ22Rは、右股関節のピッチ軸周りの角度を検出する。
【0019】
下部リンク16Rの下端には接地センサ24Rが取り付けられている。接地センサ24Rは、右脚の離床タイミングと接地タイミングを検知する。
【0020】
左脚装具12Lは、ユーザの大腿部から下腿部に沿って左脚の外側に装着される。左脚装具12Lは、右脚装具12Rと同じ構造を有している。即ち、左脚装具12Lは、上部リンク14Lと下部リンク16Lを有しており、2つのリンクは左膝関節外側で回転可能に連結されている。上部リンク14Lの上端が回転ジョイントを介して支持バー28に連結されている。左脚装具12Lは、膝エンコーダ20Lと腰エンコーダ22Lと接地センサ24Lを備えている。膝エンコーダ20Lは、左膝関節の角度を検出し、腰エンコーダ22Lは、左股関節の角度を検出する。膝関節角度と股関節角度は、ピッチ軸(体側方向に伸びる軸)の回りの回転角を意味する。接地センサ24Lは、左脚の離床タイミングと接地タイミングを検知する。
【0021】
左脚装具12Lはまた、モータ26を備える。モータ26は、上部リンク14Lと下部リンク16Lの連結部に備えられており、ユーザの膝関節の外側に位置する。モータ26は、上部リンク14Lに対して下部リンク16Lを回転させることができる。即ちモータ26は、ユーザの左膝関節にトルクを加えることができる。左脚装具12Lが、請求項に記述したアクチュエータに相当する。
【0022】
支持バー28にはコントローラ30が取り付けられている。コントローラ30の内部には、傾斜センサ27が備えられている。傾斜センサ27は、ユーザボディの絶対的な傾斜角を検出する。即ち、傾斜センサ27は、ユーザボディの鉛直方向に対する傾斜角を検出する。コントローラ30は、各センサの出力に基づいて、モータ26を制御する。
【0023】
上記したとおり、歩行補助装置10は、ユーザの大腿部から下腿部に沿って装着される。歩行補助装置10は、ユーザの脚関節にトルクを加えるモータ26と、ユーザの両脚の動きを検出するセンサ20R、22R、24R、20L、22L、24L、及び27を備える。これらのセンサ群を、脚センサと総称することがある。
【0024】
コントローラ30の機能的構造を説明する。図2にコントローラ30内部のブロック図を示す。図2は、コントローラ30の機能の一部も模式的に表している。コントローラ30は、メモリ32、実脚軌道決定モジュール34、係数決定モジュール36、目標軌道決定モジュール38、変換モジュール40、差分器42、及び、モータドライバ44を備える。モジュール34、36、38、40、42、及び44は、ハードウエアとしてはコントローラ30のCPUであり、CPUが実行する命令は、プログラムとして実現されている。
【0025】
まず、メモリ32記憶されている基準歩行パターンについて説明する。基準歩行パターンは、予め定められた条件(基準歩行条件)の下で作成された歩行時の両脚の軌道を記述するデータである。基準歩行条件には、歩幅、歩行周期、及び、進行方向に沿った地面の傾斜角が含まれる。歩行は、両脚が同じ軌道を交互に繰り返すことによって実現される。基準歩行パターンには、同じ曲線が左右交互に繰り返される両脚の軌道が記述されている。なお、ここでいる「曲線」には、不連続点(微分不能な点)が含まれていてもよい。具体的には、両脚の軌道は、股関節位置(或いは腰位置)に対する両足先の相対的な位置の時系列データとして与えられる。両脚の軌道は、所定の位相差を有する2つの周期的な時系列データで表されている。
【0026】
基準歩行パターンは、基準遊脚軌道と基準立脚軌道に分けることができる。基準遊脚軌道は、基準歩行パターンにおける遊脚期間の足先の軌道に相当する。基準立脚軌道は、基準歩行パターンにおける立脚期間の足先の軌道に相当する。基準歩行パターンの具体例は後述する。なお、基準歩行パターンにおいては両脚が同じ軌道を描くので、両脚の基準遊脚軌道は同一である。同様に、両脚の基準立脚軌道も同一である。
【0027】
次に、実脚軌道決定モジュール34を説明する。実脚軌道決定モジュール34には、脚センサの信号が入力される。実脚軌道決定モジュール34は、脚センサの出力から、歩行中の両脚の軌道を特定する。なお、実脚軌道決定モジュール34は、接地センサ24L、24Rの出力から、離床タイミングと着床タイミングを得る。それらのタイミングから、実脚軌道決定モジュール34は、実軌道における遊脚期間と立脚期間を特定する。実脚軌道決定モジュール34は、得られた両脚の実軌跡から、右脚を一歩踏み出したときの歩幅WRと、左脚を一歩踏み出したときの歩幅WLを決定する。実脚軌道決定モジュール34は、一歩毎に歩幅を決定する。
【0028】
決定された歩幅WR、WLは、係数決定モジュール36に入力される。係数決定モジュール36は、過去の左右の歩幅比WL/WRを蓄え、それらの移動平均を算出する。図2では、AVR(WL/WR)が平滑化された歩幅比を表している。移動平均は、単純移動平均でもよいし、加重移動平均でもよい。別言すれば、係数決定モジュール36は、実測された歩幅比のローパスフィルタとして機能する。歩幅比の移動平均が非対称性係数に相当する。図2では、非対称性係数を符号Ce1で表している。以下、本実施例では、非対称性係数を符号Ce1で表す。係数決定モジュール36は、算出された非対称性係数Ce1を目標軌道決定モジュール38へ出力する。
【0029】
目標軌道決定モジュール38は、メモリ32から、左脚(患脚)の基準遊脚軌道を読み込む。前述したように、基準遊脚軌道の曲線は両脚で同一である。ここで、あえて「左脚の基準遊脚軌道」と特定したのは、ユーザの右脚の動きに基準歩行パターン中の右脚の軌道を同期させることによって、左脚の目標遊脚軌道のタイミングを決定するからである。
【0030】
ここで、左脚の基準遊脚軌道は、股関節位置を基準とする左足先の位置の時系列データで表される。従って、この基準遊脚軌道は、ユーザの前後方向の距離を軸とした曲線で表すことができる。目標軌道決定モジュール38は、この基準遊脚軌道の距離軸上のスパンに非対称性係数Ce1を乗じて新たな軌道を生成する。この新たな軌道が左脚の遊脚時の目標遊脚軌道に相当する。別言すれば、目標軌道決定モジュール38は、基準遊脚軌道を前後方向の距離軸に沿って非対称性係数Ce1で伸縮させた目標遊脚軌道を決定する。目標遊脚軌道は、変換モジュール40に送られる。
【0031】
目標遊脚軌道は、左足先の股関節位置に対する相対的な位置の時系列で表されている。変換モジュール40は、脚センサから得られる関節角を使って、左足先位置の時系列を膝関節角度の時系列に変換する。変換された膝関節角度の時系列が、目標膝関節角、即ちモータ26の指令値となる。変換モジュール40はまた、実脚軌道決定モジュール34によって特定された実軌道と基準歩行パターンを照合しながら、目標膝関節角度の時系列の出力タイミングを決定し、決定したタイミングで時系列の各値を出力する。即ち、変換モジュール40が、左脚の目標遊脚軌道を右脚の動きに同期させる機能を担っている。
【0032】
目標軌道決定モジュール38が出力した目標膝関節角は差分器42に送られる。差分器42は、目標膝関節角と脚センサが検出した左膝関節角度との差分を計算する。差分はモータドライバ44に送られる。モータドライバ44は、差分がゼロとなるようにモータ26を制御する。
【0033】
以上のとおり、コントローラ30は、左膝関節角が目標膝関節角軌道に追従するようにモータ26を制御する。すなわち、コントローラ30は、左脚の動きが目標遊脚軌道に追従するようにモータ26を制御する。
【0034】
次に、基準歩行パターンと目標遊脚軌道を詳細に説明する。図3に、基準歩行パターンを示す。グラフの横軸は時間を示しており、縦軸は股関節位置を原点とする足先の進行方向位置を示している。縦軸の上方がユーザの前方に相当する。実線のグラフが左脚の足先軌道を示しており、破線のグラフが右脚の足先軌道を示している。なお、ここでは、足先の鉛直方向の軌道については説明しない。なお、図3のグラフは軌道を模式的に表しており、実際にはグラフは曲線で表される。
【0035】
グラフの上側には左脚の状態が示されており、グラフの下側には右脚の状態が示されている。ここで、状態とは、遊脚状態と立脚状態のいずれかを意味する。図3における記号「Sw」は遊脚状態を意味し、記号「St」は立脚状態を意味する。
【0036】
グラフの意味を説明する。右脚は、時刻T1で離床したのち股関節よりも前方へとスイングし、時刻T2で着床する。即ち、時刻T1からT2までの間、右脚は遊脚状態にある。左脚は、時刻T3まで接地している。時刻T2からT3までの間、両脚が接地したまま、股関節の位置が前方へ移動する。即ち、両脚の足先位置は、一定の距離を保ったまま股関節位置に対して相対的に後方へ移動する。時刻T2からT3までは両脚とも立脚状態にある。左脚は、時刻T3で離床したのち股関節よりも前方へとスイングし、時刻T4で着床する。即ち、時刻T3からT4までの間、左脚は遊脚状態にある。右脚は、時刻T2からT5まで接地している。即ち、右脚は、時刻T2からT5の間、立脚状態にある。時刻T5で右脚が再び離床する。以上の動作が繰り返される。
【0037】
図3では、右脚のグラフの形状と左脚のグラフの形状が同じである。即ち、基準歩行データでは、両脚の足先位置の軌道は同じである。ユーザの脚の軌道が基準歩行データの軌道に近いとき、ユーザは正常な歩行を実現していることを意味する。符号WRは、右脚の歩幅を示しており、WLは左脚の歩幅を示している。基準歩行データでは、右脚の歩幅WRは左脚の歩幅WLに等しい。
【0038】
左脚のグラフにおいて、太線は、遊脚中の左脚の軌道を示している。即ち、グラフの太線部分が、左脚の基準遊脚軌道を示す。
【0039】
次に、基準遊脚軌道から目標遊脚軌道を生成する処理を説明する。図2を参照して説明したように、実脚軌道決定モジュール34が、ユーザの右歩幅WRと左歩幅WLを決定する。係数決定モジュール36は、歩幅比WL/WRの移動平均を算出する。この移動平均が、非対称性係数Ce1に相当する。目標軌道決定モジュール38は、基準遊脚軌道の距離軸上のスパンに非対称性係数Ce1を乗じた新たな軌道を生成する。図4に、基準遊脚軌道と生成された新たな軌道の関係を模式的に示す。グラフの横軸と縦軸の意味は図3に同じである。即ち、縦軸がユーザ前後方向の距離軸に相当する。1点鎖線は、左脚の基準軌道を示している。破線は、右脚の基準軌道を示している。特に、遊脚期間における1点鎖線が、基準遊脚軌道に相当する。符号A1は、基準遊脚期間の最大値と最小値の間の範囲を示す。即ち、符号A1が、基準遊脚軌道の距離スパンを示す。目標軌道決定モジュール38は、基準遊脚軌道の距離スパンA1に非対称性係数Ce1を乗じて基準遊脚軌道を縮小する。図4の実線が非対称性係数Ce1によって縮小された新たな軌道を示す。符号A2は、新たな軌道の距離スパンを示す。ここで、AVR(WL/WR)=Ce1=A2/A1の関係が成立する。遊脚期間における新たな軌道が目標遊脚軌道に相当する。
【0040】
コントローラ30は、こうして生成された目標遊脚軌道に追従するようにモータ26を制御する。目標遊脚軌道の効果を説明する。図4の符号B1は、基準遊脚軌道(基準歩行パターン)における歩幅を示す。即ち、距離B1は、健常脚を一歩踏み出したときの歩幅を示す。符号B2は、目標遊脚軌道における歩幅を示す。目標遊脚軌道における距離B2は距離B1よりも小さくなる。即ち、この目標遊脚軌道は、左脚(患脚)の歩幅B2が右脚(健常脚)の歩幅B1よりも小さい軌道を意味する。歩行補助装置10は、この目標遊脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御することによって、右脚(健常脚)とは異なる軌道を描く左脚(患脚)の動きを適切に補助することができる。
【0041】
コントローラ30は、歩行補助装置10の使用時間の経過とともに非対称性係数Ce1を変化させる。図5に、非対称性係数Ce1の経時的変化を示す。符号Ce1_sが示すグラフは、一歩毎の非対称性係数の変動を示す。Ce1_sは、実脚軌道決定モジュール34が一歩毎に算出する。グラフに示されるように、一歩毎の非対称性係数Ce1_sはばらつく。前述したように、非対称性係数Ce1は、過去の複数の一歩毎非対称性係数の移動平均に相当する。移動平均を算出することによって、一歩毎のばらつきの影響を除去することができる。また、歩行能力が回復するにつれて、ユーザは、左脚(患脚)をより前方に踏み出すことができるようになる。その結果、係数決定モジュール36が出力する非対称性係数Ce1も1に漸近する。非対称性係数Ce1が1に漸近するにつれて、基準遊脚軌道と目標遊脚軌道の差が小さくなる。ユーザの歩行能力の回復に応じて自動的に目標遊脚軌道が基準遊脚軌道に漸近する。この歩行補助装置10は、ユーザの歩行能力の回復に応じて適応的に補助パターンを変更することができる。
【0042】
なお、歩行補助装置10は、非対称性係数Ce1を能動的に1に漸近させてもよい。そのような処理を実行する歩行補助装置10は、ユーザの歩行能力の回復を促進するリハビリ装置として機能する。
【0043】
(第2実施例)第2実施例の歩行補助装置を説明する。第2実施例の歩行補助装置は、コントローラの処理が第1実施例と異なる。第2実施例のコントローラは、ステップ時間比を非対称性係数として採用する。図6に、第2実施例のコントローラ130のブロック図を示す。一点鎖線で示した部分が、第1実施例のコントローラ30とは異なる部分である。以下では、一点鎖線で示した部分について説明する。
【0044】
実脚軌道決定モジュール134は、脚センサの出力から、歩行中の両脚の実軌道を決定する。実脚軌道決定モジュール134は、接地センサ24L、23Rの出力から、離床タイミングと着床タイミングを得る。それらのタイミングから、実脚軌道決定モジュール134は、実軌道における遊脚期間と立脚期間を特定する。実脚軌道決定モジュール34は、得られた両脚の実軌跡から、右脚(健常脚)を一歩踏み出すのに要する所要時間TRと、左脚(患脚)を一歩踏み出すのに要する所要時間TLを決定する。実脚軌道決定モジュール134は、一歩毎に所要時間を決定する。
【0045】
決定された所要時間TR、TLは、係数決定モジュール136に入力される。係数決定モジュール136は、過去の左右の所要時間比TL/TRを蓄え、それらの移動平均を算出する。図6では、AVR(TL/TR)が平滑化された歩幅比を表している。本実施例では、所要時間比の移動平均が非対称性係数に相当する。図6では、非対称性係数を符号Ce2で表している。以下、本実施例では、非対称性係数を符号Ce2で表す。
【0046】
目標軌道決定モジュール138は、メモリ32から、左脚(患脚)の基準遊脚軌道と基準立脚軌道を読み込む。基準遊脚軌道は、第1実施例で説明した。基準立脚軌道は、図3において立脚状態Stで示された範囲の左脚の軌道を意味する。
【0047】
目標軌道決定モジュール138は、基準遊脚軌道の時間軸上のスパンに非対称性係数Ce2を乗じた新たな軌道を生成する。この新たな軌道が左脚の遊脚時の目標遊脚軌道に相当する。別言すれば、目標軌道決定モジュール138は、基準遊脚軌道を時間軸に沿って非対称性係数Ce2で伸縮させた目標遊脚軌道を決定する。同様に目標軌道決定モジュール138は、基準立脚軌道の時間軸上のスパンに非対称性係数Ce2の逆数を乗じた新たな軌道を生成する。この軌道が目標立脚軌道に相当する。目標遊脚軌道と目標立脚軌道は、変換モジュール40に送られる。以後の処理は、第1実施例の場合と同様である。
【0048】
基準遊脚軌道を時間軸に沿って伸縮する処理を説明する。図7に、基準遊脚軌道と生成された新たな軌道の関係を模式的に示す。グラフの横軸と縦軸の意味は図3に同じである。即ち、横軸が時間軸に相当する。1点鎖線は、左脚の基準軌道を示している。特に、符号TRが示す期間の1点鎖線が、基準遊脚軌道に相当する。また符号TRは、右脚の所要時間を示す。即ち、所要時間TRが、基準遊脚軌道の時間スパンを示す。目標軌道決定モジュール138は、基準遊脚軌道の時間スパンTRに非対称性係数Ce2を乗じて基準遊脚軌道を伸張する。図7の実線が非対称性係数Ce2によって伸張された新たな軌道を示す。符号TLは、新たな軌道の時間スパンを示すとともに、検出された左脚の所要時間に相当する。遊脚期間における新たな軌道が目標遊脚軌道に相当する。
【0049】
この目標遊脚軌道は、左脚(患脚)の所要時間TLが右脚(健常脚)の所要時間TRよりも長い軌道を意味する。歩行補助装置10は、この目標遊脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御することによって、右脚(健常脚)のようには素早く動かすことができない左脚(患脚)の動きを適切に補助することができる。
【0050】
非対称性係数Ce2の逆数を用いて基準立脚軌道を時間軸に沿って伸縮させる処理を説明する。図8に、両脚の状態の経時的変化を示す。図8の横軸が時間の経過を表す。図8(A)は、基準歩行パターンにおける経時的変化を示す。図8(B)は、目標遊脚軌道と目標立脚軌道における経時的変化を示す。図8(A)は、図3の上側の図と下側の図を再掲したものである。図8における符号St、Swはそれぞれ、立脚状態と遊脚状態を表す。図8(A)は、基準歩行パターンに基づいているので、右所要時間TRと左所要時間TLは等しい。図8(B)では、左所要時間TLは、非対称性係数Ce2によって伸張されている。ここで、左所要時間TLは、左脚が遊脚状態にある時間を意味するとともに、右脚が片脚立脚状態にある時間TRsも同時に意味する。他方、図8(B)の符号TLsは、左脚が片脚立脚状態にある時間を意味する。左脚の片脚立脚時間TLsは、右所要時間(右脚遊脚時間TR)に等しい。図8(B)から明らかなとおり、TLs=TRs×(1/Ce2)の関係が成立する。時間TRsに相当する右脚の軌道は、基準立脚軌道に相当するから、基準立脚軌道を非対称性係数Ce2の逆数で伸張した軌道は、右脚が遊脚状態のときの左脚の理想的な軌道、即ち目標立脚軌道を表す。こうして生成された目標立脚軌道は、健常脚の遊脚動作に適応する患脚の理想的な軌道を表す。歩行補助装置10は、この目標立脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御することによって、遊脚期間だけでなく立脚期間においても左脚(患脚)の動きを適切に補助することができる。
【0051】
なお、上記の説明では、脚が離床してから着床するまでの期間を遊脚期間と定義し、立脚においてその遊脚期間に対応する期間を立脚期間と定義した。より適切には、この立脚期間は「片脚立脚期間」と表現することができる。即ち、遊脚期間と立脚期間(片脚立脚期間)の間には両脚立脚期間が存在する。そのような定義に代えて、歩行状態を遊脚期間と立脚期間の2つに分ける定義を採用することもできる。具体的には、右脚が着床してから次に左脚が離床するまでの期間を左脚の遊脚期間と定義することが好適である。なぜならば、右脚が着床したタイミングからしばらくは両脚が接地しているが、このときは右脚がほぼ全体重を支え、左脚にはほとんど荷重が加わらないからである。左脚遊脚期間は、右脚にとっては立脚期間に相当する。そのような定義を採用しても、上記の実施例の技術は成立する。
【0052】
実施例の技術を理解する上での留意点を列挙する。
(留意点1) 基準歩行パターン、即ち、脚の軌道は、歩行時の両足先の腰に対する相対的な軌道である。なお、軌道データは、両脚の各関節角の時系列データであってもよい。足先の腰に対する相対的な位置と脚の関節角との間には、一意的な対応関係があることは良く知られている。歩行補助装置は、いくつかの基準歩行パターンを記憶していてもよい。例えば、歩行速度や階段の昇降、あるいはスロープの昇降など、歩行条件や歩行環境に応じて異なる基準歩行パターンを選択してもよい。また歩行補助装置は、健常脚(第2脚)の動きから基準歩行パターンを生成してもよい。
【0053】
(留意点2) 「基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道を時間軸又は前後方向距離軸のいずれか一方の軸に沿って1でない係数(非対称性係数)で伸縮した目標遊脚軌道を生成する」とは、「基準歩行パターンにおける軌道の時間スパン或いは距離スパンに非対称性係数を乗じて変換した軌道を目標パターンとして決定する」と換言できる。
(留意点3) アクチュエータは、患脚の股関節、膝関節、及び足首関節の少なくとも一つの関節にトルクを加えるものであればよい。典型的には、患脚の膝関節にのみトルクを加えるものでよい。そのようなアクチュエータの構成の一例は次のとおりである。即ち、アクチュエータは、患脚の大腿に取り付けられる上部リンクと下腿に取り付けられる下部リンクが、膝の関節の横で揺動可能に連結されており、その連結部に下部リンクを回転させるモータが取り付けられている構成を有する。
【0054】
(留意点4) 目標遊脚軌道や目標立脚軌道は股関節に対する足先の相対軌道で表現されている場合がある。その場合には、コントローラは足先の相対軌道を関節角軌道に変換し、アクチュエータへの指令値を決定する。このとき、アクチュエータは、目標関節角の軌道に追従するように制御される。すなわち、コントローラとアクチュエータは位置制御系を構成する。アクチュエータは位置制御されるが、その結果、ユーザの関節にトルクが加えられる。
【0055】
(留意点5) 基準歩行パターンは、歩行時の両足先の腰に対する相対的な軌道である。基準歩行パターンのうちの第1脚の遊脚中の軌道を変形した軌道が、アクチュエータの目標軌道である。コントローラは、脚センサが検出するユーザの第2脚の軌道を歩行パターン中の第2脚の軌道に同期させることによって、ユーザの第2脚の動きに対する目標遊脚軌道のタイミングを決定する。例えば、コントローラは、ユーザの第2脚が着床したタイミングに、目標遊脚軌道を同期させる。このようにしてコントローラは、目標遊脚軌道を脚センサが検出するユーザの第2脚の動きに同期させながら、第1脚の動きが目標軌道に追従するように第1脚の関節にトルクを加える。
【0056】
(留意点6) 脚センサは、脚の各関節の角度を検出するエンコーダであってよい。この場合には、脚センサには足裏に取り付けられた接地センサを含むことが好ましい。接地センサで脚が遊脚中であることを検知し、その間の関節角度の経時的変化から、脚の動きを得ることができる。或いは、脚センサは、脚の動きを撮影した画像から脚の動きのデータを得る画像センサであってもよい。脚の動きの画像から、遊脚であるか否かも判断することができる。脚センサは、第1脚の細部に至る動きまで検出する必要はない。例えば、進行方向に交差する方向の脚の動きは、本発明を実施するのに必要ない。
【0057】
(留意点7)実施例では、非対称性係数として歩幅比とステップ時間比を用いた。歩幅比とステップ時間比を同時に用いて、基準歩行パターンにおける基準軌道を時間軸と距離軸の両方に沿って伸縮してもよい。また、非対称性係数として、一歩を踏み出すときのスピードの比を採用することも好適である。
【0058】
(留意点8)係数決定モジュールは、ローパスフィルタとして機能する。ローパスフィルタのカットオフ周波数は、歩行能力の回復度合いを示す周波数よりは小さい値が望ましい。一歩に要する時間は概ね1秒程度であるので、カットオフ周波数は、大きくとも5Hz程度が好ましい。
【0059】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例の歩行補助装置の概略図を示す。図1(A)は正面図を示し、図1(B)は側面図を示す。
【図2】コントローラのブロック図を示す。
【図3】基準歩行パターンを説明する図である。
【図4】目標遊脚軌道を説明する図である。
【図5】非対称性係数の経時変化を示す図である。
【図6】非対称性係数の経時変化を示す図である。
【図7】ステップ時間比を採用したときの目標遊脚軌道を説明する図である。
【図8】歩行状態の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10:歩行補助装置
12R、12L:装具
14R、14L:上部リンク
16R、16L:下部リンク
20R、20L:膝エンコーダ
22R、22L:腰エンコーダ
24R、24L:接地センサ
26:モータ
27:傾斜センサ
28:支持バー
30、130:コントローラ
32:メモリ
34、134:実脚軌道決定モジュール
36、136:係数決定モジュール
38、138:目標軌道決定モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの歩行動作を補助する歩行補助装置であり、
両脚の軌道が同じ曲線を描く歩行時の脚の軌道を記述した基準歩行パターンを記憶している記憶装置と、
ユーザの各脚の動きを検出する脚センサと、
ユーザに装着されて第1脚の関節にトルクを加えるアクチュエータと、
ユーザの第2脚の動きに同期してアクチュエータを制御するコントローラを備えており、コントローラが、
基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道を時間軸又は前後方向距離軸の少なくとも一方の軸に沿って1でない係数で伸縮した目標遊脚軌道を生成し、
第1脚の動きが目標遊脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御することを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
コントローラは、
脚センサの出力に基づいて、第1脚の歩幅と第2脚の歩幅との歩幅比を前記係数として決定し、
基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道を脚の前後方向の距離軸に沿って前記係数で伸縮した目標遊脚軌道を生成することを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
コントローラは、
脚センサの出力に基づいて、第1脚を一歩踏み出すのに要する時間と第2脚を一歩踏み出すのに要する時間との時間比を前記係数として決定し、
基準歩行パターンにおける第1脚の遊脚時の軌道を時間軸に沿って前記係数で伸縮した目標遊脚軌道を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行補助装置。
【請求項4】
コントローラは、
基準歩行パターンにおける第1脚の立脚時の軌道を時間軸に沿って前記係数の逆数で伸縮した目標立脚軌道を生成し、
第1脚の立脚中の動きが目標立脚軌道に追従するようにアクチュエータを制御することを特徴とする請求項3に記載の歩行補助装置。
【請求項5】
コントローラは、歩行補助装置の使用時間の経過とともに前記係数を1に漸近させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の歩行補助装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−148760(P2010−148760A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331725(P2008−331725)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】