説明

歪み検出機能付きジオテキスタイル/ジオグリッド、歪み検知システム

【課題】経済性、取扱性に優れた歪み検出機能付きジオグリッド/ジオテキスタイルを提供する。
【解決手段】縦材と横材とを格子状に形成したジオテキスタイル又はジオグリッドであって、前記縦材又は前記横材の内部に補強線を配置し、前記縦材又は前記横材内であって、前記補強線と略平行に、破断歪みを調節可能な導電線を配置することを特徴とする、歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土木工事において、例えば盛土補強用として土中に埋設され、土中での歪みが検出できるジオグリッド又はジオテキスタイル及び破断歪み検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直立面や急勾配斜面の盛土を補強する土木工事用の補強材として、前記直立面や急勾配斜面に埋設されるジオグリッドやジオテキスタイル等が知られている。
これらの盛土補強材の歪み変化を検知することにより、盛土の変形を検出する方法がある。
ジオグリッド/ジオテキスタイルの歪み変化の測定には、ジオグリッド/ジオテキスタイルの内部に光ファイバを配置する方式や、ジオグリッド/ジオテキスタイルの表面に歪みゲージを付設する方法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のジオグリッドやジオテキスタイルの歪み測定方法には以下のような問題があった。
<1>歪みゲージは、局所での測定に限定されてしまう。
<2>歪みゲージは、ジオグリッド/ジオテキスタイルの表面に付設するため、耐久性が低い。
<3>光ファイバは熱に弱いため、溶融した材料を基にジオグリッドを製造する過程で、光ファイバをジオグリッドの内部に直接組込むことが難しい。
<4>光ファイバは折り曲げに弱いため、取扱が難しい。
<5>光ファイバの歪み計測には複数の計測機器が必要となる。また、計測機器が高価である。
【0004】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、経済性、取扱性に優れた歪み検出機能付きジオグリッド/ジオテキスタイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、縦材と横材とを格子状に形成した、ジオテキスタイル又はジオグリッドであって、前記縦材又は前記横材に沿って補強線を配置し、該補強線の一本又は複数本を、破断歪みを調節可能な導電線とすることを特徴とする、歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッドを提供する。
本願の第2発明は、縦材と横材とを格子状に形成した、ジオテキスタイル又はジオグリッドであって、前記縦材又は前記横材の内部に補強線を配置し、前記縦材又は前記横材内であって、前記補強線と略平行に、破断歪みを調節可能な導電線を配置することを特徴とする、歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッドを提供する。
本願の第3発明は、第1発明又は第2発明に記載のジオテキスタイル又はジオグリッドにおいて、前記導電体を複数本配置し、並列する2本の前記導電体の一方の端部を連続させたことを特徴とする、歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッドを提供する。
本願の第4発明は、第3発明に記載のジオテキスタイル又はジオグリッドにおいて、前記複数本の導電体は、予め破断歪みを調節し、前記ジオテキスタイル又はジオグリッドと一体としたことを特徴とする、歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッドを提供する。
本願の第5発明は、第3発明に記載のジオテキスタイル又はジオグリッドにおいて、前記複数本の導電体の外周面に凹部を所定間隔で形成し、前記凹部の断面形状及び断面積により破断歪みが異なることを特徴とする、歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッドを提供する。
本願の第6発明は、第4発明又は第5発明に記載の歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッドを土木構造物内部に敷設し、前記複数本の導電体の破断を検出することにより、前記ジオテキスタイル又はジオグリッド及び前記土木構造物の健全性を検知することを特徴とする、破断歪み検知システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>ジオグリッド/ジオテキスタイルが盛土内に埋設されている状況においても、健全度評価ができる。
<2>導電体が金属線であるため、製造や取り扱いが容易である。
<3>破断歪みの異なる複数本の導電体を組み込むことにより、検出できる歪みに幅を持たせることができる。
<4>導電体の破断を検知することにより、ジオグリッド/ジオテキスタイルの伸び歪みを検出するため、検出装置が簡易ですむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0008】
(1)歪み検出機能付きジオグリッドの概要
図1に歪み検出機能付きジオグリッド10の斜視図を示す。
本発明は、ジオグリッド本体14に、導電体20を一体に組み込んだものである。
ジオグリッド本体14に変形や伸長等の歪みを生じると、ジオグリッド本体14に作用する歪みがそのまま導電体20に伝わる。歪みが導電体20の破断歪みより大きければ、導電体20は破断する。よって、この破断を検知することで、ジオグリッド本体14に作用した歪みを監視するものである。
以下、各部材について詳述する。
【0009】
(2)ジオグリッド本体
ジオグリッド本体14は、例えばポリエチレン等の樹脂を材料として、横材11と縦材12からなる格子で形成されている。横材11又は縦材12の少なくとも一方にアラミド繊維、炭素繊維やガラス繊維等の補強線13を入れて、強度を増している。
【0010】
(3)導電体
導電体20は、金属繊維やアルミからなる金属線等の電気を流す材質により構成する。
導電体20が金属線の場合には、図1及び図2に示すように、外周部に凹部21を一定間隔で設けることで、ジオグリッド本体14の母材が凹部21に付着し、ジオグリッド本体14と導電体20との一体性が高まる。これにより、ジオグリッド本体14と導電体20との間の摩擦力が向上し、ジオグリッド本体14の変位に対する導電体20の追従性が向上する。また、凹部21は軸方向に螺旋状になるように配置することで、導電体20の全周面でジオグリッド本体14に固定され、一体性がさらに高まる。
【0011】
導電体20は、材質や、凹部21の断面積や断面形状を変えることにより、破断歪みを調節することができる。
凹部21の軸方向又は円周方向の断面形状を、図3に示すように、(a)台形、(b)三角形、(c)矩形等にすることにより、破断歪みを変えることができる。
【0012】
また、導電体20をジオグリッド本体14と一体化する前に、予め引張して歪みを付与し、破断歪みを変えることができる。その際、引張する長さを変えることにより、容易に破断歪みを調節することができる。
導電体20の破断歪みは、補強線13の破断歪みよりも小さくなるように構成する。
例えば、補強線13としてアラミド繊維を用いた場合、破断歪みは4.5%以下となる。
導電体20としてアルミ線を用いる場合、破断歪みは38%程度であるため、上記の破断歪みの変更方法により、破断歪みが3%以下となるように調節する。
【0013】
(4)歪みの検出
導電体20はジオグリッド本体14と一体となるので、ジオグリッド本体14に作用する歪みが、そのまま導電体20に作用する。作用する歪みが導電体20の破断歪みより大きければ、導電体20は破断する。
そこで、導電体20に電流を流して破断状態を調べ、破断した導電体20の破断歪みを確認することで、ジオグリッド本体14に作用した歪みの大きさが分かり、健全性を確認することができる。
導電体20の破断は、破断検出装置23で検知する。破断検出装置23は導電体20が通電するかどうかを確認するだけのものでよいため、取り扱いが容易で、簡易な、導通試験器等の装置で検知することができる。
また、導電体20の破断歪みは、補強線13の破断歪みよりも小さいため、補強線13よりも導電体20の方が先に破断する。
これにより、ジオグリッド本体14が破断する前に、導電体20の破断を検知することができる。
【0014】
また、歪み検出機能付きジオグリッド10には図4に示すように、破断歪みが異なるように調節した複数本の導電体20a、20bを配置することができる。
破断歪みの異なる導電体20a、20bを配置することにより、検知できる歪みに幅を持たせることができ、歪み検出機能付きジオグリッド10の健全度をより詳細に把握することができる。
並列する2本の導電体20a、20bを、一方の端部で連続部22a、22bを設けて、導電するように連続させる。これにより、もう一方の端部で通電の確認を行うことができる。
【0015】
(5)使用方法の一例
歪み検出機能付きジオグリッド10を補強材として、土木構造物である盛土30に敷設させた状態を図5に示す。
土がジオグリッド本体14の格子の間隔に入り、土を拘束して土の滑りを抑えると共に、土の移動により格子に引張力や収縮力が働く。その結果、ジオグリッド内部の導電体20に歪みが生じ、歪みが導電体20の破断歪みより大きくなると、導電体20に破断が生じる。
そこで、その導電体20の破断を検知することにより、盛土30の歪みを検出することができる。
また、歪み検出機能付きジオグリッド10を盛土30に層状に配置することにより、盛土30全体の歪みを観測することができる。
【0016】
歪み観測は、破断検出装置23により常時通電状態を確認してもよいし、必要時のみ確認してもよい。破断検出装置23は簡易なものであるため、必要時に、迅速に、容易に破断検知ができる。
【0017】
また、歪み検出機能付きジオグリッド10は、盛土補強材として盛土の歪みを検出できる他に、補強材、排水材、土木シート、フィルタ、遮水シートなどの土木用材料として使用することにより、これらの本来の機能と共に、歪みを検出する目的としても使用することができる。
【実施例2】
【0018】
本発明の実施例2は、歪み検出機能付きジオテキスタイルに関するものである。
図6に示すように、ポリエステル繊維等からなる横材41及び縦材42を編みこんでジオテキスタイル本体43を構成する際に、導電体20を編み込んで一体に形成したものである。
編みこむことによりジオテキスタイル本体43と導電体20との一体性が高まり、ジオテキスタイル本体の変位に対する導電体20の追従性が向上する。
【0019】
導電体20をジオテキスタイル本体43と一体化する前に、予め引張して歪みを付与し、破断歪みを変えることができる。その際、引張する長さを変えることにより、容易に破断歪みを調節することができる。
ポリエステル繊維の破断歪みは20〜40%であるため、導電体20の破断歪みが20%以下の範囲となるものを複数本編みこむことで、検知できる歪みに幅を持たせることができ、歪み検出機能付きジオテキスタイル40の健全度をより詳細に把握することができる。
【0020】
また、歪み検出機能付きジオテキスタイル40とすることにより、上述の歪み検出機能付きジオグリッド10のように盛土補強材として盛土の歪みを検出できる他に、補強材、排水材、土木シート、フィルタ、遮水シートなどの土木用材料のジオテキスタイルに使用でき、これらの本来の機能と共に、歪みを検出する目的としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】歪み検出機能付きジオグリッドの説明図
【図2】ジオグリッド本体の横断断面図
【図3】凹部の形状の説明図
【図4】歪み検出機能付きジオグリッドの一部拡大図
【図5】歪み検出機能付きジオグリッドを盛土変位の計測用途に適用した説明図。
【図6】歪み検出機能付きジオテキスタイルの説明図
【符号の説明】
【0022】
10 歪み検出機能付きジオグリッド
11 横材
12 縦材
13 補強線
14 ジオグリッド本体
20 導電体
21 凹部
22 連続部
23 破断検出装置
30 盛土
40 歪み検出機能付きジオテキスタイル
41 横材
42 縦材
43 ジオテキスタイル本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦材と横材とを格子状に形成した、ジオテキスタイル又はジオグリッドであって、
前記縦材又は前記横材に沿って補強線を配置し、
該補強線の一本又は複数本を、破断歪みを調節可能な導電線とすることを特徴とする、
歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッド。
【請求項2】
縦材と横材とを格子状に形成した、ジオテキスタイル又はジオグリッドであって、
前記縦材又は前記横材の内部に補強線を配置し、
前記縦材又は前記横材内であって、前記補強線と略平行に、破断歪みを調節可能な導電線を配置することを特徴とする、
歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のジオテキスタイル又はジオグリッドにおいて、前記導電体を複数本配置し、並列する2本の前記導電体の一方の端部を連続させたことを特徴とする、歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッド。
【請求項4】
請求項3に記載のジオテキスタイル又はジオグリッドにおいて、前記複数本の導電体は、予め破断歪みを調節し、前記ジオテキスタイル又はジオグリッドと一体としたことを特徴とする、歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッド。
【請求項5】
請求項3に記載のジオテキスタイル又はジオグリッドにおいて、前記複数本の導電体の外周面に凹部を所定間隔で形成し、前記凹部の断面形状及び断面積により破断歪みが異なることを特徴とする、歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッド。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の歪み検出機能付きジオテキスタイル又はジオグリッドを土木構造物内部に敷設し、前記複数本の導電体の破断を検出することにより、前記ジオテキスタイル又はジオグリッド及び前記土木構造物の健全性を検知することを特徴とする、破断歪み検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−115643(P2008−115643A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301453(P2006−301453)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】