説明

歪ゲージ装置

【課題】歪み量の測定精度を向上させた歪ゲージ装置を提供すること。
【解決手段】絶縁部材100と、この絶縁部材100に接合した抵抗体200とを具備した歪ゲージ装置において、抵抗体200が、両側で折り返して往復する往復パターン111と、この往復パターン11と電気的に接続し、周囲が抵抗体で囲まれた抵抗体のない穴C1〜C11を設けた抵抗調整パターン112とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は起歪部材などに発生する歪み量を測定する歪ゲージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、外力によって発生した起歪部材などの歪み量を測定する場合、歪ゲージ装置が使用される。
【0003】
ここで、歪ゲージ装置を用いて歪み量を測定する方法について図2を参照して説明する。図2(a)に示すように、起歪部材21の図示上面21aおよび図示下面21bにそれぞれ、たとえば2つの歪ゲージ装置22a、22bおよび22c、22dを配置する。そして、起歪部材21上に配置した歪ゲージ装置22a〜22dを用いて、図2(b)に示すようなブリッジ回路23を構成する。ここでは、歪ゲージ装置22a〜22dに設ける抵抗体の抵抗値をR1〜R4としている。また、点a、c間に入力回路たとえば電源回路24を接続し、点b、d間に出力回路25を接続する。
【0004】
図2(b)のブリッジ回路23において、R1=R2、R3=R4とし、起歪部材21に外力を加えない状態ではブリッジ回路23が平衡し、出力回路25の両端e、f間の出力が0になるように設定している。
【0005】
上記の構成で、図2(a)の起歪部材21に外力が加わり、起歪部材21に歪みが発生すると、歪ゲージ装置22a〜22dが変形し、抵抗値R1〜R4の大きさが変化する。このとき、図2(b)のブリッジ回路23の平衡がくずれ、出力回路25の両端e、fに電圧が発生する。この電圧は起歪部材21に発生する歪み量に対応し、この大きさをもとに起歪部材21の歪み量を測定する。
【0006】
ここで、従来の歪ゲージ装置について図3を参照して説明する。図3はパターン化した抵抗体部分のみを示している。
【0007】
図示上下方向の中央に、共通電極パターン30がたとえば図示横方向に形成されている。共通電極パターン30は、その左右両端に幅の広い第1および第2の幅広パターン30a、30bが設けられ、第1幅広パターン30aと第2幅広パターン30bとの間に、幅の狭い幅狭パターン30cが設けられている。そして、共通電極パターン30の図示上方に第1抵抗体31が形成され、共通電極パターン30の図示下方に第2抵抗体32が形成されている。
【0008】
第1抵抗体31は、第1幅広パターン30aと電気的に接続し、図示上下の両側で折り返し図示右上がりの斜め方向に複数回往復する往復パターン領域31a、および、この往復パターン領域31aと電気的に接続し、外部回路たとえば電源などの入力回路に接続する外部接続パターン領域31bなどから構成されている。
【0009】
第2抵抗体32は、第1幅広パターン30aと電気的に接続し、図示上下の両側で折り返し、図示右下がりの斜め方向に複数回往復する往復パターン領域32a、および、この往復パターン領域32aと電気的に接続し、外部回路たとえば電源などの入力回路に接続する外部接続パターン領域32bなどから構成されている。
【0010】
また、第3抵抗体および第4抵抗体も、第1抵抗体31および第2抵抗体32と同様の方法で形成する。
【0011】
そして、第1抵抗体〜第4抵抗体を、図2(a)に示すように、起歪部材の上下両面に接合する。また、第1抵抗体〜第4抵抗体を、図2(b)に示すようなブリッジ回路に形成し、さらに入力回路および出力回路などを接続する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の歪ゲージ装置は、絶縁部材上に抵抗体を張り付け、エッチングなどで抵抗体をパターン化して形成する。このとき、図2(b)に示すように、4つの抵抗R1〜R4でブリッジ回路23を構成した場合に、ブリッジ回路23が平衡するようにR1=R2、R3=R4に設定する。しかし、製造工程における精度上の問題などから、R1=R2、R3=R4にならない場合がある。
【0013】
このような場合、従来の歪ゲージ装置では、たとえばエッチング液を用いて抵抗体の一部を除去するなどして形状を変更している。しかし、その作業が繁雑で、抵抗値の調整作業が困難になっている。
【0014】
本発明は、上記した欠点を解決し、抵抗値の調整が容易な歪ゲージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、絶縁部材と、この絶縁部材に接合しパターン化した抵抗体とを具備した歪ゲージ装置において、前記抵抗体の一部に、周囲が抵抗体で囲まれた抵抗体のない領域をもつ抵抗調整パターンを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パターン化した抵抗体の一部に、周囲が抵抗体で囲まれた抵抗体のない領域をもつ調整パターンを設けている。したがって、たとえば調整パターンの縁と抵抗体のない領域との間に位置する抵抗体を切断することにより、抵抗値を容易に調整でき、測定精度を向上させた歪ゲージ装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について図1を参照して説明する。図1は図面の関係で、パターン化した抵抗体を線分B−Bで2分し、図の(a)と(b)に分けて示している。
【0018】
絶縁部材100上に抵抗体200が接合されている。抵抗体200は、図示上下方向の中央に横方向に形成された共通電極パターン10および共通電極パターン10の図示上方に位置する第1抵抗体11、共通電極パターン10の図示下方に位置する第2抵抗体12などから構成されている。
【0019】
共通電極パターン10は、その左端および中央、右端に幅が広い第1〜第3の幅広パターン101〜103が設けられている。第1幅広パターン101と第2幅広パターン102との間、および、第2幅広パターン102と第3幅広パターン103との間には、第1〜第3の幅広パターン101〜103よりも幅の狭い第1および第2の幅狭パターン104、105が設けられている。そして、共通電極パターン10の図示上方に第1抵抗体11が形成され、共通電極パターン10の図示下方に第2抵抗体12が形成されている。
【0020】
第1抵抗体11は、たとえば第1幅広パターン101と電気的に接続する往復パターン111、および、往復パターン111と電気的に接続する抵抗調整パターン112、この抵抗調整パターン112と電気的に接続し、かつ外部回路たとえば電源などの入力回路と電気的に接続する外部接続パターン113などから構成されている。
【0021】
往復パターン111は、たとえば第1幅狭パターン104に沿うその近傍を下側とし、第1幅広パターン101の図示上端とほぼ同じ高さを上側として折り返し、たとえば図示右上がりの斜め方向に複数回往復する形に形成されている。
【0022】
抵抗調整パターン112は、たとえば第1〜第9の調整領域a1〜a9が設けられている。第1調整領域a1には、たとえば抵抗体をパターン化するエッチングの際に抵抗体の一部を除去し、第1調整領域a1を形成する抵抗体パターン部分に、周囲が抵抗体で囲まれて抵抗体のない領域、たとえば絶縁部材100が露出する楕円形状の穴C1が形成されている。第2調整領域a2には、穴C1よりも大きい楕円形状の穴C2と、この穴C2よりも小さく、穴C1よりも大きい楕円形状の穴C3が形成されている。穴C2および穴C3は抵抗調整パターン112の長さ方向に対して垂直方向、つまり図示上下方向に並んでいる。第3調整領域a3は第2調整領域a2と同じパターンに形成され、2つの穴C4、C5が設けられている。
【0023】
第4調整領域a4は穴C1〜C5よりも大きい矩形状の1つの穴C6が形成されている。第5調整領域a5〜第7調整領域a7は、いずれも第4調整領域a4と同じパターンに形成され、矩形状の1つの穴C7〜C9が設けられている。
【0024】
第8調整領域a8はほぼ正方形状の穴の部分に、複数たとえば3つの突出状の穴を設けた形状の1つの穴C10が形成されている。この場合、穴C10の外側、たとえば3つの突出状の穴に沿って折り曲がる細い抵抗体が形成される。第9調整領域a9は第8調整領域a8と同じパターンに形成されている。
【0025】
また、抵抗調整パターン112の図示上縁に、各調整領域a1〜a9ごとにたとえば半円状の切り欠きL1〜L9が形成されている。切り欠きL1〜L9は、たとえば抵抗調整パターン112の長さ方向に対して垂直方向、つまり図示上下方向において、各調整領域に設けた穴C1〜C11と同じ線上に設けている。
【0026】
また、抵抗調整パターン112の図示下縁には、各調整領域a1〜a9の始端および境界部分、終端に、それぞれ細長い切り込みM1〜M10を設けている。切り込みM1〜M10は、たとえば各調整領域a1〜a9の穴の上端とほぼ同じ位置まで延びている。この場合、切り込みM1〜M10の部分で抵抗調整パターン112の幅が狭くなり、抵抗体の抵抗値が大きくなるようにしている。
【0027】
上記の構成で、抵抗値を調整する場合、たとえば符号N1〜N11を付した部分、たとえば各穴C1〜C11の周囲に位置する抵抗体を切断する。このとき、切断された調整領域における抵抗体の形状が変化する。つまり、抵抗体を切断した調整領域の抵抗値が変化し、抵抗値が調整される。また、半円状の切り欠きL1〜L9で幅が狭くなっているため、切断作業が容易になる。
【0028】
なお、各調整領域a1〜a9には穴の大きさや形状が相違する複数種類の穴を形成している。したがって、切断する箇所によって抵抗値の変化分が相違し、調整する抵抗値の大きさによって切断箇所が適宜選択される。また、切断箇所は、抵抗値を調整する大きさに合わせて、たとえば1箇所、あるいは複数箇所が選択され切断される。
【0029】
なお、第2抵抗体R2の抵抗調整パターンは、共通電極パターン10に対して第1抵抗体R1の抵抗調整パターン111とほぼ線対称であるため、重複する説明を省略する。
【0030】
また、上記したように2つの第1抵抗体11と第2抵抗体12を設け、第1抵抗体11の抵抗R1と第2抵抗体12の抵抗R2を等しくする場合、2つの抵抗体11、12の抵抗R1、R2のいずれか一方だけを調整してもよく、あるいは、両方の抵抗R1、R2を調整してもよい。
【0031】
上記の実施形態では、抵抗体に往復パターンを設けているが、これ以外の形状のパターンを用いることもできる。
【0032】
上記した構成によれば、歪ゲージ装置に設けた抵抗値の調整が容易になり、測定精度を向上させた歪ゲージ装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態を説明する上面図である。
【図2】歪みの測定方法を説明する図で、(a)は歪ゲージの概略の斜視図、 (b)は回路図である。
【図3】従来例を説明する上面図である。
【符号の説明】
【0034】
100…絶縁部材
200…抵抗体
10…共通電極パターン
11…第1抵抗体
111…第1抵抗体の往復パターン
112…第1抵抗体の抵抗調整パターン
113…第1抵抗体の外部接続パターン113
12…第2抵抗体
a1〜a9…第1〜第9調整領域
C1〜C11…穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部材と、この絶縁部材に接合しパターン化した抵抗体とを具備した歪ゲージ装置において、前記抵抗体の一部に、周囲が抵抗体で囲まれた抵抗体のない領域をもつ抵抗調整パターンを設けたことを特徴とする歪ゲージ装置。
【請求項2】
抵抗体のない領域は、大きさおよび形状の少なくとも一方が相違する複数種類を有する請求項1記載の歪ゲージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−234384(P2006−234384A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44936(P2005−44936)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000113322)東芝ホクト電子株式会社 (172)
【Fターム(参考)】