説明

歯周測定装置

【課題】簡便で操作性に優れ滅菌処理などが容易で衛生的に主に歯と歯肉との間に形成されたポケットの深さを短時間に低コストで測定できることを可能とする歯科医で使用される歯周測定装置を提供する。
【解決手段】付勢手段を内蔵した変位センサーを収納したハンドピース本体と、ハンドピース本体から脱着可能に装着されるアダプターと、アダプターの先端に固定方向を規定し脱着可能に装着されるプローブ、との三つの主要要素部品で構成しているハンドピースを備え、且つ、上記プローブを 前端から突出しフレキシブルで長手方向に自由にスライド移動できるスリーブと、このプローブに装着されスリーブ内を貫通し前端に球状の先端を有する探針と、探針の先端とスリーブの前端との間にこの探針が貫通し長手方向に自在にスライド移動できると同時に探針の長手方向を軸として自在に回転できるように搭載した鍔、とで構成した歯周測定装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に歯と歯肉との間に形成されたポケット深さの測定のために歯科医で使用される歯周測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、成人以降の歯を失う最大の原因となっているだけでなく、歯周病を引き起こす歯周病菌が全身の疾患にも深く関っていることが明らかとなってきている。
歯と歯肉との間に形成されたポケット内には口腔内の汚れ(プラーク)が溜まり易くこの中で歯周病菌が繁殖し、歯周病が進行するに従ってポケットが深くなる。
ポケットの深さは、歯肉の上縁からポケットの底の歯肉が歯に結合している上皮付着部までの長さとして測定され、このポケット深さの測定により歯周病の有無や歯周病の進行状況を検出することができることから 歯周診療における基本的な診断法となっている。一般的にポケット深さが、3mmを超えたら要注意。4mmに達したら歯周病と診断される。
ポケット深さの検査では、歯1本当り少なくても6か所以上の測定が必要とされ、例えば、正常な成人の口腔内には32本の歯があることから全歯に対して192か所の測定が必要なことになる。この検査は、治療の前後での実施は勿論のことであるが、歯周病予防のために定期的に、例えば、半年置きの実施が望まれる。
【0003】
しかしながら従来から実施されているこのポケット深さの測定手法では、術者が先端部に目盛が刻まれている探針をポケット内に挿入し、探針先端部がポケットの底に突き当たったところで歯肉の上縁の目盛を目視で読み取りその値を記録することを交互に行うこととなり、例えば、192回繰返して行わなければならない。このような作業がきわめて煩雑で面倒なものであり時間も掛かることから 術者へのストレスが大きなものとなることは明らかである。また、目視による目盛の読み取りであるため読み取り誤差も発生する。
【0004】
一方、ポケット深さの測定を容易とすべくこれまで多くの装置が考案されている。例えば、実公昭53−14069号公報には、ハンドピースの先端に 長手方向にスリーブチューブを固着し自在にスライド移動できるようにしたスライド子を設け、ハンドピース本体に固定しこのスリーブチューブ内を貫通させ先端より露出できるようにした探針をポケットに挿入してポケットの底に突き当たったところで 術者が指先でスライド子をスリーブチューブの先端部が歯肉の上縁に来るようにスライドさせて合わせ この時の相対スライド長をポケット深さデータとして本体に組込まれているトランスデューサーで電気信号に変換して出力するようにしたポケット深さの測定装置が開示されている。このポケット深さの測定装置では、ポケット深さのデータを電気信号として取り出せるため、術者はデータを測定の都度書き取って記録する必要はなくなったが、測定点毎にスリーブチューブの先端部が歯肉の上縁に一致するようスライド子を指先で合わせなければならないため、やはり煩雑で面倒な長時間を必要とする作業が求められた。また、測定対象部位であるポケット内には、多くの血液や雑菌が混在しているためオートクレーブ滅菌処理などが必須となるが、ハンドピース本体に探針とスライド子とが組込まれた構造であるためオートクレーブ滅菌処理を実施することが困難であり、さらに、測定後にスリーブチューブ内に血液などが残存するとこれら沈殿物が乾燥して固着しスライド子の滑らかな動きが阻害されることになるためスリーブチューブ内を清潔に洗浄できることを要求されるがこの洗浄も困難であった。
【0005】
特開平10−165425には、実公昭53−14069号公報に開示されている装置の欠点を解決するため、ハンドピースを 相対スライド長をポケット深さデータとして電気信号に変換して出力するためのトランスデューサーが組込まれているハンドピース本体と、このハンドピース本体の前端部分を覆いハンドピース本体から脱着可能としたカバー部材部とに分けた構成として、このカバー部材部の先端に長手方向にスリーブチューブを固着し自在にスライド移動できるようにしたスライド子を設けこのスリーブチューブ内を貫通させ先端より露出できるようにした探針をカバー部材に固定する構造とすることで測定中に口腔内に挿入され雑菌などに汚染されたカバー部材部をハンドピースから外しオートクレーブ滅菌処理することを可能とした歯周ポケット深さの測定装置が開示されている。この歯周ポケット深さの測定装置では、口腔内の雑菌などで汚染されるカバー部材部のオートクレーブ滅菌処理は可能となった。しかし、カバー部材部に設けられているスライド子のスリーブチューブ内を清潔に洗浄保存することは困難であり、また、スリーブチューブと探針を新しく交換することも容易ではなく、さらに、カバー部材部全体の交換は高価であることからディスポーザブルと出来ないものであった。しかも、術者は、ポケット長の測定のため、測定点毎にスリーブチューブの先端部が歯肉の上縁に一致するようにスライド子を指先で合わせなければならないため、やはり煩雑で面倒な長時間を必要とする作業が求められる装置であった。
【0006】
以上の状況下、ポケット深さの検査は未だ従来と変わらない先端部に目盛が刻まれている探針を用いての測定が中心であり、この検査の実施に多大の労力と時間を要することが、人体への悪影響が大である歯周病を発見するために有効で必要な検査であるにも関らず歯周検査の実施をなかなか浸透させることができない原因となっている。
【特許文献1】実公昭53−14069号公報
【特許文献2】特開平10−165425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
簡便で操作性に優れ滅菌処理などが容易で衛生的に主に歯と歯肉との間に形成されたポケットの深さを短時間に低コストで測定できることを可能とする歯科医で使用される歯周測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するために、本発明の歯周測定装置には、前端方向に押圧させる付勢手段を内蔵した変位センサー41などの電子部品が収納されているハンドピース本体40と、このハンドピース本体40の前方部を覆いハンドピース本体40から脱着可能に装着されるアダプター30と、このアダプター30の先端に固定方向を規定し脱着可能に装着されるプローブ20、との三つの主要要素部品から構成されるハンドピース10を備え、このプローブ20には、前端から突出したフレキシブルなスリーブ23と、このプローブ20に装着されスリーブ23内を貫通し前端に球状の先端22aを有する探針22と、探針先端22aとスリーブ23の前端との間に探針22に貫通して装着された鍔21、とを備えている。上記のフレキシブルなスリーブ23としては、例えばフレキシブルでしかもスリーブ移動量の伝達のための硬性を有し生体安全な樹脂材料であるポリイミドやPEIを押し出し成型した細径チューブが用いられる。
【0009】
上記の探針22は、プローブ20をアダプター30に固定方向を規定し接続させるための部位であるプローブキャップ24に装着され、スリーブ23はこの探針22の長手方向に自在にスライド移動できる。また、鍔21は、探針22の長手方向に自在にスライド移動できると同時に探針22の長手方向を軸として自在に回転できる。さらに、探針22の探針先端22aの前方端部と鍔21の前方端部とが一致或いは、ほぼ一致する位置で上記のスライド移動を停止させると共に鍔21の探針22からの脱落を防止させるための機械的な規制手段を設けている。
【0010】
上記構造のプローブ20は、単純で安価であるためディスポーザブル仕様とでき、さらに個々の患者の口腔内の歯列と歯周の状態に合わせた最適な歯周測定を可能とするための各種形状の鍔21を搭載したプローブ20をラインナップできる。
【0011】
上記のアダプター30には、プローブ20からのスリーブ23のスライド移動量をハンドピース本体40内に収納されている変位センサー41に伝達させるための伝達スライド31を備えており、伝達スライド31はアダプター30の長手方向に対し自在にスライドできる。また、プローブ20の接続方向を規定させるための機械的な規制手段を設けている。さらに、ハンドピース本体40に対してその長手方向を軸として回転可能とするための機械的な手段を設けている。プローブ20と共に測定時に口腔内に挿入されるこのアダプター30は、滅菌処理を可能とするため少なくても耐熱性を有する材料で構成している。
【0012】
上記のハンドピース本体40には、アダプター30に内蔵している伝達スライド31を通して伝達されてくるプローブ20のスリーブ23からのスライド移動量を先端部に装着している変位センサースライド棒41aを介して検出させるための変位センサー41と 変位センサー41で検出された信号をハンドピース10に対して別置される制御装置に送信させるための電子回路部、とを内蔵している。この変位センサー41には先端部に装着している変位センサースライド棒41aを前端方向に押圧する付勢手段が内蔵されている。また、ハンドピース本体筐体42の筒状外面にはアダプター30をワンタッチで脱着するためのCリング42aとCリング溝42bが取り付けられている。
【0013】
上記のハンドピース10のプローブ20を装着したアダプター30を口腔内に入れて、測定対象のポケット部にプローブ20を挿入させると 鍔21が歯肉の上縁に掛かり、術者がスリーブ23を手動でスライドさせることなく自動的にスリーブ23と鍔21の 探針20に対するスライドが開始され、探針22の探針先端22aがポケットの底に到達した時点で術者がフットスイッチ54を押すことで、その時点で変位センサー41に伝達され電気信号に変換されデータI/Oモジュール51を介してデータ処理・表示・制御装置52に送信されていたスライド移動量のデータが読み込まれ この測定点でのポケット深さとして計算処理され記録される。さらに、術者が別の測定点にプローブ20の先端部をポケットに沿って移動させるか 或いは、他の測定ポケット位置に再挿入させることで 歯肉の上縁に掛かっている鍔21が自動的にスリーブ23を探針20に対しスライドさせて各点のポケットの深さを測定できる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように 本発明の歯周測定装置が、前端方向に押圧させる付勢手段を内蔵した変位センサー41などの電子部品が収納されているハンドピース本体40と、このハンドピース本体40の前方部を覆いハンドピース本体40から脱着可能に装着されるアダプター30と、このアダプター30の先端に固定方向を規定し脱着可能に装着されるプローブ20、との三つの主要要素部品から構成されるハンドピース10を備え、さらにプローブ20に 前端から突出しフレキシブルで長手方向に自由にスライド移動できるスリーブ23と、このプローブに装着されスリーブ23内を貫通し前端に球状の先端22aを有する探針22と、探針先端22aとスリーブ23の前端との間に探針22を貫通し装着され長手方向に自在にスライド移動できると同時に探針22の長手方向を軸として自在に回転できる鍔21、とを備え、探針22の探針先端22aの前方端部と鍔21の前方端部が一致或いは、ほぼ一致する位置で上記のスライド移動を停止させると共に鍔21の探針22からの脱落を防止させるための機械的な規制手段を設けたことで、歯周の測定で口腔内に挿入されるアダプター30とプローブ20部分の滅菌処理を容易に行うことが出来、衛生的で簡便で容易な操作で歯周ポケットの深さを短時間に低コストで測定できる歯周測定装置を提供できる。
【0015】
さらに、プローブ20の構造が単純で安価な構造であることからディスポーザブル仕様を可能とできることから、測定中に付着した血液や雑菌の滅菌洗浄が困難であった問題や滅菌後の沈殿物の乾燥固着が測定機能を低下させていた問題も解決できるだけでなく、個々の患者の口腔内の歯列と歯周の状態に合わせた形状を持つ鍔21を搭載した最適な歯周測定を可能とするプローブ20のラインナップを提供できる。
【0016】
術者は、プローブ20の挿入位置を測定ポケットに挿入、或いはスライドさせフットスイッチを押すだけで測定と記録を交互に繰返す必要なく、また、術者が測定部位でいちいちスリーブを歯肉の上縁に移動させて合せることなく、スリーブを測定点に移動させるだけで連続的な測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を図示の例について説明する。 図1は本発明の有線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース10の断面図とハンドピース10を構成する三つの主要要素部品であるハンドピース本体40とアダプター30とプローブ20に関する詳細断面図、図2は図1のハンドピース10の先端A部の拡大側面断面及び前方図、図3は本発明の歯周測定装置による歯周の測定対象部位を示す図、図4はプローブ先端の鍔21、探針22及びスリーブ23のデザインバリエーションを示す図、図5は本発明による有線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース10を搭載した歯周測定装置の例示的態様の全体斜視図、図6は本発明による歯周測定装置に搭載される無線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース10の断面図、図7は本発明による無線で信号の送信を行うタイプのハンドピース10を搭載した歯周測定装置の例示的態様の全体斜視図である。
【0018】
図1において、10は有線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース(a図参照)で プローブ20(b図参照)とアダプター30(c図参照)とハンドピース本体40(d図参照)の脱着可能な三つの主要要素部品から構成される。ハンドピース本体40には、先端部分に変位センサースライド棒41aを持ちこれを前端方向に押圧させる付勢手段を内蔵した変位センサー41と検出された信号をハンドピース10から別置されている制御装置に送受信させるための電子回路部(図示せず)が収められている。ここで、変位センサー41の押圧力は、歯周組織へのダメージを与えないような、例えば、5〜100gの範囲の加付力となるように規制されている。電子回路部からの信号は、ケーブル43を経て図外のデータI/Oモジュール51に接続される。ハンドピース本体40のハンドピース本体筐体42の筒状外面には、Cリング42aとCリング溝42bが取り付けられており、アダプター30を 筒状のアダプター筐体32の後段内面32aに形成されているCリングキャッチ溝32bで、Cリング42aを介してハンドピース本体40に回転可能に装着でき、また、ワンタッチで取外すことができる。
【0019】
アダプター30には、前端壁32cに形成されたガイド穴32dを貫通して前方に先端が露出された2本の伝達スライド棒31aとこれらの伝達スライド棒31aがねじ固定されている伝達スライド棒固定ベアリング31bとで構成された伝達スライド31が内納されていて、この伝達スライド31はアダプター筐体32の前段内面32eの中を後段内面32aの前端にねじ止固定された止具33と前端壁32cとで規定された距離を長手方向に前後自在にスライドできる。ここで、本例の伝達スライド31は2本の伝達スライド棒31aで構成されているが、スリーブ23のスライド移動量を安定して変位センサースライド棒41aに伝達でき取付け部への収納が可能であれば本数が限定されるものではなく 例えば、1本でも或いは3本でも可能である。また、伝達スライド棒31aの伝達スライド棒固定ベアリン31bへの固定方法は、ねじ止めに限定されるものではなく接着や溶接、或いは圧入などの方法も選択できる。アダプター30の先端部の筒状のプローブ接続面にはCリング溝32fとCリング32gとプローブ方向固定ピン34とが取り付けられている。以上のアダプター30を構成している部品は、滅菌処理が可能な材料で構成しており、少なくても130℃までの使用が可能な耐熱材料を用いている。
【0020】
プローブ20は、筒状のプローブキャップ24の後端部に形成されているキャップ方向固定溝24aの中にプローブ方向固定ピン34が挿入されるように接続させることでプローブ20の後段内面24bに形成されているCリングキャッチ溝24cで、Cリング32gを介してアダプター30に装着される。
【0021】
上記のプローブ20を構成するスリーブ23には、低いスライド抵抗を有しフレキシブルでしかもスライド移動量を後方に伝達させられるための硬性に優れさらに生体に安全な材料で成型した細径チューブを用いる。例えば、内視鏡などにも使われているポリイミドやPEIなどの樹脂材料を用いることができる。細径チューブとしては、例えば、0.2〜2.0mmの外径のものを使用することが望ましい。この。細径チューブはプローブキャップ24の先端に形成されているスリーブガイド穴24dを通ってスリーブ固定スライド23aに接着固定される。
【0022】
上記のプローブ20を構成する探針22は、図1b図のプローブ20の詳細図に示されているように中間部が湾曲した形状をしている。この探針22の探針先端22aの形状は、患者の痛みを緩和する目的と探針22に貫通し装着される鍔21の探針22の長手軸の周り回転抵抗を低くする目的とから球状形状が望ましく(図2参照)、さらにポケットに挿入して深さを測定するために探針先端22aの曲率半径を0.1〜1.0mmとすることが望ましい。この探針22は探針先端22aの直径と同程度の線径で硬さと剛性を有するチタン、タングステン、ステンレスなどの線材を用いて作製する。例えば、析出硬化処理可能なSUS631や、バネ入れ用硬質ステンレスであるSUS301、SUS304などの材料を用いる。探針先端22aは前述の探針22を構成する材料を直接加工しても製作できるが、アウトサート成型により球形の樹脂材料を接続しても製作できる。
【0023】
この探針22は、鍔21と スリーブ固定スライド23aと このスリーブ固定スライド23aに装着されてスリーブガイド穴24dを通っているスリーブ23と、を貫通して後端部が探針固定具22bに接着固着される。ここで、固着方法は接着に限定されるものではなくねじ止めや溶接、或いは圧入などの方法も選択できる。また、スリーブ固定スライド23aのスリーブ23の取付け穴には同軸上に探針22がスライド自在に通過移動できるようなガイド穴が形成されている(詳細図示せず)。さらに、探針固定具22bには、上記のアダプター30の前方から突出している伝達スライド棒31aをスライド自在に移動通過できるようなガイド穴22cが形成されており、この探針固定具22bは後段内面24bの前端部にねじ固定される。ここで、固定方法はねじ止めに限定されるものではなく接着や溶接、或いは圧入などの方法も選択できる。
【0024】
上記のスリーブ固定スライド23aは、プローブキャップ24の前段内面24eの中の探針固定具22bと前端壁24fとで規定された距離を長手方向に前後自在にスライドできる。図1のb図には探針22に対する鍔21とスリーブ23のスライド移動量の最大時と 移動量が零時の時の状況、とがそれぞれ示されている。ここで、移動量零とは、ハンドピース10をポケットに挿入していない時の通常の状態であり、ハンドピース本体40に内蔵した変位センサー41の付勢手段により、変位センサースライド棒41a、伝達スライド棒31aを介してスリーブ23と鍔21とが前端方向に押圧されるのを鍔21に形成されている外れ防止穴21aが鍔21の先端と探針先端22aの先端位置とがほぼ同じ位置で止めている状態である(図2参照)。この機構によりポケット深さ測定前のスリーブ23位置の零調整を行う必要がない。
【0025】
図3は本発明の歯周測定装置による歯周部の測定対象部位を示す図で、ポケットにプローブ20を挿入している時の拡大図である。図から明らかなように症状、測定部位、各患者でポケット幅の違いを生じさせる歯肉の上縁に鍔21を掛けるためには、歯肉方向の鍔21の回転中心からの長さをある程度長く設定することが必要であり、患者の口腔形状と症状に合わせ1〜8mmの範囲から適選される。逆に、硬組織である歯の方向に対しては、鍔21が歯周の上縁に掛かる前に歯の側面に引っ掛ってしまうことで正確な測定が阻害されないように短く設定することが必要であり、例えば、0.1〜2.0mm程度であることが望ましい。
【0026】
図4はプローブ先端の鍔21、探針22及びスリーブ23のデザインバリエーションを示している。患者の口腔内の歯列と歯周の状態に合わせスムーズなプローブの移動による歯ポケットの測定を可能とするように 例えば、図4のa、b、cに図示されているような鍔21の断面形を扇形で扇角度をそれぞれ180度(a)、90度(b)、20度(c)とした形状を有する鍔21を搭載したプローブ20を用意して個々の患者に合ったプローブ20を適選し測定できる。一方、鍔21には、探針22の長手方向に自在にスライド移動できると同時に探針22の長手方向を軸として自在に回転できることと、前述しているようにハンドピース10をポケットに挿入する前の通常時の状態で探針先端22aと鍔21の前方端部とが一致或いは、ほぼ一致することが必要とされる。
【0027】
図4の図a、d、e、f、gは180度の扇角度を有する鍔21と、探針22及びスリーブ23との鍔21の回転機構に関するデザインバリエーションを示す図である。この内のa、d、eは、直径が探針先端22aの断面直径より細い線材から成る探針22を使用するプローブ20に関するものであり、探針先端22aの球状部分の断面直径が探針22の直径より短いことを利用し形成した外れ防止穴21aにより探針先端22aと鍔21の前方端部とを一致或いは、ほぼ一致させることができるようにデザインしている。
【0028】
さらに、dとe は、スリーブ23に対する長手方向を軸とした回転機構のaの機構に対するバリエーションとしてデザインされたものであり、dによる鍔21の後端部にはスリーブ23の直径よりやや大きな直径を持つスリーブ受211が形成されている。e にはスリーブ23の先端に接触抵抗を小さくするためのスリーブボール23bを取り付けると共に鍔21の後端部にスリーブボール受212が形成されている。
【0029】
一方、f、gは、直径が探針先端22aの断面直径と同じ線材から成る探針22を使用しているプローブ20に関するものであり、f、g共に探針22の探針先端22aの直後部分に探針先端傾斜部221を設けることでa、d、eと同様に鍔22に外れ防止穴21aを形成することにより探針先端22aと鍔21の前方端部とを一致或いは、ほぼ一致させることができる。さらに、回転機構のバリエーションとしてfにはdと同様のスリーブ受211が形成されており、gにはスリーブ23の側面に回転受け溝23cを形成させると共に鍔22の後端部に回転受け溝23cに合せるための回転枠211aを有するスリーブ受211が形成されている。
【0030】
本発明による歯周測定装置ではプローブ20に測定機能の主要要素である鍔21、探針22及びスリーブ23を備え、しかも単純で安価な構造としているためディスポーザブル仕様が可能であり 上記の例に示されているような各種デザインバリエーションによるプローブ20のラインナップを可能とできるため個々の患者の口腔内の歯列と歯周の状態に合わせたスムーズなプローブの移動による歯ポケットの測定を可能とする最適なプローブを提供できる。
【0031】
以下では、図1〜図5を元にして これらの図に例示した本発明による歯周測定装置を使用しての歯周検査法について説明する。
術者が上記のハンドピース10のプローブ20を装着したアダプター30を口腔内に入れ、測定対象のポケット部にプローブ20を挿入させると 鍔21が歯肉の上縁に掛かり、術者がスリーブ23を手動でスライドさせることなく自動的にスリーブ23と鍔21の探針20に対するスライドが開始される(図3参照)。このスリーブ23のスライド移動量は、アダプター30に内設されている伝達スライド31、さらにハンドピース本体40に内設されている変位センサースライド棒41aを介して変位センサー41に伝達される。伝達されたスライド移動量は、ハンドピース本体40に内蔵されているこの変位センサー41と電子回路で電気信号に変換された後、ケーブル43を介しデータI/Oモジュール51に送られ、ここでデータ処理・表示・制御装置52に送信するための信号に変更され、データ処理・表示・制御装置52に読み込まれ、ここでポケット深さとして計算される。
【0032】
探針22の先端22aが測定点のポケットの底に到達した時点で 術者が、データ処理・表示・制御装置52に接続されているフットスイッチ54を押すと、その時点でのポケット深さの計算値がデータ処理・表示・制御装置52に記録される。さらに、術者が別の測定点にプローブ20の先端部をスライド移動させる 或いは、他の歯の測定ポケットに再挿入させることで 鍔21が歯肉の上縁に掛かり自動的にスリーブ23と鍔21が探針20に対してスライドされ各測定点のスライド移動量が検出され 前記同様に探針22の先端22aが測定点のポケットの底に到達した時点で術者がフットスイッチ54を押すことで対象部位のポケット深さが記録される。以上の手順を繰返すことで術者は、プローブ20の挿入位置を測定ポケットに挿入、或いはスライドさせフットスイッチを押すだけで測定と記録を交互に繰返す必要なく、また、術者が一々スリーブを歯肉の上縁に移動させ合せることなく、スリーブを測定点に移動させるだけで連続的な測定を行うことができる。この結果、歯周測定を簡便な操作で短時間に実施できる。以上のポケット深さのデータは、データ処理・表示・制御装置52に記録されるとともに所定の形式でこれらの結果を表示、さらに プリンター53でプリントアウトすることもできる。
【0033】
本発明による歯周測定装置では、ハンドピース10を 前端方向に押圧させる付勢手段を内蔵した変位センサー41などの電子部品が収納されているハンドピース本体40と このハンドピース本体40の前方部を覆いハンドピース本体40から脱着可能に装着されるアダプター30と このアダプター30の先端に固定方向を規定し脱着可能に装着されるプローブ20、との三つの主要要素部品で構成しているので 測定で口腔内に挿入されるアダプター30とプローブ20の滅菌処理を容易に行うことができる。さらに、プローブ20には、測定機能の主要要素である鍔21、探針22及びスリーブ23と主要機能を備えさせ、しかも単純で安価な構造としているためディスポーザブル仕様が可能であり、これにより測定中に付着した血液や雑菌の滅菌洗浄が困難である問題や滅菌後の沈殿物の乾燥固着による測定機能の低下と言った問題も解決される。
【0034】
図6には、本発明による歯周測定装置に搭載される無線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース10が提示されている。このハンドピース10のハンドピース本体40には、変位センサー41などの電子部品に加え、無線仕様とするための無線素子44と、これらの電子部品を駆動するためのバッテリー(図示せず)が搭載されている。また、図6に提示したハンドピース10には、Cリングでなく、注射器などのニードル装着に応用されているハブ構造を接続方式としたプローブ20と このハブ構造のプローブ20を装着するためのアダプター30を提示している。ここで、このハブ接続方式もCリング接続方式は有線仕様と無線仕様とに関係なく採用できる。さらに、図6には、このプローブ20に中間部が1個所で90度に湾曲した形状の探針22を装着した例を提示している。
【0035】
図7には、本発明による無線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース10を搭載した歯周測定装置の例示的態様の全体斜視図が提示されており、無線タイプのハンドピース10に搭載されている無線素子44とデータI/Oモジュール51内に搭載されている無線素子51aとの間で信号の送受信が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の有線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース10の断面図とハンドピース10を構成する三つの主要要素部品であるハンドピース本体40とアダプター30とプローブ20に関する詳細断面図である。
【図2】図1のハンドピース10の先端のA部の側面断面及び前方図である。
【図3】図3はプローブ先端のポケット挿入時の様子を示す図である。
【図4】プローブ先端の鍔21、探針22及びスリーブ23のデザインバリエーションを示す図である。
【図5】本発明による有線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース10を搭載した歯周測定装置の例示的態様の全体斜視図である。
【図6】本発明の無線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース10の断面図である。
【図7】本発明による無線で信号の送受信を行うタイプのハンドピース10を搭載した歯周測定装置の例示的態様の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10 ハンドピース
20 プローブ
21 鍔
22 探針
22a 探針先端
23 スリーブ
24 プローブキャップ
30 アダプター
31 スライド
31b 伝達スライド棒伝達
40 ハンドピース本体
41 変位センサー
41a 変位センサースライド棒
43 ケーブル
51 データI/Oモジュール
52 データ処理・表示・制御装置
53 プリンター
54 フットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端方向に押圧させる付勢手段を内蔵した変位センサーを収納したハンドピース本体と、このハンドピース本体の前方部を覆いハンドピース本体から脱着可能に装着されるアダプターと、このアダプターの先端に固定方向を規定し脱着可能に装着されるプローブ、との三つの主要要素部品で構成しているハンドピースを備え、且つ、上記プローブが 前端から突出しフレキシブルで長手方向に自由にスライド移動できるスリーブと、このプローブに装着されスリーブ内を貫通し前端に球状の先端を有する探針と、探針の先端とスリーブの前端との間にこの探針が貫通し長手方向に自在にスライド移動できると同時に探針の長手方向を軸として自在に回転できるように搭載した鍔、とを備え、さらに、上記の探針の球状の先端と鍔の前方端部とが一致或いは、ほぼ一致する位置で上記のスライド移動を停止させると共に鍔の探針からの脱落を防止させるための機械的な規制手段を設けて構成されていることを特徴とする歯周測定装置。
【請求項2】
回転軸を中心として一方向には厚く逆方向には薄い断面形状を有する鍔により構成されている請求項1記載の歯周測定装置。
【請求項3】
上記鍔断面の厚方向の回転軸から端面までの長さが1〜8mmの範囲にある断面形状を有する鍔により構成されている請求項1又は2記載の歯周測定装置。
【請求項4】
上記鍔断面の薄方向の回転軸から端面までの長さが0.1〜2.0mmの範囲にある断面形状を有する鍔により構成されている請求項1及至3記載の歯周測定装置。
【請求項5】
180度以下の扇角度の扇断面形状を有する鍔により構成されている請求項1及至4記載の歯周測定装置。
【請求項6】
上記の探針の球状の先端と鍔の前方端部とが一致或いは、ほぼ一致する位置で上記のスライド移動を停止させると共に鍔の探針からの脱落を防止させるための機械的な規制手段がプローブを構成している鍔と探針の先端に設けてられていることを特徴とする請求項1及至5記載の歯周測定装置。
【請求項7】
上記の鍔を探針の長手方向を軸として自在に回転させるための機械的な規制手段がプローブを構成している鍔と探針とスリーブに設けてられていることを特徴とする請求項1及至6記載の歯周測定装置。
【請求項8】
探針先端の曲率半径が0.1〜1.0mmの範囲である請求項1及至7記載の歯周測定装置。
【請求項9】
アダプターをハンドピース本体に回転可能に装着でき、また、ワンタッチで取外すことができるように構成されている請求項1及至8記載の歯周測定装置。
【請求項10】
プローブをアダプターに規定された方向に脱着できるように構成されている請求項1及至9記載の歯周測定装置。
【請求項11】
少なくてもアダプターが滅菌処理可能な耐熱材料で構成されている請求項1及至10記載の歯周測定装置。
【請求項12】
スリーブを構成する細径チューブがポリイミド製で外径が0.2〜2.0mmの範囲である請求項1及至11記載の歯周測定装置。
【請求項13】
スリーブを構成する細径チューブがPEI製で外径が0.2〜2.0mmの範囲である請求項1及至11記載の歯周測定装置。
【請求項14】
変位センサーの加付力が5〜100gの範囲に規制されている請求項1及至13記載の歯周測定装置。
【請求項15】
少なくても変位センサーで検出された信号を有線或いは無線で伝達してポケット深さを算出できる機能を有するハンドピースに対して別置される制御装置を有している請求項1及至14記載の歯周測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−142522(P2010−142522A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324825(P2008−324825)
【出願日】平成20年12月21日(2008.12.21)
【出願人】(708005622)
【Fターム(参考)】