説明

歯石除去・消毒装置およびこれに用いるライトガイド

【課題】オートクレーブ等による高温の殺菌処理に対して考慮され、なおかつ、作業性に優れた歯石除去・消毒装置を実現する。
【解決手段】超音波発生手段12により発生する超音波振動をホルダ10からプローブ20の先端部に伝えて歯石の粉砕を行い、液供給手段により供給される消毒用液をプローブ先端部から歯部へ供給し、供給された消毒溶液に対して光源装置60からの光をライトガイド22により導光して照射することによりヒドロキシラジカルを発生させて消毒を行なう。プローブ20は硬質の金属材料による中空管状で、ホルダ10に対して水密的に着脱自在である。ライトガイド22は交換可能で、消毒用液よりも屈折率の高い樹脂製であり、入射側から射出側へ向かって円形状断面の径が細くなり、プローブ内に遊嵌して装着され、入射端側の直径が0.7mm以上で3mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は歯石除去・消毒装置およびこれに用いるライトガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
歯石の除去は、歯科医療の一環として重要である。
従来、超音波を利用して歯石を除去する技術が特許文献1により提案されている。同文献1は、超音波振動を伝達して超音波振動する先細のテーパ状中空管(プローブ)内に光ファイバを配設し、この光ファイバにより歯石除去部(スケーリング部)にレーザ光を照射して、スケーリング部を殺菌し、上記プローブの超音波振動により歯石を粉砕除去する歯周病用プローブを開示している。
【0003】
特許文献2は、過酸化水素水もしくは次亜鉛素酸に400nm〜1000nmの範囲における単一又は複数の波長を有する光を含む光線を照射し、発生する「ヒドロキシラジカル」により口腔内の殺菌・滅菌を行なう方法を開示している。
【0004】
特許文献3は、波長400〜420nmの範囲の青色光を用いて、歯周病菌の増殖を抑制するとともに、青色光照射箇所を水で冷却して、火傷などを防止する歯周病用光治療器を開示している。
【0005】
人の歯や義歯に対して、超音波振動を利用して歯石の除去を行なう場合、歯石には一般に多くの細菌が付着しているから、歯石の除去される部分や除去された部分を消毒することが好ましく、この消毒は「人体の健康に影響せず、耐性菌を生じさせない消毒方法」であることが好ましい。
【0006】
従って、このような歯石の除去と消毒とを行なう歯石除去・消毒装置は、特許文献1記載のように「プローブの超音波振動により歯石の粉砕を行う」と共に、特許文献3記載のように「プローブ内を通して液体を歯石除去部に供給しつつ、光の照射による殺菌・滅菌を行なう」ようにし、特許文献3記載のように「歯石除去部に供給する液体として、過酸化水素水もしくは次亜鉛素酸水を用い、400nm〜1000nmの範囲における単一又は複数の波長を有する光を含む光線を照射してヒドロキシラジカルを発生させて、歯石除去部の消毒を行なう」のが良い。
【0007】
ところで、歯石除去・消毒装置を使用する場合、人の歯や義歯に対して歯石除去・消毒を行なう場合、歯石除去の過程で、細かく粉砕された歯石等が飛散して、装置に付着するが、これら付着物は多くの細菌を含む。
従って、歯石除去・消毒装置は殺菌処理が欠かせない。このような殺菌処理に適した殺菌装置として周知のオートクレーブ装置があるが、この装置では、2気圧程度の圧力を印加した120℃程度の液体内に被殺菌物を数分〜数10分間、浸漬して殺菌処理を行う。従って、高温・高圧の影響、特に高温の影響に対する対策が必要である。
【0008】
また、歯石除去・消毒装置を連続して複数の人に使用する場合、上記の如く、人が代わるごとに装置の殺菌処理を行うのでは作業能率が悪い。このような状況に際して、作業能率の良い歯石除去・消毒装置が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述した事情に鑑みて成されたものであって、オートクレーブ等による高温の殺菌処理に対して考慮され、なおかつ、作業性に優れた歯石除去・消毒装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の歯石除去・消毒装置は「歯石の除去と、歯の消毒を行なう装置」である。
歯石除去・消毒を行なう対象は「人や動物(ペットや飼育動物等)の歯」や「義歯(インプラント義歯を含む)」である。
なお、「歯石」は、カルシウム成分が固化した「歯石」のみならず「歯垢」も含む。
【0011】
歯石除去・消毒装置は「プローブと、このプローブを保持する耐熱性のホルダと、このホルダの内部を介して、プローブ側へ消毒用液を供給する液供給手段と、ホルダに設けられてホルダを振動させる超音波発生手段と、プローブ内に遊嵌するライトガイドと、ホルダの内部に防振的に設けられ、消毒用液にヒドロキシラジカルを発生させる所定波長領域の光を発光し、発光した光をライドガイドの入力端部に集光照射する光源装置と、液供給手段と超音波発生手段と光源装置に電力供給を行なう電力供給手段と、これら液供給手段と超音波発生手段および光源装置を制御する制御手段と」を有する。
【0012】
そして、超音波発生手段により発生する超音波振動をホルダからプローブの先端部に伝えて歯石の粉砕を行う。
また、液供給手段により供給される消毒用液をプローブ先端部から歯部へ供給し、供給された消毒溶液に対して光源装置からの光をライトガイドにより導光して照射することによりヒドロキシラジカルを発生させて消毒を行なう。
【0013】
「プローブ」は硬質の金属材料による中空管状で、ホルダに対して水密的に着脱自在であり、ホルダへの着脱部から先端部に向かって内径・外径ともに細くなり、先端部における外径が1.2mm以下である。即ち、超音波発生手段により発生した超音波により、ホルダが振動し、この振動が「ホルダに装着されたプローブ」に伝えられてプローブを超音波により微小振動させる。
【0014】
この状態で、プローブの先端部を歯石に接触させ、プローブの微小振動による衝撃で、歯石を粉砕する。このとき、プローブの振動振幅は微小であり、且つ振動数が高いので、歯石を除去されている人に苦痛を与えることが無い。
【0015】
プローブが「ホルダに対して水密的に着脱自在」であるとは、プローブとホルダとの着脱部が「ぴったりと嵌合」し、両者の着脱は容易であるが、嵌合部から「消毒用液が漏れでない」ことを意味する。
【0016】
「歯石を除去される側」からすると、プローブの先端部はなるべく細いほうが、物理的刺激が少なくて良く、この観点からして、先端部の径は1.2mm以下であるとした。
【0017】
プローブ先端径は、上記観点からすると細いほど良いように考えられるが、あまり細すぎると、ライトガイドを配置する内部空間を形成するのが困難になるし、プローブの肉厚が薄くなりすぎると、歯石を粉砕するのに必要な物理強度を確保できなくなる。この観点からすると、プローブ先端の径の下限は0.3mm程度が適当である。
【0018】
プローブを構成する硬質の金属材料としては、ステンレス鋼、ニッケル、チタン等が好適である。
【0019】
プローブはまた「ホルダに対して交換可能」である。即ち、同一のホルダに対して、同一仕様のプローブを複数個用意し、これら複数のプローブを同一ホルダに対して順次に交換して装着して使用するようにすれば、新たなプローブを用いている間に「使用後のプローブを殺菌処理」できるので、異なる人に対して同一のプローブが用いられることが無く衛生面での問題を回避できる。
このようにできるので、同一のプローブに対して「使用と殺菌処理」を行って、繰り返し使用する場合に比して、はるかに作業効率が良い。
「ライトガイド」は交換可能で「消毒用液よりも屈折率の高い樹脂」で形成される。
【0020】
ライトガイドは「光源装置からの光の入射側から射出側」へ向かって、円形状断面の径が細くなり、「プローブのホルダへの着脱部」からプローブ先端部に亘って「プローブ内周面に対して間隙を隔してプローブに遊嵌して装着」される。
【0021】
このとき、ライトガイドの入射端側において「1以上の周縁部分でプローブに着脱自在に固定」される。「プローブに着脱自在に固定される」とは、上記1以上の周縁部分がプローブのホルダ側の端部に当接して、プローブに固定された状態となるが、この固定状態が「人力で容易に解除」できることを意味する。
【0022】
ライトガイドの入射端の直径は0.7mm以上で3mm以下である。
このようにライトガイドの入力端(円形状である。)の直径を0.7mm〜3mmとすることにより、光源装置側からの光を「光源装置の光軸とライトガイドの入力端の中心」とがずれたとしても、光源装置からの光を有効に入力端で受けて射出側へ導光できる。
【0023】
ライトガイドは、プローブの内部に遊嵌されるものであるから、プローブの内空間よりも細いことは当然であるが、ライトガイドの射出端の径は0.1mm〜0.4mm程度が適当である。
【0024】
ライトガイドは、樹脂製であり、材料コストが安価ですみ、また製造も容易である。
【0025】
従って、ライトガイドを、1回の使用毎に「使い捨て」とすることができる。
即ち、歯石除去・消毒の作業を1回行うごとに、プローブを交換して使用後のプローブは殺菌処理に回し、使用後のライトガイドは廃棄するのである。
そして、殺菌処理を終えたプローブに新たなライトガイドを装着して使用に供する。
【0026】
ライトガイドを、このように使い捨てにすることにより、ライトガイド自体を殺菌処理する必要が無い。
【0027】
「光源装置」は、所定波長領域の光を発光する半導体光源と、この半導体光源から放射された光を、ライトガイドの入射端に向かって集光する集光レンズと、この集光レンズと半導体光源とを所定の位置関係に保持する保持筒と、この保持筒を「ホルダ内に防振的に保持」する制振保持手段とを有し、ホルダに対して着脱可能である。
【0028】
制振保持手段が保持筒を「ホルダ内に防振的に保持」するとは、超音波発生手段によるホルダの高周波の振動が保持筒に強く伝わらないように保持することを意味する。
【0029】
「半導体光源」としては、端面発光型もしくは面発光型の半導体レーザ(以下「LD」略記する。)やLEDを用いることができる。
【0030】
なお、ホルダは「耐熱性」であるが、この耐熱性は、前述のオートクレーブ等による殺菌処理の際の温度に対して耐性があればよく、ホルダの材料としては各種金属や合金、耐熱プラスチック等を用いることができる。
【0031】
請求項1記載の歯石除去・消毒装置において「液供給手段により供給される消毒用液」は、光源装置の保持筒の肉厚部分に穿設された導液路によりプローブ側へ導液されることができる(請求項2)。消毒用液のプローブ側への導液はこれに限らず、ホルダの外部を通して行なうこともできるし、光源装置の保持筒の外周面とホルダの内周面との間を通して行なうこともできる。
【0032】
請求項1または2記載の歯石除去・消毒装置のホルダは「超音波発生手段よりもプローブへの着脱部側」を、着脱部側へ向かって外径が減少するホーン形状とするのが良い(請求項3)このようにすると、超音波振動の振幅を拡大して、プローブ側へ伝達することができる。
【0033】
請求項1〜3の任意の1に記載の歯石除去・消毒装置において、液供給手段により供給される消毒用液は「過酸化水素水もしくは次亜鉛素酸水」であり、「消毒用液にヒドロキシラジカルを発生させる光の所定波長領域」は350nm〜500nmの範囲、もしくは、700nm〜1000nmの波長領域であることが好ましい。
【0034】
特許文献2に記載されているように、この波長領域の光は「過酸化水素水もしくは次亜鉛素酸水」に照射されると、効率よく「ヒドロキシラジカルを発生」させるからである。
【0035】
また、上記波長領域のうち「400〜420nmの範囲の光を用いると、この光は特許文献3に示すように「人体に対して安全でありながら歯周病菌の増殖の抑制に有効」であるので、ヒドロキシラジカルによる消毒の効果を更に助長することができる。
【0036】
なお「消毒用液」なる用語は、この消毒用液自体の消毒効果よりも「光照射により発生するヒドロキシラジカル」による消毒効果を主とするものであることに鑑みて用いられている。
【0037】
消毒用液として過酸化水素水を用いる場合、過酸化水素の濃度は「3重量%以下」が好適である。高濃度の過酸化水素水を用いた場合、消毒用液自体の持つ殺菌力が「人体に対して強く作用しすぎる」ことが考えられるからである。
【0038】
この発明の「ライトガイド」は、請求項1〜4の任意の1に記載の歯石除去・消毒装置に用いられる交換可能なライトガイドである(請求項5)。
【0039】
請求項5記載のライトガイドは「ライトガイドの長さ」が、使用前もしくは使用後のプローブの長さより大きく、プローブに装着する際に「プローブの長さに合わせて余分な長さを切断して用いられる」ものであることができる。
【0040】
プローブの先端部は、超音波振動により歯石と衝突するので、使用状態が長くなるに従い、先端部が磨耗して次第に短くなる。このように短くなってもプローブとしての使用は可能であるが、新たなライトガイドを装着する場合に、ライトガイドがプローブの先端から伸びだした状態になる。この場合、伸びだした部分を切断除去して使用すれば良い。
【0041】
ライトガイドの長さをプローブの正規長よりも長くしておいて、プローブに装着するたびに、プローブ先端から延びだした部分を切断除去するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0042】
上記の如く、この発明の歯石除去・消毒装置では、プローブが金属製で、ホルダに対して着脱自在であり、ホルダが耐熱性で、光源装置がホルダから容易に取り外し可能であるから、ライトガイドと光源装置をはずした状態でプローブとホルダのみを同時または別個に殺菌処理することができ、殺菌に伴う高温の影響を受けない。
【0043】
また、プローブが交換可能であり、ライトガイドが使い捨てできるので、常に殺菌されたプローブと新規なライトガイドとを用いて衛生的に歯石除去・消毒の作業を効率的に行うことができる。
さらに、ライトガイドの入射端の面積が大きいので「プローブとライトガイド」を新たにホルダに装着したときに、光源装置との位置関係を特に調整しなおさなくても、光源装置からの光を良好にライトガイドに取り込むことができる。
【0044】
また、ライトガイドは樹脂製であるから安価に大量生産が可能であり、これを使い捨てにすることにより、歯石除去・消毒の作業を衛生的、且つ、効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】歯石除去・消毒装置を説明するための図である。
【図2】ライトガイドとプローブの装着状態を説明するための図である。
【図3】ホルダの内部の状態を示す図である。
【図4】半導体光源と集光レンズと、プローブに保持されたライトガイドの入射端との位置関係を説明するための図である。
【図5】発明の効果を説明するための図である。
【図6】変形例を2例示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、実施の形態を説明する。
図1は、歯石除去・消毒装置を説明するための図であり、(a)は概念図である。
図1(a)において、符号1で示す部分は、歯石除去・消毒作業を行うときに、作業者が手に持つ部分であり。この部分を以下「ハンドピース」と称する。
【0047】
同図において、ハンドピース1の左側の符号2で示す部分は「プローブ部」である。
また、符号3は「消毒用液供給部」、符号4は「電源部」を示し、符号5は「コントロール部」、符号6は「光源装置」を示す。
【0048】
消毒用液供給部3は、消毒用液を貯留するタンクや、タンク内から消毒用液を組み上げてプローブ部2の側に向けて送液するポンプ等を有し、後述する導液手段等と共に「液供給手段」を構成する。
【0049】
電源部4は、商用電源を用いる場合には「商用電源部への接続手段」で構成されるが、電源部4を「電池」により構成することもできる。
コントロール部5は、電源部4から給電を受けて、消毒用液供給部3のポンプの駆動を制御したり、後述する超音波発生手段の駆動を行なったり、光源装置6の半導体光源の発光のオン・オフの制御を行なったりする。即ち、コントロール部5は、液供給手段と超音波発生手段および光源装置を制御する「制御手段」を構成する。
【0050】
また、電源部4とコントロール部5とは、液供給手段と超音波発生手段と光源装置に電力供給を行なう「電力供給手段」を構成する。
【0051】
ハンドピース1は、ホルダ10と超音波振動子12とを有する。
ホルダ10は、長手方向(図の左右方向)に平行な軸を対称軸とする回転対称形状であり、外形形状と略同様の内周面を有する「中空体」である。
ホルダ10は、熱による殺菌処理に耐えうるように耐熱性であり、各種金属、例えば、「ステンレス」で形成することができる。このステンレスによる中空体の外周を「樹脂層(耐熱プラスチック)により被覆」することができる。
【0052】
超音波振動子12は、圧電素子を組み合わせたものであり、コントロール部5から供給される超音波周波数領域(20KHz〜40KHz)の駆動電圧により駆動されて、上記周波数領域で振動(超音波振動)する。振動の振幅方法は、ホルダ10の長手方向であり、ホルダ10はこの超音波振動により振動する。
【0053】
ホルダ10の超音波振動は高周波であり、かつ、振幅も小さいので、作業者がハンドピース1を持った状態でも、作業者は超音波振動をほとんど感じない。
【0054】
プローブ部2は、プローブ20と、このプローブ20内に配設されるライトガイドにより構成される。
【0055】
プローブ20は、図1(c)に示すように、ホルダ10への着脱が行なわれる着脱部20a側から先端部20bの側ヘ向かって外径が次第に細くなる形状を有する。プローブ20は「硬質の金属材料(説明中の例ではステンレスを用いている。)」による中空管状で、ホルダ10への着脱部20a側から先端部20bに向かって内径・外径ともに細くなる形状である。
【0056】
ホルダ10の「長手方向に直交する断面による断面形状」は、外周側・内周側とも円形状である。図1(c)に示す例では、内周側は、先端部20b側に向かって長手方向に段階的に小さくしているが、これに限らず、内周側を滑らかなテーパ面として加工するようにしてもよい。
【0057】
先端部20bはその外径が1.2mm以下である必要があるが、試作したプローブ20では先端部20bの外径を0.7mm、内径を0.4mmとすることができた。
【0058】
図1(b)は、図1(a)に符号CTで示す「ホルダ10とプローブ20との係脱部」の様子を示している。
ホルダ10の「プローブとの着脱側」は、着脱部側へ向かって外径が減少する「ホーン形状」となっており、着脱側の端部は、プローブ20の着脱部20aに嵌り込む円筒状の嵌合部10aに形成され、この嵌合部10aが、プローブ20の着脱部20a内に「ぴったりと嵌り込む(所謂「印籠嵌合」)」ことにより、両者の嵌合部は「水密」状態となる。
【0059】
図1(d)は、ライトガイド22を示している。
ライトガイド22は交換可能であり「用いられる消毒用液よりも屈折率の高い樹脂製」であるが、説明中の例ではアクリル樹脂(商品名:アクリペット)が用いられた。
【0060】
ライトガイド22は、図1(d)に示すように、光源装置からの光が入射する入射側22aから射出側22bへ向かって円形状断面の径が細くなる。
【0061】
ライトガイド22の入射側22aには、図1(e)(この図は、図1(d)の右側から見た図である。)に示すように、係止用突起221〜224が形成されている。
図2(a)は、ライトガイド22を、プローブ20に装着した状態を説明図的に示している。ライトガイド22は、プローブ20のない空間に差し込まれ、その先端部22bは、プローブ20の先端部20bの部分に露呈する。
【0062】
ライトガイド22の入射端側は、図2(b)(この図は、図2(a)を図の右側から見た上体を示している。)に示すように、ライトガイド22の入射端側に形成された係止用突起221〜224が、ホルダ10の着脱側の係止部20a1に内側から圧接することにより、ホルダ10に固定される。
この固定の固定状況は「係止用突起221〜224とホルダ10の係止部20a1との圧接による摩擦結合」であるから、固定状態を解除するにはホルダ内からライトガイドを引き出すのみでよく、ライトガイド22のホルダ10への着脱は容易である。
即ち、ライトガイド22はプローブ20に対して「着脱自在」である。
【0063】
ライトガイド22の太さは、長手方向に渡って「プローブ20の内径」よりも小さく、ライトガイド22がプローブ20に装着された状態は「遊嵌状態」であり、ライトガイド22とプローブ20の内周面との間には「隙間」が存在する。
【0064】
後述のように、消毒用液は、この隙間を通ってプローブ20の先端側へ導液される。
【0065】
ライトガイド22の先端部(射出部)22bの径は、勿論、プローブ20の先端の内径よりも小さいが、説明中のアクリル樹脂によるライトガイドでは先端部22bの径を0.3mmとした。また、ライトガイド22の入射端22aの(係止用突起を除く部分)の形状は図2(b)に示すように「円形状」である。
【0066】
入射端22aの直径は、前述した事情から1mm以上で3mm以下である必要があるが、説明中の「アクリル樹脂により試作したライトガイド」では上記直径を2mmとした。
【0067】
図3は、ホルダ10の内部の状態を示している。
ホルダ10の内部に設けられる光源装置60は、半導体光源62と、この半導体光源62から放射された光を集光する集光レンズ64と、集光レンズ64と半導体光源62とを所定の位置関係に保持する保持筒66と、この保持筒66を、ホルダ10内に防振的に保持する制振保持手段OL1、OL2とを有し、ホルダ10に対して着脱可能である。
【0068】
制振保持手段OL1、OL2は、化学的に安定(消毒用液による化学作用を受けない)な材質で「振動を良く吸収する低反発の弾性素材」による「Oリング」で、保持筒66の周囲を締めるように設けられ、超音波振動子12の部分で保持筒66を保持している。
【0069】
制振保持手段OL1、OL2を超音波振動子12の部分に位置させるのは、超音波振動子12による振動の節にあたるのが「超音波振動子12」のホルダ長手方向の中心部となるので、この部分で保持筒66を保持することにより「超音波振動が減衰しない」ようにするためである。
【0070】
保持筒66の肉厚部分には、導液路LGが穿設されており、この導液路LGの入り口側は、コネクタCNTを介して、導液管LG1に連結し、導液管LG1は消毒用液供給部3(図1)のポンプ(図示されず)に連結されている。
【0071】
従って、上記ポンプを作動させると、消毒用液は導液管LG1を通って導液路LG内に流入し、図3において、制振保持手段OL1の左側におけるホルダ10と保持筒66との間隙部に供給され、ホルダ10のプローブ20側の「ホーン形状の部分」を満たし、さらにプローブ20とライトガイド22との間の空隙に流入する。
【0072】
このとき、ホルダ10とライトガイド22の間は遊嵌状態であり、ライトガイド22の入射端側におけるホルダ10への係止は「係止用突起221〜224」により行なわれ、係止用突起相互の間に隙間があるので、消毒用液は支障なくプローブ内に流れ込む。
【0073】
なお、消毒用液としては過酸化水素水もしくは次亜鉛素酸水の屈折率は1.33であり、上記ライトガイドの材質であるアクリル樹脂の屈折率は1.49である。また、制振保持手段OL1は、上記の如く供給された消毒用液が、図3の右側へ漏れ出すのを防止する機能を果たす。
【0074】
図4は、半導体光源62と集光レンズ64と、プローブ20に保持されたライトガイド22の入射端22aとの位置関係を説明するための図である。
【0075】
半導体光源62から放射された光は、集光レンズ64の集光作用により収束光とされるが、集光レンズ64と、プローブ20に保持されたライトガイド22の位置関係は、上記収束光がライトガイド22の入射端22aの中央部に集光する(この集光は、消毒用液中において行なわれる。)ように設定されている。
【0076】
半導体光源62として、説明中の例では波長:400〜420nmのレーザ光を放射する半導体レーザを用いている。
【0077】
さて、歯石除去・消毒作業を行うときには、コントロール部5(図1)の操作により超音波振動子12を超音波振動させる。この超音波振動はプローブ10の長手方向へ伝達され、プローブ10の先端部に装着されたプローブ20に伝わる。この状態で、プローブ先端部を歯石に当てることにより、歯石を粉砕して歯から除去することができる。
【0078】
このとき、コントロール部5の操作により液供給手段を動作させれば消毒用液が、上記の如くして、プローブ20の先端部20bから歯石除去を行なっている部分へ供給され、除去された「粉砕状態の歯石」を流しだす。
【0079】
さらに、コントロール部5の操作により、半導体光源62を点灯させると、放射されたレーザ光は、集光レンズ64によりライトガイド20の入射端に集光され、ライトガイド22内を伝送される。このとき、ライトガイド20の屈折率は消毒用液の屈折率より高いので、光はライトガイドの壁面で全反射されつつ射出端側へ導光される。
【0080】
導光されたレーザ光はライトガイド22の射出端から放射されて消毒液中に「ヒドロキシラジカル」を発生させ、発生したヒドロキシラジカルにより歯石除去部の消毒(殺菌・滅菌)が行なわれる。
【0081】
なお、必要に応じて、もしくは所望により、超音波振動子12を駆動することなくヒドロキシラジカルによる消毒のみを行なうことができる。
【0082】
歯石除去・消毒の作業を、複数の人に次々に行うときは、一人に対する処置が終了するごとにプローブを交換し、交換されたプローブはオートクレーブ等による殺菌処理にまわし、このプローブに用いられていたライトガイドは廃棄する。
【0083】
そして、必要な作業が終了したら、プローブと光源装置をホルダからはずし、プローブとホルダを殺菌処理する。
【0084】
即ち、上に説明した歯石除去・消毒装置は、人の歯や義歯に対して、歯石の除去と、歯の消毒を行なう装置であって、プローブ20と、このプローブ20を保持する耐熱性のホルダ10と、このホルダ10の内部を介して、プローブ側へ消毒用液を供給する液供給手段13、LG1、LG2等と、ホルダ10に設けられてホルダ10を振動させる超音波発生手段12等と、プローブ20内に遊嵌するライトガイド22と、ホルダの内部に防振的に設けられ、消毒用液にヒドロキシラジカルを発生させる所定波長領域の光を発光し、発光した光を上記ライドガイドの入力端部に集光照射する光源装置60と、液供給手段と超音波発生手段と光源装置に電力供給を行なう電力供給手段4と、液供給手段と超音波発生手段および光源装置を制御する制御手段5とを有する。
【0085】
そして、超音波発生手段により発生する超音波振動をホルダ10からプローブ20の先端部に伝えて歯石の粉砕を行い、液供給手段により供給される消毒用液をプローブ先端部から歯部へ供給し、供給された消毒溶液に対して光源装置60からの光をライトガイド22により導光して照射することによりヒドロキシラジカルを発生させて消毒を行なう。
【0086】
プローブ20は、硬質の金属材料による中空管状で、ホルダ10に対して水密的に着脱自在であり、ホルダへの着脱部から先端部に向かって内径・外径ともに細くなり、先端部22bにおける外径が1.2mm以下で、ホルダ10に対して交換可能である。
【0087】
ライトガイド22は交換可能であって、消毒用液よりも屈折率の高い樹脂製であり、入射側22aから射出側22bへ向かって円形状断面の径が細くなり、プローブ20の「ホルダへの着脱部」から先端部に亘って、プローブ内周面に対して間隙を隔してプローブに遊嵌して装着されるとともに、入射端22a側において、1以上の周縁部分(係止用突起221〜224)でプローブ20に着脱自在に固定され、入射端22aの直径(2mm)が1mm以上で3mm以下である。
【0088】
光源装置60は、所定波長領域の光を発光する半導体光源62と、この半導体光源から放射された光を、ライトガイド22の入射端22aに向かって集光する集光レンズ64と、集光レンズ64と半導体光源62とを所定の位置関係に保持する保持筒66と、この保持筒66を、ホルダ内に防振的に保持する制振保持手段OL1、OL2とを有し、ホルダ10に対して着脱可能である。
【0089】
また、液供給手段により供給される消毒用液が、光源装置60の保持筒66の肉厚部分に穿設された導液路LGによりプローブ側へ導液され、ホルダ10の、超音波発生手段12よりも「プローブへの着脱部側」は、この着脱部側へ向かって外径が減少するホーン形状である。
【0090】
液供給手段により供給される消毒用液は、過酸化水素水もしくは次亜鉛素酸水で、半導体光源62の発光波長は400nm〜420nmのレーザ光を放射する半導体レーザである。
【0091】
若干付言すると、光源装置における集光レンズ64を「単レンズ」として図示したが、これに限らず、集光レンズを「2枚以上のレンズによるレンズ系」として構成して良いことは言うまでも無く、また、必要な光学特性を得るために、これらのレンズに非球面を用い得ることも当然である。
【0092】
また、詳細を述べなかったが、超音波振動子12への配線は、ホルダの内部側で行なうことができ、コントローラ部5は、制御回路部をホルダ内部に設け、その走査部をホルダ外周面部に設けることができる。
【0093】
プローブの長さは15mm〜50mm程度で適宜に設定でき、ライトガイドの長さもこれに準じて適宜に設定できる。その際、請求項6のように「ライトガイドの長さ」を、使用前もしくは使用後のプローブの長さより大きく、プローブに装着する際に、プローブの長さに合わせて余分な長さを切断して用いることができる。
【0094】
なお、上の図において、ホルダは「直線的な形状」として図示したが直線上であることは必ずしも必要ではなく、「作業がし易い曲線形状」にしても良い。
【0095】
ホルダは、これを長手方向に2分した2つのピースで構成し、これら2つのピースを相互に「螺合」させるようにし、螺合部に超音波振動子を配して、2つのピースの螺子込みによって「超音波振動子を締め付ける構成」とすることができる。
【0096】
このような場合、2つのピースの断面形状(少なくとも螺合部の近傍部分の断面形状)を6角形として、捻じ込みを容易にする形状とすることができる。
【0097】
上記の如く、この発明ではライトガイドを内部に設けられるプローブが「光源装置を保持するホルダ」に対して着脱自在であるので、プローブの交換の際に、交換された新たなプローブに配置されたライトガイドと、光源からの光の集光位置との間の調整は行なわれない。
【0098】
実際的な問題として、上記交換の際にライトガイドの入射面22aの位置と、上記光の集光位置とが、集光レンズのレンズ光軸に直交する方向へ微小距離(加工の精度を考えると通常は、0.3mm程度を見込めば十分であるが、最大でも0.5mm程度である。)ずれることがあり得る。
【0099】
しかし、上記の如く、この発明の装置ではライトガイドの入射面の直径を0.7mm〜3mm(上の例では2mm)と大きくしているので、上記の0.3mm程度、最大でも0.5mm程度のずれが発生しても、光源からの光をライトガイドに有効に取り込むことができる。
【0100】
この場合を上記の実施の形態例の場合についてシミュレーションにより調べた。
図5(a)は、ライトガイドの入射面の中心が光の集光位置に対して「ずれていない状態」のときのライト外部射出端面での光強度分布を示している。
図5(b)は、ライトガイドの入射面の中心が光の集光位置に対して「レンズ光軸直交方向へ0.5mmずれた状態」でのライト外部射出端面での光強度分布を示している。
図5(a)、(b)を比較すれば明らかなように、ライトガイドの入射面22aの位置と、光の集光位置とが、集光レンズのレンズ光軸に直交する方向へ0.5mm程度ずれても、ライトガイド射出面での光強度(同行された光の強度)には殆ど差が生じていない。
【0101】
図6に変形例を2例示す。
【0102】
図6(a)に示す例は、プローブの変形例である。プローブ先端部の外径を小さくすることが加工上困難である場合には、プローブ20Aの先端部20A1を「斜めに削いだ形状」として小径化してもよい。
【0103】
図6(b)に示す例は、ライトガイドの変形例である。この例では、ライトガイド22Aの入射面22A1の面形状を「凸レンズ面形状」としている。このようにすると、光源からの光を「より効率的」にライトガイド内に取り込むことができる。符号221、223、224は図1、図2に於けると同様「係止用突起」を示す。
【符号の説明】
【0104】
6 光源装置
10 ホルダ
12 超音波振動子
20 プローブ
22 ライトガイド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】実開平 5−78209号公報
【特許文献2】特開2008−284312号公報
【特許文献3】特願2007−134831号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯石の除去と、歯の消毒を行なう装置であって、
プローブと、このプローブを保持する耐熱性のホルダと、このホルダの内部を介して、上記プローブ側へ消毒用液を供給する液供給手段と、上記ホルダに設けられて上記ホルダを振動させる超音波発生手段と、上記プローブ内に遊嵌するライトガイドと、上記ホルダの内部に防振的に設けられ、上記消毒用液にヒドロキシラジカルを発生させる所定波長領域の光を発光し、発光した光を上記ライドガイドの入力端部に集光照射する光源装置と、上記液供給手段と超音波発生手段と光源装置に電力供給を行なう電力供給手段と、
上記液供給手段と超音波発生手段および光源装置を制御する制御手段とを、有し、
上記超音波発生手段により発生する超音波振動を上記ホルダから上記プローブの先端部に伝えて歯石の粉砕を行い、上記液供給手段により供給される消毒用液を上記プローブ先端部から歯部へ供給し、供給された消毒溶液に対して上記光源装置からの光を上記ライトガイドにより導光して照射することによりヒドロキシラジカルを発生させて消毒を行なう歯石除去・消毒装置において、
上記プローブは硬質の金属材料による中空管状で、ホルダに対して水密的に着脱自在であり、上記ホルダへの着脱部から先端部に向かって内径・外径ともに細くなり、上記先端部における外径が1.2mm以下で、上記ホルダに対して交換可能であり、
上記ライトガイドは交換可能であって、上記消毒用液よりも屈折率の高い樹脂製であり、入射側から射出側へ向かって円形状断面の径が細くなり、上記プローブの上記ホルダへの着脱部から先端部に亘って、プローブ内周面に対して間隙を隔して上記プローブに遊嵌して装着されるとともに、入射端側において、1以上の周縁部分で上記プローブに着脱自在に固定され、上記入射端の直径が0.7mm以上で3mm以下であり、
上記光源装置は、上記所定波長領域の光を発光する半導体光源と、この半導体光源から放射された光を、上記ライトガイドの入射端に向かって集光する集光レンズと、この集光レンズと上記半導体光源とを所定の位置関係に保持する保持筒と、この保持筒を、上記ホルダ内に防振的に保持する制振保持手段とを有し、上記ホルダに対して着脱可能であることを特徴とする歯石除去・消毒装置。
【請求項2】
請求項1記載の歯石除去・消毒装置において、
液供給手段により供給される消毒用液が、光源装置の保持筒の肉厚部分に穿設された導液路によりプローブ側へ導液されることを特徴とする歯石除去・消毒装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の歯石除去・消毒装置において、
ホルダの、超音波発生手段よりもプローブへの着脱部側は、この着脱部側へ向かって外径が減少するホーン形状であることを特徴とする歯石除去・消毒装置。
【請求項4】
請求項1〜3の任意の1に記載の歯石除去・消毒装置において、
液供給手段により供給される消毒用液は、過酸化水素水もしくは次亜鉛素酸水であり、
上記消毒用液にヒドロキシラジカルを発生させる光の所定波長領域は、350nm〜500nmの範囲、もしくは、700nm〜1000nmの波長領域であることを特徴とする歯石除去・消毒装置。
【請求項5】
請求項1〜4の任意の1に記載の歯石除去・消毒装置に用いられる交換可能なライトガイド。
【請求項6】
請求項4記載のライトガイドにおいて、
ライトガイドの長さが使用前もしくは使用後のプローブの長さより大きく、
プローブに装着する際に、プローブの長さに合わせて余分な長さを切断して用いられることを特徴とするライトガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−75602(P2012−75602A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222631(P2010−222631)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、地域イノベーション創出研究開発事業「レーザー励起型ラジカル殺菌を応用した口腔感染治療器の開発」の委託研究開発、産業技術強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000115728)リコー光学株式会社 (134)
【Fターム(参考)】