説明

歯磨剤用の象牙質細管遮断シリカ材料

歯磨剤組成物において研磨剤または増粘剤として利用し、同時に歯の象牙質における象牙質細管の遮断により象牙質の知覚過敏を軽減する沈積シリカ材料を提供するものである。このような沈積シリカ材料は、十分に小さな粒径を有し、かつ、例えば歯磨剤組成物から歯に塗布するとき、効果的な静電的吸引力および象牙質細管内部での最終的な堆積をもたらすよう所定の金属による処理を行って沈積シリカ材料のゼータ電位特性を調節することで、特定のイオン電荷レベルになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の交互参照]
本出願は、「歯磨剤用の象牙質細管遮断シリカ材料」と題する、2008年8月25日に出願した米国特許出願第61/196,732号の優先権の恩恵を主張し、この米国特許出願の開示は参照により本明細書に全体的に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、歯磨剤組成物において研磨剤または増粘剤として利用する沈積シリカ材料に関し、特に歯の象牙質における象牙質細管の遮断をもたらすような沈積シリカ材料に関する。
【背景技術】
【0003】
シリカ材料は、練り歯磨きといった歯磨剤製品において特に有用であり、研磨剤および増粘剤として作用する。この機能的多様性に加え、シリカ材料、特に非晶質(アモルファス)沈積シリカ材料は、アルミナおよび炭酸カルシウムといった他の歯磨剤用の研磨剤と比べると、フッ化ナトリウムやモノフルオロリン酸ナトリウム等の有効成分に対して比較的高い親和性を有するという利点を有する。特に、歯磨剤におけるこれらの使用に関して、このようなシリカ材料は、歯面を有害に摩耗することなく効果的に歯面を清掃する歯磨剤を使用者にもたらすため、良好な清掃性と適度な象牙質磨耗レベルとを同時に示す。練り歯磨き組成物としてフッ化物との高親和性のある増粘剤をもたらす能力は、消費者および製造者等にも大きな利点がある。
【0004】
歯の過敏症は、特に一部の人々の誤った食生活および歯の清掃方法によるエナメル質防護の喪失の観点から、歯磨剤分野における近年の課題となっている。このように、シリカ材料が歯磨剤製品にもたらす上述の研磨および増粘効果に加え、特定の専用歯磨剤製品の考案者は、歯の過敏症を抑制するのに有用な特定の物質をある程度組み入れている。特に、練り歯磨きは、温熱または冷熱ならびに多糖甘味等による付加的な活性刺激に対する歯の過敏症を抑制し、このような望ましくない感覚に関する疼痛および/または不快感を抑制するよう設計されてきた。
【0005】
歯の過敏症の原因は正確には分かっていないが、過敏症は、象牙質細管の露出によるものと考えられている。これらの細管は、流体および細胞組織を含んでおり、歯髄から外方に延び、エナメル質の表面または境界まで達する。ある理論によれば、年齢、適切な口腔衛生の欠如および/または病状が、歯の表面におけるエナメル質喪失または歯肉後退に繋がり得る。エナメル質喪失または歯肉後退の重症度に基づいて、象牙質細管の外側部分が口腔の外部環境に露出することになる。これら露出した象牙質細管に、所定の刺激、例えば熱いまたは冷たい液体に触れるとき、歯液が膨張または縮小することで歯に圧差が生じ、発症者に不快感および場合によっては疼痛を引き起こし得る。
【0006】
このような過敏症の亢進に対する従来の取り組みとして、脳に痛覚を伝達する原因となるカリウム/ナトリウムのイオンチャネルポンプの途絶に傾注されてきた。特定の科学的理論に依ることを意図することなく、一般に、このような化学的メカニズムは、歴史的に歯磨剤の調合組成に硝酸カリウムを含有することで使用者にもたらされてきた。しかし、この選択肢は、単に身体が痛覚を伝達する能力を妨げる、つまり疼痛は生じているが、使用者は実際には知覚しない。この錯覚効果は一時的で時間と共に喪失するため、効果持続のためには硝酸カリウム含有練り歯磨きの持続的な利用が必要である。過敏症を緩和する他の作用は、露出した象牙質細管を閉塞することが中心となる。このように、所定タイプのシリカ材料といった材料により象牙質細管を被覆または充填することで象牙質細管の閉塞を達成する。しかし、この「閉塞材料」の調製において、注目は、概して粒径を、象牙質細管の開口部を少なくとも部分的にカバーするサイズとなるように管理することに集中されてきた。しかし、多くの場合において、粒径に基づいて選択した閉塞材料は、満足のいく知覚過敏の遮断能力を得るのに十分な閉塞を生ずるには不十分である。一般に、閉塞材料は歯面に対する相性がよくなく、したがって、発症者の象牙質細管内、象牙質細管上、または象牙質細管の周囲に十分な期間留まることで過敏症の程度を、十分な疼痛および/または不快感の制御、予防、ならびに減少に対して必要な程度にまで減少させる適切な粘着能力が欠如している。例えば、標準の沈積シリカは、(目標とする象牙質細管内におけるこのような閉塞に適する小さな粒径で供給した場合)おそらく一時的に閉塞するが、例えば使用者がブラッシング後に発症者の口を水ですすいだ場合、容易に除去されてしまう。このように、従来技術における新たなシリカ材料に関しては、(少なくとも複数のフッ化物原料に関して)適切なフッ化物親和性、目標とする象牙質細管内における適切な導入に効果的な小さな粒径、象牙質細管内に導入したときの長期に安定するのに適正な静電荷量、ならびに使用者の口腔内に導入する間に歯および象牙質細管内に転移し、また典型的な歯のブラッシングの間に発症者の歯面に接触する能力を示す必要がある。しかし、今日まで、このように有益な結果をもたらすシリカ材料は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,967,563号明細書
【特許文献2】米国特許第4,122,160号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ralph K. Iler, The Chemistry of Silica: Solubility, Polymerization, Colloid and Surface Properties and Biochemistry of Silica, pp. 659-672
【非特許文献2】Oral Hygiene Products and Practice, Morton Pader, Consumer Science and Technology Series, Vol. 6, Marcel Dekker, NY 1988, p.200
【非特許文献3】Greenwood, R. “Review of the measurement of zeta potentials in concentration aqueous suspensions using electroacoustics” Advances in Colloid and Interface Science, 2002, 106, 55-81
【非特許文献4】Benning, G.; Quate, F. F. Phys. Rev. Lett., 56, 930 (1986)
【非特許文献5】Douherct et al., Progress in Photovoltaics: Research and Applications, 15, 713, 2007
【非特許文献6】S. Manne et al., Science, 251, 183 (1991)
【非特許文献7】B. Drake et al., Science 243, 1586 (1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本実施形態の大きな利点は、付加化合物処理済み沈積シリカ材料が示す、目標とする象牙質表面に対する十分な親和性であり、これにより、象牙質細管内部への進入および充填を可能にする象牙質表面上に長期間の付着を可能にする点である。実施形態の他の利点は、歯磨剤組成物中にこのような付加化合物処理済み沈積シリカ材料を、研磨剤または増粘剤として含み、また発症者の歯をブラッシングする際に、このような付加化合物処理済み沈積シリカ材料が歯磨剤から歯面に転移し、目標とする象牙質細管を閉塞する能力である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、1つの実施形態において、歯磨剤は、粒子が1〜5ミクロンの平均粒径を有し、また粒子表面の少なくとも一部に付加化合物を存在させて付加化合物処理済み沈積シリカ材料を形成する、沈積シリカ材料を備え、付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して10%以上のゼータ電位を示す構成とする。さらに、歯磨剤は、増粘剤、研磨剤、または増粘剤および研磨剤の双方の作用を行うものとして構成した付加化合物処理済み沈降シリカ材料、および溶媒、防腐剤、界面活性剤、ならびに研磨剤または増粘剤といった、付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの他の成分を備える。
【0011】
さらに、本発明は、哺乳類の歯を処置する方法であって、
a)粒子が1〜5ミクロンの平均粒径を有し、また粒子表面の少なくとも一部に付加化合物を存在させて付加化合物処理済み沈積シリカ材料を形成し、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して10%以上のゼータ電位低下を示す構成とした沈積シリカ材料を備える歯磨剤を準備するステップと、
b)歯磨剤を哺乳類の歯に塗布するステップと、
c)ステップbの歯磨剤を塗布した歯をブラッシングして、付加化合物処理済み沈積シリカ材料により対象となる象牙質細管を閉塞するステップと
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】象牙質細管における閉塞能力に関する、管理試料の歯磨剤親和性テストの結果を示す、一連の顕微写真である。
【図2】象牙質細管における閉塞能力に関する、比較1の歯磨剤親和性テストの結果を示す、一連の顕微写真である。
【図3】象牙質細管における閉塞能力に関する、例6の歯磨剤親和性テストの結果を示す、一連の顕微写真である。
【図4】象牙質細管における閉塞能力に関する、比較4の歯磨剤親和性テストの結果を示す、一連の顕微写真である。
【図5】象牙質細管における閉塞能力に関する、比較5の歯磨剤親和性テストの結果を示す、一連の顕微写真である。
【図6】象牙質細管における閉塞能力に関する、比較2の歯磨剤親和性テストの結果を示す、一連の顕微写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用した、割合、百分率および比率は、他に明示しない限り、重量に関してのものを表す。本明細書に引用する全ての文献は、参照により組み込まれるものとする。
【0014】
歯磨剤組成物に使用する沈積シリカ材料は、哺乳類の歯片に対する親和性を向上させるよう改良し、従って歯面に強固に付着し、象牙質細管に対してより多くの閉塞をもたらす。理論に制限されることなく、沈積シリカ材料と歯との間の向上した親和性は、沈積シリカ材料表面における負電荷の減少による結果であり、この減少はシリカ表面の少なくとも一部分に付加化合物が存在することにより達成される。
【0015】
シリカの表面電荷およびこの表面電荷の操作は、多少論争があるものの、十分に研究および調査された領域である。(例えば、非特許文献1(Ralph K. Iler, The Chemistry of Silica: Solubility, Polymerization, Colloid and Surface Properties and Biochemistry of Silica, pp. 659-672)を参照)。多少の付加化合物の使用も以前から特許文献、例えばワソン(Wason)氏による特許文献1(米国特許第3,967,563号)およびワソン(Wason)氏による特許文献2(米国特許第4,122,160号)、において議論されているが、このようなシリカ材料は、単に歯磨剤用の大きな粒径を呈する透明な研磨剤を生成する性質を生ずるよう、金属付加化合物で付加化合物処理していた。
【0016】
従って、特定の実施形態において、沈積シリカ材料は、1〜5ミクロンの平均粒径を有し、表面の少なくとも一部に存在する付加化合物を有することで付加化合物処理済み沈積シリカ材料を形成し、この場合、付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物が存在しない同様の構造の沈積シリカ材料と比較して10%以上のゼータ電位の低下を示す。
【0017】
1つの実施形態において、付加化合物は金属元素である。他の実施形態において、付加化合物は、遷移金属およびポスト遷移金属から選択した金属元素である。適切な金属元素の例としては、アルミニウム、亜鉛、スズ、ストロンチウム、鉄、銅、およびこれらの混合物がある。付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、沈積シリカ材料の形成中に水溶性の金属塩の形態で付加化合物を付加することにより形成される。酸性条件下で可溶のあらゆる金属塩が好適であり、例えば、金属硝酸塩、金属塩化物、金属硫酸塩等がある。
【0018】
1つの実施形態において、付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物物が存在しない同様の構造の沈積シリカ材料と比較して、15%以上のゼータ電位の低下を示す。他の実施形態において、ゼータ電位の低下は20%以上である。さらに他の実施形態において、ゼータ電位の低下は25%以上である。
【0019】
1つの実施形態において、付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、以下のプロセスにより調製する。アルカリケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムの水溶液を、確実に均質混合物にするのに適した混合手段を備える反応器内に投入する。反応器内のアルカリケイ酸塩水溶液を約65℃〜約100℃の間の温度まで予加熱する。アルカリケイ酸塩水溶液は、およそ8.0〜35重量%、例えば約8.0〜約20重量%、のアルカリケイ酸塩濃度を有する。アルカリケイ酸塩は、約1〜約3.5、例えば約2.4〜約3.4、のSiO:NaO比を有するケイ酸ナトリウムとすることができる。反応器に投入したアルカリケイ酸塩の量は、バッチに用いる全ケイ酸塩の約5重量%〜約100重量%とする。随意に、電解液、例えば硫酸ナトリウム溶液を反応媒体に添加することができる。さらに、この混合は、高剪断条件下において行うことができる。
【0020】
このとき反応器には、同時に、(1)酸性化剤または酸、例えば硫酸の水溶液、(2)反応器内におけるアルカリケイ酸塩と同じ化学種を含有する水溶液の追加した量を添加し、このような水溶液を約65℃〜約100℃に予加熱する。酸性化剤を反応器に導入するに先立ち、付加化合物を酸性化剤溶液に添加する。付加化合物は、酸性化剤溶液の1リットルに対するモル濃度が約0.002〜約0.185、好適には約0.074〜約0.150となるよう、酸性化剤溶液と予め混合する。随意に、付加化合物処理済み沈積シリカ材料において高い付加化合物濃度が必要な場合、酸の代わりに付加化合物の水溶液を用いることができる。
【0021】
酸性化剤溶液は、好適には約6〜35重量%、例えば約9.0〜約20重量%、の酸性化剤濃度を有するものとする。ある時間の経過後、アルカリケイ酸塩の流入を停止し、所望のpHに達するまでは酸性化剤溶液の流入させる。
【0022】
反応器バッチは、一定のpHに維持した状態で、設定した温浸温度において、反応器バッチを5分〜30分の間熟成または「温浸」することができる。温浸の完了後、反応バッチを濾過および水で洗浄して過剰の副生成物の無機塩を除去し、この除去は、シリカ濾過ケーキからの洗浄水が約2000μmhos未満の導電率を示すまで行う。シリカ濾過の導電率は濾過ケーキにおける無機塩副生成物の濃度に比例するため、つぎに、濾液の導電率を2000μmhos未満に維持することによって、濾過ケーキ内の無機塩、例えばNaSOを所望の低濃度で得ることができる。シリカ濾過ケーキを水でスラリー状にし、つぎに、任意な普通の乾燥方法、例えば噴霧乾燥で乾燥させ、約3重量%〜約50重量%の水分を含む付加化合物処理済み沈積シリカ材料を生成する。付加化合物処理済み沈積シリカ材料をミル加工(製粉)することで約1μm〜5μmの所望の粒径とすることができる。このような粒径は、目標とする歯磨剤組成物における有利な研磨剤および/または増粘特性を生ずるとともに、象牙質細管の所望の閉塞を行い、被験者に上述のような疼痛および不快感を軽減する。
【0023】
本発明の開示目的のために、用語「歯磨剤(dentifrice)」は、非特許文献2(Oral Hygiene Products and Practice, Morton Pader, Consumer Science and Technology Series, Vol. 6, Marcel Dekker, NY 1988, p.200)で定義された意味を有し、この非特許文献2を参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。すなわち、「歯磨剤」は、「…歯ブラシでアクセス可能な歯の表面を清掃する物質である。歯磨剤は、主成分として水、湿潤剤、結合剤、香料、および微粉末化した研磨剤から構成され、…歯磨剤には、歯に虫歯予防剤を送給するような研磨剤含有調剤の形態と考えられる。」である。歯磨剤組成物には、歯磨剤組成物に包含するに先立ち溶解させる必要のある成分(例えば、フッ化ナトリウムのような虫歯予防剤、リン酸ナトリウム、サッカリンのような香料)を含む。
【0024】
歯磨剤組成物に組み込むとき、付加化合物処理済み沈積シリカ材料は歯磨剤自体の総重量の0.01〜約25重量%の量とすることができる。事実上、付加化合別処理済み沈積シリカ材料が研磨性質を有する場合、0.05〜約15重量%の量とすることができる(研磨剤が単独で作用する、またはブラッシングを行った後に象牙質細管の閉塞を同時に行うブースタタイプとして作用する)。付加処理済み沈積シリカ材料が粘度調整剤(増粘剤)である場合、0.05〜約10重量%の量とすることができる。ゼータ電位変更のために適切な金属付加物が存在する付加処理済み沈積シリカ材料は、粘度調整および長期象牙質細管の閉塞の両方を同時に行う。しかし、付加処理済み沈積シリカ材料は、必ずしも、象牙質細管閉塞材料以外の他の特性は必須ではない。このように、その量は歯磨剤組成物の上述した範囲とすることができるが、材料は、歯磨剤に粘性または研磨性を付与せずに、単に象牙質細管閉塞のみ付与するようにすることができる。このような組成物としては、必要に応じて、適切な他の脱感作材料、一例として硝酸カリウム塩を含有させることができる。
【0025】
上述の組成および方法は、以下の限定されない実施例を参照することで、さらに理解されるであろう。
【実施例】
【0026】
付加化合物を沈積シリカ材料に加えることで哺乳類の歯に対するシリカの親和性の効果を検証するために、実施例を調整した。パイロットプラント規模で調製したバッチの第1セットにおいて、金属付加物Alを含有するいくつかの試料を調製するとともに、表1に示すように、使用した1つの比較用試料には極微量のアルミニウムまたは他の金属のみ包含した。以下の試料を次の通りに調製した。
【0027】
反応剤の量および反応剤の条件を以下の表1に記載する。まず、19.5重量%のケイ酸ナトリウム(SiO:NaOのモル比が3.32である)を含む水溶液を67Lと、水を167Lとを、30Hzの再循環および60RPMの攪拌を伴って、87℃に加熱した400ガロンの反応器に投入する。次に、硫酸水溶液(17.1重量%濃度を有し、以下で表1に明示の酸性溶液あたりの濃度においてアルミニウムを含む)およびケイ酸ナトリウム水溶液(19.5重量%濃度で、ケイ酸ナトリウムは3.32のモル比を有し、水溶液を85℃まで加熱する)を、それぞれ12.8L/分(ケイ酸塩に対して)および1.2L/分(硫酸に対して)の速度で47分間同時に加える。47分後にケイ酸塩の添加を停止し、酸の添加は反応器バッチのpHが5.5に低下するまで継続する。次に、バッチ温度を10分間87℃に維持し、バッチを温浸させる。次に、シリカバッチを濾過および洗浄することで約1500μmhosの導電率を有する濾過ケーキを形成した。次に、濾過ケーキを水でスラリー化し、噴霧乾燥し、ジェットミル加工またはエアーミル加工による適切な技術により噴霧乾燥生成物を粒径が約3μmの微細化した。比較用の沈積シリカ(比較2)を、例6の材料をハンマーミル加工することで平均粒径がおよそ10μmとなるよう調製する。次に、以下の表1に列挙した濃度で、いくつかの異なる金属酸化物を存在させたものを検査した。
【表1】

【0028】
象牙質細管閉塞および他の特性に関する本発明材料の分析
他に明示しない限り、本明細書に記載する様々なシリカ材料を以下の通りに測定した。
【0029】
シリカのCTAB外側表面積は、シリカ表面にCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)が吸着することで決定され、過剰分は遠心分離により分離し、界面活性剤電極を用いたラウリル硫酸ナトリウムによる滴定により決定した。シリカの外面は、吸着したCTABの量から決定した(吸着前後でCTABを分析する)。
【0030】
特に、約0.5gのシリカを正確に計量し、100.00mlのCTAB溶液と共に250mlビーカーに配置し(5.5g/L、pHを9.0±0.2に調整する)、電動撹拌プレートで混合し、10,000rpmで15分間遠心分離した。1.0mlの10%トリトンX−100(Triton X-100)を100mlビーカー内の5.0mlの上澄み液に加える。0.1N HClでpHを3.0〜3.5に調整し、界面活性剤電極(ブリンクマン社(Brinkmann)製SUR15O1−DL)を用いて0.0100Mラウリル硫酸ナトリウムにより試料を滴定し終点を決定した。
【0031】
オイル吸着値は、擦り合わせ方法を用いて測定した。この方法は、硬いパテ状ペーストが形成されるまで滑面上でヘラを用いて擦り付けることにより亜麻仁油をシリカに混合する原理に基づく。延ばし広げるときカールするペースト混合物を得るのに必要な油の量を測定することで、シリカのオイル吸着値を計算することができ、この値はシリカ収着容量を飽和するまでのシリカの単位重量あたりのオイル量を示す。より高いオイル吸着レベルは沈積シリカのより高次の構造を示し、同様に、低い値は沈積シリカが低次構造であるとみなされることを示す。オイル吸着値の計算は、次式により行う。
【数1】

【0032】
ペンシルバニア州ブースウィンのホリバインスツルメンツ(Horiba Instruments, Boothwyn, Pennsylvania)から入手可能な、モデルLA−930(またはLA−300または同等機器)であるレーザー光散乱機器を用いて平均粒径を決定した。
【0033】
10.0グラムの試料を型番30の1クォート・ハミルトンミキサー(Hamilton mixer Model No. 30)のカップ内に0.1グラム単位まで計量し、およそ170mlの蒸留水または脱イオン水を加え、少なくとも7分間スラリーを攪拌することで、シリカの325メッシュ残留物%を、44ミクロンまたは0.0017インチの開口(ステンレス鋼金網)を有する、米国標準篩の325番(U.S. Standard Sieve No. 325)を利用して測定した。混合物を325メッシュスクリーンに移し替え、スプレーヘッドをスクリーンから約4〜6インチ上方に保持して20psiの圧力で2分間スクリーン上に水を直接噴霧した。依然として存在する残留物を時計皿に移し替え、150℃以上でおよそ15分間乾燥させた後、冷却し、化学天秤上で計量した。
【0034】
従来のpH感応電極を用いて、反応混合物(5重量%スラリー)のpH値をモニタすることができる。
【0035】
輝度を測定するため、試料を滑面ペレット内に押し込み、テクニダイン社製輝度計S−5/BCにより評価した。この機器は、45°の角度で試料を照らし、0°において反射光を観測する、デュアルビーム光学系を有する。
【0036】
以上より生産した材料に対し、これらの特性の測定値を保証し、表2に示した。
【表2】

【0037】
ゼータ電位は、溶液中に懸濁した粒子の外面における電荷の測定値である。同一電荷のゼータ電位を有する粒子は互いに反発する傾向があり、反対電荷のゼータ電位を有する粒子は互いに引き寄せる傾向がある。歴史的に、ゼータ電位は微量電気泳動法により測定されてきたものであり、この場合、電界を分散粒子全体に印加し、反対電荷の電極に向かって移行する粒子の速度を測定する。反対電荷の電極に向かってより高速で移動する粒子は、表面上で増大する帯電量となる傾向がある。代案として、界面動電音波振幅(ESA)法を用いてゼータ電位を測定することができる。ESAは、電気音響法を用いて粒子の界面動電特性を計測する。高周波振動電界を分散粒子に印加する。印加した電界により表面における電荷に比例して、粒子が振動する。粒子が一方向に移動するとき、粒子が変位する液体は他方の側に移動する。粒子と液状媒体との間に濃度差が存在する場合、移動粒子によって変位する液体により、電極および液分布の界面に音波を発生する。次に、発生した音波を計測することができ、波の強度をゼータ電位の大きさに関連付ける。通常、pH値の範囲にわたりゼータ電位を計測することで、懸濁粒子の表面電荷がいかに変動するかの指標をpHの関数として得る(非特許文献3(Greenwood, R. “Review of the measurement of zeta potentials in concentration aqueous suspensions using electroacoustics” Advances in Colloid and Interface Science, 2002, 106, 55-81)を本明細書に参照することにより組み込むものとする)。比較1および例1〜例6のゼータ電位を計測し、結果を以下の表3に表記する。表3に示すように、シリカの表面における負電荷(ゼータ電位により計測)は、歯磨剤のpH(すなわち約7〜約9の間)において例6の方が比較1よりも低かった(比較および例1〜例10は、ESA法によるゼータ電位分析のため、コロイド測定LLCシステム社に送った)。
【表3】

【0038】
金属付加化合物はシリカ表面における負電荷の量を減少させる効果を有することが観察された。
【0039】
次に、原子間力顕微鏡を用いて、上述したように調製したシリカとウシの歯(全哺乳類の歯に類似している)との親和性を計測することで、付着力を計測した。この状況における原子間力顕微鏡(AFM)の使用自体、新たな手法である。20年以上にわたるシリカの初期開発(非特許文献4[Benning, G.; Quate, F. F. Phys. Rev. Lett., 56, 930 (1986)]参照)において、AFMは、マイクロエレクトロニクス(例えば非特許文献5[Douherct et al., Progress in Photovoltaics: Research and Applications, 15, 713, 2007])、化学(例えば非特許文献6[S. Manne et al., Science, 251, 183 (1991)])、および特に生物化学(特に非特許文献7[B. Drake et al., Science 243, 1586 (1989)]を参照)といった異なる分野を含む、多岐にわたる技術分野において用いられてきた。AFM法の多用性は多くの要因に起因するが、とりわけ、非光学的顕微鏡、例えば電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡(「EM」または「TEM」)および走査型電子顕微鏡(「SEM」)といったとは異なり、AFMは真空状態や試料の特別な処置(材料導電層によるスパッタリングまたはめっき)を必要としない。また、AFMは、正確な三次元測定および画像化行うことができる能力も有する。
【0040】
AFM用の試料調製は、オングストローム耐久性タブレットプレス機(3分のホールド時間で40,000lbs.)を用いて、1.25インチのタブレットになるようシリカを圧縮する工程を有する。次に、両面接着テープを用いて、生成したタブレットを15mmのAFM標本ディスク上に取り付ける。調製試料は、AFMのX−Yステージにおいて、ステージに直接配置した磁気試料ホルダにまたは真空チャックのいずれかにより取り付ける。
【0041】
ウシの歯は、インディアナ歯科大学(Indiana University School of Dentistry)からチモール水溶液に梱包したものを入手した。使用に先立ち、これらをオートクレーブで滅菌し、エタノール内に保存した。切断または粉砕する前に、これら歯を乾燥した。ドレメル400XPR回転ツール(Dremel 400 XPR rotary tool)におけるドレメル#191高速カッタ(Dremel #191 High-Speed Cutter)によりウシの歯をやすりがけすることでAFMチップ(DNP型、カンチレバーA、k=0.58N/m nom.)を調製した。単独の銅フィラメント(Hex-Wix Fine Braid solder wick, #W76-10)を用いて、カンチレバーの端部にエポキシ(Elmers Pro Bond Super Fast Epoxy Resin)の小液滴を滴下載置した。銅フィラメントの分離片を用いて、適切に整形された歯の粒子(ほぼ球体で、直径はおよそ20〜30μm)を選択し、エポキシ内に載置した。室温で一晩AFMチップを乾燥させた。
【0042】
AFMチップを標準チップホルダ(ビーコ社製、モデル#DCHNM、カンチレバーホルダ)または流体チップホルダ(ビーコ社製、モデル#DTFML−DD、ダイレクトドライブ流体カンチレバーホルダ)に載置し、AFMの走査型プローブ顕微鏡(SPM)ヘッドに設置した。全ての測定は、製造業者の使用説明に従い、振動隔絶用の防音フード内に取り付けたデジタルインストルメント社製のAFMディメンジョン3100を用いて行った。ソフトウェアバージョン4.32r3のナノスコープIIIaを用いて機器を制御した。全ての未処理力曲線データをV単位で出力し、表計算においてnNの力が得られるよう変換した。ビーコ社製ディメンジョン3100(Veeco Dimension 3100)のユーザーズマニュアルに記載の次式を用いて変換を実行した。
[数2]
力(nN)=偏向(V)×偏向感度(nm・V−1)×k(nN・nm−1

ここにおいて、偏向は力曲線上で測定した偏向であり、偏向感度は偏向の傾きとチップが試料に接触している間のZ電圧との比であり、kはカンチレバーの公称ばね定数である。
【0043】
空気環境および液体環境の双方において測定を実施した。液体環境において、AFMチップを保持するのに液体チップホルダを用いた。異なるAFMチップのばね定数の違いおよび/またはAFMチップに付着したウシの歯断片の大きさおよび形状の違いから生じ得る偏差を排除するため、実施の実験において全ての測定用に同一のAFMチップを用いた。比較1および例6で調製したシリカを評価した。分かり易くするため、比較用の付着力を100パーセントに設定し、例における値をこれに従って調整した。結果を表4に示す。
【表4】

【0044】
空気中および溶液中で測定した場合、アルミニウム付加化合物を含む本発明による例6がウシの歯断片に対してより大きな付着力を有することが観察された。
【0045】
これら作用が、まさにカンチレバーチップ上の歯の粒子とシリカペレットとの間の吸引力の結果であることを確証するものであることをさらに検証するため、市販のAFMチップを用いて調査を行った。象牙質細管開口が表面に対してほぼ90°の向きに指向する状態でおよそ1mm×1mmのウシの歯を分割した断片をサブストレートとして用いた。2個の異なるカンチレバー、すなわち一方は5μmのSiO球状ビーズに加工し(NovaScan社製のPT. SiO2. SI.5)、他方は5μmのAl球状ビーズに加工した(NovaScan社製のPT. CUST. SI)、カンチレバーを選択し、親和性の測定を実行した。これら測定の結果を表5および表6に示す。空気中および溶液中の両方において、アルミナ粒子の使用により、シリカ粒子の使用よりも改善された親和性が観察された。注目すべきは、異なるチップを利用して表4、表5および表6のそれぞれにおける被検体のAFMを測定し、このようなチップの相違により明確に異なる結果が生じたことである。
【表5】

【表6】

【0046】
付加化合物の装填レベルの作用を調査するため、付加化合物の含有量の増加レベルを調製したシリカ試料を用いて検討を加えた。これらの試料の物理的分析および化学的分析を表1および表2において要約し、AFM親和性の調査の結果を表6に示した。例6の材料はウシの歯を変性したAFMチップに対してより大きな親和性を示し、一般にアルミニウム付加化合物の添加はシリカと歯の粒子との間の親和性を向上することが観察された。
【0047】
異なる付加化合物の性能を調査するため、以下のプロセスに従って一組の試料セットを調製した。410mLのケイ酸塩(13.3%、1.112g/ml、3.32MR)を反応器に加え、300RPMで攪拌しながら85℃まで加熱した。次に、ケイ酸塩(13.3%、1.112g/ml、3.32MR)および硫酸(11.4%、1.078g/ml)を同時に、82.4mL/分および24.8mL/分にて47分間加えた。47分後、ケイ酸塩の流動を停止し、酸の流動を持続した状態でpHを5.5に調整した。一度pHが5.5に達することで、バッチを90℃で10分間温浸することができる。温浸の時間が完了した後、濾過し、およそ6Lの脱イオン水を用いて洗浄し、105℃で一晩乾燥した。
【0048】
次に、表7に記載の濃度において、いくつかの異なる金属酸化物の存在下でシリカ試料を試験した。これらの材料におけるいくつかの他の物理的性質も測定し、結果を表8に示した。
【表7】

【表8】

【0049】
試料をペレット内にプレスし、上述のAFM法にて分析した。金属付加化合物を含まない(または極微量の付加化合物のみ含む)比較のシリカ材料と比べて、金属付加化合物を含むシリカ材料が増大した付着力を示すことが観察された。1.4%のCu、3.6%のSn、および2.0%のAlを有する特定のシリカ材料において、全て、付加化合物を含まない比較3のシリカよりも大きな付着力を示した。
【表9】

【0050】
AFM親和性測定法による観察を支持する追加データを集めるため、溶液親和性試験により追加の検査を行った。
【0051】
可撓性シャフトおよび#545ダイアモンドホイールを有するドレメル400XPRを用いて、ウシの歯を長手方向に切断した。次に、#8193酸化アルミニウム砥石を有する同じドレメル(Dremel)を用いて、歯の表面からエナメル質を削り取り、象牙質を露出させた。象牙質が露出した後、200および400の粗粒紙やすり(マクマスター・カー社製炭化ケイ素紙やすり)を用いて研磨し、表面を滑らかにした。次に、50%シリカ微粉(USシリカ社製)スラリーを用いて象牙質を研磨した。次に、脱イオン水を用いてすすぎ、炭酸カルシウム(HUBERCAL[登録商標] 950)の50%スラリーを用いて再度研磨した。研磨後、0.5M HCl溶液内で歯を2分間超音波に当て、脱イオン水によりすすいだ。
【0052】
テフロン(商標登録)テープを長手方向に半分に裁断し、2個の露出部分および1個の非露出部分を生ずるよう研磨した歯の中央に巻きつけた。試験の間、非露出部分を比較用のコントロール(対照)として用いた。ピンセットを用いて歯の側面を把持し、5に設定したトーマス磁性モデル15攪拌機で4分間攪拌したシリカの水性スラリー(10.0gのシリカ、150mLのビーカー、90mLの脱イオン水)に浸漬した。この間、シリカ粒子の対向流動に象牙質の向きを合わせて、歯をスラリー中で動かした。混合した後、歯を溶液から取り出し、500mLの噴出式ボトルを用いて、2秒間、脱イオン水にてすすいだ。すすぎステップの後、切断した歯を室温において乾燥させた。乾燥した後、テフロン(商標登録)テープを慎重に剥がし、SEMを用いて歯を分析した。
【0053】
溶液親和性試験のため、比較1の試料と例6の試料との両方を評価した。試験を数回繰り返し、代表的結果を図2(比較1)および図3(例6のシリカ)に示した。図2および図3において、画像の左側は歯の非露出部分を、画像の中央は非露出部分と露出部分との境界を、画像の右側は歯の露出部分を示している。
【0054】
例6のシリカ(2%のアルミニウム付加化合物)で処理した歯が付加化合物を用いずに生成した比較1に比べて大きな表面被覆率を有することが観察された。溶液親和性試験のこれらの結果は、哺乳類の歯において付加化合物を有するシリカがより効果的に象牙質細管を閉塞するというAFM親和性試験方法の観察と一致する。
【0055】
歯磨剤組成物およびこれに接する歯面の分析
次に、以下の表10に記載の試料に従い、上述の例から選択した本発明の例を歯磨剤組成物に組み込んだ。
【表10】

*ZEODENT(登録商標)およびZEOTHIX(登録商標)製品は、J.M.ヒューバー社(J. M. Huber Corporation)から入手可能な沈積シリカ材料である。
【0056】
次に、これらの組成物の増粘性を分析することで、沈積シリカ研磨剤(Zeodent 113)を含んだ場合に小さな粒径の本発明の材料が目標とする歯磨剤組成物に効果的な粘度調節をもたらすかどうかを測定した。粘度の測定値を表にし、以下の表10に示した。このような結果は、本発明の金属付加化合物処理済み沈積シリカ材料を利用することで増粘性を欠くことは無いことを示している(以下に記載のように、間隔ごとに全ての組成物において粘度を測定したわけではない)。
【表11】

【0057】
本発明による沈積シリカ材料が目標とする象牙質細管を閉塞する能力、ならびにこのような材料が歯磨剤組成物から目標とする歯面(および最終的には歯面における象牙質細管内)に転移する能力に対する効果的な粒径を決定するため、上述と同様の溶液親和性試験ではあるが、歯磨剤(上記の表9からの)を2グラム用いて被検体として処理したウシの歯に1分間ブラッシングした後の結果(以下、「歯磨剤親和性試験」と称する)としての試験を実施した。上述したのと同様の溶液親和性試験に関しては、登録商標TEFLON(デュポン社)テープの半インチ片を長手方向に半分に切断し、また歯の中央部に巻きつけることで、確実に3個の異なる部分、つまり2個の露出部分および1個の非露出部分、を形成した。非露出部分は、試験において内部標準とした。
【0058】
この歯磨剤親和性試験により、5個の試料、つまり1個のコントロール、比較1、例6、比較4、および比較5、を評価した。図1〜図5は、歯磨剤親和性試験の結果を示している。必須の歯磨剤により、1分間歯の小片をブラッシングした(オーラル−B、軟毛、標準ヘッドの歯ブラシ)。ブラッシング後、脱イオン水により、歯に目視できる残留物がなくなるまで歯をすすいだ(およそ10秒)。
【0059】
図面の詳細な説明
提示した図1〜図6の各々に関し、画像を以下のように配置した。1)画像の左側は歯の非露出部分の画像を示す、2)画像の中央は非露出部分と露出部分との境界の画像を示す、3)画像の右側は歯の露出部分の画像を示す。
【0060】
これら図1〜図6に示した画像から、例6(図3参照)は、コントロールおよび比較と比べて、本発明による沈積シリカ材料が、象牙質表面に対して、ならびに象牙質細管上および象牙質細管内部にわたり、より大きな親和性および被覆状態を視覚的に示すことが分かる。このデータは、AFMを用いて得られた、適用したシリカが歯の象牙質細管の閉塞に極めて適しているデータ、および同様の現象を例証する溶液親和性試験にもはっきりと相関する。図1および図2は、この種の被覆がほとんど無いことを示す。図4および図5は、図1および図2よりも広範囲の被覆を示す。さらに、より小さな粒径の例(図3〜図5参照)は、図6(より大きな粉砕粒度の金属付加化合物で付加化合物処理済みのシリカ粒子)が示すよりも明らかに広範囲の被覆を示す。図6で示される金属付加化合物では、被検体の象牙質細管に効果的な被覆をもたらすには粒径が大き過ぎ、象牙質表面に付着していることが観察されるだけである。図6において、大きな粒子例とともに若干の微粒子が存在して若干の象牙質細管内に進入するものがあるが、粒子の大多数は、何らかの有益な象牙質細管充填効果を得るには過大である。特に、図6は、適切な粒径配分であれば、多量のシリカ材料が象牙質細管に付着堆積し、また知覚過敏を軽減するよう象牙質細管を充填する結果が得られることを示している。
【0061】
本発明を特別な実施形態につき詳細に記載したが、当業者であれば、上述の説明を理解して、これら実施形態の代替、改変、および等価的な実施形態を容易に着想することができるであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびこれらの等価物であると認識すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が1〜5ミクロンの平均粒径を有し、また粒子表面の少なくとも一部に付加化合物を存在させて付加化合物処理済み沈積シリカ材料を形成する、沈積シリカ材料であって、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して10%以上のゼータ電位低下を示すものとした、ことを特徴とする沈積シリカ材料。
【請求項2】
請求項1に記載の沈積シリカ材料において、前記付加化合物は、金属元素を含むものとしたことを特徴とする沈積シリカ材料。
【請求項3】
請求項2に記載の沈積シリカ材料において、前記金属元素は、遷移金属またはポスト遷移金属から選択したことを特徴とする沈積シリカ材料。
【請求項4】
請求項3に記載の沈積シリカ材料において、前記金属元素は、アルミニウム、亜鉛、スズ、ストロンチウム、鉄、銅、およびこれらの混合物からなるグループから選択したことを特徴とする沈積シリカ材料。
【請求項5】
請求項1に記載の沈積シリカ材料において、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して15%以上のゼータ電位低下を示すものとしたことを特徴とする沈積シリカ材料。
【請求項6】
請求項1に記載の沈積シリカ材料において、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して20%以上のゼータ電位低下を示すものとしたことを特徴とする沈積シリカ材料。
【請求項7】
請求項1に記載の沈積シリカ材料において、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して25%以上のゼータ電位低下を示すものとしたことを特徴とする沈積シリカ材料。
【請求項8】
請求項1に記載の前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料、ならびに前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの研磨剤、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの防腐剤、および少なくとも1つの界面活性剤からなるグループから選択した少なくとも1つの他の成分を備える歯磨剤であって、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、前記歯磨剤において研磨剤、増粘剤、または研磨剤および増粘剤の双方の作用を果たすものとして存在する構成としたことを特徴とする歯磨剤。
【請求項9】
請求項5に記載の前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料、ならびに前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの研磨剤、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの防腐剤、および少なくとも1つの界面活性剤からなるグループから選択した少なくとも1つの他の成分を備える歯磨剤であって、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、前記歯磨剤において研磨剤、増粘剤、または研磨剤および増粘剤の双方の作用を果たすものとして存在する構成としたことを特徴とする歯磨剤。
【請求項10】
請求項6に記載の前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料ならびに前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの研磨剤、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの防腐剤、および少なくとも1つの界面活性剤からなるグループから選択した少なくとも1つの他の成分を備える歯磨剤であって、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、前記歯磨剤において研磨剤、増粘剤、または研磨剤および増粘剤の双方の作用を果たすものとして存在する構成としたことを特徴とする歯磨剤。
【請求項11】
請求項7に記載の前記付加処理済み沈積シリカ材料ならびに前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの研磨剤、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの防腐剤、および少なくとも1つの界面活性剤からなるグループから選択した少なくとも1つの他の成分を備える歯磨剤であって、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、前記歯磨剤において研磨剤、増粘剤、または研磨剤および増粘剤の双方の作用を果たすものとして存在する構成としたことを特徴とする歯磨剤。
【請求項12】
哺乳類の歯を処置する方法であって、
a)粒子が1〜5ミクロンの平均粒径を有し、また粒子表面の少なくとも一部に付加化合物を存在させて付加化合物処理済み沈積シリカ材料を形成し、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して10%以上のゼータ電位低下を示す構成とした沈積シリカ材料を備える歯磨剤を準備するステップと、
b)前記歯磨剤を哺乳類の歯に塗布するステップと、
c)前記ステップbで歯磨剤を塗布した歯をブラッシングするステップと
を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記ステップaの歯磨剤は、さらに、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの研磨剤、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料以外の少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの防腐剤、および少なくとも1つの界面活性剤からなるグループから選択した少なくとも1つの他の成分を備え、前記付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、前記歯磨剤において研磨剤、増粘剤、または研磨剤および増粘剤の双方の作用を果たすものとして存在する構成としたことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記ステップaの付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して15%以上のゼータ電位低下を示すものとしたことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法において、前記ステップaの付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して20%以上のゼータ電位低下を示すものとしたことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法において、前記ステップ“a”の付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して25%以上のゼータ電位低下を示すものとしたことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法において、前記ステップaの付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して15%以上のゼータ電位低下を示すものとしたことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記ステップaの付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して20%以上のゼータ電位低下を示するものとしたことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記ステップaの付加化合物処理済み沈積シリカ材料は、付加化合物がない点を除いて同一構成の沈積シリカ材料と比較して25%以上のゼータ電位低下を示すものとしたことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−500840(P2012−500840A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524468(P2011−524468)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006539
【国際公開番号】WO2010/023521
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(501449816)ジェイ・エム・フーバー・コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】