説明

歯科材料における使用のためのポリマー被覆ガラス充填材

【課題】歯科材料に適した自己接着性コンポジットの調製に用いられるポリマー処理されたガラスファイバーを提供する。
【解決手段】ガラス粒子に基づく充填材であって、このガラス粒子は、表面上に塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーを含むことを特徴とし、このガラス粒子の表面は、上記塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーで少なくとも部分的に覆われ、この塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーは、30,000〜130,000の範囲の数平均分子量Mを有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科材料における使用、特に自己接着性コンポジットの調製のために適するポリマー処理されたガラス充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンポジットは、充填および固定材料として保存歯科学において、またはセメントとして歯列矯正術で広く用いられている。コンポジットは、一般に、その性質が純粋な構成要素の性質とは異なる、2つの物質の組合せとして規定される。歯科コンポジットの場合には、それらは、1つ以上の充填材が取り込まれる有機モノマーまたはポリマーマトリックスからなる複数成分系である。
【0003】
これらの場合における充填材の主要な機能は、例えば、強度、硬度または弾性係数のような歯科コンポジットの機械的性質を改善し、熱拡大および重合収縮を低減し、そして標的とされた手段でコンポジットのレオロジー的性質および視角性質に影響することである。このために用いられる歯科充填材は、純粋に有機充填材であり、無機充填材であるか、またはそれらの組み合わせに分けられ得、ここで、無機充填材が最もしばしば用いられている。これらは、次いで、酸化物および非酸化物充填材に分けられ得る。酸化物充填材は、次いで、さらにケイ酸質充填材および非ケイ酸質充填材に分類される。
【0004】
ケイ酸質充填材は、例えば、ケイ酸バリウムガラス、ケイ酸ストロンチウムガラス、ケイ酸リチウムアルミニウムガラス、および主にメタクリレート樹脂補強ガラスイオノマーセメントで用いられているX線不透過性ケイ酸アルミニウムフッ素ガラスのような粉末ガラスを含む。ケイ酸質充填材はまた、これもまた歯科材料中で同様にしばしば用いられている純粋な二酸化ケイ素充填材を含む。酸化ケイ素および酸化ジルコニウムに基づく混合酸化物、またはコア−シェル系もまた公知である。これらは、補強作用と平行して、充填材の組成による屈折率を適合することにより、X線不透過性を増加するため、および透明性を調節するために用いられる。
【0005】
酸化ジルコニウム、酸化タンタル、三フッ化イッテルビウムまたは酸化イッテルビウムのような非ケイ酸質充填材が、X線造影媒体として用いられる。酸化アルミニウムおよび酸化チタンが、しばしば、それらの高い屈折率のために不透過性材として供される。
【0006】
歯科充填材は、概して無色であり、口腔環境に抵抗性であり、そして毒物学的に受容可能であるべきである。機械的性質を改善するために、例えば、広く用いられている光硬化コンポジット中に含まれている歯科充填材の表面は、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルコキシシランのような重合可能なシランで官能化されている。導入された(メタ)アクリレート基は、次いで、共重合によるコンポジットの硬化の間にポリマーマトリックスに共有結合される。
【0007】
自己接着性性質をもつ充填コンポジットは、現在、ますますの関心を誘引している(非特許文献1)。例えば、ビス−GMA(2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイル−オキシ−オキシプロピル)フェニル]プロパン)またはUDMA(1,6−ビス[2−メタクリロイル−オキシエトキシカルボニルアミノ]−2,4,4−トリメチルヘキサン)またはDMA(デカン−ジオールジメタクリレート)またはTEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)のような従来の架橋剤または希釈モノマーに加えて、強酸の酸モノマーを含むコンポジットがある。例えば、また、GDMP(リン酸二水素グリセロールジメタクリレート)またはMDP(リン酸二水素10−メタクリロイルオキシデシル)のような、このような酸モノマーは、象牙質およびエナメル質への接着を仲介し得る。
【0008】
例えば、ケイ酸バリウムガラスのような従来のガラス充填材が自己接着性コンポジットのために用いられる場合、不利な効果が生じ得る。1つのことは、有機マトリックスの酸モノマーが、ガラス充填材の粒子から、カチオン、例えば、Ba2+を溶解し得ることである。この結果として、塩が形成され得、これに関連して、この有機マトリックスの明瞭な粘度増加、またはコンポジットの認知し得る厚み増加、そしてそれ故、貯蔵安定性の低下が存在し得る。また、酸のリン酸基の充填材との反応のため、酸モノマー分子が充填材表面に結合するようになるリスクもあり、そしてそれ故、硬い歯の材料のための接着プロモーターとしてもはや利用可能でない。
【0009】
当該技術分野の状態によれば、歯科ガラス充填材の被覆は、既に、比較的長期間の間知られている。例えば、特許文献1または特許文献2は、例えば、ジメタクリレートを基礎にした、冷−硬化性、光−硬化性、または熱−硬化性プラスチックで歯科充填材粒子を被覆することを記載している。
【0010】
ホモポリシロキサンもしくはヘテロポリシロキサンまたはゾル−ゲル産物、すなわち異なるシランの加水分解濃縮物、およびZr、TiまたはAlアルコキシドまたはそれらの混合物のような金属アルコキシドでの歯科ガラス粉末の被覆に関する多くの刊行物がある(非特許文献2を参照のこと)。
【0011】
特許文献3では、例えば、ガラス粉末粒子がポリシロキサンで被覆されている歯科充填材が記載されている。
【0012】
前述の文献におけるガラス充填材の被覆は、異なる理由で行われ、そしてこれらガラス充填材を含む歯科材料の有利な性質に至ることが意図される。しかし、自己接着性コンポジットにおけるガラス充填材の使用は、上記の文献には記載されておらず、または開示される教示の主題である自己接着性コンポジットにおける使用のためのそれらの可能な適切性もない。
【0013】
特許文献4もまた、自己接着性コンポジットには関係せず、ガラスイオノマーセメントおよびその中に含まれるフルオロケイ酸アルミニウムガラスに関する。フッ化物イオンの所望の放出を保存または増加する一方で、硬化したセメントの機械的性質を改善するために、フルオロケイ酸アルミニウムガラス充填材粒子には、イオン性カルボキシル基およびシロシキ基を含む被覆が提供される。強度および破砕強靱性をさらに改善するために、このように処理されたフルオロケイ酸アルミニウムガラス充填材は、必要に応じてさらなる有機化合物で処理され得る。考慮されるさらなる有機化合物は、モノマー、オリゴマーおよびポリマー化合物の広範なリストを含み、ここで、異なるタイプの特定されないポリマーがポリマー例えば、ポリ濃縮物、ポリ付加物および重合体として命名され、とりわけ、ポリ塩化ビニルを含む。好ましいさらなる有機化合物は、エチレン性不飽和基、および親水性基、例えば、エチレングリコール基を含み、そしてさらなる有機化合物での処理が実施されるすべての実施形態の実施例では、丁度この好ましいタイプの化合物が好ましく用いられている。フルオロケイ酸アルミニウムガラス充填材粒子のポリ塩化ビニルでの被覆は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第0047971号明細書
【特許文献2】スイス国特許第652139号明細書
【特許文献3】米国特許第6,620,861号明細書
【特許文献4】米国特許第5,453,456号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】N.Moszner、U.Salz、Macromol.Mater.Eng.292(2007)245〜271
【非特許文献2】S.Klapdohr、N.Moszner、Monatsh.Chem.136(2005)21〜45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、酸有機マトリックス材料と組み合わせて、従来のガラス充填材と比較して、コンポジットの硬化の速度または硬化したコンポジットの機械的性質に不利に影響することなく、ペースト粘度(一貫性)の明瞭に増加した安定性に至るガラス充填材を提供することである。本発明の狙いは、特に、その処理性質が貯蔵によって損傷されない自己接着性コンポジットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本目的は、ガラス粒子が表面上に塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーを含むことを特徴とする、ガラス粒子に基づく充填材による本発明に従って達成される。
【0018】
本発明はまた、この充填材を含む歯科材料、および歯科材料の調製のためのこの充填材の使用に関する。
【0019】
より特定すれば、本発明は以下の項目に関し得る。
【0020】
(項目1)ガラス粒子に基づく充填材であって、上記ガラス粒子が、表面上に塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーを含むことを特徴とする、充填材。
【0021】
(項目2)上記ガラス粒子の表面が、上記塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーで少なくとも部分的に覆われる、項目1に記載の充填材。
【0022】
(項目3)上記塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーが、30,000〜130,000の範囲の数平均分子量Mを有する、項目1または2に記載の充填材。
【0023】
(項目4)上記ガラスが、ケイ酸ガラスである、項目1〜3のいずれか1項に記載の充填材。
【0024】
(項目5)上記ガラスが、酸化バリウムおよび/または酸化ストロンチウムを含む、項目1〜4のいずれか1項に記載の充填材。
【0025】
(項目6)上記ガラスが、15〜35wt%の酸化バリウムおよび/または15〜25wt%の酸化ストロンチウムを含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の充填材。
【0026】
(項目7)微粉化形態にある上記ガラスが、水中に分散されるとき、アルカリ反応を示す、項目1〜6のいずれか1項に記載の充填材。
【0027】
(項目8)上記ガラスが、1wt%未満のフッ素含量を有する、項目1〜7のいずれか1項に記載の充填材。
【0028】
(項目9)上記ガラスが、X線不透過性である、項目1〜8のいずれか1項に記載の充填材。
【0029】
(項目10)上記ガラスが、ケイ酸バリウムガラスまたはケイ酸ストロンチウムガラスである、項目1〜9のいずれか1項に記載の充填材。
【0030】
(項目11)上記ガラスが、40〜60wt%のSiO、10〜15wt%のAl、10〜20wt%のBおよび15〜35wt%のBaOを含む、項目10に記載の充填材。
【0031】
(項目12)上記ガラスが、40〜60wt%のSiO、10〜15wt%のAl、10〜20wt%のB、0〜3wt%のBaOおよび15〜25wt%のSrOを含む、項目10に記載の充填材。
【0032】
(項目13)上記ガラスが、シラン化されている、項目1〜12のいずれか1項に記載の充填材。
【0033】
(項目14)上記ガラス粒子が、その表面上に、少なくとも80モル%の重合塩化ビニルユニットおよび20モル%までの1つ以上のコモノマーの重合ユニットを含む、ポリ塩化ビニルまたは塩化ビニルのコポリマーを含む、項目1〜13のいずれか1項に記載の充填材。
【0034】
(項目15)塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーのない上記ガラス粒子が、0.01〜10μmの平均粒子サイズを有する、項目1〜14のいずれか1項に記載の充填材。
【0035】
(項目16)上記ガラス粒子が、ISO 9277:1995によるBET法を用いて決定された、1〜30m/gの比表面を有する、項目1〜15のいずれか1項に記載の充填材。
【0036】
(項目17)ガラス粒子に基づく充填材の調製のためのプロセスであって、ガラス粒子が、有機溶媒中の塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーの溶液中に分散され、そして上記溶媒が次いで除去される、プロセス。
【0037】
(項目18)上記有機溶媒が、環状ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物から選択される、項目17に記載のプロセス。
【0038】
(項目19)上記ガラス、上記ガラス粒子および/または上記塩化ビニルのコポリマーが、項目1〜16のいずれか1項に規定されるような、項目17または18に記載のプロセス。
【0039】
(項目20)項目17〜19のいずれか1項に記載のプロセスによって得られ得る、充填材。
【0040】
(項目21)項目1〜16または20のいずれか1項に記載の充填材を含むことを特徴とする、歯科材料。
【0041】
(項目22)項目21に記載の歯科材料であって、
(a)1〜85wt%の項目1〜16または20のいずれか1項に記載の充填材、
(b)ラジカル重合のための0.1〜5.0wt%の開始剤、および
(c)1〜70wt%の1つ以上の酸基を含まないラジカル重合可能なモノマーを、各場合で、上記歯科材料の総重量に対して含む、歯科材料。
【0042】
(項目23)(d)1〜30wt%の1つ以上の酸基含有ラジカル重合可能なモノマーをさらに含む、項目22に記載の歯科材料。
【0043】
(項目24)歯科材料の調製のための、項目1〜17または20のいずれか1項に記載の充填材の使用。
【0044】
(項目25)上記歯科材料が、自己接着性コンポジットである、項目24に記載の充填材の使用。
【0045】
(項目26)歯科材料の貯蔵安定性を改善するための、項目1〜17または20のいずれか1項に記載の充填材の使用。
【0046】
(要約)
表面上に塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーを含むガラス粒子に基づく充填材、その調製のためのプロセス、および歯科材料としてのその使用。
【発明の効果】
【0047】
本発明により、酸有機マトリックス材料と組み合わせて、従来のガラス充填材と比較して、コンポジットの硬化の速度または硬化したコンポジットの機械的性質に不利に影響することなく、ペースト粘度(一貫性)の明瞭に増加した安定性に至るガラス充填材が提供される。特に、その処理性質が貯蔵によって損傷されない自己接着性コンポジットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】時間tに対する、粘度ηにおけるガラス充填材処理の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の主題はまた、ガラス粒子に基づく充填材の調製のためのプロセスであり、ここでは、ガラス粒子は、有機溶媒中の塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーの溶液中に分散され、そしてこの溶媒は次いで除去される。
【0050】
以下で用いられる用語「ポリ塩化ビニル」および「PVC」は、塩化ビニルのホモーおよびコポリマーの両方を包含する。
【0051】
本発明による充填材の基礎を形成するガラス粒子は、原則として、歯科分野で通例用いられているすべてのガラス、概してケイ酸ガラスからなり得る。
【0052】
これらガラス粒子は、好ましくは、酸化バリウムおよび/または酸化ストロンチウムを含むガラスからなる。15〜35wt%の酸化バリウムおよび/または15〜25wt%の酸化ストロンチウムを含むガラスが、特に好ましい。
【0053】
水中に分散されるとき、アルカリ反応を示す微粉化形態にあるガラスが、さらに好ましい。これらは、約1.5μmの重量平均粒子サイズをもつ2gのガラス粒子が、約20℃で撹拌することにより50mlの蒸留水(pH=7)に懸濁されるとき、30分後、この水のpHにおける少なくとも8まで、特に好ましくは少なくとも8.5までの増加をもたらすガラスを好ましくは含む。
【0054】
好ましい実施形態では、用いられるガラスは、フッ素をほとんど含まないか、または含まない。これによって、0〜15wt%、好ましは0〜10wt%、特に好ましくは0〜3wt%そして極めて特に好ましくは1wt%未満のフッ素含量をもつガラスが意味される。
【0055】
歯科材料では、適切な放射線不透過性が、X線画像上で天然の歯から材料が区別され得ることを可能にするために、しばしば要求される。本発明による充填材が、放射線不透過性歯科材料における使用のために提供される場合、それ故、放射線不透過性ガラスを用いることが有利である。一般に、重金属イオン(質量数>37)を含むガラスは、適切な放射線不透過性を示す。本発明の充填材と好ましく用いられる公知の放射線不透過性ガラスの例は、ケイ酸バリウムガラス(特にケイ酸バリウム−アルミニウムガラス)およびケイ酸ストロンチウムガラス(特に、ケイ酸ストロンチウム−アルミニウムガラス)である。これらガラスの好ましい組成物は、40〜60wt%のSiO、10〜15wt%のAl、10〜20wt%のBおよび15〜35wt%のBaO(ケイ酸バリウム−アルミニウムガラス)または40〜60wt%のSiO、10〜15wt%のAl、10〜20wt%のB、0〜3wt%のBaOおよび15〜25wt%のSrO(ケイ酸ストロンチウム−アルミニウムガラスである。
【0056】
出発材料として用いられるガラス粒子は、好ましくは、0.01〜10μm、特に好ましくは0.5〜5μm、そして極めて特に好ましくは0.6〜2.0μmの範囲の平均粒子サイズを有する。平均粒子サイズは重量平均であり、光散乱によって決定される。これらガラス粒子が90μmより大きい、好ましくは20μmより大きい粒子を含まない場合がさらに有利であり、すなわち、これらガラス粒子は、前述のメッシュ幅をもつ篩を通過し得る。
【0057】
これらガラス粒子は、好ましくは、ISO 9277:1995によるBET法を用いて決定された、1〜30m/g、好ましくは1〜20m/g、そして特に好ましくは3〜10m/gの比表面を有する。
【0058】
適切なサイズのガラス粒子は、例えば、粉砕することにより、通例の様式で調製され得る。
【0059】
硬化された歯科材料の機械的性質を改善するために、シラン化ガラスに基づく本発明による充填材を用いることが有利である。「シラン化」によって、(メタ)アクリレート−官能化シラン、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン、通常、3−(メタクリロイルオキシ)プロピル−トリメトキシ−シラン、3−(メタアクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)−プロピルトリクロロシラン、メタクリロイルオキシ−メチルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジクロロシランまたは3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシランとの反応によるといわれる、重合可能なシラン類とのガラス表面の官能化が意味される。3−(メタクリロイルオキシ)−プロピルトリメトキシシランが好ましい。これらガラスのシラン化は、従来様式で起こり、そして当業者に公知である。
【0060】
本発明による充填材のガラス粒子は、表面上に塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーを含む。これらガラス粒子の表面は、通常、少なくとも部分的に、好ましくは大部分について、または完全にポリ塩化ビニルで覆われる。
【0061】
本発明による充填材に適切なポリ塩化ビニルは、例えば、通例、販売されている塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーであり、好ましくは、30,000〜130,000、好ましくは30,000〜50,000の範囲にある数平均分子量Mをもつ。好ましくは上記に記載の分子量をもつ、特に適切である塩化ビニルのホモポリマーに加え、塩化ビニルのコポリマーがまた用いられ得る。好ましい実施形態では、これらは、少なくとも80モル%の重合塩化ビニルユニットおよび20モル%未満の1つ以上のコモノマーの重合ユニットを含む。適切なコモノマーは、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、エチレンおよび塩化ビニリデンであり、ここで、エチレンおよび/またはアクリロニトリルが好ましい。
【0062】
PVCが調製されたプロセスは、本発明にとって決定的ではない。通例の調製プロセスは、懸濁重合、エマルジョン重合、および塊状重合を含み、ここで懸濁重合が工業的用語で最も重要である。
【0063】
PVCを、上記に記載のようにシラン化され得るガラス粒子に付与するために、PVCは有機溶媒中に溶解され、そしてガラス粒子は、この溶液中に分散される。
【0064】
PVCが適切な濃度で可溶性であるすべての有機溶媒が、溶媒として適切である。例えば、環状ケトン、例えば、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノン;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド、および特にテトラヒドロフラン(THF)ならびにこれらの溶媒の混合物が良好に適切である。溶液中のPVCの塊状含量は、好ましくは0.01〜20wt%、特に好ましくは1〜7wt%である。
【0065】
ガラス粒子は、PVC溶液中に、好ましくは撹拌をともなって分散され、次いで、適切な時間後、通常0.2〜2時間の期間の後、例えば、遠心分離することまたは濾過によりこの溶液から分離され、そして次に、例えば、十分な減圧下(10〜10−1Pa)で乾燥される。乾燥の間に、温度は、PVCのガラス転移温度(T)以下、少なくとも約30℃にあることが確実にされるべきである。従って、ホモポリマーPVC(T=81℃)の場合には、温度は、充填材粒子が軟化したポリマー被覆に起因して凝集することを防ぐために50℃を超えるべきではない。
【0066】
このガラス粒子に付与されるPVCの量は、例えば、X線蛍光分析(XRF)によって決定され得る。PVCの量は、XRFによって確認される塩素の量から算出され得る。代表的には、PVCは、PVCの重量が充填材粒子の総重量の0.1wt%〜7.0wt%、好ましくは1.0wt%〜5.0wt%を占めるような量でガラス粒子に付与される。
【0067】
本発明による充填材は、好ましくは、歯科材料、特に自己接着性コンポジットの調製のために用いられる。これらコンポジットは、歯科の歯充填材料として特に適している。しかし、原則的に、本発明による充填材は、例えば、ガラス粒子の周辺の酸環境に対する保護が重要であるその他の適用においてもまた用いられ得る。
【0068】
本発明の主題はまた、その好ましい実施形態を含む上記に記載のような本発明による充填材を含む通常はペースト形態にある歯科材料である。この歯科材料は、好ましくは、自己接着性コンポジットである。
【0069】
好ましい実施形態によれば、この歯科材料は、
(a)その好ましい実施形態を含む上記に記載の本発明による1〜85wt%、特に5.0〜50wt%の充填材、
(b)ラジカル重合のための0.1〜5.0wt%、特に0.2〜2.0wt%の開始剤、
(c)1〜70wt%、特に5.0〜40wt%の1つ以上の酸基を含まないラジカル重合可能なモノマーを含む。
【0070】
自己接着性セメントまたはコンポジットとしての使用のための歯科材料はまた、さらに:
(d)1〜30wt%、特に3.0〜20wt%の1つ以上の酸基含有ラジカル重合可能なモノマーをさらに含む。
【0071】
上記歯科材料は、好ましくは、付加された溶媒を含まない。
【0072】
すべての引用された値は、各場合において、歯科材料の総重量に対してである。
【0073】
ラジカル重合のための開始剤である成分(b)は、照射硬化(光化学的ラジカル重合)、熱硬化または室温における硬化が、本発明による歯科材料にとって所望されか否かに依存して選択される。「開始剤」によってまた、異なる成分の開始剤システムが意味される。
【0074】
適切な光開始剤の例は、ベンゾフェノン、ベンゾインおよびそれらの誘導体、ならびにα−ジケトンおよびその誘導体を含み、例えば、9,10−フェナントレンキノン、1−フェニル−プロパン−1,2−ジオン、ジアセチルおよび4,4’−ジクロロベンジル、カンファーキノン、2,2−メトキシ−2−フェニル−アセトフェノンまたはα−ジケトンを含み、各々は、例えば、4−(ジメチルアミノ)−安息香酸エステル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチル−sym.−キシリジンまたはトリエタノールアミン、およびモノベンゾイル−またはジベンゾイルゲルマニウム誘導体のような還元剤としてのアミンと組み合わせて好ましく用いられる。
【0075】
ベンゾピナコールおよび2,2’−ジアルキルベンゾピナコールはまた、例えば、熱硬化のための開始剤として適切である。
【0076】
酸化還元−開始剤の組み合わせ、例えば、N,N−ジメチル−sym.−キシリジンまたはN,N−ジメチル−p−トルイジンとベンゾイルペルオキシドの組み合わせが、室温で実施される重合(冷硬化)のための開始剤として用いられ得る。さらに、過酸化物、および例えば、アスコルビン酸、バルビツール酸塩またはスルフィン酸のような還元剤からなる酸化還元系もまた適切である。
【0077】
酸基を含まないラジカル重合可能なモノマーである成分(c)、および酸基を含むラジカル重合可能なモノマーである成分(d)は、連帯して、本発明による歯科材料のバインダーを代表し、これは、硬化の間にラジカル重合する。
【0078】
成分(c)のバインダーモノマーは、少なくとも2、好ましくは2〜4のラジカル重合可能な基をもついわゆる架橋モノマー、およびその粘度および良好な溶解度がそれらが重合樹脂を希釈するために適切にするいわゆる希釈モノマーを含む。希釈モノマーは、1つまたはまた、より多くの重合可能な基を含み得、そして後者の場合にはまた、架橋モノマーとしても作用する。
【0079】
とりわけ、例えば、1,6−ビス[2−メタクリロイル−オキシエトキシカルボニルアミノ]−2,4,4−トリ−メチルヘキサン(UDMA)、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイル−オキシ−プロポキシ)フェニル]プロパン(ビス−GMA)、1,6−ビス[2−アクリロイル−オキシエトキシカルボニルアミノ]−2,4,4−トリメチルヘキサン、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートならびにブタンジオールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート(DMA)、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタクリレートおよび1,12−ドデカンジオールジアクリレートのような架橋性二官能性またはポリ官能性のメタクリレートおよびアクリレートが、架橋モノマーとして適切である。加水分解耐性架橋モノマーがまた適切であり、例えば、2−(ヒドロキシルメチル)アクリル酸およびジイソシアネート(例えば、2,2,4−トリ−メチルヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネート)のウレタン;1,6−ビス(3−ビニル−2−ピロリドニル)−ヘキサンのような架橋ピロリドン;市販され入手可能なビスアクリルアミドまたはビス(メタ)アクリルアミド、例えば、対応するジアミンから塩化(メタ)アクリル酸との反応により合成され得る、メチレンおよびエチレンビスアクリルアミド、N,N’−ジ−エチル−1,3−ビス(アクリルアミド)−プロパン、1,3−ビス(メタクリルアミド)−プロパン、1,4−ビス(アクリルアミド)−ブタンおよび1,4−ビス(アクリロイル)−ピペラジンがある。
【0080】
本明細書中の用語「加水分解耐性」はまた、少なくとも6週間安定であり、すなわち、約20wt.%の濃度および約2.0のpHで37℃で、水中、または水および水混和性溶媒の混合物中で加水分解するのが5%未満であるモノマーを含む。
【0081】
20℃で測定された100mPa・sより小さい粘度ηをもつ液体モノマーが、本明細書中で希釈モノマーとして好ましくは用いられる。希釈モノマーの例は、加水分解耐性のモノ(メタ)アクリレート、例えば、メシチルアクリレート;2−(アルコキシメチル)アクリル酸、例えば、2−(エトキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸;例えば、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−アクリルアミドおよびN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドのようなN−一置換−または二置換アクリルアミド、またはN−エチル−メタクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシ−エチル)メタクリルアミドのようなN−一置換メタクリルアミドを含む。N−ビニルピロリドン、2−(メタクリロイルオキシ)エチルアセトアセテートまたはアリルエーテルがまた、希釈モノマーとして用いられ得る。
【0082】
酸基含有ラジカル重合可能モノマーである成分(d)は、エナメル質/象牙質への歯科材料の改良された接着のための能力がある。接着モノマーともまた呼ばれる強酸モノマーがあり、これは、歯科材料を用いるとき、最初、エナメル質/象牙質上の軽い汚れの層を除去し、そして次に、モノマーが、溶融物または象牙質を食刻し、その結果、このモノマーは、いわゆるポリマータグの形成がともなう、次の重合の間に拡散し、拡散し、硬化された歯科材料とエナメル質/象牙質との間の強い結合に至り得る。
【0083】
接着剤モノマー(d)は、好ましくは1〜4の酸基を含む。好ましい酸基は、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸および/またはリン酸基である。酸基としてカルボン酸、ホスホン酸および/またはリン酸基を含む化合物が、特に好ましい。1つ以上の酸基をもつ化合物は、異なる酸基を、または好ましくは同じ酸基を含み得る。特に有利な接着モノマーは、重合可能な二水素および一水素リン酸塩である。
【0084】
適切な接着モノマー(d)の例は、グリセロールジメタクリレート二水素リン酸(GDMP)、4−(メタ)−アクリロイル−オキシエチルトリメリチン酸無水物、10−メタ−アクリロイルオキシ−デシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタ−アクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシン、4−ビニル安息香酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、10−メタクリロイル−オキシデシル−二水素リン酸(MDP)、2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸塩およびジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシリン酸を含む。4−ビニルベンジルホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシ−ホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸のような加水分解−耐性接着モノマー、ならびに、それらのアミドおよび加水分解−耐性エステル(例えば、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチルフェニルエステル)、ならびに、例えば、6−メタクリルアミドヘキシル−および1,3−ビス(メタクリルアミド)−プロパン−2−イル−二水素リン酸のような(メタ)アクリルアミド二水素リン酸がまた、有利である。
【0085】
個々の成分について例によって上記に記載のすべてのモノマーは、各々が単独または混合物で用いられ得る。
【0086】
本発明による歯科材料は、好ましくは、酸基をもつポリマーまたはコポリマーは含まない。
【0087】
本発明による歯科材料はまた、1つ以上のその他の慣用の充填材(e)と混合された本発明による充填材を含み得、このような充填材(e)には、例えば、ZrO、TaおよびTiOのような酸化物、またはSiO、ZrOおよび/もしくはTiOの混合された酸化物に基づく無機の球形無定形充填材、発熱性シリカ、沈殿シリカまたは三フッ化イッテルビウムのようなナノ粒子または超微細(microfine)充填材、そしてまたいわゆる「イソ充填材」、すなわち、硬化コンポジットを砕くことにより入手可能である粉末がある。上記に記載の充填材の好ましい重量平均粒子サイズは、酸化物充填材については10nm〜200nmの範囲であり、ナノ粒子および超微細充填材には20nm〜5μmの範囲であり、そしてイソ充填材については5〜100μmの範囲である。
【0088】
本発明による歯科材料は、必要に応じてさらなる添加物、例えば、安定剤、芳香剤、着色剤、静微生物活性成分、フッ素イオン放出添加物、光沢剤、可塑剤および/またはUV吸収剤を含む。
【0089】
本発明による歯科材料を調製するために、上記に記載のように、本発明による充填材(a)およびその他の成分(b)、(c)および必要に応じて(d)、ならびにさらなる充填材(e)および添加物(f)が混合される。
【0090】
本発明による充填材のガラス粒子の表面上のPVCは、充填材が酸有機マトリックス中、例えば、自己接着性コンポジット中で用いられるとき、このマトリックスの酸成分によってカチオン、例えば、Ba2+イオンの溶解をひどく妨げ、そしてそれ故、塩形成および有機マトリックスの粘度増加が低減され、そして最後にペースト状の歯科材料の貯蔵安定性の顕著な改善が達成され得る。これは、当該技術分野の水準によると、例えば、フッ素イオンの放出が妨げられないことと同じぐらい驚くべきことであり、またはポリマー有機化合物での充填材の表面処理によって実際に改善される。
【0091】
PVCは、マトリックスの慣用のモノマー、特に、先に成分(c)と呼ばれた、例えば、ビス−GMA、UDMA、TEGDMAまたはDMAのようなバインダーモノマー、ならびに、例えば、MDPまたはGDMPのような成分(d)の強酸接着モノマー中には、実際、不溶性である。それ故、例えば、上記に記載のモノマーに基づくモノマー混合物での歯科材料の調製の間にPVC被覆の離脱はない。さらに、例えば、硬化歯科材料の二軸強度のような機械的性質は、PVC被覆によって悪影響を受けないことが驚くべきことに示された。PVCの比較的大きな極性がガラス粒子の表面上のフィルム形成のためのみならず、明らかにコンポジット中の充填材−マトリックス結合に有利であると推定される。このPVC被覆は、歯科材料の硬化の速度を減少せず、そしてこの歯科材料の象牙質接着は、悪影響を受けない。
【実施例】
【0092】
本発明は、実施例により以下により詳細に説明される。
【0093】
(参照例1:ガラス充填材のシラン化)
1.5μmの重量−平均粒子サイズd50をもつ、ケイ酸バリウム−アルミニウムガラス(Schott AG、Mainz;組成:55wt%SiO、25wt%BaO、10wt%Bおよび10wt%Al)からなる93gのガラス粒子を、5gの3−(メタクリロイルオキシ)−プロピルトリメトキシトランおよび2gの水の添加でシラン化した。ガラス充填材を、最初、Turbularミキサー(軌道ミキサー)中に導入し、次に水を添加し、そして混合した。シランを、次いで、添加し、そして混合を一晩行った。ガラス充填材を次いで篩(メッシュサイズ200μm)を通してスクリーニングし、そして50℃で48時間乾燥した。このガラス充填材を最後に、90μmのメッシュサイズをもつ篩を通してスクリーニングした。シラン化の後、燃焼損失に対応する有機物含量は、2.8wt%であった。3.9m/gの値は、慣用のBET法(ISO 9277:1995)を用いて、ガラス充填材の比表面について決定された。この比表面は、サンプルを減圧(10mbar未満)下、105℃で18時間脱気した後、6つの測定点を用い、Quantachrome NOVA 2200eを用いたN吸収により測定された。X線蛍光分析(XRF)は、このガラス充填材中に塩素を検出しなかった。
【0094】
(実施例2:塩化ポリビニルでのシラン化ガラス充填材の被覆)
参照実施例1からのシラン化ガラス充填材の60gを、THF中、ポリ塩化ビニル(Aldrich;M約35000)の5.0wt%溶液の300g中に30分間分散し、そして次に濾過した。粉末を、ロータリーエバポレーター上40℃で5時間乾燥し、凝集体を分離し、そして90μmのメッシュサイズをもつスクリーン上で篩い分けを行った。燃焼損失を経由して決定された有機物含量は、4.9wt%である。BETによって測定されたガラス充填材の比表面(参照実施例1中に記載のように決定された)は、4.0m/gであった。XRFは1.3%のCl含量を生成し、これは、2.3%のPVC含量に対応する。
【0095】
(比較例3および実施例4:ガラス充填材とのコンポジットの調製および試験)
以下の成分を混合することにより樹脂マトリックスを調製した:

量 成分

15.0wt% 10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸(MDP)
(接着モノマー)
3.0wt% 2−メタクリロイルオキシエチル−二水素リン酸(MDP)
(接着モノマー)
66.0wt% ウレタンジメタクリレート(UDMA) (架橋モノマー)
15.0wt% 2−(メタクリロイルオキシ)−エチルアセトアセテート
(希釈モノマー)
0.3wt% カンファーキノン (開始剤)
0.6wt% 4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルエステル (開始剤)
0.1wt% 添加物 (安定化剤およびUV吸収剤)

【0096】
以下の組成のコンポジットペーストを、この樹脂マトリックスと、参照例1および実施例2からのガラス充填材ともに調製した:

成分 比較例3 実施例4
樹脂マトリックス 22.8wt% 22.8wt%
参照実施例1からの
ガラス充填材 37.1wt% −
実施例2からの
ガラス充填材 − 37.1wt%
イソ充填材* 37.9wt% 37.9wt%
Bentone(登録商標)
ペースト** 2.2wt% 2.2wt%

*イソ充填材は、所望の粒子サイズまで砕かれた熱硬化コンポジット充填材であり、以下:ビス−GMA(8.80wt%)、UDMA(6.60wt%)、1,10−デカンジオールジメタクリレート(5.93wt%)、ジベンゾイルペルオキシド+2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(合計0.67wt%)、ガラス充填材、平均粒子サイズ0.4μm(53.0wt%)およびYbF(25.0wt%)から調製される。
**Bentone(登録商標)38(Rheox Inc,Hightown、USA)は、有機的に改変されたMg層のケイ酸塩(ヘクトライト)であり、そして12.5%分散物として樹脂マトリックス中に導入された。
【0097】
モノマー混合物を、最初、導入し、次いで、Bentone(登録商標)ペーストおよびガラス充填材の量の最初の半分を添加し、そして組成物を均一にこねた。ガラス充填材の量の第2の部分を次いで添加し、そしてこねた。イソ充填材の最初の半分を、次いで添加し、そしてこね、そして最後に残りのイソ充填材を添加し、そしてペーストを均一にこねた。最後に、このペーストを20,000Paで15分間換気した。
【0098】
このコンポジットペーストの粘度を、23℃における1S−1の剪断速度のBohlin CVO−10レオメーター(Bohlin、 Pforzheim)の補助により50℃でこのペーストの貯蔵時間に対して測定した。時間tに対する、粘度ηにおけるガラス充填材処理の影響は、図1に示される。
【0099】
これらの結果は、本発明によるコンポジットペーストの貯蔵安定性における明瞭な改善を示す。
【0100】
試験片ディスク(高さ:1.2mm、直径:15mm)は、Spectramat(登録商標)(Ivoclar Vivadent AG、Liechtenstein)で両側面に対し3分の2回の照射時間に亘り、ヘキサン中の3%V−ワックス溶液で絶縁されたスチール鋳型中で、EN ISO 6872:1998に従って、コンポジットペーストから調製され、そして37℃で水中24時間貯蔵後の試験片の二軸強度を測定した:
比較例3:115.6±9.4 MPa
実施例4:117.1±14.7 MPa
これら2つのコンポジットの比較は、PVC被覆が機械的性質に不利な影響に至らないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粒子に基づく充填材であって、該ガラス粒子が、表面上に塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーを含むことを特徴とする、充填材。
【請求項2】
前記ガラス粒子の表面が、前記塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーで少なくとも部分的に覆われる、請求項1に記載の充填材。
【請求項3】
前記塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーが、30,000〜130,000の範囲の数平均分子量Mを有する、請求項1または2に記載の充填材。
【請求項4】
前記ガラスが、ケイ酸ガラスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項5】
前記ガラスが、酸化バリウムおよび/または酸化ストロンチウムを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項6】
前記ガラスが、15〜35wt%の酸化バリウムおよび/または15〜25wt%の酸化ストロンチウムを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項7】
微粉化形態にある前記ガラスが、水中に分散されるとき、アルカリ反応を示す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項8】
前記ガラスが、1wt%未満のフッ素含量を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項9】
前記ガラスが、X線不透過性である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項10】
前記ガラスが、ケイ酸バリウムガラスまたはケイ酸ストロンチウムガラスである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項11】
前記ガラスが、40〜60wt%のSiO、10〜15wt%のAl、10〜20wt%のBおよび15〜35wt%のBaOを含む、請求項10に記載の充填材。
【請求項12】
前記ガラスが、40〜60wt%のSiO、10〜15wt%のAl、10〜20wt%のB、0〜3wt%のBaOおよび15〜25wt%のSrOを含む、請求項10に記載の充填材。
【請求項13】
前記ガラスが、シラン化されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項14】
前記ガラス粒子が、その表面上に、少なくとも80モル%の重合塩化ビニルユニットおよび20モル%までの1つ以上のコモノマーの重合ユニットを含む、ポリ塩化ビニルまたは塩化ビニルのコポリマーを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項15】
塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーのない前記ガラス粒子が、0.01〜10μmの平均粒子サイズを有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項16】
前記ガラス粒子が、ISO 9277:1995によるBET法を用いて決定された、1〜30m/gの比表面を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の充填材。
【請求項17】
ガラス粒子に基づく充填材の調製のためのプロセスであって、ガラス粒子が、有機溶媒中の塩化ビニルのホモポリマーまたはコポリマーの溶液中に分散され、そして該溶媒が次いで除去される、プロセス。
【請求項18】
前記有機溶媒が、環状ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物から選択される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ガラス、前記ガラス粒子および/または前記塩化ビニルのコポリマーが、請求項1〜16のいずれか1項に規定されるような、請求項17または18に記載のプロセス。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか1項に記載のプロセスによって得られ得る、充填材。
【請求項21】
請求項1〜16または20のいずれか1項に記載の充填材を含むことを特徴とする、歯科材料。
【請求項22】
請求項21に記載の歯科材料であって、
(a)1〜85wt%の請求項1〜16または20のいずれか1項に記載の充填材、
(b)ラジカル重合のための0.1〜5.0wt%の開始剤、および
(c)1〜70wt%の1つ以上の酸基を含まないラジカル重合可能なモノマーを、各場合で、該歯科材料の総重量に対して含む、歯科材料。
【請求項23】
(d)1〜30wt%の1つ以上の酸基含有ラジカル重合可能なモノマーをさらに含む、請求項22に記載の歯科材料。
【請求項24】
歯科材料の調製のための、請求項1〜17または20のいずれか1項に記載の充填材の使用。
【請求項25】
前記歯科材料が、自己接着性コンポジットである、請求項24に記載の充填材の使用。
【請求項26】
歯科材料の貯蔵安定性を改善するための、請求項1〜17または20のいずれか1項に記載の充填材の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2009−227676(P2009−227676A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69127(P2009−69127)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(501151539)イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL−9494 Schaan Liechtenstein
【Fターム(参考)】