説明

歯科治療ユニット

【課題】可動式のワークテーブルに加速度センサーを設けることによって、治療椅子がワークテーブルに接触した時の衝撃や振動、更には、ワークテーブルが傾いたことを検知し、警告を発し、更には、治療椅子の移動を停止する。
【解決手段】歯科治療ユニットは、上下動可能な歯科用治療椅子1と、歯科治療用インスツルメントを搭載した可動式のワークテーブル4と、これら治療椅子1とワークテーブル4を連結し、これらの間で電気、水、エア等の送受を行うケーブル或いはワークテーブル支持アームとからなる。ワークテーブル4に加速度センサー10を設け、該加速度センサー10が所定値以上の加速度を検知した時に、無影灯を点滅させて警告したり、治療椅子1及びインスツルメントの動作を不能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療ユニット、より詳細には、歯科治療用インスツルメントを搭載した可動式のワークテーブルを備えた歯科治療ユニットにおいて、前記ワークテーブルに加速度センサーを設けておき、該加速度センサーが所定値以上の加速度を検出した時に、光の点滅及び/又は音声による警告を行い、次いで、歯科治療ユニットに設けられている可動機器の動作を不能にし、術者や患者に危険を知らせ、更には、例えば、歯科治療用インスツルメントが稼動し続けることによる患者の損傷を防止するようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、本発明が適用される歯科治療ユニットの一例を説明するための概略全体構成図で、図中、1は歯科用治療椅子、2はスピットン本体、3は無影灯、4はドクターが使用する歯科治療用インスツルメント5を搭載した術者用ワークテーブル、6はアシスタントが使用するインスツルメント5を搭載したアシスタント用インスツルメントホルダー、7は歯科用治療椅子1のベース部で、ワークテーブル4は、例えば、脚下部にキャスタ8を有し、移動可能となっており、歯科用治療椅子1側とは可撓性のケーブル9を介して連結されており、該ケーブル9内には、コードやチューブが内装され、これらコードやチューブを通して電気、水、エアー等の送受が行われるようになっている。
【0003】
図4は、本発明が適用される歯科治療ユニットの他の例を示す図で、この例は、図3に示した歯科治療ユニットにおける可撓性のケーブル9に代って剛体のアーム9aを用い、該アーム9aにてワークテーブル4を移動可能に支持するようにし、このアーム9a内を通して歯科用治療椅子側(スピットン本体側)との電気、水、エアー等の送受を行うようにしたものであるが、本発明が適用される歯科治療ユニットは、これらの例に限定されるものではなく、上下動可能な歯科用治療椅子に対して移動可能なワークテーブルを有する全ての歯科治療ユニットに適用可能である。
【0004】
上述のごとき歯科治療ユニットにおいては、周知のように、歯科治療に当り、患者は椅子1に座り、頭を安頭台1aに固定して治療を受ける。歯科治療に当り、ドクター(術者)は、治療椅子1を倒して、或いは、椅子全体を傾斜動、上下動させて治療しやすい状態にした後、患者の頭部後側或いは側部より治療を行う。
【0005】
而して、上述のごとき、治療椅子1が移動する歯科治療ユニットにおいては、患者を乗せた治療椅子が、例えば、上昇している時に、上昇径路中に障害物(器物)があった場合、該障害物(例えば、ワークテーブル)に上昇中の治療椅子が当って器物(例えば、ワークテーブル)を損傷したり、上昇中の治療椅子に載っている患者が該障害物と治療椅子間に挟まれてしまう等の危険があった。
【0006】
上述のごとき問題を解決するために、例えば、特許文献1(特開2008−136604号公報)においては、障害物となる可能性のあるスピットン鉢の下部に圧力センサーを設けておき、この圧力センサーの検出値が所定値以上のときに、警告を発し、更には、治療椅子の上昇を停止させることが提案されている。
【0007】
上述のように、歯科治療椅子が移動する歯科治療ユニットにおいて、治療椅子の移動径路中に移動する可能性のある器物の下部に圧力センサー(前述の例では、密閉空気室内の圧力であるが、それ以外の任意の圧力センサー、例えば、マイクロスイッチ、感圧素子等でもよい)を設けておき、該圧力センサーの出力によって、上昇中の治療椅子が器物に当ったことを検知するようにしているが、圧力センサーでは、圧力センサーを設置した付近に加わった外力しか検知することができず、あらかじめ想定された特定の異常状態のみしか検出できなかった。また、図2に示したワークテーブル4の場合、該ワークテーブル4が上昇中の治療椅子1に当ったとしても、該ワークテーブル4は傾いたり、倒れたりしてしまう場合が多く、圧力センサーでは、該ワークテーブル4が治療椅子1に当った(接触した)ことを正確に検知することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−136604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、従来の圧力センサーに代って加速度センサーを設けることによって、具体的には、前述のごとき可動式のワークテーブルに加速度センサーを設けることによって、該ワークテーブルに治療椅子が接触したことを検知し、換言すれば、治療椅子がワークテーブルに接触した時の衝撃や、振動、更には、ワークテーブルが傾いたことを検知し、その検知出力の大きさに基いて、警告を発し、更には、治療椅子の移動を停止するようにして危険を防止するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、上下動可能な歯科用治療椅子と、歯科治療用インスツルメントを搭載した可動式のワークテーブルと、これら前記歯科治療椅子側と前記ワークテーブルを連結し、これらの間で電気、水、エア等の送受を行う歯科治療ユニットにおいて、前記ワークテーブルに加速度センサーを具備し、該加速度センサーが所定値以上の加速度を検知した時に、光を点滅して及び/又は音声にて警告を発し、次いで、前記歯科治療椅子及び前記歯科治療用インスツルメントの動作を不能にするようにしたことを特徴としたものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、無影灯を具備し、前記加速度センサーが所定値以上の加速度を検知した時に、該無影灯を点滅するようにしたことを特徴としたものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、音声を記録したメモリと、該メモリに記録された音声を再生出力するスピーカを具備し、前記加速度センサーが所定値以上の加速度を検知した時に、前記メモリに記録された音声を再生して前記スピーカより出力するようにしたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
加速度センサーを可動式のワークテーブルに設け、該加速度センサーによって、ワークテーブルに加わる衝撃や振動、更には、該ワークテーブルの傾きを検出可能としたので、治療椅子動作時の治療椅子との接触だけでなく、ワークテーブルの転倒や、地震などによる振動、或いは、ワークテーブルに加わる大きな衝撃などの異常状態をも単一の加速度センサーで検出することができ、その検出出力に基いて警告を発したり、歯科治療ユニットにおける各稼動機器の機能を緊急停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による歯科治療ユニットにおける歯科治療椅子とワークテーブルの接触時の状態を示す要部概略構成図である。
【図2】本発明による歯科治療ユニットにおける歯科治療椅子とワークテーブルの衝突時の状態を示す要部概略構成図である。
【図3】本発明が適用される歯科治療ユニットの一例を説明するための全体構成図である。
【図4】本発明が適用される歯科治療ユニットの他の例を説明するための全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1,図2は、それぞれ本発明が適用された歯科治療ユニットの一例を説明するための要部概略構成図で、図中、1は歯科治療椅子、4はワークテーブルで、これら治療椅子1及びワークテーブル4は、それぞれ図3,図4に示した歯科治療椅子1及びワークテーブル4に相当し、ワークテーブル4は、それぞれ図3及び図4に示したように歯科治療椅子1に対して移動可能になっている。
【0016】
図1は、治療椅子1が上昇(矢印A)してワークテーブル4に接触し、ワークテーブル4が傾いた状態(矢印B)を示している。また、図2は、治療椅子1が上昇してワークテーブル4に衝突する例を示すが、この場合、患者が治療椅子に載っていると、患者が治療椅子1とワークテーブルの間に挟まれることになる。本発明においては、ワークテーブル4の任意所望の箇所に加速度センサー10が設けられている。この加速度センサーとしては、任意所望の3方向加速度センサーを用いるが、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)3軸加速度センサーを用いると、該MEMS加速度センサーは超小型であるため、ワークテーブル4の任意所望の箇所に容易に取り付けることができる。
【0017】
上述のように、可動式のワークテーブル4に加速度センサー10を設けておくと、該ワークテーブル4が治療椅子1に衝突し或いは接触した時など、衝突時或いは接触時にワークテーブル4に加わる衝撃を検知して或いはワークテーブル4の傾きを検知して、警告を発したり、治療椅子1の移動(上昇)を止めてワークテーブルの転倒を防止したりすることができる。
【0018】
更には、歯科治療中に地震が発生したような場合に、加速度センサー10によって地震を検知して、警告を発したり、更には、治療椅子1の移動機能を停止したり、歯科治療用インスツルメントの駆動機能を停止したりして、地震によって生じる危険を警告し、防止することができる。
【0019】
更には、歯科治療中、ワークテーブル4の上に何か物が落下したような場合、その衝撃を検知して、歯科治療用インスツルメントの駆動機能を停止し、駆動中のインスツルメントの刃物で患者の口腔内を傷つけてしまうのを防止することもできる。
【0020】
上述のように、本発明は、加速度を検知し、その検出値によって警告を発したり、可動機器の機能を停止するものであるが、検出値がある所定値までの場合は、警告のみを発生し、前記所定値を超えるより高い検出値の場合に可動機器の機能を停止するようにすることも可能であり、更には、警告もパネルでの表示やビーブー音では、施術中の術者には分りにくいので、予めメモリに記録しておいた音声を再生して出力する音声による警告や、例えば、無影灯を発光色を変えて点滅したりする等して、施術中の術者に異常状態を分りやすく警告する等の工夫も必要である。
【符号の説明】
【0021】
1…歯科用治療椅子、2…スピットン本体、3…無影灯、4…術者用ワークテーブル、51,52…インスツルメント、6…アシスタント用インスツルメントホルダー、7…歯科治療椅子のベース部、8…キャスタ、9…ケーブル、9a…アーム、10…加速度センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能な歯科用治療椅子と、歯科治療用インスツルメントを搭載した可動式のワークテーブルと、これら前記歯科治療椅子側と前記ワークテーブルを連結し、これらの間で電気、水、エア等の送受を行う歯科治療ユニットにおいて、
前記ワークテーブルに加速度センサーを具備し、該加速度センサーが所定値以上の加速度を検知した時に、光を点滅して及び/又は音声にて警告を発し、次いで、前記歯科治療椅子及び前記歯科治療用インスツルメントの動作を不能にするようにしたことを特徴とする歯科治療ユニット。
【請求項2】
無影灯を具備し、前記加速度センサーが所定値以上の加速度を検知した時に、該無影灯を点滅するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の歯科治療ユニット。
【請求項3】
音声を記録したメモリと、該メモリに記録された音声を再生出力するスピーカを具備し、前記加速度センサーが所定値以上の加速度を検知した時に、前記メモリに記録された音声を再生して前記スピーカより出力するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科治療ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−251084(P2011−251084A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128831(P2010−128831)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】