説明

歯科用チップ

【課題】歯科治療において、ハンドピース内の振動体に取り付けて、歯根や顎骨、歯槽骨、不良歯肉等を振動によりカットするのに好適な歯科用チップを提供する。
【解決手段】歯科用チップ10は、振動体1に着脱自在に連結され、該振動体1によって振動される。チップ10の先端部側における作業部10cは、その横断面形状の両端部においてエッジ部10cを有し、該エッジから中心部に向う部分に凹状の逃げ部10cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用チップ、より詳細には、歯科治療において、振動子を有するハンドピースに取り付けて、歯根、顎骨、歯槽骨、不良歯肉等をカットするのに好適な歯科用チップに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療においては、歯石の除去、根面の平滑化(Root Plainning)等を行うために、最近では、一般的に、振動子を用いたハンドピースを使用している。
【0003】
図3は、振動子を用いたハンドピースの例としての周知の超音波スケーラの一例を説明するための要部断面構成図で、図中、1は振動子(超音波振動子、エアー振動子、電動(モータ)振動子等、周知の任意所望の振動子)、2は振動子1を内蔵するハンドピースハウジングで、前記振動子1は該ハンドピースハウジング2内に収納され、これらによって振動ハンドピースを構成し、該ハンドピースの振動子1にチップ3が着脱自在に装着され、該チップ3が前記振動子1によって振動されて歯石の除去等が行われる。
【0004】
図4は、前記チップ3を前記振動子1に着脱自在に取り付ける機構の一例を説明するための図で、振動子1は、先端部に雌ネジ1aが形成されており、チップ3は、先端部(振動子1に接合される側)に前記雌ネジ1aに螺合する雄ネジ3aを有し、図示しないレンチ等の着脱工具をチップ3の段部3bに係合させて、チップ3を振動子1に着脱自在に螺合し、締め付けて固定するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チップ3の先端部(刃部)3’の形状は、その使用目的に応じて種々提案されており、例えば、手用スケーラでは、鎌形、鍬形、のみ型、匙形、やすり形等のものが提案されている。しかし、超音波スケーラチップは、そのほとんどが、図3及び図4に示したように、チップ3の先端部3’でのみしか作業することができず、その適用範囲が限られ、例えば、歯根や顎骨、歯槽骨、更には、不良歯肉をカットするには不向きであった。
【0006】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、特に、振動子により振動されるチップの作業面を工夫して、歯根や顎骨、歯槽骨、不良歯肉を切除するのに好適な形状を有するチップを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、振動体に着脱自在に連結され、該振動体によって振動される歯科用チップであって、該チップの先端部側における作業部は、その横断面形状の両端部においてエッジを有し、該エッジはその突出方向が逆方向であることを特徴としたものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記チップの作業部横断面形状は、前記エッジから中心部に向う部分において、前記エッジの突出側に凹状の曲げ部分を有することを特徴としたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記チップの作業部横断面形状は、該チップの中心に対して180°の回転対称に形成されていることを特徴としたものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は2又は3の発明において、前記チップの作業部横断面形状は、該チップの中心に対して180°の回転対称に形成されたゆるやかなS形であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明による歯科用チップは、振動体に着脱自在に連結され、該振動体によって振動され、歯槽骨等をカットする作業部に、その横断面形状の両端部においてエッジを設け、具体的には、該エッジの突出方向を前記両端部で逆方向とし、該エッジからチップの中心部に向う部分で該エッジの突出方向側に凹状の曲げ部(逃げ部)を有するようにしたので、歯槽骨等のカット時に被カット骨との接触が小さく、食い込みを防止することができ、また、両端ではエッジがたっているため切削効率が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明による歯科用チップを従来より周知のハンドピースに適用した場合の一例を説明するための図で、図1(A)は全体構造を示す側面図、図1(B)は図1(A)のB−B線断面図(チップ作業部の横断面図)、図1(C)は図1(B)の拡大図、図1(D)は本発明によるチップを用いて歯牙や歯槽骨Tをカットしている時の状態を示す図、図(E)は図(D)のカット部拡大図である。図1において、10は本発明による歯科用チップで、10a部は振動子と螺合するためのねじ部、10bはチップ10を振動子に螺着する時に用いるレンチを係合させるレンチ係合部で、図3及び図4にて説明したように、該レンチ係合部10bにレンチを係合させ、該レンチにてチップ10を回転してチップ10のねじ部10aを振動子のねじ部に締め付けて固定する。
【0013】
図1において、10cは作業部(刃部)で、該作業部10cは、振動子が駆動された時に、図1(B)に矢印Hで示す方向に振動する。作業部10cは、好ましくは、図1(C)の拡大断面図で示すように、断面がゆるやかなS形状に形成されており、これにより、逃げ部10cが形成され、図1(D),図1(E)に示すようにして、歯牙又は歯槽骨Tをカット線Lに沿ってカットする。而して、本発明による歯科用チップによると、エッジ部10c以外の点では、カットされる歯牙や歯槽骨Tに接触しないので、効果的に歯牙や歯槽骨をカットすることができる。
【0014】
図1に示したチップ10は、作業部10cの横断面形状をほぼS形にして逃げ部10cを設けたものであるが、この形状は、S形に限定されたものではなく、どのような形状でもよい。
【0015】
図2は、本発明による歯科用チップの他の実施例を示す横断面図で、基本的には、図2(A)に示すように、中央部10dを直線状とし、その両端側において、エッジ10c,10cを反対向(180°異ならせる方向)に向けるようにする(中心点Pに対して、回転対称にする)。図2(B)は、本発明による歯科用チップの他の形状を示す図で、この例は、10d,10d’からなる凸状外郭を有するP点対称の部材の10d’を凹部に加工して、凹部10eとしたもので、このようにしてもエッジ部10cを効果的に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を従来より周知のハンドピースに適用した場合の一例を説明するための図である。
【図2】本発明による歯科用チップの他の例を説明するための図である。
【図3】振動子を用いたハンドピースの例としての周知の超音波スケーラの一例を説明するための要部断面構成図である。
【図4】超音波振動子とスケーラチップとの着脱機構の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0017】
1…振動子、1a…雌ネジ、2…ハンドピースハウジング、3…チップ、3a…雄ネジ、3b…段部、3’…先端部、10…チップ、10a…ねじ部、10b…レンチ係合部、10c…作業部(刃部)、10c…逃げ部、10c…エッジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体に着脱自在に連結され、該振動体によって振動される歯科用チップであって、該チップの先端部側における作業部は、その横断面形状の両端部においてエッジを有し、該エッジはその突出方向が逆方向であることを特徴とする歯科用チップ。
【請求項2】
前記チップの作業部横断面形状は、前記エッジから中心部に向う部分において、前記エッジの突出側に凹状の曲げ部分を有することを特徴とする請求項1に記載の歯科用チップ。
【請求項3】
前記チップの作業部横断面形状は、該チップの中心に対して180°の回転対称に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用チップ。
【請求項4】
前記チップの作業部横断面形状は、該チップの中心に対して180°の回転対称に形成されたゆるやかなS形であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の歯科用チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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