説明

歯科用組成物

【課題】持続的にフッ化物イオンを遊離する、歯科用組成物を提供する。
【解決手段】a)重合性の成分と、b)フッ化物を遊離する物質と、c)親水性の成分と、d)重合開始剤と、e)酸性成分とを含み、付加水を本質的に含まず、吸水度が2週間で100gの組成物あたり少なくとも約1.5gである歯科用の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿った口腔環境に親和性を有する親水性の新規な歯科用の組成物又は製品に関する。別の態様において、この組成物及び製品は、多量に持続的にフッ化物イオンの遊離を可能にする。本発明の組成物は一般に、現場(in situ)硬化処理を後に行なうプレースメント用であるが、これらの組成物はまた、口腔の用途のための予備重合した製品の成形加工にも非常に適している。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の物質が、歯を修復するために開発されている。アマルガムの使用は、歯科において一般的であったけれども、ここ数十年において、歯色の修復用物質はさらに普及した。これらの組成物は一般に、重合性のエチレン性不飽和のモノマーと不活性充填剤とを含む。樹指系は一般に、Bis-GMA、TEGDMA、ウレタンジメタクリレートなどの混合物から成る。得られた修復用組成物は、一般に非常に疎水性で水に非混和性であり、そのため、修復する歯構造の表面から水分を除去する必要がある。臨床処置は、ラバーダムあるいは他の好適な処置によって十分に水分を制御する必要がある。しかし、水分は唾液流出及び/又は歯液の滲出によって口内に常に満たされているので、それを制御することにより、修復処置が医師にとって非常に取り組みやすくなる。他方、親水性の組成物は、周囲環境から水を吸収することができる。水性のセメント組成物、特にガラスアイオノマーセメントは、外部からの水分に耐性がある。このように、ウィルソン(Wilson)らによって記載されたセメントは、使用面で便利である。これらは、ポリアルケン酸水溶液と酸反応性のガラス粉末とからなる粉体/液体の2成分系である。現場重合性のセメントを得るために硬化性の部分を組み込んでこれらのセメントを改質することが記載されている。これらのセメントの特に魅力的な利点は、口腔環境においてセメント硬化物から多量のフッ化物が長期間にわたり遊離することである。これが2次齲食に侵されることから守ってくれると考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらのセメントの不便な点は、これらが一般に粉体/液体の2成分系であって、使用前に混合することが必要であるということである。さらに、一般的なガラスアイオノマーセメント物質は樹指ベースの複合材料と比較して機械的特性がずっと低い。それ故、これらの使用は応力のかからない用途に限定される。この不利な点を克服するために、米国特許第5,151,453号に記載されるような他の方法が考案された。しかし、これらの物質からフッ化物を遊離する量は、ガラスアイオノマーセメントと比較して非常に少ない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明において、a)重合性の成分と、b)フッ化物を遊離する物質と、c)親水性の成分と、d)重合開始剤と、e)酸性の成分とを含む歯科用の組成物が提供される。この歯科用の組成物は本質的に付加水を含まず、「吸水度」が2週間で100gの組成物当たり少なくとも約1.5gである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、非水性の歯科用の物質がフッ化物を少量しか遊離しないという不便な点を克服して、なおかつ機械的強度の高い硬化系を提供する。
【0006】
本発明において、「本質的に付加水を含まない」という表現の意味は、上記の組成物が、錯体を形成しない物質又は非配位物質として意図的に付加される水を含有しないことを意味する。金属又はガラスなどの多くの物質は、大気から取り入れられるか、あるいはその基底状態の配位錯体として存在している水を含有することが理解されよう。吸湿性の物質によって取り入れられるか、又は水化物として存在する水が、ここに記載した組成物中に許容しうる程度に存在する。同組成物中に存在している水は、供給源にかかわらず、組成物の長期特性に有害な作用を及ぼす量において存在するべきではない。例えば、水は、フッ化物を遊離する材料と酸性の成分との反応を促進し、そのために材料のでこぼこあるいは粒状性が製品化に必要とされる貯蔵期間に生じる量において存在するべきではない。
【0007】
本組成物の重合性の成分は、重合性の基を含有するモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーであってもよい化合物である。これらの重合性の基は、フリーラジカル重合性の基、カチオン重合性の基、又はそれらの混合物から選択してもよい。好ましくは、同重合性の化合物は、分子量が約100〜5000、より好ましくは、分子量が約200〜1000である。分子量がより高い重合性の物質とより低い重合性の物質との混合物はまた、取扱特性の特別な利点と硬化物質の最良の物理的特性とを提供するものとして考えられる。本発明の好ましい態様において、重合性の物質の少なくとも一部分が、全体が未硬化の物質の粘度を下げる働きをするように、組成物の他の成分より比較的粘度が低い。好ましくは、重合性の物質の少なくとも一部分の粘度が、2000cp未満、いっそう好ましくは500cp未満、最も好ましくは300cp未満である。
【0008】
重合性の成分を提供する好ましい物質は、アクリル酸又はメタクリル酸のエステルである。これらの化合物の具体例は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリル アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルメタクリレート(Bis-GMA)、グリセロールモノ-及びジ-アクリレート、グリセロールモノ-及びジ-メタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの繰り返し単位の数は、2〜30の範囲である)、ポリエチレングリコールジメタクリレート[エチレンオキシドの繰り返し単位の数は、2〜30の範囲である。特に、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)]、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート,ペンタエリトリトールとジペンタエリトリトールとのモノ-、ジ-、トリ-、及びテトラ-アクリレート及びメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバメート,ジ-2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサンエチレンジカルバメート,ジ-2-メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、2,2'-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2'-ビス(4-アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2'-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシ-フェニル)]プロパン、2,2'-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-アクリルオキシ-フェニル)プロパン、2,2'-ビス(4-メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2'-ビス(4-アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2'-ビス(4-メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2'-ビス(4-アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2'-ビス(4-メタクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2'-ビス(4-アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2'-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-メタクリレート]プロパン、2,2'-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリレート]プロパン、などである。
【0009】
他の好ましい重合性の成分は、置換アクリルアミド類及びメタクリルアミド類であってもよい。具体例は、アクリルアミド、メチレンビス-アクリルアミド、メチレンビス-メタクリルアミド、ジアセトン/アクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド及びN-アルキルメタクリルアミド[アルキルは、炭素原子が1〜6個の低級ヒドロカルビル単位である]である。重合性の成分の他の好適な例はイソプロペニルオキサゾリン、ビニルアズラクトン、ビニルピロリドン、スチレン、ジビニルベンゼン、ウレタンアクリレート又はメタクリレート、エポキシアクリレート又はメタクリレート及びポリオールアクリレート又はメタクリレートである。
【0010】
あるいは、重合性の成分はエポキシ物質、オキセタン、オキソラン、環状アセタール、ラクタム、ラクトン、及びジビニルエーテルあるいは環にO原子を含有するスピロ環状化合物などのカチオン性硬化物質であってもよい。
【0011】
本発明の組成物に有用なカチオン重合性のエポキシ樹脂はオキシラン環、すなわち、
【化1】

を有する開環重合性の有機化合物を含む。この物質は、総括的にエポキシドと呼ばれて、モノマーのエポキシ化合物とポリマータイプのエポキシドとを含み、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、又は複素環式であってもよい。これらの物質は一般に、平均して、分子ごとに少なくとも1個の重合性のエポキシ基を有し、好ましくは分子ごとに少なくとも約1.5個の重合性のエポキシ基を有する。ポリマーのエポキシド類は、末端エポキシ基(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)を有する線状重合体、オキシラン骨格単位(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)を有するポリマー、及びペンダントエポキシ基(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)を有するポリマーを含む。エポキシドはまじりけのない化合物であってもよいが、あるいは分子ごとに1、2個、又はそれ以上のエポキシ基を含有する混合物であってもよい。分子ごとのエポキシ基の「平均」数は、エポキシを含有する物質中のエポキシ基の合計の数を、存在するエポキシ分子の合計の数で割ることによって求められる。
【0012】
これらのエポキシを含有する物質は、低分子量のモノマー物質から高分子量のポリマーまでの範囲でもよく、それらの主鎖と置換基との性質が非常に異なってもよい。例えば、主鎖は任意の種類であってよく、その置換基は、室温においてカチオン性の硬化を本質的に妨げない任意の基であってもよい。許容範囲の置換基の具体例は、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホナート基、シロキサン基、ニトロ基、ホスファート基などを含む。エポキシを含有する物質の分子量は約58〜約100,000以上の範囲であってもよい。
【0013】
有用なエポキシを含有する物質は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、及びビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジピン酸とによって代表される、エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどのシクロヘキセンオキサイド基を含有する物質を含む。この種の有用なエポキシドのさらに詳細なリストを得るために、米国特許第3,117,099号を参照する(その内容を本願明細書に引用したものとする)。
【0014】
この発明の実施に特に有用なエポキシを含有するさらに別の物質は、式:
【化2】

[式中、R1はアルキル又はアリールであり、nは1〜6の整数である]
で表されるグリシジルエーテルモノマーを含む。具体例は、多価フェノールを、エピクロロヒドリン(例えば、2,2-ビス-(2,3-エポキシプロポキシフェノール)-プロパンのジグリシジルエーテル)などの余分のクロロヒドリンと反応させることによって得られる多価フェノールのグリシジルエーテルである。この発明の実施において用いることができるこの種類のエポキシドのさらに別の例は、米国特許第3,018,262号(その内容を本願明細書に引用したものとする)と、『ハンドブック・オブ・エポキシ・レジンズ(Handbook of Epoxy Resins)』(リー(Lee)、ネヴィル(Neville)共著、マグローヒル・ブック社(McGraw-Hill Book Co.)刊、ニューヨーク(1967年))に記載されている。
【0015】
この発明に用いることができる多くの市販のエポキシ樹脂がある。特に、容易に入手できるエポキシド類は、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン,スチレンオキシド,ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の商品名「エポン828(Epon 828)」、「エポン825(Epon 825)」、「エポン1004(Epon 1004)」、及び「エポン1010(Epon 1010)」、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)製の「DER-331」、「DER-332」、「DER-334」、ビニルシクロヘキセンジオキシド(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「ERL-4206」)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「ERL-4221」又は「UVR 6110」又は「UVR 6105」)、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキセンカルボキシレート(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「ERL-4201」)、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジピン酸(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「ERL-4289」)、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「ERL-0400」),ポリプロピレングリコールによって改質された脂肪族エポキシ(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「ERL-4050」及び「ERL-4052」)、ジペンテンジオキシド(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「ERL-4269」)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、FMC社(FMC Corp.)製の「オキシロン(Oxiron)2001」)、エポキシ官能基を含むシリコーン樹脂、難燃性エポキシ樹脂(例えば、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)製の「DER-580」、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールホルムアルデヒドノボラックの1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)製の「DEN-431及び「DEN-438」)、及びレゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、コパー社(Koppers Company,Inc.)製の「コポキサイト(Kopoxite)」)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジピン酸(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「ERL-4299」又は「UVR-6128」)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「ERL-4234」)、ビニルシクロヘキセンモノオキシド(ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製)、1,2-エポキシヘキサデカン(例えば、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製の「UVR-6216」)、アルキルC8-C10グリシジルエーテルのようなアルキルグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)7」)、アルキルC12-C14グリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)8」)、ブチルグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)61」)、クレシルグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)62)、p-tertブチルフェニルグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)65」)、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどの多官能性グリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)67」)、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)68」)、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)107」)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)44」),トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)48」)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)84」)、ポリグリコールジエポキシド(例えば、シェル・ケミカル社(Shell ChemicalCo.)製の「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier)32」)、ビスフェノールFエポキシド(例えば、チバ・ガイギー社(Ciba-Geigy Corp.)製の「EPN-1138」又は「GY-281、9,9-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)-フェニル]フルオレノン(例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)製の「エポン(Epon)1079」)を含む。
【0016】
さらに別のエポキシ樹脂は、グリシジルアクリレートとグリシジルメタクリレートのようなアクリル酸エステル又はグリシドールと1種以上の共重合性のビニル化合物とのコポリマー含む。このようなコポリマーの具体例は、1:1のスチレン-グリシジルメタクリレート、1:1のメチルメタクリレート-グリシジルアクリレート、及び62.5:24:13.5のメチルメタクリレート-エチルアクリレート-グリシジルメタクリレートである。
【0017】
他の有用なエポキシ樹脂が周知であり、エピクロロヒドリン類、例えば、エピクロロヒドリン;アルキレンオキシド、例えば、プロピレンオキシド、スチレンオキシド;アルケニルオキシド、例えば、ブタジエンオキシド;グリシジルエステル、例えば、エチルグリシド酸を含む。
【0018】
エポキシ樹脂のポリマーは任意に、室温においてカチオン性の硬化を本質的に妨げない他の官能基性を含有してもよい。
【0019】
種々のエポキシを含有する物質のブレンドは、この発明において特に考察されている。このようなブレンドの実施例は、低分子量(200未満)、中程度の分子量(約200〜10,000)及びより高い分子量(約10,000を超える)のように、2つ以上の分子量分布のエポキシを含有する化合物を含む。代わりにさらに、エポキシ樹脂は、脂肪族及び芳香族、あるいは官能基性、極性及び無極性のような異なった化学的性質を有するエポキシを含有する物質のブレンドを含んでもよい。他のカチオン重合性のポリマーをさらに取り入れてもよい。特に好ましいエポキシを含有する組成物はまた、ヒドロキシル官能基を有する物質を含有する。
【0020】
フリーラジカル重合した成分とカチオン重合した成分の両方を含有するハイブリッド系を含めて、重合性の物質の混合物もまた考察される。
【0021】
本発明のフッ化物を遊離する物質は、天然又は合成のフッ化物鉱物、フルオロアルミノシリケートガラスのようなフッ化物ガラス、無機フッ化物の単塩及び錯塩、有機フッ化物の単塩及び錯塩あるいはそれらの配合物であってもよい。任意にこれらのフッ化物の供給源を表面処理剤で処理することができる。
【0022】
フッ化物を遊離する物質の例は、米国特許第4,3814,717号に記載されているフルオロアルミノシリケートのガラスであり、米国特許第5,332,429号に記載されているように任意に処理できる(両方の開示内容を本願明細書に引用したものとする)。
【0023】
フッ化物を遊離する材料は、任意に、式
M(G)g(F)n又はM(G)g(ZFm)n
[式中、Mがカチオン種を形成することができると共に原子価が2以上である元素を表し、Gが元素Mと錯化できる有機キレート部分であり、Zは水素、ホウ素、窒素、リン、硫黄、アンチモン、ヒ素であり、Fはフッ化物原子であり、g、m及びnは少なくとも1である]
によって表される金属錯体であってもよい。
【0024】
好ましい元素Mの例は、IIA、IIIA、IVA族の金属と周期表の遷移金属及び内部遷移金属元素である。具体例はCa+2、Mg+2、Sr+2、Zn+2、Al+3、Zr+4、Sn+2、Yb+3、Y+3、Sn+4、を含む。最も好ましくは、MはZn+2である。
【0025】
G基は、上記の通り、有機キレート部分である。このキレート部分は重合性の基を含んでもよいし、あるいは含まなくてもよい。絶対に不可欠なわけではないが、或る場合にはキレート部分は、それが組み入れられる重合性の基質の反応性に一致する重合性の官能基を含有することが有利な場合がある。
【0026】
広範囲のキレート部分を本発明において用いることができる。金属イオンが4〜8員の環状構造に結合されているキレートが好ましく、5〜7員環のキレートが特に好ましい。本発明に有用なキレートは多座配位性であり、好ましくは二座、三座又は四座配位性である。ヒドロキシル基又はカルボキシ基あるいは両方を含有するキレートがさらに特に好ましい。このようなキレート剤の例は酒石酸、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ酒石酸、ニトリロ三酢酸、サリチル酸、メリット酸及びポリグリコールである。リン、ホウ素あるいは硫黄から誘導された1つ以上の酸性基を含有するキレートも使用することができるが、ただし、キレート化剤の分子量は約1000未満とする。特に好適な金属キレートの例は、β−ジケトンとβ−ケトエステルとの錯体を含む。
【0027】
重合性の金属フッ化物キレートは好ましくは、それが組み入れられる重合性の基質の反応性に一致する1つ以上の重合性の基を含有する。上に概説したキレート官能基のほかに、これらの錯体はエチレン性不飽和基、エポキシ基、エチレンイミン基などを含有することができる。
【0028】
好ましいG基は、トリポリリン酸ナトリウムとヘキサメタリン酸などのポリホスファート;エチレンジアミンテトラ酢酸,ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、N-ジヒドロキシエチルグリシン及びエチレンビス(ヒドロキシフェニルグリシン)などのアミノカルボン酸;アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン及びテノイルトリフルオロアセトンなどの1,3-ジケトン;リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、及び5-スルホサリチル酸などのヒドロキシカルボン酸;エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン及びトリアミノトリエチルアミンなどのポリアミン;トリエタノールアミン及びN-ヒドロキシエチルエチレンジアミンなどのアミノアルコール;ジピリジル及びo-フェナンスロリンなどの芳香族複素環塩;サリチルアルデヒド、ジスルホピロカテコール及びクロモトロプ酸などのフェノール;オキシン、8-ヒドロキシキノリン及びオキシンスルホン酸などのアミノフェノール;ジメチルグリオキシムとサリチルアドキシム ヒドロキサム酸及びその誘導体などのオキシム類;ジサリチルアルデヒド1,2-プロピレンジミンなどのSchiff塩基;テトラフェニルポルフィン及びフタロシアニンなどのテトラピロール類;トルエンジチオール(ジチオール)、ジメルカプトプロパノール、チオグリコール酸、エチルキサントゲン酸カリウム、ナトリウムジエチルジチオカルバメート、ジチゾン、ジエチルジチオリン酸及びチオウレアなどの硫黄化合物;ジベンゾ[18]クラウン-6(5)、(CH3)6[14]4,11-ジエン N4(6)及び(2.2.2-クリプテート)(7)などの合成大環状化合物;ポリエチレンイミン、ポリメタリーロイルアセトン、及びポリ(p-ビニルベンジルイミノジアセテート)などのポリマー化合物;ニトリロトリメチレンホスホン酸,エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)及びヒドロキシエチリデンジホスホン酸などのホスホン酸を含む。
【0029】
特に好ましいG基は次式で表される化合物である。
【化3】

【化4】

【0030】
フッ化物は、対イオン又は配位子のいずれかとして錯化金属に結合されている。このように、上記の名称(YF)は、フッ化物が錯体としてY基と結合されていることを表し、そしてそれは次に対イオンとしてあるいは配位子として金属と結合されていることを表す。
【0031】
本発明の特に好ましい組成物は、フッ化物の少なくとも2つの供給源を含む。第1の供給源は、上記のように、フッ化物を含有する金属錯体である。第2の供給源は、フッ化物を遊離するフルオロアルミノシリケートガラスである。両方の物質を使用すると、フッ化物が非常によく遊離し、これが初期期間及び組成物の長期にわたる使用において提供される。
【0032】
親水性の成分は、モノマー、オリゴマー又はポリマーとして提供することができる。好ましくは、それは線状のホモポリマー又はコポリマーのいずれかとして提供することができ、そのいずれも、任意にゆるく橋かけされていてもよい。親水性の成分は、約3重量%の濃度において水に混和しているのが好ましく、あるいはポリマー100g当たり少なくとも2gの水を吸収することができる。任意に、親水性の成分は、現場重合して吸水性のポリマーを生ずる親水性のモノマーであってもよい。
【0033】
多くの場合、酸性官能基を含有する化合物は親水性の性質である。この化合物が、上記の親水性の特性を満足する場合は、本発明において有用である。しかし、本発明で使用するための好ましい親水性の成分は、酸性でない官能基によって提供されるそれらの親水性の特性の少なくとも一部分を有することが、分かった。このように、本発明において使用するための好ましい親水性の化合物は、酸性官能基と酸性でない親水性の官能基とを含有し、本発明において使用するための最も好ましい親水性の化合物は、酸性の官能基を含有しない。
【0034】
親水性の成分の例は、ピロリドン、ヒドロキシ基とポリエーテル基含有部分、スルホナート基(SO3)含有部分、スルホン酸基(SO2)含有部分、N-オキシスクシンイミド、N-ビニルアセトアミド及びアクリルアミドのようなモノマー又はポリマーを含む。
【0035】
好ましい親水性の成分のさらに他の具体例は、非イオン性のポリマー又はコポリマーであり、例えば、ポリアルキレンオキシド(ポリオキシメチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド)ポリエーテル(ポリビニルメチルエーテル)、ポリエチレンイミンコポリマー、ポリアクリルアミド及びポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコール、ケン化ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルオキサゾリドン、N-オキシスクシンイミド基含有ポリマーであり、非イオン化性の部分中和又は完全中和した形のポリアクリル酸及びポリメタクリル酸と、ポリエチレンイミン及びその塩と、非イオン化性の部分中和又は完全中和した形のポリエチレンスルホン酸及びポリアリールスルホン酸と、非イオン化性の部分中和又は完全中和した形のポリリン酸及びホスホン酸とを含むイオン性又はイオン化ポリマー及びコポリマーである。
【0036】
一般に、極性基を有する化合物はいずれも、組成物に親水性の様相を提供することができる。好ましい親水性の化合物は、酸性、塩基性又は塩として提供される極性基を含有するアクリレート、メタクリレート、クロトン酸エステル、イタコン酸等のようなビニルモノマーの反応によって調製することができる。これらの基はまた、イオン性、又は中性であってもよい。
【0037】
極性又は分極性の基の例は、ヒドロキシ、チオ、置換又は未置換アミドのような中性基、環状エーテル(オキサン、オキセタン、フラン及びピランなど)、塩基性基(ホスフィンと、第一、第二、第三アミンを含むアミンなど)、酸性基(オキシ酸、及びC、S、P、Bのチオオキシ酸など)及びイオン性基(第四級アンモニウム、カルボキシル酸塩、スルホン酸塩、等)並びにこれらの基の前駆物質と保護形を含む。このような基のさらに別の具体例は次の通りである。
【0038】
親水性の成分は、一般式
CH2=CR2G-(COOH)d
[式中、R2=H、メチル、エチル、シアノ、カルボキシ又はカルボキシメチル、d=1〜5、及びGが、原子価d+1の1〜12個の炭素原子を含有すると共に任意に置換又は未置換ヘテロ原子(O、S、N及びPなど)によって置換され、及び/又は中断された結合又はヒドロカルビルラジカル結合基である。]
によって表される分子を含む単又は多官能性のカルボキシル基から誘導することができる。任意に、この単位はその塩の形で提供することができる。この種類の好ましいモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びN-アクリロイルグリシンである。
【0039】
親水性の成分は、例えば、一般式
CH2=CR2-CO-L-R3-(OH)d
[式中、R2=H、メチル、エチル、シアノ、カルボキシ又はカルボキシアルキル、L=O、NH、d=1〜5、及びR3が1〜12個の炭素原子を含有する原子価d+1のヒドロカルビル ラジカルである]
によって表される分子を含有する単又は多官能性のヒドロキシ基から誘導することができる。この種類の好ましいモノマーは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシメチル)エタンモノアクリレート、ペンタエリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドとヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドである。
【0040】
あるいは、親水性の成分は、一般式
CH2=CR2-CO-L-R3-(NR45)d
[式中、R2、L、R3、及びdは上に定義した通りであり、R4及びR5は、H又は炭素原子が1〜12のアルキル基であり、そしてまた、それらは炭素環あるいは複素環基を形成する]
によって表される分子を含有する単又は多官能性のアミノ基から誘導してもよい。この種類の好ましいモノマーは、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及び4−メチル-1−アクリロイル-ピペラジンである。
【0041】
親水性の成分はまた、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートあるいはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのようなアルコキシ置換(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドから誘導してもよい。
【0042】
親水性の成分は、一般式
【化5】

[式中、R2、R3、R4、R5、L及びdは、上に規定した通りであり、R6がHあるいは炭素原子1〜12個のアルキルであり、Qが有機又は無機の陰イオンである。]
によって表される置換又は未置換アンモニウムモノマーから誘導してもよい。このようなモノマーの好ましい例は、2-N,N,N-トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート、2-N,N,N-トリエチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート、3-N,N,N-トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、N(2-N',N',N'-トリメチルアンモニウム)エチル(メタ)アクリルアミド、N-(ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム)プロピル(メタ)アクリルアミドなどであり、対イオンはフッ化物、塩化物、臭化物、アセテート、プロピオナート、ラウリン酸塩、パルミタート、ステアラートなどであってもよい。モノマーはまた、有機又は無機系の対イオンのN,N-ジメチルジアリルアンモニウム塩であってもよい。
【0043】
アンモニウム基含有ポリマーはまた、上記のモノマーを含有する任意のアミノ基を親水性の成分として用い、得られたポリマーを、ペンダントアミノ基が本質的にプロトン付加されるpHにまで有機酸又は無機酸によって酸化させることによって調製することができる。全置換アンモニウム基含有ポリマーは、上記のアミノポリマーをアルキル化基によってアルキル化することによって調製してもよく、この方法は一般に、当技術においてはメンシュキン(Menschutkin)反応として周知である。
【0044】
本発明の親水性の成分はまた、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸等のような、スルホン酸基を含有するモノマーから誘導することができる。あるいは、親水性の成分は、亜リン酸あるいはホウ素酸基を含有するモノマーから誘導してもよい。これらのモノマーは、モノマーとしてプロトン付加酸の形で用いてもよいし、得られた対応するポリマーを塩の形のポリマーを提供するように有機塩基、又は無機塩基で中和してもよい。
【0045】
本発明の組成物は、組成物を使用中に重合させるために、1種以上の好適な重合開始剤を含有する。開始剤は、重合性物質の重合を開始できるように、選択される。すなわち、重合性物質がフリーラジカル重合性物質である場合は、開始剤はフリーラジカル重合開始剤である。また、重合性物質がカチオン重合性物質である場合は、開始剤はカチオン重合開始剤である。
【0046】
フリーラジカル重合させる本発明の組成物は、好ましくは、活性化される時にフリーラジカルの供給源として作用する1種以上の好適な光重合開始剤を含有する。この開始剤は単独で、又は1種以上の促進剤及び/又は増感剤と併用して用いることができる。光重合開始剤は、好適な波長と輝度の光に露光してエチレン性不飽和部分のフリーラジカル架橋を促進することができる。それはまた、一般的な歯科条件下でその貯蔵及び使用を可能するように、十分に貯蔵安定性を有し、好ましくない呈色がないことが好ましい。可視光用の光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤はしばしば単独で用いることができるが、一般にそれは好適な供与体化合物あるいは好適な促進剤(例えば、アミン、過酸化物、リン化合物、ケトンとアルファ-ジケトン化合物)と併用して用いる。
【0047】
好ましい可視光誘導重合開始剤は、カンファキノン(一般にアミンのような好適な水素供与体を配合される)、ジアリールヨードニウムの単塩又は金属錯塩、発色団置換ハロメチル−s−トリアジンとハロメチルオキサジアゾールを含む。特に好ましい可視光誘導光重合開始剤は、アルファ-ジケトン、例えば、カンファキノン、とジアリールヨードニウム塩、例えば、塩化ジフェニルヨードニウム、臭化ジフェニルヨードニウム、ヨウ化ジフェニルヨードニウムあるいはヘキサフルオロフォスフェートとの配合物を、付加水素供与体(ナトリウムベンゼンスルフィナート、アミン類及びアミンアルコールのような)を配合又は配合せずに、含む。
【0048】
好ましい紫外光誘導重合開始剤は、ベンジルとベンゾインのようなケトン類と、アシロインとアシロインエーテルを含む。好ましい市販の紫外光誘導重合開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(「アーガキュァ(IRGACURE)651」)とベンゾインメチルエーテル(2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン)(共に、チバ・ガイギー社(Ciba-Geigy Corp.)製)を含む。
【0049】
光重合開始剤は、所望の速度の光重合を提供するのに十分な量において存在するべきである。この量は一部は、光源、放射エネルギーに露光される層の厚さ、及び光重合開始剤の吸光率に依存する。一般に、光重合開始剤の成分は、組成物の全重量に対して、総重量が約0.01%〜約5%、いっそう好ましくは約0.1%〜約5%存在している。
【0050】
あるいは、本発明の組成物は、可視光に系を露光する必要なしに架橋反応を開始できる重合反応の開始の機作を組み入れてもよい。重合反応の開始のための好ましい別の機作は、歯科用の組成物がレドックス反応によって硬化することができるように、レドックス触媒系として酸化剤と還元剤とを取り込むことである。種々のレドックス系については、米国特許第5,154,762号(その開示内容を本願明細書に特に引用したものとする)に記載されている。
【0051】
酸化剤は、エチレン性不飽和部分の重合を開始することができるフリーラジカルを生じるために還元剤と反応させるか、もしくは協同させるべきである。酸化剤と還元剤とは、一般的な歯科条件下でそれらの貯蔵と使用を可能にするために十分に貯蔵安定性があり、望ましくない呈色を示さないことが好ましい。酸化剤と還元剤とはまた、十分に可溶性であり、適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量が存在するべきである。これは、エチレン性不飽和部分を酸化剤及び還元剤と化合させて、硬化体が得られるかどうか観察することによって評価できる。
【0052】
好適な酸化剤は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム及びアルキルアンモニウム過硫酸塩のような過硫酸塩と、過酸化ベンゾイルと、クメンヒドロペルオキシド、ター-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド及び2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサンのようなヒドロペルオキシドと、コバルト(III)と鉄(III)の塩と、ヒドロキシルアミンと、過ホウ酸とその塩、過マンガン酸塩の陰イオンの塩、及びそれらの配合物を含む。場合によっては、過酸化水素もまた使用してもよいが、これが存在する場合には、光重合開始剤を妨害することがある。酸化剤は任意に、米国特許第5,154,762号に記載されるようなカプセル封止した形で提供することができる。
【0053】
好ましい還元剤は、アミン(及び好ましくは芳香族アミン)、アスコルビン酸、金属錯化アスコルビン酸、塩化コバルト(II)、塩化鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、シュウ酸、チオ尿素及び、ジチオナイト、チオ硫酸塩、ベンゼンスルフィナート、あるいは亜硫酸エステル陰イオンの塩を含む。
【0054】
レドックス開始剤系を光重合開始剤系に用いる場合、重合前に還元剤が酸化剤と反応しないように注意することが好ましい。一般に、レドックス系を使用するには、2液式の物質を提供する必要がある。光重合開始剤系を利用する1液性の歯科用の組成物が好ましい。
【0055】
カチオン機構によって重合させる組成物については、好適な開始剤は、ジアリールヨードニウム、トリアリールスルホニウム及びアリールジアゾニウムの塩のようなカチオンを生じることができる塩を含む。このような系において電子供与体又は過酸化物を使用することはまた、硬化の速度と硬化の深さを増すことに役立つ。カチオン基及びフリーラジカル基の光重合を同時に開始することが、例えば、酸化剤を配合するしないに関わらずオニウム塩又は有機金属化合物によって可能になる。有機金属化合物は、光分解においてシグマ結合がへき開する化合物から選択することができる。シグマ結合は通常、金属-金属結合である。好適な有機金属化合物の例は、ヨードニウム塩と過酸化物とを化合させた[CoFe(Co)2]2、Mn(CO)10、及びMn2(CO)10、とを含む。
【0056】
本発明の組成物の酸性成分は、分子量10,000未満であって少なくとも1個の酸性基を含有するモノマー、オリゴマー又はポリマーである化合物によって提供される。酸性基は、いっそう好ましくはB、C、N、S、Pのオキシ酸又はチオ-オキシ酸から選択される。いっそう好ましくは、酸性成分は、C又はPの酸である化合物である。もし望むならば、酸無水物、例えば、4-メタクリルオキシエチル トリメリテート無水物(4-META)、あるいはエステルのような酸の前駆物質を、酸それ自体の代わりに用いることができ、例えば、現場で所望の酸を生み出すことができる。好適な酸は、カルボン酸、スルホン酸、及びフェノール類を含み、カルボン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、及びホスホン酸が好ましい。
【0057】
好適な有機酸は、酢酸、α-クロロプロピオン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ブロモ酢酸、10-カンファキノン-スルホン酸、10-ショウノウスルホン酸、クロロ酢酸、シトラコン酸、クエン酸、ジブロモ酢酸、ジクロロ酢酸、1,2,4,5ベンゼンテトラカルボン酸のジ-Hemaエステル、2,4-ジニトロフェノール、ギ酸、フマル酸、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、マレイン酸、メタクリル酸、2-ナフタレンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、p-ニトロフェノール、フェノール、リン酸、亜リン酸エステル(2,2'-ビス(a-メタクリルオキシ-b-ヒドロキシプロポキシフェニルのような)プロパンジホスホナート(ビス-GMAジホスホナート)、ジブチルホスファイト、ジ-2-エチル-ヘキシルホスファート、ジ-2-エチル-ヘキシルホスファイト、ヒドロキシエチルメタクリレートモノホスファート、グリセリルジメタクリレートホスファート、グリセリル-2-ホスファート、グリセリルリン酸、メタクリルオキシエチルホスファート、ペンタエリトリトールトリアクリレートモノホスファート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートモノホスファート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレートモノホスファート、及びジペンタエリトリトールペンタメタクリレートモノホスファート)、ピバル酸、プロピオン酸、硫酸、トルエンスルホン酸、トリブロモ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及びトリヒドロキシ安息香酸を含む。望むならば、このような酸の混合物を用いることができる。好ましい酸は、反応性のガラスと錯化することができる。
【0058】
必要ならば混合物はまた、酸基、それらの塩、又はそれらの反応性の誘導基を含有するけれども、重合性の基を含有しない他の化合物を含有することができる。この場合、エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート剤と共に、酒石酸、クエン酸、メリト酸、ポリカルボン酸、ポリリン酸、ポリホスホン酸、あるいはポリスルホン酸のような多塩基酸、及び特にそれらの塩が好ましい。
【0059】
本発明の特に好ましい組成物は、同組成物の重合性の成分の少なくとも一部と酸性成分の少なくとも一部が同じ化合物によって提供される組成物である。このような化合物の例は、分子量10,000未満であって少なくとも1個の酸性基と少なくとも1個の重合性の基とを含有するモノマー、オリゴマー又はポリマーである。好ましくは、これらの化合物は、分子量が約300〜5000、いっそう好ましくは約300〜1000である。酸性基は、B、C、N、S、Pのオキシ酸又はチオ-オキシ酸であってもよい。好ましくは、それはC又はPの酸である。
【0060】
これらの好ましい化合物は、構造(P)p--(Q)q--(R)r-によって規定される。
[式中、P=酸官能基を有する骨格鎖Q=硬化性の基を有する骨格鎖、例えばアクリレート、メタクリレート、エポキシなど、R=非反応性の修飾単位の骨格鎖、p1、q1、及びr=0以上]
【0061】
特に好ましい酸の種類は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、及びホウ酸、歯科の修復処置中の条件でこれらの酸に容易に転換される前述の酸の塩あるいは前述の酸の前駆物質である。このような化合物の例は、アクリロイル又はメタクリロイル置換ポリカルボン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートのリン酸エステル、ペンタエリトリトールジメタクリレートジペンタエリトリトールペンタ-アクリレートとグリセロールジメタクリレートのアクリレートとメタクリレートである。
【0062】
このような好ましい化合物の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、アコニット酸、グルタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、チグリシニン酸、2-クロロアクリル酸、3-クロロアクリル酸、2-ブロモアクリル酸、1-メタクリロイルマロン酸、1アクリロイルリンゴ酸、アミノ酸のN-メタクリロイル及びN-アクリロイル誘導体、及び酒石酸、クエン酸、リンゴ酸のようなエチレン官能基によってさらに官能基化された酸など、脂肪族カルボキシ化合物を含む。例えば、クエン酸はアクリロイル又はメタクリロイル官能基で置換することによってエチレン官能基化してもよい。これらの重合性の基は酸を含有する化合物に結合されてもよく、又は結合基を介して任意に結合されてもよい。好ましい結合基は、置換又は未置換アルキル、アルコキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アラルキル又はアルカリール基を含む。特に好ましい結合基は、エステル官能基を含み、最も特に好ましい結合基はアミド官能基を含む。
【0063】
他の好ましい化合物は、安息香酸、及びサリチル酸、トリメリット酸、フタル酸等のアクリロイル又はメタクリロイル誘導体のような芳香族カルボキシ化合物である。
【0064】
反応性の充填剤を本発明の組成物に含有させてもよく、それはフッ化物を遊離する性質を有しても有さなくてもよい。この充填剤は、一般にアイオノマーと共に用いられてアイオノマーのセメントを形成する充填剤を含む。好適な反応性の充填剤の例は、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムのような金属酸化物と、イオン透過性ガラス類を含み、これについては例えば、米国特許第3,655,605号、3,814,717号、4,143,018号、4,209,434号、4,360,605号及び4,376,835号に記載されている。この反応性の充填剤を、取り扱い特性を改良するか、あるいは最終組成物の凝結特性に影響を及ぼすために組み入れてもよい。
【0065】
反応性の充填剤は好ましくは細砕した反応性の充填剤である。充填剤は、他の成分と混合し、口内で用いるのに都合がよいように、十分に細砕されるべきである。充填剤の好ましい平均粒径は、例えば、沈降アナライザーを用いて測定すると、約0.2〜約15マイクロメータ、いっそう好ましくは約1〜10マイクロメータである。
【0066】
好ましい反応性の充填剤は、酸反応性である。好適な酸反応性の充填剤は、金属酸化物、金属塩及びガラスを含む。好ましい金属酸化物は、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛を含む。好ましい金属塩は、多価のカチオンの塩、例えば、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硝酸アルミニウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウムとフルオロホウ酸カルシウムを含む。好ましいガラスは、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス及びフルオロアルミノシリケートガラスを含む。上記の反応性の充填剤はすぐれた取り扱い特性と最終組成物の特性を提供するが、それは、反応時に、それらがゲル又は部分的なゲル構造を物質に与えるからである。
【0067】
反応性の充填剤の最も好ましいものは、フッ化物を遊離する充填剤である。フッ化物を遊離するガラスは、上記の良好な取り扱い特性及び最終組成物の特性に加えて、使用時に、例えば、口腔内でフッ化物を長期間にわたり遊離するという利点を提供する。フルオロアルミノシリケートガラスが特に好ましい。好適な反応性の充填剤はまた、当業者には周知のいろいろな販売元から入手できる。例えば、好適な充填剤は、「GC Fuji LC」及び「カー・XR(Kerr XR)」アイオノマーセメントのような多数のガラスアイオノマーセメントから得られる。望むならば、充填剤の混合物を用いることができる。
【0068】
望むならば、反応性の充填剤を表面処理にかけることができる。好適な表面処理は、酸洗浄処理の、ホスファートによる処理、酒石酸のようなキレート化剤による処理、シランあるいはシラノールカップリング剤による処理を含む。特に好ましい反応性の充填剤は、シラノール処理されたフルオロアルミノシリケートガラス充填剤であり、米国特許第5,332,429号(その開示内容を本願明細書に特に引用したものとする)に記載されている。
【0069】
非反応性の充填剤は、歯科の修復用組成物において現在用いられている充填剤のような、医療用途に使用される組成物への組み込みに適した1種以上の任意の物質から選択することができる。充填剤は、細砕されており、好ましくは最大粒径が約50マイクロメータ未満、平均粒径が約10マイクロメータ未満である。充填剤は、単峰又は多峰(例えば、双峰)の粒径分布を有することができる。充填剤は、無機系の物質であってもよい。それは、重合性の樹指に不溶であり、任意に無機充填剤を充填した橋かけした有機系物質であってもよい。充填剤は、いかなる場合にも毒性がなく、口内での使用に適していなければならない。充填剤は、放射性、X線透過性又は非放射性であってもよい。
【0070】
好適な非反応性の無機充填剤の例は、石英、窒化物(例えば、窒化ケイ素)、ガラス類、例えば、Ce、Sb、Sn、Zr、Sr、Ba、及びAl、コロイドシリカ、長石、ホウケイ酸ガラス、カオリン、タルク、チタニア及び亜鉛ガラスから誘導されたガラス類、米国特許第4,695,251号に記載されているようなモース硬度の低い充填剤、及びサブミクロンのシリカ粒子(例えば、デガッサ(Degussa)社製の「エアロシル(Aerosil)」シリーズ「OX50」、「130」、「150」及び「200」のシリカとキャボット・コーポレーション(Cabot Corp)製の「キャブ−O−シル M5(Cab-O-Sil M5)」シリカのような焼成シリカ)のような天然物質又は合成物質である。好適な非反応性の有機充填剤の粒子の例は、充填した、又は未充填の粉末状ポリカーボネート、ポリエポキシドなどである。好ましい非反応性の充填剤粒子は、水晶、サブミクロンシリカ、及び米国特許第4,503,169号に記載されるような種類の非ガラス質のマイクロ粒子である。これらの非反応的な充填剤の混合物がならびに、有機又は無機の物質から作製された組合せ充填剤もまた考えられている。
【0071】
充填剤粒子の表面は、充填剤と重合性の樹脂の間の結合を強めるためにカップリング剤によって処理されるのが好ましい。好適なカップリング剤の使用には、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシランなどを含む。
【0072】
望むならば、本発明の組成物は、共溶媒、顔料、抑性剤、促進剤、粘度改質剤、界面活性剤、レオロジー改質剤、着色剤、薬剤及び当業者には明白な他の成分のような補助剤を含有することができる。任意に、組成物は安定剤を含有することができる。安定剤を取り込むと、ペースト/ペースト組成物の色の安定性を改良するのに役立つ。好適な安定剤は、シュウ酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタリン酸、重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、及びそれらの配合物を含む。シュウ酸とメタ重亜硫酸ナトリウムとは好ましい安定剤である。
【0073】
本発明に有用な共溶媒は、低分子量の有機溶剤を含むが、これに制限するものではない。ここに用いる用語「共溶媒」は、均一な組成物を形成するために、組成物中の物質の溶解を助ける物質を指す。好適な共溶媒の例は、エタノール、プロパノール及びグリセロールを含む。
【0074】
この発明の組成物は、周囲の歯又は骨構造に十分に付着する物質が望ましい、歯科あるいは医療分野のいろいろな用途に用いることができる。例えば、これらの組成物は、歯科用の修復剤、ライナー、基剤、セメント、密封剤として、及び歯科用あるいは歯科矯正の接着剤として用いることができる。
【0075】
本組成物は初めに1液性のペースト組成物として提供されるのが好ましい。本発明のために、ペーストは、非弾性係数が物質の弾性係数より小さい物質として定義される。好ましくは、ペーストの粘度は、約1×102と1×1011Cpsとの間である。いっそう好ましくは、ペーストは約1×107と1×109Cpsとの間である。粘度は、約25℃において0.01と0.1sec-1の間のせん断速度においてレオメーターを用いて測定される。好ましいテスト標準手続として、20ミリの平行板、間隙が2mmにおいてボーリン(Bohlin)CS50制御応力レオメーター(メトリック・グループ社(Metric Group,Inc.)、ボーリン・インストルメント部、クランバリー(Cranbury)、ニュージャージー州)を利用する。応力は、1パスカルから、約0.1sec-1のせん断速度に達するのに十分な応力まで増やす。
【0076】
本発明は、説明のための以下の実施例からさらに理解されるが、本発明の範囲を制限しようとするものではない。特に指示しない限り、部及びパーセントはすべて、重量部及び重量パーセントである。
【0077】
吸水性テスト
吸水性は、各々の組成物を直径20ミリ、厚さ1mmの円板に成形することによって測定した。各々の円板の両側をポリエチレンテレフタレート(「PET」)薄膜で覆い、2つの対向したスリーエム・ビジラックス2・可視光硬化装置(3MTMVisiluxTM2 Visible Light Curing Unit)を用い、光ガイドの出力端と試料との間の距離を約1cmにして、両面を30秒間、光硬化した。次に、薄膜を剥離し、露光した試料を37℃/95%相対湿度(「RH」)において1時間硬化させた。各々の円板の重量を計り、25ミリリットルの脱イオン水を入れたガラスジャー中に置いた。同試料を所定の時間、37℃に維持した。
【0078】
所定の時間において、同試料をジャーから取り除き、表面の水をティッシュペーパー又は綿を用いて取り去り、試料はすぐに重量を計った。重量を記録し、試料を試用ジャー中の水に戻した。定められた定期的な間隔において、上記の処置を繰り返し、試料の重量を記録した。各々の特定の時間間隔において、各々の組成物の3つの試料について吸水性を測定し、平均は硬化した組成物の100グラム当たりのグラム単位で記録した。
【0079】
本発明は、説明のための以下の実施例からさらに理解されるが、本発明の範囲を制限しようとするものではない。特に指示しない限り、すべて、重量部及び重量パーセントで示し、すべての分子量は重量平均分子量である。
【実施例】
【0080】
予備実施例1
フルオロアルミノシリケートガラスの処理
以下の表1に明らかにした成分は、約1350〜1450℃においてアーク炉中で混合、溶融し、炉から薄く細流にして注ぎ、冷却ローラを用いて急冷してアモルファス単相フルオロアルミノシリケートガラスを提供する。
【表1】

【0081】
ガラスをボールミルし、ブルーナー(Brunauer),エメット(Emmet)及びテラー(Teller)(BET)法を用いて測定した表面積が2.5〜3.2m2/gの粉末フリットを提供する。
【0082】
シラノール溶液を、2.4部のガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(「A-174」、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)製)、12.6部のメタノール、36.5部の水、及び0.33部の酢酸を混合して調製した。混合物を、周囲温度において60分間、磁気撹拌し、60.8部のガラス粉末に添加し、周囲温度において30分間スラリーにされた。スラリーは、プラスチックによって内側を覆ったトレー中に注ぎ、80℃において10時間乾燥させた。シラノール処理した乾燥粉体は、60マイクロメータメッシュのスクリーンを通してふるい分けした。
【0083】
予備実施例2
処理済OX−50
A-174(3.7g)を、トリフルオロ酢酸を滴下してpH3〜3.3の酸性にした50gの脱イオン水に、撹拌しながら添加した。得られた混合物を、約25℃において1時間、撹拌し、その時、95gのOX-50を、4時間継続して撹拌しながら同混合物に添加した。スラリーを、プラスチックによって内側を覆ったトレー中に注ぎ、35℃において36時間乾燥させた。シラノール処理した乾燥粉体は、74マイクロメータメッシュのスクリーンを通してふるい分けした。
【0084】
予備実施例3
処理済ジルコニア:シリカ充填剤
25.5部のシリカゾル(「ラドックス(LUDOX)」LS、E.I.デュボン・ドゥ・ヌムール社(duPont de Nemours & Co)製)を、0.255部の濃縮した硝酸を急速に付加して酸化させた。別の容器中で、12.9部のイオン交換したジルコニアアセテート(マグネシウム・エレクトロン社(Magnesium Elecktron Inc.)を20部の脱イオン水で希釈し、得られた溶液を0.255部の濃縮した硝酸で酸化させた。前記のシリカゾルを撹拌したジルコニルアセテート溶液に注ぎ込み、1時間混合すると同時に撹拌した混合物を「CUNO」5マイクロメータ及び1マイクロメータのフィルター(コマーシャル・インターテック社(Commercial Intertech Corp.)製)を通して濾過した。撹拌した濾過混合物をさらに、1マイクロメータ「ハイトレックス(HYTREX)」フィルター(オズモニクス社(Osmonics,Inc.)製)を通して濾過し、次いで、0.22マイクロメータの「ブラストン(BALSTRON)」フィルター(ブラストン社(Balston Inc.))によって濾過した。濾液は深さ約25ミリメートルまでトレー中に注ぎ、約24時間、強制空気オーブン内で65℃において乾燥させた。得られた乾燥物質をオーブンから取り除き、600℃に予熱した回転式の管状炉を通して乾燥させ、21部の仮焼マイクロ粒子を得た。仮焼マイクロ粒子は、マイクロ粒子のすべてが粒径10マイクロメータ未満になるまで、回転ドラム式ボールミルで粉砕された。粉砕マイクロ粒子の0.3部をセラミックサガー内に置き、1時間825℃において空気中で電気かま(ハーパー・ファーニス・コーポレーション(Harper Furnace Corporation)で焼成した。焼成マイクロ粒子は空気中で冷却させておいた。冷却したマイクロ粒子は、シランが11.1部とマイクロ粒子が100部の比において、加水分解したA-174シラン中でスラリーにされ、強制空気オーブン内で乾燥させ、74マイクロメータメッシュのスクリーンを通して選別した。
【0085】
実施例1
重合性の成分「A1」の調製
クエン酸(400g)を、機械的攪拌機、コンデンサー、添加漏斗、及び給気口チューブを備えた反応容器内で、2Lのテトラヒドロフランに溶かした。得られた均一な溶液に、付加的な0.52gのブチル化ヒドロキシトルエン(「BHT」)、0.5gのトリフェニルアンチモン(「TPS」)、0.98gのジブチル錫ジラウレート(「DBTDL」)を添加した。乾燥空気を注入口チューブを通して反応混合物に導入した。2-イソシアナトエチルメタクリレート(「IEM」;161.5g、1.04モル)を約40℃の反応温度を維持するように添加漏斗を通して滴下した。反応の後に引き続いて赤外分光分析(「IR」)を行なった。すべてのIEMを添加してIRスペクトルがイソシアナート基の存在を示さなくなってから、溶剤を真空下で反応混合物から取り除き、得られた粘着性の液体を乾燥させた。核磁気共鳴スペクトル分析(「NMR」)により、付加メタクリレート官能基の存在とカルボキシ基の保持が確認された。
【0086】
実施例2
重合性の成分「A2」の調製
ポリアクリル酸(8.64g、分子量2,000)と75mLのTHFとを、攪拌機、コンデンサー、添加漏斗、及び給気口チューブを備えた反応フラスコに添加した。2〜3時間、50〜70℃の浴温度において撹拌した後、濁った溶液が得られた。浴温度は40〜50℃に維持し、0.093gのBHT、0.093gのTPSと及び0.64gのDBTDLを5ミリリットルの乾燥THF中に含有する溶液を反応混合物に添加した。IEM(9.3g)を、1時間にわたり、添加漏斗を通して滴下した。混合物は、IRスペクトルがイソシアナート帯域の完全な消失を示すまで撹拌を続け、その時に反応混合物を石油エーテル中に注いだ。白い、固体のポリマーが沈殿し、濾過によって単離し、真空下で洗浄及び乾燥させた。
【0087】
実施例3
金属フルオロ錯体の調製
金属フルオロ錯体DI〜DXIを別々に、表2に示した量のカルボン酸錯化剤を水に溶かして調製した。番号DI〜DXIの錯体について、フッ化亜鉛の粉体を、約半時間、各々の水溶液によってスラリーにしたが、その後に同スラリーを浅いトレーに流し込み、55℃において一晩乾燥させた。次に、各々の錯体を、自由流動状態の粉体を提供するために10のマイクロメータメッシュのスクリーンを通してふるい分けした。
【0088】
番号DX及びDXIの錯体を、亜鉛錯体について詳述したのと同様に調製したが、ただし、それぞれ20gの三フッ化アルミニウムと20gの四フッ化ジルコニウムとをフッ化亜鉛の代わりに用い、得られた錯体を74マイクロメータメッシュのスクリーンを通してふるい分けした。番号DXIIの錯体は、フッ化亜鉛をアセトアセトキシエチルメタクリレート(「AAEM」、イーストマン・ケミカルズ社(Eastman Chemicals)、テネシー州)、10gのエタノール及び5gの脱イオン水の混合物と混合して調製した。得られた混合物を周囲温度において12時間、撹拌した。次に、固体を濾過によって採取し、12時間45℃において真空下で乾燥させた。番号DXIIの錯体の細かい粉体を生じるように、乾燥した固体を乳鉢と乳棒で押しつぶした。
【0089】
【表2】

【0090】
実施例4
親水性の成分「C1」の調製
磁気攪拌機、蠕動ポンプに接続した2つの添加漏斗、温度計、ガス注入口チューブ及び還流凝縮器を備えたガラス反応フラスコに、300ミリリットルの乾燥THFを入れた。1つの添加漏斗に、エチルメタクリレート(18.24g、0.16モル)、アクリル酸(28.8g、0.4モル)、N-ビニルピロリドン(「NVP」、26.98g、0.24モル)及び200mLの容積までのTHF溶液を入れた。第2の添加漏斗に、0.82gのアゾビスイソブチロニトリル(「AIBN」)を60mLのTHFに溶かした溶液を入れた。両方の溶液を、15分間乾燥窒素で浄化した。反応容器を60℃に加熱し、両方の添加漏斗からの投入量を、6時間の間に蠕動ポンプによって添加した。添加が完了すると、反応物を、一晩、60℃において撹拌した。次に、300ミリリットルの乾燥ジメチルホルムアミド(「DMF」)を、反応容器に添加し、温度を40℃まで下げた。BHT(00.94g)、TPS(00.94g)及びDBTDL(0.644g)を、反応混合物に添加し、注入口チューブ中の窒素を乾燥空気に取り替えた。IEM(18.6g、0.12モル)を45ミリリットルのTHFに溶かした溶液を、反応混合物に2時間以上滴下した。次に、同反応混合物を40℃において更に1時間、撹拌を続けた。溶媒を元の約半分の量に減少するまで真空下で一部取り除き、得られた溶液を酢酸エチルに流し込んだ。沈殿したポリマーを、濾過によって採取し、真空下で洗浄及び乾燥させた。
【0091】
実施例5
親水性の成分「C2」の調製
磁気攪拌機、蠕動ポンプに接続した2つの添加漏斗、温度計、ガス注入口チューブ及び還流凝縮器を備えたガラス反応フラスコに、500ミリリットルの乾燥THFを入れた。1つの添加漏斗に、エチルメタクリレート(34.25g、0.3モル)、アクリル酸(50.4g、0.7モル)、及び200mLの容積までのTHF溶液を入れた。第2の添加漏斗に、0.82gのアゾビスイソブチロニトリル(「AIBN」)を60mLのTHFに溶かした溶液を入れた。これらの溶液を、15分間乾燥窒素で浄化した。反応容器を60℃に加熱し、両方の添加漏斗からの投入量を、6時間の間に蠕動ポンプによって添加した。添加が完了すると、反応物を、一晩、60℃において撹拌した。次に、反応温度を35℃まで下げた。BHT(0.165g)、TPS(0.165g)及びDBTDL(1.13g)を、反応混合物に添加し、注入口チューブ中の窒素を乾燥空気に取り替えた。IEM(32.55g、0.21モル)を200ミリリットルのTHFに溶かした溶液を、反応混合物に2時間以上滴下した。次に、同反応混合物を35〜40℃において更に1時間、撹拌を続けた。溶媒を元の約3分の1の量に減少するまで真空下で一部取り除き、得られた溶液を酢酸エチルに流し込んだ。沈殿したポリマーを、濾過によって採取し、真空下で洗浄及び乾燥させた。
【0092】
実施例6
親水性の成分「C3」の調製
磁気攪拌機、蠕動ポンプに接続した2つの添加漏斗、温度計、ガス注入口チューブ及び還流凝縮器を備えたガラス反応フラスコに、500ミリリットルの乾燥THFを入れた。1つの添加漏斗に、エチルメタクリレート(17.12g、0.15モル)、アクリル酸(50.4g、0.7モル)、メタクリル酸(12.9g、0.15モル)及び200mLの容積までのTHF溶液を入れた。第2の添加漏斗に、0.82gのAIBNを60mLのTHFに溶かした溶液を入れた。両方の溶液を、15分間乾燥窒素で浄化した。反応容器を60℃に加熱し、添加漏斗からの投入量を、6時間の間に蠕動ポンプによって添加した。添加が完了すると、反応物を、一晩、60℃において撹拌した。次に、反応温度を35℃まで下げた。BHT(0.165g)、TPS(0.165g)及びDBTDL(1.13g)を、反応混合物に添加した。注入口チューブ中の窒素を乾燥空気に取り替えた。IEM(32.55g、0.21モル)を200ミリリットルのTHFに溶かした溶液を、反応混合物に2時間以上滴下した。次に、同反応混合物を35〜40℃において更に1時間、撹拌を続けた。溶媒を元の約3分の1の量に減少するまで真空下で一部取り除き、得られた溶液を酢酸エチルに流し込んだ。沈殿したポリマーを、濾過によって採取し、真空下で洗浄及び乾燥させた。
【0093】
実施例7
親水性の成分「C4」の調製
磁気攪拌機、蠕動ポンプに接続した2つの添加漏斗、温度計、ガス注入口チューブ及び還流凝縮器を備えたガラス反応フラスコに、210ミリリットルの乾燥THFを入れた。1つの添加漏斗に、アクリル酸(50.4g、0.7モル)、NVP(33.3g、0.3モル)及び250mLの容積までのTHF溶液を入れた。第2の添加漏斗に、0.82gのAIBNを60mLのTHFに溶かした溶液を入れた。両方の溶液を、15分間乾燥窒素で浄化した。反応容器を60℃に加熱し、添加漏斗からの投入量を、4時間の間に蠕動ポンプによって添加した。添加が完了すると、22mLの乾燥DMEを添加し、反応物を一晩、60℃において撹拌した。次に、反応温度を35℃まで下げた。BHT(0.15g)、TPS(0.15g)及びDBTDL(1.03g)を、前記の反応混合物に添加し、注入口チューブ中の窒素を乾燥空気に取り替えた。IEM(32.55g、0.21モル)を200ミリリットルのTHFに溶かした溶液を、反応混合物に2時間以上滴下した。次に、同反応混合物を35〜40℃において更に1時間、撹拌を続けた。溶媒を元の約3分の1の量に減少するまで真空下で一部取り除き、得られた溶液を酢酸エチルに流し込んだ。沈殿したポリマーを、濾過によって採取し、真空下で洗浄及び乾燥させた。
【0094】
実施例8
ペーストを、表3に示した成分を混合して調製した。実施例1の重合性の成分A1、グリセロールジメタクリレート(「GDMA」、ローム・テック社(Rohm Tech,Inc.)製、モールデン(Malden)、マサチューセッツ州)の特定量と、1.1g(又は添加しない)ポリ(N−ビニルピロリドン)(「PVP」)、インタナショナル・スペシャリティ・プロダクト社(International Specialty Products)、ウェイン、ニュージャージー州)とを、0.095gのカンファキノン(「CPQ」)及び0.37gのエチル(4−ジメチルアミノ)安息香酸(「EDMAB」)とよく混合した。得られた混合物の一部を、予備実施例1(「PE1」)のガラス+予備実施例(「PE2」)の2%OX-50の特定量と表2の4g(又は添加しない)の錯体DIと配合した。ペーストを、マニュアル又は双プラネタリミキサを用いて機械的に混合した。
【0095】
【表3】

【0096】
表3の各々の組成物の吸水性、ならびにディラクト(Dyract)TMLight Cured Compomer(「ディラクト(Dyract)」、デンツプライ・インタナショナル社(Dentsply International Inc.))の吸水性を、吸水性テストに記載の方法を用いて7日目と14日目に測定した。結果は表4に示した。
【0097】
各々の組成物の増加したフッ化物遊離量を3日後に測定し、ディラクト(Dyract)の増加したフッ化物遊離量と比較した。各々の組成物の円板を吸水性テストについて記載したように用意し、硬化した。各々の円板を、37℃において25ミリリットルの脱イオン水を入れたジャー内に置いた。
【0098】
オリオン・モデル(Orion Model)9609−00(オリオン・リサーチ社(Orion Research Inc.)製、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)のフッ化物選択電極を、水中で試料から遊離したフッ化物イオンの量を定量化するために用いた。電極は、フッ化物活量標準#940907及び#040908、それぞれ100ppm(″百万分率″)及び10ppmのフッ化物標準液(両方ともオリオン・リサーチ社(Orion Research Inc.)製)を用いて較正した。
【0099】
水中に遊離されたフッ化物イオンの測定のために、10ミリリットルの試料溶液を指定された日に60mLビーカーに移し、10ミリリットルのTISAB溶液(全イオン強度調整緩衝液、オリオン・リサーチ社(Orion Research Inc.)製、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)をビーカーに加えた。内容物を10秒間、混合した。較正されたフッ化物選択電極を溶液中に置き、ppm F-を記録し、硬化した円板の平方センチメートル当たりのF-マイクログラムに換算した。次に、残余の液体を試料ジャーから取り除き、新たに25ミリリットルの量の脱イオン水に入れ替えた。試料ジャーを、37℃のオーブンに数日、特定の期間移し、その時に、試料ジャーをオーブンから取り除き、その期間の間に遊離したF- ppmを、上記のように測定した。硬化した円板の平方センチメートル当たりのF-マイクログラムを再び計算し、これらの値を水中の貯蔵時間の関数として報告した。各々の組成物の3つの試料についてフッ化物の遊離値を測定し、平均値を記録した。結果を表4に示す。
【0100】
【表4】

【0101】
表4のデータは、本発明の実施番号1〜4の組成物が一般的に、市販のフッ化物を遊離する1液性のペースト物質、ディラクト(Dyract)よりずっと多い水を取り込み、それに対応して、ずっと多量のフッ化物を遊離したことを示す。さらに、増加したフッ化物遊離量のデータは、親水性の樹指基質中のフルオロアルミノシリケートガラスは、ディラクト(Dyract)に比較して、フッ化物の遊離が増大したことを示すが、メタロフルオロ錯体を実施番号1及び3の組成物に添加したことにより、フッ化物の遊離が本質的に増加したことを示す。
【0102】
実施例9
ペーストを、表5に示した成分を混合して調製した。実施例1の重合性の成分A1、GDMA及び成分Cの特定量を、100に対して0.42部の濃度のCPQ及び100に対して1.65部の濃度のEDMABとよく混合した。得られた混合物の一部を、表5に示したように、PE1のガラス+PE2の2%OX-50と実施例3の錯体の特定量とに配合した。ペーストを、マニュアル又は双プラネタリミキサを用いて機械的に混合した。
【0103】
圧縮強さ(「CS」)と直径方向の引張強さ(「DTS」)との定量のために、各々の実施番号の組成物を、内径4ミリのガラスチューブ中に充填し、それにシリコーンゴム栓で蓋を被せ、約0.28MPaにおいて15分間、軸方向に圧縮し、次いで2つの対向して配置したビジラックス(Visilux)装置への露光によって80秒間、光硬化した。次に、各々の試料を30秒間、デンタカラーXS(Dentacolor XS)装置(「クルツァ(Kulzer)」)を用いて照射した。硬化した試料を、ダイヤモンドソーで切分け、CSの測定用の長さ8ミリの円筒状の栓及びDTSの測定用の2ミリの円筒状の栓を成形した。栓は、24時間37℃において蒸留水中に保管した。各々の組成物についてCS値及びDTS値を、各々、ADA(アメリカンデンタルアソシェーション)仕様書No.9及びADA仕様書No.27に従って測定した。
【0104】
【表5】

【0105】
実施番号1〜13のペースト組成物のCS及びDTSは、CSが214MPaの3Mビトリマーガラスアイオノマーコアビルドアップリストーラティブ(3MTMVitremerTMGlass Ionomer Core Build-up Restorative)(「ヴィトリマー(Vitremer)」、3M社製)及びCSが262MPaのディラクト(Dyract)の2つの市販のフッ化物遊離物質の機械的特性よりも優れている。
【0106】
表5の実施番号2、4及び6の組成物の吸水性並びにディラクト(Dyract)の吸水性を、吸水性テストに記載された方法を用いて5日目、12日目及び28日目に測定した。結果は表6に示す。
【0107】
実施番号1、2、6、9及び10の組成物ならびにディラクト(Dyract)及びヴィトリマー(Vitremer)の組成物の増加したフッ化物遊離量を、実施例8に記載した手法を用いて、4日目、8日目、14日目、21日目及び27日目に測定した。結果は表6に示す。
【0108】
【表6】

【0109】
表6のデータが示すように、本発明の組成物が、市販のフッ化物を遊離する1液性のペースト物質であるディラクト(Dyract)に比較してより大きな吸水性、より大きなフッ化物の遊離量を示した。フッ化物の遊離速度は、水性の粉体:液体型のガラスアイオノマーであるヴィトリマー(Vitremer)と同程度である。
【0110】
実施例10
3種の樹脂混合物は、7.0gの実施例1の重合性の成分A1と、13.9gのGDMAと、1.1gのPVPと、0.095gのCPQと、0.37gのEDMABとを、均一な混合物を提供するようにいっしょに混合して調製した。次に、ペーストは、PE1のガラスと、PE2の2%のOX-50とのブレンド74gと、表2の指定した錯体の4.0gとを各々の混合物に添加して混練した。得られた3種のペーストが室温において安定していたのに対して、処理されていないフッ化亜鉛を用いて調製された対照用ペーストは、放置すると実質的に厚くなり、24時間後、もろくなった。
【0111】
実施例8の処置を用いると、実施番号1〜3の組成物の増加したフッ化物遊離量を測定し、ディラクト(Dyract)及びヴィトリマー(Vitremer)の遊離量と比較した。結果は表7示す。
【0112】
【表7】

【0113】
増加したフッ化物遊離量の表7の結果が示すように、親水性の基質を含有する本発明のペースト組成物は、市販のフッ化物を遊離する1液性のペースト物質であるディラクト(Dyract)よりも大きなフッ化物の遊離量を示した。遊離したフッ化物の量は、水性の粉体:液体型のガラスアイオノマーであるヴィトリマー(Vitremer)と同程度である。
【0114】
実施例11
4種の樹脂混合物を、7.35gの実施例1の重合性の成分A1と、14.65gのGDMAと、0.095gのCPQと0.37gのEDMABとを、均一な混合物を提供するようにいっしょに混合して調製した。次に、ペーストは、表2から各々の混合物に上記の種類の充填剤の量と、表8に示したように、表2の錯体D1の2.0g(あるいは添加しない)とを各々の混合物に添加して混練した。
【0115】
漸増的なフッ化物の遊離は、吸水性テストに関して記載したように調製及び硬化した組成物の円板上で測定した。各々の円板を、0.7gのKH2PO4と0.71gのNa2HPO4とを1リットルの脱イオン水中で混合して37℃においてpHが6.8〜7.0の0.01M溶液を提供するように調製したホスファート緩衝液のジャー中に置いた。
【0116】
実施例8の増加したフッ化物遊離量のために記載した較正したフッ化物選択電極を、表8に指定した日に、円板を入れた緩衝液中に置き、F-のppmを記録した。次に、硬化した円板の平方センチメートル当たりのF-マイクログラムを計算し、これらの値を水中の貯蔵時間の関数として報告した。各々の組成物の3つの試料についてフッ化物の遊離値を測定し、平均値を表8に記録した。実施番号4の組成物は、フッ化物の遊離が測定されなかった。
【0117】
【表8】

【0118】
表8のデータが示すように、フルオロ錯体を組み込むと、実施番号2及び3の組成物のフッ化物遊離量が増加した。この結果は、他の酸反応性の充填剤をこの系に組み入れなかった場合でも、認められた。このように、実施番号3及び4の両方が、非酸反応性の充填剤を含有したが、フルオロ錯塩を含有する3だけがフッ化物の遊離が測定できた。
【0119】
実施例12
原液を、219gの実施例1の重合性の成分A1と、400gのGDMAと、30gのPVPと、11gのEDMABと、2.8gのCPQとを混合して作製した。次に、6種のペースト剤を、12.6gの前記の原液と、43.8gのPE1のガラスと、1.2gのPE2のOX-50と、2.4gの表9に示した実施例3の錯体とを用いて調合した。組成物のCS及びDTSは、実施例9で述べた方法に従って測定した。
【0120】
【表9】

【0121】
表9のデータが示すように、親水性の樹指基質とフッ化亜鉛錯体とを含有する1液性ペースト組成物は、すぐれた機械的特性を示す硬化試料を提供した。
【0122】
実施例13
2種のペースト剤を、実施例12の原液の12.4gと、PE1のガラスの43.8gと、PE2のOX-50の1.2gと、実施例3のアルミニウムフルオロ錯体あるいはジルコニウムフルオロ錯体の2.4gとを用いて調合した。3番目のペースト剤を、最初の2種のペースト剤について記載したように調合した。ただし、実施例12の原液の12.6gを用い、フルオロ錯体はDXIIであった。CS及びDTSは、実施例9で述べた方法に従って測定し、増加したフッ化物遊離量は、実施例8で述べた方法に従って測定した。
【0123】
【表10】

【0124】
表10のデータは、親水性の基質と種々のメタロ-フルオロ錯体とを含有するペースト剤の別の実施例を示す。これらのペースト剤は、すぐれた機械的特性ならびに非常に高いフッ化物遊離量を示した。
【0125】
実施例14
原液を、40gのGDMA、3gのPVP、1.1gの過酸化ベンゾイル及び0.088gのBHTを溶解して調製した。次に、原液の8.4gを実施例1の重合性の成分A1の4.2gと配合した。得られた均一な液体を、43.8gのPE1ガラスと、1.2gのPE2のOX-50と、2.4gの実施例3の錯体DIと配合してペースト剤「A」を得た。
【0126】
3種のペースト「B」調合物は、43.8gのPE1のガラスと、1.2gのPE2のOX-50と、2.4gの実施例3の錯体DIとを12.6gの以下の表11に示した成分と配合して調製した。
【0127】
【表11】

【0128】
組成物を、ペーストAの4部を、ペーストB1、B2及びB3のそれぞれ1部と配合して調製した。硬化時間を、ISO 仕様書9917に従って測定し、CS及びDTSを、実施例9に記載した方法に従って測定した。
【0129】
【表12】

【0130】
表12のデータは、混合した時に硬化して臨床的に許容できる範囲の十分な物理的特性と硬化時間とを示す物質を生じる親水性の樹指基質とフルオロ錯体とを含有する2液性のペースト組成物を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)重合性の成分と、
b)フッ化物を遊離する物質と、
c)親水性の成分と、
d)重合開始剤と、
e)酸性成分と、
を含む歯科用の組成物であって、付加水を本質的に含まず、吸水度が2週間で100gの組成物あたり少なくとも約1.5gである歯科用の組成物。

【公開番号】特開2008−50369(P2008−50369A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289644(P2007−289644)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【分割の表示】特願平9−519706の分割
【原出願日】平成8年10月10日(1996.10.10)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】