説明

歯科用色調適合確認材料

【解決手段】グリセリン(a)を59〜95重量%、1次粒子の平均粒子径が0.001μm〜0.1μmの第1のフィラー(b)を1〜30重量%、1次粒子の平均粒子径が1μm〜20μmの第2のフィラー(c)を2〜40重量%含有する組成物からなる歯科用色調適合確認材料。
【効果】本発明に係る歯科用色調適合確認材料は、試適材料としての取り扱い性に優れ、被膜厚さが歯科用セメントのそれと略等しい10μm〜25μmであり、且つグリセリンとフィラー成分との分離が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用セメントの色調適合性を確認するのに用いる歯科用色調適合確認材料に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用色調適合確認材料は、歯科医療において歯科医師がインレー、オンレー、ベニア等の歯科用補綴物を支台歯に合着する際に使用する歯科用セメントの色調を決定するために用いられる。一般的に、歯科用セメントは数種類の色調の中から選択して用いられるが、合着後の補綴物の審美性は、補綴物自体の色調と重合硬化した後の歯科用セメントの色調との組み合わせに依存しているため、審美的に優れた仕上がりを得るためには、合着後に適切な色調を呈する歯科用セメントを使用する必要がある。そのために、重合硬化後の歯科用セメントと同じ色調に設定された色調適合確認材料を用いて一時的に補綴物を支台歯に試適して、その審美性を確認するという作業が臨床において行われている。試適で所望の色調が得られた場合には、補綴物は取り外され、水洗により補綴物の内面と支台歯とに付着している色調適合確認材料が除去された後、そのときの試適に使用した色調適合確認材料と同じ色調を呈する歯科用セメントを用いて補綴物が合着される。試適で所望の色調が得られなかった場合には、他の色調の色調適合確認材料を用いて再び試適が行われる。試適の作業は、所望の審美性が得られるまで繰り返される。
【0003】
例えば、非特許文献1には、グリセリンと高分散性シリカとを含有する歯科用色調適合確認材料が記載されており、また非特許文献2には、グリセリンと酸化チタンと非晶質分散性シリカとを含有する歯科用色調適合確認材料が記載されている。
【0004】
さらに、特許文献1には、室温で液体のポリエチレングリコールと室温で固体のポリエチレングリコール粒子とからなる歯科用色調適合確認材料が記載されている。
【0005】
【非特許文献1】バリオリンクトライ−イン−ペーストMSDS(online)(Ivoclar Vivadent社)
【非特許文献2】CALIBRAトライ−インペーストMSDS(online)(Dentsply社)
【特許文献1】USP6,579,919
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試適に使用する歯科用色調適合確認材料には、通常、合着に使用する歯科用セメントと略同量の顔料を含有させる。このため、歯科用色調適合確認材料の被膜厚さが歯科用セメントの被膜厚さと比較して薄い場合には、歯科用色調適合確認材料が呈する色度が歯科用セメントが呈する色度よりも小さくなり、試適時の色調と合着時の色調とが異なるという問題が生じる。この問題を解消するためには、歯科用セメントの被膜厚さは一般に10μm〜25μm程度であるから、試適に使用する色調適合確認材料も、それと略等しい被膜厚さを形成するものを使用する必要がある。しかしながら、非特許文献1および2記載の現在実用化されている歯科用色調適合確認材料の被膜厚さはいずれも10μm未満であり、一般的に使用される歯科用セメントの上記した被膜厚さ10μm〜25μmと比較して薄い。このため、非特許文献1または2記載の歯科用色調適合確認材料には、試適後の色調と合着後の色調が相違するという問題がある。
【0007】
また、これらの歯科用色調適合確認材料では、保存中にグリセリンと分散性シリカとが分離するという問題がある。すなわち、ペーストをシリンジなどの容器に保存した場合に、通常数週間から数ヶ月で透明なグリセリンの液がシリンジ先端部に分離し、その結果、歯科用色調適合確認材料の色調が変化して、当初は合致していた歯科用セメントの色調としだいに合致しなくなるという問題がある。
【0008】
一方、特許文献1記載の歯科用色調適合確認材料は、温度に対するペースト性状の変化が大きく、口腔内で試適する際に垂れ易いために、口腔内での取り扱い性が良くないという問題がある。また、非特許文献1および2記載の歯科用色調適合確認材料と同様、特許文献1記載の歯科用色調適合確認材料にも、その被膜厚さが10μm未満であることから、試適した歯科用色調適合確認材料の被膜の厚さが次いで使用する歯科用セメントの被膜厚さと比較して一般に薄いために、試適時の色調と合着時の色調とが異なるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するべくなされたものであって、その目的とするところは、取り扱い性に優れ、被膜厚さが歯科用セメントのそれと略等しい10μm〜25μmであり、且つグリセリンとフィラー成分との分離が小さい、試適材料として好ましい諸特性を有する歯科用色調適合確認材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための請求項1記載の歯科用色調適合確認材料は、グリセリン(a)を59〜95重量%、1次粒子の平均粒子径が0.001μm〜0.1μmの第1のフィラー(b)を1〜30重量%、1次粒子の平均粒子径が1μm〜20μmの第2のフィラー(c)を2〜40重量%含有する組成物からなる。
【0011】
請求項2記載の歯科用色調適合確認材料は、請求項1記載の歯科用色調適合確認材料における第1のフィラー(b)がコロイドシリカおよび/またはアルミナであるものである。
【0012】
請求項3記載の歯科用色調適合確認材料は、請求項1または2記載の歯科用色調適合確認材料であって、さらに顔料を含有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る歯科用色調適合確認材料は、グリセリン(a)と、1次粒子の平均粒子径がそれぞれ特定の範囲にある2種類のフィラー、すなわち第1のフィラー(b)及び第2のフィラー(c)とを、それぞれ所定量含有する。本発明により、試適材料としての取り扱い性に優れ、被膜厚さが歯科用セメントのそれと略等しい10μm〜25μmであり、且つグリセリンとフィラー成分との分離が小さい歯科用色調適合確認材料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
歯科用色調適合材料とは、歯科医療においてインレー、オンレー、ベニア等の歯科用補綴物を支台歯に合着する際に、歯科用セメントの色調を選択するために用いられる材料のことであり、トライインペーストと呼ばれることもある。一般的に、歯科用セメントは数種類の色調の中から選択して用いられるが、合着した補綴物の審美性は、補綴物自体の色調と合着後の、すなわち重合硬化後の歯科用セメントの色調との組み合わせに依存しているため、審美的に優れた仕上がりを得るためには、適切な色調の歯科用セメントを選択する必要がある。そのために、臨床では、重合硬化後の歯科用セメントと同じ色調に設定された色調適合確認材料を用いて一時的に補綴物を支台歯に適用し、審美性を確認するという作業が行われている。この確認作業は試適と呼ばれているものであり、所望の色調が得られるまで繰り返し行われる。そして、試適で所望の色調が得られた場合に、補綴物は取り外され、補綴物の内面および支台歯に付着している色調適合確認材料が水洗により除去され、次いで色調適合確認材料と同じ色調を、合着後に、すなわち重合硬化後に呈する歯科用セメント(重合性単量体)を用いて補綴物が合着される。
【0015】
グリセリン(a)は、本発明の歯科用色調適合確認材料において主成分となる化合物である。グリセリン(a)の配合量は、本発明の歯科用色調適合確認材料の全重量に対し59〜95重量%である。得られる組成物の歯科材料としての取り扱い性の点で70〜90重量%の範囲が好ましく、80〜90重量%の範囲がより好ましい。同配合量が59重量%未満の場合には、取り扱い性が低下する。一方、同配合量が95重量%を超えると、組成物を保存した際のグリセリン(a)とフィラー成分との分離が大きくなる。
【0016】
本発明で用いられる1次粒子の平均粒子径が0.001μm〜0.1μmの第1のフィラー(b)は、本発明の歯科用色調適合確認材料を増粘させ、適度な付形性のある取り扱い性の優れた組成物にするために必要である。第1のフィラー(b)の1次粒子の平均粒子径は、得られる組成物の歯科材料としての取り扱い性の点で、0.005μm〜0.1μmの範囲が好ましく、0.005〜0.05μmの範囲がより好ましい。
【0017】
第1のフィラー(b)の種類は特に限定されず、公知の無機系フィラーおよび/または有機系フィラーを用いることができる。
【0018】
無機系フィラーとしては、二酸化ケイ素(石英、ガラス、シリカなど)、アルミナ、セラミックス類、珪藻土、カオリン、モンモリロナイト等の粘土鉱物、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウムが例示される。中でも、コロイドシリカ、アルミナが好ましい。コロイドシリカとしては、特にデグサ社の商品名「アエロジル」に代表される噴霧熱分解法によって得られた粒子径の小さいシリカや、湿式法によって得られたシリカゾル、およびゾルゲル法で得られた単分散シリカが好ましいものとして挙げられる。なお、前記無機系フィラーの少なくとも一部として、酸化チタン、ベンガラ等の無機顔料を用いてもよい。
【0019】
有機系フィラーとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムが例示される。
【0020】
第1のフィラー(b)は、シランカップリング剤等の公知のシラン化合物で予め表面処理してから用いると、グリセリン(a)との親和性を調整できるために、歯科材料としての取り扱い性に優れた組成物を得ることができる。シラン化合物としては、公知のシラン化合物を制限なく使用できる。中でも、下記一般式化1で表されるシラン化合物が好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
〔但し、化1中、R1 は炭素数1〜8の1価の有機基、Xはハロゲン原子、R2 は炭素数1〜10の1価の有機基、l及びmはいずれか一方が0で他方が1である。〕
【0023】
化1中、R1 としては、メチル、エチル、2−クロロエチル、アリル、アミノエチル、プロピル、イソペンチル、ヘキシル、2−メトキシエチル、フェニル、m−ニトロフェニル、2,4−ジクロロフェニルが例示される。中でも、メチル、エチルが好ましい。Xとしては、塩素、臭素が例示される。中でも、塩素が好ましい。R2 としては、メチル、クロロメチル、ブロモエチル、エチル、ビニル、1,2−ジブロモビニル、1,2−ジクロロエチル、2−シアノエチル、ジエチルアミノエチル、2−アミノエチルアミノエチル、2−(2−アミノエチルチオ)エトキシ、プロピル、イソプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−メルカプトプロピル、3−アミノプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−ピペラジノプロピル、3−グリシドキシプロピル、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル、アリル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、3−メタクリロイルオキシプロピル、フェニルが例示される。中でも、メチル、エチル、プロピル、ビニル、3−メタクリロイルオキシプロピル、フェニルが好ましい。
【0024】
化1で表されるシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランが例示される。中でも、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシランが好ましい。
【0025】
上記のシラン化合物は一種単独を用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。シラン化合物でフィラー表面を処理する方法としては、例えば、(1)フィラーを激しく攪拌しながらシラン化合物をスプレー添加する方法、(2)適当な溶媒へフィラーとシラン化合物とを分散または溶解させた後溶剤を除去する方法、(3)水溶液中でシラン化合物のアルコキシ基を酸触媒により加水分解してシラノール基へ変換し、該水溶液中でフィラー表面にシラノール基を付着させた後、水を除去する方法などがある。いずれの方法においても、通常50°C〜150°Cの範囲で加熱することにより、フィラー表面とシラン化合物との反応を行うことができる。
【0026】
第1のフィラー(b)は、シラン化合物で表面を処理していないフィラーを単独使用してもよく、シラン化合物で表面処理したフィラーを単独使用してもよい。グリセリン(a)とフィラー成分との分離を抑制する効果および試適材料としての取り扱い性の点で、表面処理していないフィラーとシラン化合物で表面処理したフィラーとを組み合わせて併用するのが好ましい。表面処理していないフィラーとシラン化合物で表面処理したフィラーとの重量比は1:10〜1:1の範囲が好ましく、1:5〜1:2の範囲がより好ましい。
【0027】
第1のフィラー(b)の配合量は、組成物の全重量に基づいて、1〜30重量%の範囲であるが、3〜25重量%の範囲が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。同配合量が1重量%未満の場合には、グリセリンとフィラー成分との分離が大きい。一方、同配合量が30重量%を超えた場合には、組成物の歯科材料としての取り扱い性が低下する。
【0028】
本発明で用いられる1次粒子の平均粒子径が1μm〜20μmの第2のフィラー(c)は、組成物の被膜厚さを歯科用セメントのそれと略等しい10μm〜25μmに調整するために必要である。第2のフィラー(c)の1次粒子の平均粒子径は、1μm〜20μmの範囲である。1μm〜10μmの範囲が好ましく、1μm〜5μmの範囲がより好ましい。同平均粒子径が1μm未満の場合には、組成物の被膜厚さを10μm〜25μmの範囲に調整できない。一方、同平均粒子径が20μmを超えた場合には、ペーストのざらつき感が増大するため、塗布時の取り扱い性が低下する。
【0029】
第2のフィラー(c)の種類は特に限定されず、公知の無機系フィラーおよび/または有機系フィラーを用いることができる。これらの無機フィラーおよび有機フィラーとしては、第1のフィラー(b)として例示したものと同じ種類のものが例示される。中でも、二酸化ケイ素(石英、ガラス、シリカなど)が好適に用いられる。
【0030】
第2のフィラー(c)としては、光屈折率が1.40〜1.60の範囲のものが好ましく、1.45〜1.55の範囲のものがより好ましい。一般にグリセリンとフィラーとからなる組成物の透明性は、グリセリンの光屈折率(n=1.4746)と可視光線の波長(0.3〜0.7μm)よりも粒子径の大きいフィラーの光屈折率との差に依存し、両者の光屈折率が接近するほど、高い透明性が得られる。したがって対応する歯科用セメントの透明性に応じて、第1のフィラーに比べて平均粒子径が大きい第2のフィラー(c)の平均粒子径を適宜選択することにより、対応する歯科用セメントと透明性の近似した組成物を得ることができる。
【0031】
また、第2のフィラー(c)の配合量は、本発明の歯科用色調適合確認材料の全重量に対して2〜40重量%であるが、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。同配合量が2重量%未満の場合には、その被膜厚さを歯科用セメントの一般的な被膜厚さである10μm〜25μmの範囲に調整できない。一方、同配合量が40重量%を超えた場合には、ペーストが硬くなり過ぎて、歯科材料としての取り扱い性が低下する。
【0032】
第2のフィラー(c)は、グリセリンとの親和性を調整し、得られる組成物の取り扱い性を改善するなどのために、シランカップリング剤等の公知のシラン化合物で予め表面処理してから用いてもよい。シラン化合物としては、第1のフィラー(b)の表面処理剤として例示したシラン化合物が例示される。
【0033】
本発明の歯科用色調適合確認材料は、対応する歯科用セメントが色を有する場合、フィラー(b)、フィラー(c)の少なくともいずれか一方の成分として、またはフィラー(b)、フィラー(c)以外の成分として、顔料を配合することができる。顔料を配合することによって、対応する歯科用セメントと色調の一致した組成物を得ることができる。顔料としては、ベンガラ、フタロシアニンブルー、各種アゾ系顔料および酸化チタンが例示される。顔料は単独で、または複数種類を組み合わせて、配合することができ、対応する歯科用セメントと色調を合わせる観点から0.00001〜1重量%配合することが好ましい。
【0034】
さらに、本発明の歯科用色調適合確認材料に、必要に応じて、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌性物質、水、水溶性有機溶媒などを、本発明の効果を損なわない程度の量で添加してもよい。
【実施例】
【0035】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
溶融石英(溶融法により作製した石英、電気化学工業製、商品コード「FS−90」)をボールミルで粉砕し、溶融石英粉を得た。得られた溶融石英粉の1次粒子の平均粒子径をレーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定したところ、2.0μmであった。この溶融石英粉100重量部に対して3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン3重量部を用いて常法により表面処理を行い、1次粒子の平均粒子径が約2.0μmのシラン処理した石英粉を得た。グリセリン(70重量%)と、1次粒子の平均粒子径が0.013μmの微粒子アルミナ粉末(日本アエロジル製、商品コード「Aluminium Oxide C」)(25重量%)と、上記のシラン処理した石英粉(4.9重量%)と、酸化チタン(日本薬局方、平均粒子径0.48μm)(0.1重量%)とを混合して、歯科用色調適合確認材料を調製した。次いで、下記(1)の方法により、調製した歯科用色調適合確認材料の被膜厚さを調べた。また、下記(2)の方法により、保存した際のグリセリンの分離の程度を調べた。結果を表1に示す。
【0037】
(1)歯科用色調適合確認材料の被膜厚さ
調製した歯科用色調適合確認材料の被膜厚さは、ISO4049:2000に記載の方法に準拠して求めた。すなわち、2枚のガラス板の間に、調製した組成物を満たして150±2Nの垂直力を加え、マイクロメーターを用いて2枚のガラス板と被膜試料の合計厚さを測定し、この値と、予め測定しておいた2枚のガラス板の合計厚さとの差を、歯科用色調適合確認材料の被膜厚さとして求めた。
【0038】
(2)グリセリンの分離部分の長さ
調製した歯科用色調適合確認材料を、1mlのツベルクリン用シリンジ(テルモ製、商品名「テルモシリンジ」)の目盛0〜0.5mlの範囲に充填した。注射口をテープでシールした後、注射口を上に向けてシリンジを立てて25°Cの恒温室に保管し、先端に分離してくるグリセリンの液部分の長さを、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後にそれぞれ測定した。その測定には、デジタルHDマイクロスコープ(キーエンス製、型式「VH−7000」)を用いた。
【0039】
(実施例2)
トルエン100重量部に3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5重量部を加えて攪拌し、さらに1次粒子の平均粒子径が0.016μmのコロイドシリカ粉末(日本アエロジル製、商品コード「アエロジル130」)20重量部を加えて1時間攪拌した。トルエンを減圧溜去し、120°Cで30分間加熱処理を行い、1次粒子の平均粒子径が0.016μmのシラン処理したコロイドシリカ粉末を得た。グリセリン(70重量%)と、上記のシラン処理コロイドシリカ粉末(25重量%)と、実施例1で作製した1次粒子の平均粒子径が約2.0μmのシラン処理した石英粉(4.9重量%)と、酸化チタン(日本薬局方、平均粒子径0.48μm)(0.1重量%)とを混合して、歯科用色調適合確認材料を調製した。次いで、この歯科用色調適合確認材料の被膜厚さおよび保存時のグリセリンの分離部分の長さを測定した。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例3)
蒸留水100重量部に酢酸0.3重量部と3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン3重量部を加えて攪拌し、さらに1次粒子の平均粒子径が0.04μmのコロイドシリカ粉末(日本アエロジル製、商品コード「アエロジルOX50」)50重量部を加えて1時間攪拌した。凍結乾燥により水を除去した後、80°Cで5時間加熱処理を行い、1次粒子の平均粒子径が0.04μmのシラン処理したコロイドシリカ粉末を得た。グリセリン(70重量%)と、上記のシラン処理したコロイドシリカ粉末(25重量%)と、実施例1で作製した1次粒子の平均粒子径が約2.0μmのシラン処理した石英粉(4.9重量%)と、酸化チタン(日本薬局方、平均粒子径0.48μm)(0.1重量%)とを混合して、歯科用色調適合確認材料を調製した。次いで、この歯科用色調適合確認材料の被膜厚さおよび保存時のグリセリンの分離部分の長さを測定した。結果を表1に示す。
【0041】
(比較例1〜5)
表1に示す5種類の歯科用色調適合確認材料を調製し、それぞれについて被膜厚さおよび保存時のグリセリンの分離部分の長さを測定した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1中、A、B、C、Eは下記のものを表す。以下の表においても、同一の符号で表されたものは下記のものと同一のものを表す。
A:1次粒子の平均粒子径が0.013μmの微粒子アルミナ粉末
B:1次粒子の平均粒子径が0.016μmのシラン処理したコロイドシリカ粉末
C:1次粒子の平均粒子径が0.04μmのシラン処理したコロイドシリカ粉末
E:1次粒子の平均粒子径が約2.0μmのシラン処理した石英粉末
【0044】
(実施例4〜10)
表2に示す7種類の歯科用色調適合確認材料を調製し、それぞれについて被膜厚さおよび保存時のグリセリンの分離部分の長さを測定した。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2中、Dは下記のものを表す。以下の表においても、Dは下記のものを表す。
D:1次粒子の平均粒子径が0.007μmのコロイドシリカ粉末
【0047】
(比較例6〜13)
表3に示す8種類の歯科用色調適合確認材料を調製し、それぞれについて被膜厚さおよび保存時のグリセリンの分離部分の長さを測定した。結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
(実施例11)
石英(MARUWAQUARTZ製)をボールミルで粉砕し、石英粉を得た。得られた石英粉の1次粒子の平均粒子径をレーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2100」)を用いて測定したところ、4.5μmであった。この石英粉100重量部に対して、常法により3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン3重量部を用いて表面処理を行い、1次粒子の平均粒子径が約4.5μmのシラン処理した石英粉を得た。グリセリン(85重量%)と、実施例2で作製した1次粒子の平均粒子径が0.04μmのシラン処理したコロイドシリカ粉末(7重量%)、1次粒子の平均粒子径が0.007μmのコロイドシリカ粉末(日本アエロジル製、商品コード「アエロジル380」)(3重量%)、上記のシラン処理した石英粉(4.9重量%)と、酸化チタン(日本薬局方、平均粒子径0.48μm)(0.1重量%)とを混合して、歯科用色調適合確認材料を調製した。次いで、この歯科用色調適合確認材料の被膜厚さおよび保存時のグリセリンの分離部分の長さを測定した。結果を表4に示す。
【0050】
(実施例12〜13)
表4に示す2種類の歯科用色調適合確認材料を調製し、それぞれについて被膜厚さおよび保存時のグリセリンの分離部分の長さを測定した。結果を表4に示す。
【0051】
(比較例14〜16)
表4に示す3種類の歯科用色調適合確認材料を調製し、それぞれについて被膜厚さおよび保存時のグリセリンの分離部分の長さを測定した。結果を表4に示す。
【0052】
【表4】

【0053】
表4中、Fは下記のものを表す。
F:1次粒子の平均粒子径が約4.5μmのシラン処理した石英粉末
【0054】
表1、表2および表4に示すように、実施例1〜13で調製した歯科用色調適合確認材料は、組成物の被膜厚さが一般的な歯科用セメントの被膜厚さである10μm〜25μmの範囲に設定され、且つグリセリンの分離部分の長さが極めて小さかった。これに対して、表1に示すように、第2のフィラー(c)を配合しなかった場合(比較例1)、および第2のフィラー(c)を1重量%よりも少量しか配合しなかった場合(比較例2〜4)は、歯科用色調適合確認材料の被膜厚さが10μm未満となり一般的な歯科用セメントの被膜厚さの最小厚さ10μmよりも薄く、保存時のグリセリンの分離部分の長さも大きかった。また、第1のフィラー(b)を多量に配合した場合(比較例5)は、ペーストが硬過ぎて取り扱い性が良くなかった。
【0055】
一方、表3および表4に示すように、1次粒子の平均粒子径が0.001μm〜0.1μmの第1のフィラー(b)を配合しなかった場合(比較例14〜16)、および1重量%よりも少量しか配合しなかった場合(比較例7〜13)は、比較例7を除いて、歯科用色調適合確認材料の被膜厚さを一般的な歯科用セメントのそれと略等しい10μm〜25μmの範囲内に設定可能であったが、保存時のグリセリンの分離部分の長さが極めて大きかった。また、第2のフィラー(c)を40重量%を超えて配合した場合(比較例6)は、ペーストが硬過ぎて取り扱い性が良くなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン(a)を59〜95重量%、1次粒子の平均粒子径が0.001μm〜0.1μmの第1のフィラー(b)を1〜30重量%、1次粒子の平均粒子径が1μm〜20μmの第2のフィラー(c)を2〜40重量%含有する組成物からなる歯科用色調適合確認材料。
【請求項2】
第1のフィラー(b)がコロイドシリカおよび/またはアルミナである請求項1記載の歯科用色調適合確認材料。
【請求項3】
顔料を含有する請求項1または2記載の歯科用色調適合確認材料。