説明

歯車検査装置

【課題】 交換時の作業性がよく、検査精度を高められる歯車検査装置を提供する。
【解決手段】 固定台座1と、その歯部7A〜10Aが固定台座の取付面1A上において同一円周上に位置するように固定台座に設けられた複数の歯車要素7〜10とを有し、回転トルクが与えられる被検査対象歯車3を各歯車要素の歯部7A〜10Aとそれぞれ噛合うように配置して検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形の歯車を検査する歯車検査装置に関し、特に検査対象となる被検査対象歯車の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に歯車は軸などに固定されて用いられることが多い。そのため、歯車に対して回転トルクを与え、歯車自身のねじり強度や歯車と軸との限界すべり特性などを検査装置で検査している。このような歯車の検査を行う場合、実際の製品やテストピースを用いることがある。製品あるいはテストピースの場合を問わず、これら被検査対象物を検査装置に装着するには、軸に溶接で固定したり、穴あけ加工して台座に締結固定している。歯車検査装置の一例としては特許文献1が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−27583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品やテストピースを溶接して固定すると、溶接時の熱による変形があるので検査結果に熱変形の影響が出てしまうことが懸念される。製品やテストピースを穴あけ加工する場合においては、加工による製品強度変化が想定されるので、その影響が検査結果に出てしまうことが懸念される。製品ではなくテストピースを用いた検査の場合、検査対象が製品とは異なるので、製品そのものを検査する場合とは異なる検査結果になることもある。つまり、製品を製造する場合、設計に基づく嵌め合い幅や径、締め代、摩擦係数などを用いた単純なモデルから計算してすべり限界トルクやねじり強度などを推定するが、溶接熱や加工による強度変化などにより、設計時の推定値とは異なる結果になることがある。また、通常、検査は1種類に対して複数個行うので、溶接などの固定手法であると交換時の作業性が煩雑となり、検査終了までの時間を要してしまう。
本発明は、交換時の作業性がよく、検査精度を高められる歯車検査装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る歯車検査装置は、固定台座と、その歯部が固定台座の取付面上において同一円周上に位置するように固定台座に設けられた3つ以上の歯車要素とを有し、回転トルクが与えられる被検査対象歯車を各歯車要素の歯部とそれぞれ噛合うように配置して検査することを特徴としている。
本発明に係る歯車検査装置において、固定台座の取付面には、この取付面よりも低く被検査対象歯車を収納する凹部や、同取付面よりも低く各歯車要素をそれぞれ収納する段差部が形成されていることを特徴としている。
【0006】
本発明に係る歯車検査装置において、固定台座には各歯車要素を被検査対象歯車に対して近接および離間する方向に移動可能とする調整部がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
本発明に係る歯車検査装置において、各歯車要素は、固定台座の取付面内に納まる大きさの扇形状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、歯部が固定台座の取付面上において同一円周上に位置するように固定台座に設けられた3つ以上の歯車要素を有し、回転トルクが与えられる被検査対象歯車を各歯車要素の歯部とそれぞれ噛合うように配置して検査するので、被検査対象歯車を溶接したり加工することがなくなるため、溶接熱や加工による被検査対象歯車の強度変化がなく、正確な検査を行える。また、被検査対象歯車と3つ以上の歯車要素とは、互いの歯部の噛合いにより固定台座に支持されるので、従来のものに比べて交換も容易になり検査時間の短縮を図ることができ。
【0008】
本発明によれば、固定台座の取付面に、この取付面よりも低く被検査対象歯車を収納する凹部や、この取付面よりも低く各歯車要素をそれぞれ収納する段差部を形成したので、被検査対象歯車や各歯車要素の位置関係が安定しより正確な検査を行える。
本発明によれば、固定台座に各歯車要素を被検査対象歯車に対して近接および離間する方向に移動可能とする調整部をそれぞれ設けたので、検査対象となる被検査対象歯車の大きさが変化しても調整部によって各歯車要素の位置を容易に調整できるので、より作業性が向上する。
【0009】
本発明によれば、各歯車要素を固定台座の取付面内に納まる大きさの扇形状としたので、円形の歯車を歯車要素として用いる場合よりも、重量軽減を図れるとともに、装置の大型化を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された歯車検査装置の概略構成を示す。この歯車検査装置は、固定台座となる円盤状の固定治具1と、固定治具1を固着する固定側部材2と、固定治具1に装着支持されて固定される被検査対象歯車3に対して回転トルクを与える駆動側部材4とを備えている。固定治具1は、固定側部材2のフランジ部2Aに、ボルトとナットなどの複数の締結部材6で固定されている。固定治具1、固定側部材2及び駆動側部材4の中心は、同一軸線5上に位置するように配置されている。駆動側部材4は、固定側部材2に固定された固定治具1に向って進退可能に構成されている。駆動側部材4は、トルク伝達時に固定治具1に装着された被検査対象歯車3の回転中心に駆動伝達部4Aを圧接されることで、被検査対象歯車3に所定の回転トルクを伝達するように構成されている。固定治具1は、駆動側部材4と対向する面を取付面1Aとし、固定側部材2のフランジ部2Aが固定される面を背面1Bとしている。
【0011】
固定治具1の取付面1Aには、図4に示すように4つの歯車要素7,8,9,10が装着固定される。歯車要素7,8,9,10のそれぞれの歯部7A,8A,9A,10Aの少なくとも一部は、取付面1A上において同一円周上に位置するように固定台座1に設けられている。具体的には、後述する環状の凹部16内に位置するように配置される。固定台座1の取付面1Aには、図2に示すように、被検査対象歯車4を収納する凹部16と、各歯車要素7,8,9,10を収納する段差部11,12,13,14が形成されている。つまり、段差部11,12,13,14は凹部16を中心とした際に、その外周方向に配置されている。凹部16及び段差部11,12,13,14は、取付面1Aよりも低く形成されている。その低さは、図3に示すように、被検査対象歯車3及び歯車要素7,8,9,10のそれぞれの厚さよりも薄く、被検査対象歯車3及び歯車要素7,8,9,10をそれぞれ凹部16及び段差部11,12,13,14に収納した際に、被検査対象歯車3及び歯車要素7,8,9,10が取付面1Aから突出するように構成されている。歯車要素7,8,9,10は、固定治具1の取付面1A内に納まる大きさの扇形状に形成されている。凹部16の内側には凹部16よりも小径で、かつ凹部16よりも深い凹部15が形成されている。凹部15の底部には、フランジ部2Aを締結するための複数の貫通穴17が形成されている。
【0012】
固定治具1には、各歯車要素を被検査対象歯車3に対して近接および離間する方向に移動可能とする調整部としての長穴18,19,20,21が形成されている。長穴18,19,20,21は、段差部11,12,13,14内に形成されている。長穴18,19,20,21は、半円弧形状を成し、その円弧部分が固定治具1の中心に向って位置するように配置されている。
【0013】
長穴18,19,20,21には、図4、図5に示すように、歯車要素7,8,9,10を固定治具1に装着固定するための複数の締結部材としてのボルト22,23,24,25が挿通されている。各歯車要素には装着固定するためのめねじが加工されている。長穴18,19,20,21に挿通された各ボルトは、背面1B側から歯車要素7,8,9,10に加工されためねじ部に装着されることにより、固定治具1に各歯車要素を固定する。これらボルトと歯車要素との締結状態を緩めることで、各歯車要素が被検査対象歯車3に対して接離する方向に調整可能とされる。固定治具1への各歯車要素の締結固定状態を強固にするために、各ボルトと固定治具1の背面1Bの間にはワッシャが介装されている。ワッシャはボルトヘッドに一体に装着された形態のものでも、ワッシャとボルトとが個別な形態であってもよい。
【0014】
このような構成によると、図6に示すように、歯部7A〜10Aが固定治具1の取付面1A上において同一円周上に位置するように固定治具1に設けられた4つの歯車要素7〜10を有し、回転トルクが与えられる被検査対象歯車3を各歯車要素の歯部7A〜10Aとそれぞれ噛合うように配置調整して、駆動側部材4から回転トルクを被検査対象歯車3に加えて検査するので、従来のように被検査対象歯車3を溶接したり加工することがなくなるため、溶接熱や加工による被検査対象歯車3の強度変化がなく、正確な検査を行える。また、被検査対象歯車3と歯車要素7〜10とは、互いの歯部の噛合いにより固定治具1に支持されるので、別な被検査対象歯車3を検査する際の交換作業が従来のものに比べて容易になり、検査時間の短縮を図ることができる。
【0015】
固定治具1の取付面1Aに、この取付面1Aよりも低く被検査対象歯車3を収納する凹部16や、取付面1Aよりも低く各歯車要素7〜10をそれぞれ収納する段差部11〜14を形成したので、被検査対象歯車3や各歯車要素7〜10の位置関係が安定し、より正確な検査を行える。
【0016】
各歯車要素7〜10を被検査対象歯車3に対して近接および離間する方向に移動可能とする長穴18〜21を固定治具1にそれぞれ設けたので、検査対象となる被検査対象歯車3の大きさが変化してもボルトと歯車要素を緩めることで長穴18〜21内により各歯車要素の位置を容易に調整できる。このため、より作業性が向上する。
【0017】
各歯車要素7〜10が、固定治具1の取付面1A内に納まる大きさの扇形状であるので、円形の歯車を歯車要素として用いる場合よりも、重量軽減を図れるとともに、装置の大型化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態である歯車検査装置の概略構成図である。
【図2】固定台座の構造を示す拡大書面図である。
【図3】(a)は図2に示す固定台座のB−B線断面図、(b)は図2に示す固定台座のC−C線断面図である。
【図4】固定台座に歯車要素が装着固定された状態を示す正面図である。
【図5】歯車要素が装着固定された固定台座の背面図である。
【図6】固定台座に被検査対象歯車が装着された状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 固定台座
1A 取付面
3 被検査対象歯車
4 駆動側部材
7〜10 歯車要素
7A〜10A 歯部
11〜14 段差部
16 凹部
18〜21 調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定台座と、
その歯部が前記固定台座の取付面上において同一円周上に位置するように前記固定台座に設けられた3つ以上の歯車要素とを有し、
回転トルクが与えられる被検査対象歯車を前記各歯車要素の歯部とそれぞれ噛合うように配置して検査することを特徴とする歯車検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の歯車検査装置において、
前記固定台座の取付面には、同取付面よりも低く前記被検査対象歯車を収納する凹部が形成されていることを特徴とする歯車検査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の歯車検査装置において、
前記固定台座の取付面には、同取付面よりも低く前記各歯車要素をそれぞれ収納する段差部が形成されていることを特徴とする歯車検査装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の歯車検査装置において、
前記固定台座には各歯車要素を前記被検査対象歯車に対して近接および離間する方向に移動可能とする調整部が設けられていることを特徴とする歯車検査装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の歯車検査装置において、
各歯車要素は、前記固定台座の取付面内に納まる大きさの扇形状であることを特徴とする歯車検査装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の歯車検査装置において、
前記固定台座と対向配置された前記被検査対象歯車に回転トルクを与える駆動側部材を有することを特徴とする歯車検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−86032(P2007−86032A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278517(P2005−278517)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】