説明

歯車

【課題】本発明の歯車によれば、歯車の性能を維持しつつ、歯車から出る騒音を低下させることは至難の技であり、別途、消音機能を備えた部材を使用する必要性が有ったが、本発明は、歯車の性能を低下させることなく、歯車から発生する騒音を極力低下させた歯車を提供することを目的とする。
【解決手段】歯部が弾性材製である歯車において、前記弾性材がポリカーボネート系ウレタンゴムであり、前記ポリカーボネート系ウレタンゴムのJISA硬度が90〜97であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車に関する。
また、本発明は、パソコン用ハードディスク、及びDVD−ROM、CD−ROMを始めとするディスクメディア、各種オーディオ機器、OA機器等に用いられる歯車に関する。
更に、本発明は、特にOA機器に用いて有用な歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン用ハードディスク、及びDVD−ROM、CD−ROMを始めとするディスクメディア、各種オーディオ機器、OA機器等に用いられる歯車は、回転振動、騒音等が信号読取り装置等に悪影響を与えない様、消音性を備えていることが要求される。
従来、ポリアセタール樹脂材製の歯車がOA機器等に使用されているが、近年、要求性能が高まっている消音性能を満足することは出来なかった。
【0003】
そこで、JISA硬度が90以上の汎用ポリウレタンゴムを使用して歯車を製作し、評価したが、ポリアセタール樹脂材製の歯車に比べ消音性能は改善したが、顧客が十分満足できる消音レベルまでの性能が得られなかった。
このため、汎用ポリウレタンゴムのゴム硬度をJISA硬度85程度に低下させ、消音性能の改善を図ったが、歯飛び現象が現れ、歯車としての性能が得られない問題を惹起した。
また、歯車で発生した音を、OA機器内に消音材を使用して、音を吸収する方策も検討されているが、費用が嵩み、機器も大型化せざるを得ない問題を招来した。
【0004】
【特許文献1】特開2000−46153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような歯車においては、歯車の性能を維持しつつ、歯車から出る騒音を低下させることは至難の技であり、別途、消音機能を備えた部材を使用する必要性が有ったが、本発明は、歯車の性能を低下させることなく、歯車から発生する騒音を極力低下させた歯車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歯車は、歯部が弾性材製である歯車において、前記弾性材がポリカーボネート系ウレタンゴムであることを特徴とする。
また、前記ポリカーボネート系ウレタンゴムのJISA硬度が90〜97であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明では、ポリカーボネート系ポリウレタンとして、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンであって、前記ポリオールがポリカーボネート系ポリオールを主成分としおり、ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、ポリヘキサンジオールカーボネート、ポリノナンジオールカーボネート等が用いられる。
【0008】
他の反応成分たるジイソシアネートとしては、機械的な諸特性の観点から、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、あるいはトリジンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが用いられる。
【0009】
これら両者の反応時に、または反応後に、好ましくは第3成分として鎖伸長剤が用いられる。鎖伸長剤としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール等の低分子量脂肪族ジオール、これと組み合わされて用いられるp−フェニレンジ(β−ヒドロキシエチルエーテル)、p−キシリレングリコール、シクロヘキサンジオール等の芳香族または脂環式ジオール、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミン、更にはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の低分子量脂肪族トリオールなどがそれぞれ用いられる。
【0010】
ポリオールとポリイソシアネートとの配合割合は、一般的なものでよく、例えば、ポリオール100重量部に対して、ポリイソシアネート30〜180重量部である。例えば、ポリオールの数平均分子量が2000程度、ポリイソシアネートの数平均分子量が250程度の場合には、ポリオール100重量部に対して、ポリイソシアネートは50〜80重量部程度用いるのが好適である。
【0011】
ポリウレタンエラストマーの製造方法としては、ポリカーボネート系ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてプレポリマーを得、その後鎖伸長剤と反応させるプレポリマー法が好んで用いられるが、ポリカーボネート系ポリオールと鎖伸長剤ジオールとの混合物にポリイソシアネートを添加して反応させるワンショット法によっても合成することができる。
本発明で使用される、ポリカーボネート系ウレタンゴムのJISA硬度は、90〜97、好ましくは、92〜95であることを特徴とする。
尚、硬度が90より低いと、歯飛びが起き、歯車としての機能が十分発揮されない。
また、硬度が97以上になると、十分な消音効果が得られない。
更に、歯車が多段歯車の場合、いずれか一方の歯部がポリカーボネート系ウレタンゴムであっても、十分な消音効果が得られるものであり、歯車の歯部以外の箇所に他の材料が使用されていても、消音効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、歯車としての性能を十分発揮しつつ、消音性能の良好な歯車を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
【0014】
実施例1
JISA硬度94のポリカーボネート系ウレタンゴムを用いて、射出成形により、図1に示す多段歯車を成形した。
この得られた歯車を約100〜120℃の温度で48時間二次加硫した。
【0015】
比較例1
ポリアセタール樹脂を用いて、射出成形により、図1に示す多段歯車を成形した。
【0016】
比較例2
JISA硬度94の汎用ウレタンゴムを用いて、射出成形により、図1に示す多段歯車を成形した。
この得られた歯車を約100〜120℃の温度で48時間二次加硫した。
【0017】
実施例と比較例の検討結果を以下に示す。
図2は、縦軸がtanδで、横軸が周波数であり、温度条件は25℃である。
Aで示す線は、実施例1で使用したポリカーボネート系ウレタンゴムの特性を示す線であり、Bで示す線は、比較例2で使用した汎用ウレタンゴムの特性を示す線である。
図から明らかのように、全周波数領域において、実施例1で使用したポリカーボネート系ウレタンゴムのtanδの値が、比較例2で使用した汎用ウレタンゴムのtanδの値に比べ大きいことが分る。
【0018】
特に、周波数が大きい領域において、この傾向が顕著である。
ここで、tanδとは、損失係数であり、材料がどの程度エネルギーを吸収するかを示す指数であり、tanδの値が大きいほど、エネルギー吸収が良好な材料である。
従って、実施例1で使用したポリカーボネート系ウレタンゴムの方が、比較例2で使用した汎用ウレタンゴムに比べ、エネルギー吸収が良く、消音効果が高いことが期待される。
【0019】
図3は、縦軸がtanδで、横軸が温度であり、周波数は1Hzである。
図4は、縦軸がtanδで、横軸が温度であり、周波数は1Hzである。
図3及び図4の何れにおいても、広い温度領域において、実施例1で使用したポリカーボネート系ウレタンゴムのtanδの値が、比較例2で使用した汎用ウレタンゴムのtanδの値に比べ大きいことが分る。
【0020】
ついで、実施例1、比較例1、比較例2で得られた歯車の騒音を測定した。
測定方法
試験機:デジタルスチルカメラ/ズーム部ギヤボックス
回転数:1,000rpm
【0021】
測定結果:
表1

試験材料 騒音レベル(dbA)
実施例1 65.85
比較例1 69.02
比較例2 67.62
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、パソコン用ハードディスク、及びDVD−ROM、CD−ROMを始めとするディスクメディア、各種オーディオ機器、OA機器等に用いられる歯車として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る歯車の一例を示す斜視図である。
【図2】実施例1で使用したポリカーボネート系ウレタンゴムと、比較例2で使用した汎用ウレタンゴムの、25℃における特性を示す図である。
【図3】実施例1で使用したポリカーボネート系ウレタンゴムと、比較例2で使用した汎用ウレタンゴムの、1Hzにおける特性を示す図である。
【図4】実施例1で使用したポリカーボネート系ウレタンゴムと、比較例2で使用した汎用ウレタンゴムの、100Hzにおける特性を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・歯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯部(1)が弾性材製である歯車において、前記弾性材がポリカーボネート系ウレタンゴムであることを特徴とする歯車。
【請求項2】
前記ポリカーボネート系ウレタンゴムのJISA硬度が90〜97であることを特徴とする請求項1記載の歯車。
【請求項3】
前記歯車がOA機器用に用いられることを特徴とする請求項1または2記載の歯車。
【請求項4】
前記歯車が多段歯車であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯車。
【請求項5】
前記多段歯車の少なくとも一方の歯部(1)がポリカーボネート系ウレタンゴムであることを特徴とする請求項4記載の歯車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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