説明

残容量測定装置

【課題】ゼロ補正や温度補正などが不要な残容量測定装置を提供する。
【解決手段】残容量関連データを測定するための測定手段と、事前に設定された残容量テーブル及び事前に設定されたバッテリーの残容量の上限値が記憶されているとともに、測定手段によって測定された残容量関連データを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された残容量関連データに基づいて、バッテリーの残容量を算出する演算装置とを備え、記憶手段に、測定した充放電中のバッテリーの残容量関連データを逐次記憶するとともに、記憶手段に記憶したバッテリーの残容量関連データに基づいて、バッテリーの残容量を算出するとともに、バッテリーの充電終了時に、バッテリーの残容量が、残容量の上限値を上回っている場合に、残容量の上限値をバッテリーの残容量によって更新し、バッテリーの放電終了時に、残容量テーブルに基づいて、バッテリーの残容量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フォークリフトや電気自動車、ハイブリッド自動車などのバッテリーの残容量を測定(推定)するための残容量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトや電気自動車、ハイブリッド自動車など、動力源としてバッテリーを用いる車両では、バッテリーの残容量を正確に測定・把握することが必要となる。
従来、このような残容量測定を行うために、シャント抵抗やホール素子を用いることによって電流を検出する方法が知られている。
【0003】
シャント抵抗を用いた電流検出では、例えば、特許文献1(特開2008−047571号公報)に開示されるように、第1の接続端子と第2の接続端子との間に抵抗体を備えるように構成されたシャント抵抗が用いられる。なお、特許文献1では、第1の接続端子、第2の接続端子、抵抗体がワッシャ状に形成されており、ボルトとナットを用いて、第1の接続端子、第2の接続端子、抵抗体を一体に固定している。
【0004】
また、ホール素子を用いた電流検出では、例えば、特許文献2(特開2007−198904号公報)に開示されるように、環状をなし且つその一部に間隙部を有するコアが用いられ、このコアの間隙部にホール素子を配置することで、コアによって囲繞した電流線に流れる電流の大きさに応じた磁界をホール素子が検知して、電流を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−047571号公報
【特許文献2】特開2007−198904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホール素子を用いた電流検出方法では、長時間連続して使用すると、ゼロ点がずれ、測定誤差が生じることになるため、長期間、連続使用することは困難である。また、ホール素子を用いた電流検出では、装置の小型化に限界がある。これらのことから、残容量測定装置を車両などに取り付けて、精度の高い残容量の監視を常時行うことはできない。
【0007】
一方で、シャント抵抗を用いた電流検出方法では、シャント抵抗が発熱するため、この発熱に応じた温度補正を行う必要がある。
このようなゼロ点補正や温度補正を行うためには、通常、バッテリーの使用を一時的に停止した状態で、残容量計の補正を行う必要がある。
【0008】
このため、連続的に使用されている車両などの場合、残容量計のゼロ点補正や温度補正が行われずに、残容量計が狂ってしまい、残容量計の表示では十分に残っているにもかかわらず、急に車両のパワーが低下したり、停止してしまったりすることもあった。
【0009】
また、連続的に充放電をサイクル使用していると、その課程でバッテリーが劣化してしまうため、バッテリーの使用可能容量が低下してしまうことになる。
一方で、バッテリーがリフレッシュされたり、使用条件が改善(例えば、バッテリー使用時の温度が低いところから高いところに変わるなど)されると、有効充電量が増加し、使用可能容量が上昇することになる。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑み、バッテリーごとに定められた負荷電圧ベースの残容量テーブルに基づき、残容量測定の際の初期値設定を残容量測定装置によって自動的に更新することで、ゼロ補正や温度補正などが不要な残容量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の残容量測定装置は、バッテリーの残容量を測定するための残容量測定装置であって、
残容量関連データを測定するための測定手段と、
事前に設定された残容量テーブル及び事前に設定されたバッテリーの残容量の上限値が記憶されているとともに、前記測定手段によって測定された残容量関連データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された残容量関連データに基づいて、バッテリーの残容量を算出する演算装置と、を備え、
前記記憶手段に、測定した充放電中のバッテリーの残容量関連データを逐次記憶するとともに、該記憶手段に記憶したバッテリーの残容量関連データに基づいて、バッテリーの残容量を算出するとともに、
バッテリーの充電終了時に、バッテリーの残容量が、前記残容量の上限値を上回っている場合に、前記残容量の上限値をバッテリーの残容量によって更新し、
バッテリーの放電終了時に、前記残容量テーブルに基づいて、バッテリーの残容量を補正することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の残容量測定装置は、バッテリーの充電時において、前記測定手段によってバッテリーの電圧値を測定し、該バッテリーの電圧値に基づいて、所定の充電効率係数を選択し、
前記記憶手段に記憶された、測定されたバッテリーに流れるバッテリー充電電流と前記所定の充電効率係数に基づいて、前記演算手段によって、バッテリーの残容量を算出するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の残容量測定装置は、バッテリーの放電時において、
前記記憶手段に記憶された、測定されたバッテリーから放電されるバッテリー放電電流と所定の放電効率係数に基づいて、前記演算手段によって、バッテリーの残容量を算出するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の残容量測定装置は、前記測定手段によってバッテリーの電圧値を測定し、該バッテリーの電圧値に基づいて、所定の放電効率係数を選択するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の残容量測定装置は、前記残容量測定装置が、少なくともバッテリーの残容量を表示する表示手段を備えていることを特徴とする。
また、本発明の残容量測定装置は、前記残容量測定装置が、前記表示手段、外部に設けられた記憶手段、外部に設けられたコンピュータのうち少なくともいずれかと通信を行うための通信手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の残容量測定装置は、前記バッテリーには、バッテリーごとに個別の識別番号が付されており、
前記記憶手段には、バッテリーの識別番号に関連づけられた残容量関連データが記憶されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の残容量測定装置は、前記残容量測定装置には、
バッテリーの端子と接続するためのバッテリー側端子と、
出力側の端子を構成する出力側端子と、を備えており、
前記バッテリー側端子及び出力側端子がそれぞれプラグイン型コネクターであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の残容量測定装置は、前記バッテリーの充放電時において、バッテリーの異常を前記演算装置が検出した場合に、警報を出力するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の残容量測定装置は、前記バッテリーの充放電時において、バッテリーの残容量が所定の警報下限値を下回った場合に、警報を出力するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バッテリーごとに定められた残容量テーブルに基づき、バッテリーの放電終了時に残容量の補正を行うとともに、バッテリーの充電終了時に残容量の上限値の更新を行うことによって、バッテリーの使用を停止してゼロ補正や温度補正を行う必要がなく、バッテリーの充放電の連続サイクル使用が可能で、且つ、正確な初期値設定が行われるため、高精度な残容量測定(推定)を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の残容量測定装置の概略回路構成図である、
【図2】図2は、図1の残容量測定装置をバッテリーに接続した場合の概略構成図である。
【図3】図3は、プラグイン型コネクターの一例を示す概略構成図である。
【図4】図4は、図1の残容量測定装置と外部の記憶装置、コンピュータをそれぞれ無線通信によって接続した場合の概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の残容量測定装置によってバッテリーの充放電時における残容量を測定する流れを示すフロー図である。
【図6】図6は、本発明の残容量測定装置によって測定した、バッテリーの充放電時のバッテリー電圧(V)と残容量(%容量)の関係を示すグラフである。
【図7】図7は、バッテリーの異常を示す一例であって、不十分な充電しか行えなくなったバッテリーの充電回数と充電量(AH)の関係を示すグラフである。
【図8】図8は、バッテリーの以上を示す一例であって、バッテリーの放電時に急激にバッテリー電圧値が低下してしまう場合の、バッテリーの充電−放電量(AH)とバッテリー電圧(V)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の残容量測定装置の概略回路構成図、図2は、図1の残容量測定装置をバッテリーに接続した場合の概略構成図である。
【0023】
図1、2において、符号10は全体で、本発明の残容量測定装置を示している。
図1に示すように、本発明の残容量測定装置10は、シャント抵抗22を含んでなる測定手段20と、測定された残容量関連データを記憶するための記憶手段24と、残容量測定装置10の制御及び残容量の算出を行う演算手段30と、バッテリー50と接続するためのバッテリー側正極端子12a及びバッテリー側負極端子12bと、車両や充電器と接続するための出力側正極端子14a及び出力側負極端子14bを備えている。
【0024】
なお、本実施例において、バッテリー側正極端子12a、バッテリー側負極端子12b、出力側正極端子14a、出力側負極端子14bの端部はそれぞれ、バッテリー50や出力側の機器(図示せず)と容易に取り付け、取り外しが可能なように、図3のようなプラグイン型コネクター16となっているが、端子の形状は特に限定されるものではない。
【0025】
図3に示すプラグイン型コネクター16は、バッテリー側正極端子12a及びバッテリー側負極端子12b(もしくは、出力側正極端子14a及び出力側負極端子14b)をひとつのコネクター本体18に接続して構成されている。
【0026】
そして、このコネクター本体18に備えられたオスの正極ソケット18a及びオスの負極ソケット18bと嵌合するメスの正極ソケット及びメスの負極ソケットを備えたバッテリー50もしくは出力側の機器(図示せず)と接続が可能となっている。
【0027】
このため、本発明の残容量測定装置10とバッテリー50及び出力側の機器(図示せず)の取り付け、取り外しを容易に行うことができる。なお、符号18cは、プラグイン型コネクター16をバッテリー50及び出力側の機器(図示せず)と接続した際に、新藤などによって抜けてしまうことがないようにするためのロック機構である。
【0028】
なお、このようなプラグイン型コネクター16は、本発明の残容量測定装置10を被測定対象であるバッテリー50と出力側の機器(図示せず)との間に容易に取り付け、取り外しを行うために設けているものであり、プラグイン型コネクター16を用いずに、バッテリー50と出力側の機器(図示せず)との間に本発明の残容量測定装置10を取り付けるようにしても構わない。
【0029】
このように、バッテリー50と出力側の機器(図示せず)との間に取り付けられた本発明の残容量測定装置10では、測定手段20において、バッテリー50の充放電時におけるバッテリー電流を検出し、この検出されたバッテリー電流値を残容量関連データのひとつとして記憶手段24に入力し、逐次記憶している。
【0030】
また、残容量関連データとして記憶手段24に記憶されるバッテリー電流値は、時刻に関連づけられたデータとして記憶されており、バッテリー電流値と時刻とに基づいて、バッテリー50の充電時の充電量や、放電時の放電量を演算手段30において算出することができる。
【0031】
なお、残容量関連データとしては、バッテリー電流量のみならず、例えば、バッテリー50の充放電時のバッテリー電圧値、算出されたバッテリー50の残容量なども記憶しておくこともできる。
【0032】
特に、バッテリー50の充放電時におけるバッテリー電圧値を、時刻に関連づけられたデータとして記憶することによって、バッテリー電流値とバッテリー電圧値と時刻とに基づいて、より正確に、バッテリー50の充電時の充電量や、放電時の放電量を演算手段30において算出することができる。
【0033】
なお、本発明において記憶手段24としては、例えば、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ(不揮発性の半導体メモリ)、ハードディスクドライブなど、公知の記憶手段を用いることができる。
【0034】
また、本発明において演算手段30としては、例えば、汎用的な演算処理が可能なCPU(Central Processing Unit)や本発明の残容量測定装置10で用いられる演算処理のみが可能なIC(Integrated Circuit)など、公知の演算手段を用いることができる。
【0035】
また、本実施例の残容量測定装置10には、表示手段を構成する表示用ディスプレイ40が設けられている。この表示用ディスプレイ40は、少なくとも、演算手段30によって算出されたバッテリー50の残容量を表示するように構成されている。
【0036】
なお、表示用ディスプレイ40に表示されるデータとしては、バッテリー50の残容量に限らず、例えば、バッテリー50のバッテリー電圧値や電流値なども表示するように構成してもよい。さらに、バッテリー50に温度計を設け、バッテリーの温度を表示するように構成することもできる。これらの場合、後述する、データ入力手段38からの入力に応じてデータ表示を切り替えるように構成することもできる。
【0037】
また、本実施例では、表示用ディスプレイ40は演算手段30と接続され、残容量測定装置10として一体に構成されているが、後述するような通信手段36を設けることで、有線ケーブル(図示せず)や無線通信によって、残容量測定装置10と表示用ディスプレイ40を接続することによって、表示用ディスプレイ40を残容量測定装置10本体とは別体の装置として構成することもできる。
【0038】
また、本実施例では、残容量測定装置10は通信手段36を備えており、前述するような表示用ディスプレイ40との接続を行うこともできるし、図4に示すように、電波36aを介して外部に設けられたデータ入力手段38や記憶装置52、コンピュータ54との無線通信を行うことができる。
【0039】
このように、外部に設けられた記憶装置52やコンピュータ54と通信を行うことによって、残容量測定装置10の記憶手段24では記憶しきれない残容量関連データを外部の記憶装置52やコンピュータ54に記憶したり、測定された残容量関連データに基づいて、コンピュータ54によってバッテリー50の精密診断などを行うこともできる。
【0040】
なお、通信手段36としては、特に限定されるものではなく、有線通信であっても無線通信であっても構わない。
また、本実施例では、残容量測定装置10はデータ入力手段38を備えている。このデータ入力手段38は、バッテリー50の残容量測定を初めて行う際の仮の残容量初期値の設定を行ったり、表示用ディスプレイ40に表示されるデータの切り替えを行ったりする場合に用いられる。
【0041】
また、本発明の残容量測定装置10によって残容量を測定(推定)されるバッテリー50については、バッテリーを特定するために、バッテリーごとに個別の識別番号が付すことができる。
【0042】
このように、バッテリーに個別の識別番号を付すことによって、記憶手段24においては、残容量関連データは識別番号に関連づけられた状態で記憶される。このように構成することによって、残容量測定装置10は、識別番号に基づいて、複数のバッテリーの残容量関連データを記憶することができるため、1台の残容量測定装置10によって、複数のバッテリーについて並行して残容量の測定(推定)を行うことができる。
【0043】
以下、本発明の残容量測定装置10における残容量の測定(推定)方法について、図5及び図6に基づいて説明する。
まず、図2に示すように、バッテリー50と出力側の機器(図示せず)の間に、本発明の残容量測定装置10を接続した状態で、バッテリー50の識別番号を残容量測定装置10の記憶手段24に記憶させる。
【0044】
そして、バッテリー50の残容量の上限値Zm、警報下限値Zl、充電過電圧値Vc、警報下限電圧値Vl、放電下限電圧値Vd、充電効率係数Kc1,Kc2、放電効率係数Kd1、残容量テーブルZT1,ZT2,ZT3,ZT4,ZT5、タイマー継続時間T、インターバル時間t、仮の残容量初期値Z0などを、バッテリー50の定格値やバッテリー50の精密診断の際に判別したデータなどに基づいて、記憶手段24に記憶させる(S10)。なお、この際、仮の残容量初期値Z0としては、最適な値を記憶させる必要はなく、任意の値を記憶させればよい。
【0045】
次いで、バッテリー50の充放電の状態が判別され、充電中であると判断(S11)された場合には、バッテリー50のバッテリー電圧が測定手段20によって測定され記憶手段24に記憶される(S12)。バッテリー電圧が充電過電圧値Vcに達していない場合には、充電効率係数としてKc1を選択し(S13)、バッテリー電圧が充電過電圧値Vcに達している場合には、充電効率係数としてKc2を選択する(S14)。
【0046】
ここで、充電効率係数Kc1,Kc2とは、バッテリー50に流れる電流のうち、実際に充電される割合を表しており、充電過電圧値Vcに達する前の状態であれば、Kc1として、例えば、0.9(90%)程度を設定することができるが、充電過電圧値Vcに達した状態だと、Kc2として、例えば、0.2(20%)程度となる。
【0047】
なお、充電効率係数Kcをより精細に設定する場合には、充電過電圧値Vcを複数設定することによって、充電効率係数Kcを3つ以上の中から選択するようにしていてもかまわない。
【0048】
そして、充電効率係数Kcが設定されたら、測定手段20によって計測され記憶手段24に記憶されたバッテリー充電電流Acと充電効率係数Kcを用いることによって、数1のようにバッテリー50の残容量を計算する。
【0049】
【数1】

次いで、充電の状態が続いているか否かを判断し(S16)、充電が続いていればS12に戻って、再度、充電時における残容量の計算を行い、充電が終了していれば、充電終了処理を行う(S17)。
【0050】
充電終了処理では、充電終了後のバッテリー50の残容量が、記憶手段24に記憶された残容量の上限値Zmを上回っている場合には、記憶手段24に記憶されている残容量の上限値Zmの更新を行う。これによって、バッテリー50の放電時には、この残容量の上限値Zmから放電量を減算することによって、バッテリー50の残容量を算出することができる。
【0051】
バッテリー50が放電状態であると判断された場合(S19)には、測定手段20によってバッテリー50のバッテリー電圧が測定され記憶手段24に記憶される(S20)。バッテリー電圧が放電下限電圧値Vdに達していない場合には、放電効率係数Kdを設定し(S21)、測定手段20によって計測され記憶手段24に記憶されたバッテリー放電電流Adと放電効率係数Kdを用いることによって、数2のようにバッテリー50の残容量を計算する。
【0052】
【数2】

ここで、放電効率係数Kdとは、バッテリー50から流れる電流のから、実際に放電されている電流の割合を表しており、バッテリー50の種類や、出力側の機器の種類などによって適宜設定される値となる。
【0053】
なお、充電効率係数と同様に、バッテリー電圧に応じて、複数の放電効率係数の中から選択するように構成してもよい。
そして、バッテリー50の残容量が警報下限値Zlを下回っているか(S23)、もしくは、バッテリー50のバッテリー電圧が警報下限電圧値Vlを下回っている(S24)場合には、残容量警報を出力する(S25)。残容量警報は、例えば、音や光、表示用ディスプレイ40への表示などの方法を用いることができる。なお、残容量警報はタイマーによって監視され(S26)、残容量警報を出力している時間が、タイマー継続時間Tに達した場合には、残容量警報はリセットされる。
【0054】
次いで、放電の状態が続いているか否かを判断し(S27)、放電が続いていればS20に戻って、再度、放電時における残容量の計算を行い、放電が終了していれば、放電終了処理を行う(S28)。
【0055】
放電終了処理では、放電終了後のバッテリー50のバッテリー電圧と、残容量テーブルZT1〜ZT5に基づいて、バッテリー50の残容量の補正を行う。
具体的には、残容量テーブルZT1〜ZT5に基づいて、例えば、線形補完や線形近似を用いて残容量補正関数Zc(V)を求める。
【0056】
そして、放電終了時のバッテリー50のバッテリー電圧を、この残容量補正関数Zc(V)に代入することによって、放電終了時の残容量Ztを求める。そして、この残容量Ztを現在のバッテリー50の残容量として記憶手段24に記憶させる。
【0057】
なお、残容量テーブルZT1〜ZT5は、バッテリー50の使用状態(負荷状態)におけるバッテリー電圧と残容量の関係を示すものであって、例えば、バッテリー50の定格容量、定格電圧などに基づいて理論的に求めることもできるし、バッテリー50を精密検査することによって求めることもできる。また、残容量テーブルの数は特に限定されるものではなく、残容量補正関数Zc(V)を作成できるだけの数が記憶されていればよい。
【0058】
S20において、バッテリー50のバッテリー電圧が、放電下限電圧値Vdに達した場合には、バッテリー50のセルが転極しているとして、転極警報を出力(S29)するようになっている。
【0059】
なお、本実施例においては、警報を出力するだけであるが、バッテリー50のセルの転極に対しての演算処理を施すように構成してもよい。
また、バッテリー50が休止状態であると判断された場合(S30)には、測定手段20によってバッテリーから流れる自然放電電流Akを測定し、数3のようにバッテリー50の残容量を計算する(S31)。
【0060】
【数3】

次いで、休止状態が続いているか否かを判断し(S32)、休止状態が続いていればS31に戻って、再度、休止状態における残容量の計算を行い、休止状態が終了していれば、S28の放電終了処理を行う。
【0061】
S17において充電終了処理、S28において放電終了処理が行われた後は、残容量測定の終了命令が入力されているか否かを判断し(S18)、終了命令が入力されていなければ、S11に戻って、上述する残容量測定を繰り返す。
【0062】
このように、充放電を繰り返すバッテリー50の残容量を、放電終了時の残容量補正や、充電終了時の残容量の上限値Zmの更新を行いながら測定(推定)することによって、バッテリー50の使用状態における温度補正などを不要とした残容量測定を行うことができる。
【0063】
なお、上述した実施例では、バッテリー50の残容量が警報下限値Zlを下回った場合や、バッテリー50のバッテリー電圧が警報下限電圧値Vlを下回った場合に警報を出力するようにしているが、これに限らず、例えば、バッテリーの温度が異常に上昇した場合や、図7に示すように、例えば、定格300AHのバッテリーに対して繰り返し充電を行った場合であって、10AH〜30AH程度しか充電ができていないような状態や、図8に示すように、バッテリーの放電中にバッテリー電圧値が急激に低下してしまうような状態にも警報を出力するようにしてもよい。
【0064】
このように、バッテリー50の充放電時において、バッテリーの充電量やバッテリー電圧値に異常が生じる場合には、バッテリー50のセルバランスが崩れていることなどが考えられるため、このままの状態でバッテリー50を使用していると、残容量の正確な測定(推定)が困難となり、例えば、フォークリフトや電気自動車などに使用されている場合には、急に動かなくなってしまうなどの不具合が生じることとなる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、定期的にバッテリー50の精密検査を行うことによって、残容量テーブルZT1〜ZT5や充電過電圧値Vcなどの初期値を適宜更新するなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 残容量測定装置
12a バッテリー側正極端子
12b バッテリー側負極端子
14a 出力側正極端子
14b 出力側負極端子
16 プラグイン型コネクター
20 測定手段
22 シャント抵抗
24 記憶手段
30 演算手段
36 通信手段
36a 電波
38 データ入力手段
40 表示用ディスプレイ
50 バッテリー
52 記憶装置
54 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの残容量を測定するための残容量測定装置であって、
残容量関連データを測定するための測定手段と、
事前に設定された残容量テーブル及び事前に設定されたバッテリーの残容量の上限値が記憶されているとともに、前記測定手段によって測定された残容量関連データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された残容量関連データに基づいて、バッテリーの残容量を算出する演算装置と、を備え、
前記記憶手段に、測定した充放電中のバッテリーの残容量関連データを逐次記憶するとともに、該記憶手段に記憶したバッテリーの残容量関連データに基づいて、バッテリーの残容量を算出するとともに、
バッテリーの充電終了時に、バッテリーの残容量が、前記残容量の上限値を上回っている場合に、前記残容量の上限値をバッテリーの残容量によって更新し、
バッテリーの放電終了時に、前記残容量テーブルに基づいて、バッテリーの残容量を補正することを特徴とする残容量測定装置。
【請求項2】
バッテリーの充電時において、前記測定手段によってバッテリーの電圧値を測定し、該バッテリーの電圧値に基づいて、所定の充電効率係数を選択し、
前記記憶手段に記憶された、測定されたバッテリーに流れるバッテリー充電電流と前記所定の充電効率係数に基づいて、前記演算手段によって、バッテリーの残容量を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の残容量測定装置。
【請求項3】
バッテリーの放電時において、
前記記憶手段に記憶された、測定されたバッテリーから放電されるバッテリー放電電流と所定の放電効率係数に基づいて、前記演算手段によって、バッテリーの残容量を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の残容量測定装置。
【請求項4】
前記測定手段によってバッテリーの電圧値を測定し、該バッテリーの電圧値に基づいて、所定の放電効率係数を選択するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の残容量測定装置。
【請求項5】
前記残容量測定装置が、少なくともバッテリーの残容量を表示する表示手段を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の残容量測定装置。
【請求項6】
前記残容量測定装置が、前記表示手段、外部に設けられた記憶手段、外部に設けられたコンピュータのうち少なくともいずれかと通信を行うための通信手段を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の残容量測定装置。
【請求項7】
前記バッテリーには、バッテリーごとに個別の識別番号が付されており、
前記記憶手段には、バッテリーの識別番号に関連づけられた残容量関連データが記憶されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の残容量測定装置。
【請求項8】
前記残容量測定装置には、
バッテリーの端子と接続するためのバッテリー側端子と、
出力側の端子を構成する出力側端子と、を備えており、
前記バッテリー側端子及び出力側端子がそれぞれプラグイン型コネクターであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の残容量測定装置。
【請求項9】
前記バッテリーの充放電時において、バッテリーの異常を前記演算装置が検出した場合に、警報を出力するように構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の残容量測定装置。
【請求項10】
前記バッテリーの充放電時において、バッテリーの残容量が所定の警報下限値を下回った場合に、警報を出力するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の残容量測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−141172(P2012−141172A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292591(P2010−292591)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(508092130)有限会社オーエイチケー研究所 (6)
【Fターム(参考)】