残留性有機汚染物質の分離処理方法
【課題】
鉱物微粉末と残留性有機汚染物質とが混ざっている廃棄物から、鉱物微粉末を除去し、超臨界水酸化処理に供すべき残留性有機汚染物質を取り出す。
【解決手段】
1つまたは複数の残留性有機残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程(ステップS102)と、その後に静置する静置工程(ステップS103)と、静置工程(ステップS103)によって分離した複数の相から、鉱物微粉末を含む相と残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程(ステップS104)とを有し、鉱物微粉末を含む相に対して、さらに混合工程(ステップS106)と、静置工程(ステップS107)と、採取工程(ステップS108)とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法とする。
鉱物微粉末と残留性有機汚染物質とが混ざっている廃棄物から、鉱物微粉末を除去し、超臨界水酸化処理に供すべき残留性有機汚染物質を取り出す。
【解決手段】
1つまたは複数の残留性有機残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程(ステップS102)と、その後に静置する静置工程(ステップS103)と、静置工程(ステップS103)によって分離した複数の相から、鉱物微粉末を含む相と残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程(ステップS104)とを有し、鉱物微粉末を含む相に対して、さらに混合工程(ステップS106)と、静置工程(ステップS107)と、採取工程(ステップS108)とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated Biphenyl: PCB)、DDT、ダイオキシン等に代表される残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants: POPs)の1種若しくは複数種と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から残留性有機汚染物質を分離する、残留性有機汚染物質の分離処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
POPsの一種であるPCBは、科学的に安定で、電気絶縁性に優れ、しかも燃焼しにくいことから、過去、火災事故の少ない優良な電気絶縁油として、高圧トランス(変圧器)やコンデンサー(蓄電器)、感圧複写(ノーカーボン)紙などに幅広く使われていた。しかし、PCBには下記するような毒性があり、日本では1972年に生産が中止され、1974年には「化学物質審査規制法」により製造・輸入が禁止された。現在、日本国内ではPCBは使用されていない材料である。
【0003】
PCB類の化学構造は、ビフェニルの水素を塩素で置き換えたもので、1個以上の塩素原子が結合した化合物である。このPCBは、環境中で分解しにくい性質に加えて、生物の脂肪組織に蓄積しやすい性質を保有しており、慢性毒性があると言われている。特に、PCB類には、ダイオキシンの仲間とされている毒性の強いコプラナーPCB(PCBのうち平面構造を有するCoplaner PCBs)が含まれている。このコプラナーPCBは、魚介類に蓄積され、日本人が食物から摂取するダイオキシン摂取量の60%を占めているとされている。
【0004】
日本国内の未使用のPCBやPCB含有機器(密封して使用されているトランス機器は除く)は、適切な処理方法が確立されるまで、日本国内法の「廃棄物処理法」によって事業所に厳重な保管と報告が義務づけられてきた。このため、多くのPCB含有機器等が現在もまだ処理されずに残っている。
【0005】
製造開始の1954年から製造中止の1972年までの19年間に、多量のPCBが製造されてきた。その主な使用用途は高圧のトランス・コンデンサーで、次に多かったのがカネミ油症事件に結びついた熱媒体であった。PCB含有機器等は上述のように適切な処理方法が確立されるまで保管を義務付けられたため、その大部分が何らかの形で今もなお保管されている。
【0006】
PCBは、1974年の上述した「化学物質審査規制法」によって製造、輸入、新規使用の禁止がなされた。また、廃棄物処理法によって1992年からはPCBは特別管理産業廃棄物に指定され、上述したように、事業所に厳重な保管と報告が義務づけられた。廃棄物処理法の数次に渡る改正で、高温焼却処理(1,100℃以上)、アルカリ触媒分解法等の化学分解法、超臨界水酸化分解法、水熱酸化分解法、還元熱化学分解法、紫外線を利用する光分解法の各処理方法がPCBの処理方法として認められるに至った。また、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(通称POPs条約)の採択により(2001年5月採択)、製造・使用が禁止された全ての残留性有機汚染物質(POPs)についても、PCBと同様、地中の保管に替え、適切な処理を行うことが求められている。上記PCBの処理方法は、それ以外のPOPsの処理にも適用できる。
【0007】
このような状況下、2001年6月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(いわゆるPCB処理法)が成立し、2001年7月15日に施行された。このPCB処理法では、PCBの保管業者は、毎年度、都道府県に保管状況を届けると共に15年以内にPCB廃棄物を処分しなければならない旨を規定している。このように、日本では、PCBおよびこれ以外のPOPsの処理は緊急の課題となり、急を要する事項となっている。また、日本以外の国にもPCB含有機器等が多数存在し、PCBを含むPOPsの無害化処理は緊急課題となっている。
【0008】
上述した従来の無害化処理方法には、それぞれ一長一短があるものの超臨界水を利用した分解法は、高温焼却のような高い反応温度を必要としないこと、ダイオキシンが一時的に副生しても直ちに分解されてしまうこと、PCBを含むPOPsの再合成の恐れがないこと、長い反応時間を必要としないこと、等多くの利点がある(特許文献1参照)。ここで超臨界水とは、超臨界状態にある水、すなわち水の臨界点を越えた状態にある水をいう。具体的には水の臨界温度である374.1℃以上の高温で、水の臨界圧力である22.04MPa以上の圧力にある状態の水をいう。
【0009】
この超臨界水を利用した従来の処理装置は、大型で特定の場所に固定的に備え付けられている(特許文献2、3参照)。また、この超臨界水を利用した従来の処理装置に用いられる反応容器(圧力容器)は、縦型に配置されその位置が動かないように固定されている(特許文献3参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平10−225632号公報
【特許文献2】特開2002−177758号公報
【特許文献3】特開2001−232381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
超臨界水を利用したPOPs(PCBも含む)処理装置は、上述のように数々の利点があり好ましいものと言える。
【0012】
しかしながら、上記のPCBを含むPOPsは、単独で存在しているわけではなく、土砂に混じって存在している。土砂に含まれる鉱物微粉末は、超臨界水酸化処理に投じても、それ自身を分解することはできない。したがって、土砂中のPOPsを超臨界水酸化処理するためには、それ自体が汚染物質ではない土砂だけを除くことが望まれる。
【0013】
本発明は、かかる必要性に鑑みてなされたものであり、鉱物微粉末とPOPsとが混ざっている廃棄物から、鉱物微粉末を除去し、超臨界水酸化処理に供すべきPOPsを取り出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、1つまたは複数の残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程と、混合工程後に静置する静置工程と、静置工程によって分離した複数の相から、鉱物微粉末を含む相と残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程とを有し、鉱物微粉末を含む相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、鉱物微粉末を取り除き、残留性有機汚染物質だけを超臨界水酸化処理あるいは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0015】
また、別の本発明は、先の発明において、残留性有機汚染物質がDDTのみからなる場合であって、採取工程は、残留性有機汚染物質を含む最上相と、それ以外の下位の相とを分けて採取する工程とし、下位の相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっているDDTを除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。DDTは非水溶性であるため、混合後の内容物の最上相に多く集まる。このため、最上相を分離した後の下位の相に対してさらに、混合および静置工程を繰り返すことによって、下位の相に残存しているDDTを除外することができる。
【0016】
また、別の本発明は、上記発明の下位の相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行った後、鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっているDDTを除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、DDTの分離効率をさらに高めることができる。
【0017】
また、別の本発明は、先の発明の下位の相に対して、残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合であって、採取工程は、鉱物微粉末を含む最下相と、それ以外の上位の相とを分けて採取する工程とし、最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合には、最上相のみならず、その直下の相にも残留性有機汚染物質が存在する。このため、鉱物微粉末を多く含む最下相のみを残して、最下相に対して混合および静置工程を繰り返すことによって、廃棄物から鉱物微粉末を分離して、残留性有機汚染物質だけを超臨界水酸化処理あるいは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0018】
また、別の本発明は、上記発明の最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行った後、鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、残留性有機汚染物質の分離効率をさらに高めることができる。
【0019】
また、別の本発明は、1つまたは複数の残留性有機汚染物質と硝酸塩に由来する物質を含む硝酸塩水溶液とを、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させて残留性有機汚染物質を無害化する前に、残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から、残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程と、混合工程後に静置する静置工程と、静置工程によって分離した複数の相から、鉱物微粉末を含む相と残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程とを有し、鉱物微粉末を含む相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去し、残留性有機汚染物質を含む相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、鉱物微粉末を取り除き、残留性有機汚染物質だけを超臨界水酸化処理あるいは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0020】
また、別の本発明は、残留性有機汚染物質がDDTのみからなる場合であって、採取工程は、残留性有機汚染物質を含む最上相と、それ以外の下位の相とを分けて採取する工程とし、下位の相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっているDDTを除去し、最上相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。DDTは非水溶性であるため、混合後の内容物の最上相に多く集まる。このため、最上相を分離した後の下位の相に対してさらに、混合および静置工程を繰り返すことによって、下位の相に残存しているDDTを除外することができる。これによって、DDTだけを超臨界水酸化処理若しくは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0021】
また、別の本発明は、下位の相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行った後、鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっているDDTを除去し、得られた最上相に対して硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、DDTの分離効率をさらに高めることができ、超臨界水酸化処理若しくは亜臨界水酸化処理を効率よく行うことができる。
【0022】
また、別の本発明は、残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合であって、採取工程は、鉱物微粉末を含む最下相と、それ以外の上位の相とを分けて採取する工程とし、最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去し、上位の相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、鉱物微粉末を多く含む最下相のみを残して、最下相に対して混合および静置工程を繰り返すことによって、廃棄物から鉱物微粉末を分離して、残留性有機汚染物質だけを超臨界水酸化処理あるいは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0023】
また、別の本発明は、最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行った後、鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去し、その最下相以外の上位の相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、残留性有機汚染物質の分離効率をさらに高めることができ、超臨界水酸化処理若しくは亜臨界水酸化処理を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、鉱物微粉末と残留性有機汚染物質とが混ざっている廃棄物から、鉱物微粉末を除去し、超臨界水酸化処理に供すべき残留性有機汚染物質を取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明に係る残留性有機汚染物質(POPs)の分離処理方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
まず、はじめに、POPsの一例であるPCBの特性と、PCBの超臨界水酸化処理について簡単に説明する。
【0027】
ポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated Biphenyl: PCB)(以後、単に「PCB」と称する。)は、ビフェニル(Biphenyl)C12H10の塩素置換体であり、塩素数および水素との置換位置によって、理論的に209種類の異性体を有する。また、硝酸塩に由来する物質とは、硝酸塩を含有する水が超臨界状態若しくは亜臨界状態にある場合において、硝酸塩から生じる物質を意味する。本発明では、硝酸塩から生じる物質は、PCBを酸化する酸化剤としての機能を有する物質であり、硝酸イオン、亜硝酸イオン、これらが分解して生成される酸素、酸素イオンを含む。この実施の形態において用いられる硝酸塩水溶液は、硝酸ナトリウム水溶液であるが、これに限定されず、例えば、硝酸カリウム水溶液、硝酸カルシウム水溶液を用いても良い。
【0028】
超臨界とは、臨界点を超えた状態を意味する。水の場合、臨界温度374.1℃、臨界圧力22.04MPaを超えた状態の水を、超臨界水と称する。また、亜臨界とは、臨界温度よりも若干、低温の状態を意味し、相図上、液体の状態である。水が超臨界状態下若しくは亜臨界状態下におかれていれば、その中に他の物質を含んでいても、それぞれ超臨界水若しくは亜臨界水と称するものとする。
【0029】
図1は、PCBを超臨界水溶液若しくは亜臨界水溶液を用いて分解する際の反応を示す図である。
【0030】
PCBと超臨界水溶液若しくは亜臨界水溶液とを反応させると、PCBは、図1に示すように、二酸化炭素、水および無機塩(例えば、NaCl)に分解される。超臨界状態若しくは亜臨界状態におかれる硝酸塩由来の物質の酸化力は、極めて大きいためである。この実施の形態で用いられる硝酸ナトリウムは、超臨界水若しくは亜臨界水中において、次の反応式(1)に示すように、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)と酸素に分解される。当該分解反応によって生成される酸素は、図1に示すPCBの酸化分解反応に寄与する。
2NaNO3 → 2NaNO2 + O2 (1)
【0031】
PCB中の塩素は、上記反応式(1)により生成された亜硝酸ナトリウム中のナトリウムと反応して塩(NaCl)を形成する。また、PCB中の炭素は、酸化されて二酸化炭素となる。なお、硝酸カリウム水溶液若しくは硝酸カルシウム水溶液を用いると、NaCl以外の無機塩が生成する。
【0032】
次に、上記の超臨界水酸化処理に先立ち、PCBに代表されるPOPsと鉱物微粉末との混合体(ここでは、廃棄物と称している。)においてPOPsと鉱物微粉末とを分離する方法について説明する。
【0033】
図2は、POPsの素性が特定できない場合に、廃棄物からPOPsを分離して、鉱物微粉末の分析と、POPsを超臨界水酸化処理した後の分析を行う一連の工程を示すフローチャートである。また、図3および図4は、図2に示す工程の中の一部を図示したものである。
【0034】
まず、図2および図3(3A)に示すように、超臨界水酸化処理に先立ち、廃棄物と、硝酸塩水溶液と、界面活性剤とを1つの容器1に投入する(ステップS101)。硝酸塩水溶液としては、硝酸ナトリウム水溶液が好適であるが、硝酸ナトリウム水溶液に限定されず、他の硝酸塩水溶液として、例えば硝酸塩カリウム水溶液あるいは硝酸塩カルシウム水溶液を採用しても良い。各投入量は、廃棄物1000g(1kg)に対して、硝酸塩水溶液5000cc、界面活性剤25ccの割合が好ましい。ただし、廃棄物中に含まれるPOPsの量に応じて、他の投入物の量を適宜変更可能である。硝酸塩水溶液は、硝酸塩と水との重量比が硝酸塩1に対して水3となるように調整したものである。ただし、かかる比率に限定されない。
【0035】
ステップS101に続いて、容器1中にて、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤との混合物3を攪拌する(ステップS102:混合工程)。図3(3A)に示すように、攪拌は、マグネチックスターラ装置2(回転子2aを含む)を用いて行う。ただし、先端に羽根を付けた攪拌羽根を備えた攪拌機を用いて攪拌しても良い。また、粒体を容器1に入れて、攪拌羽根で攪拌すると、なお良い。粒体の大きさは、容器1の大きさによって適宜変更することができる。攪拌時間は、廃棄物の種類と量などの投入条件によって変わるが、概ね100分程度が望ましい。所定時間の攪拌を終えると、容器1をしばらく静置する(ステップS103:静置工程)。静置時間は、特に限定されないが、概ね20分程度である。
【0036】
図3(3C)に示すように、静置した容器1では、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤の混合物3は、三相に分離する。通常、廃棄物中に含まれるPOPsの比重は、0.9〜1.0g/ccの範囲にある。一方、鉱物微粉末の比重は、2.0g/cc以上である。また、硝酸塩水溶液の比重は、約1.2g/ccである。したがって、上相はPOPsに、中相は硝酸塩水溶液に、下相は鉱物微粉末になる。次に、図4(4A)に示すように、分離した三相の内、上相と中相を採取する(ステップS104:採取工程)。採取方法は、特に限定されるものではないが、送液ポンプ4を用いて容器1から上相および中相を吸い出す方法を採用するのが好ましい。吸い出した上相と中相は、超臨界水酸化処理に供すべく、別の容器に入れられる。
【0037】
容器1に残された下相には未だPOPsが残っている可能性が高い。このため、図4(4B)に示すように、下相のみを残した容器1に、硝酸塩水溶液と界面活性剤とを加えて(ステップS105)、攪拌する(ステップS106:混合工程)。加えた硝酸塩水溶液は3000cc、界面活性剤は15ccが好適である。攪拌条件としては、ステップS102と同じ条件が望ましいが、別の条件を採用しても良い。所定時間の攪拌を終えると、容器1をしばらく静置する(ステップS107:静置工程)。このステップでも、静置時間は、概ね20分程度である。
【0038】
静置した容器1では、前述と同様(図3(3C)を参照。)に三相に分離する。分離した三相の内、また、図4(4A)に示すように、上相と中相を採取する(ステップS108:採取工程)。送液ポンプ4を用いて吸い出した上相と中相は、超臨界水酸化処理に供すべく、先に上相と中相の内容物を入れた別の容器に追加される。ただし、ステップS108において採取した内容物を、ステップS104において採取した内容物と別の容器に入れても良い。
【0039】
次に、容器1に残った下相の分析を行う(ステップS109)。分析は、POPsの定量が可能な分析手法であれば特に限定されないが、後述するGC/MS分析装置が好適である。かかる分析により、POPsの量が規定レベル以下か否かが判定される(ステップS110)。当該規定レベルは、国、地方自治体の定める許容レベルをいうが、かかる許容レベルよりも厳しいレベルに設定することもできる。この実施の形態では、規定レベルを0.1ppmとしている。
【0040】
ステップS110の判定の結果、POPsが規定レベル以下となっていない場合には、ステップS105に戻り、再度、硝酸塩水溶液と界面活性剤とを投入する工程を行い、ステップS106〜ステップS110を繰り返す。POPsが規定レベル以下となるまで、ステップS105〜ステップS110は繰り返される。
【0041】
一方、ステップS104およびステップS108において吸い出した上相および中相の内容物は、超臨界水酸化処理(後述する)に供される(ステップS111)。次に、処理後の内容物の分析を行う(ステップS112)。この分析も、POPsの定量が可能な分析手法であれば特に限定されないが、GC/MS分析装置が好適である。かかる分析により、POPsの量が規定レベル以下か否かが判定される(ステップS113)。ステップS113の判定の結果、POPsが規定レベル以下となっていない場合には、ステップS111に戻り、内容物は、再度、超臨界水酸化処理に供される。POPsが規定レベル以下となるまで、ステップS111〜ステップS113は繰り返される。
【0042】
こうして、ステップS110およびステップS113における両判定の結果、全ての内容物の量が規定レベルとなった場合、本工程は終了する。
【0043】
図5は、POPsがDDTのみであることが明らかな場合に、DDTと混合している鉱物微粉末と残留性有機汚染物質であるDDTとを分離して、鉱物微粉末の分析と、DDTを超臨界水酸化処理した後の分析を行う一連の工程を示すフローチャートである。また、図6は、図5に示す工程の中の一部を図示したものである。
【0044】
まず、超臨界水酸化処理に先立ち、廃棄物と、硝酸塩水溶液と、界面活性剤とを1つの容器1に投入する(ステップS201)。硝酸塩水溶液としては、硝酸ナトリウム水溶液が好適であるが、硝酸カリウム水溶液あるいは硝酸カルシウム水溶液等の他の硝酸塩水溶液でも良い。各投入量は、廃棄物1000g(1kg)に対して、硝酸塩水溶液5000cc、界面活性剤25ccの割合が好ましい。ただし、廃棄物中に含まれるDDTの量に応じて、他の投入物の量を適宜変更可能である。硝酸塩水溶液は、硝酸塩と水との重量比が硝酸塩1に対して水3となるように調整したものである。ただし、かかる重量比に限定されない。
【0045】
ステップS201に続いて、容器1中にて、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤との混合物を攪拌する(ステップS202:混合工程)。攪拌は、マグネチックスターラ装置(回転子を含む)を用いて行う他、攪拌機を用いて行っても良い。攪拌時間は、廃棄物の種類と量などの投入条件によって変わるが、概ね100分程度が望ましい。所定時間の攪拌を終えると、容器1をしばらく静置する(ステップS203:静置工程)。静置時間は、特に限定されないが、概ね20分程度である。
【0046】
すると、図6(6A)に示すように、静置した容器1では、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤の混合物は、三相に分離する。通常、廃棄物中に含まれるDDTは、水に不溶性で低比重の物質である。一方、鉱物微粉末の比重は、2.0g/cc以上である。また、硝酸塩水溶液の比重は、約1.2g/ccである。したがって、上相はDDTに、中相は硝酸塩水溶液に、下相は鉱物微粉末になる。しかも、DDTは、中相にはほとんど存在しない。このため、図6(6B)に示すように、分離した三相の内、上相のみを採取する(ステップS204:採取工程)。採取方法は、特に限定されるものではないが、送液ポンプ4を用いて容器1から上相を吸い出す方法を採用するのが好ましい。吸い出した上相は、超臨界水酸化処理に供すべく、別の容器に入れられる。
【0047】
容器1に残された中相および下相には未だわずかでもDDTが残っている可能性がある。このため、図6(6C)に示すように、中相と下相の各内容物を入れた容器1に、硝酸塩水溶液と界面活性剤とを加えて(ステップS205)、攪拌する(ステップS206:混合工程)。加えた硝酸塩水溶液は3000cc、界面活性剤は15ccが好適である。攪拌条件としては、ステップS202と同じ条件が望ましいが、別の条件を採用しても良い。所定時間の攪拌を終えると、容器1をしばらく静置する(ステップS207:静置工程)。
【0048】
静置した容器1では、前述と同様に三相に分離する(図6(6A)を参照。)。分離した三相の内、また、上相のみを採取する(ステップS208:採取工程)。送液ポンプ4を用いて吸い出した上相は、超臨界水酸化処理に供すべく、先に上相の内容物を入れた別の容器に追加される。ただし、ステップS208において採取した内容物を、ステップS204において採取した内容物と別の容器に入れても良い。
【0049】
次に、容器1に残った中相および下相の各内容物の分析を行う(ステップS209)。分析は、DDTの定量が可能な分析手法であれば特に限定されないが、後述するGC/MS分析装置が好適である。かかる分析により、中相および下相の内容物に含まれるDDTの量が規定レベル以下か否かが判定される(ステップS210、ステップS211)。当該規定レベルは、国、地方自治体の定める許容レベルをいうが、かかる許容レベルよりも厳しいレベルに設定することもできる。この実施の形態では、規定レベルを0.1ppmとしている。
【0050】
ステップS210の判定の結果、下相のDDTが規定レベル以下となっていない場合には、ステップS205に戻り、再度、硝酸塩水溶液と界面活性剤とを投入する工程を行い、ステップS206〜ステップS210を繰り返す。DDTが規定レベル以下となるまで、ステップS205〜ステップS210は繰り返される。また、ステップS211の判定の結果、中相のDDTが規定レベル以下となっていない場合には、中相の内容物は、超臨界水酸化処理に供すべく、先に上相の内容物を入れた別の容器に追加される。
【0051】
一方、ステップS204およびステップS208、場合によってはステップS211において吸い出した内容物は、超臨界水酸化処理(後述する)に供される(ステップS212)。次に、処理後の内容物の分析を行う(ステップS213)。この分析も、DDTの定量が可能な分析手法であれば特に限定されないが、GC/MS分析装置が好適である。かかる分析により、DDTの量が規定レベル以下か否かが判定される(ステップS214)。ステップS214の判定の結果、DDTが規定レベル以下となっていない場合には、ステップS212に戻り、内容物は、再度、超臨界水酸化処理に供される。DDTが規定レベル以下となるまで、ステップS212〜ステップS214は繰り返される。
【0052】
こうして、ステップS210、ステップS211およびステップS214における判定の結果、全ての内容物の量が規定レベルとなった場合、本工程は終了する。
【0053】
図7は、超臨界水酸化処理を行うPOPs処理装置10の模式図である。
【0054】
このPOPs処理装置10は、POPsと硝酸塩水溶液との混合液を入れるタンク11と、POPsと硝酸塩水溶液とを反応させる反応部12と、反応部12から排出される反応後の処理水(生成物)を冷却する冷却部13と、冷却後の処理水を貯める処理水用タンク14と、圧力等の異常時に配管内の溶液を回避させる異常時回避用タンク15と、反応部12の圧力を調整するレギュレータ16と、圧力の異常を検知する圧力センサ17と、圧力等の異常時にのみ異常時回避用タンク15に溶液を流すために開く安全弁18とを備えている。
【0055】
タンク11の直後(溶液を流す下流側)には、それぞれ、混合液を送るための送液ポンプ19が接続されている。送液ポンプ19とタンク11とは配管20で接続されている。また、配管20には、負圧センサ(図示省略)が接続されている。このため、送液ポンプ19が確実に運転されていることを認知できる。
【0056】
送液ポンプ19の下流側には配管21が接続されている。配管21は、配管22を経由して、反応部12の主要構成部である配管23と接続されている。配管22は、後述するように、混合液を予熱するために設けられる予熱用配管である。
【0057】
配管23には、その内部を流れる混合液を超臨界状態若しくは亜臨界状態とするに必要な熱を供給するための6本のヒータ24,25,26,27,28,29が巻かれている。各ヒータ24,25,26,27,28,29は、温度調節器30に接続されている。温度調節器30は、さらに、ヒータ電源31に接続されている。ヒータ電源31は、三相200Vに接続されている。ヒータ電力は、約6000Wである。各ヒータ24,25,26,27,28,29は、熱電対32により測定された温度に基づいて温度制御されている。なお、熱電対32は、各ヒータ24,25,26,27,28,29毎に用意されているが、図面の簡略化のため、図7では、1本しか図示されていない。ただし、ヒータ24,25,26,27,28,29を1本のヒータに替えて、当該ヒータを、1本の熱電対32により測定された温度に基づいて温度制御するようにしても良い。
【0058】
反応部12では、配管23を流れる混合液を約480℃にするように、ヒータ加熱が行われる。混合液を約480℃に加熱するのは、次の理由からである。
【0059】
POPsに含まれる炭素を酸化させ、二酸化炭素とするためには、混合液を450〜650℃の高温状態とする必要がある。450℃より低い温度では、炭素は二酸化炭素にならず、固体炭素となりやすくなり、連続フロー式のPOPs処理を実現することが難しくなる。一方、POPsに含まれる塩素と、硝酸塩水溶液中の塩との反応によって生成される生成物は、500〜650℃という高温下では、結晶化してしまう。このため、連続フロー式のPOPs処理を実現することが難しくなる。したがって、固体炭素の生成と生成物の結晶化の両方を軽減し、連続フロー式のPOPs処理を実現するためには、混合液の温度を450〜500℃の温度範囲にする必要がある。かかる理由から、この実施の形態では、反応部12における混合液の温度を、約480℃としている。
【0060】
SUS316製の配管23は、480℃まで加熱すると、室温時の長さよりも約17ミリ長くなる。また、配管23内の溶液の量によって、その長さも変化する。このような配管23の伸びにより、水平部分と直角部分を繋ぐジョイントから溶液が漏れる危険性も考えられる。このような危険性を考慮し、より安全な運転を行うべく、温度調節器30とは別に、パーソナルコンピュータにより、ヒータ24,25,26,27,28,29のオンオフ制御も行っている。具体的には、ヒータ24,25,26,27,28,29への通電を2分間行ったら通電をオフにし、当該オフの状態を3分間継続してから再度2分間通電するというようにプログラム制御している。このようなオンオフを20回以上繰り返して480℃まで昇温すると、約2時間30分の時間を要する。一方、運転を終了して、480℃の状態から室温まで下げるのにも約2時間30分の時間を要する。このような昇温条件を採用すると、後述するように、配管23と、ヒータ24,25,26,27,28,29と、その上を覆う金属製のセメントとの伸びの差異から生じる接触状態の不具合を、ほぼ解消することもできる。さらに、配管23をより均一に加熱することもできる。
【0061】
反応部12では、POPsの分解をより促進させるため、触媒を使用することができる。触媒としては、二酸化ルテニウム(RuO2)が好ましいが、白金、ロジウム、あるいはロジウム酸化物等の触媒を採用することもできる。反応部12を構成する配管23は、反応部12の出口側で配管33に接続されている。配管33は、先に述べた配管22と共に、反応部12と下流側に配置される冷却部13との間に設けられた熱交換部34を構成している。図7に示すように、配管33は配管22に巻回されており、配管22の内部を流れる混合液は、反応部12に導入される前に、配管33を流れる処理水から熱をもらって予熱される。一方、配管33を流れる処理水は、冷却部13への導入に先立ち、配管22を流れる混合液に熱を与えることによって予冷される。
【0062】
冷却部13は、処理水を60℃以下の温度まで冷却する処理を行う部分である。しかし、処理水の量、流速等により、処理水を60℃以下の温度まで冷却するには、冷却部13に高性能な冷却装置を備えたり、冷却部13で冷却している距離を長くする等の対応が必要となる。かかる対応を行うと、POPs処理の費用が高くなったり、あるいは装置が大型化するという問題が生じる。かかる問題を回避するため、この実施の形態では、反応部12と冷却部13との間に、熱交換部34を設けている。
【0063】
熱交換部34において、配管22内部の混合液が予熱されるため、反応部12における分解反応の反応効率が高くなる。また、熱交換部34において、配管33内部の処理水が予冷されるため、冷却部13を通過した後の処理水の温度を効率良く下げることができる。具体例を述べると、タンク11からの供給当初の混合液は約15℃であるが、反応部12に入る直前の混合液の温度は、380℃まで上昇することがわかっている。また、配管33を流れる処理水も、380℃まで温度低下することがわかっている。
【0064】
冷却部13より下流側の配管35は、レギュレータ16に接続されている。このレギュレータ16は、反応部12の混合液の圧力を調整して、混合液を超臨界若しくは亜臨界の状態とするための加圧手段である。反応部12内の混合液を超臨界状態を保持するためには、臨界圧力である22.04MPaより高い圧力が必要である。この実施の形態では、超臨界若しくは亜臨界状態における処理を行う場合、混合液に加えられる圧力が25MPa以上となるようにレギュレータ16が設定されている。
【0065】
レギュレータ16より下流側には、処理水用タンク14が配置されている。レギュレータ16と処理水用タンク14とは、配管36で接続されている。冷却後の処理水は、処理水用タンク14に送られる。
【0066】
また、レギュレータ16の直前には、異常時回避用タンク15につながる配管37も設けられている。配管37は、図7の点Aで、処理水用タンク14に向かう経路から分岐されている。点Aから伸びる配管37には、安全弁18が設けられている。また、点Aには、圧力センサ17が取り付けられている。圧力センサ17は、レギュレータ16より上流側の圧力を検知している。安全弁18は、通常の運転時には閉じられているが、圧力異常となった場合には、圧力センサ17が働き、開くようになっている。安全弁18が開くと、処理水等は、異常時回避用タンク15に送られる。これによって、圧力異常の状態が解消される。
【0067】
次に、POPsが無害な物質に分解されたことを確認するための分析方法と分析結果の一例について説明する。
【0068】
POPsを処理した後の生成物は、主に、ガスクロマトグラフィ/質量分析(Gas Chromatography/Mass Spectrometry:GC/MS)装置と核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance: NMR)分光装置により分析することができる。
【0069】
GC/MS装置は、冷却部13より下流側の配管から採取した気体の成分を分析するために用いられる。多成分からなる揮発性の試料をキャリアガスと共にカラムに送り込むと、揮発性の試料がカラムを移動する間に、固定相の液相との親和性の違いにより、試料中の各成分の移動速度に差がでてくる。GC/MSは、この移動速度の差をカラム出口の検出器で検出してクロマトグラムとして出力することにより、試料中の成分を調べる方法である。検出器には、気体の熱伝導率の差を利用し、これをサーミスタの電気抵抗の差として検出するTCD(Thermal Conductivity Detector)と、高電圧電極間で水素を燃焼させ、ここにキャリアガスを流しておき、気体成分が水素炎中でイオン化し、電極間に流れた電流を検出するFID(Flame Ionization Detector)とを用いることができる。
【0070】
NMR分光装置は、処理水用タンク14内の液体(処理水)中に存在する分子を特定するために用いられる。物質を静磁場中に置くと、その物質を構成する原子核がその種類によってある特定の周波数の電磁波を吸収する。この現象を利用して物質を特定する分析法を、NMR分光という。NMR分光では、主に、物質中の水素核(1H)と炭素核(13C)の観測が行われる。
【実施例】
【0071】
次に、本発明に係る残留性有機汚染物質の分離処理方法の実施例について説明する。
【0072】
(実施例1)
a.実験方法
DDTを含む鉱物微粉末100g(内、90gは鉱物微粉末)と、硝酸ナトリウム水溶液500ml(H2O:NaNO3=3:1(重量比))と、界面活性剤100gとを容器に入れ、ミキサーを用いて10回ミキシングを行った。界面活性剤と硝酸ナトリウム水溶液は、3回のミキシング毎に追加した。ミキシングの後に静置した結果、容器内の内容物は3相に分離した。この操作を第1回目の処理とする。下相の残留物の一部(数g程度)はGC/MS測定用に取り出された。取り出された残留物の一部は、水洗後、n−ヘキサンで抽出し、これをGC/MS測定用のサンプルとした(サンプル1)。次に、第1回目の処理後の固体残留物について、硝酸ナトリウム水溶液と界面活性剤を加え、同様の処理を10回行った。下相の残留物の一部(数g程度)はGC/MS測定用に取り出された。取り出された残留物の一部は、水洗後、n−ヘキサンで抽出し、これをGC/MS測定用のサンプルとした(サンプル2)。
【0073】
また、サンプル1のヘキサン抽出液に対して超臨界水酸化処理を行った。この処理は、H2O3ml、NaNO3500mg、反応温度480℃、反応時間30分の条件で行った。超臨界水酸化処理の後、水溶液は、エバポレータにより常温蒸発乾固し、クロロホルムを3ml加えた後にGC/MS測定に供した(サンプル3)。
【0074】
b.評価結果および考察
DDTの有無を確認するための評価は、株式会社島津製作所製のGC/MS分析装置(SHIMADZU-QP5000)を用いて行った。サンプル1を評価した結果、図8(8A)および(8B)に示すように、最初の1分間で溶媒(n−ヘキサン)のピークが現れ、10分後に1本のピークが現れた。また、後者のピークの質量を調べたところ、図9に示すように、質量100以上の多くのシグナルが検出された。コンピュータ・シミラリティによりシグナルの同定を行った結果、これらのシグナルは、DDTのスペクトルと決定された。
【0075】
次に、サンプル2を評価した結果、図10(10A)および(10B)に示すように、サンプル1と異なり、10分後のピークは見られなかった。また、10分後のノイズレベルのシグナルに対して質量を調べたが、図11に示すように、DDTと関連のあるシグナルは検出されなかった。このことから、処理を11回繰り返すと、鉱物微粉末中のDDTは洗い出され、超臨界水酸化処理の対象としなくても良いと考えられる。
【0076】
一方、サンプル3を評価した結果、図12(12A)および(12B)に示すように、10分後のピークは見られなかった。また、10分後のノイズレベルのシグナルに対して質量を調べたが、図13に示すように、DDTと関連のあるシグナルは検出されなかった。このことから、超臨界水酸化処理によりDDTは完全に分解されたと考えられる。
【0077】
(実施例2)
a.実験方法
DDTを含む鉱物微粉末1000g(内、900gは鉱物微粉末)と、硝酸ナトリウム水溶液5000g(H2O:NaNO3=3:1(重量比))と、界面活性剤25ccとを容器に入れ、スターラーにて100分間攪拌した。攪拌後、20分間の静置の結果、容器内の内容物は3相に分離した。霧吹きを用いて硝酸ナトリウム水溶液を上相部の泡に散布して消泡を行った。その後、上相を抜き取り、その一部をGC/MS測定に供した(サンプル5)。また、抜き取った上相の一部に対して超臨界水酸化処理を施し、GC/MS測定に供した(サンプル6)。超臨界水酸化処理は、反応温度420〜480℃、圧力25MPa、吐出量12cc/minの条件で行った。
【0078】
b.評価結果および考察
DDTの有無を確認するための評価は、株式会社島津製作所製のGC/MS分析装置(SHIMADZU-QP5000)を用いて行った。サンプル5を評価した結果、図14(14A)および(14B)に示すように、溶媒(イソプロピルアルコール)のピークとDDTのピークが現れた。DDTの同定は、実施例1と同様、コンピュータ・シミラリティにより行った(図15参照)。次に、サンプル6を評価した結果、図16(16A)および(16B)に示すように、DDTと関連のあるシグナルは検出されなかった。10分後のノイズレベルのシグナルに対して質量を調べたが、図17に示すように、DDTと関連のあるシグナルは検出されなかった。このことから、超臨界水酸化処理によりDDTは完全に分解されたと考えられる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、本発明は、かかる実施の形態あるいは実施例に限定されることなく、種々の変形を施して実施することができる。
【0080】
採取工程では、上相と中相、あるいは最上相のみを吸い出す方法が採られたが、上から抜くのではなく、容器1の底にドレインバルブ等を設けて、下から抜く方法を採用しても良い。さらには、容器1の横にドレインバルブを設けて側方から抜く方法を採用することもできる。また、採取工程は、上記の実施の形態のように複数の相の一部を別容器に分ける方法のみならず、複数の相を全て別容器に分け、最初の容器1を空にするように行っても良い。
【0081】
また、本実施の形態および実施例では、容器1内の内容物は3つの相に分離した例であるが、4つ以上の相に分離しても良い。4つ以上の相に分離した場合には、図2のフローチャートにおいて示される上相と中相は、上から3つ目までの相であっても、上から2つ目までの相であっても良い。さらに、図5のフローチャートにおいて示される中相は、上から2つ目のみの相、あるいは当該2つ目と3つ目の両相であっても良い。
【0082】
また、混合工程において使用する固形物は、鉄製、セラミックス製(天然の石も含む広義の概念)、プラスチック製、木製等のどのような材質でも良い。また、大きさも限定されない。
【0083】
また、POPs汚染土壌、硝酸塩水溶液、界面活性剤の他に、n−ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム等の溶媒を加えても良い。当該溶媒は、硝酸塩水溶液と界面活性剤の総量に対して2〜8重量%、さらに好ましくは4〜6重量%の範囲で添加すると良い。かかる溶媒を加えることにより、さらに、残留性有機汚染物質を抽出しやすくなる。なお、n−ヘキサンおよびシクロヘキサンは可燃性物質であり、かつ比重が小さいために揮発しやすい。このため、爆発の危険性も考えられる。しかし、本処理における上相の泡が、n−ヘキサンおよびシクロヘキサンの揮発を抑えるため、上述の危険性はほとんどない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、POPs溶液の無害化処理を行う産業において実施可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】PCBを超臨界水若しくは亜臨界水を用いて分解する際の反応を示す図である。
【図2】POPsの素性が特定できない場合に、POPsと混合している鉱物微粉末と残留性有機汚染物質であるPOPsとを分離して、鉱物微粉末の分析と超臨界水酸化処理後の分析を行う一連の工程を示すフローチャートである。
【図3】図2に示す工程の中の一部を図示したものである。
【図4】図3に続き、図2に示す工程の中の一部を図示したものである。
【図5】POPsがDDTのみであることが明らかな場合に、DDTと混合している鉱物微粉末と残留性有機汚染物質であるDDTとを分離して、鉱物微粉末の分析と超臨界水酸化処理後の分析を行う一連の工程を示すフローチャートである。
【図6】図5に示す工程の中の一部を図示したものである。
【図7】本発明の実施の形態に係るPCB/POPs処理装置の模式図である。
【図8】サンプル1のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(8B)は(8A)を拡大したものである。
【図9】サンプル1のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【図10】サンプル2のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(10B)は(10A)を拡大したものである。
【図11】サンプル2のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【図12】サンプル3のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(12B)は(12A)を拡大したものである。
【図13】サンプル3のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【図14】サンプル4のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(14B)は(14A)を拡大したものである。
【図15】サンプル4のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【図16】サンプル5のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(16B)は(16A)を拡大したものである。
【図17】サンプル5のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated Biphenyl: PCB)、DDT、ダイオキシン等に代表される残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants: POPs)の1種若しくは複数種と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から残留性有機汚染物質を分離する、残留性有機汚染物質の分離処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
POPsの一種であるPCBは、科学的に安定で、電気絶縁性に優れ、しかも燃焼しにくいことから、過去、火災事故の少ない優良な電気絶縁油として、高圧トランス(変圧器)やコンデンサー(蓄電器)、感圧複写(ノーカーボン)紙などに幅広く使われていた。しかし、PCBには下記するような毒性があり、日本では1972年に生産が中止され、1974年には「化学物質審査規制法」により製造・輸入が禁止された。現在、日本国内ではPCBは使用されていない材料である。
【0003】
PCB類の化学構造は、ビフェニルの水素を塩素で置き換えたもので、1個以上の塩素原子が結合した化合物である。このPCBは、環境中で分解しにくい性質に加えて、生物の脂肪組織に蓄積しやすい性質を保有しており、慢性毒性があると言われている。特に、PCB類には、ダイオキシンの仲間とされている毒性の強いコプラナーPCB(PCBのうち平面構造を有するCoplaner PCBs)が含まれている。このコプラナーPCBは、魚介類に蓄積され、日本人が食物から摂取するダイオキシン摂取量の60%を占めているとされている。
【0004】
日本国内の未使用のPCBやPCB含有機器(密封して使用されているトランス機器は除く)は、適切な処理方法が確立されるまで、日本国内法の「廃棄物処理法」によって事業所に厳重な保管と報告が義務づけられてきた。このため、多くのPCB含有機器等が現在もまだ処理されずに残っている。
【0005】
製造開始の1954年から製造中止の1972年までの19年間に、多量のPCBが製造されてきた。その主な使用用途は高圧のトランス・コンデンサーで、次に多かったのがカネミ油症事件に結びついた熱媒体であった。PCB含有機器等は上述のように適切な処理方法が確立されるまで保管を義務付けられたため、その大部分が何らかの形で今もなお保管されている。
【0006】
PCBは、1974年の上述した「化学物質審査規制法」によって製造、輸入、新規使用の禁止がなされた。また、廃棄物処理法によって1992年からはPCBは特別管理産業廃棄物に指定され、上述したように、事業所に厳重な保管と報告が義務づけられた。廃棄物処理法の数次に渡る改正で、高温焼却処理(1,100℃以上)、アルカリ触媒分解法等の化学分解法、超臨界水酸化分解法、水熱酸化分解法、還元熱化学分解法、紫外線を利用する光分解法の各処理方法がPCBの処理方法として認められるに至った。また、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(通称POPs条約)の採択により(2001年5月採択)、製造・使用が禁止された全ての残留性有機汚染物質(POPs)についても、PCBと同様、地中の保管に替え、適切な処理を行うことが求められている。上記PCBの処理方法は、それ以外のPOPsの処理にも適用できる。
【0007】
このような状況下、2001年6月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(いわゆるPCB処理法)が成立し、2001年7月15日に施行された。このPCB処理法では、PCBの保管業者は、毎年度、都道府県に保管状況を届けると共に15年以内にPCB廃棄物を処分しなければならない旨を規定している。このように、日本では、PCBおよびこれ以外のPOPsの処理は緊急の課題となり、急を要する事項となっている。また、日本以外の国にもPCB含有機器等が多数存在し、PCBを含むPOPsの無害化処理は緊急課題となっている。
【0008】
上述した従来の無害化処理方法には、それぞれ一長一短があるものの超臨界水を利用した分解法は、高温焼却のような高い反応温度を必要としないこと、ダイオキシンが一時的に副生しても直ちに分解されてしまうこと、PCBを含むPOPsの再合成の恐れがないこと、長い反応時間を必要としないこと、等多くの利点がある(特許文献1参照)。ここで超臨界水とは、超臨界状態にある水、すなわち水の臨界点を越えた状態にある水をいう。具体的には水の臨界温度である374.1℃以上の高温で、水の臨界圧力である22.04MPa以上の圧力にある状態の水をいう。
【0009】
この超臨界水を利用した従来の処理装置は、大型で特定の場所に固定的に備え付けられている(特許文献2、3参照)。また、この超臨界水を利用した従来の処理装置に用いられる反応容器(圧力容器)は、縦型に配置されその位置が動かないように固定されている(特許文献3参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平10−225632号公報
【特許文献2】特開2002−177758号公報
【特許文献3】特開2001−232381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
超臨界水を利用したPOPs(PCBも含む)処理装置は、上述のように数々の利点があり好ましいものと言える。
【0012】
しかしながら、上記のPCBを含むPOPsは、単独で存在しているわけではなく、土砂に混じって存在している。土砂に含まれる鉱物微粉末は、超臨界水酸化処理に投じても、それ自身を分解することはできない。したがって、土砂中のPOPsを超臨界水酸化処理するためには、それ自体が汚染物質ではない土砂だけを除くことが望まれる。
【0013】
本発明は、かかる必要性に鑑みてなされたものであり、鉱物微粉末とPOPsとが混ざっている廃棄物から、鉱物微粉末を除去し、超臨界水酸化処理に供すべきPOPsを取り出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、1つまたは複数の残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程と、混合工程後に静置する静置工程と、静置工程によって分離した複数の相から、鉱物微粉末を含む相と残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程とを有し、鉱物微粉末を含む相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、鉱物微粉末を取り除き、残留性有機汚染物質だけを超臨界水酸化処理あるいは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0015】
また、別の本発明は、先の発明において、残留性有機汚染物質がDDTのみからなる場合であって、採取工程は、残留性有機汚染物質を含む最上相と、それ以外の下位の相とを分けて採取する工程とし、下位の相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっているDDTを除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。DDTは非水溶性であるため、混合後の内容物の最上相に多く集まる。このため、最上相を分離した後の下位の相に対してさらに、混合および静置工程を繰り返すことによって、下位の相に残存しているDDTを除外することができる。
【0016】
また、別の本発明は、上記発明の下位の相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行った後、鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっているDDTを除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、DDTの分離効率をさらに高めることができる。
【0017】
また、別の本発明は、先の発明の下位の相に対して、残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合であって、採取工程は、鉱物微粉末を含む最下相と、それ以外の上位の相とを分けて採取する工程とし、最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合には、最上相のみならず、その直下の相にも残留性有機汚染物質が存在する。このため、鉱物微粉末を多く含む最下相のみを残して、最下相に対して混合および静置工程を繰り返すことによって、廃棄物から鉱物微粉末を分離して、残留性有機汚染物質だけを超臨界水酸化処理あるいは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0018】
また、別の本発明は、上記発明の最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行った後、鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去する残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、残留性有機汚染物質の分離効率をさらに高めることができる。
【0019】
また、別の本発明は、1つまたは複数の残留性有機汚染物質と硝酸塩に由来する物質を含む硝酸塩水溶液とを、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させて残留性有機汚染物質を無害化する前に、残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から、残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程と、混合工程後に静置する静置工程と、静置工程によって分離した複数の相から、鉱物微粉末を含む相と残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程とを有し、鉱物微粉末を含む相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去し、残留性有機汚染物質を含む相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、鉱物微粉末を取り除き、残留性有機汚染物質だけを超臨界水酸化処理あるいは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0020】
また、別の本発明は、残留性有機汚染物質がDDTのみからなる場合であって、採取工程は、残留性有機汚染物質を含む最上相と、それ以外の下位の相とを分けて採取する工程とし、下位の相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっているDDTを除去し、最上相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。DDTは非水溶性であるため、混合後の内容物の最上相に多く集まる。このため、最上相を分離した後の下位の相に対してさらに、混合および静置工程を繰り返すことによって、下位の相に残存しているDDTを除外することができる。これによって、DDTだけを超臨界水酸化処理若しくは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0021】
また、別の本発明は、下位の相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行った後、鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっているDDTを除去し、得られた最上相に対して硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、DDTの分離効率をさらに高めることができ、超臨界水酸化処理若しくは亜臨界水酸化処理を効率よく行うことができる。
【0022】
また、別の本発明は、残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合であって、採取工程は、鉱物微粉末を含む最下相と、それ以外の上位の相とを分けて採取する工程とし、最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去し、上位の相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、鉱物微粉末を多く含む最下相のみを残して、最下相に対して混合および静置工程を繰り返すことによって、廃棄物から鉱物微粉末を分離して、残留性有機汚染物質だけを超臨界水酸化処理あるいは亜臨界水酸化処理に供することができる。
【0023】
また、別の本発明は、最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行った後、鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに混合工程と、静置工程と、採取工程とを行い、鉱物微粉末に混ざっている残留性有機汚染物質を除去し、その最下相以外の上位の相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させる残留性有機汚染物質の分離処理方法としている。このため、残留性有機汚染物質の分離効率をさらに高めることができ、超臨界水酸化処理若しくは亜臨界水酸化処理を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、鉱物微粉末と残留性有機汚染物質とが混ざっている廃棄物から、鉱物微粉末を除去し、超臨界水酸化処理に供すべき残留性有機汚染物質を取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明に係る残留性有機汚染物質(POPs)の分離処理方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
まず、はじめに、POPsの一例であるPCBの特性と、PCBの超臨界水酸化処理について簡単に説明する。
【0027】
ポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated Biphenyl: PCB)(以後、単に「PCB」と称する。)は、ビフェニル(Biphenyl)C12H10の塩素置換体であり、塩素数および水素との置換位置によって、理論的に209種類の異性体を有する。また、硝酸塩に由来する物質とは、硝酸塩を含有する水が超臨界状態若しくは亜臨界状態にある場合において、硝酸塩から生じる物質を意味する。本発明では、硝酸塩から生じる物質は、PCBを酸化する酸化剤としての機能を有する物質であり、硝酸イオン、亜硝酸イオン、これらが分解して生成される酸素、酸素イオンを含む。この実施の形態において用いられる硝酸塩水溶液は、硝酸ナトリウム水溶液であるが、これに限定されず、例えば、硝酸カリウム水溶液、硝酸カルシウム水溶液を用いても良い。
【0028】
超臨界とは、臨界点を超えた状態を意味する。水の場合、臨界温度374.1℃、臨界圧力22.04MPaを超えた状態の水を、超臨界水と称する。また、亜臨界とは、臨界温度よりも若干、低温の状態を意味し、相図上、液体の状態である。水が超臨界状態下若しくは亜臨界状態下におかれていれば、その中に他の物質を含んでいても、それぞれ超臨界水若しくは亜臨界水と称するものとする。
【0029】
図1は、PCBを超臨界水溶液若しくは亜臨界水溶液を用いて分解する際の反応を示す図である。
【0030】
PCBと超臨界水溶液若しくは亜臨界水溶液とを反応させると、PCBは、図1に示すように、二酸化炭素、水および無機塩(例えば、NaCl)に分解される。超臨界状態若しくは亜臨界状態におかれる硝酸塩由来の物質の酸化力は、極めて大きいためである。この実施の形態で用いられる硝酸ナトリウムは、超臨界水若しくは亜臨界水中において、次の反応式(1)に示すように、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)と酸素に分解される。当該分解反応によって生成される酸素は、図1に示すPCBの酸化分解反応に寄与する。
2NaNO3 → 2NaNO2 + O2 (1)
【0031】
PCB中の塩素は、上記反応式(1)により生成された亜硝酸ナトリウム中のナトリウムと反応して塩(NaCl)を形成する。また、PCB中の炭素は、酸化されて二酸化炭素となる。なお、硝酸カリウム水溶液若しくは硝酸カルシウム水溶液を用いると、NaCl以外の無機塩が生成する。
【0032】
次に、上記の超臨界水酸化処理に先立ち、PCBに代表されるPOPsと鉱物微粉末との混合体(ここでは、廃棄物と称している。)においてPOPsと鉱物微粉末とを分離する方法について説明する。
【0033】
図2は、POPsの素性が特定できない場合に、廃棄物からPOPsを分離して、鉱物微粉末の分析と、POPsを超臨界水酸化処理した後の分析を行う一連の工程を示すフローチャートである。また、図3および図4は、図2に示す工程の中の一部を図示したものである。
【0034】
まず、図2および図3(3A)に示すように、超臨界水酸化処理に先立ち、廃棄物と、硝酸塩水溶液と、界面活性剤とを1つの容器1に投入する(ステップS101)。硝酸塩水溶液としては、硝酸ナトリウム水溶液が好適であるが、硝酸ナトリウム水溶液に限定されず、他の硝酸塩水溶液として、例えば硝酸塩カリウム水溶液あるいは硝酸塩カルシウム水溶液を採用しても良い。各投入量は、廃棄物1000g(1kg)に対して、硝酸塩水溶液5000cc、界面活性剤25ccの割合が好ましい。ただし、廃棄物中に含まれるPOPsの量に応じて、他の投入物の量を適宜変更可能である。硝酸塩水溶液は、硝酸塩と水との重量比が硝酸塩1に対して水3となるように調整したものである。ただし、かかる比率に限定されない。
【0035】
ステップS101に続いて、容器1中にて、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤との混合物3を攪拌する(ステップS102:混合工程)。図3(3A)に示すように、攪拌は、マグネチックスターラ装置2(回転子2aを含む)を用いて行う。ただし、先端に羽根を付けた攪拌羽根を備えた攪拌機を用いて攪拌しても良い。また、粒体を容器1に入れて、攪拌羽根で攪拌すると、なお良い。粒体の大きさは、容器1の大きさによって適宜変更することができる。攪拌時間は、廃棄物の種類と量などの投入条件によって変わるが、概ね100分程度が望ましい。所定時間の攪拌を終えると、容器1をしばらく静置する(ステップS103:静置工程)。静置時間は、特に限定されないが、概ね20分程度である。
【0036】
図3(3C)に示すように、静置した容器1では、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤の混合物3は、三相に分離する。通常、廃棄物中に含まれるPOPsの比重は、0.9〜1.0g/ccの範囲にある。一方、鉱物微粉末の比重は、2.0g/cc以上である。また、硝酸塩水溶液の比重は、約1.2g/ccである。したがって、上相はPOPsに、中相は硝酸塩水溶液に、下相は鉱物微粉末になる。次に、図4(4A)に示すように、分離した三相の内、上相と中相を採取する(ステップS104:採取工程)。採取方法は、特に限定されるものではないが、送液ポンプ4を用いて容器1から上相および中相を吸い出す方法を採用するのが好ましい。吸い出した上相と中相は、超臨界水酸化処理に供すべく、別の容器に入れられる。
【0037】
容器1に残された下相には未だPOPsが残っている可能性が高い。このため、図4(4B)に示すように、下相のみを残した容器1に、硝酸塩水溶液と界面活性剤とを加えて(ステップS105)、攪拌する(ステップS106:混合工程)。加えた硝酸塩水溶液は3000cc、界面活性剤は15ccが好適である。攪拌条件としては、ステップS102と同じ条件が望ましいが、別の条件を採用しても良い。所定時間の攪拌を終えると、容器1をしばらく静置する(ステップS107:静置工程)。このステップでも、静置時間は、概ね20分程度である。
【0038】
静置した容器1では、前述と同様(図3(3C)を参照。)に三相に分離する。分離した三相の内、また、図4(4A)に示すように、上相と中相を採取する(ステップS108:採取工程)。送液ポンプ4を用いて吸い出した上相と中相は、超臨界水酸化処理に供すべく、先に上相と中相の内容物を入れた別の容器に追加される。ただし、ステップS108において採取した内容物を、ステップS104において採取した内容物と別の容器に入れても良い。
【0039】
次に、容器1に残った下相の分析を行う(ステップS109)。分析は、POPsの定量が可能な分析手法であれば特に限定されないが、後述するGC/MS分析装置が好適である。かかる分析により、POPsの量が規定レベル以下か否かが判定される(ステップS110)。当該規定レベルは、国、地方自治体の定める許容レベルをいうが、かかる許容レベルよりも厳しいレベルに設定することもできる。この実施の形態では、規定レベルを0.1ppmとしている。
【0040】
ステップS110の判定の結果、POPsが規定レベル以下となっていない場合には、ステップS105に戻り、再度、硝酸塩水溶液と界面活性剤とを投入する工程を行い、ステップS106〜ステップS110を繰り返す。POPsが規定レベル以下となるまで、ステップS105〜ステップS110は繰り返される。
【0041】
一方、ステップS104およびステップS108において吸い出した上相および中相の内容物は、超臨界水酸化処理(後述する)に供される(ステップS111)。次に、処理後の内容物の分析を行う(ステップS112)。この分析も、POPsの定量が可能な分析手法であれば特に限定されないが、GC/MS分析装置が好適である。かかる分析により、POPsの量が規定レベル以下か否かが判定される(ステップS113)。ステップS113の判定の結果、POPsが規定レベル以下となっていない場合には、ステップS111に戻り、内容物は、再度、超臨界水酸化処理に供される。POPsが規定レベル以下となるまで、ステップS111〜ステップS113は繰り返される。
【0042】
こうして、ステップS110およびステップS113における両判定の結果、全ての内容物の量が規定レベルとなった場合、本工程は終了する。
【0043】
図5は、POPsがDDTのみであることが明らかな場合に、DDTと混合している鉱物微粉末と残留性有機汚染物質であるDDTとを分離して、鉱物微粉末の分析と、DDTを超臨界水酸化処理した後の分析を行う一連の工程を示すフローチャートである。また、図6は、図5に示す工程の中の一部を図示したものである。
【0044】
まず、超臨界水酸化処理に先立ち、廃棄物と、硝酸塩水溶液と、界面活性剤とを1つの容器1に投入する(ステップS201)。硝酸塩水溶液としては、硝酸ナトリウム水溶液が好適であるが、硝酸カリウム水溶液あるいは硝酸カルシウム水溶液等の他の硝酸塩水溶液でも良い。各投入量は、廃棄物1000g(1kg)に対して、硝酸塩水溶液5000cc、界面活性剤25ccの割合が好ましい。ただし、廃棄物中に含まれるDDTの量に応じて、他の投入物の量を適宜変更可能である。硝酸塩水溶液は、硝酸塩と水との重量比が硝酸塩1に対して水3となるように調整したものである。ただし、かかる重量比に限定されない。
【0045】
ステップS201に続いて、容器1中にて、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤との混合物を攪拌する(ステップS202:混合工程)。攪拌は、マグネチックスターラ装置(回転子を含む)を用いて行う他、攪拌機を用いて行っても良い。攪拌時間は、廃棄物の種類と量などの投入条件によって変わるが、概ね100分程度が望ましい。所定時間の攪拌を終えると、容器1をしばらく静置する(ステップS203:静置工程)。静置時間は、特に限定されないが、概ね20分程度である。
【0046】
すると、図6(6A)に示すように、静置した容器1では、廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤の混合物は、三相に分離する。通常、廃棄物中に含まれるDDTは、水に不溶性で低比重の物質である。一方、鉱物微粉末の比重は、2.0g/cc以上である。また、硝酸塩水溶液の比重は、約1.2g/ccである。したがって、上相はDDTに、中相は硝酸塩水溶液に、下相は鉱物微粉末になる。しかも、DDTは、中相にはほとんど存在しない。このため、図6(6B)に示すように、分離した三相の内、上相のみを採取する(ステップS204:採取工程)。採取方法は、特に限定されるものではないが、送液ポンプ4を用いて容器1から上相を吸い出す方法を採用するのが好ましい。吸い出した上相は、超臨界水酸化処理に供すべく、別の容器に入れられる。
【0047】
容器1に残された中相および下相には未だわずかでもDDTが残っている可能性がある。このため、図6(6C)に示すように、中相と下相の各内容物を入れた容器1に、硝酸塩水溶液と界面活性剤とを加えて(ステップS205)、攪拌する(ステップS206:混合工程)。加えた硝酸塩水溶液は3000cc、界面活性剤は15ccが好適である。攪拌条件としては、ステップS202と同じ条件が望ましいが、別の条件を採用しても良い。所定時間の攪拌を終えると、容器1をしばらく静置する(ステップS207:静置工程)。
【0048】
静置した容器1では、前述と同様に三相に分離する(図6(6A)を参照。)。分離した三相の内、また、上相のみを採取する(ステップS208:採取工程)。送液ポンプ4を用いて吸い出した上相は、超臨界水酸化処理に供すべく、先に上相の内容物を入れた別の容器に追加される。ただし、ステップS208において採取した内容物を、ステップS204において採取した内容物と別の容器に入れても良い。
【0049】
次に、容器1に残った中相および下相の各内容物の分析を行う(ステップS209)。分析は、DDTの定量が可能な分析手法であれば特に限定されないが、後述するGC/MS分析装置が好適である。かかる分析により、中相および下相の内容物に含まれるDDTの量が規定レベル以下か否かが判定される(ステップS210、ステップS211)。当該規定レベルは、国、地方自治体の定める許容レベルをいうが、かかる許容レベルよりも厳しいレベルに設定することもできる。この実施の形態では、規定レベルを0.1ppmとしている。
【0050】
ステップS210の判定の結果、下相のDDTが規定レベル以下となっていない場合には、ステップS205に戻り、再度、硝酸塩水溶液と界面活性剤とを投入する工程を行い、ステップS206〜ステップS210を繰り返す。DDTが規定レベル以下となるまで、ステップS205〜ステップS210は繰り返される。また、ステップS211の判定の結果、中相のDDTが規定レベル以下となっていない場合には、中相の内容物は、超臨界水酸化処理に供すべく、先に上相の内容物を入れた別の容器に追加される。
【0051】
一方、ステップS204およびステップS208、場合によってはステップS211において吸い出した内容物は、超臨界水酸化処理(後述する)に供される(ステップS212)。次に、処理後の内容物の分析を行う(ステップS213)。この分析も、DDTの定量が可能な分析手法であれば特に限定されないが、GC/MS分析装置が好適である。かかる分析により、DDTの量が規定レベル以下か否かが判定される(ステップS214)。ステップS214の判定の結果、DDTが規定レベル以下となっていない場合には、ステップS212に戻り、内容物は、再度、超臨界水酸化処理に供される。DDTが規定レベル以下となるまで、ステップS212〜ステップS214は繰り返される。
【0052】
こうして、ステップS210、ステップS211およびステップS214における判定の結果、全ての内容物の量が規定レベルとなった場合、本工程は終了する。
【0053】
図7は、超臨界水酸化処理を行うPOPs処理装置10の模式図である。
【0054】
このPOPs処理装置10は、POPsと硝酸塩水溶液との混合液を入れるタンク11と、POPsと硝酸塩水溶液とを反応させる反応部12と、反応部12から排出される反応後の処理水(生成物)を冷却する冷却部13と、冷却後の処理水を貯める処理水用タンク14と、圧力等の異常時に配管内の溶液を回避させる異常時回避用タンク15と、反応部12の圧力を調整するレギュレータ16と、圧力の異常を検知する圧力センサ17と、圧力等の異常時にのみ異常時回避用タンク15に溶液を流すために開く安全弁18とを備えている。
【0055】
タンク11の直後(溶液を流す下流側)には、それぞれ、混合液を送るための送液ポンプ19が接続されている。送液ポンプ19とタンク11とは配管20で接続されている。また、配管20には、負圧センサ(図示省略)が接続されている。このため、送液ポンプ19が確実に運転されていることを認知できる。
【0056】
送液ポンプ19の下流側には配管21が接続されている。配管21は、配管22を経由して、反応部12の主要構成部である配管23と接続されている。配管22は、後述するように、混合液を予熱するために設けられる予熱用配管である。
【0057】
配管23には、その内部を流れる混合液を超臨界状態若しくは亜臨界状態とするに必要な熱を供給するための6本のヒータ24,25,26,27,28,29が巻かれている。各ヒータ24,25,26,27,28,29は、温度調節器30に接続されている。温度調節器30は、さらに、ヒータ電源31に接続されている。ヒータ電源31は、三相200Vに接続されている。ヒータ電力は、約6000Wである。各ヒータ24,25,26,27,28,29は、熱電対32により測定された温度に基づいて温度制御されている。なお、熱電対32は、各ヒータ24,25,26,27,28,29毎に用意されているが、図面の簡略化のため、図7では、1本しか図示されていない。ただし、ヒータ24,25,26,27,28,29を1本のヒータに替えて、当該ヒータを、1本の熱電対32により測定された温度に基づいて温度制御するようにしても良い。
【0058】
反応部12では、配管23を流れる混合液を約480℃にするように、ヒータ加熱が行われる。混合液を約480℃に加熱するのは、次の理由からである。
【0059】
POPsに含まれる炭素を酸化させ、二酸化炭素とするためには、混合液を450〜650℃の高温状態とする必要がある。450℃より低い温度では、炭素は二酸化炭素にならず、固体炭素となりやすくなり、連続フロー式のPOPs処理を実現することが難しくなる。一方、POPsに含まれる塩素と、硝酸塩水溶液中の塩との反応によって生成される生成物は、500〜650℃という高温下では、結晶化してしまう。このため、連続フロー式のPOPs処理を実現することが難しくなる。したがって、固体炭素の生成と生成物の結晶化の両方を軽減し、連続フロー式のPOPs処理を実現するためには、混合液の温度を450〜500℃の温度範囲にする必要がある。かかる理由から、この実施の形態では、反応部12における混合液の温度を、約480℃としている。
【0060】
SUS316製の配管23は、480℃まで加熱すると、室温時の長さよりも約17ミリ長くなる。また、配管23内の溶液の量によって、その長さも変化する。このような配管23の伸びにより、水平部分と直角部分を繋ぐジョイントから溶液が漏れる危険性も考えられる。このような危険性を考慮し、より安全な運転を行うべく、温度調節器30とは別に、パーソナルコンピュータにより、ヒータ24,25,26,27,28,29のオンオフ制御も行っている。具体的には、ヒータ24,25,26,27,28,29への通電を2分間行ったら通電をオフにし、当該オフの状態を3分間継続してから再度2分間通電するというようにプログラム制御している。このようなオンオフを20回以上繰り返して480℃まで昇温すると、約2時間30分の時間を要する。一方、運転を終了して、480℃の状態から室温まで下げるのにも約2時間30分の時間を要する。このような昇温条件を採用すると、後述するように、配管23と、ヒータ24,25,26,27,28,29と、その上を覆う金属製のセメントとの伸びの差異から生じる接触状態の不具合を、ほぼ解消することもできる。さらに、配管23をより均一に加熱することもできる。
【0061】
反応部12では、POPsの分解をより促進させるため、触媒を使用することができる。触媒としては、二酸化ルテニウム(RuO2)が好ましいが、白金、ロジウム、あるいはロジウム酸化物等の触媒を採用することもできる。反応部12を構成する配管23は、反応部12の出口側で配管33に接続されている。配管33は、先に述べた配管22と共に、反応部12と下流側に配置される冷却部13との間に設けられた熱交換部34を構成している。図7に示すように、配管33は配管22に巻回されており、配管22の内部を流れる混合液は、反応部12に導入される前に、配管33を流れる処理水から熱をもらって予熱される。一方、配管33を流れる処理水は、冷却部13への導入に先立ち、配管22を流れる混合液に熱を与えることによって予冷される。
【0062】
冷却部13は、処理水を60℃以下の温度まで冷却する処理を行う部分である。しかし、処理水の量、流速等により、処理水を60℃以下の温度まで冷却するには、冷却部13に高性能な冷却装置を備えたり、冷却部13で冷却している距離を長くする等の対応が必要となる。かかる対応を行うと、POPs処理の費用が高くなったり、あるいは装置が大型化するという問題が生じる。かかる問題を回避するため、この実施の形態では、反応部12と冷却部13との間に、熱交換部34を設けている。
【0063】
熱交換部34において、配管22内部の混合液が予熱されるため、反応部12における分解反応の反応効率が高くなる。また、熱交換部34において、配管33内部の処理水が予冷されるため、冷却部13を通過した後の処理水の温度を効率良く下げることができる。具体例を述べると、タンク11からの供給当初の混合液は約15℃であるが、反応部12に入る直前の混合液の温度は、380℃まで上昇することがわかっている。また、配管33を流れる処理水も、380℃まで温度低下することがわかっている。
【0064】
冷却部13より下流側の配管35は、レギュレータ16に接続されている。このレギュレータ16は、反応部12の混合液の圧力を調整して、混合液を超臨界若しくは亜臨界の状態とするための加圧手段である。反応部12内の混合液を超臨界状態を保持するためには、臨界圧力である22.04MPaより高い圧力が必要である。この実施の形態では、超臨界若しくは亜臨界状態における処理を行う場合、混合液に加えられる圧力が25MPa以上となるようにレギュレータ16が設定されている。
【0065】
レギュレータ16より下流側には、処理水用タンク14が配置されている。レギュレータ16と処理水用タンク14とは、配管36で接続されている。冷却後の処理水は、処理水用タンク14に送られる。
【0066】
また、レギュレータ16の直前には、異常時回避用タンク15につながる配管37も設けられている。配管37は、図7の点Aで、処理水用タンク14に向かう経路から分岐されている。点Aから伸びる配管37には、安全弁18が設けられている。また、点Aには、圧力センサ17が取り付けられている。圧力センサ17は、レギュレータ16より上流側の圧力を検知している。安全弁18は、通常の運転時には閉じられているが、圧力異常となった場合には、圧力センサ17が働き、開くようになっている。安全弁18が開くと、処理水等は、異常時回避用タンク15に送られる。これによって、圧力異常の状態が解消される。
【0067】
次に、POPsが無害な物質に分解されたことを確認するための分析方法と分析結果の一例について説明する。
【0068】
POPsを処理した後の生成物は、主に、ガスクロマトグラフィ/質量分析(Gas Chromatography/Mass Spectrometry:GC/MS)装置と核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance: NMR)分光装置により分析することができる。
【0069】
GC/MS装置は、冷却部13より下流側の配管から採取した気体の成分を分析するために用いられる。多成分からなる揮発性の試料をキャリアガスと共にカラムに送り込むと、揮発性の試料がカラムを移動する間に、固定相の液相との親和性の違いにより、試料中の各成分の移動速度に差がでてくる。GC/MSは、この移動速度の差をカラム出口の検出器で検出してクロマトグラムとして出力することにより、試料中の成分を調べる方法である。検出器には、気体の熱伝導率の差を利用し、これをサーミスタの電気抵抗の差として検出するTCD(Thermal Conductivity Detector)と、高電圧電極間で水素を燃焼させ、ここにキャリアガスを流しておき、気体成分が水素炎中でイオン化し、電極間に流れた電流を検出するFID(Flame Ionization Detector)とを用いることができる。
【0070】
NMR分光装置は、処理水用タンク14内の液体(処理水)中に存在する分子を特定するために用いられる。物質を静磁場中に置くと、その物質を構成する原子核がその種類によってある特定の周波数の電磁波を吸収する。この現象を利用して物質を特定する分析法を、NMR分光という。NMR分光では、主に、物質中の水素核(1H)と炭素核(13C)の観測が行われる。
【実施例】
【0071】
次に、本発明に係る残留性有機汚染物質の分離処理方法の実施例について説明する。
【0072】
(実施例1)
a.実験方法
DDTを含む鉱物微粉末100g(内、90gは鉱物微粉末)と、硝酸ナトリウム水溶液500ml(H2O:NaNO3=3:1(重量比))と、界面活性剤100gとを容器に入れ、ミキサーを用いて10回ミキシングを行った。界面活性剤と硝酸ナトリウム水溶液は、3回のミキシング毎に追加した。ミキシングの後に静置した結果、容器内の内容物は3相に分離した。この操作を第1回目の処理とする。下相の残留物の一部(数g程度)はGC/MS測定用に取り出された。取り出された残留物の一部は、水洗後、n−ヘキサンで抽出し、これをGC/MS測定用のサンプルとした(サンプル1)。次に、第1回目の処理後の固体残留物について、硝酸ナトリウム水溶液と界面活性剤を加え、同様の処理を10回行った。下相の残留物の一部(数g程度)はGC/MS測定用に取り出された。取り出された残留物の一部は、水洗後、n−ヘキサンで抽出し、これをGC/MS測定用のサンプルとした(サンプル2)。
【0073】
また、サンプル1のヘキサン抽出液に対して超臨界水酸化処理を行った。この処理は、H2O3ml、NaNO3500mg、反応温度480℃、反応時間30分の条件で行った。超臨界水酸化処理の後、水溶液は、エバポレータにより常温蒸発乾固し、クロロホルムを3ml加えた後にGC/MS測定に供した(サンプル3)。
【0074】
b.評価結果および考察
DDTの有無を確認するための評価は、株式会社島津製作所製のGC/MS分析装置(SHIMADZU-QP5000)を用いて行った。サンプル1を評価した結果、図8(8A)および(8B)に示すように、最初の1分間で溶媒(n−ヘキサン)のピークが現れ、10分後に1本のピークが現れた。また、後者のピークの質量を調べたところ、図9に示すように、質量100以上の多くのシグナルが検出された。コンピュータ・シミラリティによりシグナルの同定を行った結果、これらのシグナルは、DDTのスペクトルと決定された。
【0075】
次に、サンプル2を評価した結果、図10(10A)および(10B)に示すように、サンプル1と異なり、10分後のピークは見られなかった。また、10分後のノイズレベルのシグナルに対して質量を調べたが、図11に示すように、DDTと関連のあるシグナルは検出されなかった。このことから、処理を11回繰り返すと、鉱物微粉末中のDDTは洗い出され、超臨界水酸化処理の対象としなくても良いと考えられる。
【0076】
一方、サンプル3を評価した結果、図12(12A)および(12B)に示すように、10分後のピークは見られなかった。また、10分後のノイズレベルのシグナルに対して質量を調べたが、図13に示すように、DDTと関連のあるシグナルは検出されなかった。このことから、超臨界水酸化処理によりDDTは完全に分解されたと考えられる。
【0077】
(実施例2)
a.実験方法
DDTを含む鉱物微粉末1000g(内、900gは鉱物微粉末)と、硝酸ナトリウム水溶液5000g(H2O:NaNO3=3:1(重量比))と、界面活性剤25ccとを容器に入れ、スターラーにて100分間攪拌した。攪拌後、20分間の静置の結果、容器内の内容物は3相に分離した。霧吹きを用いて硝酸ナトリウム水溶液を上相部の泡に散布して消泡を行った。その後、上相を抜き取り、その一部をGC/MS測定に供した(サンプル5)。また、抜き取った上相の一部に対して超臨界水酸化処理を施し、GC/MS測定に供した(サンプル6)。超臨界水酸化処理は、反応温度420〜480℃、圧力25MPa、吐出量12cc/minの条件で行った。
【0078】
b.評価結果および考察
DDTの有無を確認するための評価は、株式会社島津製作所製のGC/MS分析装置(SHIMADZU-QP5000)を用いて行った。サンプル5を評価した結果、図14(14A)および(14B)に示すように、溶媒(イソプロピルアルコール)のピークとDDTのピークが現れた。DDTの同定は、実施例1と同様、コンピュータ・シミラリティにより行った(図15参照)。次に、サンプル6を評価した結果、図16(16A)および(16B)に示すように、DDTと関連のあるシグナルは検出されなかった。10分後のノイズレベルのシグナルに対して質量を調べたが、図17に示すように、DDTと関連のあるシグナルは検出されなかった。このことから、超臨界水酸化処理によりDDTは完全に分解されたと考えられる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、本発明は、かかる実施の形態あるいは実施例に限定されることなく、種々の変形を施して実施することができる。
【0080】
採取工程では、上相と中相、あるいは最上相のみを吸い出す方法が採られたが、上から抜くのではなく、容器1の底にドレインバルブ等を設けて、下から抜く方法を採用しても良い。さらには、容器1の横にドレインバルブを設けて側方から抜く方法を採用することもできる。また、採取工程は、上記の実施の形態のように複数の相の一部を別容器に分ける方法のみならず、複数の相を全て別容器に分け、最初の容器1を空にするように行っても良い。
【0081】
また、本実施の形態および実施例では、容器1内の内容物は3つの相に分離した例であるが、4つ以上の相に分離しても良い。4つ以上の相に分離した場合には、図2のフローチャートにおいて示される上相と中相は、上から3つ目までの相であっても、上から2つ目までの相であっても良い。さらに、図5のフローチャートにおいて示される中相は、上から2つ目のみの相、あるいは当該2つ目と3つ目の両相であっても良い。
【0082】
また、混合工程において使用する固形物は、鉄製、セラミックス製(天然の石も含む広義の概念)、プラスチック製、木製等のどのような材質でも良い。また、大きさも限定されない。
【0083】
また、POPs汚染土壌、硝酸塩水溶液、界面活性剤の他に、n−ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム等の溶媒を加えても良い。当該溶媒は、硝酸塩水溶液と界面活性剤の総量に対して2〜8重量%、さらに好ましくは4〜6重量%の範囲で添加すると良い。かかる溶媒を加えることにより、さらに、残留性有機汚染物質を抽出しやすくなる。なお、n−ヘキサンおよびシクロヘキサンは可燃性物質であり、かつ比重が小さいために揮発しやすい。このため、爆発の危険性も考えられる。しかし、本処理における上相の泡が、n−ヘキサンおよびシクロヘキサンの揮発を抑えるため、上述の危険性はほとんどない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、POPs溶液の無害化処理を行う産業において実施可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】PCBを超臨界水若しくは亜臨界水を用いて分解する際の反応を示す図である。
【図2】POPsの素性が特定できない場合に、POPsと混合している鉱物微粉末と残留性有機汚染物質であるPOPsとを分離して、鉱物微粉末の分析と超臨界水酸化処理後の分析を行う一連の工程を示すフローチャートである。
【図3】図2に示す工程の中の一部を図示したものである。
【図4】図3に続き、図2に示す工程の中の一部を図示したものである。
【図5】POPsがDDTのみであることが明らかな場合に、DDTと混合している鉱物微粉末と残留性有機汚染物質であるDDTとを分離して、鉱物微粉末の分析と超臨界水酸化処理後の分析を行う一連の工程を示すフローチャートである。
【図6】図5に示す工程の中の一部を図示したものである。
【図7】本発明の実施の形態に係るPCB/POPs処理装置の模式図である。
【図8】サンプル1のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(8B)は(8A)を拡大したものである。
【図9】サンプル1のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【図10】サンプル2のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(10B)は(10A)を拡大したものである。
【図11】サンプル2のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【図12】サンプル3のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(12B)は(12A)を拡大したものである。
【図13】サンプル3のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【図14】サンプル4のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(14B)は(14A)を拡大したものである。
【図15】サンプル4のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【図16】サンプル5のGC/MS分析を行った結果であって、ガスクロマトグラムを示す図である。ここで、(16B)は(16A)を拡大したものである。
【図17】サンプル5のGC/MS分析を行った結果であって、マススペクトルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から、上記残留性有機残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、
上記廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程と、
上記混合工程後に静置する静置工程と、
上記静置工程によって分離した複数の相から、上記鉱物微粉末を含む相と上記残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程とを有し、
上記鉱物微粉末を含む相に対して、さらに上記混合工程と、上記静置工程と、上記採取工程とを行い、上記鉱物微粉末に混ざっている上記残留性有機汚染物質を除去することを特徴とする残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項2】
前記残留性有機汚染物質がDDTのみからなる場合であって、
前記採取工程は、前記残留性有機汚染物質を含む最上相と、それ以外の下位の相とを分けて採取する工程とし、
上記下位の相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている上記DDTを除去することを特徴とする請求項1記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項3】
前記下位の相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行った後、前記鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記攪拌工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている前記DDTを除去することを特徴とする請求項2記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項4】
前記残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合であって、
前記採取工程は、前記鉱物微粉末を含む最下相と、それ以外の上位の相とを分けて採取する工程とし、
上記最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている上記残留性有機汚染物質を除去することを特徴とする請求項1記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項5】
前記最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行った後、前記鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている前記残留性有機汚染物質を除去することを特徴とする請求項4記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項6】
1つまたは複数の残留性有機残留性有機汚染物質と硝酸塩に由来する物質を含む硝酸塩水溶液とを、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させて上記残留性有機汚染物質を無害化する前に、上記残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から、上記残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、
上記廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程と、
上記混合工程後に静置する静置工程と、
上記静置工程によって分離した複数の相から、上記鉱物微粉末を含む相と上記残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程とを有し、
上記鉱物微粉末を含む相に対して、さらに上記混合工程と、上記静置工程と、上記採取工程とを行い、上記鉱物微粉末に混ざっている上記残留性有機汚染物質を除去し、上記残留性有機汚染物質を含む相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることを特徴とする残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項7】
前記残留性有機汚染物質がDDTのみからなる場合であって、
前記採取工程は、前記残留性有機汚染物質を含む最上相と、それ以外の下位の相とを分けて採取する工程とし、
上記下位の相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている上記DDTを除去し、上記最上相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることすることを特徴とする請求項6記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項8】
前記下位の相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行った後、前記鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている前記DDTを除去し、得られた上記最上相に対して硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることすることを特徴とする請求項7記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項9】
前記残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合であって、
前記採取工程は、前記鉱物微粉末を含む最下相と、それ以外の上位の相とを分けて採取する工程とし、
上記最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている上記残留性有機汚染物質を除去し、上記上位の相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることを特徴とする請求項6記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項10】
前記最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行った後、前記鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている前記残留性有機汚染物質を除去し、その最下相以外の上位の相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることを特徴とする請求項9記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項1】
1つまたは複数の残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から、上記残留性有機残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、
上記廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程と、
上記混合工程後に静置する静置工程と、
上記静置工程によって分離した複数の相から、上記鉱物微粉末を含む相と上記残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程とを有し、
上記鉱物微粉末を含む相に対して、さらに上記混合工程と、上記静置工程と、上記採取工程とを行い、上記鉱物微粉末に混ざっている上記残留性有機汚染物質を除去することを特徴とする残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項2】
前記残留性有機汚染物質がDDTのみからなる場合であって、
前記採取工程は、前記残留性有機汚染物質を含む最上相と、それ以外の下位の相とを分けて採取する工程とし、
上記下位の相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている上記DDTを除去することを特徴とする請求項1記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項3】
前記下位の相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行った後、前記鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記攪拌工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている前記DDTを除去することを特徴とする請求項2記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項4】
前記残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合であって、
前記採取工程は、前記鉱物微粉末を含む最下相と、それ以外の上位の相とを分けて採取する工程とし、
上記最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている上記残留性有機汚染物質を除去することを特徴とする請求項1記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項5】
前記最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行った後、前記鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている前記残留性有機汚染物質を除去することを特徴とする請求項4記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項6】
1つまたは複数の残留性有機残留性有機汚染物質と硝酸塩に由来する物質を含む硝酸塩水溶液とを、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させて上記残留性有機汚染物質を無害化する前に、上記残留性有機汚染物質と非水溶性の鉱物微粉末とを含む廃棄物から、上記残留性有機汚染物質を分離する残留性有機汚染物質の分離処理方法であって、
上記廃棄物と硝酸塩水溶液と界面活性剤とを混合する混合工程と、
上記混合工程後に静置する静置工程と、
上記静置工程によって分離した複数の相から、上記鉱物微粉末を含む相と上記残留性有機汚染物質を含む相とを分けて採取する採取工程とを有し、
上記鉱物微粉末を含む相に対して、さらに上記混合工程と、上記静置工程と、上記採取工程とを行い、上記鉱物微粉末に混ざっている上記残留性有機汚染物質を除去し、上記残留性有機汚染物質を含む相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることを特徴とする残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項7】
前記残留性有機汚染物質がDDTのみからなる場合であって、
前記採取工程は、前記残留性有機汚染物質を含む最上相と、それ以外の下位の相とを分けて採取する工程とし、
上記下位の相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている上記DDTを除去し、上記最上相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることすることを特徴とする請求項6記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項8】
前記下位の相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行った後、前記鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている前記DDTを除去し、得られた上記最上相に対して硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることすることを特徴とする請求項7記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項9】
前記残留性有機汚染物質がDDTのみではない場合であって、
前記採取工程は、前記鉱物微粉末を含む最下相と、それ以外の上位の相とを分けて採取する工程とし、
上記最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている上記残留性有機汚染物質を除去し、上記上位の相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることを特徴とする請求項6記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【請求項10】
前記最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行った後、前記鉱物微粉末を含む最下相に対して、さらに前記混合工程と、前記静置工程と、前記採取工程とを行い、前記鉱物微粉末に混ざっている前記残留性有機汚染物質を除去し、その最下相以外の上位の相に硝酸塩水溶液を加えて、超臨界水若しくは亜臨界水の環境下において反応させることを特徴とする請求項9記載の残留性有機汚染物質の分離処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−757(P2007−757A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183009(P2005−183009)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(390033961)株式会社日本ティーエムアイ (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(390033961)株式会社日本ティーエムアイ (10)
【Fターム(参考)】
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