説明

残留輝度測定装置および残留輝度測定システム

【課題】操作者の負担の小さい残留輝度測定装置および残留輝度測定システムを提供する。
【解決手段】遮光された蓄光標識100の測定域の残留輝度を測定する残留輝度測定装置Sは、蓄光標識100の測定域からの放射光を受光するSPD21と、SPD21を制御し、測定開始から所定時間経過後までの測定域からの放射光をSPD21で測定するとともに、SPD21で測定された測定値を記憶する処理回路22と、SPD21と処理回路22とを納める測定ユニット20および遮光ユニット10を備えるハウジングとを備え、前記ハウジングは、SPD21が蓄光標識100の測定域に対向し、前記測定域が周囲光から遮光されるように、蓄光標識100に脱着可能に固定するための固定手段を装着する固定部としての領域1Aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留輝度を測定する残留輝度測定装置および残留輝度測定システムに関し、特に、緊急時、照明が失われた場合に、人々の避難を誘導する蓄光標識が、実際に照明が失われた後、所定時間、誘導に必要な輝度を維持することを確認するために好適な残留輝度測定装置および残留輝度測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
りん光(蓄光)材料を用いた蓄光標識は、緊急時に停電が生じた場合に、減衰しながらも一定時間りん光(発光)を維持し、避難を誘導することができるという特徴を持つ。このような特徴から、蓄光標識は、地下鉄など交通機関の駅構内、ビル、公共施設等の床あるいは壁等に多数(例えば、1施設あたり100個以上)設備されている。
【0003】
このような蓄光標識100は、例えば、図11に示すように、りん光材料を含む発光域101と、少なくとも所定のシンボルを示し、かつ、りん光材料を含まない非発光域102とを備える。蓄光標識100は、外光が遮断されると、りん光材料が蓄積していた蓄光によって発光域101が一定時間発光を維持する一方で、非発光域102が発光しないことにより、両者の対比でシンボルが明示されるものである。
【0004】
このような蓄光標識100の蓄光による発光は、実際に照明が失われた場合、時間の経過に伴って減衰し、やがて前記所定のシンボルが視認されなくなる。さらに、りん光材料の蓄光能力は、経年により低下する。そのため、緊急時の安全の確保のためには、実際に照明が失われたとき、蓄光標識100が所定時間(例えば20分間)経過した後、所定の発光輝度を維持していることを定期的に点検する必要がある。しかし、前記施設で実際に照明を消灯し、所定時間経過後のりん光の輝度を実測、確認することは現実的でない。そして、前記施設で照明を消灯する代わりに蓄光標識100を外光から遮光して輝度を測定することは、100個以上の蓄光標識100の各々に20分間を要するため実用的ではない。
【0005】
このような不都合を解決するための手段として、例えば、特許文献1および特許文献2には、遮光初期、例えば、3分間の輝度変化から、20分後の輝度を推定する方法が開示されている。図12は、代表的な蓄光材料の残光輝度の減衰特性を示すグラフである。図12の横軸は、時間(分;Min.)を、縦軸は、輝度(Cd/m)の変化を各々対数で示す。特許文献1および特許文献2に開示の方法は、図12に例示した輝度の減衰特性を関数近似し、3分間の輝度変化から、近似関数を用いて20分後の輝度を推定することで、測定時間を大幅に短縮するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−170944号公報
【特許文献2】特開2007−183233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に開示の方法によれば、推定された輝度の精度は、近似関数あるいは理論減衰特性の妥当性にかかる。しかし、図12に示すように、蓄光材料の輝度減衰は、直線からずれており、適切な近似関数が得にくい。さらに、そのずれ方も蓄光材料ごとに異なることから、今後加わる新規の蓄光材料を含めて汎用的な理論減衰特性を与えることは難しい。このため、遮光後20分後の輝度を実測する方法に比べて、特許文献1および特許文献2に記載の方法では、精度と信頼性が低下してしまう。
【0008】
さらに、特許文献1および特許文献2に記載の方法では、3分間の輝度推移による測定誤差は、遮光後20分後の推定誤差では大きく拡大されるため、3分間の輝度推移を高精度で測定することが必要である。このため、蓄光標識100を安定して遮光し、蓄光標識100と測定装置との位置関係を一定に保持する必要がある。しかし、たとえ3分間であっても、床や壁の高低さまざまな位置に取り付けられた蓄光標識100を安定して遮光し、測定装置を安定して保持することは難しく、特に、測定装置が輝度計として機能するための光学系を備え、相当の重さと大きさをもつ場合、測定装置の操作者に大きな負担を強いることになる。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、操作者の負担の小さい残留輝度測定装置および残留輝度測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる残留輝度測定装置は、遮光された蓄光標識における測定域の残留輝度を測定する残留輝度測定装置であって、前記蓄光標識における測定域からの放射光を受光する受光部と、前記受光部を制御し、測定開始から所定時間経過後までの前記測定域からの放射光を前記受光部で測定する制御部と、前記受光部で測定された測定値を記憶する記憶部と、前記受光部と前記制御部と前記記憶部とを納めるハウジングとを備え、前記ハウジングは、前記受光部が前記蓄光標識における測定域に対向し、前記測定域が周囲光から遮光されるように、前記蓄光標識に脱着可能に固定するための固定手段を装着する固定部を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、固定部を有するので、残留輝度測定装置を固定後は操作者の手を煩わせることなく、所定時間後の残留輝度を測定することができる。
【0012】
また、他の一態様では、上述の残留輝度測定装置において、前記制御部は、前記受光部で測定された測定値に基づいて、測定開始から所定時間後までの受光量変化率を測定し、前記受光量変化率と、予め測定された前記測定域の初期輝度とから、測定開始から所定時間後における前記測定域の残留輝度を求めることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、残留輝度測定装置には測定開始から所定時間までの受光量の相対測定の精度のみが要求される。このため、残留輝度測定装置には測定開始から所定時間までの輝度の測定に必要とされる構成が不要であるから、残留輝度測定装置を小型、軽量に構成することができるので、残留輝度測定装置を蓄光標識に容易に所定時間固定できる。さらに、この構成によれば、低コストで構成することができるので、効率的な測定のために多数個の残留輝度測定装置を使用しても大きな負担増とならない。
【0014】
また、他の一態様では、これら上述の残留輝度測定装置において、前記受光部は、シリコンフォトダイオード(SPD)を備え、前記シリコンフォトダイオードの受光側には、前記シリコンフォトダイオードの相対分光感度を修飾する光学要素を持たないことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、受光部は、直接的に受光し、相対分光感度を分光視感効率に近似させるためのフィルタを備える必要がなく、より低コストで構成可能であり、効率的な測定のために多数個の残留輝度測定装置を使用しても大きなコスト増とならない。また、この構成によれば、SPDが前記光学要素を備える必要がないので、光束の利用効率が高く、高感度、従って高精度とすることができる。
【0016】
また、他の一態様では、これら上述の残留輝度測定装置において、前記受光部は、シリコンフォトダイオード(SPD)を備え、前記記憶部は、前記測定域からの放射光に対する、分光視感効率と前記シリコンフォトダイオードの分光感度との関係を予め記憶し、前記制御部は、前記関係に基づいて、前記測定値を分光視感効率での値(輝度)に変換することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、受光部は、測定域からの放射光を分光視感効率に近似させるためのフィルタを備える必要がなく、より低コストで構成可能であり、効率的な測定のために多数個の残留輝度測定装置を使用しても大きなコスト増とならない。また、この構成によれば、フィルタを備える必要がないので、光束の利用効率が高く、高感度、従って高精度とすることができる。
【0018】
また、他の一態様では、これら上述の残留輝度測定装置において、前記受光部は、分光感度の波長依存性を軽減するフィルタをさらに備え、前記フィルタを介して前記蓄光標識における測定域からの放射光を受光することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、前記受光部が分光感度の波長依存性を軽減するフィルタを介して前記放射光を受光するので、蓄光標識における放射光の分光分布が減衰中に多少変化することがあっても、影響を受けにくく高精度である。
【0020】
また、他の一態様では、これら上述の残留輝度測定装置において、前記固定部は、前記固定手段としての粘着テーブを装着するための領域であることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、所定時間の固定が粘着テープによって行われるので、残留輝度測定装置の所定時間の固定と取り外しを低コストかつ効率的に行うことができる。
【0022】
また、他の一態様では、これら上述の残留輝度測定装置において、前記固定部は、前記固定手段としての吸盤を装着するための領域であり、前記固定部に装着された吸盤をさらに備えることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、吸盤を備えるので、脱着の操作性が向上し、操作者の負担がより軽減される。
【0024】
また、他の一態様では、これら上述の残留輝度測定装置において、前記ハウジングは、前記受光部と前記制御部と前記記憶部とを納める測定ユニットと、前記測定ユニットを取り付けるための取り付け部を持つ遮光ユニットとを備え、前記遮光ユニットは、前記測定ユニットが前記取り付け部に取り付けられていない状態では前記測定域が視認可能であり、前記測定ユニットが前記取り付け部に取り付けられた状態では前記受光部が前記測定域に対向することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、ハウジングは、測定部、制御部および記憶部を納める測定ユニットと、前記測定ユニットを取り付けるための取り付け部を持つ遮光ユニットとを備え、前記遮光ユニットは、前記測定ユニットが前記取り付け部に取り付けられていない状態では前記測定域が視認可能であり、前記測定ユニットが前記取り付け部に取り付けられると前記受光部が測定域に対向するので、操作者は、容易に、測定域を目視で確認しつつ前記受光部を測定域に対向させて残留輝度測定装置を所定時間固定することができる。
【0026】
そして、本発明の他の一態様にかかる残留輝度測定システムは、複数の蓄光標識における各残留輝度を測定する残留輝度測定システムであって、前記複数の蓄光標識に対し脱着可能に固定可能であって、所定時間後の輝度変化率を測定する複数の測定ユニットと、前記複数の測定ユニットでの測定開始前に、前記複数の蓄光標識における各初期輝度を測定する初期輝度測定ユニットと、前記複数の測定ユニットによってそれぞれ測定された各輝度変化率と、前記初期輝度測定ユニットによってそれぞれ測定された各初期輝度とに基づいて、前記複数の蓄光標識における所定時間後の各残留輝度を求める処理ユニットとを備え、前記複数の測定ユニットのそれぞれは、これら上述のいずれかの残留輝度測定装置であることを特徴とする。
【0027】
このような構成の残留輝度測定システムでは、複数の蓄光標識について、初期輝度測定ユニットで初期輝度を測定した後、各蓄光標識に測定ユニットを固定して、複数の蓄光標識における所定時間後の各残留輝度を並列的(同時並行的)に測定するため、蓄光標識1個当たりの実質的な測定時間が短く、複数の蓄光標識全体に対する効率が高い。また、測定ユニットには、測定開始から所定時間後までの受光量における相対測定の精度のみが要求されるので、測定ユニットを小型、軽量かつ低コストで構成可能である。このように小型で軽量であることから、様々な配置位置の蓄光標識に容易に効率よく固定することができ、また、低コストであって、比較的高コストな初期輝度測定ユニットが1台でよいことから、効率化のために、このような測定ユニットを多数用意して使用しても大きな負担増とならない。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる残留輝度測定装置は、操作者の負担の小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態にかかる残留輝度測定装置を説明するための概念図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる測定ユニットおよび遮光ユニットの外観を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる測定ユニットおよび遮光ユニットの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる測定ユニットの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】代表的な2種類の蓄光材料放射光の減衰時の相対分光分布を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態にかかるSPDの分光感度および補正用フィルタの分光透過率を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態にかかる基準測定ユニットの構成図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる処理ユニットの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】代表的な蓄光材料放射光の相対分光分布と相対分光視感効率とを示すグラフである。
【図10】本発明の他の実施の形態にかかる測定ユニットおよび遮光ユニットの断面図である。
【図11】蓄光標識の構成図である。
【図12】代表的な蓄光材料の残光輝度の減衰特性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態にかかる残留輝度測定装置を説明するための概念図である。本実施形態にかかる残留輝度測定装置Sは、遮光された蓄光標識100における測定域の残留輝度を測定する測定装置であり、例えば、図1に示すように、受光開口1kが蓄光標識100の測定域(発光域101)に対向するように粘着テープ30(固定手段の一例)で蓄光標識100に取り付けられる遮光ユニット1と、遮光ユニット1に取り付けられ、蓄光標識の輝度の測定初期からの変化率を測定する測定ユニット20と、測定ユニット20による測定値を読み出す1台の処理ユニット50と、処理ユニット50に接続され、蓄光標識100の初期輝度を測定する1台の基準測定ユニット40とを備えて構成される。処理ユニット50は、複数の測定ユニット20に対し共通に用いられる。
【0032】
本実施の形態にかかる残留輝度測定装置Sの主たる特徴は以下の3点である。
(1)遮光初期の減衰特性から所定時間後の残留輝度を予測する方式は信頼性に欠けるため、本実施の形態にかかる残留輝度測定装置Sでは測定開始から所定時間後の残留輝度を実測する方式をとる。ただし、複数の蓄光標識100について、遮光ユニット1と測定ユニット20との組を複数用いて、並列的に測定することで、蓄光標識100の1個あたりの測定時間を短縮することが可能である。例えば、100個の蓄光標識100―N(Nは100以下の整数)の20分後の残留輝度を10個ずつほぼ同時に並列的に測定する場合、蓄光標識100の1個あたりの実質的な測定時間は2分程度となる。
(2)本実施の形態にかかる残留輝度測定装置Sでは、残留輝度を遮光初期の輝度と遮光初期からの変化率とから求める。すなわち、蓄光標識100の初期輝度は、相対分光視感効率Vλに近似する分光感度をもつ、輝度計として校正された1台の基準測定ユニット40で順次測定される。そして所定時間を要する遮光初期からの変化率測定は、複数の測定ユニット20で測定域を遮光しつつ並行測定する。変化率を測定する複数の測定ユニット20の受光部は、蓄光標識100の測定域からの放射光の分光分布が減衰時、殆ど変化しないことから、相対分光視感効率Vλに近似する分光感度を持つ必要はなく、輝度計としての光学系も校正も必要としないため、軽量小型、かつ低コストで実現することができる。
(3)測定ユニット20が取り付けられた遮光ユニット1は、扁平、軽量、小型であるため、床や壁のさまざまな位置に設置された個々の蓄光標識100に粘着テープなどで容易に取り付けられ、除去できる。取り付け後は所定時間が経過するまで放置して、安定に遮光と測定ができるので、操作者の負担が少ない。
【0033】
以下、残留輝度測定装置Sの構成について、詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかる測定ユニットおよび遮光ユニットの外観を示す正面図である。図2(a)は、測定ユニットが待避位置にある場合を示し、図2(b)は、測定ユニットが測定位置にある場合を示す。図3は、本発明の実施の形態にかかる測定ユニットおよび遮光ユニットの断面図である。図3(a)は、図2(b)のI―I線断面図であり、図3(b)は、図2(b)のII―II線断面図である。図4は、本発明の実施の形態にかかる測定ユニットの電気的構成を示すブロック図である。図5は、代表的な2種類の蓄光材料放射光の減衰時の相対分光分布を示すグラフである。図6は、本発明の実施の形態にかかるSPDの分光感度および補正用フィルタの分光透過率を示すグラフである。横軸は、波長(nm)であり、その左縦軸は、相対感度であり、その右縦軸は、透過率である。
【0034】
図2ないし図4に示すように、測定ユニット20は、スイッチSwと、シリコンフォトダイオード(SPD)21と、処理回路22と、LED23と、ソーラセル(太陽電池)24と、IrDA通信部25と、電源部26とを備え、これらスイッチSw、SPD21、処理回路22、LED23、ソーラセル24、IrDA通信部25および電源部26は、図2に示すように、平面視にて四隅を面取りされた略四角形であり、図3に示すように、側面視にて略平板状の扁平な直方体形状の筐体に収容されている。前記筐体の両側面には、遮光ユニット1に取り付けるための長尺な溝20aが長手方向に沿って形成されている。この溝20aに後述するガイド1aが嵌め込まれることで、測定ユニット20は、遮光ユニット1に取り付けられて保持され、測定ユニット20のSPD21が、遮光ユニット1に設けられた受光開口1kに臨み、この受光開口1kを介して蓄光標識100の測定域101に対向するように配置可能になる。測定ユニット20には、被押圧面を有するスイッチSwが実装されており、被押圧面が押圧操作されることにより、スイッチSwに割り当てられた処理回路22のオンオフを行う。なお、測定ユニット20には、処理回路22等の測定ユニット20における電力の必要な各部へ給電する電源として、光エネルギーを電気エネルギーへ変換するソーラセル(太陽電池)24およびソーラセル24から供給された電力を所定の電圧レベルで安定的に出力するための電源部26が実装され、処理回路22から出力された送信データをIrDA方式でデータ通信を行うためにLED23を駆動させる駆動信号を生成するIrDA通信部25およびIrDA通信部25の前記駆動信号で駆動されるLED(赤色LED)23が実装されている。測定ユニット20の前記筐体の正面には、略矩形状の窓25が開口形成されており、ソーラセル24およびLED23は、この窓25に臨むように配設されている。そして、この窓25を通して周囲光がソーラセル24に入射するとともに、この窓25を通してLED23の発光が放射される。
【0035】
測定ユニット20に備わる処理回路22は、制御部の一例であり、蓄光標識100における測定域からの放射光を受光する受光部の一例であるSPD21を制御し、測定開始から所定時間経過後までの測定域からの放射光をSPD21で測定する。さらに、処理回路22は、記憶部221を内蔵しており、SPD21で測定された測定値を記憶部221に記憶する。処理回路22は、記憶部の一例でもある。なお、前記所定時間は、遮光された場合でも標識として機能するべき時間であり、例えば、20分間である。
【0036】
上述のように、測定ユニット20は、受光部の一例としてSPD21を備えるので、測定ユニット20の受光感度は、SPD21の分光感度である。図5に示す曲線は、遮光直後(実線)、2分後(破線)、10分後(一点鎖線)、20分後(二点鎖線)の蓄光材料放射光の分光分布であり、強度は、減衰するものの、相対的な分光分布のプロファイルは、殆ど変化しないことが分かる。このことから、測定ユニット20の分光感度に関わりなく、測定開始からの輝度変化率を受光量変化率とみなすことができるので、本実施の形態における受光部であるSPD21そのものの分光感度でも測定することができることが分かる。さらに、測定ユニット20の受光部が例えばフィルタ等の光減衰要素を伴わないSPD21であるので、光束の利用効率が高く、高感度、従って高精度とすることができる。
【0037】
上述では、SPD21は、その相対分光感度を修飾する光学要素(フィルタ)を伴うことなく直接的に受光したが、この他、SPD21は、分光感度の波長依存性を軽減するフィルタをSPD21の上流(放射光の受光に対し)にさらに備え、このフィルタを介して蓄光標識100における測定域101からの放射光を受光するように構成しても良い。より具体的には、分光分布にわずかでも変化があった場合、その影響は、測定ユニット20の分光感度が平坦であるほど小さいので、図6の実線に示すSPD21における分光感度の波長依存性を相殺するような、例えば、図6の点線で示す分光透過率を持つフィルタと組み合わせて、合成分光感度を平坦化することは、精度向上に寄与する。すなわち、前記フィルタは、SPD21の分光感度と合成した合成分光感度が略平坦となる分光透過率を持つ。このように、SPD21の分光感度の波長依存性を軽減するフィルタをSPD21の上流にさらに備えることで、蓄光標識100の放射光の分光分布が減衰中に多少変化することがあっても、影響を受けにくく高精度となる。
【0038】
一方、遮光ユニット1は、前記受光部の一例であるSPD21が蓄光標識100における測定域101に対向し、測定域101が周囲光から遮光されるように、蓄光標識100に脱着可能に固定するための固定手段を装着する固定部を有している。
【0039】
より具体的には、遮光ユニット1は、図2および図3に示すように、中央に向かって盛り上がった扁平な円盤状、すなわち比較的低高の円錐台形状であり、例えば、床上の蓄光標識100に取り付けられても、歩行者に危険を及ぼす可能性が低い形状とされている。
【0040】
遮光ユニット1の周縁部(前記円錐台の側面)における所定の位置には、前記固定部が設けられている。図2および図3に示す例では、前記固定部は、前記固定手段としての粘着テーブ30を装着するための領域1Aである。この領域1Aには、例えば、この領域が固定部であることを明示するために所定の表示が施されている。この所定の表示は、例えば、着色、文字、記号(マーク)等である。この領域1Aは、1または複数であってよく、例えば、約180度間隔の2箇所、約120度間隔の3箇所および約90度間隔の4箇所等である。
【0041】
そして、遮光ユニット1の中央部には、図2および図3に示すように、測定ユニット20が装着可能な略長方形凹部の切り欠き部1Cが形成されている。切り欠き部1Cの底には遮光板1Bが設けられ、この遮光板1Bには、所定位置に受光開口1kが貫通開口されている。さらに、図3(b)に示すように、測定ユニット20が遮光ユニット1に対し相対移動する方向である矢印A方向に直交する切り欠き部1Cの側壁は、測定ユニット20を矢印A方向にスライドさせて切り欠き部1C内へ案内するガイドとしても機能する。より具体的に、切り欠き部1Cの前記側壁にはガイド1aが凸設されると共に、ガイド1aに対応する測定ユニット20の外側面の所定位置に、ガイド1aの形状と対をなす形状を有する前記溝20aが設けられている。ガイド1aが溝20aに内側から嵌め込まれることで、矢印A方向に移動可能となるように、測定ユニット20は、遮光ユニット1に取り付けられる。測定ユニット20は、ガイド1aに沿って矢印A方向に移動し、図2(b)に示すように、測定ユニット20が切り欠き部1Cの一方端部内に収納され、受光開口1kにSPD21を臨む測定位置と、図2(a)に示すように、測定ユニット20が切り欠き部1Cの他方端部に位置する退避位置とを取ることが可能である。さらに、測定ユニット20の待避位置から測定位置への移動に伴って、ガイド1aの特定の部位がスイッチSwの被押圧面を押圧するように、スイッチSwの配設位置が設定されている。遮光ユニット1の蓄光標識100への取り付け時には測定ユニット20は、前記退避位置にあり、操作者は、切り欠き部1Cの底部の遮光板1Bに空けられた受光開口1kが視認でき、受光開口1kが蓄光標識100の発光域101に来るように、遮光ユニット1を位置決めすることができる。
【0042】
このように図2および図3に示す例の遮光ユニット1は、遮光性を有する遮光板1B(所定面)に設けられた受光開口1kにSPD21を臨ませるように、SPD21と処理回路22(制御部および記憶部を含む)を納める測定ユニット20を取り付け可能に構成されている。さらに、遮光ユニット1は、受光開口1kが蓄光標識100の測定域に対向し、測定域が周囲光から遮光されるように、少なくとも所定時間、蓄光標識100に脱着可能に固定するための粘着テープ30を装着するための領域1Aを有している。
【0043】
本実施の形態の残留輝度測定装置Sは、SPD21および処理回路22を納める測定ユニット20と、切り欠き部1Cを持つ遮光ユニット1とを備え、遮光ユニット1は、測定ユニット20が切り欠き部1Cの測定位置に取り付けられていない状態では蓄光標識100における測定域101が視認可能であり、測定ユニット20が切り欠き部1Cの測定位置に取り付けられた状態ではSPD21が受光開口1kを介して蓄光標識100における測定域101に対向し、操作者は、容易にSPD21を測定域101に対向させて粘着テーブ30によって残留輝度測定装置Sを所定時間固定することができる。
【0044】
ここで、遮光ユニット1と測定ユニット20の組は、ハウジングの一例である。なお、遮光ユニット1と測定ユニット20とが一体に形成されてもよい。さらに、遮光板1Bの蓄光標識100と接する外面には、遮光性を有する部材(羅紗紙など)を貼り付けてもよい。また、遮光ユニット1の外周にフランジをさらに備え、このフランジに領域1Aが配置されてもよい。
【0045】
上記構成によれば、遮光ユニット1と測定ユニット20とを固定後は操作者の手を煩わせることなく、本実施の形態の残留輝度測定装置Sは、測定開始から所定時間後までの残留輝度を測定することができる。
【0046】
図7は、本発明の実施の形態にかかる基準測定ユニットの構成図である。図8は、本発明の実施の形態にかかる処理ユニットの電気的構成を示すブロック図である。図9は、代表的な蓄光材料放射光の相対分光分布と相対分光視感効率とを示すグラフである。図9の横軸は、波長(nm)であり、その縦軸は、強度を示す。
【0047】
基準測定ユニット40は、蓄光標識100の初期輝度を測定し、ケーブル46を介して測定値を処理ユニット50へ出力するものである。基準測定ユニット40の受光部は、シリコンフォトダイオード(SPD)41で構成され、さらに、測光量を人間の眼に対する強度である輝度に変換するために、SPD41の上流(入射光の受光に対し)に設けられたVλフィルタ43と、SPD41の受光角を規制する受光角規制筒44とを備えている。これらSPD41、Vλフィルタ43および受光角規制筒44は、遮光ユニット1に取り付け可能な測定ユニット20の前記筐体と同様な筐体に収納されている。受光角規制筒44は、筒体であり、その一方端にはVλフィルタ43およびSPD41が配設されており、その他方端の測定開口45から入射した光は、Vλフィルタ43を介してSPD41で受光される。受光角規制筒44の測定開口45は、後述するように、測定時に受光開口1kに対向し、測定域101からの放射光に対するSPD41の受光角を規制する。これによってSPD41が測定対象を見込む角度が一定となり、前記測定対象が前記角度をカバーする限りその実際の大きさにSPD41のセンサ出力が依存しなくなる。Vλフィルタ43は、SPD41の分光感度との合成分光感度が、図9の点線で示すような眼の相対分光視感効率Vλに近似するような分光透過率(SPD41との組合せが図9に点線で示す相対分光視感効率Vλに近似するような分光透過率)を持ち、例えば吸収フィルタの組み合わせや多層膜等で構成される。基準測定ユニット40は、基準光源で予め校正され、少なくとも蓄光標識100などランベルト光源とみなせる一様な面光源に対する輝度計として機能する。図9に実線で示す代表的なりん光の分光分布は、半値幅100nm程度で急峻であることから、測定装置の分光感度の相対分光視感効率からの誤差は、大きな測定誤差をもたらす虞がある。
【0048】
基準測定ユニット40は、測定ユニット20と同様の外形をもち、遮光ユニット1の切り欠き部1Cに取り付けることができる。基準測定ユニット40を遮光ユニット1の測定位置に取り付けた場合に、測定開口45が受光開口1kに対向するように、測定開口45は、受光開口1kに対応する基準測定ユニット40の所定位置に設けられる。基準測定ユニット40が挿入されると、測定開口45は、遮光ユニット1の受光開口1kに対向し、蓄光標識100の測定域101とSPD41とは、外光から遮光される。
【0049】
初期輝度の測定中は、蓄光標識100と基準測定ユニット40との正しい位置関係と十分な遮光が維持される必要があるが、初期輝度の測定時間は、1s以下なので、操作者の負担は小さい。基準測定ユニット40は、処理ユニット50とケーブル46で接続され、処理ユニット50から電源供給されるとともに、処理ユニット50のスイッチを用いて操作される。基準測定ユニット40での測光量は、処理ユニット50に出力され、処理ユニット50は、この測光量を人間の眼に対する強度である輝度に変換し、蓄光標識100−1〜100−Nごとに記憶する。
【0050】
処理ユニット50は、測定開始から所定時間後までの受光量変化率を測定し、受光量変化率と、予め基準測定ユニット40によって測定された測定域101の初期輝度とから、測定開始から所定時間後における測定域101の残留輝度を求めるものである。
【0051】
より具体的には、図8に示すように、処理ユニット50は、所定の表示を行う表示部51と、IrDA方式でデータ通信を行うIrDA通信部52と、所定の処理を行う処理回路53とを備えている。処理ユニット50に備わる処理回路53は、IrDA通信部52を介して測定ユニット20から入力された測定値を基に、測定開始から所定時間経過後までの受光量変化率を算出し、基準測定ユニット40によって測定され、蓄光標識100−1〜100−Nごとに記憶されている初期輝度に乗じて、所定時間経過後の残留輝度として表示部51へ出力する。
【0052】
以下、複数(例えば10個)の蓄光標識100について、蓄光標識100それぞれの測定域の残留輝度を残留輝度測定装置Sで測定する場合における、測定の手順について説明する。
【0053】
<遮光ユニットの蓄光標識への取り付け>
操作者は、複数、例えば10個の蓄光標識100(100−1〜100−N(N=10))のそれぞれを測定すべく、10個の遮光ユニット1が用意され、図1に示すように、各遮光ユニット1が、個々の蓄光標識100−1〜100−10に粘着テープ30でそれぞれ取り付けられる。操作者は、切り欠き部1Cの底にあって蓄光標識100に接する遮光板1Bに空けられた受光開口1kが視認でき、受光開口1kが蓄光標識100の測定域101に来るように、遮光ユニット1を位置決めすることができる。
【0054】
<基準測定ユニットによる初期輝度の測定>
次に、操作者は、切り欠き部1Cに、基準測定ユニット40を挿入して図2(b)に示す測定位置に移動させ、受光開口1kに対向する蓄光標識100の測定域101からの放射光量を測定する。なお、基準測定ユニット40が遮光ユニット1に取り付けられても、基準測定ユニット40を図2(a)に示す退避位置に位置させることで、上述したように、操作者は、切り欠き部1Cの遮光板1Bに空けられた受光開口1kが視認でき、受光開口1kが蓄光標識100の測定域101に来るように、遮光ユニット1を位置決めすることができる。基準測定ユニット40は、予め、基準光源を用いて校正されている。処理回路53は、基準測定ユニット40で測定された測光量を人間の眼に対する強度である輝度に変換し、蓄光標識100ごとに記憶する。
【0055】
<測定ユニット20による輝度変化率の測定>
遮光ユニット1の個数に対応して10個の測定ユニット20が用意される。次に、操作者は、基準測定ユニット40を遮光ユニット1から外し、遮光ユニット1に測定ユニット20を取り付ける。なお、測定ユニット20が遮光ユニット1に取り付けられても、測定ユニット20を図2(a)に示す退避位置に位置させることで、上述したように、操作者は、切り欠き部1Cの遮光板1Bに空けられた受光開口1kが視認でき、受光開口1kが蓄光標識100の測定域101に来るように、遮光ユニット1を位置決めすることができる。次に、操作者は、測定ユニット20を図2(b)に示す測定位置に移動させる。測定ユニット20の受光部は、測定位置で遮光ユニット1の受光開口1kに対向する。移動の初期にスイッチSwがガイド1aに当たってONされ、測定ユニット20が自動的に起動する。これにより操作者は、起動の手間が省け、操作者の負担をより軽減することができる。測定ユニット20の処理回路22は、計時をスタートして所定時間間隔でSPD21のみで構成される受光部による受光量の測定と測定値の処理回路22の前記記憶部への保存を繰り返す。測定間隔は、初期では例えば0.1s程度と短く、測定終了近くでは10s程度まで長くなる。起動後1秒間程度の測定ユニット10移動中、測定ユニット20のSPD21は、遮光ユニット1の遮光板1Bに対向して入射光が阻止され、この間の受光量がオフセット信号となる。測定ユニット20が測定位置に到達すると、測定ユニット20のSPD21が遮光ユニット1の受光開口1kに対向するので、受光量が急激に増大する。処理回路22は、所定の測定時間が経過すると測定を中止し、LED23によるIrDAによって記憶された全データを繰り返し処理ユニット50へ出力する。LED23の点灯は、窓25を通して操作者に確認され、変化率測定の終了が認識される。
【0056】
<複数の蓄光標識100の測定>
操作者は、上記の「遮光ユニット1の蓄光標識100への取り付け」から「測定ユニット20による輝度変化率の測定」における測定ユニット20の測定位置への移動までの作業を、例えば、10個の蓄光標識100について繰り返す。これによって、各蓄光標識100の初期輝度が測定、記憶され、受光量変化率の測定が開始される。
【0057】
<データの読み出しと残留輝度の算出>
処理ユニット50は、複数の蓄光標識100に取り付けられた測定ユニット20からのデータを読み出して残留輝度を算出する。例えば、操作者は、10個の蓄光標識100について、初期輝度を測定し、LED23が点灯した測定ユニット20から順次、処理回路22に記憶されたデータを処理ユニット50で読み出す。測定ユニット20の窓25に処理ユニット50のIrDA通信部52を密着させることで、IrDA通信部52は、LED23が発信する情報を読み込む。処理ユニット50は、読み出されたデータから、オフセット信号を識別し、これによって全データをオフセット補正した後、初期から所定時間経過後までの受光量変化率を算出し、処理回路53に蓄光標識100ごとに記憶されている初期輝度に乗じて、所定時間経過後の残留輝度として表示部51へ出力する。
【0058】
本実施の形態において、相対分光視感効率Vλに近似する分光感度をもち、校正を必要とするため高コストの基準測定ユニット40を1台必要とするものの、複数の測定ユニット20の受光部は、SPD21だけで構成でき、低コストである。このため、システム全体のコストパフォーマンスが高い。
【0059】
本実施の形態では、測定の間隔を初期の0.1sから20分後の10sまで、変化させたが、20分間0.1s間隔でデータを取得し、図12に見られるような連続的な減衰とは異なる、突発的な変化があった場合、これを測定ユニット20や遮光ユニット1の取り付け状態の変化として変化分を測定値から減算することで補正してもよいし、データの信頼性に問題があることを警告するメッセージを表示部51に出力してもよい。
【0060】
本実施の形態では、1台の基準測定ユニット40で順次測定した初期輝度と、複数の測定ユニット20で並行測定した測定開始から所定時間経過後の変化率から残留輝度を求めているが、基準測定ユニット40に準じた受光部をもち、輝度計として校正された複数の測定ユニット20で、直接、残留輝度を測定するように構成してもよい。
【0061】
本実施の形態によれば、残留輝度測定装置Sを固定後は、操作者の手を煩わせることなく、所定時間後の残留輝度を測定することができる。
【0062】
また、所定時間の固定が粘着テープ30で行われるので、残留輝度測定装置Sの所定時間の固定と取り外しとを低コストかつ効率的に行うことができる。
【0063】
そして、本実施の形態によれば、SPD21および処理回路22を収める測定ユニット20と、測定ユニット20が取り付けられる遮光ユニット1とから構成され、遮光ユニット1は、測定ユニット20が取り付けられていない状態(前記待避位置)では蓄光標識100における測定域101が視認可能であり、測定ユニット20が取り付けられている状態(前記測定位置)では、SPD21が蓄光標識100における測定域101に対向するので、操作者は、容易にSPD21を蓄光標識100における測定域101に対向させて残留輝度測定装置Sを所定時間固定することができる。
【0064】
さらに、他の実施の形態において、処理回路53が、SPD21が蓄光標識100における測定域101からの放射光に対する、分光視感効率とSPD21の分光感度との関係を予め記憶し、処理ユニット53が、この関係に基づいて、測定値を分光視感効率での値に変換してもよい。より具体的な例を挙げれば、測定対象の蓄光標識100における放射光の分光分布が図5(a)および図5(b)の2種である場合、受光部のVλフィルタ43を省略し、SPD41そのものの分光感度としても、これら2種の蓄光標識100について、測定ユニット20の測定値を輝度に変換することができる。つまり、相対分光視感効率Vλに近似する分光感度の輝度計でモニターされた前記2種のりん光光源を基準光源として、各々の変換係数を求め、予め処理回路53に各々の変換係数を記憶し、測定時には測定対象の蓄光標識100に応じて操作者が変換係数を選択することで、処理回路53が、変換係数に基づいて、測定値を分光視感効率での値(輝度)に変換する。
【0065】
この構成によれば、SPD21の分光感度を分光視感効率に近似させるためのフィルタを備える必要がなく、基準測定ユニット40も必要ないので、低コストで構成でき、効率的な測定のために多数個の残留輝度測定装置Sを使用しても大きなコスト増とならない。
【0066】
また、上述の実施形態では、固定部は、固定手段の一例としての粘着テーブ30を装着するための領域1Aであったが、これに限定されるものではない。例えば、前記固定部は、前記固定手段の一例としての吸盤を装着するための領域1Aであり、遮光ユニットは、前記固定部に装着された吸盤をさらに備えて構成されてもよい。
【0067】
図10は、本発明の他の実施の形態にかかる測定ユニットおよび遮光ユニットの断面図である。固定手段の他の一例としての吸盤11を備える遮光ユニット10は、図10に示すように、遮光ユニット10の筐体における底面には、吸盤11を装着するための複数の凹部10Dを有し、これら各凹部10D内に、SPD21を蓄光標識100における測定域101に対向させて測定域101を周囲光から遮光させるように、遮光ユニット10を蓄光標識100に脱着可能に固定するための吸盤11がそれぞれ設けられている。より具体的には、遮光ユニット10は、遮光ユニット1と同様に切り欠き部1Cを有する低高の円錐台形状であり、その底面には、例えばその周縁部分に、例えば、2箇所、3箇所および4箇所等の複数の凹部10Dが形成されており、これら各凹部10D内に吸盤11がそれぞれ設けられている。また例えば、遮光ユニット10は、例えば、上述と同様の切り欠き部1Cを有する低高の円柱状であり、その底面には、例えばその周縁部分に、複数の凹部10Dが形成されており、これら各凹部10D内に吸盤11がそれぞれ設けられている。また例えば、遮光ユニット10は、例えば、上述と同様の切り欠き部1Cを有する低高の円柱状であり、その上端部には、フランジを有し、そのフランジの下面に複数の吸盤11がそれぞれ設けられている。このような吸盤11は、粘着テープ30に較べて脱着の操作性がよく、この結果、操作者の負担がより軽減される。
【0068】
また、測定ユニット20は、遮光ユニット1および遮光ユニット10の双方に取り付け可能とされ、蓄光標識100の設置状況に応じて、遮光ユニット1および遮光ユニット10が使い分けられてもよい。例えば、床面に配設された蓄光標識100に対しては、遮光ユニット1が用いられ、壁面に配設された蓄光標識100に対しては、遮光ユニット10が用いられる。
【0069】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0070】
S 残留輝度測定装置
Sw スイッチ
Vλ 相対分光視感効率
1、10 遮光ユニット
1A 領域
1B 遮光板(所定面)
1C 切り欠き部
1a ガイド
1k 受光開口
10D 凹部
11 吸盤
20 測定ユニット
20a 溝
21 SPD
22 処理回路
30 粘着テープ
40 基準測定ユニット
41 SPD
43 フィルタ
44 受光角規制筒
45 測定開口
50 処理ユニット
51 表示部
52 IrDA通信部
53 処理回路
100 蓄光標識
101 発光域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光された蓄光標識における測定域の残留輝度を測定する残留輝度測定装置であって、
前記蓄光標識における測定域からの放射光を受光する受光部と、
前記受光部を制御し、測定開始から所定時間経過後までの前記測定域からの放射光を前記受光部で測定する制御部と、
前記受光部で測定された測定値を記憶する記憶部と、
前記受光部と前記制御部と前記記憶部とを納めるハウジングとを備え、
前記ハウジングは、前記受光部が前記蓄光標識における測定域に対向し、前記測定域が周囲光から遮光されるように、前記蓄光標識に脱着可能に固定するための固定手段を装着する固定部を有すること
を特徴とする残留輝度測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記受光部で測定された測定値に基づいて、測定開始から所定時間後までの受光量変化率を測定し、前記受光量変化率と、予め測定された前記測定域の初期輝度とから、測定開始から所定時間後における前記測定域の残留輝度を求めること
を特徴とする請求項1に記載の残留輝度測定装置。
【請求項3】
前記受光部は、シリコンフォトダイオード(SPD)を備え、前記シリコンフォトダイオードの受光側には、前記シリコンフォトダイオードの相対分光感度を修飾する光学要素を持たないこと
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の残留輝度測定装置。
【請求項4】
前記受光部は、シリコンフォトダイオード(SPD)を備え、
前記記憶部は、前記測定域からの放射光に対する、分光視感効率と前記シリコンフォトダイオードの分光感度との関係を予め記憶し、
前記制御部は、前記関係に基づいて、前記測定値を分光視感効率での値に変換することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の残留輝度測定装置。
【請求項5】
前記受光部は、分光感度の波長依存性を軽減するフィルタをさらに備え、前記フィルタを介して前記蓄光標識における測定域からの放射光を受光すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の残留輝度測定装置。
【請求項6】
前記固定部は、前記固定手段としての粘着テーブを装着するための領域であること
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の残留輝度測定装置。
【請求項7】
前記固定部は、前記固定手段としての吸盤を装着するための領域であり、
前記固定部に装着された吸盤をさらに備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の残留輝度測定装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記受光部と前記制御部と前記記憶部とを納める測定ユニットと、前記測定ユニットを取り付けるための取り付け部を持つ遮光ユニットとを備え、前記遮光ユニットは、前記測定ユニットが前記取り付け部に取り付けられていない状態では前記測定域が視認可能であり、前記測定ユニットが前記取り付け部に取り付けられた状態では前記受光部が前記測定域に対向すること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の残留輝度測定装置。
【請求項9】
複数の蓄光標識における各残留輝度を測定する残留輝度測定システムであって、
前記複数の蓄光標識に対し脱着可能に固定可能であって、所定時間後の輝度変化率を測定する複数の測定ユニットと、
前記複数の測定ユニットでの測定開始前に、前記複数の蓄光標識における各初期輝度を測定する初期輝度測定ユニットと、
前記複数の測定ユニットによってそれぞれ測定された各輝度変化率と、前記初期輝度測定ユニットによってそれぞれ測定された各初期輝度とに基づいて、前記複数の蓄光標識における所定時間後の各残留輝度を求める処理ユニットとを備え、
前記複数の測定ユニットのそれぞれは、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の残留輝度測定装置であること
を特徴とする残留輝度測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−220730(P2011−220730A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87629(P2010−87629)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】