説明

段ボール固定用座金

【課題】段ボール固定用座金についてねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重がねじの軸に集中しないよう分散して低減する構造の座金、固定部材、取付構造、コンテナを提供する。
【解決手段】被固定部材をねじ止めにより段ボールに固定するために用いられる段ボール固定用座金1であって、矩形形状の平板の少なくとも隣り合う二隅を座金底面側に折り曲げて突出するように形成した押さえ爪4を有するとともに、平板の中央部にねじが着座したときにねじの軸が貫通するための取付孔2を有し、押さえ爪4は、段ボールに食い込んで、ねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散して低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は段ボール固定用座金に関し、詳しくは、被固定部材をねじ止めにより段ボールに固定するために用いられる段ボール固定用座金に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、機械などの各種の物品が、全部または一部が段ボールからなるコンテナに収納して運搬されている。その際、収納された物品(以下、「内容品」という。)がコンテナ内部で移動しないように拘束するため、金属製、木製、又は樹脂製の中仕切り(以下、「押さえ材」という。)を渡して内容品の固定が行われている。
【0003】
この押さえ材は、コンテナ側面を構成する段ボールにねじ止めされて固定されることが多い。ねじ止めとされるのは、コンテナを廃棄する際、段ボールと押さえ材をそれぞれ分別回収してリサイクルできるようにするためである。
したがって、このような分別回収のニーズがあるため、最近では、ねじ回し一本で簡単に外すことができるよう、ねじにほぼ正方形の平板の座金を組み合わせて一体化した「ネイル」と呼ばれる固定具を用いて押さえ材を固定していた。この固定具は、ねじ部分が木ねじ又はドリルねじになっており、段ボールを介して押さえ材をねじ止めして、押さえ材を段ボールに固定するものであった。
【0004】
しかしながら、このような固定具を用いて押さえ材を段ボールに固定した場合でも、コンテナの輸送中あるいは荷役中に振動や衝撃などによりコンテナに加速度が働くと、内容品の慣性力により押さえ材に締結されたねじを介して段ボールのライナ面に直角な波形構造部分に対して垂直の圧縮荷重が伝達される(以下、この場合の圧縮荷重を、「垂直圧縮荷重」という。)。このため、相対的に剛性の低い段ボールが相対的に剛性の高いねじの軸により引き裂かれ、押さえ材及び内容品を十分に固定できなくなることがあった。
【0005】
特に、従来の固定具の構造では座金が平板であるため、段ボールの平面に対して加えられる垂直の圧縮荷重(以下、「平面圧縮荷重」という。)に対しては座金の段ボールへの接面全体がこれを受けるので有効であるが、垂直圧縮荷重に対しては、少しでもねじの締結が緩むと座金と段ボールの接面及び押さえ材と段ボールとの接面の静止摩擦力が大きく減少しねじの軸部に荷重が集中するため、有効な固定が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−196633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて発明者が鋭意研究を進めた結果、内容品の慣性力等に起因して発生しねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散してねじの軸に集中しないよう低減する構造の座金を提供する。
また、そのような段ボール固定用座金を有する固定部材を提供する。
さらに、そのような固定部材を用いた段ボールと被固定部材との取付構造を提供し、あわせて、そのような取付構造を有する段ボールを全部又は一部に用いたコンテナを提供する。
【0008】
段ボールを用いたコンテナは木製のコンテナと並び従来より使用されてきたが、近年、木材については植物検疫の観点から植物衛生措置に関する国際基準(たとえば、ISPM NO.15、International Standard for Phytosanitary Measures)に則り、燻蒸(熱処理その他の処理による消毒)を要求する国がある。このため、燻蒸が不要でリサイクルも可能な段ボール製のコンテナが注目されている。この様な背景の下に、内容品が重量物であっても段ボールを用いたコンテナを使用するニーズが高まっていることから、特に、押さえ材を強固に固定しつつ、簡単にその取り外しができるような固定具が望まれていた。
【0009】
本発明は、ねじ止め構造により簡単に取り外しができるようにしながら、従来対応が困難であった段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散させて、強固な固定ができるようにするものである。
なお、座金は、従来からねじの緩み止めあるいは座面の陥没防止という機能を発揮させるために用いられてきた経緯がある。このため、ねじの軸が回転しないように回転防止機能をもたせるという技術思想はよく知られているが(特許文献1)、本願発明のように、座金によりねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散させるという考え方は段ボールに固定する場合に特有のものであって従来とは異なる発想のものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明に係る段ボール固定用座金は、被固定部材をねじ止めにより段ボールに固定するために用いられる段ボール固定用座金であって、段ボール固定用座金は、矩形形状の平板の少なくとも隣り合う二隅を座金底面側に折り曲げて突出するように形成した押さえ爪を有するとともに、平板の中央部にねじが着座したときにねじの軸が貫通するための取付孔を有し、押さえ爪は、ねじの軸が取付孔と段ボールとを貫通するように被固定部材をねじ止めにより段ボールに固定したときに段ボールに食い込んで、ねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散して低減すること、を特徴とする。
本発明の段ボール固定用座金は、押さえ爪がこのように形成されているので、異なる二方向に対して垂直圧縮荷重が伝達されても、少なくとも隣り合う二隅に形成された押さえ爪は少なくとも一組の直交する方向に押さえ爪が形成されるため、異なる方向の荷重についても有効に分散が行われる。押さえ爪は、三隅又は四隅に形成されてもよい。
また、このような座金を製造する際にも、矩形形状の平板の隅に折り曲げ加工を施せばよいので、簡単に加工することができる。
【0011】
また、矩形形状は、正方形形状であり、押さえ爪は、ほぼ直角に折り曲げられて直角二等辺三角形の形状となるように突出していることが好ましい。
このような形状であると、押さえ爪を形成するための平板の隅の加工が正方形の対角線に対して直交する線で折り曲げることができるため加工が簡単である。
【0012】
また、直角二等辺三角形の等辺の長さは、正方形の一辺の長さの10分の3以上であることが好ましい。
このような寸法とすると、段ボールを固定する際に押さえ爪が段ボールに十分食い込むことができ、さらに有効に荷重を分散できる。
【0013】
また、押さえ爪の深さは、前記段ボールの厚さより短いことが好ましい。
このような深さにすることにより、段ボールの裏面まで突き抜けないようにして被固定材と干渉することを防止でき、座金の浮き上がりを防止してより強固に固定できる。
【0014】
また、このような課題を解決するために、本発明は、前記記載の段ボール固定用座金とそれを貫通して着座するねじとからなる段ボールの固定部材であって、段ボール固定用座金は、取付孔の周囲に座金上面側に円錐台状に突出するねじ着座部を有すること、
を特徴とする。
このような固定部材とすることにより、ねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散して低減することができる。
【0015】
前記記載の段ボールの固定部材は、さらに、ねじに貫通されて嵌まる抜け止めを有し、
ねじが段ボール固定用座金に着座して取付孔と抜け止めと段ボールとを貫通するように被固定部材をねじ止めにより段ボールに固定したときに、抜け止めはねじ着座部の座金底面側に形成された凹部に収納されること、
を特徴とする。
このような固定部材とすることにより、ねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を段ボール固定用座金に分散することができることに加え、ねじと段ボール固定用座金と段ボールとを抜け止めを介して密着して固定することができる。
【0016】
さらに、このような課題を解決するために、本発明は、コンテナケースの全部又は一部が段ボールからなる輸送用コンテナにおいて輸送用コンテナ内の内容品が輸送用コンテナ内で移動しないように拘束するための押さえ材を段ボールに固定するための取付構造であって、前記の固定部材により押さえ材が段ボールに固定されていること、を特徴とする。
このような取付構造にすることにより、押さえ材は内容品の慣性により押さえ材の固定部材を介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散するように固定されるので、強固な固定ができる。
なお、全部又は一部が段ボールからなる輸送用コンテナには、段ボール箱も含まれるものとする(以下、同様)。
【0017】
加えて、このような課題を解決するために、本発明は、コンテナケースの全部又は一部が段ボールからなる輸送用コンテナであって、前記の輸送用コンテナの押さえ材の取付構造を有すること、を特徴とする。
このような輸送用コンテナとすることにより、押さえ材を介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重が分散され押さえ材を強固に固定できるので、輸送中や荷役中にコンテナに衝撃が働いても破壊耐力の高いコンテナを提供することができると同時に内容品の安全な輸送ができる。
なお、輸送用コンテナのコンテナケースは、内部に内容品を収納するものであって、主として段ボールで枠囲いした直方体形状の四角い箱型のものをいい、たとえば、段ボール製スリーブ(側板)の上下の開口をそれぞれパレットでふさいでなるものなどが該当するが、対向する2つの面が段ボールでできているものであればよい。また、全部が段ボールでできているものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の段ボール固定用座金は、ねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散してねじの軸に集中しないよう低減することができる。このため、従来より大きな垂直圧縮荷重に対してもねじが段ボールを引き裂くことを防止することができる。また、製造の際にも、隅を折る折り曲げ加工を施せばよいので、簡単に加工することができる。
また、本発明の段ボールの固定部材は、ねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散してねじの軸に集中しないよう低減することができるため、強固な固定ができる固定部材を提供できる。
さらに、本発明の輸送用コンテナの押さえ材の取付構造は、ねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散してねじの軸に集中しないよう低減することができるため、破壊されにくく強固な押さえ材の取付構造を提供できる。
加えて、本発明の輸送用コンテナは、ねじを介して段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散してねじの軸に集中しないよう低減することができるため、輸送中や荷役中にコンテナに衝撃が働いても破壊耐力が高いと同時に内容品の安全な輸送ができるコンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る段ボール固定用座金の第1実施例を示すもので、(1)は上面から見た斜視図であり、(2)は底面から見た斜視図である。
【図2】図1(1)のA−A視の断面図である。
【図3】本発明に係る段ボール固定用座金の実施形態の第2実施例を示す上面から見た斜視図である。
【図4】本発明に係る段ボール固定用座金の実施形態の第3実施例を示す上面から見た斜視図である。
【図5】本発明に係る固定部材および取付構造の実施形態の一例の断面図である。
【図6】本発明に係る固定部材および取付構造の実施形態の他の例の断面図である。
【図7】本発明に係る取付構造およびコンテナの実施形態の一例を示す一部破断した斜視図である。
【図8】本発明に係る取付構造及びコンテナの強度試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施例、図1、図2、図5、図6)
図1は(1)が第1実施例を上面から見た斜視図、(2)が同じく底面から見た斜視図であり、図2は図1(1)のA−A視断面図である。図5は、第1実施例の使用状態を示すとともに、本発明に係る固定部材および取付構造の実施形態の一例を示すものである。図6は、第1実施例の別の使用状態を示すとともに、本発明に係る固定部材および取付構造の実施形態の他の例を示すものである。
なお、この明細書では、座金に関し、ねじが入る側(すなわち、ねじが着座する側)を「上面」といい、ねじが座金を貫通して出ていく側を「底面」という。
【0021】
座金1は、一辺40mmのほぼ正方形形状の金属でできた厚さ0.8mmの平板をプレス加工および打ち抜き加工することによって形成されている。金属素材としては、SPCCの冷延鋼板の表面を電気亜鉛めっき処理したものを用いている。
【0022】
座金1の中央部にはねじが貫通するための取付孔2が開いており、取付孔2を同心円状に囲う円錐台状の上向き突部3がねじ着座部として形成されている。上向き突部3の取付孔2の上面側は、ねじの着座する座面であり、座面は平板状になっている。
上向き突部3は座金1の最大厚さの2倍程度の寸法で上面側に突出しており、底面側は凹部9を形成している。
【0023】
座金1の大きさ、厚さ、上向き突部3の寸法は、ねじ止めをしたときに押さえ爪4が十分な強度をもって段ボールに十分食い込むよう設定することができる。本例では、厚さ約15mmの3層構造の段ボールに好適に用いることができる。
【0024】
正方形形状の平板の四隅には、それぞれ底面に向かって直角に均等の折り曲げ代で折り曲げられて突出するように押さえ爪4が形成されている。すなわち、押さえ爪4は直角二等辺三角形の形状を有している。
この直角二等辺三角形の等辺は、約14mmであり、正方形形状の座金1の一辺の長さの0.35倍となっている。また、この押さえ爪4の底面側への突出高さは約10mmであり、正方形形状の座金1の一辺の長さの4分の1となっている。押さえ爪4の先端のエッジ4aは、座金1の接面の段ボールに食い込むものであり、本例では正方形形状の隅を折り曲げ加工して形成される。したがって、そのエッジ4aの角度は90度に設定されている。
【0025】
押さえ爪4の突出高さは、固定する段ボールの厚さに応じて変更できる。段ボールの厚さより大きいと、エッジ4aが段ボールを突き破るので、段ボールの厚さより小さくすることが好ましい。しかし、段ボールの厚さより小さすぎると、食い込みが不足するおそれがある。したがって、段ボールの厚さの3分の1〜4分の3程度の寸法とすることが好ましい。
【0026】
押さえ爪4の形状は、固定の際に段ボールに食い込むものであれば、いろいろな形状を採用できる。
平板の形状は正方形形状としたが、矩形であってもよい。この点、正方形形状と同様、折り曲げ加工を施すことによって簡単に加工できる。また、加工の手間はかかるが、多角形形状や、星形の形状であっても差し支えはない。さらに、底面に向かって直角に均等の折り曲げ代で折り曲げられて突出するようにしたが、座屈せずに食い込むことができるのであれば必ずしも直角でなくてもよいし、均等でなくてもよい。
【0027】
図5に、本発明の段ボール固定用座金の使用例を示すとともに、本発明の固定部材および押さえ材の取付構造の一例を示す。
この取付構造150は、固定部材100を用いて固定しており、木ねじ5が座金1に着座し樹脂製の抜け止め7を介して木製の押さえ材8を段ボール6に固定している。
抜け止め7は、木ねじ5が座金1と固定前に分離しないよう、座金1の取付孔2を貫通させた状態で木ねじ5の軸に嵌められて抜け落ちないようにするものである。
【0028】
木ねじ5が被固定材である押さえ材8にねじ込まれて押さえ材8が段ボール6に固定されると、段ボール6に座金1の押さえ爪4がエッジ4aから食い込むので、押さえ材8等に起因して段ボール6と押さえ爪4とを段ボール6の平面方向に相対動させようとする外力が働いても、木ねじ5の軸を介して段ボール6に伝達される垂直圧縮荷重を分散して低減できる。
したがって、木ねじ5の締結が少々緩んでも、押さえ爪4が段ボール6に食い込んでいるため、木ねじ5の軸のみに荷重が集中することはない。
また、木ねじ5を用いて固定するねじ止め構造としているため、ねじ回し1本で簡単に押さえ材8の取付けおよび取り外しを行うことができる。
【0029】
各押さえ爪4は、90度ごとに互いにずれた位置に配置されているため、段ボール6に対し直交する方向に二重に押さえることができ、このため、段ボール6は木ねじ5から大きな垂直圧縮荷重が伝達されても押さえ材8を強固に固定することができる。
また、抜け止め7は木ねじ5に貫通されて座金1と段ボール6に挟まれて凹部9に収納されている。このため、木ねじ5と座金1と段ボール6とを抜け止め7を介して密着して固定することができる。
【0030】
なお、図5では段ボール6と押さえ材8の間に何も示されていないが、これらの間にスチロール等の緩衝材や断熱材等のシート状の部材が介在してもねじ5が押さえ材8に十分ねじ込まれていれば差し支えない。
【0031】
図6に、本発明の段ボール固定用座金の使用例を示すとともに、本発明の固定部材および押さえ材の取付構造の他の例を示す。
この取付構造250は、固定部材200を用いて固定しており、ドリルねじ15が座金1に着座し樹脂製の抜け止め17を介して金属製の押さえ材18を段ボール16に固定している。ドリルねじ15は、先端にドリル部15aが設けられている。たとえば、特許第4421732号のドリルねじなどが好適に用いられる。
抜け止め17は、ドリルねじ15が座金1と固定前に分離しないよう、座金1の取付孔2を貫通させた状態でドリルねじ15の軸に嵌められて抜け落ちないようにするものである。
【0032】
ドリルねじ15が被固定材である押さえ材18にねじ込まれて押さえ材18が段ボール16に固定されると、段ボール16に座金1の押さえ爪4がエッジ4aから食い込むので、押さえ材18等に起因して段ボール16と押さえ爪4とを段ボール16の平面方向に相対動させようとする外力が働いても、ドリルねじ15の軸を介して段ボール16に伝達される垂直圧縮荷重を分散して低減できる。
したがって、ドリルねじ15の締結が少々緩んでも、押さえ爪4が段ボール16に食い込んでいるため、ドリルねじ15の軸のみに荷重が集中することはない。
また、ドリルねじ15を用いて固定するねじ止め構造としているため、金属性あるいは樹脂製の押さえ部材であってもドライバー1本で簡単に押さえ材の取付けおよび取り外しを行うことができる。
【0033】
各押さえ爪4は、90度ごとに互いにずれた位置に配置されているため、段ボール16に対し直交する方向に二重に押さえることができ、このため、段ボール16はドリルねじ15を介して押さえ材18から大きな垂直圧縮荷重が伝達されても押さえ材18を強固に固定することができる。
また、抜け止め17はドリルねじ15に貫通されて座金1と段ボール6に挟まれて凹部9に収納されている。このため、ドリルねじ15と座金1と段ボール6とを抜け止め17を介して密着して固定することができる。
【0034】
なお、図6では段ボールと押さえ材18の間に何も示されていないが、これらの間にスチロール等の緩衝材や断熱材等のシート状の部材が介在してもねじ5が押さえ材8に十分ねじ込まれていればがあっても差し支えない。
【0035】
(第2実施例、図3)
図3は、本発明の段ボール固定用座金の第2実施例を示している。図1の第1実施例との相違は、押さえ爪の数が2つである点である。すなわち、二隅のみに押さえ爪を設けた点であり、そのほかの相違はない。
図3に示されるように、座金21の中央部にはねじが貫通するための取付孔22が開いており、取付孔22を同心円状に囲う円錐台状のねじ着座部である上向き突部23が形成されている。正方形形状の平板の隣り合う二隅には、それぞれ底面に向かって直角に均等の折り曲げ代で折り曲げられて突出するように押さえ爪24が形成されている。
【0036】
座金21の使用例について直接には図示していないが、図5および図6で示す四隅に押さえ爪24がある第1実施例の座金1と基本的に同様である。第2実施例の座金21では、各押さえ爪24は、隣り合う二隅に形成され、これらは、90度に互いにずれた方向に配置されているため、ねじ5(15)を介していかなる方向から垂直圧縮荷重を受けても段ボール6(16)に各エッジ24aから食い込んだそれぞれの押さえ爪24の段ボール6(16)との接面に分散することができる。
したがって、段ボール6(16)に伝達される垂直圧縮荷重はねじ5(15)からのみ集中することを防止して各押さえ爪24に分散されるので、被固定部材である押さえ材8(18)を段ボール6(16)に強固に固定することができる。
また、ねじ5(15)の締結が少々緩んでも、各押さえ爪24が段ボール6(16)に食い込んでいるため、ねじ5(15)の軸のみに荷重が集中することはない。
【0037】
また、抜け止め7(17)はねじ5(15)に貫通されて段ボール座金1と段ボール6(16)に挟まれて凹部29に収納されることも同様である。このため、ねじ5(15)と座金1と段ボール6(16)とを抜け止め7(17)を介して密着して固定することができる。
【0038】
なお、各押さえ爪24は、図3で示すように、隣り合う二隅に配置することが望ましい。各押さえ爪24を対角線上に配置すると、押さえ爪24、24の段ボールとの接面の方向が平行になるため、接面と平行方向の垂直圧縮荷重が働く場合、各押さえ爪24の厚さの面積でしか荷重を分散できない。この場合は、垂直圧縮荷重の働く方向に応じて座金の取付方向を決定する必要がある。
【0039】
(第3実施例、図4)
図4は、本発明の段ボール固定用座金の第3実施例を示している。図1で示すような四隅に押さえ爪4がある第1実施例や図3で示すような二隅に押さえ爪24がある第2実施例との相違は、押さえ爪の数が3つである点である。すなわち、座金の三隅のみに押さえ爪を設けた点であり、そのほかの相違はない。
図4に示されるように、座金31の中央部にはねじが貫通するための取付孔32が開いており、取付孔32を同心円状に囲う円錐台状のねじ着座部である上向き突部33が形成されている。正方形形状の平板の三隅には、それぞれ底面に向かって直角に均等の折り曲げ代で折り曲げられて突出するように押さえ爪34が形成されている。
【0040】
座金31の使用例については図示していないが、第2実施例同様、図5および図6で示す第1実施例と基本的には同様である。第3実施例の座金31では、各押さえ爪34は、三隅に形成され、各押さえ爪34は、90度ごとに互いにずれた方向に配置されているため、いかなる方向から垂直圧縮荷重を受けても段ボール6(16)に各エッジ34aから食い込んだそれぞれの押さえ爪34の段ボール6(16)との接面に分散することができる。
したがって、段ボール6(16)に伝達される垂直圧縮荷重はねじ5(15)からのみ集中することを防止して各押さえ爪34に分散されるので、被固定部材を段ボール6(16)に強固に固定することができる。第2実施例と比べると、押さえ爪が一つ多い分強固に固定することができる。また、ねじ5(15)の締結が少々緩んでも、各押さえ爪34が段ボールに食い込んでいるため、ねじ5(15)の軸のみに荷重が集中することはない。
【0041】
また、抜け止め7(17)はねじ5(15)に貫通されて座金1と段ボール6(16)に挟まれて凹部39に収納されることも、第1実施例および第2実施例と同様である。このため、ねじ5(15)と座金1と段ボール6(16)とを抜け止め7(17)を介して密着して固定することができる。
【0042】
図7は、本発明に係る取付構造の使用の一例を示す一部破断部分を有する斜視図であって、併せて、本発明に係るコンテナの実施形態の一例を示している。
コンテナ300は内容品(図示しない)が収納されるコンテナケース300の対向する2つの側板310、310が段ボールでできている輸送用コンテナである。このコンテナ300に内容品(図示しない)を輸送中あるいは荷役中に発生する外力などの衝撃があった際にコンテナ内部で内容品が動かないよう固定するために角柱形状の押さえ材320を段ボール製の側板310に掛け渡して固定されている。押さえ材320は木製であり、固定部材100により固定され、したがって、このコンテナ300は、取付構造150を用いて押さえ材320を取り付けている。すなわち、押さえ材320は、側板310にコンテナ300の外部側から座金1を介してねじ止めによりコンテナ300の内部側に固定されている。
【0043】
コンテナ300は、このような取付構造150を用いて押さえ材320を固定しているため、輸送中や荷役中にコンテナに衝撃が働いて内容品に起因する慣性力を受けても段ボール製の側板310を貫通する木ねじ5を介して側板310に伝達される垂直圧縮荷重を分散してねじの軸に集中しないよう低減することができる。したがって、コンテナに破壊されにくく強固に押さえ材を取り付けることができる。加えて、破壊耐力が高いと同時に内容品の安全な輸送ができる。
【0044】
また、押さえ材320は木製であるが、金属製または樹脂製であってもよい。押さえ材320がたとえば金属製の場合は、固定部材200により固定されることが好ましく、この場合は、このコンテナ300は、取付構造250を用いて押さえ材320を取り付けることになる。
【0045】
また、輸送用コンテナのコンテナケースは、押さえ材320の取り付け箇所が段ボールを用いているものであればよく、また、全部が段ボールからなっていてもよい。
【0046】
図8に、本発明に係る取付構造およびコンテナについて、その性能を実験により確認した実験結果を示す。
この実験は、図7で示す本発明のコンテナ300について押さえ材に対し荷重をかけ段ボールの垂直圧縮荷重の負荷試験を行ったものである。すなわち、木製の押さえ材320をコンテナケースの対向する2箇所の側面310,310に水平に固定部材100を用いて固定した。したがって、座金1は、実施例1で示した40mm角で10mmの折り返し長さをもつものを用いた。
【0047】
比較例として、20mm角で厚さが0.5mmであって押さえ爪のない従来品の座金に50mmの長さの軸部を持つねじと樹脂製の抜け止めを組み合わせたものを用いた。
このような状態で、押さえ材320の上側から垂直に2.5トン圧縮試験機で、段ボールに対する垂直圧縮荷重を0kgfから側板310の破壊が始まることが確認されるまで、徐々に荷重を増加した。
2回の実験結果について平均すると、従来品は145kgfの荷重で破壊が始まったが、本発明のコンテナ300については、488kgfであり、3倍以上の耐荷重の改善があることがわかった。
【符号の説明】
【0048】
1 固定用座金 2 取付孔 3 上向き突部 4 押さえ爪 4a エッジ
5 ねじ 6 段ボール 7 抜け止め 8 押さえ材 9 凹部
15 ドリルねじ 15a ドリル部 16 段ボール 17 抜け止め
21 固定用座金 22 取付孔 23 上向き突部 24 押さえ爪
24a エッジ 29 凹部
31 固定用座金 32 取付孔 33 上向き突部 34 押さえ爪
34a エッジ 39 凹部
100 固定部材 150 取付構造
200 固定部材 250 取付構造
300 コンテナ 310 側板 320 押さえ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部材をねじ止めにより段ボールに固定するために用いられる段ボール固定用座金であって、
前記段ボール固定用座金は、矩形形状の平板の少なくとも隣り合う二隅を座金底面側に折り曲げて突出するように形成した押さえ爪を有するとともに、前記平板の中央部にねじが着座したときに前記ねじの軸が貫通するための取付孔を有し、
前記押さえ爪は、前記ねじの軸が前記取付孔と前記段ボールとを貫通するようにして前記被固定部材をねじ止めにより前記段ボールに固定したときに前記段ボールに食い込んで、前記ねじを介して前記段ボールに伝達される垂直圧縮荷重を分散して低減することを特徴とする段ボール固定用座金。
【請求項2】
前記矩形形状は、正方形形状であり、
前記押さえ爪は、座金底面側にほぼ直角に折り曲げられて直角二等辺三角形の形状となるように突出していることを特徴とする請求項1に記載の段ボール固定用座金。
【請求項3】
前記直角二等辺三角形の等辺の長さは、前記正方形の一辺の長さの10分の3以上であることを特徴とする請求項2に記載の段ボール固定用座金。
【請求項4】
前記押さえ爪の深さは、前記段ボールの厚さより短いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の段ボール固定用座金。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の段ボール固定用座金とそれを貫通して着座するねじと抜け止めを有する段ボールの固定部材であって、
前記段ボール固定用座金は、前記取付孔の周囲に座金上面側に円錐台状に突出するねじ着座部を有することを特徴とする段ボールの固定部材。
【請求項6】
請求項5に記載の段ボールの固定部材は、さらに、前記ねじに貫通されて嵌まる抜け止めを有し、
前記ねじが前記段ボール用固定座金に着座して前記取付孔と前記抜け止めと前記段ボールとを貫通するように前記被固定部材をねじ止めにより前記段ボールに固定したときに、前記抜け止めは前記ねじ着座部の座金底面側に形成された凹部に収納されることを特徴とする段ボールの固定部材。
【請求項7】
コンテナケースの全部又は一部が段ボールからなる輸送用コンテナにおいて前記輸送用コンテナ内の内容品が前記輸送用コンテナ内で移動しないように拘束するための押さえ材を前記段ボールに固定するための取付構造であって、
請求項5又は請求項6に記載の固定部材により前記押さえ材が前記段ボールに固定されていることを特徴とする輸送用コンテナの押さえ材の取付構造。
【請求項8】
コンテナケースの全部又は一部が段ボールからなる輸送用コンテナであって、請求項7に記載の輸送用コンテナの押さえ材の取付構造を有することを特徴とする輸送用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112404(P2012−112404A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259737(P2010−259737)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り (博覧会名)2010東京国際包装展 (主催者)社団法人日本包装技術協会 (開催日)平成22年10月5日(火)〜8日(金)
【出願人】(000110332)王子インターパック株式会社 (17)
【出願人】(000181963)若井産業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】