説明

段ボール製緩衝保持部材

【課題】簡単に組み立て、解体ができ、それ自体で収納品を保持することができると共に、包装箱の変形を抑制することができ、曲面を持った商品でも容易に保持することが可能となる段ボール製緩衝保持部材を提供する。
【解決手段】1枚の段ボール製シートを折り曲げて組み立てる収納品の段ボール製緩衝保持部材であって、
前記1枚の段ボール製シートには、
四角形の底部と、
前記四角形の底部の四隅に、該四隅の角部に頂角が位置するように、横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てるための面部と、
前記四隅に組み立てられたそれぞれの柱部間を連結するための接続片と、
が形成されており、
前記四隅に柱部を組み立てて、これらの柱部間を前記接続片で連結した際に、前記横断面が三角形の中空の柱部における前記頂角と対向位置にある面部によって、前記収納品を保持することが可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール製緩衝保持部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、精密機器の包装には、流通過程における衝撃などから被包装物を保護するため、緩衝材が使われる。
近年の環境問題などの観点から、このような緩衝材はプラスチック系緩衝材からリサイクルが容易な段ボールによる緩衝材が数多く開発されるようになってきている。
この段ボール製緩衝保持部材は、プラスチック系緩衝材と同様の緩衝性を持たせるようにするためには、構造が複雑となる。
また、曲面などの形態を保持することは難しく、図5に示すように、四隅に空間ができるため包装箱が変形しやすいという問題があった。
従来、このような曲面を持った商品を保持できる緩衝材として、例えば、特許文献1における図6に示されるような構造の緩衝保持材が知られている。
この緩衝保持部材62は、段ボールよりなり、四角形の底部を構成する基板64と、基板64の各角部に切り起こされた保持片65を備えている。
使用に際しては、円筒形の商品を基板64上に載置し、商品の外側は切り起こされた保持片65で押さえて、包装ケース内に嵌め込まれる。
その際、保持片65の両側片610が包装ケースの内壁に当接することにより、外側に倒れることなく、商品を保持するように構成されている。
また、特許文献2における図7に示されるような構造の緩衝保持体も知られている。
この緩衝保持体は、底板79の対面する2辺に直立した側板710を備え、この側板を内方に折曲げた両端部712上下にはコーナー当て板713が形成され、コーナー当て板を包装箱に当接させて収納品を固定するように構成されている。
【特許文献1】特開平6−345140号公報(第5頁、図4)
【特許文献2】特開平8−192834号公報(第6頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の段ボール製緩衝保持部材等においては、曲面を持った収納品を保持するためには、複雑な構造となり、組み立てや解体に手間がかかるものが多くみられた。

また、上記した特許文献1や特許文献2のような緩衝保持部材では、包装箱内に嵌め込まれ状態において、外側から包装箱に支持されることにより保持片が外側に倒れることを防止し、収納品の保持状態が保たれるようにされている。
したがって、包装箱が変形したり、あるいは収納品の収納状態によっては保持片等による固定を十分に機能させることができない場合が生じる。
また、このような緩衝保持部材では、角部に空間が生じてしまうことから、緩衝保持部材を包装箱の変形防止等の強度の向上に寄与させることができないこととなる。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、簡単に組み立て、解体ができ、それ自体で収納品を保持することができると共に、包装箱の変形を抑制することができ、曲面を持った商品でも容易に保持することが可能となる段ボール製緩衝保持部材の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、つぎのように構成した段ボール製緩衝保持部材を提供するものである。
本発明の段ボール製緩衝保持部材は、1枚の段ボール製シートを折り曲げて組み立てる収納品の段ボール製緩衝保持部材であって、
前記1枚の段ボール製シートには、
四角形の底部と、
前記四角形の底部の四隅に、該四隅の角部に頂角が位置するように、横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てるための面部と、
前記四隅に組み立てられたそれぞれの柱部間を連結するための接続片と、
が形成されており、
前記四隅に柱部を組み立てて、これらの柱部間を前記接続片で連結した際に、前記横断面が三角形の中空の柱部における前記頂角と対向位置にある面部によって、前記収納品を保持することが可能に構成されていることを特徴とする。
また、本発明の段ボール製緩衝保持部材は、前記横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てるための面部が、
前記四角形の底部のそれぞれの外側辺に折り曲げ線を介して連接された前記収納品と当接して保持する第1の面部と、
前記第1の面部の両側における一方の側に折り曲げ線を介して連接された第2の面部と、他方の側に折り曲げ線を介して連接された第3の面部とを、それぞれ備える一方、
前記接続片は、前記四隅に柱部を組み立てるためのそれぞれの面部に連接された接続片により形成され、これらの接続片により隣りの柱部と連結することが可能に構成されていることを特徴とする。
本発明の段ボール製緩衝保持部材は、前記横断面が三角形の中空の柱部が、前記第1の面部を挟んで両側の第2の面部および第3の面部により逆“の”の字型の形状で、前記接続片により隣りの柱部と連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡単に組み立て、解体ができ、それ自体で収納品を保持することができると共に、包装箱の変形を抑制することができ、曲面を持った商品でも容易に保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明においては、上記したように、1枚の段ボール製シートを折り曲げて組み立てる収納品の段ボール製緩衝保持部材が、前記四角形の底部の四隅に、該四隅の角部に頂角が位置するように、横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てるように構成される。
そして、前記四隅に柱部を組み立てて、これらの柱部間を前記接続片で連結した際に、前記横断面が三角形の中空の柱部における前記頂角と対向位置にある面部によって、前記収納品を保持することが可能に構成されている。
これにより、接着工程など不要で簡単に組み立て、解体ができ、それぞれの横断面が三角形の中空の柱部は、接続片で連結されているため、この段ボール製緩衝保持部材自体によって、収納品を保持が可能となる。すなわち、包装箱に収納して外側から包装箱に支持されることなく、それ自体で収納品を保持が可能となる。

また、接続片によって横断面が三角形の中空の柱部が連結されているから、強度が向上した構造となり、包装箱に収納された状態では、包装箱の強度を補完することができ、角部への衝撃に対しても包装箱が潰れることを防ぐことが可能となる。
【実施例】
【0008】
実施例において、本発明を適用した段ボール製緩衝保持部材の構成例について説明する。
図1に、本実施例における構成例を説明する段ボール製緩衝保持部材の展開図を示す。
図1において、1、2、3、4は柱部であり、1a、2a、3a、4aは柱部の収納物と接する面部、1b、2b、3b、4bは柱部の内側になる面部、1c、2c、3c、4cは柱部の外側になる面部である。
1d、2d、3d、4dは引っ掛け部を有する接続片、11a、21a、31a、41aは切り欠き部、11b、21b、31b、41bは引っ掛け部である。12c、23c、34c、41cは切り込み線、5aは底部、101は段ボール製緩衝保持部材である。
なお、図1の説明においては、「上」、「下」、「左」、「右」とは、この図に示された向きでの上下左右に対応する状態を指している。
【0009】
本実施例の段ボール製緩衝保持部材101は、1枚の段ボール製シートにより形成される。
前記1枚の段ボール製シートには、四角形の底部と、前記四角形の底部の四隅に、該四隅の角部に頂角が位置するように、横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てるための面部と、前記四隅に組み立てられたそれぞれの柱部間を連結するための接続片と、が形成されている。
前記横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てるための面部は、
前記四角形の底部のそれぞれの外側辺に折り曲げ線を介して連接された前記収納品と当接して保持する第1の面部と、
前記第1の面部の両側における一方の側に折り曲げ線を介して連接された第2の面部を、他方の側に折り曲げ線を介して連接された第3の面部を、それぞれ備える。
具体的には、図1の展開図に示されるように、段ボール製緩衝保持部材101は、四角形の底部5aと、これに折り曲げ線を介して、上記四角形の底部5aの上下左右のそれぞれの外側辺に連なる4つの柱部1、2、3、4を形成するための面部を備えている。
なお、図1において、折り曲げ線は一点鎖線で示されており、他の折り曲げ線も同様に一点鎖線で示されている。
また、上記上下左右の柱部の連接部分には、45度の切り込み線12c、23c、34c、41cが形成されている。
柱部1は、組み立てた時に内側になる面部1a(第1の面部)と、その左右に折り曲げ線を介して連接された面部1b(第2の面部)、面部1c(第3の面部)とを備える。
そして、これらの面部は後に説明するように、折り曲げて横断面が三角形の中空の柱部1を組み立てる際に用いられる。
また、面部1aと面部1cの連接線上部には、切り欠き部11aが形成されている。
さらに、面部1cの面部1aと反対側の端部には折り曲げ線を介して接続片1dが連接され、この接続片1dには引っ掛け部11bが形成されている。
【0010】
同様に柱部2は、組み立てた時に内側になる面部2aと、その上下に折り曲げ線を介して連接された面部2b、面部2cとを備える。
そして、これらの面部は後に説明するように、折り曲げて横断面が三角形の中空の柱部2を組み立てる際に用いられる。
また、面部2aと面部2cの連接線左部には、切り欠き部21aが形成されている。
さらに、面部2cの面部2aと反対側の端部には折り曲げ線を介して接続片2dが連接され、この接続片2dには引っ掛け部21bが形成されている。
【0011】
同様に柱部3は、組み立てた時に内側になる面部3aと、その左右にその上下に折り曲げ線を介して連接された面部3b、面部3cとを備える。
そして、これらの面部は後に説明するように、折り曲げて横断面が三角形の中空の柱部3を組み立てる際に用いられる。
また、面部3aと面部3cの連接線下部には、切り欠き部31aが形成されている。
さらに、面部3cの面部3aと反対側の端部には折り曲げ線を介して接続片3dと連接され、この接続片3dには引っ掛け部31bが形成されている。
【0012】
同様に柱部4は、組み立てた時に内側になる面部4aと、その上下に面部4b、面部4cとを備える。
そして、これらの面部は後に説明するように、折り曲げて横断面が三角形の中空の柱部4を組み立てる際に用いられる。
また、面部4aと面部4cの連接線右部には、切り欠き部41aが形成されている。
さらに、面部4cの面部4aと反対側の端部には折り曲げ線を介して接続片4dと連接され、この接続片4dには引っ掛け部41bが形成されている。
【0013】
図2により、本実施例の段ボール製緩衝保持部材において、上記した横断面が三角形の中空の柱部を、四角形の底部の四隅に直立状に組み立てる具体的手順について説明する。
段ボール製緩衝保持部材101を組み立てる際には、まず、四角形の底部5aの各辺に連接する面部1a、2a、3a、4aを底部5aに対して谷折りに垂直となるように折り曲げる。
次に、面部1a〜1cと接続片1d、面部2a〜2cと接続片2d、面部3a〜3cと接続片3d、面部4a〜4cと接続片4dを、それぞれの曲げ線を介して山折りに曲げ、面部1a〜4aが内側になるように組み立てて横断面が三角形の中空の柱部を形成する。
さらに、引っ掛け部11b、21b、31b、41bを、切り欠き部21a、31a、41a、11aにそれぞれ差し込むことにより、上記四角形の底部の四隅に横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てられる。
これにより、四角形の底部の四隅に横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てられた段ボール製緩衝保持部材が形成される。
このとき、上記横断面が三角形の中空の柱部1〜4は、前記第1の面部を挟んで両側の第2の面部および第3の面部により逆“の”の字型の形状で、前記接続片により隣りの柱部と連結されるように構成される。
また、解体の際には、これらの連結を解除することにより、簡単に段ボール紙の状態に戻すことができる。
【0014】
図3、図4により、本実施例の上記した四角形の底部の四隅に横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てられた段ボール製緩衝保持部材を用い、曲面を持った収納品を保持する方法を説明する。
上記した接続片は、前記四隅に柱部を組み立てるためのそれぞれの面部に連接された接続片により形成され、これらの接続片により隣りの柱部と連結することが可能に構成されている。
具体的には、図3に示されるように、接続片1dは、面部1b、面部1a、面部1cと連接しており、段ボール製緩衝保持部材101を組み立てる際に、接続片1dにある引っ掛け部11bを、隣りの横断面が三角形の中空の柱部の切り欠き部21aと連結する。
この際に、組み立てられた段ボール製緩衝保持部材101の面部1a〜面部4aは、図4の様に曲面を持った収納物201と当接して保持を行なう。
【0015】
このとき、引っ掛け部を有する接続片1d〜接続片4dの引張力で収納物201を固定し、さらに、面部1b〜面部4bが固定されていないことから、山折りした状態から広がろうとする力が生じ、収納物201を中心の位置に維持しようとする力が発生する。
このように、底部の四隅に直立状に組み立てられた横断面が三角形の中空の柱部は、それぞれの隣りの柱部と連結されている接続片の引張力により、曲面を持った収納物においても上記した面部1a〜面部4aによって安定して保持することができる。
また、この段ボール製緩衝保持部材101の上記底部の四隅における柱部は、横断面が三角形の閉じた形状で中空に形成された柱部が、上記したように接続片によってそれぞれの隣りの柱部が連結されているから、強度が向上した構造とすることができる。
そのため、本実施例のこのような強度が向上した段ボール製緩衝保持部材101で収納物201を保持して包装箱に収納した際、包装箱の強度を補完することができ、角部への衝撃に対しても包装箱が潰れることを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例における構成例を説明する段ボール製緩衝保持部材の展開図である。
【図2】本発明の実施例における段ボール製緩衝保持部材の組み立て図である。
【図3】本発明の実施例における段ボール製緩衝保持部材に曲面を持った収納品を入れて接続片により三角形の柱と連結する状態を示す図である。
【図4】本発明の実施例における段ボール製緩衝保持部材に曲面を持った収納品を保持の状態を示す図である。
【図5】従来の段ボール製緩衝保持部材の収納状態と変形した状態を示す図である。
【図6】従来例である特許文献1における包装装置の構成を説明する図である。
【図7】従来例である特許文献2における包装装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0017】
1、2、3、4:柱部
1a、2a、3a、4a:柱部の収納物と接する面部
1b、2b、3b、4b:柱部の内側になる面部
1c、2c、3c、4c:柱部の外側になる面部
1d、2d、3d、4d:引っ掛け部を有する接続片
11a、21a、31a、41a:切り欠き部
11b、21b、31b、41b:引っ掛け部
12c、23c、34c、41c:切り込み線
5a:底部
101:段ボール製緩衝保持部材
201:曲面を持った収納物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の段ボール製シートを折り曲げて組み立てる収納品の段ボール製緩衝保持部材であって、
前記1枚の段ボール製シートには、
四角形の底部と、
前記四角形の底部の四隅に、該四隅の角部に頂角が位置するように、横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てるための面部と、
前記四隅に組み立てられたそれぞれの柱部間を連結するための接続片と、
が形成されており、
前記四隅に柱部を組み立てて、これらの柱部間を前記接続片で連結した際に、前記横断面が三角形の中空の柱部における前記頂角と対向位置にある面部によって、前記収納品を保持することが可能に構成されていることを特徴とする段ボール製緩衝保持部材。
【請求項2】
前記横断面が三角形の中空の柱部を直立状に組み立てるための面部は、
前記四角形の底部のそれぞれの外側辺に折り曲げ線を介して連接された前記収納品と当接して保持する第1の面部と、
前記第1の面部の両側における一方の側に折り曲げ線を介して連接された第2の面部と、他方の側に折り曲げ線を介して連接された第3の面部とを、それぞれ備える一方、
前記接続片は、前記四隅に柱部を組み立てるためのそれぞれの面部に連接された接続片により形成され、これらの接続片により隣りの柱部と連結することが可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の段ボール製緩衝保持部材。
【請求項3】
前記横断面が三角形の中空の柱部は、前記第1の面部を挟んで両側の第2の面部および第3の面部により逆“の”の字型の形状で、前記接続片により隣りの柱部と連結されていることを特徴とする請求項2に記載の段ボール製緩衝保持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−105716(P2010−105716A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281323(P2008−281323)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】