説明

段差調整材並びにその段差調整材を使用した床材の施工方法

【目的】本発明は、既存の建物床面に手を加えることなく、畳部屋を板敷き・フローリング・カーペット床等に変更する場合、あるいはその逆等に変更する場合に使用する部材を提供するものであり、かかる各種床への変更工事に際して、簡易かつ安価に床の変更敷設でき、しかも、段差を生じることのない安全な床の敷設を可能とする段差調整材を提供することを目的とする。
【解決手段】畳、畳表、板材、フローリング、カーペット等の床材を施工する場合に使用される構造物であって、平面視において所定形状に成形された外形寸法を有し、前記床材の下に段差調整用として敷設される段差調整材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物本体に手を加えることなく、簡便に床の段差を調整する機能を提供する段差調整材並びに該段差調整材を使用した床材の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の間取り、特に和洋室の区別は、新築の時点で、すでに決められている。木造建物については、根太の上に板を張り荒床としている。畳部屋だと荒床の上に畳を敷き並べる。板敷き部屋あるいは板敷きの廊下だと、荒床の上に、間隔をおいて横木をあてがい、横木の上に板を張る。一方、マンション・アパート等のコンクリート建物については、コンクリート床に直接、畳を敷き畳部屋とすることもあるが、コンクリート床の上に荒床を作り、その上に畳を敷き並べて畳部屋としている。荒床にフローリングを貼れば、廊下・板の間・洋間となる。カーペットを敷く場合は、畳またはフローリングの上に敷くこととなる。したがって、いったん建物が建てられてしまうと、和室と洋室との間で相互に変更することは極めて困難であり、特に荒床の張替えには高額な費用を要してしまうといった問題がある。また、設計や施工の段階において、寸法上の誤差が生じた場合には、建築請負人が施工現場で板材を加工して調整したり、畳職人に特注品を作らせるなどして対応しているという問題も少なからず存在する。
【0003】
そこで、従来からも種々の技術が提案されている。例えば、建築物のスラブ上面に、複数の床ユニットを敷設し、蓋パネルを係止させて配設することにより床下地を構築し、その上面にフローリング材を敷設して洋室用の床を構成する技術が提案されている(特許文献1参照)。これは、洋室の一部を和室に変更する際に、床ユニットのパネル部の上部に、高さ調整部材を取り付けて蓋パネルが係止可能な上方段部を形成し、上面高さの高い床下地を構成するものであり、高さの低い床下地に厚さの厚い畳を敷設し、高さの高い床下地に厚さの薄いフローリング材を敷設し、それぞれの上面を面一とする技術である。しかし、該技術は複数の床ユニットが大掛かりなものとなるため、コストが高くなり、また、簡易性にも欠け、既存の建築物に利用することもできない。また、厚い床仕上げ材たる畳が施工される和室と薄い床仕上げ材たるフローリングが施工される洋室とが混在していても、土台材や根太の特別な加工を要することなく、簡単に大引きの高さ位置を変更してバリヤフリー住宅を容易に実現する技術もある(特許文献2参照)しかし、該技術は建築段階において、和室と洋室のバリアフリー化を容易にするものであり、建築後に用意に和洋室間の変更を容易にするものではない。したがって、いずれの技術も、前記の問題を解決するには至っていない。
【0004】
【特許文献1】特開2000−154632号公報
【特許文献2】特開平11−36499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、畳敷き、板敷き、フローリング床、カーペット床、畳表等相互間の変更を容易にし、かつ、段差を生じない床材の敷設を可能とする段差調整材並びにその段差調整材を使用した床材の施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、畳、畳表、板材、、カーペット等の床材を施工する場合に使用される構造物であって、平面視において所定形状に成形された外形寸法を有し、前記床材の下に段差調整用として敷設される段差調整材である。
【0007】
また、本発明は、前記段差調整材において、端辺の所定箇所に少なくとも1以上の接合部材を備えている構成の段差調整材である。
【0008】
そしてまた、本発明は、前記段差調整材を使用した床材の施工方法であって、床材を施工する際に、該床材の下部に段差調整材を敷設し、該段差調整材の上面に床材を敷設する施工方法である。
【0009】
さらに、本発明は、前記段差調整材を使用した床材の施工方法において、段差調整材と床材とが、所定の接合手段により接合されている施工方法を採用することができる。
【0010】
またさらに、本発明は、前記段差調整材を使用した床材の施工方法において、段差調整材と該段差調整材が敷設される床面とが、所定の接合手段により接合されている施工方法とすることもできる。
【0011】
さらにまた、本発明は、前記段差調整材を使用した床材の施工方法において、段差調整材と床材との間に、緩衝材が介されている施工方法を採ることも可能である。
【0012】
そしてまた、本発明は、前記段差調整材を使用した床材の施工方法において、段差調整材と該段差調整材が敷設される床面との間に、緩衝材が介されている施工方法を採用することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる段差調整材並びに該段差調整材を使用した床材の施工方法によれば、既存の建物床面に手を加えることなく、畳部屋を板敷き・フローリング15・カーペット床等に簡便に変更することができ、またその逆の変更も可能である。特に、始めから和室にも洋室にも施工可能な床面においては、床面そのものに手を加えることなく、和室にも洋室にもできるという有利な効果を発揮する。
【0014】
また、本発明にかかる段差調整材並びに該段差調整材を使用した床材の施工方法によれば、既存の建物床面に追加の工事を不要とするほか、木造の新築建物については荒床、マンション・アパート等については、コンクリート床のみで、建物本体にその他の工事をすることなく、段差調整材を床面に敷き、その上に、畳または畳表および板材、フローリング、カーペット等の床材を施工できるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、畳、畳表、板材、カーペット等といった床材を敷く場合に、敷居11との段差または他の部屋の床面10との段差を解消するために、該床材と既存の建物床面10との間に段差調整用としての下敷部材を敷くことを最大の特徴とする。以下、この発明の段差調整材1の実施形態の一部を図面を参照しつつ、具体的に説明する。
【0016】
図1は、パネル状にした段差調整材1を示す説明斜視図である。該段差調整材1の形状は、パネルあるいは箱型の構造物であれば良く、材質については、木材、木質系繊維板、ゴム、プラスチック系、金属、木質系とプラスチック系との成層板、金属板とプラスチック板の構造体などが考えられるほか、形状・サイズについても様々な様態が考えられる。また、付加機能としては、床面10との滑り止め防止の溝2が施されたものや、軽量化を図るために多くの穴7が施されたもの、床面10あるいは段差調整材1の上に乗せるフローリング15等、または他の段差調整材1に対する接合部材5を備えたものなどが考えられる。図面にはパネルの上面および下面に、滑り止め防止の交差状の溝2を施してある。溝2はパネルの側面にも施すことができ、下面のみでも良い、更には交差状でも良く、ストライプ状でも構わない。基本的には段差調整の働きをすれば、意匠が全く施されないパネルでも良い訳で、正方形でも、長方形でも、台形でも、三角形でも良い。施工方法としては、床面10に段差調整材1を敷き詰め、その上に畳9または畳表16、板材、カーペット等を乗せて敷く訳であるが、段差調整材1の上に乗せるものが軽いもの、あるいは皺ができるものなどについては、固定するために接着剤、両面テープ、ベルクロファスナーなど、最適な接合手段を講じて施工する。
【0017】
図2は、三層構造のパネル状の段差調整材1を示す説明斜視図である。四辺のうち二辺に、それぞれ2つの突起物3を、残る二辺にそれぞれ突起物を受ける凹部4を備えている。突起物3の機能は、床面10に段差調整材1を敷き並べた場合に、隣り合う他の段差調整材1との接合固定目的のものである。一辺に突起物3と突起物を受ける凹部4、両方を備えたものも考えられ、一辺における突起物3および突起物を受ける凹部4の数は複数でも良い。三層構造については、上下面に柔軟性の素材、中面に硬質性の素材としている。突起物3は、柔軟性の素材である上面に備わっているため、他の段差調整材1との脱着が容易である。なお、柔軟性素材と硬質性素材の二層構造とすることもでき、突起物3の形状は、脱着が可能であるなら様々な形状とすることができる。
【0018】
図3は、図2の三層構造のパネル状段差調整材1を敷き並べた状態を示す平面図である。四辺のうち二辺に備わっている接合固定目的の突起物3が隣接する他の段差調整材1の凹部に接合固定される。
【0019】
図4は、パネル状の段差調整材1の接合方法を示す説明斜視図である。パネル上面には、等間隔に接着部材5が備わっている。なお、接着部材5としては、粘着テープあるいはベルクロファスナー等が考えられる。
【0020】
図5は、細長板6を用いて箱型に作った段差調整材1の構造を示す斜視図である。特徴としては、機能のみを追求した軽量の構造体である。上面にのみ一面に板が張ってあり、等間隔でストライプ状に接着部材5が備わっている。また、隣り合う他の段差調整材1との接合固定目的のためのフックをかける穴7が四方に開いている。なお、細長板6の材質としては、金属・プラスチック等が考えられ、上面の板材としては、木質系の繊維板などが考えられる。
【0021】
図6は、畳表16を敷くための段差調整材1の断面図である。畳縁布が備わっている畳表16の場合には、畳表16の四辺のうち長辺二辺に畳縁布が縫い付けてあるため厚みがある。そのため、上面が平らな段差調整材1を使用して施工した場合、畳縁布部分が盛り上がってしまう。その盛り上がりを解消するために、段差調整材1の上面に等間隔の溝2をストライプ状に設け、その溝2に簡単に取り外し可能な板8を埋めている。畳表16を段差調整材1に施工する場合に、畳縁布部分が接する部分の取り外し可能な板8を外す訳である。また、溝2の部分に接着テープを貼れば、畳縁布部分が段差調整材1に固定される。
【0022】
次に、上記本発明にかかる段差調整材1を使用した床材の施工方法に関する実施例について説明する。
【0023】
図7は、段差調整材1を使用して畳9を敷いた場合を示す断面図である。旧来タイプの厚手の畳9(厚いものでは6センチメートルほどになる)を撤去した後、軽量タイプの薄い畳9(例えば厚さ1センチメートルのものなど)を敷いたものである。床面10(和室では荒床という)に薄い畳9を直接敷いたのでは、畳9上面と敷居11上面に段差が生じる。その段差を解消するために床面10に段差調整材1を敷き、その上に薄い畳9を敷いてある。
【0024】
なお、図面では、床面10に隙間なく段差調整材1を敷き詰めてその上に畳9を敷設した場合について示しているが、かかる施工方法に限定するものではなく、隣り合う段差調整材1間に所定間隔隙間を設けつつ床面10に該段差調整材1を敷きその上に畳9等の床材を敷設する施工方法も考えられる。
【0025】
段差調整材1の働きにより畳9上面と敷居11上面の高さが、ほぼ均等になる訳である。厚さ6センチメートルの畳9を撤去し、1センチメートルのものに敷き替える場合には、厚さ5センチメートルの段差調整材1を使うことになる。なお、段差調整材1の上には、軽量タイプの薄い畳9に代えて、畳表16、板材、カーペット等を、直接敷くことも可能である。
【0026】
図8は、方形の段差調整材1を床面10の上に隙間なく敷き並べた上に、軽量タイプの薄い畳9を敷いたもので、その透過平面図である。段差調整材1には上面に接合部材5が備わっており畳9下面と接合固定される。なお、段差調整材1は方形に限定されない。長方形のものもあれば、部屋の形に応じて様々な形とすることができ、サイズも多種類である。また、厚さについても段差調整材1の上に敷かれるものが、敷居11あるいは他の部屋の床面10とほぼ均等の高さになるよう決定される。接合部材5については、両面テープ、ベルクロファスナー、接着剤などが考えられるほか、接合箇所は段差調整材1の要所要所でも良く、全面でも良い。
【0027】
図9は、敷居11を挟んだA室とB室の施工例で、その斜視図である。建物の床面10構造が始めから和室にも洋室にもできるように、均一の高さとなっている。A室はの施工例で、床面10の上に段差調整材1が敷かれ、その上に硬質の緩衝材13が乗っている、そして緩衝材13の上にはフローリング15が貼られている。一方、B室は畳表16の施工例で、床面10の上に段差調整材1が敷かれ、その上に軟質の緩衝材14が乗っている。畳9の感触を与えるために軟質の緩衝材14としている。そして緩衝材14の上には畳表16が張られている。なお、A室B室とも施工については、段差調整材1および他の部材等について、床面10をも含めて隣接する他の部材に対して、使用に支障がないよう、適宜、最適の接合手段で固定することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】パネル状にした段差調整材1を示す説明斜視図である。
【図2】接合用突起物3を備えた三層構造のパネル状の段差調整材1を示す説明斜視図である。
【図3】三層構造のパネル状段差調整材1を敷き並べた状態を示す平面図である。
【図4】パネル状の段差調整材の接合方法を示す説明斜視図である。
【図5】細長板を用いて箱型に作った段差調整材の構造を示す斜視図である。
【図6】畳表を敷くための段差調整材の断面図である。
【図7】段差調整材を使用して畳を敷いた場合の断面図である。
【図8】段差調整材を使用して畳を敷いた場合の平面図である。
【図9】段差調整材を使用して畳およびを敷いた場合の断面斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 段差調整材
2 溝
3 突起物
4 突起物を受ける凹部
5 接着部材
6 細長板
7 穴
8 取り外し可能な板
9 畳
10 床面
11 敷居
12 壁面
13 緩衝材(硬質)
14 緩衝材(軟質)
15 フローリング
16 畳表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳、畳表、板材、フローリング、カーペット等の床材を施工する場合に使用される段差調整材であって、平面視において所定形状に成形された外形寸法を有し、前記床材の下に段差調整用として敷設されることを特徴とする段差調整材。
【請求項2】
前記段差調整材において、端辺の所定箇所に少なくとも1以上の接合部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の段差調整材。
【請求項3】
床材を施工する際に、該床材の下部に段差調整材を敷設し、該段差調整材の上面に床材を敷設することを特徴とする段差調整材を使用した床材の施工方法。
【請求項4】
前記段差調整材を使用した床材の施工方法において、段差調整材と床材とが、所定の接合手段により接合されていることを特徴とする請求項3に記載の段差調整材を使用した床材の施工方法。
【請求項5】
前記段差調整材を使用した床材の施工方法において、段差調整材と該段差調整材が敷設される床面とが、所定の接合手段により接合されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の段差調整材を使用した床材の施工方法。
【請求項6】
前記段差調整材を使用した床材の施工方法において、段差調整材と床材との間に、緩衝材が介されていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の段差調整材を使用した床材の施工方法。
【請求項7】
前記段差調整材を使用した床材の施工方法において、段差調整材と該段差調整材が敷設される床面との間に、緩衝材が介されていることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の段差調整材を使用した床材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−169674(P2008−169674A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6398(P2007−6398)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(506418105)
【Fターム(参考)】