説明

殺真菌混合物

プロクロラズおよびテブコナゾールを含む相乗的に有効な混合物ならびにそれらをベースとする殺真菌組成物は、生物学的有害生物による攻撃、損傷および/または破壊から、産業材料、特に木材および木材製品を保護するために非常に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロクロラズおよびテブコナゾールを含む新規の相乗的に有効な混合物、これらの混合物をベースとする殺真菌組成物、ならびに生物学的有害生物による攻撃、損傷および/または破壊から、産業材料、特に木材および木材製品を保護するためのこれらの混合物および組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
原則として、当業者は、担子菌によるまたは(高湿度または土壌接触の環境へ木材が暴露される場合は)軟腐菌による木材の構造的破壊と、木材変色菌による木材の視覚的損傷とを区別する。
【0003】
例えば、テブコナゾール((特許文献1)を参照)およびシプロコナゾール((特許文献2)を参照)等のトリアゾール類は、木材破壊担子菌からの木材の保護における使用について既に知られており、そして実験室試験におけるそれらの活性は大変有望である。しかし、実際には、それらは、木材の十分な保護を常に確実にするわけではなく、その結果、実際の適用においては、これらの活性化合物は、金属または金属塩、特に銅塩と組み合わされなければならない。したがって、実際には、トリアゾ殺真菌剤(triazofungicides)は、例えば、銅化合物等の重金属を含む化合物と組み合わされることが多い。
【0004】
しかし、生態学的観点から、重金属を含む木材保護用組成物の使用は、好ましくないと考えられる。したがって、重金属が添加されることなく木材の十分な保護を与える活性化合物をベースとする、改善された木材保護用組成物が依然として求められている。
【0005】
活性化合物プロクロラズ(N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロフェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド)(CAS番号67747−09−5)は、比較的広い活性スペクトルを有する公知の作物保護殺真菌剤である。
【0006】
子嚢菌および不完全菌に対するプロクロラズの作用のために、木材変色菌からの保護にプロクロラズを使用することが、時々(例えば、(特許文献3)を参照のこと)提案された。しかし、実際上、このような有効性は確認されていない。対照的に、プロクロラズが青変菌に対して不十分に活性であることは知られている((非特許文献1)を参照のこと)。
【0007】
さらに、プロクロラズおよびトリ−nブチリン化合物の混合物が、微生物による攻撃から木材および産業材料を保護するために好適であることが記載された((特許文献4)を参照のこと)。さらに、プロクロラズは、木材変色菌からの保護のために、NOIT(2−N−オクチル−3−イソチアゾリノン)と組み合わせて使用され得ることが知られている((特許文献5)を参照のこと)。いずれの場合も、木材の保護におけるプロクロラズの記載される不十分な活性に基づいて、特許請求される作用はそれぞれの混合パートナーに本質的に起因することが、予想されなければならない。
【0008】
プロクロラズは、上述の刊行物において、材料の保護における使用のための種々の活性化合物についての可能性のある混合パートナーとして言及されているが、実際には、記載されるプロクロラズの不十分な作用および/または混合パートナーの好ましくない毒性学的および生態毒性学的特性に起因して、これらの混合物はいかなる役割も果たさないことが、述べられなければならない。
【特許文献1】EP−A 254857
【特許文献2】EP−A 554833
【特許文献3】EP−A 1025967
【特許文献4】DE−A 3522788
【特許文献5】NZ−A 331830
【非特許文献1】J.A.Drysdale et al.,New Zealand Journal of Forestry Science 1982,12(3),457−466
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外なことに、単独では不十分な活性を有するプロクロラズと、テブコナゾールとの組合せが、木材破壊担子菌および軟腐菌の両方に対して相乗的に作用すること、即ち、該相乗混合物の殺真菌効果は、予想外にも、それら単独でのそれぞれの殺真菌剤の殺真菌活性の合計よりも高いことが見出された。
【0010】
相乗的に増強された活性は、本発明に従う木材保護組成物中で使用される殺真菌剤の量がより少ないことに起因して、経済的な利点が得られるだけでなく、環境に対する安全性リスクもまた減少されるという、追加の利点を有する。
【0011】
したがって、本発明は、相乗的に有効な量のプロクロラズおよびテブコナゾールを含む殺真菌混合物を提供する。
【0012】
活性化合物混合物中の活性化合物の重量比は、比較的広い範囲内で変化され得る。好ましいのは、1:99〜99:1、特に好ましくは1:20〜20:1の範囲内のテブコナゾールのプロクロラズに対する重量比である。
【0013】
特に好ましいのは、9:1〜1:9の重量比でプロクロラズおよびテブコナゾールを含む活性化合物混合物である。
【0014】
特許請求される相乗混合物は、生物学的有害生物を防除するために好適である。特に、本発明に従う混合物は、材料の保護に関連する微生物に対する広い活性スペクトルと組み合わされた、特に高い殺生物性(特に、殺真菌性)作用を有する。それらは、特に、木材破壊担子菌および軟腐菌に対して活性である。
【0015】
下記の微生物が、限定ではなく、例として挙げられ得る。
【0016】
ケトミウム・グラボサム(Chaetomium globosum)、グレノスポラ・グラフィ(Glenospora graphii)、フミコラ・ギセア(Humicola gisea)、ペトリエラ・セティフェラ(Petriella setifera)、トリクラス・スピラリス(Trichurus spiralis)およびレシトホラ・ムタビリス(Lecythophora mutabilis)、ならびにまたトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、スタキボトリス・カルタラム(Stachybotrys cartarum)、セファロスポリウム種(Chephalosporium sp.)およびアクレモニウム種(Acremonium sp.)。
【0017】
コニオホラ・プテアナ(Coniophora puteana)、コリオラス・ベルシカラー(Coriolus versicolor)、グロエオフィルム・アビエチナム(Gloeophyllum abietinum)、グロエオフィルム・トラベウム(Gloeophyllum trabeum)、レンティヌス・チグリナス(Lentinus tigrinus)、ポリア・モンチコラ(Poria monticola)、ポリア・プラセンタ(Poria placenta)、セルプラ・ラクリマンス(Serpula lacrymans)、ステレウム・サンギノレンタム(Stereum sanguinolentum)、チロミセス・パルストリス(Tyromyces palustris)。
【0018】
木材破壊担子菌および軟腐菌に加えて、木材の保護において、木材変色菌および害虫も、役割を果たす。軟腐菌に加えて、例えば、カルドセルロシルプトル種(Caldocellulosiruptor sp.)、アナエロセルラム種(Anaerocellum sp.)、クロストリジウム種(Clostridium species)、例えば、クロストリジウム・セルロボランス(Clostridium cellulovorans)、クロストリジウム・アルドリチイ(Clostridium aldrichii)、セルロモナス種(Cellulomonas species)、ストレプトマイセス(Streptomycetes)、ミクロモノスポラ種(Micromonospora sp.)、サーモノスポラ種(Thermomonospora sp.)、ミクロビスポラ種(Microbispora sp.)ならびにサイトファーガおよびスポロサイトファーガ種(Cytophaga und Sporocytophaga species)等の細菌もまた、湿潤条件下でのセルロースの分解に決定的に寄与し得る。
【0019】
活性スペクトルを広げるかまたは特定の効果を得るために、本発明に従う相乗混合物は、少なくとも1つの追加の殺微生物活性化合物と組合され得る。特に、相乗混合物は、殺真菌剤、特に、青変菌殺真菌剤(blueing fungicides)、殺虫剤および抗細菌活性化合物の群からの少なくとも1つの追加の活性化合物を含んでもよい。
【0020】
好ましいのは、特に、本発明に従う混合物と以下の殺真菌成分の1つ以上との組合せである:ジクロフルアニド、トリルフルアニド、カルベンダジム、フェンプロピモルフ、ベソキサジン、チオシアナト−メチルチオベンゾチアゾール、3−ヨード−2−プロピニルn−ブチルカルバメート、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、N−(3−アミノプロピル)−N−ドデシルプロパン−1,3−ジアミン。
【0021】
特に好ましいのは、本発明に従う混合物と以下の殺真菌成分の1つ以上との組合せである:ジクロフルアニド、トリルフルアニド、ベソキサジン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、亜鉛ピリチオンおよび銅ピリチオン。
【0022】
好ましいのは、同様に、本発明に従う混合物と以下の殺虫成分および殺シロアリ成分の1つ以上との組合せである。
【0023】
アセタミプリド、アレトリン、アルファ−シペルメトリン、ベータ−シフルトリン、ビフェントリン、ビオアレトリン、4−クロロ−2−(2−クロロ−2−メチルプロピル)−5−[(6−ヨード−3−ピリジニル)メトキシ]−3(2H)−ピリダジノン(CAS−RN:120955−77−3)、クロルフェナピル、クロルピリホス、クロチアニジン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、フェノキシカルブ、フィプロニル、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、イミダクロプリド、ニテンピラム、ペルメトリン、ピリプロキシフェン、シラフルオフェン、テブフェノジド、チアクロプリド、チアメトキサム、トラロメトリン、トリフルムロン。
【0024】
特に好ましいのは、本発明に従う混合物と以下の殺シロアリ剤の1つ以上との組合せである。
【0025】
ビフェントリン、クロルフェナピル、クロチアニジン、シフルトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、イミダクロプリド、ペルメトリン、チアクロプリド、チアメトキサム。
【0026】
特に好ましいのは、本発明に従う混合物と以下の殺シロアリ剤の1つ以上との組合せである。
【0027】
ビフェントリン、クロチアニジン、イミダクロプリド、ペルメトリン、チアクロプリド。
【0028】
好ましいのは、同様に、本発明に従う混合物と以下の殺細菌成分の1つ以上との組合せである。
【0029】
ベンジルアルコールモノ−(ポリ)−ヘミホルマール、エチレングリコールヘミホルマール、N−(2−ヒドロキシプロピル)アミノメタノール、N−メチルイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−N−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ベンゾイソチアゾリノン、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、塩化ベンザルコニウム、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、3−メチル−4−クロロフェノールおよびまた2−ベンジル−4−クロロフェノールならびにそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、ならびにまたo−フェニルフェノールならびにそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、ブロノポール、2,2−ジブロモ−3−ニトリルプロピオンアミド、ならびに銀化合物。
【0030】
好ましいのは、本発明に従う混合物と以下の殺細菌剤の1つ以上との組合せである。
【0031】
ベンジルアルコールモノ−(ポリ)−ヘミホルマール、N−メチルイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−N−メチルイソチアゾリン−3−オン、4,5−ベンゾイソチアゾリノン、グルタルアルデヒド、塩化ベンザルコニウム、ブロノポール、3−メチル−4−クロロフェノール、およびまた2−ベンジル−4−クロロフェノールならびにアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、o−フェニルフェノールならびにそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、ならびに銀化合物。
【0032】
非常に特に好ましいのは、本発明に従う混合物と以下の殺細菌剤の1つ以上との組合せである。
【0033】
ベンジルアルコールモノ−(ポリ)−ヘミホルマール、4,5−ベンゾイソチアゾリノン、塩化ベンザルコニウム、ブロノポール、3−メチル−4−クロロフェノール、およびまた2−ベンジル−4−クロロフェノールならびにそれらのナトリウム塩およびカリウム塩、o−フェニルフェノールならびにそのナトリウム塩およびカリウム塩、ならびに銀(I)化合物。
【0034】
本発明に従う混合物は、一般に、プロクロラズ0.01〜85重量パーセント、テブコナゾール0.01〜85重量パーセントならびに、必要に応じて、特に上述の殺真菌剤、殺虫剤、殺シロアリ剤および殺細菌剤の群からの、少なくとも1つの追加の殺微生物活性化合物0.05〜80重量パーセントを含む。
【0035】
好ましくは、本発明に従う混合物は、プロクロラズ0.1〜40重量パーセント、テブコナゾール0.1〜40重量パーセントならびに、必要に応じて、特に上述の活性化合物の群からの、少なくとも1つの追加の殺微生物活性化合物0.1〜30重量パーセントを含む。
【0036】
本発明に従う混合物は、公知の様式で、例えば、好適な装置中で活性化合物を粉末化および/または混合および/または顆粒化することによって調製され得る。必要に応じて追加の助剤および添加剤(例えば、乳化剤)の添加を伴って、好適な溶媒中において活性化合物を個々にまたは一緒に、溶解、分散または乳化し、そして必要に応じて、追加の溶媒を添加することによってこの溶媒からそれらを析出させること、あるいは必要に応じて、蒸留により乾固するまで該溶媒を除去することも可能である。本発明に従う混合物を調製するために使用される個々の活性化合物および完成した活性化合物混合物は両方とも、それらのそれぞれの物理的および/または化学的特性に依存して、慣用的な製剤、例えば、溶液、エマルジョン、懸濁液、粉末、フォーム、ペースト、顆粒、エアロゾル、およびポリマー物質中のマイクロカプセル化へ変換され得る。
【0037】
本発明は、さらに、生物学的有害生物による、特に木材破壊担子菌および軟腐菌による、攻撃、損傷および/または破壊から、産業材料、特に木材、木材製品および木材/プラスチック複合材を保護するための、本発明に従う活性化合物混合物の使用を提供する。
【0038】
本発明は、さらに、相乗的に有効な量のプロクロラズおよびテブコナゾール、ならびにまた少なくとも1つの希釈剤または溶媒、必要に応じて追加の助剤および添加剤、ならびにまた必要に応じて、少なくとも1つの上述の追加の活性化合物を含む、殺微生物組成物を提供する。
【0039】
公知の様式で、例えば、前記活性化合物と、増量剤、即ち、液体溶媒、加圧液化ガスおよび/または固体担体とを、必要に応じて界面活性剤、即ち、乳化剤および/または分散剤および/または発泡剤(foam formers)を使用して、混合することによって、製剤は調製される。使用される増量剤が水である場合、例えば、補助溶媒として有機溶媒を使用することも可能である。好適な液体溶媒は、本質的に以下である:芳香族化合物、例えば、キシレン、トルエンまたはアルキルナフタレン、脂肪族炭化水素、例えば、シクロヘキサンまたはパラフィン、例えば、鉱油留分、アルコール、例えば、ブタノールまたはグリコール、ならびにまたそれらのエーテルおよびエステル、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノン、非常に極性の溶媒、例えば、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシド、ならびにまた水。液化ガス状増量剤または担体は、周囲温度および大気圧下でガス状である液体、例えば、エアゾール噴射剤、例えば、ハロゲン化炭化水素、およびまた、ブタン、プロパン、窒素および二酸化炭素を意味すると理解される。好適な固体担体は、以下である:例えば、粉末化天然鉱物(natural ground minerals)、例えば、カオリン、クレイ、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイトまたは珪藻土、および粉末化合成鉱物(ground synthetic minerals)、例えば、微粉化シリカ、アルミナおよびシリケート。顆粒剤に好適な固体担体は、以下である:例えば、破砕および分画された天然鉱物、例えば、方解石、大理石、軽石、海泡石、白雲石、ならびにまた無機および有機ミール(meals)の合成顆粒、ならびにまた有機材料の顆粒、例えば、おがくず、ココナッツの殻、トウモロコシの穂軸およびタバコの茎。好適な乳化剤および/または発泡剤は、以下である:例えば、ノニオン性およびアニオン性乳化剤、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、例えば、アルキルアリールポリグリコールエーテル、アルキルスルホネート、アルキルスルフェート、アリールスルホネート、ならびにまた蛋白質加水分解物。好適な分散剤は、以下である:例えば、リグノスルファイト(lignosulphite)廃液およびメチルセルロース。
【0040】
粘着付与剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、ならびに天然および合成ポリマー(粉末、顆粒またはラテックスの形態)、例えば、アラビアゴム、ポリビニルアルコールおよびポリビニルアセテート、あるいは天然リン脂質、例えば、セファリンおよびレシチン、ならびに合成リン脂質が、製剤中において使用され得る。他の可能な添加剤は、鉱油および植物油である。
【0041】
着色剤、例えば、無機顔料、例えば、酸化鉄、酸化チタンおよびプルシアンブルー、ならびに有機染料、例えば、アリザリン染料、アゾ染料、および金属フタロシアニン色素、ならびに微量栄養素、例えば、鉄、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、モリブデンおよび亜鉛の塩を使用することも可能である。
【0042】
製剤は、一般に、活性化合物組合せ0.1〜95重量パーセント、好ましくは0.5〜50重量パーセントを含む。
【0043】
産業材料を保護するために使用される殺微生物組成物または濃縮物は、0.005〜95重量パーセント、特に0.1〜50重量パーセントの濃度で、活性化合物または活性化合物組合せを含む。
【0044】
使用される活性化合物または活性化合物組合せの適用濃度は、制御される微生物の性質および存在、ならびに保護される材料の組成に依存する。使用される最適な量は、試験シリーズによって決定され得る。一般に、適用濃度は、保護される材料を基準にして、0.001〜10重量パーセント、好ましくは0.01〜5重量パーセントの範囲にある。
【0045】
本発明に従って前記活性化合物組合せまたは組成物を使用することによって、有利な様式で、今まで入手可能な殺微生物組成物をより有効な組成物で置き換えることが可能である。本発明に従う組成物は、十分な安定性および、有利な様式で、広範囲な活性スペクトルを有する。
【0046】
本発明に従う活性化合物混合物あるいはそれらを含む組成物によって保護され得る木材、木材製品および木材/プラスチック複合材は、例えば、以下である:建設材木、木製の梁、鉄道枕木、橋構成要素、桟橋、木製の車両、箱、パレット、容器、電話線電柱、木材断熱材(wood lagging)、木製の窓およびドア、合板、中質繊維板(MDF)、チップボード、配向性ストランドボード(OSB)、ウエハーボード、単板積層材(LVL)、あるいは木材製品(これらは、極めて一般的には、住宅またはビル建具の構築において使用される)、ならびにまた木材/プラスチック複合材。
【0047】
活性化合物は、個々にまたは完成された混合物として、それから調製される製剤の形態または使用形態、例えば、レディー・トゥー・ユース溶液、懸濁液、ペースト、可溶性粉末で、適用され得る。個々の活性化合物または完成された混合物であるいはそれらから調製される製剤の形態または使用形態で産業材料を処理することによる慣用的な様式で、適用される。保護される材料が木材、木材製品または木材/プラスチック複合材である場合、慣用的な方法によって、例えば、噴霧、塗布、浸漬、産業的含浸プロセス(例えば、真空、二重真空または圧力プロセス)によって、そして接着剤への添加によってあるいはコンパウンダーまたはミキサー、およびまたマスターバッチを介しての添加によって、適用される。
【0048】
木材の特に有効な保護は、産業的含浸プロセスによって、例えば、真空、二重真空(double vacuum)または圧力プロセスによって達成される。
【0049】
本発明は、さらに、木材および木材製品を保護するための方法を提供し、ここで、塗布、噴霧、真空、二重真空、圧力または浸漬プロセスによって、木材または木材製品が、相乗的に有効な量のプロクロラズおよびテブコナゾールならびに少なくとも1つの希釈剤または溶媒、必要に応じて追加の助剤および添加剤ならびにまた、必要に応じて、少なくとも1つの上述の追加の活性化合物で含浸される。ここで、活性化合物プロクロラズおよびテブコナゾールは、個々に、あるいは完成された混合物として、使用され得る。
【0050】
生物学的実施例
次いで、Kullら(F.C.Kull,P.C.Eismann,H.D.Sylvestrowicz,R.L.Mayer,Applied Microbiology 9,538−541,1961)によって記載される方法を使用して、相乗作用を測定した。ここで、下記の関係が適用される:
QA/Qa + QB/Qb=SI
Qa=MICに対応する物質Aの濃度
Qb=MICに対応する物質Bの濃度
QA=微生物増殖を抑制するA/Bの濃度における物質Aの濃度
QB=微生物増殖を抑制するA/Bの濃度における物質Bの濃度
SI=相乗係数(synergistic index)
SI=1は、活性が相加的であることを意味する
SI>1は、拮抗作用を意味する
SI<1は、相乗作用を意味する
【0051】
実施例1:
種々の濃度のプロクロラズ(A)、テブコナゾール(B)および前記2つの活性化合物の混合物(AB)を、普通寒天培地における軟腐病病原体トリクラス・スピラリス(Trichurus spiralis)に対して試験した。最小阻止濃度(MIC)は、増殖が観察され得ない問題の活性化合物または活性化合物混合物の値をいう。
【0052】
【表1】

【0053】
測定された係数データから、プロクロラズとテブコナゾールとの本発明に従う組合せは、広範囲にわたって軟腐病に対して顕著な相乗作用を示すことが明白である。
【0054】
実施例2:
種々の濃度のプロクロラズ(A)、テブコナゾール(B)および前記2つの活性化合物の混合物(AB)を、木材破壊担子菌コリオラス・ベルシカラー(Coriolus versicolor)に対して試験した。菌糸体断片を前記木材破壊性生物のコロニーから打ち抜き、そして麦芽エキスペプトンを含有する普通寒天培地上において26℃でインキュベートした。次いで、活性化合物を添加する場合および添加しない場合の前記菌糸の放射状の増殖を比較した。下記に記載の最小阻止濃度(MIC)は、放射状の増殖が完全に抑制される活性化合物の最も低い濃度である。
【0055】
【表2】

【0056】
測定された係数データから、プロクロラズとテブコナゾールとの本発明に従う組合せは、広範囲にわたって木材破壊担子菌コリオラス・ベルシカラー(Coriolus versicolor)に対して顕著な相乗作用を示すことが明白である。
【0057】
実施例3:
セルロース(500g/m)からなる未処理綿帆布を、エタノール中、800ppmのプロクロラズ(A)および800ppmのテブコナゾール(B)ならびに200ppmのプロクロラズおよび200ppmのテブコナゾールを含む混合物(AB)の溶液で浸した。サンプルを23℃および50%相対大気湿度で7日間乾燥し、そしてDIN ENV 807に従って生物学的に活性な土壌中へ導入した。4週間後、前記綿布の引き裂き抵抗を、前記活性化合物によって達成される微生物による破壊に対しての保護についての指標として測定した。
【0058】
800ppmのプロクロラズで処理したサンプルA、および800ppmのテブコナゾールで処理したサンプルBは、各々、裂かれ易く、一方、200ppmのプロクロラズおよび200ppmのテブコナゾールの混合物で処理したサンプルCは、裂かれ難かった。
【0059】
この結果は、プロクロラズとテブコナゾールとの本発明に従う組合せが、明らかな活性増強効果を有し、そしてセルロースを含む材料を保護するために使用され得ることを示している。
【0060】
製剤実施例:
実施例1(テクニカルグレード濃縮物):
10%のプロクロラズ、10%のテブコナゾール、9%のソジウムリジノラート(sodium rhizinolate)/ソジウムドデシルベンゼンスルホナート調製物、25%のエトキシ化ヒマシ油、46%のテキサノール。
【0061】
実施例2(乳化可能な濃縮物):
2.5%のテブコナゾール、2.5%のプロクロラズ、3%のソジウムリジノラート/ソジウムドデシルベンゼンスルホナート調製物、27%の脂肪酸ポリエチレングリコールエーテルエステル、65%のテキサノール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相乗的に有効な量の活性化合物プロクロラズ(N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロフェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド)およびテブコナゾール((±)−アルファ−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−アルファ−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール)を含む、混合物。
【請求項2】
プロクロラズのテブコナゾールに対する重量比が、1:99〜99:1であることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
殺真菌剤、殺虫剤、殺シロアリ剤および抗細菌活性化合物の群からの少なくとも1つの追加の殺微生物活性化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項4】
殺微生物活性化合物として、ジクロフルアニド、トリルフルアニド、ベソキサジン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、亜鉛ピリチオンまたは銅ピリチオン、ビフェントリン、クロルフェナピル、クロチアニジン、シフルトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、イミダクロプリド、ペルメトリン、チアクロプリド、チアメトキサム、ベンジルアルコールモノ−(ポリ)−ヘミホルマール、4,5−ベンゾイソチアゾリノン、塩化ベンザルコニウム、ブロノポール、3−メチル−4−クロロフェノールおよび2−ベンジル−4−クロロフェノールならびにそれらのナトリウム塩およびカリウム塩、o−フェニルフェノールならびにそれらのナトリウム塩およびカリウム塩、ならびに銀(I)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
プロクロラズ0.01〜85重量パーセント、テブコナゾール0.01〜85重量パーセントならびに、必要に応じて、殺真菌剤、殺虫剤、殺シロアリ剤および抗細菌活性化合物の群からの少なくとも1つの追加の殺微生物活性化合物0.05〜80重量パーセントを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
相乗的に有効な量の活性化合物プロクロラズおよびテブコナゾールならびに、必要に応じて、殺真菌剤、殺虫剤、殺シロアリ剤および抗細菌活性化合物の群からの追加の殺微生物活性化合物ならびに、必要に応じて、助剤および添加剤が、好適な装置中で混合、粉末化、顆粒化、乳化または分散されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合物ならびに少なくとも1つの溶媒または希釈剤ならびに、必要に応じて、加工処理助剤ならびに、必要に応じて、追加の抗微生物活性化合物を含むことを特徴とする、産業材料を保護するための殺微生物組成物。
【請求項8】
生物学的有害生物による攻撃および破壊から産業材料を保護するための、請求項1〜5のいずれか1つに記載の混合物または請求項7に記載の組成物の使用。
【請求項9】
前記産業材料が木材、木材製品および木材/プラスチック複合材であることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
生物学的有害生物による攻撃および破壊から木材および木材製品および木材/プラスチック複合材を保護するための方法であって、
塗布、噴霧、真空、二重真空、圧力または浸漬プロセスによってあるいは接着剤への添加によってあるいはコンパウンダーまたはミキサーおよびまたマスターバッチを介しての添加によって、該木材または該木材製品または該木材/プラスチック複合材が、相乗的に有効な量のプロクロラズおよびテブコナゾールならびに少なくとも1つの希釈剤または溶媒、必要に応じて追加の助剤および添加剤ならびにまた、必要に応じて、少なくとも1つの追加の殺生物活性化合物で含浸されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合物を含む、産業材料。

【公表番号】特表2008−540471(P2008−540471A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510459(P2008−510459)
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004158
【国際公開番号】WO2006/122656
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】