殺菌ランプ、殺菌ランプユニット及び殺菌装置
【課題】小型化が可能であるとともに、所定の紫外線照度を確保し得る殺菌ランプ、殺菌ランプユニット及びこれらを用いた殺菌装置を提供すること目的とする。
【解決手段】本発明は、一端側が封止されて封止部が形成された紫外線透過性の気密バルブ1と、この気密バルブ1内に封入された水銀及び希ガスを含む放電媒体と、前記気密バルブ1内に4mm〜10mmの電極間距離を有して対向して封装された一対の電極2a、2bと、前記気密バルブ1の封止部1bから導出されるとともに、前記各電極2a、2bの両側を支持し、接続された各一対のリード部材3a、3bとを備えた殺菌ランプである。
【解決手段】本発明は、一端側が封止されて封止部が形成された紫外線透過性の気密バルブ1と、この気密バルブ1内に封入された水銀及び希ガスを含む放電媒体と、前記気密バルブ1内に4mm〜10mmの電極間距離を有して対向して封装された一対の電極2a、2bと、前記気密バルブ1の封止部1bから導出されるとともに、前記各電極2a、2bの両側を支持し、接続された各一対のリード部材3a、3bとを備えた殺菌ランプである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌ランプ、殺菌ランプユニット及びこれらを用いた殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波長253.7nmの紫外線を発生する紫外線殺菌ランプを用いて行う殺菌は、使用方法が簡単で、塩素や塩素化合物による殺菌のようにダイオキシン等の有害物を発生する危険性がなく、安全性の高い殺菌方法として利用が進んでいる。
【0003】
従来、このような殺菌ランプにおいては、直管形の蛍光ランプと同様に、直管状のガラスバルブの両端に一対の電極を対向して設け、この電極間の放電により紫外線を発生させるものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
また、図11に示すように、電球形の小型の殺菌ランプが製品化されている。この殺菌ランプは、略円筒状の透明のガラスバルブ内に、アンカに支持されたリード部材をステムに封着し、このリード部材に一対の電極としてのフィラメントを継線したものである。この一対のフィラメントは、コイル状に形成されて、V字状をなすように接続されている。そして、リード部材は、例えば、E17口金に接続されている。さらに、図12に示すように、無口金のウエッジベースタイプの殺菌ランプも開発されている。この殺菌ランプは、リード部材を直接的に図示しないソケットに接続して使用されるものであり、ステムの下端部からは排気管が突出されている。
【0005】
このように構成された殺菌ランプは、全長Lが60mm〜65mm、バルブ径Dがφ20mm程度のサイズに設計されている。
【0006】
ところで、近時、衛生管理の重要性の重視や清潔志向の高まりから、この種、殺菌ランプを用いる殺菌装置が広範囲に亘って開発されてきており、この場合、装置の小型化のためにも殺菌ランプの一層の小型化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−31976号公報
【特許文献2】特開2003−157802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2並びに図11及び図12に示されたものにおいては、例えば、電極間の距離を調整して設定し、殺菌ランプを小型化するとともに、所定の紫外線照度を確保するための技術的開示がなく、これらの達成は困難である。また、単に、バルブを小型化した場合には、バルブの温度が上昇して紫外線照度が低下し、ランプ効率が低下するという不具合が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、小型化が可能であるとともに、所定の紫外線照度を確保し得る殺菌ランプ、殺菌ランプユニット及びこれらを用いた殺菌装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の殺菌ランプは、一端側が封止されて封止部が形成された紫外線透過性の気密バルブと、この気密バルブ内に封入された水銀及び希ガスを含む放電媒体と、前記気密バルブ内に4mm〜10mmの電極間距離を有して対向して封装された一対の電極と、 前記気密バルブの封止部から導出されるとともに、前記各電極の両側を支持し、接続された各一対のリード部材と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明及び以下の発明において、特に指定しない限り用語の技術的意味及び解釈は次による。気密バルブは、紫外線透過材料である石英ガラスや軟質系又は硬質系のガラス等を用いることができる。水銀は、純水銀の形又はアマルガムの形で封入することができ、また、希ガスとしては、アルゴン、ネオン、クリプトンやキセノン又はこれらの混合ガスを用いることができる。さらに、リード部材は、電極を支持し、電気的に接続して電力を供給する機能を有している。
【0012】
請求項2に記載の殺菌ランプは、請求項1に記載の殺菌ランプにおいて、前記一対の電極は、気密バルブの軸方向に電極間距離を有して対向して封装されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の殺菌ランプは、請求項1又は請求項2に記載の殺菌ランプであって、 前記一対の電極において、当該一の電極と他の電極を支持し、接続されるリード部材とは、5mm以上の距離を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の殺菌ランプは、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の殺菌ランプにおいて、前記気密バルブ内には、希ガスが1200Pa〜3000Paの圧力で封入されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の殺菌ランプは、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の殺菌ランプにおいて、前記ランプの全長の寸法が50mm以下であって、前記気密バルブは、略円筒状に形成され、外径寸法が15mm以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の殺菌ランプユニットは、請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の殺菌ランプと、このランプの一対の電極に通電して予熱し、ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段と、を具備することを特徴とする。
【0017】
「ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段」とは、その時間的な前後は厳密なものではない。例えば、ランプの点灯と予熱の停止が同時的に行われる場合をも許容する。
【0018】
請求項7に記載の殺菌ランプは、請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の殺菌ランプにおいて、前記一対の電極に通電して予熱し、ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段が一体的に組込まれていることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の殺菌装置は、装置本体と、この装置本体に配設された請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の殺菌ランプ又は殺菌ランプユニットと、を具備することを特徴とする。
【0020】
殺菌装置とは、紫外線を照射することによって生じる殺菌作用を利用するように構成されたあらゆる装置を含む概念である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電極間距離を4mm〜10mmの範囲に設定することにより、所定の紫外線照度及び始動性を確保できるとともにランプの小型化を図ることができる殺菌ランプ、殺菌ランプユニット及びこれらを用いた殺菌装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る殺菌ランプを示す正面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同結線状態を示す結線図である。
【図4】同電極間距離と紫外線照度との関係を示すグラフである。
【図5】同電極間の放電状態を示す説明図である。
【図6】同封入ガス圧と紫外線照度との関係を示すグラフである。
【図7】第1の実施形態に係る殺菌ランプの変形例を示す正面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る殺菌ランプユニットを示す結線図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る殺菌ランプを示す正面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る殺菌装置を示す構成図である。
【図11】従来例を示す正面図である。
【図12】同じく従来例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施形態に係る殺菌ランプ、殺菌ランプユニットについて図1乃至図6を参照して説明する。図1は、殺菌ランプを示す正面図、図2は、殺菌ランプを示す側面図、図3は、殺菌ランプの結線状態を示す結線図、図4は、電極間距離と紫外線照度との関係を示すグラフ、図5は、電極間の放電状態を模式的に示す拡大説明図、図6は、封入ガス圧と紫外線照度との関係を示すグラフである。
【0024】
図1及び図2において、殺菌ランプは、ウエッジベースタイプのランプが示されており、この殺菌ランプは、気密バルブ1と、この気密バルブ1内に封装された一対の電極2a、2bと、この電極2a、2bに接続され外部に導出されたリード部材3a、3bとを備えている。
【0025】
気密バルブ1は、略円筒状をなし、一端側がピンチシールによって封止され、封止部1aが形成されて気密空間1bを有している。この気密バルブ1は、例えば、紫外線透過材料である石英ガラスを用いて形成されているが、紫外線透過材料であれば、軟質系のソーダライムガラスや硬質系のホウケイ酸ガラス等を用いることができる。封止部1aは、扁平状に形成され、中央部に封止切りによってチップオフされた排気管1cが突出している。
【0026】
気密バルブ1の気密空間1b内には、放電媒体として水銀及び希ガスが封入されている。水銀は、純水銀の形又はアマルガムの形で封入することができる。また、希ガスには、アルゴンを主体としたものが用いられているが、ネオン、クリプトンやキセノン又はこれらの混合ガスを用いることができる。
【0027】
一対の電極2a、2bは、タングステン製のフィラメント電極であり、電子放射物質、例えば、バリウム、ストロンチウム、カルシウムを主体とする酸化物が塗布されている。そして、これら一対の電極2a、2bは、各一対のリード部材3a、3bの内端間に接続され支持されている。
【0028】
リード部材3a、3bは、内部導入線部3iと、封着導体部3sと、外部導出線部3oとから構成されており、内部導入線部3iは、気密バルブ1内に延在していて先端部に電極2a、2bが継線されている。封着導体部3sは、封止部1aに気密に封着され、外部導出線部3oは、封止部1aから外部に導出されており、図示しないソケット等の端子に接続されるようになっている。これら内部導入線部3i、封着導体部3s、外部導出線部3oは、同一の導電性材料によって一体的に構成してもよいし、また、例えば、封着導体部3sには、ジュメット線等の封着性の良好な材質の導体を格別に用いるようにしてもよい。
【0029】
さらに、一対の電極2a、2bについて詳述すると、まず、電極2a、2bは、気密バルブ1内に軸方向に電極間距離を有して対向して封装されている。図示上、下側の電極2aは、一対のリード部材3aによって、その両側が支持されており、そのリード部材3aは所定の間隔をもって封止部1aに封着され、気密バルブ1内に延在して位置している。一方、図示上、上側の電極2bは、一対のリード部材3bによって、その両側が支持されており、そのリード部材3bは、リード部材3aの間隔よりも狭い間隔で、かつリード部材3aの内側に位置している(主として図1参照)。また、図2に示すように、上側の電極2bを支持するリード部材3bは、下側の電極2aとの距離を確保するように略コ字状に折曲して形成されている。
【0030】
このように構成された一対の電極2a及び2bの電極間距離d1は、5mmに調整され設定されている。また、下側の電極2aと、上側の電極2bを支持するリード部材3bとの距離d2は、5mm以上が確保されるように設定されている。さらにまた、ランプの全長L(排気管1cが突出する長さ寸法は除く)は、45mmであり、気密バルブ1の外径寸法Dは、φ12mmに形成されている。因みに、ランプの全長Lにおいて、気密バルブ1の気密空間1bを形成する軸方向の長さ寸法L1は、40mmであり、封止部1aの軸方向の長さ寸法L2は、5mmとなっている。
【0031】
次に、図3に示すように、殺菌ランプは、点灯回路10に接続されている。具体的には、電源ACに安定器11を介して一対の電極2a、2bが直列に接続されるように結線され、殺菌ランプと点灯回路10とで殺菌ランプユニットが構成されている。ここで、電源AC側と殺菌ランプのリード部材3a、3b、つまり、外部導出線部3oとの接続は、適宜ソケット等を適用して行うことができきる。
【0032】
このように構成された殺菌ランプユニットに電源ACをスイッチSWを操作して投入すると、リード部材3a、3bを通じて電極2a、2bに電流が流れて発熱し予熱され、熱電子が放出され、電極2a、2b間にグロー放電が生成されて点灯する。そして、この放電により紫外線が発生し、紫外線は、気密バルブ1を透過して外部に放射される。
【0033】
次に、本発明者は、上記のような殺菌ランプにおける電極間距離と紫外線照度との関係について測定を行い、分析を試みた。気密バルブ1内にアルゴンを主体とした希ガスをガス圧1330Paで封入し、電極2a、2b間距離を3mm、5mm、10mm、13mm、15mmと変化させた5種類のランプを用意し、これらランプを点灯し、紫外線照度を測定した。
【0034】
その結果は、図4のグラフに示すとおりである。図中、横軸は、電極2a、2b間距離(mm)を示し、縦軸は、電極間距離が10mmのときを100とした場合の紫外線相対照度(%)を示している。グラフは、電極間距離が5mmのときをピークとした山形の曲線をなしている。例えば、電極間距離が5mmのときは、紫外線相対照度は約115%であり、電極間距離が13mmのときは、紫外線相対照度は約85%である。
【0035】
これらの結果を踏まえて考察すると、電極間距離が4mm未満では紫外線照度が低く、また、電極間距離が10mmを超えると始動性が悪くなり、紫外線照度が低下し、さらに、ランプのサイズも大きくしなければならないことが判明した。したがって、所定の紫外線照度、始動性を確保し、ランプのサイズを小型にするためには、電極間距離は、5mmを最適値として、4mm〜10mmの範囲に設定するのが好ましいとの知見を得た。このように電極間距離を設定することにより、具体的には、ランプの全長Lを50mm以下とし、気密バルブ1の外径寸法Dをφ15mm以下として形成して小型化することが可能となる。
【0036】
また、電極間距離が紫外線照度に影響する一因は、以下の理由によるものと考えられる。図5にグロー放電の状態を破線で模式的に示すように、電極2a、2bを覆うようにグロー放電領域Sが生成される。この場合、電極間距離が小さすぎると、電極2a及び電極2bの双方のグロー放電領域Sが重なり合う面積Wが大きくなり、全体としてグロー放電領域S、すなわち、発光面積が小さくなってしまうこととなる。このグロー放電領域Sが重なり合い発光面積が小さくなることは紫外線照度の低下という結果をもたらす。したがって、グロー放電領域Sが重なり合う面積Wを小さくし、所定のグロー放電領域Sを確保することが必要となり、この所定のグロー放電領域Sを確保することができるのが電極間距離4mm〜10mmの範囲となる。
【0037】
次に、本発明者は、上記のような殺菌ランプにおける封入ガス圧と紫外線照度との関係について測定を行い、分析を試みた。電極2a、2b間距離を5mmとし、気密バルブ1内にアルゴンを主体とした希ガスをガス圧1064Pa、1330Pa、2128Pa、2660Pa、3990Paと変化させた5種類のランプを用意し、これらランプを点灯し、紫外線照度を測定した。
【0038】
その結果は、図6のグラフに示すとおりである。図中、横軸は、希ガスの封入ガス圧(Pa)を示し、縦軸は、封入ガス圧が1330Paのときを100とした場合の紫外線相対照度(%)を示している。グラフは、封入ガス圧が1330Paのときをピークとした山形の曲線をなしている。例えば、封入ガス圧が1064Paのときは、紫外線相対照度は約62%であり、封入ガス圧が2128Paのときは、紫外線相対照度は約90%である。
【0039】
この結果から、所定の紫外線照度を確保するには、紫外線相対照度が80%以上であることが好ましく、そのためには、封入ガス圧の範囲は、1200Pa〜3000Paに設定するのが好適となる。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、電極間距離を4mm〜10mmの範囲に設定することにより、所定の紫外線照度及び始動性を確保できるとともにランプの小型化を図ることができる。また、電極2a、2bは、気密バルブ1内に軸方向に電極間距離を有して対向して封装されているので、気密バルブ1の外径寸法Dを小さくすることができる。さらに、下側の電極2aと、上側の電極2bを支持するリード部材3bとの距離d2は、5mm以上が確保されているので、例えば、ランプの製造工程等において、上側の電極2bを支持するリード部材3bに電子放射物質が付着したとしても、このリード部材3bと下側の電極2aとの間で不用意に放電が生起するのを抑制することができる。
【0041】
さらにまた、気密バルブ1内の封入ガス圧の範囲を1200Pa〜3000Paに設定することにより、所定の紫外線照度を確保することが可能となる。加えて、ランプの全長Lを50mm以下とし、気密バルブ1の外径寸法Dをφ15mm以下として形成することが可能となり、ランプの小型化を実現することができる。
【0042】
なお、図7に示すように、例えば、E型口金を用いて殺菌ランプを構成するようにしてもよい。この殺菌ランプは、前記第1の実施形態の殺菌ランプと同様な構成であり、具体的には、一端が封止されて封止部1aが形成された気密バルブ1にE12口金4が接続されており、ランプの全長Lは、50mmであり、気密バルブ1の外径寸法Dは、φ12mmに形成されている。このような構成によっても第1の実施形態の殺菌ランプと同様な効果を奏することができる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態に係る殺菌ランプユニットについて図8を参照して説明する。図8は、殺菌ランプの結線状態を示す結線図であり、この結線により構成された殺菌ランプユニットを示している。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には、同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0044】
殺菌ランプユニットは、殺菌ランプと、この殺菌ランプが接続され、これを点灯制御する 点灯回路10とを備えている。点灯回路10は、安定器11、点灯管12を備えており、殺菌ランプをグロースタータ方式で点灯制御するものである。図に示すように、電源ACは、下側の電極2aの一端側と上側の電極2bの他端側に接続され、点灯管12は、上側の電極2bの一端側と下側の電極2aの他端側に接続されている。なお、電源AC側及び点灯管12と殺菌ランプのリード部材3a、3bとの接続は、適宜ソケット等を適用して行うことができきる。また、点灯管12は、例えば、バイメタルからなる可動電極12a及び固定電極12bを備えており、点灯管12の両端には雑音防止用のコンデンサ13が接続されている。
【0045】
このように構成された殺菌ランプユニットの動作を説明する。スイッチSWを操作して電源ACを投入すると、点灯管12がグロー放電して可動電極12aの温度が上がり、可動電極12aが固定電極12bに接触する。これによりグロー放電が止まり、電極2a、2bに通電され電流が多く流れて発熱し予熱される。そして、グロー放電が止まると可動電極12aは冷却され固定電極12bから離れる瞬間、安定器のインダクタンスによるパルス電圧が電極2a、2b間に印加され、電極2a、2b間にグロー放電が始動して、ランプが点灯され、前記予熱が停止される。このような動作において、主として点灯管12は、電極2a、2bへの通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段としての機能を有するものである。
【0046】
次に、このようなグロースタータ方式と従来の点灯方式(図3参照)とによる点灯制御について、紫外線照度、効率等を比較し検討してみた。殺菌ランプは、電極2a、2b間距離を5mm、希ガスのガス圧を1330Paとしたものを用意し、このランプを従来の点灯方式とグロースタータ方式とでランプ電流を変えて点灯し(従来の点灯方式:300mA、250mA、200mA、グロースタータ方式:250mA、200mA、160mA)紫外線照度を測定した。その結果は、下表のとおりとなった。
【0047】
【表1】
【0048】
ここで、紫外線照度(μW/cm2)は、ランプ表面から20cm離れた距離で測定した値である。紫外線相対照度(%)は、従来の点灯方式において250mAのランプ電流で点灯したときを100とした場合の値である。また、効率(%)は、紫外線照度をランプ電力で除した値を相対照度で表したものであり、前記と同様に、従来の点灯方式において250mAのランプ電流で点灯したときを100とした場合の値である。
【0049】
この結果から、グロースタータ方式によると、例えば、ランプ電流250mAにおいて、従来の点灯方式と比較して、紫外線相対照度で1.56倍、効率で2.08倍の値になることが分る。また、グロースタータ方式によると、ランプ電流160mAの少ない電流であっても、従来の点灯方式のランプ電流300mAの場合よりも紫外線照度、紫外線相対照度及び効率が上回っていることが分る。
【0050】
これは、従来の点灯方式では、ランプ点灯時は常時、電極2a、2bが予熱状態であるのに対し、グロースタータ方式では、ランプ点灯後、電極2a、2bの予熱が予熱停止手段により停止されるためであり、これによりランプの温度上昇が抑制され、また、電力損失が少なくなるからである。したがって、ランプの点灯方式として、グロースタータ方式を用いることにより、ランプの小型化に有利となることが判明した。
【0051】
なお、上記実施形態では、グロースタータ方式を用いて電極2a、2bへの通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段を構成したが、グロースタータ方式に限らず、点灯回路をインバータにより高周波点灯回路とし、正温度特性抵抗素子や負温度特性抵抗素子を実装して予熱停止手段の機能を有するように構成してもよい。この場合も上記実施形態と同様にランプの小型化の実現に有利となる。
【0052】
続いて、本発明の第3の実施形態に係る殺菌ランプについて図9を参照して説明する。図9は、殺菌ランプの正面図を示している。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同一又は相当部分には、同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0053】
本実施形態では、予熱停止手段を含んだ点灯回路10を殺菌ランプに一体的に組込んで構成したものである。すなわち、気密バルブ1の一端側と口金4との間に円筒状のカバー部5を形成し、このカバー部5と口金4との内側に点灯回路10を配設するようにしたものである。口金4は、E12やE17等を適用することができる。なお、図3に示す点灯回路10をランプに一体的に組込みこむことを妨げるものではない。
以上のように本実施形態によれば、点灯回路10を含んだ装置の小型化が可能となる。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係る殺菌装置について図10を参照して説明する。図10は、殺菌装置として歯ブラシ殺菌装置の概略の構成図を示しており、装置本体を破線で表している。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同一又は相当部分には、同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0055】
殺菌装置本体20は、略円筒状をなし、上面側に複数の歯ブラシTをブラシ側から挿入できる開口が形成されている。そして、本体20の内側中央部には、上記殺菌ランプが立設するように配設されており、底面側には、ランプと接続される点灯回路10が配置されている。
【0056】
このような構成において、ランプに電源を投入して点灯すると、紫外線が放射され、このランプの周囲に配置された歯ブラシTの殺菌が効果的に行われる。また、殺菌ランプは、小型化されているので、殺菌装置本体20の小型化を実現できる。
【0057】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。殺菌装置としては、紫外線を照射することによって生じる殺菌作用を利用するように構成されたあらゆる装置を含むものである。歯ブラシ殺菌装置や靴殺菌装置等に限らず、例えば、冷蔵庫に殺菌ランプ及びその点灯回路を内蔵することにより構成される庫内冷蔵食品の殺菌装置やエアコンに内蔵されることによって循環空気を殺菌する殺菌装置が含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・気密バルブ、1a・・・封止部、2a、2b・・・電極、
3a、3b・・・リード部材、10・・・点灯回路、20・・・殺菌装置本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌ランプ、殺菌ランプユニット及びこれらを用いた殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波長253.7nmの紫外線を発生する紫外線殺菌ランプを用いて行う殺菌は、使用方法が簡単で、塩素や塩素化合物による殺菌のようにダイオキシン等の有害物を発生する危険性がなく、安全性の高い殺菌方法として利用が進んでいる。
【0003】
従来、このような殺菌ランプにおいては、直管形の蛍光ランプと同様に、直管状のガラスバルブの両端に一対の電極を対向して設け、この電極間の放電により紫外線を発生させるものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
また、図11に示すように、電球形の小型の殺菌ランプが製品化されている。この殺菌ランプは、略円筒状の透明のガラスバルブ内に、アンカに支持されたリード部材をステムに封着し、このリード部材に一対の電極としてのフィラメントを継線したものである。この一対のフィラメントは、コイル状に形成されて、V字状をなすように接続されている。そして、リード部材は、例えば、E17口金に接続されている。さらに、図12に示すように、無口金のウエッジベースタイプの殺菌ランプも開発されている。この殺菌ランプは、リード部材を直接的に図示しないソケットに接続して使用されるものであり、ステムの下端部からは排気管が突出されている。
【0005】
このように構成された殺菌ランプは、全長Lが60mm〜65mm、バルブ径Dがφ20mm程度のサイズに設計されている。
【0006】
ところで、近時、衛生管理の重要性の重視や清潔志向の高まりから、この種、殺菌ランプを用いる殺菌装置が広範囲に亘って開発されてきており、この場合、装置の小型化のためにも殺菌ランプの一層の小型化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−31976号公報
【特許文献2】特開2003−157802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2並びに図11及び図12に示されたものにおいては、例えば、電極間の距離を調整して設定し、殺菌ランプを小型化するとともに、所定の紫外線照度を確保するための技術的開示がなく、これらの達成は困難である。また、単に、バルブを小型化した場合には、バルブの温度が上昇して紫外線照度が低下し、ランプ効率が低下するという不具合が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、小型化が可能であるとともに、所定の紫外線照度を確保し得る殺菌ランプ、殺菌ランプユニット及びこれらを用いた殺菌装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の殺菌ランプは、一端側が封止されて封止部が形成された紫外線透過性の気密バルブと、この気密バルブ内に封入された水銀及び希ガスを含む放電媒体と、前記気密バルブ内に4mm〜10mmの電極間距離を有して対向して封装された一対の電極と、 前記気密バルブの封止部から導出されるとともに、前記各電極の両側を支持し、接続された各一対のリード部材と、を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明及び以下の発明において、特に指定しない限り用語の技術的意味及び解釈は次による。気密バルブは、紫外線透過材料である石英ガラスや軟質系又は硬質系のガラス等を用いることができる。水銀は、純水銀の形又はアマルガムの形で封入することができ、また、希ガスとしては、アルゴン、ネオン、クリプトンやキセノン又はこれらの混合ガスを用いることができる。さらに、リード部材は、電極を支持し、電気的に接続して電力を供給する機能を有している。
【0012】
請求項2に記載の殺菌ランプは、請求項1に記載の殺菌ランプにおいて、前記一対の電極は、気密バルブの軸方向に電極間距離を有して対向して封装されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の殺菌ランプは、請求項1又は請求項2に記載の殺菌ランプであって、 前記一対の電極において、当該一の電極と他の電極を支持し、接続されるリード部材とは、5mm以上の距離を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の殺菌ランプは、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の殺菌ランプにおいて、前記気密バルブ内には、希ガスが1200Pa〜3000Paの圧力で封入されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の殺菌ランプは、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の殺菌ランプにおいて、前記ランプの全長の寸法が50mm以下であって、前記気密バルブは、略円筒状に形成され、外径寸法が15mm以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の殺菌ランプユニットは、請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の殺菌ランプと、このランプの一対の電極に通電して予熱し、ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段と、を具備することを特徴とする。
【0017】
「ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段」とは、その時間的な前後は厳密なものではない。例えば、ランプの点灯と予熱の停止が同時的に行われる場合をも許容する。
【0018】
請求項7に記載の殺菌ランプは、請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の殺菌ランプにおいて、前記一対の電極に通電して予熱し、ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段が一体的に組込まれていることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の殺菌装置は、装置本体と、この装置本体に配設された請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の殺菌ランプ又は殺菌ランプユニットと、を具備することを特徴とする。
【0020】
殺菌装置とは、紫外線を照射することによって生じる殺菌作用を利用するように構成されたあらゆる装置を含む概念である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電極間距離を4mm〜10mmの範囲に設定することにより、所定の紫外線照度及び始動性を確保できるとともにランプの小型化を図ることができる殺菌ランプ、殺菌ランプユニット及びこれらを用いた殺菌装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る殺菌ランプを示す正面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同結線状態を示す結線図である。
【図4】同電極間距離と紫外線照度との関係を示すグラフである。
【図5】同電極間の放電状態を示す説明図である。
【図6】同封入ガス圧と紫外線照度との関係を示すグラフである。
【図7】第1の実施形態に係る殺菌ランプの変形例を示す正面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る殺菌ランプユニットを示す結線図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る殺菌ランプを示す正面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る殺菌装置を示す構成図である。
【図11】従来例を示す正面図である。
【図12】同じく従来例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施形態に係る殺菌ランプ、殺菌ランプユニットについて図1乃至図6を参照して説明する。図1は、殺菌ランプを示す正面図、図2は、殺菌ランプを示す側面図、図3は、殺菌ランプの結線状態を示す結線図、図4は、電極間距離と紫外線照度との関係を示すグラフ、図5は、電極間の放電状態を模式的に示す拡大説明図、図6は、封入ガス圧と紫外線照度との関係を示すグラフである。
【0024】
図1及び図2において、殺菌ランプは、ウエッジベースタイプのランプが示されており、この殺菌ランプは、気密バルブ1と、この気密バルブ1内に封装された一対の電極2a、2bと、この電極2a、2bに接続され外部に導出されたリード部材3a、3bとを備えている。
【0025】
気密バルブ1は、略円筒状をなし、一端側がピンチシールによって封止され、封止部1aが形成されて気密空間1bを有している。この気密バルブ1は、例えば、紫外線透過材料である石英ガラスを用いて形成されているが、紫外線透過材料であれば、軟質系のソーダライムガラスや硬質系のホウケイ酸ガラス等を用いることができる。封止部1aは、扁平状に形成され、中央部に封止切りによってチップオフされた排気管1cが突出している。
【0026】
気密バルブ1の気密空間1b内には、放電媒体として水銀及び希ガスが封入されている。水銀は、純水銀の形又はアマルガムの形で封入することができる。また、希ガスには、アルゴンを主体としたものが用いられているが、ネオン、クリプトンやキセノン又はこれらの混合ガスを用いることができる。
【0027】
一対の電極2a、2bは、タングステン製のフィラメント電極であり、電子放射物質、例えば、バリウム、ストロンチウム、カルシウムを主体とする酸化物が塗布されている。そして、これら一対の電極2a、2bは、各一対のリード部材3a、3bの内端間に接続され支持されている。
【0028】
リード部材3a、3bは、内部導入線部3iと、封着導体部3sと、外部導出線部3oとから構成されており、内部導入線部3iは、気密バルブ1内に延在していて先端部に電極2a、2bが継線されている。封着導体部3sは、封止部1aに気密に封着され、外部導出線部3oは、封止部1aから外部に導出されており、図示しないソケット等の端子に接続されるようになっている。これら内部導入線部3i、封着導体部3s、外部導出線部3oは、同一の導電性材料によって一体的に構成してもよいし、また、例えば、封着導体部3sには、ジュメット線等の封着性の良好な材質の導体を格別に用いるようにしてもよい。
【0029】
さらに、一対の電極2a、2bについて詳述すると、まず、電極2a、2bは、気密バルブ1内に軸方向に電極間距離を有して対向して封装されている。図示上、下側の電極2aは、一対のリード部材3aによって、その両側が支持されており、そのリード部材3aは所定の間隔をもって封止部1aに封着され、気密バルブ1内に延在して位置している。一方、図示上、上側の電極2bは、一対のリード部材3bによって、その両側が支持されており、そのリード部材3bは、リード部材3aの間隔よりも狭い間隔で、かつリード部材3aの内側に位置している(主として図1参照)。また、図2に示すように、上側の電極2bを支持するリード部材3bは、下側の電極2aとの距離を確保するように略コ字状に折曲して形成されている。
【0030】
このように構成された一対の電極2a及び2bの電極間距離d1は、5mmに調整され設定されている。また、下側の電極2aと、上側の電極2bを支持するリード部材3bとの距離d2は、5mm以上が確保されるように設定されている。さらにまた、ランプの全長L(排気管1cが突出する長さ寸法は除く)は、45mmであり、気密バルブ1の外径寸法Dは、φ12mmに形成されている。因みに、ランプの全長Lにおいて、気密バルブ1の気密空間1bを形成する軸方向の長さ寸法L1は、40mmであり、封止部1aの軸方向の長さ寸法L2は、5mmとなっている。
【0031】
次に、図3に示すように、殺菌ランプは、点灯回路10に接続されている。具体的には、電源ACに安定器11を介して一対の電極2a、2bが直列に接続されるように結線され、殺菌ランプと点灯回路10とで殺菌ランプユニットが構成されている。ここで、電源AC側と殺菌ランプのリード部材3a、3b、つまり、外部導出線部3oとの接続は、適宜ソケット等を適用して行うことができきる。
【0032】
このように構成された殺菌ランプユニットに電源ACをスイッチSWを操作して投入すると、リード部材3a、3bを通じて電極2a、2bに電流が流れて発熱し予熱され、熱電子が放出され、電極2a、2b間にグロー放電が生成されて点灯する。そして、この放電により紫外線が発生し、紫外線は、気密バルブ1を透過して外部に放射される。
【0033】
次に、本発明者は、上記のような殺菌ランプにおける電極間距離と紫外線照度との関係について測定を行い、分析を試みた。気密バルブ1内にアルゴンを主体とした希ガスをガス圧1330Paで封入し、電極2a、2b間距離を3mm、5mm、10mm、13mm、15mmと変化させた5種類のランプを用意し、これらランプを点灯し、紫外線照度を測定した。
【0034】
その結果は、図4のグラフに示すとおりである。図中、横軸は、電極2a、2b間距離(mm)を示し、縦軸は、電極間距離が10mmのときを100とした場合の紫外線相対照度(%)を示している。グラフは、電極間距離が5mmのときをピークとした山形の曲線をなしている。例えば、電極間距離が5mmのときは、紫外線相対照度は約115%であり、電極間距離が13mmのときは、紫外線相対照度は約85%である。
【0035】
これらの結果を踏まえて考察すると、電極間距離が4mm未満では紫外線照度が低く、また、電極間距離が10mmを超えると始動性が悪くなり、紫外線照度が低下し、さらに、ランプのサイズも大きくしなければならないことが判明した。したがって、所定の紫外線照度、始動性を確保し、ランプのサイズを小型にするためには、電極間距離は、5mmを最適値として、4mm〜10mmの範囲に設定するのが好ましいとの知見を得た。このように電極間距離を設定することにより、具体的には、ランプの全長Lを50mm以下とし、気密バルブ1の外径寸法Dをφ15mm以下として形成して小型化することが可能となる。
【0036】
また、電極間距離が紫外線照度に影響する一因は、以下の理由によるものと考えられる。図5にグロー放電の状態を破線で模式的に示すように、電極2a、2bを覆うようにグロー放電領域Sが生成される。この場合、電極間距離が小さすぎると、電極2a及び電極2bの双方のグロー放電領域Sが重なり合う面積Wが大きくなり、全体としてグロー放電領域S、すなわち、発光面積が小さくなってしまうこととなる。このグロー放電領域Sが重なり合い発光面積が小さくなることは紫外線照度の低下という結果をもたらす。したがって、グロー放電領域Sが重なり合う面積Wを小さくし、所定のグロー放電領域Sを確保することが必要となり、この所定のグロー放電領域Sを確保することができるのが電極間距離4mm〜10mmの範囲となる。
【0037】
次に、本発明者は、上記のような殺菌ランプにおける封入ガス圧と紫外線照度との関係について測定を行い、分析を試みた。電極2a、2b間距離を5mmとし、気密バルブ1内にアルゴンを主体とした希ガスをガス圧1064Pa、1330Pa、2128Pa、2660Pa、3990Paと変化させた5種類のランプを用意し、これらランプを点灯し、紫外線照度を測定した。
【0038】
その結果は、図6のグラフに示すとおりである。図中、横軸は、希ガスの封入ガス圧(Pa)を示し、縦軸は、封入ガス圧が1330Paのときを100とした場合の紫外線相対照度(%)を示している。グラフは、封入ガス圧が1330Paのときをピークとした山形の曲線をなしている。例えば、封入ガス圧が1064Paのときは、紫外線相対照度は約62%であり、封入ガス圧が2128Paのときは、紫外線相対照度は約90%である。
【0039】
この結果から、所定の紫外線照度を確保するには、紫外線相対照度が80%以上であることが好ましく、そのためには、封入ガス圧の範囲は、1200Pa〜3000Paに設定するのが好適となる。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、電極間距離を4mm〜10mmの範囲に設定することにより、所定の紫外線照度及び始動性を確保できるとともにランプの小型化を図ることができる。また、電極2a、2bは、気密バルブ1内に軸方向に電極間距離を有して対向して封装されているので、気密バルブ1の外径寸法Dを小さくすることができる。さらに、下側の電極2aと、上側の電極2bを支持するリード部材3bとの距離d2は、5mm以上が確保されているので、例えば、ランプの製造工程等において、上側の電極2bを支持するリード部材3bに電子放射物質が付着したとしても、このリード部材3bと下側の電極2aとの間で不用意に放電が生起するのを抑制することができる。
【0041】
さらにまた、気密バルブ1内の封入ガス圧の範囲を1200Pa〜3000Paに設定することにより、所定の紫外線照度を確保することが可能となる。加えて、ランプの全長Lを50mm以下とし、気密バルブ1の外径寸法Dをφ15mm以下として形成することが可能となり、ランプの小型化を実現することができる。
【0042】
なお、図7に示すように、例えば、E型口金を用いて殺菌ランプを構成するようにしてもよい。この殺菌ランプは、前記第1の実施形態の殺菌ランプと同様な構成であり、具体的には、一端が封止されて封止部1aが形成された気密バルブ1にE12口金4が接続されており、ランプの全長Lは、50mmであり、気密バルブ1の外径寸法Dは、φ12mmに形成されている。このような構成によっても第1の実施形態の殺菌ランプと同様な効果を奏することができる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態に係る殺菌ランプユニットについて図8を参照して説明する。図8は、殺菌ランプの結線状態を示す結線図であり、この結線により構成された殺菌ランプユニットを示している。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には、同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0044】
殺菌ランプユニットは、殺菌ランプと、この殺菌ランプが接続され、これを点灯制御する 点灯回路10とを備えている。点灯回路10は、安定器11、点灯管12を備えており、殺菌ランプをグロースタータ方式で点灯制御するものである。図に示すように、電源ACは、下側の電極2aの一端側と上側の電極2bの他端側に接続され、点灯管12は、上側の電極2bの一端側と下側の電極2aの他端側に接続されている。なお、電源AC側及び点灯管12と殺菌ランプのリード部材3a、3bとの接続は、適宜ソケット等を適用して行うことができきる。また、点灯管12は、例えば、バイメタルからなる可動電極12a及び固定電極12bを備えており、点灯管12の両端には雑音防止用のコンデンサ13が接続されている。
【0045】
このように構成された殺菌ランプユニットの動作を説明する。スイッチSWを操作して電源ACを投入すると、点灯管12がグロー放電して可動電極12aの温度が上がり、可動電極12aが固定電極12bに接触する。これによりグロー放電が止まり、電極2a、2bに通電され電流が多く流れて発熱し予熱される。そして、グロー放電が止まると可動電極12aは冷却され固定電極12bから離れる瞬間、安定器のインダクタンスによるパルス電圧が電極2a、2b間に印加され、電極2a、2b間にグロー放電が始動して、ランプが点灯され、前記予熱が停止される。このような動作において、主として点灯管12は、電極2a、2bへの通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段としての機能を有するものである。
【0046】
次に、このようなグロースタータ方式と従来の点灯方式(図3参照)とによる点灯制御について、紫外線照度、効率等を比較し検討してみた。殺菌ランプは、電極2a、2b間距離を5mm、希ガスのガス圧を1330Paとしたものを用意し、このランプを従来の点灯方式とグロースタータ方式とでランプ電流を変えて点灯し(従来の点灯方式:300mA、250mA、200mA、グロースタータ方式:250mA、200mA、160mA)紫外線照度を測定した。その結果は、下表のとおりとなった。
【0047】
【表1】
【0048】
ここで、紫外線照度(μW/cm2)は、ランプ表面から20cm離れた距離で測定した値である。紫外線相対照度(%)は、従来の点灯方式において250mAのランプ電流で点灯したときを100とした場合の値である。また、効率(%)は、紫外線照度をランプ電力で除した値を相対照度で表したものであり、前記と同様に、従来の点灯方式において250mAのランプ電流で点灯したときを100とした場合の値である。
【0049】
この結果から、グロースタータ方式によると、例えば、ランプ電流250mAにおいて、従来の点灯方式と比較して、紫外線相対照度で1.56倍、効率で2.08倍の値になることが分る。また、グロースタータ方式によると、ランプ電流160mAの少ない電流であっても、従来の点灯方式のランプ電流300mAの場合よりも紫外線照度、紫外線相対照度及び効率が上回っていることが分る。
【0050】
これは、従来の点灯方式では、ランプ点灯時は常時、電極2a、2bが予熱状態であるのに対し、グロースタータ方式では、ランプ点灯後、電極2a、2bの予熱が予熱停止手段により停止されるためであり、これによりランプの温度上昇が抑制され、また、電力損失が少なくなるからである。したがって、ランプの点灯方式として、グロースタータ方式を用いることにより、ランプの小型化に有利となることが判明した。
【0051】
なお、上記実施形態では、グロースタータ方式を用いて電極2a、2bへの通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段を構成したが、グロースタータ方式に限らず、点灯回路をインバータにより高周波点灯回路とし、正温度特性抵抗素子や負温度特性抵抗素子を実装して予熱停止手段の機能を有するように構成してもよい。この場合も上記実施形態と同様にランプの小型化の実現に有利となる。
【0052】
続いて、本発明の第3の実施形態に係る殺菌ランプについて図9を参照して説明する。図9は、殺菌ランプの正面図を示している。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同一又は相当部分には、同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0053】
本実施形態では、予熱停止手段を含んだ点灯回路10を殺菌ランプに一体的に組込んで構成したものである。すなわち、気密バルブ1の一端側と口金4との間に円筒状のカバー部5を形成し、このカバー部5と口金4との内側に点灯回路10を配設するようにしたものである。口金4は、E12やE17等を適用することができる。なお、図3に示す点灯回路10をランプに一体的に組込みこむことを妨げるものではない。
以上のように本実施形態によれば、点灯回路10を含んだ装置の小型化が可能となる。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係る殺菌装置について図10を参照して説明する。図10は、殺菌装置として歯ブラシ殺菌装置の概略の構成図を示しており、装置本体を破線で表している。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同一又は相当部分には、同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0055】
殺菌装置本体20は、略円筒状をなし、上面側に複数の歯ブラシTをブラシ側から挿入できる開口が形成されている。そして、本体20の内側中央部には、上記殺菌ランプが立設するように配設されており、底面側には、ランプと接続される点灯回路10が配置されている。
【0056】
このような構成において、ランプに電源を投入して点灯すると、紫外線が放射され、このランプの周囲に配置された歯ブラシTの殺菌が効果的に行われる。また、殺菌ランプは、小型化されているので、殺菌装置本体20の小型化を実現できる。
【0057】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。殺菌装置としては、紫外線を照射することによって生じる殺菌作用を利用するように構成されたあらゆる装置を含むものである。歯ブラシ殺菌装置や靴殺菌装置等に限らず、例えば、冷蔵庫に殺菌ランプ及びその点灯回路を内蔵することにより構成される庫内冷蔵食品の殺菌装置やエアコンに内蔵されることによって循環空気を殺菌する殺菌装置が含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・気密バルブ、1a・・・封止部、2a、2b・・・電極、
3a、3b・・・リード部材、10・・・点灯回路、20・・・殺菌装置本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が封止されて封止部が形成された紫外線透過性の気密バルブと、
この気密バルブ内に封入された水銀及び希ガスを含む放電媒体と、
前記気密バルブ内に4mm〜10mmの電極間距離を有して対向して封装された一対の電極と、
前記気密バルブの封止部から導出されるとともに、前記各電極の両側を支持し、接続された各一対のリード部材と、
を具備することを特徴とする殺菌ランプ。
【請求項2】
前記一対の電極は、気密バルブの軸方向に電極間距離を有して対向して封装されていることを特徴とする請求項1に記載の殺菌ランプ。
【請求項3】
前記一対の電極において、当該一の電極と他の電極を支持し、接続されるリード部材とは、5mm以上の距離を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の殺菌ランプ。
【請求項4】
前記気密バルブ内には、希ガスが1200Pa〜3000Paの圧力で封入されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の殺菌ランプ。
【請求項5】
前記ランプの全長の寸法が50mm以下であって、前記気密バルブは、略円筒状に形成され、外径寸法が15mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の殺菌ランプ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の殺菌ランプと、
このランプの一対の電極に通電して予熱し、ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段と、
を具備することを特徴とする殺菌ランプユニット。
【請求項7】
前記一対の電極に通電して予熱し、ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段が一体的に組込まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の殺菌ランプ。
【請求項8】
装置本体と、
この装置本体に配設された請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の殺菌ランプ又は殺菌ランプユニットと、
を具備することを特徴とする殺菌装置。
【請求項1】
一端側が封止されて封止部が形成された紫外線透過性の気密バルブと、
この気密バルブ内に封入された水銀及び希ガスを含む放電媒体と、
前記気密バルブ内に4mm〜10mmの電極間距離を有して対向して封装された一対の電極と、
前記気密バルブの封止部から導出されるとともに、前記各電極の両側を支持し、接続された各一対のリード部材と、
を具備することを特徴とする殺菌ランプ。
【請求項2】
前記一対の電極は、気密バルブの軸方向に電極間距離を有して対向して封装されていることを特徴とする請求項1に記載の殺菌ランプ。
【請求項3】
前記一対の電極において、当該一の電極と他の電極を支持し、接続されるリード部材とは、5mm以上の距離を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の殺菌ランプ。
【請求項4】
前記気密バルブ内には、希ガスが1200Pa〜3000Paの圧力で封入されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の殺菌ランプ。
【請求項5】
前記ランプの全長の寸法が50mm以下であって、前記気密バルブは、略円筒状に形成され、外径寸法が15mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の殺菌ランプ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の殺菌ランプと、
このランプの一対の電極に通電して予熱し、ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段と、
を具備することを特徴とする殺菌ランプユニット。
【請求項7】
前記一対の電極に通電して予熱し、ランプ点灯後、この通電を遮断して予熱を停止する予熱停止手段が一体的に組込まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の殺菌ランプ。
【請求項8】
装置本体と、
この装置本体に配設された請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の殺菌ランプ又は殺菌ランプユニットと、
を具備することを特徴とする殺菌装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−49018(P2011−49018A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196138(P2009−196138)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(594094146)三共電気株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(594094146)三共電気株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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