説明

殺菌搬入装置

【課題】柔軟で伸縮性のあるビニルバッグを用いることで、殺菌庫内を真空にしなくても被殺菌物を十分に殺菌することができ、また被殺菌物の大きさに合わせた自由な搬入が可能な殺菌搬入装置を提供する。
【解決手段】被殺菌物2を汚染環境Pから非汚染環境室C内に搬入するための搬入用筒状体4と、搬入用筒状体4の非汚染環境室C側に設けられた搬入用開閉扉5と、汚染環境P側に設けられ、被殺菌物2を収納すべく袋状に形成されると共に開口部6が汚染環境P側に臨んだ搬入用筒状体4に嵌合する大きさに形成されたビニルバッグ7と、ビニルバッグ7の開口部6を搬入用筒状体4に嵌合したときにその間をシールするシール手段8と、ビニルバッグ7内を脱気すると共に殺菌ガスや空気を供給する脱気殺菌手段9とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の物品や機器を、汚染環境側からクリーンルームなどの非汚染環境室内に、殺菌した後搬入するための殺菌搬入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の物品や機器(以下、被殺菌物という)を、汚染環境からクリーンルームなどの非汚染環境室内に搬入する際は、それら被殺菌物を殺菌したのち搬入する必要がある。
【0003】
そのため、被殺菌物を汚染環境から非汚染環境室内に搬入する際には、非汚染環境室と汚染環境とを区画する壁部に金属製の殺菌庫を設け、この殺菌庫に被殺菌物を導入した後、殺菌庫内に殺菌ガスを供給することで殺菌処理する。
【0004】
殺菌庫は、一方が汚染環境、他方が非汚染環境室に開閉扉を介して開放可能となるように設けられている。搬入、殺菌の際には、非汚染環境室側の開閉扉を閉めると共に汚染環境側から殺菌庫内に被殺菌物を導入する。被殺菌物の導入後、汚染環境側の開閉扉も閉めて殺菌庫内を密閉する。その後、殺菌庫内に殺菌ガスを供給して被殺菌物の殺菌を行う。殺菌後、殺菌庫内を脱気して殺菌ガスを庫外に排気し、被殺菌物を非汚染環境室側から取り出す。以上の工程により、被殺菌物を、非汚染環境室内に、殺菌したのち搬入することができる。
【0005】
殺菌の際、被殺菌物が布や多孔質体の場合には、殺菌ガスが浸透しにくいため、殺菌庫内を真空→殺菌ガス封入→真空→空気というサイクルで変化させ、殺菌ガスを布や多孔質体に浸透させる操作をして、被殺菌物が十分に殺菌されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−334136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
殺菌庫は、搬入する物品や機器を収容する容積の固定構造となっているのが通常であるが、殺菌庫の容積が大きいと、上述のサイクルにおいて殺菌庫内を真空にするための動力(脱気するための動力)や殺菌ガスの消費量が多く、経済的ではないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、柔軟で伸縮性のあるビニルバッグを用いることで、殺菌庫内を真空にしなくても被殺菌物を十分に殺菌することができ、また被殺菌物の大きさに合わせた自由な搬入が可能な殺菌搬入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、種々の物品や機器を、汚染環境側から非汚染環境室内に、殺菌した後搬入するための殺菌搬入装置において、前記非汚染環境室と前記汚染環境とを区画する壁部に設けられ、前記物品や前記機器を前記汚染環境から前記非汚染環境室内に搬入するための搬入用筒状体と、前記搬入用筒状体の前記非汚染環境室側に設けられた搬入用開閉扉と、前記汚染環境側に設けられ、前記物品や前記機器を収納すべく袋状に形成されると共に開口部が前記汚染環境側に臨んだ前記搬入用筒状体に嵌合する大きさに形成されたビニルバッグと、前記ビニルバッグの開口部を前記搬入用筒状体に嵌合したときにその間をシールするシール手段と、前記ビニルバッグ内を脱気すると共に殺菌ガスや空気を供給する脱気殺菌手段とを備える殺菌搬入装置である。
【0010】
請求項2の発明は、前記ビニルバッグは筒状に形成され、一方の開口部が前記搬入用筒状体に嵌合され、他方の開口部が前記汚染環境側に別途設けられた投入用開閉扉を有する投入用筒状体に嵌合され、前記一方の開口部と前記搬入用筒状体との間及び前記他方の開口部と前記投入用筒状体との間がそれぞれシール手段によりシールされる請求項1に記載の殺菌搬入装置である。
【0011】
請求項3の発明は、前記シール手段は、前記搬入用筒状体又は前記投入用筒状体の外周と前記ビニルバッグとの間に設けられたパッキンと、前記パッキンが設けられた箇所に位置する前記ビニルバッグを外側から締め付けるクランプとからなる請求項2に記載の殺菌搬入装置である。
【0012】
請求項4の発明は、前記脱気殺菌手段は、前記ビニルバッグ内の空気や殺菌ガスを脱気すると共に汚染環境側に排気する脱気ラインと、前記ビニルバッグ内に殺菌ガスや空気を供給する殺菌ガス供給ラインとで構成され、前記脱気ライン及び前記殺菌ガス供給ラインは、前記ビニルバッグに設けられた殺菌ガス供給口及び脱気口にそれぞれ接続されるか、或いは、前記汚染環境側の前記搬入用筒状体又は前記投入用筒状体にそれぞれ接続される請求項2又は3に記載の殺菌搬入装置である。
【0013】
請求項5の発明は、前記ビニルバッグは伸縮性のある高分子フィルムからなり、その両開口部を拡径させて前記搬入用筒状体及び前記投入用筒状体にそれぞれ嵌合させる請求項2〜4のいずれかに記載の殺菌搬入装置である。
【0014】
請求項6の発明は、前記脱気殺菌手段は、始めに前記ビニルバッグ内を前記脱気ラインにより脱気した後、前記ビニルバッグ内に前記殺菌ガス供給ラインにより殺菌ガスを供給し、殺菌後、再び前記ビニルバッグ内を前記脱気ラインにより脱気し、前記ビニルバッグ内に前記殺菌ガス供給ラインにより空気を供給するようにされる請求項1〜5のいずれかに記載の殺菌搬入装置である。
【0015】
請求項7の発明は、前記物品は布類や寝具であり、前記機器は内視鏡やパソコンである請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌搬入装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、柔軟で伸縮性のあるビニルバッグを用いることで、殺菌庫内を真空にしなくても被殺菌物を十分に殺菌することができ、また被殺菌物の大きさに合わせた自由な搬入が可能な殺菌搬入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す殺菌搬入装置の概略断面図である。
【図2】(a)は図1の殺菌搬入装置のシール手段の拡大図であり、(b)はそのシール手段のクランプの側面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す殺菌搬入装置の概略断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の変形例を示す殺菌搬入装置の概略断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の変形例を示す殺菌搬入装置の概略断面図である。
【図6】脱気殺菌手段の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、第1の実施の形態に係る殺菌搬入装置の概略断面図である。
【0020】
図1に示すように、殺菌搬入装置1は、種々の物品や機器(被殺菌物)2を、汚染環境P側から動物実験や医薬製造、或いは医療などのために用いるクリーンルームなどの非汚染環境室C内に、殺菌した後搬入するためのものである。
【0021】
殺菌搬入装置1は、非汚染環境室Cと汚染環境Pとを区画する非汚染環境室Cの壁部3に設けられ、被殺菌物2を汚染環境Pから非汚染環境室C内に搬入するための搬入用筒状体4と、搬入用筒状体4の非汚染環境室C側に設けられた搬入用開閉扉5と、汚染環境P側に設けられ、被殺菌物2を収納すべく袋状に形成されると共に開口部6が汚染環境P側に臨んだ搬入用筒状体4に嵌合する大きさに形成されたビニルバッグ7と、ビニルバッグ7の開口部6を搬入用筒状体4に嵌合したときにその間をシールするシール手段8と、ビニルバッグ7内を脱気すると共に殺菌ガスや空気を供給する脱気殺菌手段9とを備える。
【0022】
被殺菌物2としては、内部に殺菌ガスが浸透しにくい布類、寝具(例えば、ベッドマット、布団)などの物品や、内視鏡、パソコンなどの微細部品を有する機器などがある。図1では、布団2aと、パソコン2bを図示している。
【0023】
殺菌ガスとしては、エチレンオキサイドガス、ホルマリンガス、オゾンガス、過酸化水素ガス、イオンクラスターを含むガスなどを用いる。以下、実施の形態では一例としてオゾンガスを用いる場合を説明する。
【0024】
搬入用筒状体4は、例えば、搬入する被殺菌物2のうち、最も大きなものの大きさに合わせた内径にされる。また、搬入用筒状体4の長さは、壁部3の両側(非汚染環境室C側及び汚染環境P側)に搬入用筒状体4の両端部がそれぞれ臨むような長さにされる。言うまでもないが、搬入用開閉扉5は常時は閉じられ、非汚染環境室C内に細菌などが入り込まないようにされる。搬入用筒状体4及び搬入用開閉扉5は、上述の殺菌ガスに浸食されないような金属などで形成するとよい。
【0025】
ビニルバッグ7は、ポリエチレンやポリプロピレン、塩化ビニルなどビニル基を持つ化学物質の重合物からなる透明な高分子フィルムなどの気密性が高く、丈夫且つ柔軟で伸縮性のある材料で袋状に形成され、その開口部6及び搬入用筒状体4に嵌入される嵌入部10が搬入用筒状体4の直径と同じくらいか、やや小さく形成される。これにより、ビニルバッグ7を搬入用筒状体4に嵌合したときに、ビニルバッグ7と搬入用筒状体4との間に隙間が生じにくくなり、ビニルバッグ7内を後述するシール手段8で簡単に密閉することができる。また、ビニルバッグ7の本体部分11は、搬入する被殺菌物2の大きさや数量に合った容積に形成される。ビニルバッグ7を形成する際は、パックシータなどを用いて高分子フィルムをシールして(シール部12)所望の形状に形成する。
【0026】
このビニルバッグ7は、図示しないテーブルなどの上に載置される。ビニルバッグ7には、殺菌ガスをビニルバッグ7内に供給するための殺菌ガス供給口13と、ビニルバッグ7内を脱気するための脱気口14とがそれぞれ取り付けられる。殺菌ガス供給口13及び脱気口14には、それぞれフィルタ15が設けられる。フィルタ15は、例えば、ビニルバッグ7内に供給される殺菌ガスや空気を清浄に保つ機能や、殺菌ガスを分解してから外部に排気するような機能などを有する。
【0027】
シール手段8は、図2(a)に示すように、搬入用筒状体4の外周とビニルバッグ7の開口部6との間に設けられたOリングなどのパッキン16と、パッキン16が設けられた箇所に位置するビニルバッグ7を外側から締め付けるクランプ17とからなる。
【0028】
クランプ17は、図2(b)に示すように、半円弧状の部材18及び部材19の一方をピン20にて開閉自在となるように接続してなり、他方をネジ部材21により締め付けることで、内径が縮径されると共に、内周側でビニルバッグ7とパッキン16とを締め付けるようになっている。
【0029】
再び図1を参照し、脱気殺菌手段9は、ビニルバッグ7内の空気や殺菌ガスを脱気すると共に汚染環境P側に排気する脱気ライン22と、ビニルバッグ7内に殺菌ガスや空気を供給する殺菌ガス供給ライン23とで構成され、脱気ライン22及び殺菌ガス供給ライン23は、ビニルバッグ7に設けられた殺菌ガス供給口13及び脱気口14にそれぞれ接続される。
【0030】
脱気ライン22は、脱気口14に接続された脱気配管24と、その脱気配管24に設けられた真空ポンプ25とからなる。脱気配管24には、バルブ26が設けられる。脱気配管24は、排気ガスが非汚染環境室Cに流入しないように、汚染環境P側に排気するようになっている。
【0031】
殺菌ガス供給ライン23は、空気又は酸素が供給されてオゾンガスを発生させるオゾナイザ27と、オゾナイザ27で発生させたオゾンガスをビニルバッグ7内に供給する殺菌ガス供給配管28とからなる。オゾナイザ27は、例えば汚染環境P側に配置されており、殺菌ガス供給配管28はオゾナイザ27と殺菌ガス供給口13との間に接続されている。殺菌ガス供給配管28には、バルブ29が設けられる。
【0032】
次に、第1の実施の形態に係る殺菌搬入装置1を用いた被殺菌物2の殺菌、搬入動作を説明する。
【0033】
先ず、非汚染環境室Cに搬入する被殺菌物2の大きさに合わせた容積の本体部分11を有するビニルバッグ7を用意し、用意したビニルバッグ7内に被殺菌物2を収容する。
【0034】
被殺菌物2の収容後、ビニルバッグ7をその開口部6及び嵌入部10を拡径させて搬入用筒状体4の汚染環境P側の外周に設けたパッキン16の上から被せて嵌合し、さらにその上からクランプ17でビニルバッグ7をパッキン16と共に締め付ける。これにより、ビニルバッグ7内が密閉可能となると共に、ビニルバッグ7が搬入用筒状体4に着脱自在に取り付けられる。
【0035】
ビニルバッグ7を搬入用筒状体4に嵌合した後、真空ポンプ25を起動してビニルバッグ7内を脱気する。すると、ビニルバッグ7が潰れ、被殺菌物2を真空パックしたような状態になり、被殺菌物2から空気が除去される。このとき、ビニルバッグ7を用いた殺菌搬入装置1ではビニルバッグ7が潰れてビニルバッグ7内が脱気されるため大気圧の状態でビニルバッグ7内を脱気することができ、少ない動力で脱気できる。
【0036】
空気の除去後、真空ポンプ25を停止し、オゾナイザ27を起動してビニルバッグ7内のオゾンガスの濃度が所定の濃度となるようにオゾンガスを供給する。これにより、被殺菌物2の内部にはオゾンガスが浸透する。オゾンガスの濃度は例えば数百〜数千ppmである。
【0037】
この状態で所定時間、例えば数十分間殺菌する。このとき、加温、加湿などにより殺菌ガスが活性化するようにしてもよい。
【0038】
被殺菌物2が十分に殺菌された後、オゾナイザ27を停止させてビニルバッグ7内を脱気し、ビニルバッグ7内に空気を供給する。これにより、被殺菌物2からオゾンガスが除去される。必要に応じて、以上の殺菌工程を繰り返すようにしてもよい。
【0039】
その後、搬入用開閉扉5を開き、非汚染環境室C側からビニルバッグ7内に収容された被殺菌物2を取り出す。ビニルバッグ7は透明で、伸縮性があるので、汚染環境P側からビニルバッグ7を介してその被殺菌物2を非汚染環境室C側に受け渡すことができるため、効率よく搬入作業を行うことができる。以上により、被殺菌物2が殺菌されると共に汚染環境P側から非汚染環境室C内に搬入される。続けて、他の被殺菌物2を非汚染環境室Cに殺菌、搬入する場合には、搬入用開閉扉5を閉めた後、クランプ17を外してビニルバッグ7を搬入用筒状体4から取り外し、上述と同じ工程を繰り返す。
【0040】
このように、殺菌搬入装置1は、殺菌庫を安価で経済的に優れた柔軟なビニルバッグ7で構成している。そのため、殺菌搬入装置1では、脱気の際、それに応じてビニルバッグ7が潰れて容積が変化するため、脱気のための動力、殺菌ガスの消費量を少なくすることができ、低コスト化を実現できる。
【0041】
さらに、殺菌搬入装置1では、伸縮性のある高分子フィルムからなるビニルバッグ7を搬入用筒状体4に嵌合し、これをパッキン16とクランプ17を用いて締め付けて固定しているため、ビニルバッグ7内を簡易な構造で密閉することができると共に、ビニルバッグ7を搬入用筒状体4に脱着自在に取り付けることができる。よって、被殺菌物2の大きさに合わせて都度最適な容積のビニルバッグ7を選択して用いることができる。
【0042】
第1の実施の形態では、殺菌ガス供給ライン23の殺菌ガス供給配管28及び脱気ライン22の脱気配管24は、ビニルバッグ7に接続されているものとしたが、搬入用筒状体4の汚染環境P側の外周に接続されるようにしてもよい。
【0043】
また、第1の実施の形態では、ビニルバッグ7の開口部6及び嵌入部10を搬入用筒状体4の直径と同じくらいか、やや小さく形成するとしたが、ビニルバッグ7と搬入用筒状体4との間の気密性を保つことができればビニルバッグ7の形状はこれに限定されない。
【0044】
さらに、第1の実施の形態では、パッキン16を搬入用筒状体4の外周に設けるとしたが、ビニルバッグ7の開口部6の内周面に予めパッキン16を取り付けておくようにしてもよい。
【0045】
次に、第2の実施の形態を説明する。
【0046】
図3に示すように、第2の実施の形態に係る殺菌搬入装置30は、上述の殺菌搬入装置1において、ビニルバッグ7が筒状に形成され、一方の開口部6が搬入用筒状体4に嵌合され、他方の開口部31が汚染環境P側に別途設けられた投入用開閉扉32を有する投入用筒状体33に嵌合され、一方の開口部6と搬入用筒状体4との間に加え、他方の開口部31と投入用筒状体33との間もシール手段8によりシールされたものである。
【0047】
ビニルバッグ7の他方の開口部31は、投入用筒状体33に嵌入される嵌入部34が投入用筒状体33の直径と同じくらいか、やや小さく形成される。これにより、ビニルバッグ7を投入用筒状体33に嵌合したときに、ビニルバッグ7と投入用筒状体33との間に隙間が生じにくくなり、ビニルバッグ7内をシール手段8で簡単に密閉することができる。
【0048】
投入用筒状体33は、治具35に保持され、搬入用筒状体4の近傍に配置される。この治具35は、移動可能であってもよい。これにより、被殺菌物2の大きさに合わせて、搬入用筒状体4と投入用筒状体33との距離を調整することが可能となる。投入用筒状体33及び投入用開閉扉32もまた搬入用筒状体4及び搬入用開閉扉5と同様に、使用する殺菌ガスに浸食されないような金属などで形成するとよい。
【0049】
この殺菌搬入装置30を用いた被殺菌物2の殺菌、搬入動作を説明する。
【0050】
先ず、非汚染環境室Cに搬入する被殺菌物2の大きさに合わせた容積の本体部分11を有するビニルバッグ7を用意し、ビニルバッグ7をその開口部6及び嵌入部10を拡径させて搬入用筒状体4の汚染環境P側の外周に設けたパッキン16の上から被せて嵌合し、さらにその上からクランプ17でビニルバッグ7をパッキン16と共に締め付ける。また、同様に開口部31及び嵌入部34を拡径させて投入用筒状体33の外周に設けたパッキン16の上から被せて嵌合し、さらにその上からクランプ17でビニルバッグ7をパッキン16と共に締め付ける。これにより、ビニルバッグ7内が密閉可能となると共に、ビニルバッグ7が搬入用筒状体4及び投入用筒状体33に着脱自在に取り付けられる。
【0051】
ビニルバッグ7を搬入用筒状体4及び投入用筒状体33に嵌合した後、投入用開閉扉32を開き、被殺菌物2を投入用筒状体33を通じてビニルバッグ7内に投入して収容する。ビニルバッグ7は透明で、伸縮性があるので、被殺菌物2を投入用筒状体33内に投入した後、ビニルバッグ7を介してその被殺菌物2を受け取ることができるため、被殺菌物2をビニルバッグ7内の所望の位置に置くことができると共に、布団などは搬入後に折り畳むことも可能であり、効率よく搬入収容作業を行うことができる。
【0052】
その後、投入用開閉扉32を閉じ、真空ポンプ25を起動してビニルバッグ7内を脱気した後、真空ポンプ25を停止し、オゾナイザ27を起動してビニルバッグ7内のオゾンガスの濃度が所定の濃度となるようにオゾンガスを供給し、被殺菌物2の内部にオゾンガスを浸透させる。
【0053】
被殺菌物2が十分に殺菌された後、オゾナイザ27を停止させてビニルバッグ7内を脱気し、ビニルバッグ7内に空気を供給する。これにより、被殺菌物2からオゾンガスが除去される。必要に応じて、以上の殺菌工程を繰り返すようにしてもよい。
【0054】
その後、搬入用開閉扉5を開き、非汚染環境室C側からビニルバッグ7内の被殺菌物2を取り出す。以上により、被殺菌物2が殺菌されると共に汚染環境P側から非汚染環境室C内に搬入される。続けて、他の被殺菌物2を殺菌、非汚染環境室Cに搬入する場合には、搬入用開閉扉5を閉めた後、投入用開閉扉32を開き、被殺菌物2を投入し、上述の殺菌、搬入の工程を繰り返す。被殺菌物2の大きさが、前回殺菌、搬入した被殺菌物2と異なる場合には、各クランプ17を外してビニルバッグ7を搬入用筒状体4及び投入用筒状体33から取り外し、被殺菌物2の大きさに合わせた容積の本体部分11を有するビニルバッグ7を用意し、これを搬入用筒状体4及び投入用筒状体33に取り付け、上述の殺菌、搬入の工程を繰り返すようにすればよい。
【0055】
このように、殺菌搬入装置30は、殺菌庫を安価で経済的に優れた柔軟なビニルバッグ7で構成している。そのため、殺菌搬入装置30では、脱気の際、それに応じてビニルバッグ7が潰れて容積が変化するため、脱気のための動力、殺菌ガスの消費量を少なくすることができ、低コスト化を実現できる。
【0056】
さらに、殺菌搬入装置30では、伸縮性のある高分子フィルムからなるビニルバッグ7を搬入用筒状体4及び投入用筒状体33に嵌合し、これをパッキン16とクランプ17を用いて締め付けて固定しているため、ビニルバッグ7内を簡易な構造で密閉することができると共に、ビニルバッグ7を搬入用筒状体4及び投入用筒状体33に脱着自在に取り付けることができる。よって、被殺菌物2の大きさに合わせて都度最適な容積のビニルバッグ7を選択して用いることができる。
【0057】
第2の実施の形態では、殺菌ガス供給ライン23の殺菌ガス供給配管28及び脱気ライン22の脱気配管24は、ビニルバッグ7に接続されているものとしたが、図4に示すように、投入用筒状体33の外周に接続されるようにしてもよいし、図5に示すように、搬入用筒状体4の汚染環境P側の外周に接続されるようにしてもよい。
【0058】
また、第2の実施の形態では、ビニルバッグ7の開口部6及び嵌入部10、開口部31及び嵌入部34を搬入用筒状体4、投入用筒状体33の直径と同じくらいか、やや小さく形成するとしたが、ビニルバッグ7と搬入用筒状体4及び投入用筒状体33との間の気密性を保つことができればビニルバッグ7の形状はこれに限定されない。
【0059】
さらに、第2の実施の形態では、パッキン16を搬入用筒状体4の外周及び投入用筒状体33の外周に設けるとしたが、ビニルバッグ7の開口部6及び開口部31の各内周面に予めパッキン16を取り付けておくようにしてもよい。
【0060】
上記実施の形態では、殺菌ガス供給配管28及び脱気ライン22の脱気配管24は、それぞれ別に接続されるものとしたが、図6に示すように、T字状に形成された1つの吸排気部品36に接続されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 殺菌搬入装置
2 被殺菌物
4 搬入用筒状体
5 搬入用開閉扉
6 開口部
7 ビニルバッグ
8 シール手段
9 脱気殺菌手段
P 汚染環境
C 非汚染環境室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々の物品や機器を、汚染環境側から非汚染環境室内に、殺菌した後搬入するための殺菌搬入装置において、
前記非汚染環境室と前記汚染環境とを区画する壁部に設けられ、前記物品や前記機器を前記汚染環境から前記非汚染環境室内に搬入するための搬入用筒状体と、前記搬入用筒状体の前記非汚染環境室側に設けられた搬入用開閉扉と、前記汚染環境側に設けられ、前記物品や前記機器を収納すべく袋状に形成されると共に開口部が前記汚染環境側に臨んだ前記搬入用筒状体に嵌合する大きさに形成されたビニルバッグと、前記ビニルバッグの開口部を前記搬入用筒状体に嵌合したときにその間をシールするシール手段と、前記ビニルバッグ内を脱気すると共に殺菌ガスや空気を供給する脱気殺菌手段とを備えることを特徴とする殺菌搬入装置。
【請求項2】
前記ビニルバッグは筒状に形成され、一方の開口部が前記搬入用筒状体に嵌合され、他方の開口部が前記汚染環境側に別途設けられた投入用開閉扉を有する投入用筒状体に嵌合され、前記一方の開口部と前記搬入用筒状体との間及び前記他方の開口部と前記投入用筒状体との間がそれぞれシール手段によりシールされる請求項1に記載の殺菌搬入装置。
【請求項3】
前記シール手段は、前記搬入用筒状体又は前記投入用筒状体の外周と前記ビニルバッグとの間に設けられたパッキンと、前記パッキンが設けられた箇所に位置する前記ビニルバッグを外側から締め付けるクランプとからなる請求項2に記載の殺菌搬入装置。
【請求項4】
前記脱気殺菌手段は、前記ビニルバッグ内の空気や殺菌ガスを脱気すると共に汚染環境側に排気する脱気ラインと、前記ビニルバッグ内に殺菌ガスや空気を供給する殺菌ガス供給ラインとで構成され、前記脱気ライン及び前記殺菌ガス供給ラインは、前記ビニルバッグに設けられた殺菌ガス供給口及び脱気口にそれぞれ接続されるか、或いは、前記汚染環境側の前記搬入用筒状体又は前記投入用筒状体にそれぞれ接続される請求項2又は3に記載の殺菌搬入装置。
【請求項5】
前記ビニルバッグは伸縮性のある高分子フィルムからなり、その両開口部を拡径させて前記搬入用筒状体及び前記投入用筒状体にそれぞれ嵌合させる請求項2〜4のいずれかに記載の殺菌搬入装置。
【請求項6】
前記脱気殺菌手段は、始めに前記ビニルバッグ内を前記脱気ラインにより脱気した後、前記ビニルバッグ内に前記殺菌ガス供給ラインにより殺菌ガスを供給し、殺菌後、再び前記ビニルバッグ内を前記脱気ラインにより脱気し、前記ビニルバッグ内に前記殺菌ガス供給ラインにより空気を供給するようにされる請求項1〜5のいずれかに記載の殺菌搬入装置。
【請求項7】
前記物品は布類や寝具であり、前記機器は内視鏡やパソコンである請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌搬入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−36559(P2011−36559A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188609(P2009−188609)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】