説明

殺菌装置および殺菌方法

【課題】容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる殺菌装置を提供することを目的とする。
【解決手段】殺菌装置10は、容器1を支持する支持部材であって、容器とともに回転可能な支持部材31と、支持部材に支持される容器内に挿入可能な放電電極20と、支持部材に支持される容器を外方から部分的に囲む囲い部材26,27と、囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う対向電極22a,22bと、を備える。大気圧プラズマを生じさせるため、放電電極と対向電極との間で高電圧パルスが印加される。囲い部材は、支持部材の回転軸L3に直交する断面において、回転軸を中心とした円弧の一部分に沿った輪郭を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧プラズマを用いて殺菌対象を殺菌する殺菌装置および殺菌方法に係り、とりわけ、殺菌対象を高いレベルでむらなく殺菌することができる殺菌装置および殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体、固体、または液体と固体との組み合わせからなる飲料、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、または肥料等の被充填物は無菌環境下において包装容器(包装材料)に充填され、その後、無菌環境下で包装容器が密封される。包装容器は充填工程に先立ってその内面および外面を殺菌処理され、これにより、充填工程への菌の持ち込みが防止される。
【0003】
包装容器の殺菌に適用されるものに限られず、樹脂等からなる殺菌対象の殺菌装置および殺菌方法について、様々な研究開発がなされてきた。昨今においては、内部に薬剤等が残留しないこと、殺菌対象に影響を与えず十分な殺菌効果が得られ得ること等の理由から、常温常圧下での大気圧プラズマを用いた殺菌方法および殺菌装置が開発されつつある。(例えば、特許文献1)。
【0004】
とりわけ、立体的な外形状を有する容器を殺菌する分野においては、内部へ薬剤が残留しやすいこと、むらなく殺菌することが困難であること等の理由から、大気圧プラズマを用いた殺菌方法に対する関心が非常に高まっている。
【特許文献1】特開2004−359307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現状において、大気圧プラズマを用いた殺菌技術は、例えば立体的な外形状を有する殺菌対象を、十分高い殺菌レベルでむらなく殺菌し得る程度に達していない。このため、大気圧プラズマを用いた殺菌は未だ商業的に広く普及するに至っていない。
【0006】
また、プラズマを利用した殺菌の商業的な普及を実現させるには、装置コストや処理効率についても考慮する必要がある。
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、殺菌対象、とりわけ容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる殺菌装置および殺菌方法を提供することを目的とする。また、殺菌装置を安価に製造することができるとともに、殺菌対象を効率的に殺菌することができれば、都合が良い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1の殺菌装置は、殺菌対象である容器を支持する支持部材であって、支持される容器とともに回転可能な支持部材と、前記支持部材に支持される容器内に挿入可能な放電電極と、前記支持部材に支持される容器を外方から囲むように配置された囲い部材と、囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う対向電極であって、大気圧プラズマを生じさせるため、放電電極との間で高電圧パルスを印加される対向電極と、を備え、前記囲い部材は、前記支持部材の回転軸に直交する断面において、前記回転軸を中心とした円弧の一部分に沿った輪郭を有することを特徴とする。
【0009】
本発明による第1の殺菌装置によれば、放電電極と対向電極との間に存在する気体がプラズマ化し、容器を殺菌することができる。とりわけ、支持部材を容器とともに回転させた場合には、容器をむらなく殺菌することができる。また、囲い部材が、前記支持部材の回転軸に直交する断面において、前記回転軸を中心とした円弧の一部分に沿った輪郭を有していることから、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルで殺菌することもできる。
【0010】
本発明による第1の殺菌装置において、前記囲い部材は、前記支持部材の回転軸に沿った断面において、前記容器の外輪郭に対応した輪郭を有するようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0011】
また、本発明による第1の殺菌装置において、前記囲い部材は、前記支持部材の回転軸を中心とした前記円弧に沿って、前記支持部材に支持される容器の周囲を前記対向電極とともに移動可能であるようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、囲い部材を対向電極とともに放電電極に対して相対移動させ、対向電極の放電電極に対する相対位置を変化させることができる。これにより、放電電極と対向電極との間に生ずるプラズマ化した気体によって、放電電極をむらなく殺菌することができる。
【0012】
さらに、本発明による第1の殺菌装置において、前記囲い部材は、前記支持部材に支持される容器を間に挟むようにして配置された第1囲い部材および第2囲い部材を含み、前記対向電極は、第1囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、第2囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含むようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、プラズマ化した気体が生成され得る領域が拡大および分散される。これにより、容器をより高いレベルでむらなく殺菌することができる。この場合、前記第1囲い部材および前記第2囲い部材は、それぞれ互いに平行な軸を中心として揺動可能であり、互いに逆の揺動方向に揺動し、互いから離間するように展開し得るようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、第1囲い部材および第2囲い部材によって、支持部材に支持された容器の広い領域を取り囲むことができるとともに、第1囲い部材および第2囲い部材を揺動させることによって、容器が支持されるべき領域を大きく開放することができる。このため、高いレベルでむらなく殺菌することができるとともに、支持部材への容器の受け渡しおよび支持部材からの容器の受け取りを容易に行うことができる。
【0013】
さらに、本発明による第1の殺菌装置が、前記囲い部材との間で前記支持部材に支持される容器を挟むようにして配置される囲い体をさらに備え、前記対向電極は、前記囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、前記囲い体の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含むようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、プラズマ化した気体が生成され得る領域が拡大および分散される。これにより、容器をより高いレベルでむらなく殺菌することができる。この場合、前記支持部材が、前記放電電極、並びに、前記囲い部材および前記第1対向電極と同期して移動可能であり、前記囲い体は、前記支持部材の移動経路に沿って配置されているようにしてもよい。
【0014】
さらに、本発明による第1の殺菌装置において、前記放電電極は、前記支持部材の回転軸と平行な軸を中心として回転可能であるようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、放電電極を回転させた場合、放電電極の対向電極に対面する表面領域を変化させることができる。これにより、放電電極と対向電極との間に生ずるプラズマ化した気体によって、放電電極をむらなく殺菌することができる。
【0015】
本発明による第2の殺菌装置は、殺菌対象である容器を支持する支持部材と、前記支持部材に支持される容器内に挿入可能な放電電極と、前記支持部材に支持される容器を外方から囲む囲い部材と、囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う対向電極であって、大気圧プラズマを生じさせるため、放電電極との間で高電圧パルスを印加される対向電極と、を備え、前記囲い部材は、前記対向電極とともに、前記放電電極の挿入方向と平行な軸を中心として前記支持部材に支持される容器の周囲を移動可能であることを特徴とする。
【0016】
本発明による第2の殺菌装置によれば、放電電極と対向電極との間に存在する気体がプラズマ化し、容器を殺菌することができる。とりわけ、対向電極とともに囲い部材を容器および放電電極に対して相対移動させた場合には、容器および放電電極をむらなく殺菌することができる。また、対向電極の容器に対する相対移動により、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルで殺菌することもできる。
【0017】
本発明による第2の殺菌装置において、前記囲い部材は、前記放電電極の挿入方向に直交する断面において、前記放電電極の挿入方向と平行な前記軸を中心とした円弧の一部分に沿った輪郭を有するようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルで殺菌することもできる。
【0018】
また、本発明による第2の殺菌装置において、前記囲い部材は、前記放電電極の挿入方向に沿った断面において、前記容器の外輪郭に対応した輪郭を有するようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルで殺菌することもできる。
【0019】
さらに、本発明による第2の殺菌装置において、前記囲い部材は、前記支持部材に支持される容器を間に挟むようにして配置された第1囲い部材および第2囲い部材を含み、前記対向電極は、前記第1囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、前記第2囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含むようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、プラズマ化した気体が生成され得る領域が拡大および分散される。これにより、容器をより高いレベルでむらなく殺菌することができる。この場合、前記第1囲い部材および前記第2囲い部材は、それぞれ互いに平行な軸を中心として揺動可能であり、互いに逆の揺動方向に揺動し、互いから離間するように展開し得るようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、第1囲い部材および第2囲い部材によって、支持部材に支持された容器の広い領域を取り囲むことができるとともに、第1囲い部材および第2囲い部材を揺動させることによって、容器が支持されるべき領域を大きく開放することができる。このため、高いレベルでむらなく殺菌することができるとともに、支持部材への容器の受け渡しおよび支持部材からの容器の受け取りを容易に行うことができる。
【0020】
さらに、本発明による第2の殺菌装置において、前記放電電極が、前記放電電極の挿入方向と平行な軸を中心として回転可能であるようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、放電電極を回転させた場合、放電電極の対向電極に対面する表面領域を変化させることができる。これにより、放電電極と対向電極との間に生ずるプラズマ化した気体によって、放電電極をむらなく殺菌することができる。
【0021】
本発明による第3の殺菌装置は、殺菌対象を支持する回転可能な支持部材と、前記支持部材に支持される殺菌対象を間に挟むようにして配置された放電電極および対向電極であって、大気圧プラズマを生じさせるために高電圧パルスを印加される放電電極および対向電極と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
このような本発明による第3の殺菌装置によれば、放電電極および対向電極の間に存在する気体がプラズマ化し、殺菌対象を殺菌することができる。とりわけ、支持部材を殺菌対象とともに回転させた場合には、殺菌対象を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0023】
本発明による第4の殺菌装置は、殺菌対象である容器を支持する支持部材であって、支持される容器とともに回転可能な支持部材と、前記支持部材に支持される容器内に挿入可能な放電電極と、前記支持部材に支持される容器を外方から囲むように配置された囲い部材と、囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う対向電極であって、大気圧プラズマを生じさせるため、放電電極との間で高電圧パルスを印加される対向電極と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明による第4の殺菌装置によれば、放電電極および対向電極の間に存在する気体がプラズマ化し、容器を殺菌することができる。とりわけ、支持部材を殺菌対象である容器とともに回転させた場合には、容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0025】
本発明による第1乃至第4の殺菌装置において、前記支持部材は、略平板状からなり、その板面に略直交する軸を中心として回転可能であるようにしてもよい。また、本発明による第1乃至第4の殺菌方法において、前記支持部材は略平板状からなり、前記放電電極の挿入方向は前記支持部材の板面に直交する方向に沿うようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、殺菌対象を容易に支持することができる。
【0026】
また、本発明による第1乃至第4の殺菌装置において、前記支持部材は殺菌対象を一方の面上に支持し、前記支持部材の他方の面の少なくとも一部分に、大気圧プラズマを生じさせるために放電電極との間で高電圧パルスを印加される支持部対向電極が設けられていてもよい。このような殺菌装置によれば、容器の支持部材に対面する部分を高い殺菌レベルで殺菌することができる。
【0027】
さらに、本発明による第1乃至第4の殺菌装置において、前記支持部材の殺菌対象に対面する部分に貫通孔が形成されており、前記貫通孔に接続された吸引機構であって、前記支持部材の貫通孔を介し前記殺菌対象を前記支持部材に向けて吸引する吸引機構が設けられていてもよい。このような殺菌装置によれば、簡易な装置および簡易な制御により殺菌対象を支持部材に対して容易かつ迅速に固定することができる。あるいは、本発明による第1乃至第4の殺菌方法において、前記殺菌対象を狭持する狭持機構が設けられていてもよい。このような殺菌装置によっても、簡易な装置および簡易な制御により容器を支持部材に対して容易かつ迅速に固定することができる。
【0028】
さらに、本発明による第1乃至第4の殺菌装置が、前記放電電極と前記対向電極とに接続され、前記放電電極と前記対向電極との間に高電圧パルスを印加する高電圧パルス印加装置をさらに備えるようにしてもよい。
【0029】
本発明による第1の殺菌方法は、回転可能な支持部材によって殺菌対象である容器を支持する工程と、前記容器内に放電電極を挿入する工程と、前記容器内に挿入された前記放電電極と、前記支持部材に支持された容器を外方から囲むように配置された囲い部材であって、前記支持部材の回転軸に直交する断面において前記回転軸を中心とした円弧の一部分に沿った輪郭を有する囲い部材を、少なくとも部分的に外方から覆う対向電極と、の間に高電圧パルスを印加し、前記放電電極と前記対向電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記容器とともに前記支持部材を回転させることを特徴とする。
【0030】
本発明による第1の殺菌方法によれば、放電電極および対向電極の間に存在する気体がプラズマ化し、殺菌対象を殺菌することができる。とりわけ、大気圧プラズマを生じさせる際に、支持部材を殺菌対象とともに回転させるので、容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる。なお、この第1の殺菌方法においては、前記容器を支持する工程および前記放電電極を挿入する工程のうちいずれの工程を先に行ってもよいし、あるいは、二つの工程を並行して行ってもよい。
【0031】
本発明による第1の殺菌方法において、前記囲い部材は、前記支持部材の回転軸に沿った断面において、前記容器の外輪郭に対応した輪郭を有するようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0032】
また、本発明による第1の殺菌方法の前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記対向電極とともに前記囲い部材を、前記支持部材の回転軸を中心とした前記円弧に沿って前記容器の周囲を移動させるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、大気圧プラズマを生じさせる際に、囲い部材が対向電極とともに放電電極に対して相対移動し、対向電極の放電電極に対する相対位置が変化する。これにより、放電電極と対向電極との間に生ずるプラズマ化した気体によって、放電電極をむらなく殺菌することができる。
【0033】
さらに、本発明による第1の殺菌方法において、前記囲い部材は、前記支持部材に支持される容器を間に挟むようにして配置された第1囲い部材および第2囲い部材を含み、前記対向電極は、前記第1囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、前記第2囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含み、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記放電電極と、前記第1対向電極および前記第2対向電極の両方と、の間に高電圧パルスが印加されるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、プラズマ化した気体が生成され得る領域が拡大および分散される。これにより、容器をより高いレベルでむらなく殺菌することができる。この場合、前記支持部材によって容器を支持する工程において、前記第1囲い部材および前記第2囲い部材が、それぞれ互いに平行な軸を中心として互いに逆の揺動方向に揺動して、互いから離間するように展開した状態で、前記容器を前記支持部材上に配置するようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、第1囲い部材および第2囲い部材によって、支持部材に支持された容器の広い領域を取り囲むことができるとともに、第1囲い部材および第2囲い部材を揺動させることによって、容器が支持されるべき領域を大きく開放することができる。このため、高いレベルでむらなく殺菌することができるとともに、支持部材への容器の受け渡しおよび支持部材からの容器の受け取りを容易に行うことができる。
【0034】
さらに、本発明による第1の殺菌方法の前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記囲い部材を少なくとも部分的に覆う第1対向電極、および、前記囲い部材との間で前記支持部材に支持される容器を挟むようにして配置される囲い体を少なくとも部分的に覆う第2対向電極の両方と、前記放電電極と、の間に高電圧パルスが印加されるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、プラズマ化した気体が生成され得る領域が拡大および分散される。これにより、容器をより高いレベルでむらなく殺菌することができる。この場合、前記容器とともに前記支持部材を、前記放電電極、並びに、前記囲い部材および前記第1対向電極と同期して移動させ、前記容器が、前記囲い部材と、前記支持部材の移動経路に沿って配置された前記囲い体と、の間にある際に、前記放電電極と前記第1対向電極および前記第2対向電極との間に高電圧パルスが印加されているようにしてもよい。
【0035】
さらに、本発明による第1の殺菌方法の前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記放電電極を、前記支持部材の回転軸と平行な軸を中心として回転させるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、大気圧プラズマを生じさせる際に、放電電極が回転して、放電電極の対向電極に対面する表面領域が変化する。これにより、放電電極と対向電極との間に生ずるプラズマ化した気体によって、放電電極をむらなく殺菌することができる。
【0036】
本発明による第2の殺菌方法は、支持部材によって殺菌対象である容器を支持する工程と、前記容器内に放電電極を挿入する工程と、前記容器内に挿入された前記放電電極と、前記支持部材に支持された容器を外方から囲むように配置された囲い部材を、少なくとも部分的に外方から覆う対向電極と、の間に高電圧パルスを印加し、前記放電電極と前記対向電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記対向電極とともに前記囲い部材を、前記放電電極の挿入方向と平行な軸を中心として前記容器の周囲を移動させることを特徴とする。
【0037】
本発明による第2の殺菌方法によれば、放電電極および対向電極の間に存在する気体がプラズマ化し、殺菌対象を殺菌することができる。とりわけ、大気圧プラズマを生じさせる際に、囲い部材が対向電極とともに容器および放電電極に対して相対移動し得るので、容器および放電電極をむらなく殺菌することができる。また、対向電極の容器に対する相対移動により、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルで殺菌することもできる。なお、この第2の殺菌方法においては、前記容器を支持する工程および前記放電電極を挿入する工程のうちいずれの工程を先に行ってもよいし、あるいは、二つの工程を並行して行ってもよい。
【0038】
本発明による第2の殺菌方法において、前記囲い部材は、前記放電電極の挿入方向に直交する断面において、前記放電電極の挿入方向をと平行な前記軸を中心とする円弧の一部分に沿った輪郭を有するようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルで殺菌することもできる。
【0039】
また、本発明による第2の殺菌方法において、前記囲い部材は、前記放電電極の挿入方向に沿った断面において、前記容器の外輪郭に対応した輪郭を有するようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルで殺菌することもできる。
【0040】
さらに、本発明による第2の殺菌方法において、前記囲い部材は、前記支持部材に支持される容器を間に挟むようにして配置された第1囲い部材および第2囲い部材を含み、前記対向電極は、前記第1囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、前記第2囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含み、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記放電電極と、前記第1対向電極および前記第2対向電極の両方と、の間に高電圧パルスが印加されるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、プラズマ化した気体が生成され得る領域が拡大および分散される。これにより、容器をより高いレベルでむらなく殺菌することができる。この場合、前記支持部材によって容器を支持する工程において、前記第1囲い部材および前記第2囲い部材が、それぞれ互いに平行な軸を中心として互いに逆の揺動方向に揺動して、互いから離間するように展開した状態で、前記容器を支持部材上に配置するようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、第1囲い部材および第2囲い部材によって、支持部材に支持された容器の広い領域を取り囲むことができるとともに、第1囲い部材および第2囲い部材を揺動させることによって、容器が支持されるべき領域を大きく開放することができる。このため、高いレベルでむらなく殺菌することができるとともに、支持部材への容器の受け渡しおよび支持部材からの容器の受け取りを容易に行うことができる。
【0041】
さらに、本発明による第2の殺菌方法において、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記放電電極を、前記放電電極の挿入方向と平行な軸を中心として回転させるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、大気圧プラズマを生じさせる際に、放電電極が回転して、放電電極の対向電極に対面する表面領域が変化する。これにより、放電電極と対向電極との間に生ずるプラズマ化した気体によって、放電電極をむらなく殺菌することができる。
【0042】
本発明による第3の殺菌方法は、回転可能な支持部材によって殺菌対象を支持する工程と、前記支持部材に支持された前記殺菌対象を間に挟むようにして配置された放電電極と対向電極との間に高電圧パルスを印加し、前記放電電極と前記対向電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、殺菌対象とともに前記支持部材を回転させることを特徴とする。
【0043】
本発明による第3の殺菌方法によれば、放電電極および対向電極の間に存在する気体がプラズマ化し、殺菌対象を殺菌することができる。とりわけ、大気圧プラズマを生じさせる際に、支持部材を殺菌対象とともに回転させるので、殺菌対象を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0044】
本発明による第4の殺菌方法は、回転可能な支持部材によって殺菌対象である容器を支持する工程と、前記容器内に放電電極を挿入する工程と、前記容器内に挿入された前記放電電極と、前記支持部材に支持された容器を外方から囲むように配置された囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う対向電極と、の間に高電圧パルスを印加し、前記放電電極と前記対向電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、容器とともに前記支持部材を回転させることを特徴とする。
【0045】
本発明による第4の殺菌方法によれば、放電電極および対向電極の間に存在する気体がプラズマ化し、容器を殺菌することができる。とりわけ、大気圧プラズマを生じさせる際に、支持部材を容器とともに回転させるので、容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる。なお、この第4の殺菌方法においては、前記容器を支持する工程および前記放電電極を挿入する工程のうちいずれの工程を先に行ってもよいし、あるいは、二つの工程を並行して行ってもよい。
【0046】
本発明による第1乃至第4の殺菌方の前記支持部材によって殺菌対象を支持する工程において、平板状からなる支持部材の一方の面上に殺菌対象を配置するようにしてもよい。さらに、前記支持部材によって容器を支持する工程において、殺菌対象である容器は、前記放電電極を挿入される開口部に対面する底部が前記支持部材の一方の板面に対面するようにして、前記支持部材上に配置されるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、殺菌対象を容易に支持することができる。
【0047】
また、本発明による第1乃至第4の殺菌方法の前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、平板状からなる支持部材を、その板面に直交する方向を軸として回転させるようにしてもよい。あるいは、本発明による第1乃至第4の殺菌方法の前記放電電極を挿入する工程において、前記放電電極の挿入方向が平板状からなる支持部材の板面に直交する方向に沿うようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、殺菌対象を容易に支持することができる。
【0048】
さらに、本発明による第1乃至第4の殺菌方法の前記支持部材によって殺菌対象を支持する工程において、平板状からなる支持部材の一方の面上に殺菌対象を配置し、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、平板状からなる支持部材の他方の面の少なくとも一部分を覆う支持部対向電極および前記対向電極の両方と、前記放電電極と、の間に高電圧パルスが印加されるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、殺菌対象の支持部材に対面する部分を高いレベルで殺菌することができる。
【0049】
さらに、本発明による第1乃至第4の殺菌方法の前記大気圧プラズマを印加する工程において、殺菌対象は、前記支持部材に向けて吸引されて前記支持部材に吸着保持されるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、簡易な装置および簡易な制御により殺菌対象を支持部材に対して容易かつ迅速に固定することができる。あるいは、本発明による第1乃至第4の殺菌方法の前記大気圧プラズマを印加する工程において、殺菌対象は狭持されて前記支持部材に保持されるようにしてもよい。このような殺菌方法によっても、簡易な装置および簡易な制御により殺菌対象を支持部材に対して容易かつ迅速に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0051】
図1乃至図14は本発明による殺菌装置および殺菌方法の一実施の形態を示す図である。
【0052】
このうち図1は容器の成形から内容物の充填までの概略工程を示す図であり、図2は殺菌装置の概略構成を示す上面図であり、図3は処理内容に基づいた殺菌装置内の区分けを説明する図であり、図4は容器の外面に液体を付着させる方法および付着手段の概略構成を示す図であり、図5は容器の内部に蒸気を導入する方法および導入手段の概略構成を示す図であり、図6は容器の内部への蒸気の導入方法を説明するための図であり、図7は図2のXII−XII線に沿った断面図であり、図8は図2のXIII−XIII線に沿った断面図であり、図9は囲い部材の構成を説明するための線図であり、図10は放電電極を示す図であり、図11は図10のXI−XI線に沿った断面図であり、図12は高電圧パルス印加装置の概略構成を示す図であり、図13は図2のXIII−XIII線に沿った断面図であり、図14は殺菌方法を説明するための図である。
【0053】
<殺菌対象>
以下の実施の形態において、上端に設けられた開口部1aと、開口部1aから徐々に太さが太くなっていく首部を含む側部1bと、側部1bの下方に設けられ開口部1aと向かい合う底部1cと、を備えるボトル形状を有した容器1を殺菌対象として殺菌する例を説明する。このような殺菌は、図1に示すように、容器1が成形された後であって当該容器1へ内容物を充填する前に、行われものである。
【0054】
ただし、これに限られず、本発明による殺菌装置および殺菌方法を用いて殺菌される殺菌対象は、金属以外の各種の材料にて構成されたものであればよい。したがって、殺菌対象となる容器を、ボトル形状を有した容器に限られず、コップ形状を有した容器、トレイ型の容器、箱型の容器等の種々の公知のタイプの容器とすることができる。
【0055】
<殺菌装置>
〔全体構成〕
まず、容器の殺菌装置10について説明する。
【0056】
図1乃至図14に示すように、殺菌装置10は、チャンバー12と、回転軸L1を中心として回転自在な第1の回転体24と、第1回転体24によって搬送される殺菌対象である容器1の外面に所定の液体を付着させる付着手段86と、第1回転体24によって搬送される容器1の内部に所定の液体を蒸発させてなる蒸気を導入する導入手段70と、回転軸L2を中心として回転自在な第2の回転体45と、第2回転体45に設けられ、殺菌対象である容器1を支持する支持部材31と、支持部材31に支持される容器1内に直線的に挿入可能な放電電極20と、支持部材31に支持される容器1を外方から部分的に囲むように配置された囲い部材26,27と、囲い部材26,27の少なくとも一部分を外方から覆う対向電極21と、放電電極20および対向電極21の間に高電圧パルスを印加する高電圧パルス印加装置57と、を備えている。
【0057】
本実施の形態においては、後に詳述するように、支持部材31は、第2回転体45に回転可能に支持されている。本実施の形態においては、支持手段31と第2回転体45とによって支持手段30が構成される。支持手段30は、チャンバー12内において、殺菌対象である容器1を回転可能かつ移動可能に支持する。
【0058】
また、図2に示すように、殺菌装置10は、チャンバー12内に連通し、チャンバー12内に殺菌剤を供給する殺菌剤供給手段11をさらに備えている。本実施の形態においては、殺菌剤として過酸化水素を用いており、殺菌剤供給手段11は過酸化水素水と加圧されたエアとを二流体スプレーで混合し、過酸化水素ミストとしてチャンバー12内に送り込むようになっている。また、この殺菌剤供給手段11は常温または加熱されたエアをチャンバー12内に送り込むこともできるようになっている。なお、チャンバー12には、チャンバー12内への殺菌剤の供給に対応して、1つまたは複数の排気口11aが設けられている。
【0059】
図2に示すように、このような殺菌装置10において、殺菌対象である容器1は、搬入手段15aにより搬入口14aからチャンバー12内に送り込まれ、受け渡しホイール16を介して第1回転体24へ受け渡される。第1回転体24に受け渡された容器1は、所定の処理を施されながら、受け渡しホイール16を介して支持手段30に受け渡される。その後、容器1は、受け渡しホイール16を介し、搬出手段15bまたは搬出手段19aに受け渡され、搬出口14bまたは不良品搬出口19を経てチャンバー12外へ運び出されるようになっている。
【0060】
また、チャンバー12内を含む搬入口14aよりも下流工程側を陽圧とすることができるようになっている。したがって、殺菌装置10の稼働中に、搬入口14aにおいて、チャンバー12内からチャンバー12外へ向けた気流を形成することができ、これにより、搬入口14aから菌が持ち込まれることを防止することができるようになっている。また、後に詳述するように、支持手段30へ受け渡された後の容器1の通過経路は、処理スペース5aとして、チャンバー12内のその他の領域から区分けされている。そして、チャンバー12内において、処理スペース5aは、処理スペース5a以外の領域よりも陽圧に保つことができるようなっている。したがって、チャンバー12内において、処理スペース5aから処理スペース5a以外の領域に向けた気流をつくりだすことができるようになっている。
【0061】
〔第1回転体、付着手段および導入手段〕
このうちまず、主に図2、図4および図5を用いて、第1回転体24と、第1回転体24によって搬送される容器1を処理する付着手段86および導入手段70について説明する。
【0062】
第1回転体24は、モータ等の駆動手段(図示せず)を介し回転軸L1を中心として回転自在となっており、また、受け渡しホイール16を介して搬送手段15aによって搬送されてきた殺菌対象の容器1を順次受けるようになっている。図2に示すように、第1回転体24は、回転軸L1を中心とした円周上に等間隔を空けて容器1を保持する。そして、第1回転体24は、回転軸L1を中心として回転することにより、回転軸L1を中心とした円周に沿って、保持した容器1を搬送するようになっている。
【0063】
付着手段86は、第1回転体24によって搬送される容器1に向けて所定の液体を吹き付け、容器1の外面に液体を付着させるようになっている。図2および図4に示すように、このような付着手段86は、第1回転体24により搬送される容器1の移動経路の所定区間に沿って配置された複数の二流体スプレー87と、管89aを介して二流体スプレー287に連通した空気供給手段82と、管89bを介して二流体スプレー87に連通するとともに、管89cを介して空気供給手段82に連通した液体タンク88と、を有している。
【0064】
空気供給手段82は、管89aを介し、所定圧力および所定流量の空気を二流体スプレー87に送り込むようになっている。
【0065】
液体タンク88内には所定の液体が収容されている。液体タンク88は図示しない液体供給手段に連通している。そして、液体供給手段は液体タンク88に液体を供給して、液体タンク88内に蓄えられている液体の量が常に一定範囲内となるようにしている。管89bの液体タンク88内にある端部は、所定量に調整された液体中まで延びている。一方、管89cの液体タンク88内にある端部は、液体タンク88内に貯留された液体中まで延びていない、すなわち、液体中に浸かっていない。そして、この管89cを介し、空気供給手段82から液体タンク88内に空気が送り込まれ、液体タンク88内の圧力が上昇する。この液体タンク88内における圧力上昇にともない、管89bを介し、液体タンク88から二流体スプレー87へ液体が送り込まれるようになっている。なお、空気供給手段82は、液体タンク88中の圧力が所定の圧力値となるように、液体タンク88へ空気を送り込むようになっており、これにより、二流体スプレー87に所定流量かつ所定圧力の液体が送り込まれる。
【0066】
なお、各要素には、流量計や圧力計等の適切な計器が設けられており、これによって、上述した各圧力や各流量が一定の値にあることを確認することができるようになっている。
【0067】
このような構成により、二流体スプレー87に所定流量および所定圧力の液体と空気とが送り込まれ、搬送されている容器1に液体が空気との混合物としてスプレーされる(噴射される)ようになっている。
【0068】
ここで、所定の液体としては、水、とりわけ不純物を含まない純水が適している。純水を用いた場合、その供給量は容器1の外面に曇りが生ずる程度でよく、付着する液滴は直径数μm程度の微粒子であることが好ましい。そして、例えば容器1が容量240mL(ミリリットル)の樹脂製ボトルである場合において、容器1の外面に対して0.01g〜10gの範囲の純水を付着させることが好ましい。
【0069】
なお、殺菌効果を向上させることができる限りにおいて、水(純水)に代え、エタノールやアセトン等を含む有機系水溶液や電解質等を含む無機系水溶液を供給するようにしてもよい。また、空気供給手段に代え、例えば、酸素、水素、窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選択される少なくとも一種類のガスを含むガスを供給するガス供給手段を用いることもできる。また、計器による監視だけでなく、容器1の外面への液体付着状態を検査する何らかの手段を設けるようにすることも好ましい。このような手段として、液体を付着させられた容器1の一方からレーザ光を照射するレーザ光照射器と、容器1の他方から照射されたレーザ光の透過量を測定するレーザ光測定器と、を有する手段が用いられ得る。
【0070】
次に、導入手段70について説明する。
【0071】
本実施の形態において、導入手段70は、所定の液体を蒸発させてなる蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガスを、第1回転体24によって搬送される容器1の内部に導入するようになっている。図2および図5に示すように、このような導入手段70は、第1回転体24の容器1を保持すべき位置にそれぞれ対応して設けられた複数の導入管75と、複数の導入管75にそれぞれ対応して設けられ導入管75を開閉する複数のバルブ79と、複数の導入管75に連結されたループ状のマニホールド73と、所定の液体を収容した液槽90と、液槽90に所定のガスを供給するガス供給手段78と、液槽90とマニホールド73とを連通させる管71と、管71を加熱するヒーター81と、ヒーター以降の管71、マニホールド73、および導入管75に巻き付けられたテープヒーター(リボンヒーター)77と、を有している。各導入管75の末端は、第1回転体24に保持される容器1の開口部1aの直上または容器1の内部まで延び入っている。
【0072】
図2に示すように、本実施の形態においては、マニホールド73は円形状からなっており、回転軸L1を中心とした円周に沿って延びるよう、第1回転体24の回転軸L1を中心として配置されている。そして、各導入管75は、回転軸L1を中心とした放射方向(半径方向)に沿ってマニホールド73から延び出ており、回転軸L1を中心として所定角度ずつ離間して配置されている。
【0073】
液槽90は図示しない液体供給手段に連通している。そして、液体供給手段は液槽90に液体を供給して、液槽90内に収容されている液体の量が常に一定範囲内となるようにしている。管71の液槽90内にある端部は液槽90内の上方にあり、液槽90に貯留された液体中まで延びていない、すなわち、液体中に浸かっていない。一方、ガス供給手段78は液槽90の下方から所定のガスを液槽90内に送り込んでおり、供給されたガスは液槽90内の液体中を通過し、液槽90内の液体上方に回収されるようになっている。
【0074】
また、図5に示すように、液槽90内に蓄えられた液体の温度を調整する温度調整装置91が設けられている。温度調整装置91は、液槽90の液体中に配置された加熱機構91bと、液槽90内の液体の温度を測定する熱電対91cと、加熱機構91bおよび熱電対91cに接続された調整制御部91aと、を有している。調整制御部91aは、熱電対91cによる液温の測定結果に基づいて加熱機構91bを入り切りし、液槽90内の液体の温度を一定に保つようになっている。
【0075】
このような構成によって、液槽90内の液体上方には、所定湿度、所定温度、および所定圧力の蒸気混合ガスが生成されて蓄えられる。そして、バルブ79が開いている導入管75に、管71およびマニホールド73を介して蒸気混合ガスが送り込まれ、該導入管75から容器1の内部に蒸気混合ガスが導入されるようになる。
【0076】
なお、各要素には、流量計や圧力計等の適切な計器が設けられており、これによって、上述した各圧力や各流量が一定の値にあることを確認することができるようになっている。
【0077】
ここで、所定の液体としては、水、とりわけ不純物を含まない純水が適している。純水を用いた場合、その供給量は容器1の内面に曇りが生ずる程度でよく、例えば容器1が容量240mL(ミリリットル)の樹脂製ボトルの場合、容器1の内部に0.01g〜10gの程度の純水が導入されることが好ましい。なお、殺菌効果を向上させることができる限りにおいて、水(純水)に代え、エタノールやアセトン等を含む水溶液を供給するようにしてもよい。また、ここでいう所定の液体は、上述した付着手段86から噴射される液体と必ずしも同一である必要はない。
【0078】
また、所定のガスとしては、酸素、水素、窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種類のガスを使用することができる。これらのガスを使用することは、高電圧パルスを印加した際の絶縁破壊電圧の低下や、生成される活性酸素種量の増加等、種々の効果を期待することができる点において好ましい。また、上記群から選ばれる2種類以上のガスを混合して供給するようにしてもよい。その他にもプラズマ生成に寄与する限りにおいて種々のガスを利用することができる。また、ここでいう所定のガスは、上述した付着手段86から液体とともに噴射されるガスと必ずしも同一である必要はない。
【0079】
なお、計器による監視だけでなく、容器1の外面への液体付着状態を検査する何らかの手段を設けるようにすることも好ましい。このような手段として、液体を付着させられた容器1の一方からレーザ光を照射するレーザ光照射器と、容器1の他方から照射されたレーザ光の透過量を測定するレーザ光測定器と、を有する手段が用いられ得る。
【0080】
ところで、これらの付着手段86および導入手段70の各構成要素、とりわけ管類を、上述した殺菌剤供給手段11へ、例えばバルブ等を介して開閉自在に連通させるようにしてもよい。この場合、殺菌剤供給手段11から殺菌剤により、付着手段86および導入手段70を使用前に殺菌処理することができる点で好ましい。
【0081】
〔支持手段〕
次に、主に図2並びに図7乃至図9を用い、殺菌対象である容器1を回転可能かつ移動可能に支持する支持手段30について説明する。
【0082】
本実施の形態において、支持手段30は、殺菌対象である複数の容器1を支持する支持機構、支持した容器1を回転させる回転機構、および支持した容器1を所定の移動経路に沿って搬送する移動機構として機能するようになっている。そして、図2に示すように支持手段30は、回転軸L2を中心として回転可能な第2回転体45と、第2回転体45に回転可能に支持された複数の支持部材であって容器1を下方から支持する複数の支持部材31と、を有している。
【0083】
図7に示すように、本実施の形態において、第2回転体45は、回転軸L2上を延びるシャフト49を取り囲むように配置されており、モータ等の駆動手段(図示せず)を介して回転軸L2を中心として回転自在となっている。すなわち、支持手段30は、この図示しない駆動手段および第2回転体45等を移動機構として有し、駆動手段が第2回転体45を回転駆動することにより、第2回転体45に支持された支持部材31および当該支持部材31上の容器1を円周軌道に沿って移動させるようになっている。
【0084】
図7に示すように、第2回転体45は、回転軸L2に直交するようにして上方から順に配置された円板状の第1乃至第4テーブル47a,47b,47c,47dと、回転軸L2に沿って延び第1乃至第4テーブル47a,47b,47c,47dを連結する連結部46と、を有している。すなわち、第1乃至第4テーブル47a,47b,47c,47dは同期して回転駆動される。
【0085】
図2および図8に示すように、本実施の形態において、支持部材31は、一方の面上に、具体的には上方の面上に容器1を支持する略円板からなっている。後に詳述するように各支持部材31の下方(他方)の面は、対向電極21によって覆われている。また、図8に示すように、各支持部材31は、その下方の面において、円柱状の軸部材32に連結されている。なお、円柱状の軸部材32と円板状の支持部材31とは、互いの中心軸が揃うようにして、接続されている。軸部材32は、絶縁性材料からなる内方部32aと、導電性材料からなる外方部32bと、を有している。外方部32bは、前記対向電極21と電気的に接続されている。
【0086】
一方、図7に示すように、第2回転体45の第4テーブル47dには、回転軸L2を中心とした円周上に互いに等間隔を空けて配列された複数の軸受部材33が設けられている。そして、各軸受部材33によって、上述した軸部材32がそれぞれ支持されている。すなわち、この軸受部材33を介し、各支持部材31および対応する各軸部材32が、第2回転体45の第4テーブル47dに回転自在に支持されている。したがって、図2に示すように、複数の支持部材31は、回転軸L2を中心とした円周に沿って、互いに等間隔を空けて配列される。
【0087】
また、図7に示すように、第2回転体45の第3テーブル47cの下面には、支持部材31を回転駆動するための駆動手段35、例えばモータが設けられている。駆動手段35は、例えば伝達ベルトからなる駆動伝達手段34bを介し、軸部材32に設けられたプーリー34aに連結されている。
【0088】
このような構成において駆動手段35が軸部材32を回転駆動すると、軸部材32に接続された円板状からなる支持部材31が、その板面への垂線と平行な軸L3を中心として回転駆動されるようになっている。すなわち、本実施の形態において、支持手段30は、駆動手段35、プーリー34a、駆動伝達手段34b、軸部材32、および支持部材31等を回転機構として有しており、駆動手段35が軸部材32を支持部材31とともに回転駆動することにより、支持部材31上に支持された容器1を回転させるようになっている。
【0089】
ここで、支持部材31の回転速度が速過ぎると、支持部材31上に容器1を安定して支持することができなくなる。また、支持部材31の回転速度が遅過ぎると、後に詳述する回転の作用効果を享受することができなくなってしまう。このようなことを考慮し、支持部材31の回転速度を、例えば10〜3000rpmに設定することができる。
【0090】
さらに、図8に示すように、各支持部材31および当該支持部材31と接続された軸部材32には、支持部材31の容器1に対面する部分から、軸部材32の支持部材31に対面しない側の端面まで延びる貫通孔37が形成されている。また、図7に示すように、各貫通孔37は、チャンバー12内またはチャンバー12外に配置された吸引機構41に連通している。なお、各貫通孔37は、第2回転体45の下方においてシャフト49に取り付けられたロータリーカップリング40と、軸部材32の支持部材31に対面しない側の端面に取り付けられたカップリング38およびカップリング38からロータリーカップリング40まで延びる連結管39を介し、連通されている。
【0091】
このような構成において、吸引機構41は、各連結管39に設けられたバルブ39aの開閉により、任意の貫通孔37から気体を吸引することができるようになっている。したがって、支持部材31上に容器1が配置されている場合、吸引機構41を稼働させて当該支持部材31へ容器1を吸引保持(吸着)することによって、容器1を支持部材31上に安定して支持することができる。すなわち、本実施の形態において、支持手段30は、吸引機構41、貫通孔37、および支持部材31等を支持機構として有しており、吸引機構41を作動させることにより、容器1を支持部材31上に吸着し容器1を安定して支持するようになっている。
【0092】
ところで、図2および図7に示すように、第2回転体45の連結部46から延び出る第3テーブル47cの外方には、この第3テーブル47cと対向するようにしてチャンバー12の壁部から延び出た下方テーブル12cが設けられている。図2に示すように、下方テーブル12cは、第3テーブル47cを取り囲むよう、第3テーブル47cの外輪郭に対応した穴を形成されている。また、図7に示すように、下方テーブル12cは、略平板状からなり、第3テーブル47cと同一平面上に配置されている。このような下方テーブル12cと第3テーブル47cとの間には略一定幅を有する環状の隙間6cが形成されている(図8参照)。
【0093】
一方、図7に示すように、上述した支持部材31は第3テーブル47cよりも上方に配置され、軸部材32が下方テーブル12cと第3テーブル47cとの間の隙間6cを貫通している。そして、図2に示すように、この隙間6cの中心軌跡は、第2回転体45の回転に同期して移動する軸部材32の回転軸L3の移動軌跡と揃うようになっている。また、この隙間6cの幅は、軸部材31が支障なく回転することができる程度に設定される。
【0094】
また、図7および図8に示すように、第2回転体45の連結部46から延び出る第2テーブル47bの外方には、この第2テーブル47bと対向するようにしてチャンバー12の壁部から延び出た上方テーブル12bが設けられている。上方テーブル12bは、前述の下方テーブル12cと同様に、第2テーブル47bを取り囲むよう、第3テーブル47cの外輪郭に対応した穴を形成されている。また、図7および図8に示すように、上方テーブル12bは、略平板状からなり、第2テーブル47bと同一平面上に配置されている。このような上方テーブル12bと第2テーブル47bとの間には略一定幅を有する環状の隙間6bが形成されている。本実施の形態において、図7に示すように、上方テーブル12bと第2テーブル47bとの間の隙間6bの中心軌跡は、第2回転体45の回転に同期して移動する軸部材31の回転軸L3の移動軌跡と揃うようになっている。そして、後に詳述するように、この隙間6bには放電電極20が挿入される。したがって、この隙間6bの幅は、放電電極20が支障なく挿入され得るよう、設定される。
【0095】
なお、図7および図8に示すように、チャンバー12の壁、上方テーブル12bおよび下方テーブル12c、並びに、第2回転体45の連結部46、第2テーブル47bおよび第3テーブル47cによって囲まれる空間(処理スペース)内を、支持手段30によって搬送される容器1が通過する。また、後の詳述するように、この空間内において、大気圧プラズマを生じさせる。そして、上述したように、殺菌処理中、この処理スペース5aは陽圧に保たれ、この処理スペース5a外から処理スペース5a内へ菌を含んでいる可能性のあるガスが入り込んでしまうことを防止するようになっている。したがって、上方テーブル12bと第2テーブル47bとの間の隙間6bの幅と、下方テーブル12cと第3テーブル47cとの間の隙間6cの幅とは、上述した条件を満たす限りにおいて狭く設定されていることが好ましい。
【0096】
〔囲い部材〕
次に、主に、図2および図7乃至図9を用いて、囲い部材26,27について詳述する。ここで、図9は、図7におけるIX−IX線に沿った断面において囲い部材26,27を示す線図である。
【0097】
図2に示すように、本実施の形態において、各支持部材毎に設けられた囲い部材は、支持部材31を間に挟むようにして配置された第1囲い部材26および図2囲い部材27を含んでいる。図2に示すように、第1囲い部材26は、支持部材31の移動方向前方側に配置されている。一方、第2囲い部材27は、支持部材31の移動方向後方側に配置されている。図2および図8に示すように、本実施の形態において、第1囲い部材26と第2囲い部材27は、対称となるように形成されている。なお、図8において、第2囲い部材27は図示されておらず、支持部材31の移動方向後方側からの視野から、第1囲い部材26のみが示されている。
【0098】
図7乃至図9に示すように、本実施の形態において、第1囲い部材26は、支持部材31上に支持された容器1を少なくとも部分的に囲み得る主部26aと、主部26aの両側方に設けられた一対の側方つば部26bと、主部26aの上方に設けられた上方つば部26cと、を有している。同様に、第2囲い部材27は、支持部材31上に支持された容器1を少なくとも部分的に囲み得る主部27aと、主部27aの両側方に設けられた一対の側方つば部27bと、主部27aの上方に設けられた上方つば部27cと、を有している。各囲い部材26,27の厚みは一定となっている。
【0099】
第1および第2の囲い部材26,27の各つば部は、後に詳述する理由から、支持部材31上の容器1内に挿入された放電電極20に対して、対向電極21を露出させないよう、配置されている。なお、この目的に対応して、主部27aの下方にさらなるつば(下方つば部)を設けるようにしてもよい。
【0100】
図7乃至図9に示すように、各囲い部材26,27は、輪状形状を有する支持基部96上に配置されている。図8よおび図9に示すように、支持基部96は、支持ブロック97を介して第2回転体45の第3テーブル47c上に固定されている。なお、図8に示すように、上述した軸部材32は支持基部96の中心穴内を通過して延びており、支持基部96によって軸部材32および支持部材31の回転が干渉されないようになっている。
【0101】
図7および図8に示すように、各囲い部材26,27は、支持基部96を回転可能に貫通するとともに、支持部材31の回転軸L3と平行に延びる、軸部26d,27dをさらに有している。そして、各軸部26d,27dがその軸線L4a,L4bを中心として回転することにより、各囲い部材26,27は、図9に実線で示す開位置と、図9に二点鎖線で示す閉位置と、の間を揺動することができる。なお、図8および図9に示すように、各軸部26d,27dは、第2回転体45の第3テーブル47c上に固定されたモータ等の駆動手段98a,98bにそれぞれ連結されている。この結果、各軸部26d,27dの揺動は、この駆動手段98a,98bによって駆動される。
【0102】
なお、支持基部96は、とりわけ閉位置にある第1囲い部材26および第2囲い部材27を安定させることに役立つが、省くことも可能である。
【0103】
図9に実線で示すように、各軸部26d,27dは、第2回転体45の半径方向内方側において、各囲い部材26,27の主部26d,27dの一つの端部から下方に延び出ている。したがって、図2に示すように、各囲い部材26,27が互いに異なる揺動方向に揺動することにより、支持部材31上の容器1が配置されるべき領域は、第2回転体45の半径方向外方に向けて、大きく開放される。
【0104】
ところで、本実施の形態においては、図9に示すように、各囲い部材26,27が閉位置にある場合、各囲い部材26,27の主部26a,27aの輪郭は、支持部材31の回転軸L3に直交する任意の断面において、当該断面と回転軸L3との交点を中心とした円弧の一部分のみに沿っている。また、図8に示すように、各囲い部材26,27が閉位置にある場合、各囲い部材26,27の主部26a,27aの輪郭は、支持部材31の回転軸L3に沿った断面において、支持部材31に支持される容器1の外輪郭に対応している。具体的には、本実施の形態では、各囲い部材26,27の主部26a,27aの輪郭が、支持部材31の回転軸L3に沿った断面において、支持部材31が回転軸L3を中心として回転することによって支持部材31上に支持された容器1が画定するようになる回転体の外輪郭に沿うようになっている。
【0105】
さらに詳細には、本実施の形態において、各囲い部材26,27が閉位置にある場合に、各囲い部材26,27の主部26a,27aは、支持部材31が回転軸L3を中心として回転することによって支持部材31上に支持された容器1が画定するようになる回転体から略一定距離離間するように構成れている。さらに言い換えると、各囲い部材26,27の主部26a,27aは、支持部材31が回転軸L3を中心として回転することによって支持部材31上に支持された容器1が画定するようになる回転体の外輪郭と略相似形状となるようになされている。
【0106】
一方、各囲い部材26,27が閉位置にある場合であっても、図9に二点鎖線で示すように、支持部材31上に支持された容器1は、第1囲い部材26および第2囲い部材27において完全には取り囲まれない。言い換えると、第1囲い部材26および第2囲い部材27の間は密閉されず隙間が設けられている。すなわち、第1囲い部材26および第2囲い部材27の間の空間は外部に開放されている。
【0107】
なお、後に詳述するように、本実施の形態において、囲い部材26,27は、支持部材31と同様に、少なくとも一部を対向電極21によって外方から覆われる。このため、囲い部材26,27の大きさは、囲い部材26,27によって囲まれる領域が、支持部材31が回転軸L3を中心として回転することによって支持部材31上に支持された容器1が画定するようになる回転体を収容可能な最小限の大きさに多少の余裕を加えた程度となるようにすることが好ましい。なお、囲い部材26,27によって囲まれる領域を必要以上に大きくすれば、囲い部材26,27を覆う対向電極21と、容器1に挿入される放電電極20との間の距離が不必要に増加して放電現象の安定性が損なわれるおそれがある。
【0108】
ところで、本実施の形態において、このような第1および第2の囲い部材26,27は対向電極21の誘電体として機能する。また、上述した支持部材31も、同様に、対向電極21の誘電体として機能する。誘電体として機能する囲い体25および支持部材31は、例えば、アクリル樹脂、セラミックス、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、メチルペンテン系樹脂等の各種の誘電性材料を使用することができる。ただし、容器1の殺菌前等、チャンバー12内全体が殺菌処理されることがあるため、誘電体はこのとき使用される薬品および熱に対する耐性を有していることが好ましい。また、第1および第2の囲い部材26,27並びに支持部材31によって囲まれる領域内で生じる放電現象を外部から観察することができるよう、誘電体は透光性を有していることが望ましい。さらにまた、放電現象にともなってわずかながら紫外線が発生するため、誘電体はUV耐性を有していることが好ましい。
【0109】
なお、このような誘電体としての第1および第2の囲い部材26,27並びに支持部材31の厚みは、放電電極20と対向電極21との間に安定した放電を生じさせる範囲で適宜に設定することができる。
【0110】
〔放電電極および対向電極〕
次に、主に図2、図7、図8、図10および図11を用い、支持手段30に支持された容器1内に挿入される放電電極20、および容器1内に挿入された放電電極20に対して容器1を介して配置された対向電極21について説明する。
【0111】
まず、放電電極20について説明する。放電電極20は、ステンレス等の導電性材料を容器1内に挿入可能な太さの棒状部材(例えば、丸棒)に成形してなるものである。この放電電極20は、第2回転体45に支持された複数の支持部材31にそれぞれ対応して複数設けられている。図7に示すように、各放電電極20はその長手方向線(軸線)が支持部材31および軸部材32の回転軸L3と一直線上に揃うように第2回転体45に支持されている。具体的には、各放電電極20は、第2回転体45の第1テーブル47aと第2テーブル47bとの間に設けられたエアシリンダ48aにより、連結支持部材48bを介して支持されている。
【0112】
このような構成によって、支持部材31の直上に配置された放電電極20は、第2回転体45が回転することにより、当該支持部材31と同期して回転移動する。また、放電電極20の各々は、対応するエアシリンダ48aを介し、支持部材31の回転軸L3に沿って上下方向へ直線的に移動する。そして、図8に示されているように、細長状に延びる放電電極20は、下方に移動させられた場合、第2回転体45とチャンバー12との間の隙間6b、第1囲い部材26と第2囲い部材27との隙間、さらには、支持部材31上に支持された容器1の開口部1aを通過し、容器1内へ挿入されるようになっている。この間、放電電極20と支持部材31との位置関係は、放電電極20の長手方向(軸心方向)と支持部材31および軸部材32の回転軸L3とが一直線上に揃うように、保たれ続けている。
【0113】
後述するように、この放電電極20と対向電極21との間に高電圧パルスが印加され、放電電極20と対向電極21との間に大気圧プラズマが生じるようになる。したがって、放電電極20の太さを容器1に挿入可能な範囲で太めに設定すると、放電電極20と対向電極21との離間距離を短縮してなるべく小さいエネルギで効率的に放電させることができる。その一方で、放電電極20の太さを太くし過ぎると、第2回転体45とチャンバー12との間の隙間6bを広く設定しなければならなくなる。これらのことを考慮して放電電極20の太さを設定することが好ましい。
【0114】
また、放電電極20の長さは容器1に必要十分な深さで挿入できるように定めればよい。放電電極20の容器1への挿入量(長さ)は容器1の全高の1/10〜9/10の範囲に設定することが好ましい。放電電極20の挿入量が容器1の全高の1/10に満たないと容器1内における放電量が不足し、挿入量が9/10を超えると容器1の底部1c側に向けた放電が集中して容器1の底部1cが熱変形するおそれがあるとともに、容器1の側部1b側にて十分な殺菌効果が得られないおそれがあるからである。
【0115】
図10および図11に示すように、本実施の形態において、放電電極20の容器1内への挿入範囲の全域には一条の螺旋状のねじ山20aが形成され、これにより放電電極20の挿入範囲のほぼ全域に亘って凹凸が設けられている。このように凹凸を設けるのは、放電現象を放電電極20の先端20bに集中させることなく、放電電極20の容器1内への挿入範囲のほぼ全長に亘って均一に放電を生じさせるためである。つまり、放電電極20においては尖った部分で電界が集中して放電が生じるため、放電電極20の容器1への挿入範囲の全域に凹凸を満遍なく設けることにより、放電電極20の先端20bに限らず、ねじ山20aの頂点から均一に放電を生じさせて容器1の各部で均一な殺菌作用を生じさせることができる。一方、放電電極20の先端20bはこの部分への放電の集中を避けるべくなるべく平坦に形成することが望ましい。
【0116】
放電電極20に形成されるねじ山20aのピッチPは0.01mm〜10mmの範囲が好ましく、さらには0.1mm〜5mmの範囲が好ましい。ピッチPが0.01mm未満の場合には凹凸の間隔が狭すぎて均一な放電が得られないおそれがあり、他方、ピッチPが10mmを超える場合には凸部が疎らに分布して放電密度が減少する。また、ねじ山20aの頂角θは5°〜60°の範囲が好ましく、さらには10°〜45°の範囲が好ましい。頂角θが5°未満の場合はねじ山20aの強度が不足するおそれがあり、頂角θが60°を超えるとねじ山20aの頂部からの放電が弱められるおそれがあるからである。
【0117】
次に、対向電極21について詳述する。上述したように、また、図7および図8に示すように、本実施の形態において、対向電極21は、各囲い部材26,27の少なくとも一部分を外方から覆う囲い部対向電極22a,22bと、支持部材31の少なくとも一部分を外方から覆う支持部対向電極23と、を含んでいる。囲い部対向電極は、第1囲い部材26の主部26aを外方から覆う第1囲い部対向電極22aと、第2囲い部材27の主部27aを外方から覆う第2囲い部対向電極22bと、を含んでいる。すなわち、図7および図8に示すように、対向電極21は、第1囲い部材26を挟んで容器1の側部1bの一部分と対向する第1囲い部対向電極22aと、第2囲い部材27を挟んで容器1の側部1bの一部分と対向する第2囲い部対向電極22bと、支持部材31を挟んで容器1の底部1cと対向する支持部対向電極23と、を有している。
【0118】
本実施の形態において、第1および第2囲い部対向電極22a,22bの上端は支持部材31上に支持された容器1の上端よりも上方まで延び、第1および第2囲い部対向電極22a,22bの下端は支持部材31上に支持された容器1の下端よりも下方まで延びている。したがって、本実施の形態において、容器1は、支持部材31の回転軸L3に沿った一断面において、支持部材31が回転軸L3を中心として回転することによって支持部材31上に支持された容器1が画定するようになる回転体の外輪郭と略相似形状に形成された囲い部対向電極22a,22bおよび支持部対向電極23により、上端から下端まで覆われることになる。
【0119】
ただし、対向電極21をこのように構成することは必須ではなく、処理される容器1の形状、求められる殺菌レベル等を考慮して、対向電極21を囲い部対向電極22a,22bおよび支持部対向電極23のいずれか一方のみから構成してもよく、また、囲い部対向電極22a,22bを容器1の下端よりも幾らか高い位置までしか延びていないようにしてもよい。
【0120】
対向電極21は導電性の材料(例えばステンレス等の金属)からなる板又は網によって形成され得る。対向電極21によって囲まれる領域内における放電現象を観察することができるよう、対向電極21、とりわけ第1囲い部対向電極22aおよび第2囲い部対向電極22bは透光性を有することが望ましい。すなわち、例えば金属網から第1囲い部対向電極22aおよび第2囲い部対向電極22bを構成すれば、その網目を通して放電現象を確認することができるので好ましい。本実施の形態において、第1囲い部対向電極22aおよび第2囲い部対向電極22bは金属網から構成され、支持部対向電極23は支持部材31の他方の面を覆う金属板から構成されている。
【0121】
また、囲い部材26,27や支持部材31の所望の外面に導電性材料を蒸着することによって、このような対向電極21を形成することもできる。この場合、蒸着条件を適正にすることにより、対向電極21を薄く構成し、対向電極21によって囲まれる領域内の放電現象を観察できる程度の透光性を対向電極21に付与することができる。対向電極21を形成するために蒸着する材料としては銅、アルミニウム、金、白金等の金属材料、その他各種の導電性材料を使用することができる。また、蒸着に代え、第1および第2の囲い部材26,27並びに支持部材31の所望の外面に導電性塗料を塗工することによって、対向電極21を形成することもできる。
【0122】
〔高電圧パルス印加装置〕
次に、主に図2、図7および図12を用い、高電圧パルス印加装置57を含む高電圧パルスの印加に関わる構成について詳述する。
【0123】
図2、図7および図12に示すように、本実施の形態における高電圧パルス印加装置57は、高電圧パルス電源57aと、高電圧パルスが印加される高電圧側レール59と、接地された接地側レール58とを有している。本実施の形態における高電圧側レール59および接地側レール58は略リング状に形成され、各レール59,58のリング中心と、第2回転体45の回転中心である回転軸L2とが一致するように配置されている。
【0124】
高電圧側レール59は、支持手段30の第2回転体45の第1テーブル47aの上面に固定されている。一方、接地側レール58は、支持手段30の第2回転体45の第4テーブル47dの下面に固定されている。このような構成により、高電圧側レール59および接地側レール58が第2回転体45とともに回転するようになっている。
【0125】
図12および図7に示すように、高電圧パルス電源57aと高電圧側レール59とは、導電性材料からなり摺動自在な摺動子55aを介して接続されている。この摺動子55aは、高電圧側レール59に対して進退自在に保持され、かつ高電圧側レール59に向けて付勢されている。この摺動子55aにより、回転中の高電圧側レール59と高電圧パルス電源57aとを確実に導通させることができるようになっている。なお、この高電圧側レール59には、各放電電極20が高電圧開閉接点54を介し電気的に接続されている。高電圧開閉接点54は、図示しない制御手段によって動作させられ、放電電極20および当該放電電極20を挿入された容器1が後述する放電領域A6(図3参照)内を移動している際に、放電電極20と高電圧側レール59とを導通させるようになっている。
【0126】
同様に、接地側レール58も、上述した摺動子55aと同構成からなる摺動子55bを介して接地されている。この摺動子55bにより、接地側レール58が回転している場合であっても接地側レール58を確実に導通させることができるようになっている。
【0127】
また、図12に示すように、本実施の形態における殺菌装置10においては、第2回転体45の移動経路に沿った所定区間(放電領域A6、図3参照)を通過している支持部材31にそれぞれ対応する複数の放電電極20および対向電極21間に、高電圧パルスが印加されるようになっている。そして、本実施の形態においては、図12に示すように、同時に高電圧パルスを印加される電極本数に応じた数(図12中では4つ)以上の接地側レール55が、設けられている。本実施の形態において、各接地側レール55は、すべて略リング状に形成されている。そして、一つの支持部材31に対応する第1囲い部対向電極22a,第2囲い部対向電極22bおよび支持部対向電極23は、高電圧パルスを同時に印加され得るとともに異なる支持部材31に対応した第1囲い部対向電極22a,第2囲い部対向電極22bおよび支持部対向電極23とは、別個の接地側レール58と接続されている。
【0128】
なお、支持部材31とともに回転し得る支持部対向電極23は、上述した摺動子55aと同構成からなる摺動子55cを用いることによって、接地側レール58に電気的に接続されている。具体的には、図7および図8に示すように、支持部対向電極23と軸部材32の導電性材料からなる外方部32bとが電気的に接続されるとともに、この軸部材32の外方部32bに、接地側レール55と電気的に接続された摺動子55cが当接している。これにより、軸部材32と摺動子55cとを介して、支持部対向電極23が接地側レール58と電気的に接続されている。
【0129】
また、図12に示すように、高電圧パルス印加装置57は、高電圧パルス電源57aに接続された等価回路部51を有している。等価回路部51は、一つの容器1に挿入された放電電極20および当該放電電極20に対向する対向電極21の間の抵抗値と略同一の抵抗値を有する抵抗器52bと、抵抗器52bと直列に接続された回路開閉接点52aと、を有した等価回路52を、前記高電圧パルスを同時に印加され得る電極間数(図12中では4つ)と同じ数だけ、並列に接続した回路を含んでいる。このうち、回路開閉接点52aは、高電圧開閉接点54の開閉を制御する制御手段(図示せず)と接続されている。制御手段は、放電領域A6(図3参照)内を移動し高電圧パルスを印加されるべき放電電極20および対向電極21間に容器1が配置されていなければ、当該放電電極20および対向電極21間に高電圧パルスを印加することに代え、当該電極20,21間数と同数の等価回路52の回路開閉接点52aを閉じて当該電極間20,21数と同数の等価回路52の抵抗器52bに高電圧パルスを印加するようになっている。
【0130】
このように構成された高電圧パルス印加装置57の高電圧パルス電源57aは、例えば、電圧38〜80kV、周波数100〜3000Hz(またはpps(pulse per sec))の高電圧パルスを放電電極20と対向電極21との間に印加することができるようになっている。ただし、高電圧パルス電源57aの性能は殺菌対象の容器1の大きさや処理槽20の容量に応じて適宜設定することができる。
【0131】
ところで、図12に示すように、殺菌装置10は、高電圧パルス印加装置57による放電電力の負荷状況を監視する放電電力監視手段60をさらに備えている。放電電力監視手段60は、印加される高電圧パルスの電圧を計測するための高電圧プローブ63と、高電圧パルスの印加にともなって発生する電流を計測するための電流プローブ62と、を有している。本実施の形態において、高電圧プローブ63は接続線63a,63aを介して高電圧側レール59と接地側レール58とに接続されるとともに、信号線63bを介してデジタルオシロモジュールコントローラ61に接続されている。また、図12に示すように、本実施の形態において、電流プローブ62は各接地側レール58毎に設けられ、信号線62aを介して、例えばデジタルオシロモジュールコントローラ61に接続されている。したがって、放電の際に流れた電流を個々の容器1毎に監視することができるようになっている。このような構成により、デジタルオシロモジュールコントローラ61を介して放電電圧および放電電流を監視することができるようになっている。また、本実施の形態によれば、放電電力の負荷状況に異常があればデジタルオシロモジュールコントローラ61から異常信号が発信されるようになっている。
【0132】
また、図12に示すように、殺菌装置10は放電光の発生状況を監視する放電光監視手段65をさらに備えている。放電光監視手段65は、大気圧プラズマにより生ずる放電光を検出し放電光の強さを電気信号に変換する放電光検出部67と、放電光検出部67から電気信号を受けて放電光の強さが所定の基準値以上であるか否かを判定する判定部66と、を有している。放電光検出部67はフォトダイオード、発光スペクトルモニター、あるいはCCDカメラ等から構成することができ、光を検出して光の強さを電気信号に変換することができる限りにおいて特に限定されない。本実施の形態において、放電光の発生状況に異常があれば判定部66から異常信号が発信されるようになっている。判定部66は、電気信号が所定の基準値以上か否かを判定することができる限りにおいて、特に限定されず、本実施の形態においては、判定部66をアナログコンパレータから構成されている。
【0133】
さらに、図12に示すように、殺菌装置10は、放電電力監視手段60のデジタルオシロモジュールコントローラ61と、放電光監視手段65の判定部66と、に接続された判定手段53をさらに備えている。判定手段53は、デジタルオシロモジュールコントローラ61および判定部66から信号を受け、この信号に基づき、各支持部材31上に支持されている容器1についての殺菌処理の異常の有無を判定するようになっている。そして、判定手段53は、判定結果に基づいて容器1を良品として搬出口14bを介して殺菌装置10から排出するか、あるいは、不良品として不良品搬出口19を介して殺菌装置10から排出するか、を決定するようになっている。
【0134】
〔温調手段および検温手段〕
次に、主に図13を用い、殺菌後の容器1から抜き出された放電電極20に対して処理を施す、言い換えると、殺菌前の容器1に挿入される前の放電電極20に対して処理を施す手段について説明する。
【0135】
本実施の形態における殺菌装置10は、容器1に挿入される前の放電電極20の温度を調節する温調手段94と、放電電極20の温度を測定する検温手段95と、をさらに備えている(図13参照)。本実施の形態における温調手段94は、所定の温度のエアを供給するエア源94aと、エア源94aに連通し所定の温度のエアを吐出する吐出ノズル94bと、を有している。エア吐出ノズル94bは、放電電極20の移動経路沿いに配置され、移動中の放電電極20に向けて所定の温度のエアを吹き付けるようになっている。一方、検温手段95は、例えば非接触で放電電極20の温度を測定することができる放射温度計から構成され得る。ただし、このような温調手段94および検温手段95は単なる例示に過ぎず、種々の公知の手段を採用することができる。
【0136】
なお、図13に示されているように、温調手段94および検温手段95は、容器1から抜き取られるとともに、処理スペース5a外へ引き上げられた放電電極20に対し、処理を施すものである。したがって、温調手段94および検温手段95は処理スペース5a外の上方に配置されている。
【0137】
ところで、図13に示すように、第2回転体45の第2テーブル47bと、チャンバー12の上方テーブル12bと、の間の隙間6bの上方に、この隙間6bを遮蔽する遮蔽部材13が設けられている。遮蔽部材13は、放電電極20が処理スペース5a外に配置されている領域において、第2テーブル47bと上方テーブル12bとの間の隙間6bを遮蔽するように設けられている。本実施の形態において、遮蔽部材13はチャンバー12の上方テーブル12bによって支持され、放電電極が上昇した状態で移動する領域A9および領域A3(図3参照)に設けられている。
【0138】
この遮蔽部材13により、処理スペース5aの無菌性を高いレベルに保つことが可能となる。また、放電電極20が上昇した後であって容器1が処理スペース5aから排出されるまでの間、放電電極20の真下に殺菌済の容器1が存在することになるが、遮蔽部材13によって、この殺菌済の容器1に菌が混入することを効果的に防止することもできる。
【0139】
<殺菌方法>
次にこのような構成からなる殺菌装置10により容器1を殺菌する方法について説明する。
【0140】
〔殺菌装置の殺菌〕
まず、容器1の殺菌処理に先立って、上述した殺菌装置10自体を殺菌剤(本実施の形態においては過酸化水素ミスト)により殺菌する。この場合、まず、殺菌剤供給手段11により、チャンバー12内に30℃から50℃前後の温風を吹き込んでチャンバー12内を昇温する。次に、殺菌剤をチャンバー12内に吹き込む。その後、常温の空気をチャンバー12内に吹き込んでチャンバー12内を冷却するとともに、残留する過酸化水素成分をチャンバー12内から排出する。このような3つの各工程が30分程度ずつ行われ、チャンバー12内が殺菌される。また、上述したようにチャンバー12には排気口11aが設けられているので、温風、過酸化水素ミスト、および空気が順次供給されている間、排気口11aからチャンバー12内の気体が排出されチャンバー12内の圧力が一定に保たれるとともに、効率的にチャンバー12内の雰囲気が置換されていくようになっている。
【0141】
チャンバー12内の殺菌処理が終了した後、チャンバー12の内部を外部よりも陽圧に保ち、さらに、チャンバー12の処理スペース5aの内部をチャンバー12の処理スペース5a以外の領域よりも陽圧に保つ。これにより、チャンバー12内における処理スペース5a内から処理スペース5a外に向けた気流、並びに、チャンバー12内からチャンバー12外に向けた気流が作り出される。したがって、気体中に含まれた菌が、チャンバー12の外部から内部へ入り込むこと、並びに、処理スペース5aの外部から内部へ入り込むこと、を防止することができる。
【0142】
〔容器の殺菌方法の概略〕
次に、容器1の殺菌処理が行われる。
【0143】
まず、図3を用いて殺菌方法の概略を説明する。
【0144】
容器1が、搬入手段15aにより搬入口14aを通過してチャンバー12内に順次持ち込まれる。持ち込まれた容器1は受け渡しホイール16を介して第1回転体24に順次受け渡されていく。第1回転体24に受け渡された容器1は、第1回転体24の回転にともって移動しながら処理を施される。次に、容器1は、受け渡しホイール16を介して第1回転体24から第2回転体45へ順次転載される。転載された容器1は第2回転体45の回転にともなって移動しながら処理を施される。殺菌処理された容器1は受け渡しホイール16を介して搬出手段15bに受け渡され、搬出手段15bにより搬出口14bを通過して、次工程である充填工程(図1参照)へと搬送される。ただし、殺菌処理に異常があった容器1については、不良品搬出手段19aに受け渡され、不良品搬出口19を経由してチャンバー12内から排出される。このような殺菌方法によれば、多数の容器1を順次連続して効率的に殺菌処理することができる。
【0145】
なお、殺菌工程と充填工程との間に、容器1内の異物除去を目的として、無菌水リンサーや無菌エアリンサーによるリンシング工程をさらに設けるようにしてもよい。
【0146】
〔領域A1〕
次に、第1回転体24および第2回転体45の回転にともなって容器1になされる処理工程を順に詳述していく。
【0147】
まず、図2に示すように、受け渡しホイール16を介して第1回転体24に受け渡された容器1は、第1回転体24に保持され、第1回転体24の回転にともなって移動する。このとき、第1回転体24には多数の容器1が順次送り込まれてくるが、送り込まれてきた容器1は、回転軸L1を中心とした円周に沿って等間隔に間を空けて第1回転体24に保持される。
【0148】
図3に示す領域A1においては、付着手段の二流体スプレー87から液体が噴射されている。したがって、第1回転体24の回転にともなって領域A1を通過する容器1はその外面に液体を吹き付けられ、容器1の外面に液体が付着する。上述したように、二流体スプレー87に供給される液体の流量および空気の流量および圧力は一定となるように調整されている。したがって、各容器1の外面には、略一定量の液体が付着するようになる。
【0149】
〔領域A2〕
外面に液体を付着させられた容器1は、その後、第1回転体24の回転にともなって領域A2を通過する。上述したように第1回転体24に保持された容器1の直上には、導入手段70の導入管75の末端が配置されている(図2および図5参照)。そして、容器1が領域A2に入ると、導入手段70のバルブ79が開き、導入管75から蒸気混合ガスが噴射される。上述したように、所定湿度、所定温度、および所定圧力の蒸気混合ガスが液槽90から管71に送り込まれるようになっている。また、液槽90から容器1内までの管路はヒーター81およびリボンヒーター77によって加熱されるので、一度蒸気化した液体が再凝縮することはない。さらに、領域A2は、等間隔で配置された容器1が所定の数量だけ入る(通過する)広さとなっている。すなわち、図6に示すように、開いているバルブ79の数が常に一定数となるようになっている。なお、図6に示す例においては、6つの導入管75およびバルブ79が設けられており、このうちいずれか2つのバルブ79が開いているようになっている。
【0150】
これらのことから、導入管75から容器1の内部に送り込まれる蒸気混合ガスは一定量となる。このため、容器1の内部に一定量の蒸気を導入することができる。また、蒸気とともに導入されるガスも一定量となるので、この蒸気混合ガスの導入により容器1内の雰囲気を空気以外のガスに確実に置換することもできる。
【0151】
領域A2を通過した容器1は、その後、受け渡しホイール16を介し、支持手段30に受け渡される。容器1は、その後、第2回転体45の第2テーブル47bおよびチャンバー12の上方テーブル12bと、第2回転体45の第3テーブル47cおよびチャンバー12の下方テーブル12cと、の間に形成された処理スペース5a内を移動することになる。
【0152】
〔領域A3乃至領域A5〕
次に、主に図14および図3を用い、支持手段30によって支持された容器1に対して施される処理について説明する。なお、図14は殺菌方法を説明するための図である。図14においては、殺菌方法の理解を容易にするため、第1囲い部材26および第2囲い部材27の他の構成要素に対する位置関係は、他の図面に記載された位置関係と一致していない。
【0153】
図14および図3から理解できるように、チャンバー12内では、支持手段30の第2回転体45が回転駆動されており、第2回転体45に支持された支持部材31が順次領域A3に移動してくる。また、図2に示されているように、領域A3に移動してくる支持部材31に対応した第1囲い部材26および第2囲い部材27は、それぞれの揺動軸L4a,L4bを中心として反対方向に揺動し、互いから離間するようにして展開している。すなわち、支持部材31上の容器1が配置されるべき領域は、図2および図9に示すように、第2回転体45の半径方向外方に向けて大きく開放された状態になっている。
【0154】
そして、図14に示すように、第1回転体24によって搬送されてくる容器1は、領域A3において、順次移動してくる支持部材31上に配置される。本実施の形態において、容器1は、底部1cが円板状からなる支持部材31に対面するようにして、支持部材31上に載置される。上述したように、支持部材31上の容器1が配置されるべき領域は、図2および図9に示すように、第2回転体45の半径方向外方に向けて大きく開放されているので、支持部材31上に容器1を容易かつ迅速に配置することができる。なお、殺菌対象となる容器1が、通常用いられている飲料用ボトルのように、回転体としての外輪郭を有する場合や容器が特定の角度で回転対称である形状を有する場合には、容器1の中心軸が支持部材31および軸部材32の回転軸L3と一直線上に揃うようにして、容器1が支持部材31上に載置されることが好ましい。
【0155】
また、この領域A3を通過する支持部材31および軸部材32に形成された貫通孔37を開閉するバルブ39a(図7参照)が開かれる。これにより、吸引機構41が貫通孔37に連通し、吸引機構41は、支持部材31の端面(支持面)に開放された貫通孔37の端から容器1を吸引するようになる。この結果、支持部材31上に載置された容器1は、支持部材31に向けて吸着保持された状態で、支持手段30に安定して支持されるようになる。
【0156】
なお、受け渡しホイール16から容器1が持ち込まれてきていない等、何らかの理由によって、容器1を載置されることなく領域A3を通過した支持部材31を、図示しない制御手段が記憶するようになっている。すなわち、制御手段は、第2回転体45の回転にともなって移動している支持部材31が容器1を支持しているか否かを把握することができるようになっている。
【0157】
その後、第2回転体45の回転にともなって、支持部材31および支持部材31上に支持された容器1が領域A4を通過する。領域A4において、その長手方向が支持部材31の回転軸L3と一直線上に揃うように支持されている放電電極20が、エアシリンダ48aによって降下させられる。降下させられた放電電極20は、開口部1aを介して容器1内に挿入される。
【0158】
また、第1囲い部材26および第2囲い部材27は、それぞれの揺動軸L4a,L4bを中心として、開位置から閉位置へと互いに接近するように揺動する。これにより、第1囲い部材26の主部26aおよび主部26aを覆う第1囲い部対向電極22aが、支持部材31上に支持された容器1の外輪郭に対応して配置され、容器1を部分的に取り囲むようになる。同様に、第2囲い部材27の主部27aおよび主部27aを覆う第2囲い部対向電極22bが、支持部材31上に支持された容器1の外輪郭に対応して配置され、当該容器1を部分的に取り囲むようになる。
【0159】
次に、支持部材31に支持されるとともに放電電極20を挿入された容器1は、領域A5を通過する。領域A5において、駆動伝達手段34bを介し軸部材32に連結された駆動手段35が作動する。これにより、駆動手段35により、支持部材31が、当該支持部材31に吸着保持された容器1とともに、回転駆動させられる。
【0160】
このとき、容器1は、支持部材31に吸着保持されているので、支持手段30によって安定して支持されたままとなっている。とりわけ、殺菌対象となる容器1が回転体としての輪郭を有する場合や容器が特定の角度で回転対称である形状を有する場合には、上述したように、容器1の中心軸が支持部材31および軸部材32の回転軸L3と一直線上に揃うようにして、容器1が支持部材31上に載置されることが好ましい。この場合、容器1は支持部材31上に極めて安定して支持された状態となる。
【0161】
〔領域A6〕
支持部材31上に支持された容器1は、その後、領域A6を移動する。この領域A6内に支持部材31および容器1が入ると、当該容器1に挿入された放電電極20に対応する高電圧接続接点54が閉じ、高電圧パルス電源57aに接続された高電圧側レール59と放電電極20とが電気的に接続(導通)される。これにより、放電電極20と接地された対向電極21との間に常温常圧下で高電圧パルスが印加され、囲い部対向電極22a,22bと放電電極20との間、並びに、支持部材31と放電電極20との間に、大気圧プラズマが生じ、電離されたガスが生成される。この結果、容器1の内外面、第1および第2の囲い部材26,27、並びに、放電電極20に、殺菌作用を有する電離されたガスが接触し、容器1の内外面、囲い体25の内面、および放電電極20が殺菌される。
【0162】
上述したように、本実施の形態において、放電電極20および対向電極21の間に配置された容器1の外面に液体が付着し、また容器1の内部に蒸気が存在している。これにより、プラズマの発生が安定するとともに、強力な殺菌能力を有する活性酸素種が生成される。また、上述した領域A2での蒸気混合ガスの導入において、容器1内の雰囲気を殺菌に適したガスに置換させておくことも可能である。以上のようなことから、領域A6において、容器1の内外面、囲い体25の内面、および放電電極20の容器1内に挿入された部分が、高いレベルで効率的に安定して殺菌される。
【0163】
とりわけ、本実施の形態においては、上述したように、囲い部対向電極22a,22bによって覆われた二つの囲い部材26,27が設けられている。したがって、囲い部対向電極22a,22bの面積を大きくとって、大気圧プラズマが生じる領域を広くすることができる。
【0164】
また、囲い部材26,27の主部26a,27aおよび囲い部対向電極22a,22bは、支持部材31が回転軸L3を中心として回転することによって支持部材31上に支持された容器1が画定するようになる回転体から略一定距離離間するように構成れている。言い換えると、各囲い部材26,27の主部26a,27aは、支持部材31が回転軸L3を中心として回転することによって支持部材31上に支持された容器1が画定するようになる回転体の外輪郭と略相似形状となるようになされている。したがって、効率的に大気圧プラズマを生じさせ、省電力化が可能となる。また、プラズマ化した気体を迅速に容器1へ接触させることができる。さらに、プラズマ化した気体が、第1および第2囲い部材26,27並びに支持部材31によって囲まれた領域から流出してしまうことを抑制することができる。これらのことから、容器1を高いレベルで効果的に殺菌することができる。
【0165】
さらに、本実施の形態によれば、容器1が、当該容器1を支持する支持部材31とともに第1および第2の囲い部材26,27に囲まれた領域内で回転している。したがって、容器1の側部1bは、囲い部材26,27および囲い部対向電極22a,22bによって囲まれている領域と、囲い部材26,27および囲い部対向電極22a,22bによって囲まれていない外方に開放されている領域と、を繰り返し通過する。したがって、容器1の全側部1bが、囲い部材26,27および囲い部対向電極22a,22bによって囲まれている領域を通過し、上述した高いレベルで効果的に殺菌され得る。すなわち、容器1の全内外面をむらなく高いレベルで殺菌することができる。
【0166】
これらのことから、本実施の形態によれば、容器1の内外面を極めて高いレベルでむらなく均一に殺菌することができる。
【0167】
なお、第1および第2の囲い部材26,27の各つば部は、支持部材31上の容器1内に挿入された放電電極20に対して、第1および第2の囲い部対向電極22a,22bを露出させないよう、配置されている。また、支持部対向電極23は、放電電極20に対して支持部材31を挟んで配置されている。したがって、放電電極20と対向電極21との間でスパークが発生してしまうことを防止することができる。これにより、安定して大気圧プラズマを発生させることができる。
【0168】
また、上述したように、大気圧プラズマを用いた殺菌処理が行われる処理スペース5aは、処理スペース5a以外の領域に比べ陽圧に保たれている。したがって、図7および図14に矢印で示すように、処理スペース5a内と処理スペース5a外とを連通させる隙間6bおよび隙間6cには、処理スペース5a内から処理スペース5a外に向けた気流が形成される。このため、処理スペース5a外から処理スペース5a内に菌が持ち込まれることを防止することができ、これにより、容器1を、高いレベルでむらなく殺菌された状態に維持し続けることができる。
【0169】
なお、図2、図3および図12に示されているように、隣り合う複数の支持部材31にそれぞれ支持された複数の容器1が領域A6中を同時に移動し、これら複数の容器1が同時に殺菌処理されるようになっている。したがって、多数の容器1を順次効率的に殺菌処理することができる。
【0170】
また、例えば運転開始時または運転終了時である等の何らかの理由により、容器1が支持部材31上に支持されていなかったとすると、当該支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21間の抵抗値は、容器1が配置されている場合に比べ、著しく小さくなる。この結果、当該支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21間を流れる電流値が著しく大きくなるとともに、同時に高電圧パルスを印加される他の放電電極20および対向電極21の間であって容器1を支持している支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間を流れる電流値が小さくなる。その一方で、容器1が支持されていない支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間に高電圧パルスが印加されないようにすると、同時に高電圧パルスを印加されるべき他の放電電極20および対向電極21の間であって容器1を支持している支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間を流れる電流値が大きくなり、この電極20,21間に介在する容器1が変形してしまう等の不具合が生じてしまう虞がある。
【0171】
しかしながら、本実施の形態によれば、上述したように、容器1が支持されていない支持部材31を制御手段(図示せず)が把握するようになっており、容器1が支持されていない支持部材31が領域A6を通過する場合、図12に示すように、制御手段は当該支持部材31に対応する放電電極20の高電圧開閉接点54を開いたままに保つ。また同時に、制御手段は、等価回路部51の等価回路52の回路開閉接点52aを閉じる。さらに詳しくは、領域A6に容器1が支持されていない支持部材31が移動してきた場合、当該支持部材31に対応する放電電極20の高電圧接続接点54に代え、回路開閉接点52aを閉じるようになっている。したがって、容器1が支持されていない1以上の支持部材31が領域A6を通過している場合、当該支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間に代え、等価回路52を当該支持部材31の数に応じた数だけ並列に接続した等価回路部51に高電圧パルスが印加される。上述したように、各等価回路52は、容器1に挿入された放電電極20およびこの放電電極20に容器1を挟んで対向する対向電極21の間の抵抗値、すなわち、容器1を支持している支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間の抵抗値と同一の抵抗値を有している。このため、領域A6を通過中の各放電電極20および対向電極21の間を流れる電流は略一定となり、容器1を変形させてしまう等の不具合を防止することができる。加えて、高電圧パルスの印加条件が、殺菌されるべき多数の容器1間において一定となり、信頼性の高い殺菌処理を安定して行うことができる。
【0172】
また、高電圧パルスが印加されている間、放電電力監視手段60の高電圧プローブ63と電流プローブ62とを介して、印加される高電圧パルスの電圧と発生する電流とを確認することにより放電電力の負荷状況が監視される。さらに、放電光監視手段65によって、大気圧プラズマで生ずる放電光の強さを確認することにより放電光の発生状況が監視される。本実施の形態においては、図12に示すように、放電電力負荷状況の監視結果および放電光発生状況の監視結果が判定手段53に送信されるようになっている。また、判定手段53は各支持部材31上に支持された容器1について殺菌処理の異常の有無を判定するようになっている。
【0173】
〔領域A7および領域A8〕
領域A6で殺菌された容器1は、その後、領域A7を移動する。領域A7において、駆動伝達手段34bを介し軸部材32に連結された駆動手段35が停止する。これにより、容器1および当該容器1を支持する支持部材31および軸部材32の回転が停止する。なお、この場合、例えば軸部材32に当接し得る制動手段が設けられ、この制動手段によって支持部材31および軸部材32の回転が積極的に制止されるようにしてもよい。
【0174】
その後、容器1は領域A8を移動する。領域A8において、放電電極20が、エアシリンダ48aによって上昇させられ容器1内から引き抜かれる。引き抜かれた放電電極20は、図8および図13に示すように、第1囲い部材26と第2囲い部材27との間、並びに、第2回転体45の第2テーブル47bとチャンバー12の上方テーブル12bとの間の隙間6bを通過して処理スペース5aの外部に配置される。すなわち、放電電極20は、第2回転体45の第2テーブル47bとチャンバー12の上方テーブル12bとの上方に配置されるようになる。以降、放電電極20は、第2回転体45の回転により、支持部材31に同期して支持部材31の上方をこの高さレベルで移動する。
【0175】
また領域A8内を通過する支持部材31に対応した第1および第2の囲い部材26,27は、第1および第2の囲い部対向電極22a,22bとともに、それぞれ軸L4a,L4bを中心として、閉位置から開位置まで互いに逆方向に揺動する。これにより、図9に示すように、第1および第2の囲い部材26,27は互いから離間するように揺動して展開し、支持部材31上に支持された容器1は第2回転体の半径方向外方へ大きく開放される。
【0176】
〔領域A9〕
次に、支持部材31に支持された容器1は、領域A9を移動する。領域A9において、容器1が配置された支持部材31および軸部材32に形成された貫通孔37を開閉するバルブ39aが閉じられる。これにより、容器1に対する吸着が解除される。吸着から解放された容器1は、受け渡しホイール16を介してチャンバー12内から排出される。この場合の容器1の排出先は、判定手段53による判定結果によって異なる。
【0177】
判定手段53によって殺菌処理の異常がないと判定された容器1は、図2および図3に示すように、受け渡しホイール16を介し、搬出手段15bに移載される。その後、容器1は、搬出口14bを通って殺菌装置10のチャンバー12から排出され、次工程である充填工程(図1参照)に持ち込まれる。一方、判定手段53によって殺菌処理の異常があると判定された容器1は、図2および図3に示すように、受け渡しホイール16を介し、不良品搬出手段19aに移載される。その後、容器1は、殺菌が十分に行われなかった不良品として、不良品排出口19を通って殺菌装置10のチャンバー12から排出される。一方、容器1を取り除かれた支持部材31は、その後、再び領域A3へと移動する。
【0178】
以上のような処理スペース5a内における処理と並行し、処理スペース5aの上方に配置されている放電電極20に対しても以下の処理が施される。なお、上述したように、放電電極20は、処理スペース5aの上方に配置され、処理スペース5a内に配置された対応する支持部材31と同期して移動している。
【0179】
図13に示すように、領域A9において、放電電極20は、温調手段94の吐出ノズル沿いを通過する。また、温調手段94の吐出ノズル94bからは、所定温度のエアが吐出されている。したがって、放電電極20は、所定温度のエアを吹き付けられて、所望の温度範囲内へ調整される。このように放電電極20の温度を調節することにより、殺菌処理を一定の条件で行うことができるようなる。また、放電電極20への水分付着量を調節することができ、これにより、放電電極20を高いレベルで殺菌することができる。
【0180】
このとき、検温手段95が、放電電極20の温度をモニタリングしており、放電電極20の温度が所望の温度範囲内にあるか否かを判定する。また、放電電極20の温度が所望の温度範囲内にないと検温手段95が判断した場合には、吐出ノズル94bから吐出されるエアの温度が適宜変更される。具体例として、殺菌装置10の稼働初期において、放電電極20を温風により加熱し、領域A6における断続的な放電により放電電極20の温度が上昇する稼働中期以降において、放電電極20を冷風により冷却するようにしてもよい。
【0181】
さらに、放電電極20の温度が所望の温度範囲内に調節されなかったと検温手段95が判断した場合には、この情報が判定部53に送信される。そして、判定部53は、当該温度調節が適切になされなかった放電電極20を挿入されて殺菌処理をなされた容器1を不良品排出口19から排出する。
【0182】
また、判定部53に送信すると同時に、放電電極20が所定の温度範囲内に調節されなかったという情報が、図示しない制御手段に伝達されるようにしてもよい。この場合、制御手段は、領域A6において、この放電電極20に対応する高電圧開閉接点54を閉じることに代え、等価回路52の回路開閉接点52aを閉じるようにしてもよい。
【0183】
なお、上述したように、領域A9において、第2回転体45の第2テーブル47bと、チャンバー12の上方テーブル12bと、の間の隙間6bは、遮蔽部材13によって覆われている(図13参照)。したがって、処理スペース5aの無菌性をより高いレベルに維持することができ、この結果、殺菌済の容器1の無菌性を維持することができる。
【0184】
このようにして温度調節および検温された放電電極20は、上述した領域A4において降下するまで、処理スペース5aの上方を移動する。
【0185】
以上のようにして、容器1が順次殺菌されていく。
【0186】
<作用効果>
以上のように本実施の形態によれば、大気圧プラズマを生じさせる工程において、殺菌対象である容器1を回転させるようになっている。したがって、この容器1の回転によって、プラズマ化した気体を生成後すぐに容器1にむらなく接触させることができる。これにより、容器1の内外面を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0187】
とりわけ、本実施の形態によれば、殺菌対象となる容器1を部分的に取り囲みながら、容器1の内外面をむらなく殺菌することができるようにしており、処理槽本体と処理槽蓋体とを有した処理槽内へ各容器を個別に収容して殺菌する必要性を省いている。したがって、処理槽本体に容器を順次収納する手間、および、容器を収容した処理槽本体に処理槽蓋体を装着する手間を省くことができ、容器1を効率的に殺菌していくことができる。また、処理槽の開閉時における処理槽本体と処理槽蓋体との位置ずれに起因した放電異常を排除し得るので、安定して殺菌処理を行うことができる。さらに、処理槽の開閉時の衝突に起因した処理槽本体および処理槽蓋体の摩耗を考慮する必要がない。さらに、異なる形状を有した殺菌対象を殺菌する場合、次の殺菌対象の形状に対応すべく、第1および第2の囲い部材26,27並びに支持部材31を取り替えることは、処理槽本体および処理槽蓋体を取り替えることに比べて格段に容易に行うことができる。
【0188】
また、本実施の形態によれば、第1囲い部材26および第2囲い部材27が、支持部材31の回転軸L3に直交する断面において、回転軸L3を中心とした円弧の一部分に沿った輪郭を有している。したがって、プラズマ化した気体の過度の拡散を抑制して、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルで殺菌することができる。同様に、第1囲い部材26および第2囲い部材27は、支持部材31の回転軸L3に沿った断面において、容器1の外輪郭に対応した輪郭を有している。したがって、プラズマ化した気体の過度の拡散を抑制して、プラズマ化した気体を効果的に容器へ接触させ、容器を高いレベルで殺菌することができる。
【0189】
さらに、本実施の形態によれば、第1および第2囲い部材26,27は、支持部材31に支持される容器1を間に挟むようにして配置され、第1および第2囲い部材26,27の囲い部対向電極22a,22bがそれぞれ設けられている。したがって、このような殺菌装置10によれば、プラズマ化した気体が生成され得る領域が拡大および分散される。これにより、容器1をより高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0190】
さらに、本実施の形態によれば、第1囲い部材26および第2囲い部材27は、それぞれ支持部材31の回転軸L3と平行な軸L4a,L4bを中心として閉位置(図9において二点鎖線で示す位置)と開位置(図9において実線で示す位置)との間を揺動可能であり、互いに逆の揺動方向に揺動し、互いから離間するように展開し得る。したがって、第1囲い部材26および第2囲い部材27が閉位置にある場合、第1囲い部材26および第2囲い部材27によって、支持部材31に支持された容器1の外面の広い領域を取り囲むことができる。また、第1囲い部材26および第2囲い部材27が開位置にある場合、第1囲い部材26および第2囲い部材27によって、支持部材31上における容器1が支持されるべき領域を大きく開放することができる。このため、高いレベルでむらなく容器1を殺菌することができるとともに、支持部材31への容器1の受け渡しおよび支持部材31からの容器1の受け取りを容易に行うことができる。
【0191】
さらに、本実施の形態によれば、支持手段30は、平板状からなりその板面に略直交する軸L3を中心として回転可能な支持部材31を有している。そして、容器1は、放電電極20を挿入される開口部1aに対面する底部1cが支持部材31の一方の板面に対面するようにして、支持部材31上に吸着保持されるようになっている。したがって、容器1を支持部材31に対して容易に固定することができる。また、容器1が、通常用いられている液体収納用のボトルのように、回転体からなる場合や容器が特定の角度で回転対称である形状を有する場合には、容器1の回転中の姿勢を極めて安定させることができる。
【0192】
さらに、本実施の形態によれば、支持部材31に支持されて移動する容器1を、順次、高いレベルでむらなく効率的に殺菌していくことができる。とりわけ本実施の形態によれば、隣り合う複数の支持部材31にそれぞれ対応する複数の放電電極20および対向電極21の間に高電圧パルスが同時に印加されるようになっている。したがって、複数の支持部材31上にそれぞれ支持された複数の容器1に対し、同時に殺菌処理を施していくことができ、これにより、多数の容器1を順次効率的に殺菌していくことができる。
【0193】
さらに、本実施の形態によれば、高電圧パルスが印加される領域A6を通過中の支持部材31のうち1以上の支持部材31に容器1が支持されていない場合には、容器1が支持されていない支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間に代えて、支持部材31上に支持された容器1に挿入された一つの放電電極20と対向電極21との間の抵抗値と同等の抵抗値を有した等価回路52を前記容器1を支持することなく領域6を通過中の支持部材31の数だけ接続した回路51に、高電圧パルスが印加されるようになっている。したがって、高電圧パルスが印加される領域A6に容器1が支持されていない支持部材31が移動してくると、当該支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間に代え、等価回路52に高電圧パルスが印加されるようになっている。そして、等価回路52が容器1を支持した1つの支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間の抵抗値と略同等の抵抗値を有していることから、高電圧パルス電源57aに接続された総抵抗値が略同一となる。したがって、1つの容器1を支持した支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間を流れる電流値が高くなり過ぎることを防止し、容器1を一定条件の下、一定のレベルで安定して殺菌していくことができる。このことは、殺菌処理の開始時や殺菌処理の終了時にとりわけ有用であり、殺菌装置10に投入する1本目の容器1および最終の容器1をも良品として取り扱うことができるようになり、歩留まりを格段に向上させることができる。
【0194】
<変形例>
上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。以下、変形例の一例について説明する。なお、以下の説明中において図15乃至図26を参照するが、図15乃至図26中において、図1乃至図14に示す上述した実施の形態と同一部分には同一符号を付すとともに、重複する詳細な説明は省略する。
【0195】
〔変形例1〕
上述した実施の形態において、支持部材31の他方の面に支持部対向電極23が設けられ、第1囲い部材26の主面26aに第1囲い部対向電極26aが設けられ、第2囲い部材27の主面27aに第2囲い部対向電極27aが設けられている例を示したが、これに限られない。支持部材31、第1囲い部材26および第2囲い部材27の形状とともに、対向電極21の構成を種々変更することができる。
【0196】
例えば、図15に示すように、第1囲い部材26および第2囲い部材27は、支持部材31を他方(下方)の面側から少なくとも部分的に取り囲むようになっている。すなわち、図15に示す例において、第1および第2の囲い部材26,27は、容器1を上方、側方、および下方から取り囲むようになっている。そして、図15に示す例において、第1囲い部対向電極22aは、第1囲い部材26を側方および下方から覆うようになっている。また、第2囲い部対向電極22bは、第2囲い部材27を側方および下方から覆うようになっている。この結果、支持部材31上に支持された容器1は、第1囲い部対向電極22aおよび第2囲い部対向電極22bによって、側方および下方から対向電極21によって囲まれるようになる。
【0197】
なお、図15は、図8のXV−XV線に沿った断面において、殺菌装置10の変形例の一部を示している。
【0198】
〔変形例2〕
また、上述した実施の形態において、第1囲い部材26および第2囲い部材27が、支持基部96および支持ブロック97を介して、第2回転体45の第3テーブル47c上に支持されている例を示したが、これに限られない。例えば、第1囲い部材26および第2囲い部材27が、直接、第2回転体45の第3テーブル47c上に支持されてもよい。
【0199】
〔変形例3〕
さらに、上述した実施の形態において、支持部材31のみが回転軸L3を中心として回転するようになっている例を示したが、これに限られない。囲い部材26,27が回転軸L3を中心として回転する、さらに厳密には、第1囲い部材26および第2囲い部材27が、支持部材31の回転軸L3を中心とした円弧に沿って、支持部材31に支持される容器1の周囲を移動するようにしてもよい。この場合、第1囲い部材26上に設けられた第1囲い部対向電極22aおよび第2囲い部材27上に設けられた第2囲い部対向電極22bも、支持部材31の回転軸L3を中心として円周に沿って、支持部材31に支持される容器1の周囲を移動可能となる。
【0200】
図16にこのような変形の一構成例を示している。図16に示す例において、支持基部96は、貫通孔137を有した第2軸部材132に下方から支持されている。また、第2回転体45の第3テーブル47cに支持ブラケット130が設けられている。支持ブラケット130は、第3テーブル47cの下面に取り付けられ、支持部材31の直下を越え、第2回転体45の半径方向外方へ延び出ている。支持ブラケット130上の支持部材31の直下に、軸受部材133が設けられている。上述した第2軸部材132は、この軸受部材133および支持ブラケット130を介し、第2回転体45の第3テーブル47cに回転自在に支持されている。なお、図示する例において、第2軸部材132の回転軸は、支持部材31の回転軸L3(本実施の形態において、放電電極20の挿入軸、放電電極20の軸心)と一致している。
【0201】
ところで、第2軸部材132は、支持部材31の回転軸L3に沿って延びる貫通孔137を形成されている。同様に、支持ブラケット130にも、支持部材31の回転軸L3を中心とする穴130aが形成されている。支持部材31を支持する軸部材32は、この第2軸部材132の貫通孔137と、支持ブラケット130の穴130aと、を回転自在に貫通し、上述したように、軸受部材33を介して第2回転遺体45の第4テーブル47dに回転可能に支持されている(図7参照)。
【0202】
なお、図示する例において、第2回転体45の第3テーブル47cの下面に、第2軸部材132および囲い部材26,27を回転駆動するための駆動手段135、例えばモータが設けられている。駆動手段135は、例えば伝達ベルトからなる駆動伝達手段134bを介し、第2軸部材132に設けられたプーリー134aに連結されている。このような構成において、駆動手段135が第2軸部材132を回転駆動すると、第2軸部材132に接続された支持基部96が、囲い部材26,27および囲い部対向電極22a,22bとともに、回転軸L3を中心として回転駆動されるようになっている。
【0203】
ところで、各囲い部材26,27の軸部26d,27dに連結された駆動手段98a,98bは、図示する例において、第2軸部材132に設けられた支持テーブル132c上に支持され得る。このような構成においては、例えば、放電電極20への給電と同様に、レールとレールに対して摺動する摺動子とを用い、第2軸部材132とともに回転する駆動手段98a,98bへ電力供給することができる。
【0204】
このような殺菌装置10を用いて容器を殺菌する場合、第1囲い部材26および第2囲い部材27、並びに、第1囲い部対向電極22aおよび第2囲い部対向電極22bを、放電電極20に対して相対移動させることができる。そして、第1囲い部対向電極22aおよび第2囲い部対向電極22bの放電電極20に対する相対位置を変化させることにより、放電電極20の全面をむらなく殺菌することができる。
【0205】
なお、図16に示す例において、支持基部96と第2軸部材132とは一体に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。
【0206】
なお、本変形例のように、囲い部材26,27を回転させる場合には、支持部材31と囲い部材26,27とが異なる回転速度または回転方向で回転するようにしてもよいし、同一の回転速度および回転方向で回転するようにしてもよい。また、囲い部材26,27を回転させる場合には、支持部材31を回転させず、支持部材31を第2回転体45に対して固定してもよい。
【0207】
〔変形例4〕
さらに、上述した実施の形態において、放電電極20が容器1内に挿入された後に、停止している例を示したが、これに限られない。図17に示すように、放電電極20が回転するようにしてもよい。
【0208】
図17に示す例において、上述した連結支持部材48bにブラケット109が取り付けられている。ブラケット109は、例えばモータ等からなる、駆動手段110を支持している。駆動手段110は、絶縁性部材111を介して放電電極20を回転自在に支持している。なお、放電電極20の回転軸は、放電電極20の軸線に沿っており、本例においては、支持部材の回転軸L3と一致する。また、ブラケット109は、上述した摺動子55aと同様に構成された摺動子55dを支持している。摺動子55dは、高電圧開閉接点54に電気的に接続されるとともに、回転可能な放電電極20にその回転軸L3に直交する方向から当接している。
【0209】
このような構成により、駆動手段110を用いて放電電極20を回転させた状態で、放電電極20と対向電極21との間に高電圧パルスを印加することができる。大気圧プラズマを生じさせる際に、放電電極20を回転させた場合、対向電極21、とりわけ囲い部対向電極22a,22bに対面する、放電電極20の表面領域を変化させることができる。これにより、放電電極20と対向電極21との間に生ずるプラズマ化した気体によって、放電電極20をむらなく殺菌することができる。
【0210】
〔変形例5〕
上述した実施の形態において、各支持部材31に対し、揺動自在な二つの囲い部材26,27が設けられた例を示したが、これに限られない。例えば、図18乃至図20に示すように、各支持部材31に対して一つの囲い部材126が設けられるようにしてもよい。
【0211】
図18乃至図21に示す例において、支持部材126は、上述した第1囲い部材26とほぼ同様に構成され得る。すなわち、支持部材126は、支持部材31上に支持された容器1を少なくとも部分的に囲み得る主部26aと、主部26aの両側方に設けられた一対の側方つば部26bと、主部26aの上方に設けられた上方つば部26cと、を有するようにしてもよい。また、囲い部材126の主部26aは外方から囲い部対向電極22aによって覆われている。
【0212】
一方、本例における囲い部材126は、上述した第1囲い部材26とは異なり、軸部26dを有していない。図19に示すように、囲い部材126は第2回転体45の第3テーブル47c上に固定されている。図20に示すように、囲い部材126は、支持部材31および支持部材31上に支持される容器1に対し、第2回転体45の半径方向内方に配置されている。したがって、支持部材31上の容器1が配置されるべき領域は、常に、第2回転体45の半径方向外方に向けて、開放されている(図20参照)。
【0213】
このような殺菌装置10を用いて殺菌処理を行う場合には、図20および図21から理解できるように、囲い部材を開閉することなく、受け渡しホイール16により支持部材31上に容器1を受け渡すこと、および、受け渡しホイール16により支持部材31上から容器1を受け取ることができる。したがって、殺菌装置10の製造コストおよび維持コストを大幅に軽減することができる。ここで、図21は、図14に対応する図であって、図18乃至図20に示す殺菌装置による殺菌方法の一例を示している。
【0214】
なお、このような例において、囲い部材126を第2回転体45の第2テーブル47bに対して固定してもよいし、囲い部材126を第2回転体45の第2テーブル47bおよび第3テーブル47cの両方に対して固定してもよい。また、隣り合う複数の囲い部材126が連結部を介して互いに連結されていてもよい。
【0215】
〔変形例6−1〕
また、図18乃至図21を用いて説明した変形例5について、上述した変形例3と同様に、囲い部材126が支持部材31および支持部材31上の容器1の周囲を移動するようにしてもよい。
【0216】
このような変形の一例を図22に示す。図22に示す例において、囲い部材126は、第2軸部材132に支持された支持基部96に対して固定されている。図示する構成においては、駆動手段135が第2軸部材132を回転駆動すると、第2軸部材132に接続された支持基部96、並びに、囲い部材126および囲い部対向電極22aが回転軸L3を中心として回転駆動されるようになっている。
【0217】
このような殺菌装置10を用いて容器を殺菌する場合、囲い部材126、および、囲い部対向電極22aを、放電電極20に対して相対移動させることができる。そして、囲い部対向電極22aの放電電極20に対する相対位置を変化させることにより、放電電極20の全面をむらなく殺菌することができる。
【0218】
なお、本変形例のように、囲い部材126を回転させる場合には、支持部材31と囲い部材126とが異なる回転速度または回転方向で回転するようにしてもよいし、同一の回転速度および回転方向で回転するようにしてもよい。また、囲い部材126を回転させる場合には、支持部材31を回転させず、支持部材31を第2回転体45に対して固定してもよい。
【0219】
〔変形例6−2〕
また、図18乃至図21を用いて説明した変形例5の殺菌装置が、図23乃至図25に示すように、支持部材31に支持される容器1を囲い部材126との間で挟むようにして配置される囲い体127をさらに備えるようにしてもよい。
【0220】
図23乃至図25に示す例において、囲い体127は、領域A6の全域に渡り、第2回転体45の回転にともなった支持部材31の移動経路に沿って延びている。図24および図25に示すように、囲い体127は、支持部材31上に支持された容器1を少なくとも部分的に囲み得る主部127aと、主部127aの上方に設けられた上方つば部127cと、を有している。
【0221】
図24に示すように、囲い体127の主部127aは、支持部材31の移動経路に直交する断面において、前記容器の外輪郭に対応した輪郭を有している。さらに詳しくは、囲い体127の主部127aは、支持部材31の移動経路に直交する断面において、支持部材31が回転することによって支持部材31上に支持された容器1が画定するようになる回転体の外輪郭に沿った輪郭を有している。囲い体127は、囲い部材26,27,126や支持部材31と同様の材料から構成することができる。
【0222】
また、図24および図25に示すように、本実施の形態において、囲い体127の主部127aの外面上に、主部127aを覆うようにして第2対向電極22cが設けられている。対向電極22cは、上述した囲い部対向電極22a,22bと同様に構成され得る。
【0223】
このような変形例によれば、支持部材31が、その移動経路のうち、囲い体127および第2囲い部対向電極22cが配置された領域を通過している間に、放電電極20と対向電極21との間に高電圧パルスが印加されるようにすることができる。この場合、囲い部材126を少なくとも部分的に覆う第1囲い部対向電極22a、および、囲い部材126との間で支持部材31に支持される容器1を挟むようにして配置される囲い体127を少なくとも部分的に覆う第2囲い部対向電極22cの両方と、放電電極20と、の間で大気圧プラズマを発生させることができる。したがって、プラズマ化した気体が発生し得る領域を広くすることができるので、容器1を高いレベルで殺菌することができる。また、プラズマ化した気体が発生し得る領域を分散させることもできるので、容器1を高いレベルでよりむらなく殺菌することができる。
【0224】
また、容器1を移動させながら殺菌する場合、囲い体127を可動に構成する必要はない。したがって、殺菌装置10の構成は簡易でよい、殺菌装置10の製造コストおよび維持コストを低く維持することができる。
【0225】
なお、この例においては、囲い体127を覆う第2囲い部対向電極22cに複数の放電電極20から電流が流れ込む。したがって、本例においては、上述した電流プローブ62を放電電極20と高電圧開閉接点54との間に配置するようにしてもよいし、第1囲い部対向電極22a側の電流値のみを計測するようにしてもよい。これらの場合、殺菌対象である個々の容器1について、電流プローブ62に基づいて特定された電流値から殺菌処理の異常の有無を個々の容器毎に判断することができる。
【0226】
また、第2囲い部対向電極22cが、支持部材31の移動方向に沿って分割されていてもよい。さらに、囲い体127が、支持部材31の移動方向に沿って分割されていてもよい。
【0227】
〔変形例7〕
さらに、上述した実施の形態において、支持手段30が第2回転体45を備え、第2回転体45の回転によって容器1を円周に沿って移動させながら、多数の容器1を順次殺菌していく例を示したが、これに限られない。殺菌装置10を配置すべきスペースとの関係で、例えば、支持手段30が容器1を直線に沿った移動経路で移動させ、当該直線状の移動経路に沿って容器1が移動している間に容器1を殺菌していくようにしてもよい。
【0228】
〔変形例8〕
さらに、上述した実施の形態において、支持手段30は、容器1を支持するための支持機構として、吸引機構41を有し、吸引機構41によって容器1を支持部材31に吸着保持する例を示したが、これに限られない。
【0229】
例えば、支持部材31上に設けられたクランプ機構(狭持機構)によって容器1を支持部材31に対して固定することにより、支持手段30が容器1を安定して支持するようにしてもよい。このような例を図26に示す。図26に示す例において、支持手段30は、容器1を狭持する狭持部材43を有した狭持機構(クランプ機構)42を、支持機構として備えている。本例における狭持部材43は、支持部材31上に摺動自在に配置されている。そして、この狭持部材43は、図示しないエアシリンダ等を用いて、支持部材31上に載置された容器1に対して接離可能となっている。なお、図26に示す例において、狭持部材43は容器を両側から挟み込むように配置されているが、これに限られず、例えば三つの狭持部材43が設けられていてもよい。
【0230】
また、容器1の支持方法の他の例として、放電電極20が降下した場合に、容器1の例えば開口部1aに当接する当接部材を放電電極20の上方に設け、この当接部材と支持部材31との間で容器1を狭持することにより、支持手段30が容器1を安定して支持するようにしてもよい。
【0231】
〔変形例9〕
さらに、上述した実施の形態において、容器1の底部1aが下方に配置され、容器1の開口部1aが上方に配置された状態で、容器1が回転させられながら殺菌される例を示した。しかしながら、殺菌時における容器1の姿勢や、容器1の回転方向はこのような態様に限定されるものではない。
【0232】
〔変形例10〕
さらに、上述した実施の形態において、まず、支持手段30によって容器1が支持され、その後、容器1内に放電電極20が挿入される例を示したが、これに限られない。例えば、容器1を支持する工程と、放電電極20を挿入する工程と、の順番を逆にしてもよいし、また、これらの工程を並行して行うようにしてもよい。
【0233】
〔変形例11〕
さらに、上述した実施の形態において、図14に示すように、まず、容器1に放電電極20を挿入し、その後、支持手段30によって容器1を回転させる例を示したが、これに限られない。例えば、容器1を回転させる工程と、容器1に放電電極20を挿入する工程と、の順番を逆にしてもよいし、また、これらの工程を並行して行うようにしてもよい。
【0234】
〔変形例12〕
さらに、上述した実施の形態において、まず、容器1の外面に液体を付着させ、その後に、容器1の内部に蒸気を導入する例を示したが、これに限られず、容器1の外面に液体を付着させる工程と、容器1の内部に蒸気を導入する工程との、順番を逆にしてもよいし、また、これらの工程を並行して行うようにしてもよい。また、容器1の内面に蒸気を導入することに代え、容器1の内面に液体を噴射して容器1の内面に液体を付着させるようにしてもよい。さらに、容器1の外面に付着させる液体として、上述した種類の液体だけでなく、過酸化水素水や過酸化水素ミストを用いることもできる。この場合、容器1の外面をより確実に殺菌することができる。
【0235】
〔変形例13〕
さらに、上述した実施の形態において、判定手段53が、放電電力監視手段60の監視結果および放電光監視手段65の監視結果、並びに、放電電極20の温度調節結果に基づき、殺菌処理の異常の有無を判定する例を示したが、これに限られない。例えば、放電電力監視手段60の監視結果、放電光監視手段65の監視結果、および放電電極20の温度調節結果のいずれか一つまたはいずれか二つのみに基づいて、殺菌処理の異常の有無を判定するようにしてもよい。また、これらに代えて、あるいは、これらに加えて、容器1の外面への液体の付着状況や容器1の内部への蒸気の導入状況に基づいて、殺菌処理の異常の有無を判定するようにしてもよい。さらに、放電電力監視手段60のデジタルオシロモジュールコントローラ61あるいは放電光監視手段65の判定部66自体を判定手段53として用いるようにしてもよい。
【0236】
〔変形例14〕
さらに、上述した実施の形態において、高電圧パルス印加装置57の等価回路部51が、容器1を支持する1つの支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間の抵抗値と同等の抵抗値を有する抵抗器52bを含んだ等価回路52を有する例を示したが、これに限られない。例えば、各等価回路52の抵抗器52bが、支持部材31上に支持される以前の処理に異常がなかった容器1を支持する1つの支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間の抵抗値と同等の抵抗値を有するようにしてもよい。そしてこの場合、高電圧パルス印加部57が複数の支持部材31に対応する各電極20,21間に高電圧パルスを印加する際に、複数の支持部材31のうちの1以上の支持部材31に容器1が支持されていない場合だけでなく、複数の支持部材31のうちの1以上の支持部材31に、支持部材31上に支持される以前の処理に異常があったと判定された容器1が支持されている場合にも、当該異常があったと判定された容器1が支持されている支持部材31に対応する放電電極20および対向電極21の間に代え、当該異常があったと判定された容器1が支持されている支持部材31の数と同数の等価回路52に、高電圧パルスが印加されるようにしてもよい。ここで、支持部材31上に支持される以前の処理として、上述した実施の形態においては、例えば、領域A1における容器1の外面へ液体を付着させる処理や、領域A2における容器1の内部に蒸気混合ガスを導入する処理が挙げられる。また、例えば、領域A1において容器1の外面に液体を所定の量だけ付着させることができなかった場合、領域A2において容器1の内部に蒸気を所定の量だけ導入することができなかった場合、あるいは領域A2において容器1の内部に雰囲気置換用ガスを所定の量だけ導入することができなかった場合等が、上述した変形例において、支持部材31上に支持される以前の処理に異常が有った場合に該当する。そして、支持部材31上に配置される以前の処理に異常が有った容器1が支持されている支持部材31に対応する電極20,21間の抵抗値は、異常が無かった容器1が支持されている支持部材31に対応する電極20,21間の抵抗値と異なってしまう虞がある。このような場合、異常が無かった容器1を支持する他の支持部材31に対応する電極20,21間であって、同時に高電圧パルスを印加される電極20,21間を流れる電流値は、所望の範囲から外れてしまう。本変形例によれば、このような不具合を排除することができ、これにより、一定の高電圧パルス印加条件による一定の殺菌効果を期待することができる。なお、支持部材31上に支持される以前の処理における異常の有無は、例えば、上述したレーザ光の透過量によって異常の有無を判定する手段、あるいは、導入手段70や付着手段87の各計器等を用いて判定することができ、この判定結果を受けて、上述した制御手段(図示せず)が高電圧開閉接点54および各等価回路52の回路開閉接点52aを操作するようにしてもよい。
【0237】
〔変形例15〕
さらに、上述した実施の形態において、開口部1a、側部1bおよび底部1cを有する容器1を殺菌する例を示したが、これに限れない。殺菌対象としての容器1の形状は特に限定されない。さらには、容器以外の殺菌対象、とりわけシート等を殺菌する場合に、本発明を適用することができる。
【0238】
〔変形例16〕
以上、本発明による殺菌装置および殺菌方法の一実施の形態、および、いくつかの変形例について説明してきたが、当然、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。したがって、例えば、放電電極20が回転するとともに、囲い部材が回転するような態様もあり得る。
【実施例】
【0239】
上述した実施の形態の殺菌装置に上述した変形例5を適用した殺菌装置を作製してその殺菌能力を評価した。
【0240】
(殺菌評価用ボトル)
殺菌評価用ボトルとして、殺菌対象の容器は容量240mlのPETボトルを使用した。当該PETボトル内面に枯草菌を所定量均一に付着させ第1の殺菌効果評価用ボトルとした。また、当該PETボトル内面に黒かびの胞子を所定量均一に付着させ第2の殺菌効果評価用ボトルとした。
【0241】
(殺菌評価用放電電極)
殺菌評価用放電電極として、ステンレス製の丸棒からなる電極を使用した。ステンレス製丸棒の先端から100mmの範囲に略均一に分散するようにして枯草菌懸濁液を10滴付着させ、付着させた懸濁液を自然乾燥させることによって第1の殺菌評価用放電電極を作製した。また、ステンレス製丸棒の先端から100mmの範囲に略均一に分散するようにして黒かびの胞子懸濁液を10滴付着させ、付着させた懸濁液を自然乾燥させることによって第2の殺菌評価用放電電極を作製した。
【0242】
(放電条件および水付条件)
放電電極:ステンレス製の丸棒からなるボトル底部から20mm上方に先端が位置するようにして殺菌評価用放電電極を設置した。
【0243】
対向電極:ステンレス製金網から形成した。ステンレス製金網は、容器の側方および下方を覆うように、囲い部材および支持部材に外方から取り付けた。
【0244】
囲い部材:容器の移動方向に直交する断面において、閉位置にある囲い部材と容器との離間距離を略8mmとした。囲い部材および支持部材の厚さはいずれも3mmとした。
【0245】
パルス印加条件:電圧75kV,周波数700Hz(pps),放電時間6秒以下
内部蒸気導入条件:図5に示す導入手段を用い、ガス供給手段から120L/minの流量でガスを供給して、ガスと純水が蒸発した水蒸気とからなる蒸気混合ガスを処理槽内の容器の内部に0.5秒間導入した。ガス供給手段から供給されるガスとして、アルゴン、窒素および酸素からなる混合ガスを用いた。純水の内部への導入量は略0.1gであった。なお、純水の導入量の測定は、付着処理前後の容器の重さを測定し、その差をとることによって行った。
【0246】
その他:殺菌評価用ボトルの殺菌効果の評価と、殺菌評価用放電電極の殺菌効果の評価と、は別個に行った。すなわち、殺菌評価用ボトルの殺菌効果を評価する際には、菌付けされていないステンレス製の丸棒を放電電極として用いた。一方、殺菌評価用放電電極の殺菌効果を評価する際には、菌付けされていない容量240mlのPETボトルを殺菌対象容器として用いた。
【0247】
(培養方法)
殺菌評価用ボトル:放電終了後、ボトルを装置から取り出し、トリプトソーヤブイヨン培養液約20mlをボトル内に注ぎ、予め滅菌処理したキャップをはめて充分振った後、30℃で10日間培養した。
【0248】
殺菌評価用放電電極:放電終了後、無菌水を湿らせた滅菌綿棒で菌付け部位を充分拭き取り、滅菌綿棒の拭き取り部分のみを切り取った。切り取った拭き取り部分を試験管内で約5mlのトリプトソーヤブイヨン培養液に浸漬させ、30℃で10日間培養した。
【0249】
(評価結果)
殺菌処理された第1の殺菌評価用ボトル(枯草菌)の内面の殺菌効果は5.5Dであった。殺菌処理された第2の殺菌評価用ボトル(黒かび)の内面の殺菌効果は6.0Dであった。第1の殺菌評価用放電電極(枯草菌)の殺菌効果は6.0Dであった。第2の殺菌評価用放電電極(黒かび)の殺菌効果は6.0Dであった。
【0250】
なお、殺菌効果D値は、以下の式1で定義される。
殺菌効果D値=−log(生存菌数/初発菌数)・・・式1
【図面の簡単な説明】
【0251】
【図1】図1は、容器の成形から内容物の充填までの概略工程を示す図である。
【図2】図2は、本発明による殺菌装置一実施の形態の概略構成を示す上面図である。
【図3】図3は、図2に示された殺菌装置内の処理内容に基づいた区分けを示す図である。
【図4】図4は、図2に示された殺菌装置における、容器の外面に液体を付着させる方法および付着手段の概略構成を示す図である。
【図5】図5は、図2に示された殺菌装置における、容器の内部に蒸気を導入する方法および導入手段の概略構成を示す図である。
【図6】図6は、容器の内部への蒸気の導入方法の一例を説明するための図である。
【図7】図7は、図2のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図8は、図2のVIII−VIII線に沿った部分断面図である。
【図9】図9は、図2に示された殺菌装置に含まれた囲い部材の構成を説明するための線図である。
【図10】図10は、図2に示された殺菌装置に含まれた放電電極を示す図である。
【図11】図11は、図10のXI−XI線に沿った断面図である。
【図12】図12は、図2に示された殺菌装置に含まれた高電圧パルス印加装置の概略構成を示す図である。
【図13】図13は、図2のXII−XIII線に沿った部分断面図である。
【図14】図14は、本発明による殺菌方法の一実施の形態を説明するための図である。
【図15】図15は、図8のXV−XV線に沿った断面に相当する図であって、殺菌装置の変形例を示す断面図である。
【図16】図16は、図8に相当する図であって、殺菌装置の他の変形例を示す図である。
【図17】図17は、図8に相当する図であって、殺菌装置のさらに他の変形例を示す図である。
【図18】図18は、図2の一部分に相当する図であって、殺菌装置のさらに他の変形例を示す図である。
【図19】図19は、図18のXIX−XIX線に沿った断面図である。
【図20】図20は、図19のXX−XX線に沿った断面図である。
【図21】図21は、図14に対応する図であって、図18乃至図20に示された殺菌装置による殺菌方法の一例を説明するための図である。
【図22】図22は、図19に相当する図であって、殺菌装置のさらに他の変形例を示す図である。
【図23】図23は、図18に相当する図であって、殺菌装置のさらに他の変形例を示す図である。
【図24】図24は、図23のXXIV−XXIV線に沿った断面図である。
【図25】図25は、図24のXXV−XXV線に沿った断面図である。
【図26】図26は、殺菌装置のさらに他の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0252】
1 容器
10 殺菌装置
12 チャンバー
20 放電電極
21 対向電極
22a 第1囲い部対向電極
22b 第2囲い部対向電極
22c 第2囲い部対向電極
23 支持部対向電極
25 囲い部材
26 第1囲い部材
27 第2囲い部材
31 支持部材
37 貫通孔
41 吸引機構
43 狭持機構
45 第2回転体
57 高電圧パルス印加装置
122a 第1囲い部対向電極
122b 第2囲い部対向電極
126 囲い部材
127 囲い体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象である容器を支持する支持部材であって、支持される容器とともに回転可能な支持部材と、
前記支持部材に支持される容器内に挿入可能な放電電極と、
前記支持部材に支持される容器を外方から囲むように配置された囲い部材と、
囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う対向電極であって、大気圧プラズマを生じさせるため、放電電極との間で高電圧パルスを印加される対向電極と、を備え、
前記囲い部材は、前記支持部材の回転軸に直交する断面において、前記回転軸を中心とした円弧の一部分に沿った輪郭を有することを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記囲い部材は、前記支持部材の回転軸に沿った断面において、前記容器の外輪郭に対応した輪郭を有することを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記囲い部材は、前記支持部材の回転軸を中心とした前記円弧に沿って、前記支持部材に支持される容器の周囲を前記対向電極とともに移動可能であることを特徴とする請求項1または2の記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記囲い部材は、前記支持部材に支持される容器を間に挟むようにして配置された第1囲い部材および第2囲い部材を含み、
前記対向電極は、第1囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、第2囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の囲い部材。
【請求項5】
前記第1囲い部材および前記第2囲い部材は、それぞれ互いに平行な軸を中心として揺動可能であり、互いに逆の揺動方向に揺動し、互いから離間するように展開し得ることを特徴とする請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記囲い部材との間で前記支持部材に支持される容器を挟むようにして配置される囲い体をさらに備え、
前記対向電極は、前記囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、前記囲い体の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記放電電極、並びに、前記囲い部材および前記第1対向電極と同期して移動可能であり、
前記囲い体は、前記支持部材の移動経路に沿って配置されていることを特徴とする請求項6に記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記放電電極は、前記支持部材の回転軸と平行な軸を中心として回転可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項9】
殺菌対象である容器を支持する支持部材と、
前記支持部材に支持される容器内に挿入可能な放電電極と、
前記支持部材に支持される容器を外方から囲む囲い部材と、
囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う対向電極であって、大気圧プラズマを生じさせるため、放電電極との間で高電圧パルスを印加される対向電極と、を備え、
前記囲い部材は、前記対向電極とともに、前記放電電極の挿入方向と平行な軸を中心として前記支持部材に支持される容器の周囲を移動可能であることを特徴とする殺菌装置。
【請求項10】
前記囲い部材は、前記放電電極の挿入方向に直交する断面において、前記放電電極の挿入方向と平行な前記軸を中心とした円弧の一部分に沿った輪郭を有することを特徴とする請求項9に記載の殺菌装置。
【請求項11】
前記囲い部材は、前記放電電極の挿入方向に沿った断面において、前記容器の外輪郭に対応した輪郭を有することを特徴とする請求項9または10に記載の殺菌装置。
【請求項12】
前記囲い部材は、前記支持部材に支持される容器を間に挟むようにして配置された第1囲い部材および第2囲い部材を含み、
前記対向電極は、前記第1囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、前記第2囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含むことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項13】
前記第1囲い部材および前記第2囲い部材は、それぞれ互いに平行な軸を中心として揺動可能であり、互いに逆の揺動方向に揺動し、互いから離間するように展開し得ることを特徴とする請求項12に記載の殺菌装置。
【請求項14】
前記放電電極は、前記放電電極の挿入方向と平行な軸を中心として回転可能であることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項15】
前記支持部材は、前記放電電極、並びに、前記囲い部材および前記対向電極と同期して移動可能であることを特徴とする請求項1乃至5および9乃至14のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項16】
前記放電電極と前記対向電極とに接続され、前記放電電極と前記対向電極との間に高電圧パルスを印加する高電圧パルス印加装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項17】
回転可能な支持部材によって殺菌対象である容器を支持する工程と、
前記容器内に放電電極を挿入する工程と、
前記容器内に挿入された前記放電電極と、前記支持部材に支持された容器を外方から囲むように配置された囲い部材であって、前記支持部材の回転軸に直交する断面において前記回転軸を中心とした円弧の一部分に沿った輪郭を有する囲い部材を、少なくとも部分的に外方から覆う対向電極と、の間に高電圧パルスを印加し、前記放電電極と前記対向電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記容器とともに前記支持部材を回転させることを特徴とする殺菌方法。
【請求項18】
前記囲い部材は、前記支持部材の回転軸に沿った断面において、前記容器の外輪郭に対応した輪郭を有することを特徴とする請求項17に記載の殺菌方法。
【請求項19】
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記対向電極とともに前記囲い部材を、前記支持部材の回転軸を中心とした前記円弧に沿って前記容器の周囲を移動させることを特徴とする請求項17または18の記載の殺菌方法。
【請求項20】
前記囲い部材は、前記支持部材に支持される容器を間に挟むようにして配置された第1囲い部材および第2囲い部材を含み、前記対向電極は、前記第1囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、前記第2囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含み、
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記放電電極と、前記第1対向電極および前記第2対向電極の両方と、の間に高電圧パルスが印加されることを特徴とする請求項17乃至19のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項21】
前記支持部材によって容器を支持する工程において、前記第1囲い部材および前記第2囲い部材が、それぞれ互いに平行な軸を中心として互いに逆の揺動方向に揺動して、互いから離間するように展開した状態で、前記容器を前記支持部材上に配置することを特徴とする請求項20に記載の殺菌方法。
【請求項22】
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記囲い部材を少なくとも部分的に覆う第1対向電極、および、前記囲い部材との間で前記支持部材に支持される容器を挟むようにして配置される囲い体を少なくとも部分的に覆う第2対向電極の両方と、前記放電電極と、の間に高電圧パルスが印加されることを特徴とする請求項17乃至19のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項23】
前記容器とともに前記支持部材を、前記放電電極、並びに、前記囲い部材および前記第1対向電極と同期して移動させ、前記容器が、前記囲い部材と、前記支持部材の移動経路に沿って配置された前記囲い体と、の間にある際に、前記放電電極と前記第1対向電極および前記第2対向電極との間に高電圧パルスが印加されていることを特徴とする請求項22に記載の殺菌方法。
【請求項24】
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記放電電極を、前記支持部材の回転軸と平行な軸を中心として回転させることを特徴とする請求項17乃至23のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項25】
支持部材によって殺菌対象である容器を支持する工程と、
前記容器内に放電電極を挿入する工程と、
前記容器内に挿入された前記放電電極と、前記支持部材に支持された容器を外方から囲むように配置された囲い部材を、少なくとも部分的に外方から覆う対向電極と、の間に高電圧パルスを印加し、前記放電電極と前記対向電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記対向電極とともに前記囲い部材を、前記放電電極の挿入方向と平行な軸を中心として前記容器の周囲を移動させることを特徴とする殺菌方法。
【請求項26】
前記囲い部材は、前記放電電極の挿入方向に直交する断面において、前記放電電極の挿入方向をと平行な前記軸を中心とする円弧の一部分に沿った輪郭を有することを特徴とする請求項25に記載の殺菌方法。
【請求項27】
前記囲い部材は、前記放電電極の挿入方向に沿った断面において、前記容器の外輪郭に対応した輪郭を有することを特徴とする請求項25または26に記載の殺菌方法。
【請求項28】
前記囲い部材は、前記支持部材に支持される容器を間に挟むようにして配置された第1囲い部材および第2囲い部材を含み、前記対向電極は、前記第1囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第1対向電極と、前記第2囲い部材の少なくとも一部分を外方から覆う第2対向電極と、を含み、
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記放電電極と、前記第1対向電極および前記第2対向電極の両方と、の間に高電圧パルスが印加されることを特徴とする請求項25乃至27のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項29】
前記支持部材によって容器を支持する工程において、前記第1囲い部材および前記第2囲い部材が、それぞれ互いに平行な軸を中心として互いに逆の揺動方向に揺動して、互いから離間するように展開した状態で、前記容器を支持部材上に配置することを特徴とする請求項28に記載の殺菌方法。
【請求項30】
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記放電電極を、前記放電電極の挿入方向と平行な軸を中心として回転させることを特徴とする請求項乃至25乃至29のいずれか一項に記載の殺菌方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2008−44640(P2008−44640A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220929(P2006−220929)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】