説明

殺菌装置

【課題】電子線を均一に照射してキャップの殺菌を確実に行い、殺菌に異常が生じた場合にはこれを速やかかつ確実に検出することのできる殺菌装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電子線の発生状態、電子線のスキャン状態、キャップ200の搬送状態、キャップ200の回転状態をモニタリングすることで、キャップ200の殺菌工程において何らかの異常が生じた場合には、該当するキャップ200を不良品として確実に排除する。このようなモニタリングはリアルタイムで行うことができるので、異常が生じた場合には直ちにこれを検出し、不良品となるキャップ200を最小限に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルの口を封冠するキャップの殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水や液体調味料等の充填物をボトルに無菌充填システムで充填する場合がある。ここで無菌充填とは、滅菌したチャンバー内にフィルターを通過させたクリーンなエアを供給するとともに、外部に対して室圧を高めることでチャンバー内を無菌環境とし、このチャンバーの内部で、殺菌済の充填物を殺菌済の容器に充填し、キャップにより封栓するシステムである。このようなシステムにおいては、充填物が充填されたボトルをキャップにより封栓するに先立ち、キャップの殺菌が行われる。
【0003】
キャップの殺菌には、過酸化水素や紫外線照射が多く用いられているが、近年、紫外線よりも殺菌力に勝る電子線照射による殺菌技術が注目され、鋭意開発が行われている(例えば特許文献1、2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−205714号公報
【特許文献2】特開2002−128030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャップを殺菌するには、過不足のない量の電子線を照射する必要がある。電子線の照射量が少ないと十分な殺菌が行えず、また、特にプラスチック製のキャップの場合、過度な電子線の照射を行うと、キャップの変色や軟化・変形といった不良にも繋がるからである。
また、電子線照射量が、キャップの部位によって大きくばらつかないよう、なるべく均一に電子線を照射するのが好ましい。特許文献2に記載の技術においても、キャップを回転させながら電子線を照射することで、これらの課題を解決すべく工夫がなされているが、依然として、そこにはさらなる改善の余地がある。例えば、キャップ、特にプラスチック製のキャップは小型軽量であるため、キャップを高速搬送しつつ確実に回転させるのは思いのほか難しい。キャップの回転が不十分な状態で電子線の照射が行われると、キャップの一部にのみ電子線が集中して照射されてしまい、電子線が集中照射された部分においては前記したようなキャップの変色や溶解といった不良が生じ、照射が不十分であった部分は確実な殺菌が行えない。しかし、キャップを確実に回転させるために複雑な機構を採用したのでは、装置の高コスト化、大型化等を招いてしまう。
また、電子線を照射する照射機構において何らかの故障等が生じ、電子線を照射できなくなることもある。
【0006】
キャップの殺菌工程において、電子線の照射やキャップの回転に何らかの異常が生じた場合には、キャップを不良品として確実に排除する必要がある。しかし、充填装置において容器に対する液の充填は毎分数百本という高速で行われる。これに伴ってキャップの殺菌も高速で行われるため、異常が生じたことを知るのが遅ければ大量のキャップが不良品となり、製造コストの上昇に繋がる。したがって、キャップの殺菌工程において何らかの異常が生じた場合には、これを確実かつ速やかに検出するのが好ましい。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、電子線を均一に照射してキャップの殺菌を確実に行い、殺菌に異常が生じた場合にはこれを速やかかつ確実に検出することのできる殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもとになされた本発明は、容器のキャップに電子線を照射することでキャップを殺菌する殺菌装置であって、電子線を発生する電子線発生源と、電子線発生源で発生した電子線を予め定められた範囲内でスキャンさせる電子線スキャン部と、電子線スキャン部で電子線がスキャンされる範囲を、キャップを回転させながら通過させるキャップ搬送部と、電子線発生源における電子線の発生状態、電子線スキャン部における電子線のスキャン状態、キャップ搬送部におけるキャップの搬送速度およびキャップの回転状態をモニタリングするモニタリング部と、を備えることを特徴とする。
このように、電子線発生源における電子線の発生状態、電子線スキャン部における電子線のスキャン状態、キャップ搬送部におけるキャップの搬送速度およびキャップの回転状態をモニタリングすることで、キャップの均一かつ確実な殺菌が行われているかどうかを検出できる。モニタリングによる検出結果が、予め定めた基準範囲から外れた場合、キャップの殺菌品質に異常があると判断して、そのキャップを排除することができる。これにより、殺菌が不十分であったり、変色や軟化・変形が生じている可能性のあるキャップを選別し、殺菌品質を管理することができる。
ここで、キャップの確実な回転を行うのは困難であるため、キャップの回転状態をモニタリングし、キャップが確実に回転していない場合にはこれを検出するのが重要である。
もちろん、同様のモニタリングを容器に対しても行うこともできる。
【0008】
モニタリング部は、電子線の発生タイミングを制御する電流および電子線を発生させるための加速電圧を検出することで電子線の発生状態をモニタリングするとともに、電子線のスキャンタイミングを制御する電流の周波数を検出することで、電子線スキャン部における電子線のスキャン状態をモニタリングするのが好ましい。
さらに、モニタリング部は、電子線スキャン部における電子線のスキャン幅を検出することで、電子線のスキャン状態をモニタリングするのが好ましい。
【0009】
また、モニタリング部は、キャップ搬送部におけるキャップの搬送速度が、電子線スキャン部における電子線のスキャン周波数と対応しているか否かを検出するのが好ましい。キャップの搬送速度のおよび電子線のスキャン周波数の変化は、キャップに対する電子線の照射量に影響する。単位時間当たりの生産量に応じてキャップの搬送速度が変化する場合があるので、これに応じてキャップの搬送速度および電子線のスキャン周波数が対応しているか否かを検出するのである。
【0010】
モニタリング部は、キャップ搬送部で搬送されるキャップの回転速度を検出することで、キャップの回転状態をモニタリングすることができる。また、キャップ搬送部で搬送されるキャップを、搬送方向に間隔を隔てた複数位置で撮影し、それぞれの位置で撮影された画像を比較することでも、キャップの回転状態をモニタリングすることができる。
【0011】
キャップ搬送部が、キャップを搬送方向に移動させるキャップ移動部材と、キャップ移動部材に沿ってその側方に設けられ、キャップ移動部材によって移動させられるキャップに接触してキャップを回転させるガイド部材と、を備える場合、このような機構によってキャップを確実に回転させることができる。この場合、モニタリング部では、ガイド部材に対するキャップの接触圧を検出することで、キャップの回転状態をモニタリングすることができる。
【0012】
これ以外にも、モニタリング部は、電子線スキャン部で電子線がスキャンされる範囲を通過したキャップの温度分布を検出することで、キャップの回転状態をモニタリングすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子線の発生状態、電子線のスキャン状態、キャップの搬送状態、キャップの回転状態をモニタリングすることで、キャップの殺菌工程において何らかの異常が生じた場合には、該当するキャップを不良品として確実に排除することができる。また、このようなモニタリングはリアルタイムで行うことができるので、異常が生じた場合には直ちにこれを検出することができ、不良品となるキャップを最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1(a)は、本実施の形態におけるボトル・キャップ用の殺菌装置10の概略構成を説明するための図である。
この図1(a)に示す殺菌装置10は、ボトル100に飲料を充填する充填装置の前段側に設けられるものである。この殺菌装置10は、ボトル100を搬送するボトル搬送機構20と、キャップ200を搬送するキャップ搬送機構(キャップ搬送部)30と、電子線を照射して殺菌を行う電子線照射部(電子線スキャン部)40とを備えて構成されている。
【0015】
ボトル搬送機構20の構成について本発明で何らの限定を行う意図はないが、例えば無端状の搬送ベルト21を循環駆動させながら、図示しない割り出し機構によって搬送ベルト21上にボトル100を一定間隔ごとに割り出していくことにより、ボトル100を搬送ベルト21上に所定間隔で配列した状態で搬送していく構成のもの等が採用できる。ボトル搬送機構20については、これ以外にもいかなる構成のものを採用しても良い。なお、搬送ベルト21上で、ボトル100はその中心軸線を略鉛直方向に合致させて保持されるようになっている。
【0016】
本実施の形態の電子線照射部40では、電子線発生源41と、偏向用磁石42と、スキャン用磁石43と、ホーン44と、コントローラ(モニタリング部)50とを備える。
なお、装置構成条件によっては、偏向用磁石42とスキャン用磁石43の上下関係が逆になることもある。
図2に示すように電子線発生源41では、ビーム状の電子線を発生し、これを、ボトル搬送機構20によって搬送されるボトル100、キャップ搬送機構30によって搬送されるキャップ200に照射する。
本実施の形態において、電子線発生源41では、図3に示すように、例えば60Hzといった低周波のパルス電流I1により電子線を発生するようになっている。この、電子線発生源41を駆動するためのパルス電流I1は、コントローラ50によってその発生が制御される。このような電子線発生源41としては、いわゆる電子銃を用いることができ、コントローラ50においては、電子線発生源41において電子線を発生させるための加速電圧をも制御する。
【0017】
ここで、以下の説明において、説明の理解を助けるため、ボトル搬送機構20、キャップ搬送機構30におけるボトル100、キャップ200の搬送方向をX軸、X軸に直交し、電子線発生源41におけるボトル100に対する電子線の照射方向をZ軸、これらX軸およびZ軸に直交する方向をY軸と定める。
【0018】
さて、偏向用磁石42、スキャン用磁石43は、それぞれは、印加される電流に応じて発生する磁界が変化するものである。
偏向用磁石42は、電子線発生源41から照射される電子線を囲むように設けられ、発生する磁界によって電子線をX軸回りに所定角度偏向させるよう配置されている。この偏向用磁石42には、コントローラ50の制御により、電子線発生源41で電子線を発生するパルス電流I1に同期させて、パルス電流I1で予め定められた数のパルスを出力する毎に所定強度の電流I2が出力される。出力された電流I2により偏向用磁石42では磁界を発生し、この磁界により電子線を偏向させる。偏向用磁石42で磁界を発生していない場合、電子線はボトル搬送機構20上のボトル100に照射され、偏向用磁石42で磁界を発生したときには、電子線は偏向してキャップ搬送機構30上のキャップ200に照射されるようになっている。
【0019】
スキャン用磁石43は、偏向用磁石42の直下に配置され、偏向用磁石42で偏向を行っていないときの電子線の進路と、偏向を行っているときの電子線の進路の双方を囲むように設けられている。このスキャン用磁石43は、例えば偏向用磁石42の直下に配置することができる。
スキャン用磁石43には、コントローラ50の制御により、電子線発生源41で電子線を発生するパルス電流I1の1パルスごとに、一定の変化幅で強度が連続的に変化する電流I3が印加される。このように、スキャン用磁石43に印加される電流I3が一定時間(パルス電流I1の1パルスに相当した時間)内に変化すると、スキャン用磁石43で発生する磁界強度が変化する。これによって、電子線の偏向量、すなわち電子線の偏向角度が連続的に変化し、電子線が一定範囲(一定角度)内をスキャンするのである。スキャン用磁石43は、このときの電子線のスキャン方向がX軸方向に合致するように配置される。
なお、電流I3の変化幅、変化開始時、変化終了時の電流強度については何ら限定する意図は無いが、電子線は当初Z軸方向に照射されるため、この照射方向を基準として、両側に等しい角度だけスキャンが行われるよう、変化開始時の磁界強度と、変化終了時の磁界強度を、正負で絶対値が等しくなるように調整するのが好ましい。
前記したように、このような電流I3によって行われる電子線のスキャンは、電子線発生源41で電子線を発生するパルス電流I1の1パルスごとに行われる。つまり、ボトル搬送機構20上のボトル100に向けて電子線を照射しているときはもちろん、前記の偏向用磁石42で数パルスに1回、キャップ搬送機構30上のキャップ200に向けて電子線を偏向させて照射しているときにも、電子線の一定幅でのスキャンが行われるようになっている。
【0020】
図2に示したように、ホーン44は、上記のように、偏向用磁石42による偏向、スキャン用磁石43によるスキャンを行っているときの電子線の照射範囲を取り囲むように設けられる。したがって、X軸方向からホーン44を側面視すると、ホーン44は、ボトル搬送機構20に向けて略鉛直下方に延びる第一ホーン部44aと、第一ホーン部44aから分岐するように形成されて、キャップ搬送機構30に向けて斜め下方に延びる第二ホーン部44bとを有し、第一ホーン部44a、第二ホーン部44bのそれぞれは、図1(a)に示したように、Y軸方向から見たときに、偏向用磁石42およびスキャン用磁石43から下方に行くに従いその幅が漸次広がるテーパ形状をなしている。
【0021】
図4に示すように、キャップ搬送機構30は、キャップ200を2列に並べて搬送する。このキャップ搬送機構30は、二本のスクリュー部材(キャップ移動部材)31A、31Bが間隔を隔てて互いに平行に配置され、キャップ200の天面200aに接触するよう設けられている。そして、これらスクリュー部材31A、31B上に位置する2列のキャップ200の両側と、2列のキャップ200の間には、ガイド部材32、33、34が設けられる。
【0022】
両側に位置するガイド部材32、33は、スクリュー部材31A、31B上のキャップ200の側面200bに対向するガイド面32a、33aに、ラックギア状の歯が連続して形成されている。このガイド部材32、33は、ガイド面32a、33aの下端部32b、33bを内側に突出するように形成して断面略L字状とし、下端部32b、33bでキャップ200の天面200aを支持する構成とするのが好ましい。これによりキャップ200は、その天面200aが、ガイド部材32、33およびスクリュー部材31A、31Bによって支持されるようになっている。
なお、ガイド部材32、33の材質には、ステンレススチールや樹脂を用いることができるが、電子線殺菌の場合にはステンレススチールを用いるのが好ましい。
そして、キャップ200がスクリュー部材31A、31Bの外周面に形成されている螺旋状の溝31aの中に収まった状態で、ガイド部材32、33、34によってキャップ200の側方への移動が規制される。この状態でスクリュー部材31A、31Bを図示しないモータ等で回転駆動させると、キャップ200はガイド部材32、33、34に沿った方向に搬送される。このとき、スクリュー部材31A、31Bは、一方のスクリュー部材31Aと他方のスクリュー部材31Bで溝31aの巻き方向が互いに異なるように形成され、さらに図示しないモータ等で互いに異なる方向に回転駆動されて、スクリュー部材31A、31Bの上面側においてキャップ200を両側のガイド部材32、33に押し付ける。ガイド部材32、33には、前述したようにガイド面32a、33aにラックギア状の歯が形成されているため、ガイド部材32、33に押し付けられたキャップ200は、その外周面に形成された溝がガイド部材32、33の歯に噛み合い、ガイド部材32、33との間の摩擦が高まってキャップ200は確実に回転しながら搬送される。
【0023】
このようなキャップ搬送機構30によりガイド部材32、33に沿って回転しながら搬送されるキャップ200に対し、電子線照射部40で電子線を一定のスキャン領域内でスキャンさせて照射することで、キャップ200の全体に均一に電子線を照射して殺菌を行う。
【0024】
なお、このようなキャップ搬送機構30は、電子線照射部40における電子線のスキャン方向と、ボトル搬送機構20やキャップ搬送機構30におけるボトル100のキャップ200の搬送方向を合致させず、電子線照射部40でスキャンされる電子線に対し、ボトル100やキャップ200が斜めに横切るように搬送される構成とすることも可能である。
また、キャップ搬送機構30は、キャップ200を確実に回転させながら搬送することができるのであれば、他のいかなる構成としても良い。もちろん、2列で並列してキャップ200を搬送する構成に限らず、1列のみ、あるいは3列以上で並列して搬送するような構成とすることも可能である。
【0025】
さて、このような殺菌装置10においては、コントローラ50において、キャップ200の殺菌が確実に行われているか否かをモニタリングする機能を有している。具体的には、コントローラ50では、キャップ200に対する電子線の照射状態と、キャップ搬送機構30におけるキャップ200の搬送状態、および回転状態をモニタリングする。
【0026】
図1(b)に、コントローラ50において上記のモニタリングを行うための機能構成を示すためのブロック構成を示した。また、図5はコントローラ50におけるモニタリング処理の流れを示す図である。
コントローラ50はコンピュータ装置からなり、CPU、ROM、RAM、情報記憶装置等が協働して所定のプログラムに基づいた処理を行なうことで、電子線発生源監視部51、スキャン状態監視部52、キャップ搬送状態監視部53、キャップ回転状態監視部54、情報格納部55を機能的に実現する。
【0027】
殺菌装置10でボトル100、キャップ200の殺菌を行うには、まずオペレータが殺菌装置10を起動する。このとき、殺菌装置10の運転モードが複数設定されている場合には、オペレータは任意の運転モードを選択する。ここで運転モードには、例えば単位時間当たりの殺菌処理量を低速、高速等といったように複数段階に設定したものがある。もちろんこれ以外にも運転モードを設定することが可能である。
特定の運転モードが選択された場合、コントローラ50は選択された運転モードの種類を情報格納部55に格納する。そしてコントローラ50では、選択された運転モードに応じ、殺菌装置10の各部を作動させ、電子線照射部40から電子線を照射を開始し、ボトル100、キャップ200の殺菌を開始する(ステップS201)。
【0028】
殺菌の開始後、コントローラ50では、殺菌装置10の各部から入力される検出信号に基づき、動作状態のモニタリングを一定時間ごとに行う(ステップS202、S203)。そのモニタリング内容については以下に詳述するが、各部から入力される検出信号が、予め定められた上限値、下限値の範囲内に収まっているか否かを判定する。このとき、それぞれの検出信号ごとに設定されている上限値、下限値は、前記の運転モードごとに設定することができる。
【0029】
電子線発生源監視部51においては、電子線発生源41で発生する電子線の出力をモニタリングするため、電子線発生源41に出力するパルス電流I1、電子線発生源41に印加する電圧(加速電圧)を検出し、これらの検出値が予め定められた範囲内にあるか否かを判定する。これにより、例えば電子線発生源41の異常により電子線の出力に過不足がある場合にはこれを検出することができる。
【0030】
スキャン状態監視部52においては、電子線のキャップ200側への偏向状態、電子線のスキャン回数(周波数)をモニタリングするため、偏向用磁石42に出力される電流I2、スキャン用磁石43に出力される電流I3を検出し、これらの検出値が予め定められた範囲内にあるか否かを判定する。スキャン状態監視部52においては、電子線のスキャン幅をもモニタリングする。このため、電子線の所定のスキャン領域の両端部にビームセンサ56を設け、スキャン状態監視部52においては、ビームセンサ56における電子線の検出の有無を判定する。これらにより、例えば偏向用磁石42、スキャン用磁石43等に異常が生じ、スキャンが正常に行われていない場合にはこれを検出することができる。また、何らかの原因でスキャンが過度に行われていれば、キャップ200に対して電子線が過度に照射され、キャップ200の変色や軟化・変形につながるため、これを防止することができる。
【0031】
キャップ搬送状態監視部53は、キャップ搬送機構30におけるキャップ200の搬送速度をモニタリングする。このため、キャップ搬送状態監視部53においては、スクリュー部材31A、31Bを回転させるための電流を検出し、検出値が予め定められた範囲内にあるか否かを判定する。
例えば、モータの異常等によってスクリュー部材31A、31Bの回転速度が低下した場合、キャップ200の搬送速度が遅くなって電子線のスキャン範囲内にキャップ200が長時間滞ることになり、電子線の過度な照射につながる。上記のモニタリングによりこれを防止する。
殺菌装置10における単位時間当たりの殺菌処理量は、製品の時間当たりの生産量に応じて変動し得る。殺菌処理量を変動させるには、運転モードを変更してキャップ200の搬送速度を変更する。キャップ200の搬送速度が変わる場合、電子線の照射量もこれに応じて過不足のないように変更する必要があり、これにはスキャン用磁石43に印加する電流I3の周波数を変更する。そこで、キャップ搬送状態監視部53においては、情報格納部55に格納された情報を参照し、キャップ200の搬送速度(電流値)がその時点で選択されている運転モードの種類に応じたものか否かを参照するとともに、スキャン状態監視部52においても、検出された電流I3の周波数が、その時点で選択されている運転モードの種類に応じたものか否かをモニタリングするのが好ましい。
【0032】
キャップ回転状態監視部54は、キャップ搬送機構30において搬送されるキャップ200の回転状態をモニタリングする。キャップ200の回転が十分に行われていない場合、キャップ200に対する均一な電子線の照射が損なわれるからである。
そこで、キャップ搬送機構30で搬送されるキャップ200の回転状態を検出して、キャップ200の回転が確実に行われているか否かを判定するわけであるが、キャップ200の回転状態の検出には、以下に示すような複数の形態が考えられる。
【0033】
図6に示すキャップ回転検出装置60Aは、レーザドップラー方式を用いる。センサ61でレーザビームを発し、キャップ搬送機構30において搬送されるキャップ200の側面に照射し、その反射光を受光することで、その時間差に基づき、速度計62でキャップ200の側面の回転速度(周速)を検出することができる。キャップ回転状態監視部54においては、検出されたキャップ200の回転速度が予め定められた範囲内にあるか否かを判定する。
【0034】
図7に示すキャップ回転検出装置60Bは、カメラ63でキャップ200を複数回撮影し、撮影された複数枚の画像を処理することで、キャップ200の回転を検出する。これには、キャップ搬送機構30の下方に、搬送方向に間隔を隔てて複数台のカメラ63を設置する。このとき、互いに前後するカメラ63、63の間隔は、キャップ200が搬送されながら一回転するのに必要な長さと合致しないようにする。また、カメラ63に、電子線が照射されないよう、これらのカメラ63は電子線の照射範囲外に設置するのが好ましい。
そして、それぞれのカメラ63では、各カメラ63に対応した位置にキャップ200が到達したタイミングで、そのキャップ200の天面200aを撮影する。キャップ200の天面200aには、製品の名称やメーカ名等のロゴマークが印字されているので、これを撮影するのである。このため、スクリュー部材31A、31Bは、キャップ200の中心よりも片側にオフセットして配置するのが好ましい。そして、それぞれのカメラ63で撮影した画像をキャップ回転状態監視部54に送信する。
キャップ回転状態監視部54では、複数台のカメラ63で撮影した画像を比較処理し、撮影した画像に含まれるロゴマークの角度が、複数台のカメラ63で撮影した画像間で異なっているか否かを判定する。キャップ200が確実に回転していれば、複数台のカメラ63で撮影した画像間でその角度が異なっているはずである。複数台のカメラ63で撮影した画像間でロゴマークの角度が変わっていない場合、キャップ200が回転していないと判定することができる。
【0035】
図8に示すキャップ回転検出装置60Cは、レーザ変位計66によりキャップ200の回転を検出する。レーザ変位計66は、キャップ搬送機構30におけるキャップ200の搬送速度と等速度でキャップ200と平行に移動するよう、ガイドレール66a等に沿って移動できるように設けられる。
図9に示すように、キャップ200には、このキャップ200をボトル100に嵌め合わせるための複数のウイング201が内周縁部に形成されている。これらのウイング201は、周方向に間隔を隔てて設けられている。
そこで、レーザ変位計66をキャップ200と等速度で移動させながら、キャップ200の内周縁部に形成されているウイング201にレーザビームを照射する。レーザ変位計66においては、照射するレーザビームが、ウイング201の部分に照射される場合と、隣接するウイング201、201の切れ目の部分に照射される場合とでは、レーザ変位計66における変位検出量が変化するため、これを検出する。そして、その変位検出量が変化する周期から、回転速度を算出することができるので、キャップ回転状態監視部54においてはキャップ200の回転速度が予め定められた範囲内にあるか否かを判定する。
【0036】
図10に示すキャップ回転検出装置60Dは、キャップ搬送機構30のガイド部材32、33に対するキャップ200の接触圧を検出する。このため、ガイド部材32、33のガイド面32a、33aに、歪ゲージ67を設ける。前述したように、スクリュー部材31A、31Bの回転により、キャップ200はガイド部材32、33のガイド面32a、33aに押し付けられて回転する。その接触圧を歪ゲージ67で検出し、キャップ回転状態監視部54においては、検出された接触圧が予め定められた範囲内にあるか否かを判定する。
【0037】
図11に示すキャップ回転検出装置60Eは、電子線照射後のキャップ200の温度分布を検出する。電子線の照射によりキャップ200の温度は上昇し、その温度と電子線照射量は相関がある。
そこで、電子線の照射後におけるキャップ200の温度分布を検出するためのサーモグラフィ68を、電子線照射領域の後工程側に設ける。キャップ回転状態監視部54においては、サーモグラフィ68で検出するキャップ200の温度分布から、例えばキャップ200の最高温度と最低温度を検出し、それらが予め定められた範囲内にあるか否かを判定する。
【0038】
コントローラ50では、上記したような電子線発生源監視部51、スキャン状態監視部52、キャップ搬送状態監視部53、キャップ回転状態監視部54におけるモニタリング結果に基づいて判定を行い(ステップS203)、いずれかのモニタリング結果が予め定められた範囲内から外れる場合、キャップ200に対する電子線の照射の過不足、あるいは不均一照射が行われているため、該当するキャップ200を、図示しないリジェクト装置等により不良品として工程外に排除する(ステップS204)。
【0039】
このようにして、電子線の発生状態、電子線のスキャン状態、キャップ200の搬送状態、キャップ200の回転状態をモニタリングすることで、キャップ200の殺菌工程において何らかの異常が生じた場合には、該当するキャップ200を不良品として確実に排除することができる。また、このようなモニタリングはリアルタイムで行うことができるので、異常が生じた場合には直ちにこれを検出することができ、不良品となるキャップ200を最小限に抑えることができる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、キャップ200の殺菌状態について説明を行ったが、ボトル100についても同様のモニタリングを行うのが好ましい。
また、殺菌装置10の構成について説明したが、本発明の主旨の範囲内であればいかなる構成の変更、追加、削除を行っても支障は無い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施の形態における殺菌装置の構成を示す図である。
【図2】電子線照射部の構成を示す図である。
【図3】電子線照射部における制御電流の例を示す図である。
【図4】キャップ搬送機構の一例を示す図である。
【図5】モニタリングの処理の流れを示す図である。
【図6】キャップの回転検出を行うための構成の例であり、レーザドップラー式のセンサを用いた例である。
【図7】キャップの回転検出を行うための構成の例であり、カメラで撮影した画像を画像処理する場合の例である。
【図8】キャップの回転検出を行うための構成の例であり、レーザ変位計を用いた例である。
【図9】ウイングが形成されたキャップを示す斜視図である。
【図10】キャップの回転検出を行うための構成の例であり、ガイド部材に歪ゲージを取り付けた例である。
【図11】キャップの回転検出を行うための構成の例であり、サーモグラフィを用いた例である。
【符号の説明】
【0042】
10…殺菌装置、30…キャップ搬送機構(キャップ搬送部)、31A、31B…スクリュー部材(キャップ移動部材)、32、33…ガイド部材、40…電子線照射部(電子線スキャン部)、41…電子線発生源、42…偏向用磁石、43…スキャン用磁石、50…コントローラ(モニタリング部)、51…電子線発生源監視部、52…スキャン状態監視部、53…キャップ搬送状態監視部、54…キャップ回転状態監視部、56…ビームセンサ、60A〜60E…キャップ回転検出装置、61…センサ、62…速度計、63…カメラ、66…レーザ変位計、67…歪ゲージ、68…サーモグラフィ、100…ボトル、200…キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器のキャップに電子線を照射することで前記キャップを殺菌する殺菌装置であって、
前記電子線を発生する電子線発生源と、
前記電子線発生源で発生した前記電子線を予め定められた範囲内でスキャンさせる電子線スキャン部と、
前記キャップを回転させながら前記範囲を通過させるキャップ搬送部と、
前記電子線発生源における前記電子線の発生状態、前記電子線スキャン部における前記電子線のスキャン状態、前記キャップ搬送部における前記キャップの搬送速度および前記キャップの回転状態をモニタリングするモニタリング部と、を備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記モニタリング部は、前記電子線の発生タイミングを制御する電流および前記電子線を発生させるための加速電圧を検出することで前記電子線の発生状態をモニタリングするとともに、
前記電子線のスキャンタイミングを制御する電流の周波数を検出することで前記電子線スキャン部における前記電子線のスキャン状態をモニタリングすることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記モニタリング部は、前記電子線スキャン部における前記電子線のスキャン幅を検出することで、前記電子線のスキャン状態をモニタリングすることを特徴とする請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記モニタリング部は、前記キャップ搬送部における前記キャップの搬送速度が、前記電子線スキャン部における前記電子線のスキャン周波数と対応しているか否かを検出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記モニタリング部は、前記キャップ搬送部で搬送される前記キャップの回転速度を検出することで、前記キャップの回転状態をモニタリングすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記モニタリング部は、前記キャップ搬送部で搬送される前記キャップを、搬送方向に間隔を隔てた複数位置で撮影し、それぞれの位置で撮影された画像を比較することで、前記キャップの回転状態をモニタリングすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記キャップ搬送部は、前記キャップを搬送方向に移動させるキャップ移動部材と、
前記キャップ移動部材に沿って側方に設けられ、前記キャップ移動部材によって移動させられる前記キャップに接触して前記キャップを回転させるガイド部材と、を備え、
前記モニタリング部は、前記ガイド部材に対する前記キャップの接触圧を検出することで、前記キャップの回転状態をモニタリングすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記モニタリング部は、前記範囲を通過した前記キャップの温度分布を検出することで、前記キャップの回転状態をモニタリングすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の殺菌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−189355(P2008−189355A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25582(P2007−25582)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】